サライ達三人が入室してきたので、面談の後半戦を始める。
彼女達は初めて防具屋を訪ねた時はかなり悲惨な状況だった。
今は奴隷になったものの衣食住が保障され、防具屋も続けられることになり状況が好転したので、サライのメンタルはかなり持ち直したのかもしれない。
旦那さんが亡くなった事実が消える訳ではないが、娘をしっかりと育てなければならないので、その分だけ気が張っているのだろう。
娘のティナは落ち着きなく、キョロキョロと俺達の表情を窺ってる。
何しに連れてこられたのか分かっているのだろうか。
事前にカラダンから用件は伝えているはずなので、三人で話し合ってるとは思うのだけど。
(鑑定)
サライ(猫人族 ♀ 37才)
防具商人Lv9
装備 革の靴
ティナ(猫人族 ♀ 14才)
村人Lv2
装備 革の靴
ヒューゴ(猫人族 ♂ 21才)
神官Lv8
装備 硬革の靴
三人が着席したので本題を切り出す前に、防具屋の話題を振っておくか。
「開店準備の方は順調なのか?」
「はい。立派なお店をありがとうございます。
昨日、元の店にあった防具は全て運び終えて並べましたので、準備はできています。
石鹸の方も見本と倉庫に在庫が準備してありますので、いつでも販売できます。
それで、店に貴族の方がいらっしゃるのでしょうか?貴族用の石鹸と伺ったのですが」
そういえば、あまりちゃんと説明してなかったな。
「さすがに、この店に貴族の者が直接来ることはないと思っている。
貴族の家で働く使用人がひょっとしたら購入しにくるぐらいではないだろうか。
あとは、この石鹸を販売したい商人が訪れることを予想している」
「そうですか。それなら大丈夫だと思います」
貴族が直接来たら大丈夫ではないと。まあ、貴族対応なんてできないよな。
来ないとは思うけど、ザビル領主の子爵様がお忍びで来たりして。
貴族の知り合いは何人かいるけど、俺だって別に貴族対応が得意な訳でもない。
「店に住んでもらっているが、住み心地はどうだ?何か困ったことはないか?」
「新しいですし、広くなりましたので特に困ったことはありません。
食事の方もこちらでナナさんが作っていただけますので、
最低限の家事だけすれば、お店でずっと働けますから」
そうなると、やっぱりナナ次第になるのかも。
ナナも体調が悪い時だってあるから、サポートできるメンバーを早めに入れた方が良いか。
タケダ家メンバーを増やす予定だから、ナナに負担が集中しないように増員を考えよう。
そろそろ本題に入るか。
こうやって話をしていてもティナは一向に落ちつく気配がない。
それなら早く終わらせてやった方が良いかも。
と言っても、ティナの要望を確認するのは一番最後だが。
まずは手本にもなり、簡単な者から片づけていこう。
「では、今後の各人の希望を確認していきたい。
まずサライからだが、防具屋をやってもらうために、
急遽防具商人のジョブを取ってもらったのだが
今後も今のまま経験を積んでいくことで良いのだろうか?」
「こんなに早く防具商人になれるとは思ってなかったので、
今でも夢の中にいる気分ですが、防具商人で頑張っていきたいと思います」
まあ、今までの経緯や店のことも考えるとそれ以外はなかなか考えられないよな。
「倉庫を使った鑑定方法のやり方は?」
「はい。既にサライには説明して実際にやってもらいました。
後は営業中に自然にできるように経験を積むだけだと思います」
そうだよな。そのためにカラダンが店の中に拠点構築のスキルで倉庫を設置したのだから。
まあ、今回は正規の防具屋だから空きスロットが無くても買い取りするのだが。
「では、サライは防具商人のジョブでザビルの防具屋の経営を任せるので、
カラダンとも相談して、まずは店の営業を軌道に乗せるように頑張ってほしい」
「分かりました。頑張らせていただきます」
少し緊張しているようだが、やる気というか決意に満ちた表情だ。
ザビルには相談役でもあり、統括責任者であるカラダンもいるから、任せて経過観察だな。
「次はヒューゴについてだ。今は神官のジョブに就いているが、
神官でそのまま経験を積んでいくということで良いのだろうか?
奴隷になるまでは迷宮探索者をやっていたと思うが、
タケダ家に加わると、この屋敷や防具屋の護衛という役割が加わるが、
他にやりたいことはないのか?
それも踏まえて、他のジョブで活躍したいという希望はないのだろうか?」
「今まで神官でやってきましたので、今後もそのまま頑張りたいと思います。
迷宮探索と護衛任務の役割に不満はありませんし、他に就きたいジョブは特にありません」
まあ、やっていく間に何か希望が出てくれば考え直しても良いだろう。
まずは新しい環境に慣れてからかな。
「マテウスがリーダー役なので、彼の指示に従ってくれ。
暫くは迷宮探索には行かない予定なので、訓練と護衛をメインに頑張ってみてほしい」
「分かりました。全力で頑張ります」
気合が入り過ぎじゃないか。
彼はザビルのタケダ家メンバーで唯一の回復職だから、無理しないでほしいのだが。
やる気に水を差す気はないが、暫くは迷宮探索はなくて訓練と護衛だから大丈夫か。
「では、最後にティナの将来のジョブについて希望があれば教えてほしい」
「娘は薬草採取士のジョブをやるのが良いかと」
「ティナは店の後継者になるため、商人のジョブを選択するのが良いと考えます」
「あたしは探索者になりたいです」
三者三様か?・・・・・・いやいや、意見がバラバラじゃないか。
「話し合ったけど、まとまらなかったのか?本人の希望は探索者のようだが」
「ピコ兄ちゃんは探索者から冒険者のジョブになったって聞きました。
あたしもピコ兄ちゃんのように冒険者になるため、初めは探索者のジョブに就きたいです」
ピコはザビルでカラダンと一緒に防具屋に行ってたから、ティナと話す機会があったのか。
「だれだ?そのピコという男は?探索者なんて危険なジョブは俺は反対だ!」
「ヒュー兄ちゃんは黙っていてよ。あたしが選ぶんだから!」
ティナは13才だから探索者のジョブに就いたとしても、迷宮で戦わせる訳にはいかないぞ。
まあ、ピコもビンスもリックも冒険者にはしたけど、パワーレベリングだけして迷宮で戦ったことは皆無だが。
「母親としては、薬草採取士のジョブについて危険な迷宮に行かないでほしいです。
タケダ家では生薬素材をわざわざ本人が迷宮に取りにいかなくてもよいと伺ったので」
「それはその通りだな。我が家では役割分担をしているからな」
13才の子供を迷宮に入れるのは俺も反対だ。
ラファは14才だが、迷宮で槍を振り回しながら、魔法をバンバン撃ってるけど。
あいつは元貴族だし、いろんな意味で根性が違うからなぁ。
「あたしは、訓練に参加してマテウスさんに剣を習いたい」
「ティナ、危ないからそれは止めなさい!」
「兄ちゃんは反対だ!」
うーん、どうだろうなぁ。
迷宮に行くのは止めさせたいが、自衛のために訓練に参加すること自体は悪くない気もする。
後方支援の者だって、護身術ぐらい身に付けておいた方が安全だ。
己の実力もわきまえずに、戦闘に突っ込んでいかれては困るが。
「迷宮に行かせるのは反対だが、訓練に参加するのは自分の身を守るために必要なことでは?」
「ほらほら、ご主人様もあたしと同じことを・・・・・・」
「むうぅ」
同じことなのかなぁ?
猫人族だから、意外に戦闘で活躍したりするのだろうか。
それはそれとして、ヒューゴの心配も分からなくはない。
こんな女の子が迷宮でモンスターと戦うのはちょっと拙いよなぁ。
「ティナは防具屋の仕事・・・・・・サライの手伝いはしないのか?」
「お母さんの手伝いもちゃんとします。でも、それとは別に訓練に参加したいのです」
やりたいというなら、やらせるか?
ザビルのメンバーはミシェルを除けば、皆少しジョブ取得については保守的過ぎる気がするんだよなぁ。
「薬草採取士のジョブについては、ティナはどう思っているのだ?」
「そちらも興味があります。
店にいて、お客さんが来ない時に生薬が作れれば、迷宮に行くみんなの助けになるので」
それはそれで、ちゃんと考えているのだな。
「もう、いっそのこと商人、薬草採取士、探索者の3つのジョブに挑戦するか?」
「え?」
別に迷宮で戦わなくても、パワーレベリングすれば3つともそれなりのレベルになるしな。
「3つのジョブで経験を積んでみて、
15才ぐらいになった時に改めてどのジョブでやっていくのか考え直しても良いと思うぞ」
「この家では、そんなことが可能なのですよね。
ピコ兄ちゃんもこの前まで村人ジョブだったって言ってたから」
アイツ、可愛い女の子の前では少し口が軽くないか?
ちょっと、カラダンに釘を刺してもらうか。
完全に秘密にすることはできないと思っているが、ペルマスクに行くときは冒険者ではなく、念のため商人のジョブにしているんだよなぁ。
ペルマスクではインテリジェンスカードのチェックがあり、15才で冒険者はちと目立つから。
ピコは15才で防具商人と冒険者のジョブ持っている。
防具商人もレベルだけなら、ルークより上だし。
15才の年齢がネックとなって本来のジョブを公にできないのがなんとも。
「サライやヒューゴはどう思う?」
「迷宮に行ったりしないのなら、3つのジョブに就くのは構いませんが。
本当によろしいのでしょうか?」
まあ、育成自体は問題ない。
「家族内でもう少し相談してから、最終的なジョブを決めても良いと思っている。
だが、最終決定前に3つのジョブを経験してもらっても良いかと考えている。
ただし、迷宮で戦うことは許可しない。あくまで身を守るための訓練参加なら許可しよう」
「それでしたら、こちらでもティナの面倒が見れますので」
ヒューゴに教えてもらうのは、ティナは不満気だ。反抗期か?
ちょっとヒューゴはシスコン気味な気もするけど、ピコは大丈夫だろうか。
タケダ家のメンバー同士、仲良くやってほしい。
人員が増えると、揉め事のタネが出てくるな。
「では、当面はティナは3つのジョブを育成していくことにしよう」
「はい!よろしくお願いします!」
まあ、そのうちどれか一つに落ち着くだろう。
「開店前の忙しい時に悪かったな。もう、戻ってもよいぞ」
「はい。今後ともよろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします」
ティナはニコニコだが、サライとヒューゴは少し当惑気味の表情で退出していった。
三人はそのまま防具屋の方に行ってもらい、マルチダ母娘を呼ぶのはこちらで行うつもりだ。
最後の面談に臨む前に少しだけ意識合わせ。
「ピコには私の方から少し話をしておきます」
「ああ、よろしく頼む。程々にな」
あまり縛り過ぎると委縮してしまうので、バランスが重要だ。カラダンにいったん任せよう。
「それと、この後の面談にマリーも参加させてくれ。次は二人なので護衛の数を増やしたい」
「マリーもですか?分かりました」
あの母娘はちょっと警戒が必要だ。
胡散臭いというか、ジョブの表面上の情報とは違う感じがするのだよな。
体の動きとか体幹とか、戦える者って感じがするし。
その割には母親の顔は無表情というか、無気力を装っているように思える。
閉業した奴隷商館が、母娘二人を引き離すなと言及していたのは何か理由があるのだろうか。
その後はカラダンに母娘の面談の段取りを説明した。
彼は少し難しい顔になったが、俺の描いたシナリオに賛同してくれた。
カラダンとモニカが一度退出し、マリーとマチルダ母娘を呼びにいった。
マリーは先に会議室に来て、俺の後ろに回った。
「マリー、俺の護衛はしなくて良いので、次に来る母娘の娘の方の動きを警戒してくれ」
「?・・・・・・了解」
モニカが戻ると、剣聖と百獣王に護衛されていることになるのだよな。なんか貴族みたいだ。
やがて、カラダンとモニカが二人を連れて戻ってきた。
相変わらず母親の方は無気力そうな顔、娘の方は少し緊張した表情だ。
俺の正面にマチルダが座り、カラダンの対面にレベッカが座った。
(鑑定)
マチルダ(人間族 女 32才 奴隷)
村人Lv9
装備 革の靴
レベッカ(人間族 女 14才 奴隷)
村人Lv2
装備 革の靴
「二人の将来のジョブについて、相談させてほしい。
君達母娘には将来的に就きたいジョブがあるのだろうか?」
「特に何も得意なものがありませんので、村人ジョブでお屋敷の雑用をこなしたいと思います」
「私もお母さんと同じで、村人ジョブでお仕事します」
ここまでは、ミシェルから聞いていた元の奴隷商館での振る舞いと同じか。
「それでは困るのですよね。
タケダ家に貢献できる仕事やジョブに就いてもらうのが、我が家に留まるためのルールです」
「新しい奴隷商館での方針ですか・・・・・・」
カラダンの言葉を受け、マチルダの顔には少し不安そうな表情が浮かんだ。
「母娘で薬草採取士のジョブに就くのはどうでしょうか?」
「経験がないので、分かりません。この娘もそうですが」
カラダンの誘いにも乗ってこないのか。拒絶モードに近いな。
「二人とも迷宮に入った経験はないのだろうか?」
「ありません。迷宮でモンスターと戦うのなんて恐ろしいことは私達にはできません」
本心で言っているのだろうか。
「昨晩の夕食時に顔合わせしたと思うが、
防具店の母娘の娘は薬草採取士のジョブに就きたいそうだ。
タケダ家では分業が進んでいるので、
迷宮で生薬素材を取ってくる者と生薬を生成する役割の者が別々に存在している。
薬草採取士の者はジョブ取得のために迷宮に入ることはあるが、
迷宮で戦うことは求められてはいない」
「そうなのですか。それならできるかもしれません」
マチルダの方は少し前向きになったか、レベッカの方は堅い表情のままだ。
「レベッカ、君はどうだろうか。薬草採取士のジョブになる気はあるか?」
「お母さんが、そう言うのなら・・・・・・」
母親の意見に追従か。まあ、それはそれで構わない。
さて、問題はここからだ。
「では、俺のパーティーに入ってもらえるか?
これからジョブ取得の条件を満たすことをやってもらおう」
「えっ、今からですか?」
マチルダは難色を示したが、ここは有無を言わせず次のステップに進ませる。
「友に応えし信頼の、心のきよむ誠実の、パーティー編成・・・・・・」
「えっ・・・・・・と」
レベッカは俺のパーティーに成り行きのまま加入した。
マチルダの方も、娘が加入してしまったので仕方なく加入。
パーティージョブ設定で二人の取得可能なジョブを確認。
レベッカ(人間族 女 14才 奴隷)
村人Lv2
装備 革の靴
(控えのジョブ)
マチルダ(人間族 女 32才 奴隷)
村人Lv9
装備 革の靴
(控えのジョブ)
また、このオチか。ラファ、ヘルミーネ、シェル、メリル・・・・・・の時と同じパターンだ。
そういえば、マテウスも騎士家の次男坊だったか。
あいつも騎士のジョブを持っているのだろうか?
後で確認しておかないとな。
迷宮に入ったことがないと言っていたが、薬草採取士のジョブは生薬素材を拾わないとジョブ取得できない。
レベッカの方は小さな子供の頃に訳も分からず迷宮に連れていかれて、生薬素材を拾わされたということはなくもないが、マチルダの方のジョブはその言い訳はできないな。
騎士のジョブを持つ者が『迷宮でモンスターと戦うのなんて恐ろしいこと』と言われてもな。
戦いたくない理由はあるのだろうが、噓をつかれるのは良い気分ではないぞ。
事前にカラダンに伝えたシナリオに移るか。
「ああ、ちょっと用事を思い出したので、このまま待っていてもらえるか?」
「?」
我ながら大根役者だ。
相手の反応を待たずに、会議室を出て玄関に移動。
玄関からザビルの3階層の中間部屋にワープで移動。
索敵で魔物部屋を確認。うん、満員御礼だ。
ザビルの3階層はスローラビットの階層だ。ここならサックリと倒せるな。
モンスターの密度が薄そうな壁にワープで移動。
サンダーストームを2連発して、残りをデュランダルで殲滅。
ドロップ品は面倒なので放置したいが、貧乏性なので拾う。
ウサギの毛皮とレアドロップのウサギの肉、コーラルゼラチンにヤギの糸か。
おっ、ウサギのモンスターカードまであった。思わず目的を忘れそうになる。
ザビルの本館までワープで戻って、二階の会議室へ。
レベッカの村人ジョブをLv5にしたので・・・・・・やっぱりか。
レベッカ(人間族 女 14才 奴隷)
村人Lv5
装備 革の靴
(控えのジョブ)
魔法使いは幼い頃に自爆玉を訳も分からず飲まされたのだろうが、戦士も剣士もモンスターと戦わずには取得できないジョブだ。
そして、巫女のジョブまである。
どんな英才教育を受けてきたんだよ。
これは、真意をというか背景を確認せざるを得ないな。
パーティージョブ設定で、レベッカのジョブを魔法使いに変更した。
「待たせて、悪かったな。じゃあ、カラダン」
「はい。承知しました」
カラダンはレベッカの方に近づき、座っている彼女の左腕を取った。
レベッカはポカンとしている。カラダンの背後にマリーが近づいていく。
「
「えっ?」
彼女は左腕から出てきたインテリジェンスカードを見て、驚愕の表情となった。
カラダンは後ろに下がり、マリーと立ち位置を入れ替えた。
「この状態を説明してもらえないだろうか?」
「レベッカのインテリジェンスカードがどうかしましたか?」
マチルダは俺の顔を見て、その後は娘の方に視線を向けた。
「
「えっ?何故?」
さっきまで村人ジョブだったのだから、そりゃ驚くよな。
魔法使いのジョブが発覚するまでは、『お母さん』だったのに、今は『お母様』か。
貴族の素が出てしまったのか。
「マチルダ、今一度言うが、娘のジョブ・・・・・・この状態を説明してもらえないだろうか?」
「何故?村人だったのに・・・・・・まさか知らないうちにギルド神殿を使われた?
いえ、それだけでは魔法使いにはならない。まさか食事にドープ薬が入っていた?」
なんか、物凄い混乱している。
確かに村人Lv2を直ぐにLv5にしようと思えばドープ薬を盛る手もあるが、そんな勿体ない事を我が家ではしないぞ。
ドープ薬なんか持ってないけど。
しかも、相手に知られずに食事に盛るとか・・・・・・どんな陰謀だよ。
まあパーティーに入れて、ちょっと魔物部屋に行ってパワーレベリングするのも十分騙し討ちに近い陰謀だが。
そして、魔法使いのギルド神殿を相手に気取られずに使えば、村人ジョブからの転職も半ば強制的にできるのだろうか。
原作ではギルド神殿は迷宮討伐後のドロップアイテムで、普通に持ち運び自由な感じで表現されていたっけか。
まあ、ギルド神殿も持ってないけど。
パーティージョブ設定で、マチルダのジョブを騎士に変更。
「カラダン」
「はい」
今度は彼はマチルダに近づき、彼女の左腕を取った。
彼の後ろにモニカが追随する。
「
「えっ?」
左腕から出てきたインテリジェンスカードを見て、今度はマチルダが驚愕の表情に。
騎士のジョブが彼女には見えているはずだ。さきほどまでは村人ジョブだったからな。
カラダンは下がって、モニカが前に出た。
「マチルダ、君のそのインテリジェンスカードの状態も俺に教えてほしいのだが」
「・・・・・・」
彼女はインテリジェンスカードを見つめたまま、一言も発しない。
「エレーヌの神官・・・・・・」
「レベッカ、そのような昔話の戯言ではありません!
私達は知らない間にギルド神殿を使われたのです。
まさか、このような所まで侯爵の手が伸びているとは・・・・・・」
ん?公爵ではなく、侯爵?なんだそれは?
「お母様、逃げて!」
席を蹴るように立ち上がって、レベッカは近くにいたマリーに素手で襲いかかった。
体の動きは悪くない。戦える者の振る舞いで俊敏な動きだ。
だが、マリーは彼女の右手首を左手で掴んで、足払いをかけて背中から床に叩きつけた。
「カハッ・・・・・・」
口から苦し気な息を吐き出したが、マリーは無表情で彼女を転がして俯せにさせた。
そして、後ろ手をとって身動きの取れない状態にした。
残念、マリーはナナイ流格闘術の免許皆伝を持つ猛者なのだ。
百獣王Lv38に魔法使いLv1が敵う訳ないだろう。
「レベッカ!」
立ち上がろうとした彼女に、モニカが二本のエストックを突き出して制した。
マチルダは丸腰だが騎士Lv17。双剣のモニカは剣聖Lv36なので、さすがに分が悪いだろう。
でも、この構図だと、こちらが悪者のような感じだ。
先に騙したのはアチラだが。
まあ、こちらもアチラを引っ掛ける気満々で準備してはいたけど。
「何か誤解があるようだな。俺にはその侯爵とやらの知り合いなんていないぞ。
隠されたり、騙されたりするのが嫌だから、
お前たち二人のこのインテリジェンスカードの背景を知りたかっただけだ。
そちらが襲いかかってこなかったら、危害を加えるつもりなどない」
「そんなこと・・・・・・どうやって信じろと?」
さて、どうやって話を進めたものか。
お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/2/5(木)の予定です。