異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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055.実験(その2)

 昨晩はイレーネとの激しい戦いに連勝し、スッキリサッパリとした気分で目が覚めた。

 ベッドを見ると彼女の姿は見当たらず、既に朝練に向かったのかもしれない。

 昨晩の鬱憤を俺に向けられないように注意しなければ。

 

 ストレッチをして体を解しながら、彼女の肢体を思い浮べて心身ともに体を温める。

 

 顔を洗って、更にサッパリ。

 昨晩アミル達と議論した『対人強化』と『レベル補正』スキルの実験をしなければならない。

 

 朝練でいつも身に着けている身代わりのミサンガとボーナス防具のアルフレイルは今日は封印。

 アルフレイルには、『レベル補正無視』のスキルがあるので実験の邪魔になる。

 鳥とコボルトでスキル融合すると『レベル補正削減』になるので、多分デュランダルやアルフレイルのスキルの方が上位互換なのだろう。

 

 鎧は竜革の鎧を装備した。

 実験だから鎧なしでも構わないのだが、鎧なしで訓練すると目立つからなぁ。

 それに鎧無しで攻撃を受けるのが怖いというのもある。

 急いで修練場に向かった。

 

 いつもよりは早く到着したつもりだったが、既に熱の入った訓練が繰り広げられている。

 まずは実験の段取り確認や意識合わせをしなければならない。

 焦る気持ちを抑えながら、アミルのいるところに近づいた。

 

 

「こちらのミサンガに『レベル補正』のスキル融合がしてあります。

 あと、こちらの色の濃い方のミサンガに『対人強化』のスキル融合がしてあります」

「ありがとう、アミル」

 彼女からもらったミサンガを受け取ったが、鑑定で確認すると確かに『レベル補正削減』と『対人強化』のスキルが付与されている。

 

 まずは、『レベル補正』なしで攻撃を受けてみるか。

 

「じゃあ、アミル、その木の槍で俺に攻撃をしてもらえるか?」

「えっ?私がやるのですか」

 そう、アミルがやるのだよ。

 

 俺のジョブよりレベルの高いジョブを持っていて、信用できそうなのがアミルぐらいだから。

 ヴィルマは手加減が苦手そうな気もする。

 イレーネとオリビアは今のジョブのレベルが低いし、レベルの高いジョブに変更しても、そこはかとなく身の危険を感じる。

 

「そうだ。アミルに頼みたい。

 数回は俺に攻撃をしてもらうことになるぞ。

 『レベル補正』の効果を比較するため、なるべく攻撃の強さを一定にするようにしてくれ」

「は、はい・・・・・・」

 彼女は木の槍を両手に持って、突きの素振りを始めた。

 

 多分、それほど意識をしなくても、ジョブの効果と武器の攻撃力で与えるダメージはそれほどは変わらないと思っている。

 気合の有無よりも、打点がちゃんと攻撃対象の重心を突いてるか等の方がダメージの値に効いているはずだ。

 であっても・・・・・・彼女が槍を鋭く突く度に風切り音が聞こえてきて、ちょっとビビるぞ。

 

 今、アミルのジョブは鍛冶師Lv75がセットしてある。

 彼女には後でジョブを変更してもらうので、アイテムボックスには何も収納しておかないように昨晩のうちに頼んでおいた。

 

 俺の方は1stジョブを鬼神Lv28にし、2ndジョブに僧侶Lv50をセットして他のジョブは外した。

 1stジョブだけでなく、2ndジョブにも『レベル補正』の効果があるのなら、2ndジョブにLv50のジョブがあるのは拙いか?

 思い切って僧侶も外した。

 直ぐに治療したかったので僧侶をセットしたのだが諦めよう。

 

 木の槍だから死ぬことはないよね?

 

 竜革の鎧の腹と胸の真ん中あたりをポンポンと叩きながら、

 

「アミル、こちらの準備は良いぞ。この辺りをしっかりと突いてくれ」

「は、はい。では・・・・・・いきます」

 木の槍を構えて、彼女は真剣な面持ちとなった。

 

 

(ドンッ)

 

「グッ・・・・・・」

 痛いけど、耐えられない痛さではない。全く致命傷ではないな。

 

 急いで僧侶のジョブをセットして、無詠唱で手当を連呼する。

 HPは満タンになったか?・・・・・・痛みが無くなったところで、一度僧侶のジョブを外して大きく息を吐いた。

 

「ふぅ~」

 さっきの痛みを覚えておかないとな。

 

 アミルから受け取った『レベル補正削減』の付与されたミサンガを手首に巻いた。

 

「じゃあ、もう一度同じ感じで突いてくれ」

「分かりました」

 彼女は一つ深呼吸をして、再び槍を構えた。

 

 

(ドンッ)

 

「グッ・・・・・・?」

 ん?痛みは変わらない気がするな。

 

 レベルの高い方から低い方への攻撃に対して、『レベル補正削減』のスキルでダメージを軽減することはないのか。

 レベル差があってもバフはかからず、通常量のダメージのままってことなのだな。

 やっぱり原作の感想返信にあった通りなのかもしれない。

 そうなると、防具に鳥のカードを融合するのは意味がないだろうか。

 

 でも、何故アルフレイルには『レベル補正無視』のスキルが融合されているのだろうか?

 直ぐに理由は分からないので、考察は後回しにしてドンドン検証を進めるしかないな。

 

 僧侶をセットして手当を無詠唱で連呼しながら、ミサンガを腕から外した。

 HPが回復したところで、1stジョブに百鬼夜行Lv76をセット。

 アミルのジョブを鍛冶師Lv75から戦士Lv21に変更した。

 

「アミル、もう一度同じ感じで突いてくれ」

「分かりました」

 今度はゆっくりと槍を構えた。

 

(ドンッ)

 

「?」

 全く痛みを感じない訳ではないが、大したことない。『レベル補正』が効いてるってことか。

 

「あまり痛くないな。先程までとは段違いだ」

「ご主人様がおっしゃっていた『レベル補正』の効果なのですね」

 これならレベル差が50以上もあると、対人戦闘では有利かもしれないな。

 

 とはいえ、ちょっとは痛いので僧侶をセットして手当を実施。

 アミルに『レベル補正削減』のスキルが付与されたミサンガを渡した。

 

「では、それを腕に巻いて、同じように槍で突いてみてくれ」

「はい」

 慣れてきたのか、彼女は無造作に槍を構えた。

 

(ドンッ)

 

「?」

 変わらないな。痛みは少しなので、スキルの効果はないということか。

 

 僧侶をセットして手当をしながら考察。

 原作者の感想返信では物理攻撃のデバフを消すとなっていたから、攻撃する武器にスキル融合しないと有効にならないといことかもしれない。

 アクセサリーに付与することは、現時点の評価では意味なしということになるか。

 

「『レベル補正』のスキルはミサンガに融合しても、有効ではなさそうだな。

 ミサンガをつけてもらった前後で、こちらのダメージに変化はなかったと思う。

 武器にスキル融合しないと意味ないのかもしれない」

「そうですか。では、後で銅の槍にでも融合してみますか?」

「そうだな。そうしてもらえるか」

 カードの無駄遣いかもしれないが、実験に損失はつきものだ。

 

 

「では、そのミサンガを外して、こちらのミサンガを腕に巻いてもらえるか?」

「はい。分かりました」

 今度は『対人強化』のスキルを融合したミサンガだ。

 

 ジョブの状態は同じで、アミルが戦士Lv21、俺が百鬼夜行Lv76。

 

 

(ドンッ)

 

「グッ・・・・・・」

 これは先程よりは痛みが明らかに増した。

 

 これが『対人強化』のスキル効果か。

 鬼人族も『人』扱いだということが分かって良かった。

 『対人強化』は攻撃する武器にスキル融合しなくても、効果が出るのだな。

 

 とはいえ、鍛冶師Lv75で突かれたほどではない。

 鍛冶師の方がレベルが高いし、腕力中上昇の効果がある分だけ差が出たか。

 

「さっきよりはダメージがあるが、一番初めに突かれた時ほどではない」

「そうなのですか。本人以外には分からない感想ですね」

 まあ、そうだよな。

 

 痛みの表現も難しい。死ぬほど痛い訳でもないし、胸の骨が折れた訳でもないから。

 それでも『対人強化』のスキルがあれば、格上にダメージを与える手段の一つになり得ると。

 

 手当を実施しながらアミルのジョブを鍛冶師Lv75に変更して、俺のジョブを鬼神Lv28に変更。

 

「アミル、そのミサンガを今度は俺が巻いて受けてみるので、こちらにもらえないか?」

「あ、はい。お待ちください」

 彼女から外したミサンガを受け取り、俺の腕に巻いた。

 

 

 俺の準備が整ったのを確認して、彼女は槍を構えた。

 

(ドンッ)

 

「グッ・・・・・・?」

 これは、一番初めの時よりは若干痛みが少ないな。

 

「初めの槍の突きに比べると、ダメージが少ないようだ。

 アクセサリーにスキル融合すると、

 攻撃と防御の双方で『対人強化』のスキルが有効なのだと思う」

「そうですか。傍目で見てると全く分かりませんが、そうなのですね」

 まあ、槍の攻撃を受けてるのは俺だけだからな。

 

 鑑定でHPやMPの値が分かれば、こんな珍妙なことはやらないので済むのだが仕方がない。

 

「では、空きスロットのある銅の槍にスキル融合して持ってきますね」

「ああ。悪いがよろしく頼む」

 アミルは建物の方に去っていった。

 

 

 しかし、『対人強化』のスキルはアクセサリーに融合した方が合理的だな。

 防具にはスキル融合できなくて、武器にはできるが武器の空きスロットは結構不足がちだから。

 アクセサリーに融合できれば、空きスロット利用の節約にもなりそうだ。

 

 『レベル補正』の方は残念な結果だった。

 この後、銅の槍を使った実験結果が予想通りなら、46階層でイレーネとオリビアの攻撃力を増やすために、武器に『レベル補正削減』のスキルを付与するか?

 いや、二人の今使っている武器に空きスロットの余裕が無いのだよな。

 46階層はこのまま攻略を進めるしかないか。

 実験結果だけ確認して、今後の武器の扱いを少し再検討するべきか。

 

 

「ユキムラ君、ユキムラ君・・・・・・?」

「ん?」

 

 周りを見ると、いつの間にか皆が集まってきていた。

 俺達が奇天烈な実験をやっていたからだろうか。

 

「槍の攻撃が必要なら、お姉ちゃんがやってあげようか?」

「い、いや、必要ない!」

 木の槍で攻撃されても、オリビアの謎スキルで大ダメージが出そうな気がする。

 

 別に大きなダメージは必要としてないから。

 実験に必要なダメージ差の有無が分かれば問題ないのだよ。

 

「みな、俺達のことは気にせず、各自の訓練を実施してくれ」

「ふーん?」

 

 オリビアも、その周りにいた者達も訓練のために去っていった。

 

 

 周りの訓練を眺めていると、アミルが銅の槍を二本持って戻ってきたのが見える。

 スキル融合した槍としてない槍だな。

 

 その後、アミルとスキル効果の実験を実施。

 武器に『レベル補正削減』のスキルを付与すると、レベルの高い者への攻撃力のデバフが削減されることが確認できた。

 予想通りの結果だ。

 

 いくつかの実験から『レベル補正』を有効にする装備品の構成は判明したが、これをどのようにタケダ家の装備品に生かしていくかは今後検討だな。

 

「えーと、改めて確認させてくれ。

 『対人強化』のスキルを付与する牛人のモンスターカードは防具には融合できないのだよな?

 海水魚や豚のカードで対水生強化や対動物強化のスキルを防具に融合できないのと同じように」

「はい。防具にはスキル融合できません」

 なのにアクセサリーには融合できるのか。

 

 となるとアクセサリー枠を身代わりのミサンガだけで消費してしまうのは、もったいないか?

 特定のモンスターに特化した強化のスキル融合は現時点では考えていないが、アクセサリーの特殊性を残した方が適切な気がするな。

 『対人強化』のスキルは避けられない対人戦闘・・・・・・盗賊や貴族、自由民等の戦闘や決闘で有効な場合があるかも。

 タケダ家標準装備への影響もあるから、もう少しちゃんと検討して、しっかりと方針を立てないとダメだろう。

 

 

「アクセサリーですが、一応、上腕に装備する腕輪にしたらどうかと考えていました。

 ダマスカス鋼でネックレスを作ると重くなりそうで、

 腕力のない人には取り扱いが難しいかと思いました。

 重い素材を使うのなら首にかけるよりも、腕輪の方が重さを感じにくくなるかと」

「なるほど。確かにそうかもしれないな」

 アームバングルタイプの腕輪なら、装備してサイズ調整が働けばピッタリとハマるか。

 

 首に重たいジャラジャラしたネックレスを着けるのはイマイチだし、イアリングも同じだよな。

 軽い素材なら問題ないが、防御を重視するならダマスカス鋼になるだろうし。

 アクセサリーに防御面を求めるのはナンセンスだろうか。

 やはり検討がまだまだ必要だな。

 

「分かった。また、相談させてくれ。

 今日の実験結果からアクセサリーの扱いは、もう少し検討を重ねた方が良いと感じた。

 『レベル補正』や『対人強化』のスキル融合については保留とさせてくれ。

 いろいろと準備してくれて、ありがとうな」

「はい。また、相談してください」

 アミルに礼を言って、この件はいったん終わりにした。

 

 今日の結果を頭の中で整理しながら、目の前で訓練している者達を眺める。

 

 『レベル補正』のスキルは物理攻撃が可能な武器で有効となる。

 武器、防具、アクセサリーにスキル融合が可能。

 ボーナス防具にも融合可能なので、何か特殊なケースで効果を発揮するのかもしれないが現時点では不明。

 

 『対人強化』のスキルは武器、アクセサリーで有効となる。

 武器、アクセサリーにスキル融合可能で、防具には不可能。

 アクセサリーで攻撃時、防御時にスキルの効果が発揮されるのでアクセサリーへのスキル融合が有力な候補。

 

 こんなところだろうか。

 

 当初思っていたよりも改善は難しそうだ。

 周囲で訓練している者達を見ながら、ため息をついた。

 

 一番近くで訓練しているのはトカラで、彼の近くにミラとフレイヤが付いて剣や盾の使い方を教えているように見える。

 アイツは魔法使いで身を立てていくのではなかったか?

 それにしては熱心に近接戦闘のやり方を身につけようとしているな。

 嫌々やってる感じではなく真剣そのものだ。

 

 そして、左手に持っているのは先日見たラム(衝角)付きのヘンテコ盾だ。

 竜人族で上背もあるので、尖りを帯びた盾を持っていると結構迫力を感じてしまう。

 武闘派魔法使いがまた一人増えたのか?

 

 盾には大した攻撃力はないが、MP吸収を付与すれば多少はMP回復になるのだろうか。

 後は状態異常のスキルでも付与すれば、面白いな。

 だが、本来それらは近接戦闘職の役割だ。

 魔法使いが前に出て無理にやる必要はないよな。うーん。

 

 トカラに対する二人の指導を少し離れた所でレイモンドが見ている。

 ちょっと訊いてみるか。

 

「なあ、レイモンド。トカラは魔法使いだけでなく、近接戦闘のジョブもやりたいのか?」

「えっ?どうなのでしょうか。特に前衛のジョブをやりたいとは言ってませんでしたけど。

 魔法使いのジョブにまずは慣れたいとは言ってましたね」

 まあ、元々我が家に加入する条件に竜騎士NGって言ってたしな。

 

「その割には近接戦闘の訓練に熱心だよな。なんでなのだろう?」

「なんか立派な魔法使いになるため、

 早く一人で上手く戦えるようにイロイロと考えているみたいですね」

 立派な魔法使いってなんだろう?・・・・・・って思うけど。

 

「どうも、立派な魔法使いになることを親と約束したみたいですね」

「両親と?」

 そういえば、加入する時にも約束がどうこうと言ってたっけ?

 

「正確には親の顔は知らないみたいですけどね。

 アイツはステーラの神殿の前に捨てられていたらしいので」

「ステーラ?」

 ステーラの街の神殿って、確か奴隷の駆け込み寺みたいな所だったっけ。

 

 お金を持って、そこに駆け込むと自分を買い取ってもらえるみたいな。

 買い取りされると、奴隷身分から解放されるのだっけか。

 いや、そんなことより。

 

「そんなこと、本人の口からでなく、レイモンドから俺に伝えても大丈夫なのか?」

「はい。トカラも皆の前で口にしていますし、周りに言っても構わないって」

 あまり深刻な話ではないのかな。奴隷身分だから、主人への情報提供なら問題ないとか?

 

「ステーラの神殿に捨てられていたってことは、彼は奴隷の子供だったのか?」

「いえ、そうではなく、ただの捨て子だったらしいです。

 トカラは魔法使いになれるはずなので、立派な魔法使いに育ててほしいと

 お金と共に置手紙があったそうです」

 うへぇ、なんだそりゃ。

 

 竜人族の貴族の縁者とか?

 

「まあ、よく分からないのですが、そんなこともあってトカラは置手紙にあったことを

 約束として守るためにステーラの神殿で育ててもらいながら金を貯めてたらしいです。

 迷宮にも仲間と入って自分自身も鍛えて、その貯めた金で

 エレーヌの神殿で魔法使いになったそうです」

「ふーん」

 でも、その流れでは奴隷になる要素がないような気もするな。

 

「ステーラって奴隷が解放を求めて駆け込む場所じゃなかったっけ?

 奴隷じゃないトカラは、エレーヌの神殿で魔法使いになったら

 普通に平民の魔法使いで活躍できるはずじゃないのかな」

「それが、自分を奴隷として売って、育ててくれた神殿に恩返しをしたようで・・・・・・」

 マジかよ。律儀というか不器用というか。

 

 そのまま魔法使いとして活躍して、お金を貯めて神殿に寄付する手もあったのでは?

 まあ、我が家に来てくれて有難いのだが。

 

 魔法使いとして自信が付いたら、近接戦闘職との二刀流でも目指すのかな。

 まあ、迷宮に慣れた頃にまた確認してみるか。

 

・・・・・・

 

 訓練と朝食を終えて、迷宮出発前にザビルへ移動。

 ザビルのメンバーのジョブを変更して、輜重隊や小荷駄隊の方に加える。

 ニケは暗殺者のジョブ取得条件を満たすため、ベイルの3階層でコボルト相手に毒針で毒化させる戦闘を実施させた。

 彼女の戦士はLv27だから、午前中には暗殺者のジョブになるだろう。

 ジョブが一日の途中で切り替わることをニケやミシェルに伝え、ザビルを後にした。

 

 今日の育成対象者は小荷駄隊4人、輜重隊4人の計8人のうち7人がザビル組で残りの一人がクーラタルの護衛部隊のメンバー。

 サライは既に防具商人のジョブを得ているので、育成はストップ。

 ナナの農夫ジョブも優先度が低いので後回し。

 マテウス、ニケ、ヒューゴ、ミシェルを輜重隊に加え、ティナ、マチルダ、レベッカの薬草採取士組を小荷駄隊に加えた。

 護衛部隊メンバーの育成は小荷駄隊に入れて午前中がレドリックの剣聖で、午後はラファの巫女を育成していく。

 

 ターレ迷宮の46階層で、ひたすらラフシュラブとオイスターシェルを中心としたモンスター群を討伐していく。

 45階層以降のタフになったモンスターなので、集中力と体力が消費される。

 

 それでも日ごろから鍛えられた近接戦闘大好き組は、ほとんどミスすることなく殲滅していく。

 休憩を時々挟みながら、探索を順調にこなす。

 だが、昼までに中間部屋に辿り着くことはなく、午前中の探索を切り上げた。

 

・・・・・・

 

 昼食後に探索を再開。

 モンスターの面子は代わり映えしないのに、彼女達もよく集中力を切らさずに戦い続けられるものだと感心してしまう。

 それにしても、物凄い勢いでドロップ品の削り掛けとボレーが増えていく。

 削り掛けは生薬生成で抗麻痺丸になるが、ボレーはタケダ家に三人の竜人族の者達がいても齧り尽くせる量ではない気がする。

 たまにレアドロップで牡蠣が手に入るから、牡蠣料理でもそのうち食卓に並ぶのだろうか。

 

 ボレーって牡蠣の貝殻なのかな?

 それなら肥料に使えるのだろうか。

 ナナが畑仕事する際に、寄生ワームといっしょに使ってもらうか?

 いや、大して農作業の知識もないのに、生兵法は大怪我の基だよな。

 

 ナナが畑仕事を始めてから相談するか。餅は餅屋だよな。

 いずれにしても、こんな大量のボレーを消費できる訳はないだろうけど。

 46階層の攻略が終わる頃には、三人の一生分のボレーが手に入るのではないのだろうか。

 

 夕方になり、探索を切り上げようかと思う頃にようやく中間部屋に到達。

 別にどこからでもワープで帰れるから大した事はないのだが、なんとなく達成感が得られた。

 

 達成感という意味ではレベリングの方が分かり易い。

 ヴィルマの百獣王はレベルキャップのLv76に引っ掛かって頭打ちだ。

 アミルの探索者はLv69、イレーネはくのいちLv31、オリビアは竜将軍Lv41になった。

 オリビアの竜将軍のジョブの方がイレーネのくのいちのジョブよりもレベル上昇が速い。

 もう暫くしたら、オリビアの方は『レベル補正』のデバフから抜け出せるかもしれない。

 

 そして、ようやく俺も新しいジョブ『忍者』が取得できた。

 イレーネにクリティカル二倍のスキルが付与された硬直のエストックを借りて、モンスターを叩きまくった甲斐があったよ。

 これで、アクティブ系攻撃スキルの『一閃』が使えるようになった。

 暫くは『忍者』を育成するので、たまに使ってみるか。

 デュランダルの方が与ダメは高いから、そちらで『一閃』を使ってみるか。

 クリティカル発生の回数を増やすためにデュランダルの使用を抑え目にしていたから、これからは少しだけ殲滅速度が上がるかもしれない。

 

 探索を終えて、クーラタルへ帰宅した。

 

・・・・・・

 

 翌日も午前、午後とターレ迷宮の46階層を探索して回った。

 昼食を挟んで、午後も接敵するモンスター達を討伐しまくる。

 夕方になる少し前に、魔物部屋をようやく発見した。

 

 皆を休憩させる傍ら、魔物部屋に出入りを繰り返して魔法で削り、頃合いを見て超速スキルをかけてデュランダルで殲滅。

 この後、ボス部屋に辿り着くのはさすがに無理ということで、探索を切り上げることにした。

 

 成果としては、大量の削り掛けとボレー、灌木のモンスターカード1枚。

 

 パワーレベリングの効果もあり、ミシェルが探索者、商人ともにLv30に達して、目標であった武器商人のジョブを取得した。

 ティナ、マチルダ、レベッカの薬草採取士もLv36に達したので、生薬生成を行うのに十分なレベルに到達。

 翌日から薬草採取士として活躍してもらっても構わないのだが、複数ジョブを育成する関係で暫くは生薬生成作業は保留にした。

 

 マテウス、ニケ、ヒューゴも低いレベルからのレベリングなので、ガンガン上がっていく。

 

 

 明日には46階層の攻略が終わるかもしれない。

 レベリングも順調なので、慣れによる事故に注意だよな。

 

 ワープゲートを自宅に繋げて、皆で帰宅した。




お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/2/13(金)の予定です。
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