翌日も引き続き、ターレ迷宮46階層の攻略を実施。
迷宮攻略前にザビルに赴いて、武器商人のジョブを取得したミシェルを小荷駄隊から外して、ナナを加えた。
農夫ジョブを育てる意味に疑問を感じなくもないのだが、一人だけ育成しないのもアレだし。
クーラタルに戻って、迷宮組と合流してターレへ移動。
迷宮入口の兄ちゃんを42階層へ案内した後、46階層に移動して探索を行う。
探索を再開する前にイレーネに頼み事。
「イレーネ、今日はこれを使ってもらえるか?」
「今までの剣と同じ?」
見た目は同じだが、スキルが異なる。
今までは俺のダマスカス鋼の両手剣を貸していた。
硬直のダマスカス鋼剣 両手剣
スキル 石化添加、攻撃力2倍、MP吸収、クリティカル二倍
くのいちのジョブを取得するまでは、アクティブ系攻撃スキルがなかったのでMP吸収のない硬直のエストックを彼女は使っていた。
『一閃』のスキルを使うようになり、MP吸収が必要になったので俺の剣を貸すことにした。
今回は一時的な実験のため、レベル補正削減のスキルを融合した武器を用意した。
硬直のダマスカス鋼剣 両手剣
スキル 石化添加、MP吸収、レベル補正削減
石化の状態異常を与えることとMP吸収は同じで、攻撃力2倍とクリティカル二倍を外し、レベル補正削減のスキルを付与した両手剣。
空きスロット4つのダマスカス鋼の剣が倉庫になかったので、空きスロット3つで妥協した。
これで、もう一つ気になっていたことを実験して確認したい。
レベルが高い相手には状態異常が発生しにくくなっているのではないかという疑念
イレーネが新しいジョブを得てレベルが下がってから、45階層以降のモンスターを石化するのに必要な時間が若干増えている気がしたからだ。
彼女のジョブはLv35で、46階層のモンスターはLv46で10以上の開きがある。
その検証のために、今回は鳥のモンスターカードをスキル融合して、『レベル補正削減』のスキルを付与したダマスカス鋼の剣を用意した。
「この剣を使うと、ひょっとしたら今までよりも早く石化できるかもしれない。
『一閃』のスキルを使うのには支障はない。
攻撃力は今までよりも少し落ちるかもしれないが、使ってくれるか?」
「分かった。御館様の言う通りにする」
剣が新しくなるから嬉しいのかな。心持ち口角が上がっている気がする。
見た目もほとんど同じだし、ダメージは落ちるかもしれないけど気にしないのか。
実験も兼ねて、46階層の攻略を再開した。
結果はやはり彼女が状態異常にするのは早くなったと思う。
「石化するのは早くなっているよな?」
「うん、早くなったので快適。倒すのには時間かかるけど、この剣の方が楽」
まあ、早く石化した方が早く相手を無力化できるからな。
こうなると、ますますレベル補正のスキルは有用な気がするな。
主にレベルの高いモンスターや対人戦においては。
モンスターではなく人の場合であっても、恐らく同じだと思う。
さすがに石化添加のスキルが付与された武器で自らダメージを受けてみて、対人有効性検証をする気にはならない。
柔化丸を飲めば石化が解除できるのだろうけど、万が一遅れた場合にはエリクサー無しでは復活できなくなるので怖すぎる。
対人検証の話は置いておくとして、彼女のレベルが階層モンスターのレベルを超えるまで暫くは新しい剣を使ってもらうか。
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その後も問題なく探索を行い、昼食になる前にボス部屋をようやく発見できた。
ボスモンスターを倒すまでは油断禁物だが、46階層攻略の終わりが見えてきてホッとする。
「アミル、ボス戦の指揮を任せるぞ」
「はい。分かりました。
46階層のボス戦は45階層でも経験しましたが、ボス二匹とお供が二匹出現します。
ボスはララシュラブというラフシュラブよりも大きい木の形をしたモンスターです。
ラフシュラブがそうであったように、遠隔攻撃と枝の攻撃に注意が必要です。
お供のモンスターが何になるかは出現してみないことには分かりません。
オイスターシェルやラフシュラブが出現したら、タフな相手なので注意が必要です。
45階層のボス戦と同じ編成で挑みます。
ボス二匹はご主人様とオリビアさんで一匹ずつ受け持って下さい。
右側がオリビアさんで左側をご主人様でお願いします。
お供のモンスターについては、左側をイレーネさん、右側をヴィルマさんでお願いします。
並び順はいつもの戦闘通りなので、戦い方は変わりません。
私は遊撃で支援します。
ご主人様とオリビアさんは余裕があれば、
イレーネさんとヴィルマさんのモンスターへの牽制もお願いします。
ご主人様は雷魔法とイレーネさんのモンスターに博徒のスキルをかけるのもお願いします」
「了解」
「了解」
「了解」
「了解」
「今回も小荷駄隊外しをして、準備が整ってから迎え撃つことにしよう」
「了解」
「了解」
「了解」
「了解」
45階層以降は十分に注意して臨みたい。
モニカを小荷駄隊から外して、いったん通常部隊に加えた。
待機部屋からボス部屋に5人で入るが、ボス部屋の扉は閉じない。
五人ともアミルの指示通りの配置についたことを確認。
俺の少し右側にはオリビア、両翼の右にヴィルマ、左にイレーネが位置し、アミルは俺とオリビアの真ん中のやや後方に陣取る。
「では、始めるぞ」
モニカを通常部隊から小荷駄隊に戻した。
モンスター出現のエフェクトとなり、煙から4つのモンスターが現れた。
お供は右にオイスターシェル、左にラフシュラブか。
45階層以降の出現モンスターのフルスペックだな。
真ん中の二匹がララシュラブか。
正直、明るいイメージの全くない木のデカい形のモンスターで、『ララ』感が全くない。
左のラフシュラブよりも一回りか二回りデカいし、枝も長そうだ。
(サンダーストーム、サンダーストーム)
雷魔法を二連発。
枝が少し揺れた気もするが、麻痺したかどうかは全く分からない。
(状態異常耐性ダウン)
イレーネの前のラフシュラブに博徒のスキルをかけた。
目の前のララシュラブにデュランダル、硬直のエストック、激情のダマスカス鋼剣、ひもろぎの聖槍をひたすら叩き込む。
デュランダルの攻撃は忍者のスキル『一閃』を使って叩きつけた。
イレーネの前のラフシュラブにも聖槍で突きをかまして、援護を実施。
あまり効いたようには見えないが、少しは枝が揺れたか。
ひらすら叩きつけていると、俺の前のララシュラブが状態異常一番乗りか?
石化したようだ。
そのまま、左のイレーネのラフシュラブの援護に回り、『一閃』を使って槍でダメージのデカい一突きを繰り出した。
槍でも忍者の攻撃スキルが使えるのが有難い。
こちらの牽制が効いたのか、イレーネがアッサリと石化させた。
横から斬撃を高速で打ち込んでいたからな。
(状態異常耐性ダウン)
オリビアのララシュラブの後ろを通って、ヴィルマのオイスターシェルに博徒のスキルをかけた。
(サンダーストーム、サンダーストーム)
2回目の雷魔法二連発。
あっ、オリビアの前のボスが麻痺になった気がする。
彼女が猛然と槍の攻撃サイクルを上げ始めた。
ドラゴンファングのスキルの発生頻度も上がっている。
木の幹を激しく突きまくり、枝が物凄く揺れている。
イレーネも斬撃を撃ちまくって、二人で挟み撃ちでボスの攻略にかかった。
俺はヴィルマの方に向かったが、こちらも彼女が麻痺させたようだ。
硬直のエストックで、とにかく俺も連続で刺突しまくる。
これはもう時間の問題だな。
目の前のオイスターシェルが石化し、隣のララシュラブを見るとイレーネも石化させたようだ。
あとは、石化した四匹をひたすら煙にしていくだけだ。
石化させたモンスターを皆で叩きまくって、全て煙に変えてボス戦は終了。
ボスドロップは『桐』?木材か・・・・・・高級木材か。
「アミル、『桐』って鍛冶素材に使えるのだっけ?」
「いえ、聞いたことないですね。建材か家具類でしょうか?ちょっと私には分かりません」
桐と言えば、日本だと高級タンスの材料のイメージだけど。
倉庫に入れておけば、エネドラがオネスタさんあたりと何か取引に使うかも?
これで46階層は攻略したので、あと残りは4階層か。
46階層も45階層と同じ戦術で攻略できることを実感した。
このまま47階層以降も戦っていけることを願いたいが、1階層ずつ着実に攻略していこう。
47階層に抜けて、
・・・・・・
昼食の際にエネドラから報告があった。
「ルーク様から伝言があり、旦那様に商人ギルドに来てほしいとのことです。
モンスターカードの落札と取引についての相談のようです」
「取引というと、この前提示した頑強の鋼鉄大楯の等価交換の件か、
もしくは石鹸の取引についてかもしれないな。
午後イチで商人ギルドに行ってくるか。エネドラも来るか?」
エネドラと一緒に商人ギルドに最後に行ったのはいつだろうか。
最近は行動を共にしてないから、たまにはギルドで二人で行くのも悪くない。
「それは是非ご一緒したいのですが、実はカラダンからも伝言がありまして。
なるべく早めにお会いして相談したいことがあるそうです」
「相談か、なるほど。では、午後イチでザビルに行ってくる。
帰ったら、一緒にクーラタルの商人ギルドに行こう」
俺の言葉にエネドラもニッコリと頷いてくれた。
「では、カラダンに先に伝えておきます」
わざわざ先に伝えるほど、重要度が高いのかな。
それにしても、カラダンから急ぎの用事か。
まさか、
散々、カラダンがフラグを立てまくっていた気もするが。
朝一でザビルに寄った時にカラダンとも会ったけど、相談があるようには見えなかったが。
レドリックからも、護衛部隊の迷宮探索の報告。
「トカラとフレイヤの迷宮での戦闘は順調です。
魔法を放つタイミングも特に問題ありませんし、
前衛を抜けてきたモンスターへの対処も上手くできています。
フレイヤもドロテアがいなくても、周りと上手くコミュニケーションを取れています。
このまま午後のドライブドラゴン戦で問題ないかを確認します」
「そうか、引き続き油断ないように確認を頼むぞ」
午後の33階層が無事終われば、習熟訓練は一区切りか。
その後は皆と通常の迷宮探索をこなしていくことになる。
33階層で暫く修練を積んでもらうことになるか。
ドロテアの魔道士ジョブ取得もあるし、暫くは33階層周回かもしれない。
・・・・・・
昼食を終えて、ザビルに移動した。
午後はザビル、クーラタル、ドブロー、帝都と事務処理周りを片づけるスケジュールなので、迷宮探索はお休みだ。
ザビルの本館二階のカラダンの部屋に向かう。
すると、また向かいの会議室のドアが開かれている。
これは
会議室を覗くとカラダンが座っていて、後ろにケリーが護衛として立っている。
この部屋で当たりのようだな。
そして、見知らぬ女性が立っている。
(鑑定)
ローザ(エマーロ族 ♀ 16才 奴隷)
探索者Lv8
あらら、エマーロ族の女性?
ちょっと、カラダン。まさかの嫁さんを俺に紹介?おいおい、急展開だな。
16才ってカラダンが23才だから、ちょっと年齢が離れている。
元の世界だとちょっとヤバイ年齢条件だが、こちらの世界ではNGではない組み合わせだ。
この世界でも珍しい緑色の髪でカラダンよりは少し小柄か。
不安げな表情をしているが、なかなか整った顔つきで、美人と可愛いを足して二で割った感じの女性のようだ。
やるじゃないか、カラダン。
ザビル拠点の責任者になり、死後解放にもなったし、イロイロと考えたのだろうか。
ニヤニヤしながらカラダンの表情を見つつ、横の席に座った。
カラダンは少し大きなため息を吐きながら、首を横に振っている。
ん?ちょっと雰囲気がおかしいか。
「今日は旦那様に面談してもらいたい奴隷がいます。
このローザとロベルトの姉弟二人です」
「新しい奴隷の面談?」
ん?もう一人いたのか。
姉っぽい女性の後ろに控えていたのか。
前の方にいたカラダンの嫁候補(?)しか見ていなかったよ。
(鑑定)
ロベルト(エマーロ族 ♂ 15才 奴隷)
探索者Lv5
こちらもエマーロ族だな。姉弟だから同種族は当たり前か。
姉と同じく緑色の髪に整った風貌。
肌の色が姉よりは少し黒っぽく精悍な感じだな。
それにしても二人とも探索者なのか、旅亭でも商人でもなく。
16才、15才という年齢を考えると、探索者のレベルは低くはないか。特別高くもないが。
「この二人は、本日、騎士団員の方に連れてこられて奴隷契約を行なったばかりです。
奴隷になった経緯は・・・・・・母親と三人で商人の護衛任務に就いていたところ、
盗賊集団に襲われ、護衛対象の商人と母親が死亡し、
任務失敗の違約金が払えずに奴隷落ちしたという経緯です。
お金は母親が管理していたらしく、母親が死んだ際に手持ちの資金をほぼ失ったそうです」
「そうか、それは大変な思いをしたな」
母親が亡くなったのは最近だろうから、カラダンの嫁という線はないか。
説明の冒頭で『騎士団員』って言ったか?犯罪奴隷ではなさそうだが。
嫁の線が全くない訳でもないだろうが、気軽に訊ける雰囲気ではないな。
姉弟二人が、カラダンの語る奴隷になった経緯を沈痛な面持ちで聞いているので。
慶事ではなく、むしろ悲惨な出来事だったのか。
それはそれとして、俺は何故呼ばれたのだろうか。
言い方がアレだが、奴隷の経緯とか二人のジョブとか割とありふれた感じな気がする。
レイモンドとモニカが奴隷落ちした理由も似たような話だったよな。
この世界に慣れ過ぎて、感覚がマヒしているのかもしれないが。
エマーロ族ということで何か変わった特技でも持っているのだろうか。
「希望を確認した限りでは、迷宮探索の・・・・・・特に調査するという点で熱心でして、
ただ、その方向性がタケダ家の利益になるのか判断できなかったので、
旦那様に面談していただこうと考えた次第です」
「そんなに判断に迷うことなのか?」
調査って?
「詳しくはローザの口から説明してもらいます。
ローザ、私に説明した内容を今一度旦那様に話して下さい」
「はい。エマーロ族のローザと申します。
亡くなった母と弟のロベルトとともに、各地の迷宮を巡っていました」
各地の迷宮巡り・・・・・・迷宮マニアってこと?
「私の母は迷宮を調査・研究する学者の真似事のようなことをしてました。
各地の迷宮を巡り、迷宮から出てくるモンスターの調査をしたり、
迷宮の中に入ってモンスターを討伐しながら、その特徴を記録したりしていました。
迷宮が何故突然出現して魔物を生み出し、村を、人を襲うのか、
その理由を知りたいのだと常々話しておりました」
「迷宮を調査する学者・・・・・・」
これはまた、変わり者というか・・・・・・でも、異世界から来た俺でも興味深い視点だな。
「母の影響を受けたせいもあって、私もその理由を知りたいと思ってました。
何故、魔物と人は戦わなければならないのか、それが私には不思議で仕方がありません。
迷宮はいつか貴族や迷宮探索者に討伐されると母から聞きました。
でも、討伐しても討伐しても迷宮は出現し続けると。
何故そのようになっているのか、この世界の
その理由を知りたいと思っています。
母はそれを知りたくて探索者になったと言っていました。
迷宮の謎を知りたくて、それに辿り着けないまま母は逝ってしまいました。
母は盗賊から私達を庇って亡くなり、もう二度と会えませんが
母の下で学び、育ててもらって私は幸せでした。
だから、自分は迷宮の謎を解き明かして、母の代わりに人々に伝えたいのです」
「・・・・・・」
彼女は目を少し赤くしながら、真剣な表情で俺に語りかけてきた。
家族三人とも探索者ジョブというのは、なんとも偏っているというか、筋金入りというか。
いせはれの原作では、迷宮はモンスターを生み出して人を誘ってエサにするとか言ってたっけ。
でも、ローザという娘が求めている解答というか真理は、もう少し深い所にあるのだろうな。
そして、それを追い求めるのを奴隷になっても諦められないということか。
「全てではないが、君がやりたいことは理解できたと思う。
それで、君はタケダ家にどのような貢献ができるのだろうか?」
「カラダン様からタケダ家に加わるには
自分達が貢献できることを示して行動することが必要だと伺いました。
私達は母に迷宮で鍛えられましたので、迷宮で戦うことができます。
他にも母から教えられた迷宮のモンスターやドロップ品の知識があります。
まだ探索したことのない階層は知識だけで戦闘経験がないものもありますが、
その知識と経験で迷宮探索のお役に立てると思っています」
知識か・・・・・・今どの程度の知識を持っているのか次第だな。
「君は書物を読むのは好きか?」
「はい。各地を巡って書物に触れる機会があれば、必ず読むようにしておりました」
それなら問題ないか。
「我が家のメンバーにも書物が好きな者がいるので、交流してみるか?
あとは図書館での調べ物をするのはどうだろうか?
もちろん費用や保証金はタケダ家側で出すつもりだ」
「それは願ってもないことですが、よろしいのでしょうか?」
彼女の言葉に頷いた。
アミル達鍛冶師の連中や元貴族のラファやヘルミーネ達と知識の共有や勉強会をするのも悪くないかもしれないな。
「それと、先程は迷宮の在り方・・・・・・真理に辿り着きたいというような事を言っていたが、
君が生きてるうちに辿り着けないまま、一生を終える可能性もあると思うぞ」
「はい。それは覚悟しております」
その場合は自分の子に受け継がせるとか考えてないだろうな。
ここでカラダン登場?・・・・・・いやいや先走り過ぎか。
「弟の・・・・・・ロベルトの方はローザと同じ考え方なのか?」
「いえ、自分は迷宮の真理にはあまり興味はありません。
姉や母を放っておけなかっただけです。
ただ迷宮で鍛えられていますので戦うことはできますし、
母と姉から教わった知識もありますので、迷宮探索に貢献できると思います」
今、説明の際に微妙に母と姉の口に出す順番を変えたのは意味があるのだろうか。
姉の方が母よりも暴走するとか?
それはともかく、当初はカラダンの嫁紹介かと思っていたが、あまりに重いというか真面目な話にビックリだな。
母親が亡くなったばかりだというのに、立ち直りつつあるように見えるのは気丈に振舞ってるだけなのだろうか?
それでも、タケダ家加入は決定で問題ないな。
「分かった。ローザ、ロベルト、君達二人をタケダ家は歓迎しよう。
仲間と共に迷宮探索を頑張ってくれ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
二人増えたな・・・・・・拠点はどこにすべきか、いやそれ以前に確認しておくことがあるな。
「今更だが、君達はエマーロ族だろう?
特定の拠点に留まって暮らすのは問題ないのか?」
「迷宮に通えれば特に問題はありません。ねぇ?ロベルト」
「はい。特に問題はありません」
まあ、拠点は複数あるから、たまに移動しても良いけどね。
「カラダン、二人の拠点はどうする?ザビルでも良いが、クーラタルという選択肢もあるが」
「その件で実はもう一つ報告がございます。
この者達が商人の護衛で訪れていたザビルの村なのですが、村の中に迷宮が出現しました」
はぁ?・・・・・・そんなことがあるのかよ。
「村に訪れる数日前に迷宮が出現したらしく、村も大混乱で怪我人や死者も出たようです。
それを聞きつけたのかは分かりませんが、盗賊集団も襲撃を仕掛けてきたようで、
更に被害が拡大したようです。
その村に救助に向かったザビルの騎士団に助けられたようですが、
この二人を連れてこられた騎士団員の方の話では、村はかなり酷いことになっており、
生き残った村人達の一部を当奴隷商館で引き受けることになるかもしれません。
この二人もその流れでこちらに来たことになります」
「そうだったのか」
だが、偶然にしては出来過ぎな気もするな。
迷宮の発生と盗賊の襲撃・・・・・・因果関係があると思うのは考えすぎか?
「それでは、二人はザビルじゃない方がよいか」
さすがに母親が死んだ村の迷宮を探索させるのは酷だし、ザビルから離れた方が良い気がする。
「もし、選べるのでしたらザビルの地に留まりたいと思います。
母の遺体も、三人で最後に訪れた迷宮の傍に埋めましたので」
「・・・・・・」
マジかよ。それはなかなかの覚悟だな。
「分かった。では、二人とも当面は探索者ジョブで活躍してもらうのが良いだろうか?」
「はい。私は探索者で研鑽を積みたいと思います」
まあ、探索者ジョブは迷宮探索と切っても切れない関係だからな。
「自分は探索者でも構いませんが、できれば神官になりたいと思います。
姉を見ていると危なっかしくて」
「ロベルト、旦那様の前でそんなことを言わなくても・・・・・・」
言ったことが拙いのであって、言った内容が拙い訳ではないのね。
やっぱり暴走姉なのか。
個人的にはパーティーの要の探索者は全体が俯瞰できる冷静な奴が良いのだけど。
知識があって暴走気味な奴は、パーティーを危険な目に遭わせるのではないだろうか。
ロベルトの方が探索者ジョブに向いてるような気もする。
マテウスとニケに舵取りしてもらうしかないか。
マチルダ母娘と言い、このローザと言い、トラブルメーカーとならないことを祈るばかりだ。
「では、後はマテウスの指示に従ってくれ」
「二人とも後でマテウスを紹介するので、今は自室で休んでいるように。
さきほど、場所は教えましたから分かりますね?」
カラダンの問いかけに頷き、二人は退出していった。
「あの二人は母親が亡くなって間もないのだろう?
あんな調子で大丈夫なのか?」
「亡くなったのは5日程前らしいです。盗賊達が襲撃してきたタイミングですね。
それから、怪我した村人の世話をしたり、騎士団との橋渡しをしたりしていたみたいです。
親の教えが良かったのか、かなりしっかりした姉弟のようです。
それでも母親が亡くなった悲しみから立ち直るには、まだ時間が必要でしょうが」
暴走姉であっても、迷宮が絡まないとしっかりしているのかね。
「ザビルに迷宮が出現したということは、このザビルの街もイロイロと騒がしくなるかもな。
ベイルの例からすると、スラム街や迷宮に盗賊が増えたり、
騎士団や迷宮探索者の活動が活発になったり、
奴隷や装備品の売買が活発になったりとかな」
「そうですね。迷宮が出現した村で怪我した者や家や畑を失うことになりそうな者達は
奴隷としてここに売られてくるかもしれません」
良くも悪くもザビルの街が活気づくのだろうな。
「また何か相談事があれば、伝言をくれ。暫くはザビルの対応を優先するように考えるので」
「はい。分かりました」
カラダンと別れて、クーラタルへ戻ることにした。
お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/2/15(日)の予定です。