領主の館から、ザビル拠点の本館に帰宅。
二階に上がると会議室のドアが開いており、中を覗くと新しい奴隷メンバー達の姿はいない。
もう、面談は終わったようだな。
「悪い、待たせたか」
「いえ、我々も先ほど、面談が終わったばかりですので」
では、お互いの状況を共有しないとな。
「先にエネドラ達の方から面談結果を教えてくれ」
「はい。まず、カラダンから紹介のあった五人の奴隷は全てクーラタル側で受け入れます。
現在のジョブは商人が二人と村人が三人ですが、
三人のうち一人は薬草採取士で、残りの二人は商人のジョブをやりたいそうです。
五人とも将来希望するジョブを確認しましたので、その上での対応です」
一気に五人増えるのか。
カラダンが新しく加わった者のリストを渡してきた。
■クーラタル所属予定メンバー
クルト(人間族 男 28才) :商人
シルビア(人間族 女 26才) :商人
アネット(人間族 女 23才) :村人
フローラ(人間族 女 22才) :村人
クララ(人間族 女 18才) :村人
人間族五人のうち、四人が商人のジョブになるのか。かなり偏っている気もするが。
まあ、後方支援メンバーだからありと言えばありか。村人のまま育成する必要もないし。
外部と取引、交渉ができる者が増え、少しでもエネドラの負担が減ってくれると良いのだが。
タケダ家全体でも薬草採取士のジョブに就いている者も多くなったし、生産職系のジョブばかりを増やしても仕方ないか。
「クルトは、ミモザとも相談してベイルの方に配置しようかと考えています。
今はビンスとリックが子供達の対応をしていて、子供達と上手くいってますが、
二人をベイルにずっと留め続けるのは勿体ないと考えています。
クルトと子供達の相性が問題なければ、
商人兼教師役をしながらミモザの補佐役にしたいと思っています」
「なるほど、確かにそれは良いかもしれない」
冒険者のジョブを持つ二人をずっとベイルに配置したままだったのは、俺も気になっていた。
「あと、村人ジョブを持つ者の中に、しっかりしたクララという者がいますので、
商人のジョブに就けた後、育成して奴隷商人にしようかと考えています」
「えっ?」
随分と思い切ったことをするな。
「年齢が18才で女性なのだが、奴隷商人にさせて問題ないのか?」
「はい。彼女なら大丈夫でしょう」
エネドラが太鼓判を押すなら、構わないか。
18才で奴隷商人となると、ちょっと悪目立ちしそうだが。
まあ、アルマーも22才で奴隷商人だったから、あり得ないことではないのか。
「クララはアルマーの商館から契約したのだよな。
奴隷商人として登録するのはザビルの商人ギルドにするのか?」
「はい、それが良いと考えております。
ザビルの商人ギルドの方が融通利きそうですし、ターヘラからも遠いですから。
ただ、所属はエネドラ様のいるクーラタルの拠点にする予定です」
クーラタル拠点にも奴隷商人が一人はいた方が便利か。
今のところ、ザビル拠点以外で奴隷商館を営む計画はないけど。
「クーラタルの人員が増えて余力ができましたら、新商品の開発に挑みたいと考えます。
前に旦那様が検討したいとおっしゃっていた商品について、教えていただければと思います」
「ああ、無理のない範囲で頼むぞ」
前にシャンプーや保湿クリームの商品開発しようと頭出しだけして、終わっていた件か。
そのために五人も補充したということか?
ザビル側に負けじと、クーラタル側も人員を厚くしていこうということかも。
エネドラは前から新商品の開発に興味があったみたいだし、好きにやらせるか。
新メンバーの四人とも女性だから、化粧品モドキの開発には合っているかもしれない。
「ザビル側の方は戦闘奴隷を2名追加しました。
前に申し上げていたローザ達のパーティーと一緒に護衛していたメンバーの生き残りです。
既にマテウス達の下で訓練を始めております。
こちらの二人はクーラタルの五人と同様、タケダ家のメンバーとして受け入れました」
「そうか、ザビルの方も戦闘をこなせる者が増えてきたな」
カラダンから渡されたザビル側の方のリストに目を通す。
■ザビル所属予定メンバー
ニクラス(人間族 男 21才) :剣士
ゾフィ(狼人族 ♀ 20才) :巫女
人間族の剣士と狼人族の巫女か。
ザビルの治療職ジョブがヒューゴと合わせて2名になった。
これで未成年のレベッカを除いても、ザビルの戦闘奴隷は8名か。
6名を迷宮に派遣しても2名は護衛として残せる。
この二人をレベリングして育成がある程度進めば、クーラタルから派遣している二人を引き上げられるだろうか。
いや、ザビルの方は販売奴隷達を迷宮に入れて訓練させるというのもあるのだよなぁ。
落ち着いたら、マテウスとニケに相談した方が良いかもしれない。
彼らも新しいジョブに慣れてもらう必要があるし、パーティー内での連携確認も必要だ。
まずは焦らずにザビルの運用を安定させることが肝要か。
先ほど、ザビルの新迷宮にパーティーを派遣する依頼も受けたばかりだ。
レドリックとも相談して、適切な人員配置をしなければ。
「旦那様、私はこの後クーラタルに戻り、五人の受入準備に入ります。
今日は迷宮組の皆さんがいますので、家具類の移動や力仕事を手伝ってもらえますから」
「そうだな。人が増えると初めのうちは大変だが、よろしく頼む」
いずれはエネドラが楽になるための投資だと思いたい。
「では、領主の館で受けた依頼の話だが・・・・・・」
ザビルで出現した迷宮への対応で依頼された話について、概要を説明した。
「武器・防具とスキル融合装備品、生薬の調達は、アミルとチクルスに相談してみる。
パーティーの迷宮派遣については、レドリックと相談するつもりだ。
レドリックは午後から迷宮に入るので、まずはレドリックの相談が先だな」
「旦那様、ザビルの戦闘奴隷が揃ってきましたので、
クーラタルから護衛部隊を借りるのはもう止めようか思います。
そろそろ、ザビル側だけで運営できるようになっていると思いますので」
確かにザビル側も陣容が整ってきた気がする。
「分かった。では、カラダンの方から今来ているマヤとケリーに伝えてもらえるか?」
「はい。承知しました。
二人に伝えて、午後からはクーラタルに戻ってもらいます」
これで、迷宮で使える手札が増えたか。
「そんなところかな。この後、俺とエネドラはクーラタルに引き揚げる。
だが、その前に五人の奴隷契約の所有者変更をしておくか。
「はい。よろしくお願いします」
カラダンは会議室を出て、五人を呼びに向かった。
彼女達を連れて戻ってきて、所有者を俺に変更してエネドラを死後相続先に設定。
初対面だったが、自己紹介は軽めで終了。
そのうち、クーラタルで頻繁に顔を合わせるから大丈夫だろう。
会議室を出て、二人でクーラタルへ移動した。
・・・・・・
まずはレドリックを探しに修練場へ向かう。
彼の模擬戦が終わるのを待ち、休憩に入ったところで話しかけた。
ザビルで相談された迷宮派遣の依頼について、ざっと説明。
クーラタルからのザビルへのメンバー派遣も、本日の午前中で対応終了したことも伝えた。
「迷宮に派遣するメンバーだが、あまり表に出せないメンバーは除外しようかと思っている。
例えば、元他国の貴族であるラファやヘルミーネは止めた方が良い気がする」
「そうですね。そうなると、パーティーを組める者はレイモンド固定になりますね。
新しい迷宮に挑むなら、探索者ジョブの者は固定にした方が楽かもしれません」
確かにその通りだ。
クーラタルと違って地図もないので、パーティーを率いる者を日々変更していたら引継が大変なことになる。
「魔法使いはパーティーに加えるのですか?」
「そうだな。入れた方が良いと思っている。
ただ、トカラは表に出したくないし、ラファも先ほど言った通りなので、
ドロテア固定になるだろう。
ラファを治癒役としても出せないから、フラウスも固定だ」
意外と自由度がないな。既に三人が決まってしまった。
レイモンドは冒険者ジョブを取得しているから探索者Lv50、ドロテアは魔法使いLv50、フラウスは斎王Lv37なので急いでレベルを上げる必要はないか。
フラウスだけ午後にパワーレベリングして、もう少し上げてしまうか。
「後衛メンバー三人は固定だが、前衛メンバーは自由度が高いな。
レドリック、モニカ、ミラ、マヤ、双子、フレイヤはローテーション可能か」
「ミラは鍛冶師の仕事もありますし、一日中迷宮には入れられないので、
ザビルへの派遣メンバーに入れない方が良いかもしれません」
そうだった。
彼の指摘通りだ。さすが、護衛部隊の編成をいつも考えているだけはあるな。
「私とモニカ、マヤとフレイヤ、ケリーとマリーで三人二組作って一日毎に交代にしますか」
「そうだな。一日おきに変更して問題があるようなら、またその時考えよう」
レドリックがずっとザビル迷宮に張り付くというのも困る。
今、彼が挙げたペアは戦闘スタイルが似ているから、日々入れ替わる三人一組と残りの固定メンバー三人を加えても安定したパーティーになりそうだ。
それでもパーティー内のお目付け役は必要だよな。
レドリックがいる時は彼が統括して、彼がいない場合にはレイモンドとモニカの二人で対応してもらうか。
その三人とフラウスを加えた四人で若手を統率して、迷宮探索を安全にこなしてもらいたい。
フラウスはリーダーシップという意味では少し不足を感じるが、迷宮での戦いは安定している。
彼女にはラファやヘルミーネから離れて、若手を統率できるように成長してもらいたい。
「クーラタルに残るメンバーのラファ、ヘルミーネ、トカラ、ミラの扱いはどうするか・・・・・・」
「ご主人様、その四人とザビル迷宮に行かない待機組三人で、
迷宮部隊と邸宅を警護する組に分けてはいかがでしょうか?」
迷宮に六人未満のパーティーを作って派遣するという意味だろうか?
「クーラタルの低階層に三、四人のパーティーで挑ませるということか?」
「それでも構わないと思いますが、
ザビル側の戦闘メンバーと組んで1パーティー作るのも良いかもしれません。
直ぐには無理でしょうが、ザビル側が落ち着いてきたら考えてみてはいかがでしょうか」
なるほど、確かにそれはアリかもな。
「将来的にはザビル側の戦闘メンバーと交流して、
タケダ家としての底上げや連携を強化するのが望ましいかと」
「そうだな。つい最近、ザビル側に戦闘メンバーが2名増えて合計8名となった。
まだまだザビル側は連携の確認を始めたばかりだし、
訓練も足りてないと思うので直ぐには無理だろうが、いずれは考えたいな」
マテウスやニケもクーラタルのメンバーと交流して刺激を受けてほしい。
「ザビルの方が落ち着くまでは、今しばらくかかると思う。
交流の件は今晩の会議でカラダンにも相談して、いずれ考えよう。
ザビルの新迷宮への護衛部隊の派遣は、それなりの期間に渡る対応になるだろう。
その期間中、三、四人のパーティーメンバーで低階層の探索をするのか、
ここで訓練に励むのかは、ヘルミーネの意見も交えて二人で話し合ってもらえるか?」
「はい。承知いたしました」
それはそれとして、もう一つ考えておくことがあるな。
「この前レドリックが模擬戦をしたザビルの騎士団長を覚えているか?
あの男爵がザビルの迷宮探索のメンバーを連れてきて、模擬戦をやらせろとか言ってるんだ」
「それはまた・・・・・・」
レドリックも思い出したか。
「今晩、また領主の館に行くことになるのだが、誰を連れていこうかなと思って。
後衛メンバーだとフラウスぐらいか。
前衛メンバーなら、レドリック以外だと誰にしようか?」
「ケリーかマリーのどちらか、モニカかマヤぐらいですかね?」
そんなところだよなぁ。
「レドリックは今晩は遠慮してくれ。また騎士団長に絡まれても困るのでな。
フラウス、ケリー、モニカとマヤの四人を連れていくことにする」
「四人とも貴族対応は難しいと思いますが、大丈夫でしょうか?」
「まあ、会食する訳でもないし、模擬戦するだけだから大丈夫だろう。
その四人が騎士団長や団員相手にどこまで通用するのか見てみたい」
俺のノリもリカルド騎士団長に近づいてきた気がするな。
まあ、挨拶程度で終わるかもしれないが。そんな訳ないか。
「分かりました。昼食の際に伝えておきます」
「ああ、頼む。ケリーとマヤも昼食には戻ってくるだろう」
レドリックと別れて、自室に戻ることにした。もうすぐ昼食の時間だ。
・・・・・・
昼食を終えて、アミルとチクルスにザビルの対応の件を伝えた。
既に二人はエネドラから簡単に話を聞いていたようで、対応については快諾してくれた。
ただ、正式決定は今晩の契約締結がされた後になるので、作業自体は未着手だ。
作業と言っても、倉庫から在庫を引っ張り出して納品物分の数量を更新するだけなのだが。
武器、防具、生薬は在庫で充分対応できることを確認した。
空きスロット付き装備品とモンスターカードの在庫を調査して、要求されているスキル融合装備品が用意できそうなことも確認した。
夕方までの中途半端に空いた時間は、魔物部屋を殲滅してパワーレベリングを行う。
ターレ迷宮の42階層から1階層ずつ上げていき、47階層までの魔物部屋を殲滅した。
人数を絞って、フラウスを通常部隊、ニクラスとゾフィを小荷駄隊、マテウスを輜重隊に入れてパワーレベリングを実施。
フラウスは斎王Lv45、ニクラスは剣士Lv32、ゾフィは巫女Lv31、マテウスは剣聖Lv44まで上げた。
ニクラスは剣士Lv30まで上げても、剣匠のジョブが取得できなかったので、マテウスの許可を得てベイルの3階層のボス部屋に連れていった。
初めはおっかなビックリだったが、ボスのコボルトケンプファーをエストックを使って、左右の腕で倒させて無事に剣匠のジョブを取得した。
俺がコボルトケンプファーをスッ転ばせて俯せにして両脚を掴み、エストックで二回タコ殴りにして討伐させただけだ。
ジョブ取得が終わったニクラスをザビルまで送り、クララをパーティーに加えてベイルの1階層の魔物部屋を殲滅し、彼女の村人ジョブをLv5に上げた。
他の者は既にLv5を超えていたので、クララだけのレベリングで問題なし。
村人ジョブのフローラにニードルウッドのレアドロップであるリーフを拾わせて、薬草採取士のジョブを取得させた。
クルト、アネット、シルビア、クララも魔物部屋に連れていき、リーフを拾わせた。
全員に薬草採取士のジョブ取得は必要ないが、せっかくの機会だったので。
これで、後はターレ迷宮探索時のパワーレベリングで徐々にレベル上げすればよい。
クララは商人のジョブを取得したいとエネドラが言っていたので、探索者ギルドで売買の経験でもさせればよいだろう。
まだ、出歩けるだけの服がないので、エネドラが彼女達と買物に行ってからか。
その辺りはエネドラに任せることにした。
これで時間切れか。
そろそろ、護衛部隊の四人を連れてザビルに移動しなければ。
・・・・・・
修練場に向かうと、ヘルミーネのそばにフラウス、ケリー、モニカ、マヤの四人が集まっていた。
こちらに気付いて五人が近づいてくる。
「レドリックに聞いてるかもしれないが、フラウス、ケリー、モニカ、マヤの四人は
この後、俺と一緒にザビルの方に行ってもらうことになっている」
「レドリックから話を聞いて、先ほどまで四人と模擬戦をしていました」
ヘルミーネが四人の面倒を見てくれていたのか。
まあ、全員が模擬戦するとも限らないのだが。
「では、四人を借りるぞ。皆、準備はできているか?」
四人とも頷いているので大丈夫か。
模擬戦に使う武器として、普段使っている木刀等を念のためアイテムボックスに収納した。
防具は訓練の時にも通常装備を身に着けているので今のままで問題ない。
四人を連れて、ザビルの拠点に移動した。
まずは二階に上がって、契約書の状況を確認してからだな。
カラダンの部屋に行き、ドアをノック。
「お待ちしておりました。既に契約書は領主様の使いの者から受け取りました。
中で確認をお願いします」
「分かった。ありがとう」
五人で中に入り、俺はカラダンから渡された契約書を確認。
契約書は二通で2セット。こちらと領主側で1セットずつ署名して保管するのだろう。
一通は武器、防具、生薬の納品に関する契約で10日間の納期が記載されているが、調達する品、金額共に特に問題はなさそうだ。
もう一通はスキル融合装備品に関する契約。
こちらも10日間の納期が記載されていて、16万ナールの金と素材、モンスターカードの一覧が添付されている。
領主の執務室で見た通りなので、こちらも問題ない。
カラダンからペンを借りて、四通の契約書に署名した。
「契約書は問題なかったので、これから四人を連れて領主の館に行ってくる」
「はい。お気を付けて」
そうだな。暴走させないように気を付けないと。
誰が暴走するのかによって、止められる場合と止められない場合があると思うが。
カラダンの執務室を出て、五人で領主の館に向かった。
・・・・・・
領主の館に着き、詰所で騎士団に用向きを伝えた。
さほど待つことなく、案内の騎士団員に付いて五人で歩く・・・・・・が、これはまた直接執務室へ出向くパターンだな。
五人ともボディチェックも受けずに向かっている。
まあ、帯剣している者はいないから問題なしと見たのだろうか。
午前中にも来た執務室に到着し、ドアをノックした騎士団員が誰何を受けて、俺達を案内してきた旨の返事をすると室内に通された。
中には、子爵、男爵、士爵のお三方がいらっしゃる。
特に男爵は獲物が来たとばかりに品定めをしていたが、途中からポカーンとした顔になった。
「おい、女と子供ばかりじゃないか?」
「リカルド、いい加減にしろ。契約が先だ」
そうそう、子爵様、
「契約書を確認し、問題ありませんでしたので、署名してお持ちしました」
「確認いたします」
エミリオ士爵が俺が持ってきた契約書を受け取った。
問題ないのが確認できたのか、ザビル子爵にそのまま渡した。
一瞥したザビル子爵も確認が終わったのか、そのまま署名をしているようだ。
「これで契約は締結された。納品の方は頼むぞ。できるだけ早くな」
「鋭意、努力いたします。武器、防具、生薬は二日後の夕方ぐらいまでには納品いたします」
俺の回答に満足したのか、ザビル子爵は頷いている。
「こちらが、タケダ殿の契約書となりますので確認して下さい。
素材とモンスターカードについては、二日後の装備品等の納品までに準備しておきます」
「はい。ありがとうございます」
受け取った書類にザビル子爵の署名があるのを確認して仕舞った。
「スキル融合装備品は、用意できたものから逐次お持ちいたしましょうか?」
「ああ、それで構わぬ」
「激情のダマスカス鋼剣を早めに頼むぞ」
リカルド騎士団長、そればっかりだな。
「それよりも、お前は、その女と子供で迷宮討伐をするとでも言うつもりか?」
「・・・・・・」
騎士団長に指差されたケリーは小首を傾げている。
「おじさん、強い?」
「!・・・・・・お、おじ・・・・・・?」
ぶっ、ケリー、なんちゅう発言を。
お前はア●レちゃんかよ?あちらは『強い』ではなく、『つおい』だったか?
確かに15才のケリーからしたら、42才の騎士団長は立派に『おじさん』だが、事実だとしても言い方があるだろう?
ザビル子爵とエミリオ士爵が肩を震わせている・・・・・・笑いを嚙み殺しているな。
「ああ、
「この前、模擬戦をした男なら、レドリックという名前です」
「レドリックとかいう奴には負けたけどな」
騎士団長のこめかみがピクピクしているように見えますが。
「なんだ、レドリックより弱いのか~」
お、お前なぁ。あからさまにガッカリした顔でなんちゅう暴言を。
「このオチビさんは、レドリックとやらよりも強いのか?」
「・・・・・・」
俺に会話を振らないでくれという電波を出していたのに、何故質問してくるのだ。解せぬ。
「レドリックには10回に1回ぐらいしか勝てない」
「ほおぅ~そうかい」
ケリーって、レドリックに勝てることもあるんだ。
まあ、確かに朝練の模擬戦ではレドリックの鎧に木刀が当たったのを見たことはあるな。
「じゃあ、レドリックって奴よりも弱い者同士、ちょっと場所を変えようか。付いてこい」
「おい、リカルド、ほどほどにしておけよ」
でも、ザビル子爵は止めない訳ね。じゃあ、こちらも止めないでおこう。
エミリオ士爵も興味深そうな表情で、成り行きを見ている。
唯一止めてくれそうな人のはずなのに。
今の騎士団長を止めるのは至難の業な気もするが。
ターヘラの剣術指南所でニムラルのオッサンに鍛えられ、日々研鑽を積んできたタケダ家期待の若手の実力を思い知ってもらうか。
・・・・・・ケリー、本当に大丈夫だよね?
お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/2/27(金)の予定です。