異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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064.サプライズ(その1)

 武闘会の翌日は迷宮三昧。

 

 45階層以降の階層案内は日数を空けることにしたので、今日は入口の兄ちゃんに挨拶だけして、入口から49階層の小部屋に直接移動した。

 まずは階層攻略開始前のブリーフィングから。

 

 

「49階層の新規モンスターはボトルマーメイドで、ボスはレイジマーメイドだ。

 ボトルマーメイドは既に戦ったことがあると思うが、

 頭の先が尖がった上半身が人間で下半身が魚のモンスターだ。

 頭の先でつついて攻撃してくることがあるから注意してくれ。

 ボトルマーメイド、ブラックダイヤツナ、パットバット、ラフシュラブの順に多く出現する。

 この階層ではほとんどが飛行型なので、接敵が早い。

 ドロップ品は丹銅だ。ボスドロップの情報は把握していない。

 戦闘のフォーメーションと雷魔法を使うことは今までと変わらない。

 アミルの方から何か補足はあるか?」

「ボトルマーメイドは水魔法を使ってきますので、魔法をキャンセルさせることが必要です」

「俺とオリビア、アミルの役割だな。注意していこう」

 全員が頷いた。

 

 ドロップ品が丹銅なら、オネスタさん案件だろうか。

 黄銅は調理器具とかに使うとか言っていた記憶がある。

 エネドラに言えば、オネスタさんと交渉してもらえるかもしれない。

 

 48階層と同じく、状態異常付与ができる槍をもった俺達にはカモにできる相手だ。

 頭突きよりも槍の方がリーチがあるので、こちらの攻撃が先に届いて有利に進められる。

 

 魔法攻撃は要注意だが、四属性耐性のスキルを付与したダマスカス鋼の額金を装備している。

 それに加えて、先日、皆の鎧には魔法ダメージ削減のスキルも付与したので、魔法ダメージ対策もかなり準備できているはずだ。

 

 49階層の探索を開始したが、予想通り危険を全く感じることなく順調に進んだ。

 たまに水魔法を喰らうことがあっても、魔法ダメージはほとんど気にならず、時々全体手当を施せば問題ない。

 

 大量の丹銅が蓄積されていく。

 

 クーラタルの新居も増築工事で部屋がドンドン増えることになっている。

 調理器具はさすがに、もうこれ以上は必要ないだろう。

 出来れば、オネスタさんとエネドラの交渉で家具類に化けてくれると有難い。

 

 

 昼食を挟んで午後もボトルマーメイドとブラックダイヤツナを狩りまくったが、中間部屋に辿り着くこともなく、その日の探索は終了した。

 

・・・・・・

 

 翌日の迷宮探索も水棲系モンスターを中心にひたすら狩りまくる。

 午前中の早いタイミングで中間部屋に到達して、そのまま探索を続行。

 昼食を挟み、さらに午後も探索を続け、ようやく魔物部屋を発見。

 せっかく見つけたので、殲滅させてもらった。

 

 探索自体は非常に順調だったが、その日のうちにボス部屋は発見できずに翌日以降に持ち越すことになった。

 ただ、午後に人魚のモンスターカードがドロップした。水魔法耐性のスキル融合ができる。

 先日は海水魚のモンスターカードだったので、響きは同じだが有効なカードでホッと一息。

 

 今日はこの後、ザビルで納品があるので少し早めに切り上げることにした。

 

 一日の探索の終わりに迷宮の入り口に移動して、騎士団の兄ちゃんの所へ行く。

 

・・・・・・

 

「あっ、今日はこんな時間に出てきたのですね」

「そうだな。たまたま46階層のボス討伐がこのタイミングだったからな」

 本当は49階層を攻略中だが、報告のタイミングを調整しているので、今日は探索の終わりに報告させてもらう。

 

 46階層に案内して、規定の銀貨を受領。

 

「次の階層の到達は日数がかかると思う。やはりモンスターは徐々に手強くなっているので」

「そうですか。あまり無理をしないで下さいね」

 心配してもらっているのに悪いが、迷宮討伐目前だ。

 

 このターレ迷宮が討伐されたら、この兄ちゃんはどうなるのだろうか。

 別に騎士団員としての職を失う訳ではないから、別の迷宮に配置転換になるのかも。

 でも、この迷宮の入口では、この騎士団の兄ちゃんぐらいしか見てないので、迷宮が討伐された暁には俺達ではなく、この兄ちゃんがきっと村人達から感謝されるのだろう。

 俺達は表舞台に出る必要はない。

 その分、別の報酬(威霊仙)を期待したいところだ。

 

 兄ちゃんが入口に戻るのを確認して、クーラタルの自宅に戻ることにした。

・・・・・・

 

 自宅に戻り、自室で着替えて二階の作業室に向かった。ザビル子爵への納品準備だ。

 ミラは作業室で防具生成していた。アミルとチクルスも後から合流してきた。

 倉庫からザビルに納品する武器と防具、生薬を取り出して俺のアイテムボックスへ収納。

 

 激情のダマスカス鋼剣はアミルに昨晩、スキル融合してもらったので忘れずに仕舞った。

 

 倉庫から取り出し分については、アミルとチクルスで在庫管理簿に反映してもらう。

 

「アミル、ミラ、この後に少し時間が取れるか?」

「あ、はい。大丈夫ですけど。ミラちゃんも大丈夫かな?」

「はい。大丈夫ですけど、なんでしょうか?」

 この後、ちょっと遠出したかったりする。

 

 チクルスはエネドラの手伝いがあるらしく一階に降りていった。

 まあ、彼女はザビルに手伝いに行って、一度見ているから構わないだろう。

 

「じゃあ、これからちょっとザビルに行くので外出する準備をして、玄関に来てくれ」

「はい。分かりました」

 アミルは目的を察したようだが、ミラは分からないようでポカンとしている。

 

 ちぇっ、アミルも驚かしてやろうかと思ったのだが、バレてしまったのなら仕方ない。

 

・・・・・・

 

 外出の準備を終えて、アミルとミラが玄関にやってきた。

 

「じゃあ、移動しようか」

 

 拠点移動のスキルを使って、三人でザビル拠点の本館の玄関まで移動した。

 

「ここがザビルなのですか?全然、実感が湧きませんけど」

「まあ、外に出てみれば雰囲気が少し違うのが分かると思うぞ」

 二人を促しながらドアを開けて外に出た。

 

「どうだ?ちょっと空気が違う感じがしないか?」

「そうですね。確かに違うと思いますけど、これはなんなのでしょうか?」

 クーラタルに比べれば、空気が湿っていると言って通じるのだろうか。

 

 内陸部にあるクーラタルと違い、ザビルは海岸線に近い。

 クーラタル側から見て、ザビルの先にはペルマスクという島がある。

 ザビルの街から海が見える訳ではないが、近くから見える山を越えると海岸があるはずだから、クーラタルと比べると空気が湿っていると感じるのだ。

 

「クーラタルの方が乾燥している感じがしないか?」

「そうですね。そうかもしれません」

 ミラはキョロキョロしながら、周りを見回している。

 

 拠点の敷地内を見ても、何も分からないと思うが。

 

「じゃあ、防具屋に行こうか」

「えっ?ご主人様、領主様の館に行くのではないのですか?」

 ああ、別の目的だと勘違いさせてしまったのか。

 

「いや、二人を連れてきたのは納品に付き合ってもらうためではないぞ」

「そうだったのですか。よく分かりませんが、お供します」

 良かった。俺の意図は悟られていなかったようだ。

 

 これで少しは驚いてもらえるだろう。

 

 本館の出口の傍にある門を出て、右に曲がって通りに沿って歩く。

 

「なんか、クーラタルの家がある街みたいですね?」

「そうだな。街の中心部よりは少し外れた場所に拠点を構えたからな」

 広い土地の空き家が他になかったからなぁ。

 

 同じ敷地内に防具屋もあるので、大して歩かずにタケダ家が経営する店に辿り着いた。

 夕方までには時間があるが、外から見た限りでは客足はそれ程多くはなさそうだ。

 

「ここが、タケダ家が営んでいる防具屋だ」

「こう見ると、普通な感じですね。ご主人様の店にしては普通な感じで驚きました」

 アミルは俺の事をなんだと思っているのだろうか?『普通』って二度言ったし。

 

 外観からして奇天烈な防具屋を出店したとでも思っていたのだろうか?

 いくら俺でも、そんな変なことはしないぞ。

 そんなことで驚かせようとも思ってないし。

 というか、俺は普通の常識人のつもりだ。

 

 

「まあ、まずは店の中に入ろう」

「はい」

 二人を促して、入口から店の中に入った。

 

 俺達の姿を見かけてサライとティナがこちらに視線を向けてきた。

 サライは接客中で、ティナは俺達三人をチラチラ見ているだけで近づいてこない。

 意外に人見知りなのだろうか。見知らぬ人に接客できるのだから、それはないか。

 俺達が客じゃないから遠慮しているだけかもしれない。

 

「店の中も普通の防具屋ですね?」

「そりゃそうだろう」

 『普通じゃない』のを期待されても困るぞ。

 

「こっちに来てくれ」

「あ、はい」

 客がいない場所で、説明し易い場所に二人を誘導。

 

「この竜革のジャケットやダマスカス鋼の額金は二人が作ったものだぞ。

 ほら、ここにタケダ菱が刻印されているだろう?」

「えっ、あっ、本当だ。これはミラちゃんが作ったものじゃないかな?」

「あれっ、本当だ」

 あれを見て自分が作ったものか、ミラが作ったものなのか分かるのか。なんかすげぇな。

 

 当然のことながら、俺には全く分からない。

 

「この前、ザビルの騎士団とモニカ達が領主の館で模擬戦やったのだけど、

 そこにいた騎士団員の何人かが、グローブや額金にタケダ菱があるのを使ってるを見かけたぞ」

「へぇ~、そうなのですか。ご主人様、なんか不思議な気分ですね」

「あ、あたしも鍛冶師になったんだなって実感が湧きました。なんか、とても嬉しいです」

 そうだろう、そうだろう。俺もこの防具屋に来た時に似たようなことを思ったのだから。

 

 二人が防具を生成する際に工夫した点を振り返って、楽しそうに話をしているのだが、俺はサッパリ話についていけず。

 二人が喜んでくれているから、それで構わないのだけど。

 

 接客が終わったサライがこちらに近づいてきた。後ろにティナもいる。

 

「サライ、店は繁盛しているようだな」

「はい。昔の店よりは、お客様がかなり増えたと思います」

 カラダンからは客足も売上も順調だと会議で報告を受けている。

 

「それで、この二人がタケダ家で武器や防具を生成している鍛冶師達だ」

「アミルと言います。よろしくお願いします」

「ミ、ミラです。まだ新米ですが、よろしくお願いします」

 サライは少し驚いたようだが、ニッコリと微笑んで二人と挨拶を交わした。

 

 ティナも一緒にお辞儀をしている。

 

「自分達が作ったものが、店で売られているのは不思議な気分なのですけど。

 でも・・・・・・とっても幸せな感じがします。

 ここに刻印されている菱形四つある防具が私達が作ったものです。

 それらの防具はお客様の評判はどうですか?」

「そうですね。竜革のグローブやダマスカス鋼の額金は、昔の店では扱ってなかったので

 珍しさと防具の性能の良さから、凄くよく売れています。

 買っていったお客様から文句が出たりはしていませんが、

 防具の本当の評判が分かるのは、もっと先かもしれません」

 さすがにまだ売り出したばかりだから、評価が定まるには時間がかかるのだろう。

 

 それにしても、グローブや額金の良し悪しって俺はあまり分からないのだよなぁ。

 防具は装備品の不思議機能でピッタリフィットしてくれるし。

 

 武器のように幅広の剣とか、長い剣先とかであれば、戦い方や使い勝手に直結するのだけど。

 でもグローブだと、掌をすっぽり包み込むタイプと所謂オープンフィンガーグローブみたいなタイプでは剣の握り具合が違うか。

 まあ、どちらでも問題なく使いこなせるけど。

 

 楽しそうに四人でおしゃべりしていると、こちらも幸せな気持ちになっていくな。

 話題の中心が防具というのがアレだが。

 

 暫くすると新しい客が入店してきたので、サライとティナは接客のために戻っていった。

 

「ご主人様、今日はザビルに連れてきていただいて、ありがとうございました」

「ありがとうございました」

「いや、この店がオープンした直後に俺も来たのだけど、

 タケダ菱が入った防具が売られているのを見て、すごく嬉しくなってしまってさ。

 だから、二人を連れてきて感想を聞いてみたかっただけなんだ。

 喜んでくれて、俺も嬉しいよ」

 二人の満面の笑みが見られただけでも連れてきて正解だったと思える。

 

 更にパーティー単位と思われる客が入店したので、サライ達に会釈して店を出ることにした。

 

「外部の者が出入りするので、タケダ家の拠点の敷地内と言っても注意が必要だ。

 今日は俺が一緒だから問題ないけど、アミルもミラも護衛なしでここに来るのはダメだぞ」

「えっ、そうだったのですね。そんなに危険だとは思っていませんでした。

 気を付けるようにします」

 ミラも少し緊張した面持ちになった。

 

「まあ、念には念を入れているだけだが、用心に越したことはない」

「はい。分かりました」

「・・・・・・分かりました」

 ザビルも新しく迷宮が出現したので、治安が悪くなっていく可能性もある。

 

「まあ、俺でもマヤとかでも一緒に来るのなら大丈夫だろう。

 サライやティナから、防具に対する客の反応が聞きたくなったら、

 また来てみたらどうだろう」

「はい、分かりました。用心しながら来るようにします」

 ミラも頷いているから、大丈夫かな。

 

 店の裏を回り、敷地の中を横切って、二人と本館の玄関に戻った。

 

「じゃあ、俺はカラダンと一緒に納品に行ってくる。忙しいのに悪かったな」

「いえ、ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 二人が拠点間移動のスキルでクーラタルに戻るをの見届けて二階に上がり、カラダンのいる部屋へと向かった。

 

・・・・・・

 

 目の前には、ザビル子爵、リカルド男爵、エミリオ士爵の三人の姿が見える。

 三人の傍には数人の文官とユリア士爵までいる。

 ここにいるのが、ザビル子爵領を統括する主要メンバーなのだろうか。

 

 装備品等の納品のためにカラダンと二人で訪れただけなのに、なんだか大仰な感じだ。

 さすがに執務室とは異なる別室に通されたのだが、納品のための事務的な部屋なのに高位の貴族がずらっといて、とっても不自然な感じだ。

 事務方に任せればよいのにね。

 

 

「武器、防具の納品物を出しますね」

「確認いたしますので、このテーブルの上にお願いします」

 アイテムボックスから装備品を次々と取り出し、頑丈なテーブルの上に置いていく。

 

 文官の者が手分けして検品を実施するようだ。

 

 ダマスカス鋼の剣5、エストック5、ダマスカス鋼の槍5

 ダマスカス鋼のプレートメイル2、ダマスカス鋼の額金15、竜革のジャケット3

 竜革のグローブ10、竜革の靴10

 

 全て、クーラタルの倉庫から持ってきたものだ。

 空きスロットが存在するものは、ほとんどない。

 

「続いて、こちらが生薬です。

 滋養丸300個、強壮丸150個、毒消し丸200個、抗麻痺丸100個、万能丸100個

 となります」

「確認いたします」

 装備品の担当とは別の文官の者が、生薬の方も手際良く確認していく。

 

 担当の文官が、用意された箱の中へ確認が終わった生薬を次々に収納している。

 騎士団員はともかく、事務方の者は優秀そうだ。

 

 

「タケダ様、こちらでスキル融合装備品と交換になる素材の受け取りをお願いします」

「承知しました」

 武器商人のジョブの者がアイテムボックスから取り出して、テーブルの上に並べ始めた。

 

 こちらも俺がアイテムボックスを開けて、素材を数えながら放り込む。

 

 :

 :

 :

 

「ダマスカス鋼100個、鋼鉄150個、竜革50枚、革200枚、数に問題ありません」

「確認、ありがとうございます」

 貴族に監視されて作業しているみたいで、気持ちが悪いな。

 

「タケダ様、こちらがモンスターカードとなっています。

 紙の中に鑑定した際のメモが入っておりますので、落とさないように注意して下さい」

「了解しました」

 文官から渡された封筒っぽい紙の束を受け取った。

 

 この世界にも封筒っぽい紙が存在するのだな。

 手紙を入れて寄越す時に厚ぼったい紙を見たことあるけど、こちらはかなり薄い。

 

 中身を取り出して、メモを確認しながら鑑定スキルを使って、入っているモンスターカードと慎重に突合する。

 ギルド神殿を通した確認ではないから、不備があってもこの場で指摘することはできない。

 幸いなことにメモとの突合で不備は見つからなかった。

 

「コボルト28枚他、合計66枚、確かに受領しました」

「確認、ありがとうございます」

 これで、こちらが受け取れるものは終了か。

 

「納品していただいた装備品及び生薬に問題はございませんでした。

 こちらが代金の53万3000ナールとなります。お確かめを」

 テーブルの上に並んだ金貨53枚と銀貨30枚を確認。

 

 10枚毎に積んであるので、確認は直ぐにできる。

 

「問題ありません」

「では、こちらに代金と素材、モンスターカードの受け取りの署名をお願いします。

 装備品と生薬の納品を確認した書類は、こちらに閣下が署名したものがあります。

 その確認もお願いします」

 署名の入った書類を一瞥してリュックに仕舞い、こちらも受領証に署名した。

 

 金貨53枚と銀貨30枚もアイテムボックスを開いて収納していく。

 

 しかし、この長ったらしい作業を高位貴族の連中が見ている意味があるのだろうか?

 別に暇な人達でもないだろうに。

 エミリオ士爵だけで充分なのでは?

 

 あと一つで終わりか・・・・・・と思ったら、隅っこで何やら文官の者とユリア士爵が揉めている。

 

「先に額金だけでも配布してくれって言ってるだけだろう?」

「士爵、そのようなことを言われては困ります。

 一度、騎士団の倉庫に入れてから、改めてお配りすることになっておりますので」

 ダマスカス鋼の額金だけ先に使いたくて、納品場所で張っていたのか?

 

 やっぱり、ユリア士爵もザビル騎士団(山賊の一味)っぽいな。

 見ないフリをしておこう。

 

 先ほど素材を取り出していた武器商人のジョブの男はまだいるな。ちょうど良いか。

 

「お約束のスキル融合武器のうち、運良く入手できたものがございますので、

 本日お持ちしております。

 激情のダマスカス鋼剣です。ご確認いただければと思います」

「お、おい、武器商人がいただろう?早く武器鑑定してくれよ」

 リカルド騎士団長の声が上ずっている。

 

 アイテムボックスから剣を取り出して、テーブルの上に置いた。

 

「武器に宿りし魂よ、その力を解き放て、武器鑑定・・・・・・

 確かに激情のダマスカス鋼剣にございます」

「ヨシ、でかした。直ぐに持ってきてくれると思っていたぜ」

 あの部下(ユリア士爵)にして、この上司(リカルド騎士団長)ありだな。

 

 騎士団長もスキル融合武器が来るのを待ち受けていたのではないだろうか。

 

「16万ナールは全てのスキル融合装備品が納品された後に代金としてお渡しします」

「はい、心得ております。

 本日頂いたモンスターカードの中に報酬分が上乗せされておりますので、

 なるべく早めにお持ちするよう努力いたしました」

 まあ、残りの3つも既に用意はしてあるけどね。

 

 いきなり今日、4つ納品するのは怪し過ぎるから控えただけだ。

 

(ガシッ・・・・・・)

 

 ん?

 

 顔を右に向けると、俺の右腕をユリア士爵が掴んでいる。

 額には既にダマスカス鋼の額金が巻いてるあるぞ。

 事務方が根負けしたのか。

 

「激情のダマスカス鋼剣を追加でもう一つだ」

「はっ?」

 エミリオ士爵の方に視線を向けると、首をブンブンと横に振っている。

 

 納品対象の追加はNGという意思表示だろうか。

 それにしても、彼女は槍使いではなかったのか?

 強権のダマスカス鋼槍は納品予定なので、それで我慢してほしい。

 槍も使うけど、両手剣も使うのだろうか。

 

 

「えーと、追加で鍛冶資材とモンスターカードをいただければ検討しますが」

「ヨシっ、エミリオと交渉してくる」

 そんなに簡単にできるのだろうか。

 

 見なかった、聞かなかったことにしよう。

 

「残りのスキル融合装備は、あと8日で調達できそうなのか?」

「最優先にしておりますので、なんとか大丈夫ではないかと」

 ザビル子爵は、スキル融合装備品の調達具合を確認したかったのだろうか。

 

「それから、もし可能なら新しく出現した迷宮への案内をお願いしたいのですが」

「そうだな。ちなみに迷宮の名は『ザビル第二迷宮』と呼ぶことになっている。

 以後、そのように呼ぶように」

 安直な名前だな。

 

 第二迷宮が討伐されて次の迷宮が出現したら、また第二と呼ぶのだろうか、それとも第三と呼ぶのだろうか。

 まあ、指示通りに呼ぶことにしよう。そうポンポンと迷宮が出現されると困るし。

 

 そして遠くで、誰か騒いでいる声が聞こえる。

 

「ヨシ、明日から素材とカード集めだ。エミリオ、約束だからな!」

「・・・・・・」

 エミリオ士爵の顔が能面のように見えるが、見なかったこと、聞かなかったことにしよう。

 

 ザビル子爵の指示で、冒険者のジョブの者を呼んでくれるようだ。

 

 その間に、子爵からスキル融合装備品の追加調達の相談を受けた。

 素材とカードがあれば、今回同様に調達すること等、一般的な回答をしただけだ。

 

 スキル融合装備品で騒いでいたリカルド騎士団長とユリア士爵は、既にこの場にはいない。

 新しい装備品(おもちゃ)をもらったから、練兵場で習熟訓練をしているのかもしれない。

 それはないか。

 

 激情のダマスカス鋼剣は模擬戦では使えないし。

 さっそく、迷宮に行ってたりして。いくらなんでも、それはないか。ないよね?

 

 やがて一人の男が近づいてきたが、冒険者のジョブの者のようだ。

 

「この者に案内してもらってくれ。

 それとこれを見せれば、入口の騎士団員に行きたい階層へ案内してもらえる」

「はい。ありがとうございます。お預かりいたします。

 では、我々はこのまま、お暇させていただきます」

 ザビル領のワッペンをもらい、ザビル子爵やエミリオ士爵に会釈をして退室することにした。




お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/3/3(火)の予定です。
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