異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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066.サプライズ(その3)

 従来通りの議題を終えて、最も相談したかった内容に移った。

 

「では、ザビル第二迷宮の探索について相談させてくれ。

 一部の者には伝えたが、新しく出現した迷宮は『ザビル第二迷宮』と命名されたらしい。

 以後、我が家でも、そのように呼ぶようにしてくれ。

 本日の夕方、カラダンと俺でザビル第二迷宮が存在する村に行ってきた。

 その際に収集した情報から、まずは共有する」

 

 ザビル子爵からワッペンを受領したこと、村の中に臨時の騎士団詰所が設けられていたこと、詰所で受けられるサービス、迷宮の傍に盗賊のパーティーが存在したこと等をかいつまんで説明。

 

「話し合いたいのは、主に三点だ。

 一つ目は盗賊の対応をどうするか。

 二つ目は迷宮への往復の移動方法。

 三つ目は水分補給や食事について。

 その三点を踏まえて、パーティーのメンバー編成やジョブに影響があるかどうかを吟味したい」

「なるほど。分かりました。

 では、盗賊ですが特に何もせず、迷宮や村で襲撃されたら討伐することで問題ないと思います」

 専守防衛という訳ではないが、相手より圧倒的に戦力があるという自信の表れか。

 

「盗賊を討伐するということは、人を殺すことになる。

 今回派遣されるメンバーが耐えられるだろうか?」

「むしろ、その機会を得るためにも、ご主人様に討伐していただくのではなく、

 自分達で討伐するべきだと考えています。

 護衛にしろ、盗賊対応にしろ、敵を・・・・・・人を殺すことを避けては通れません。

 仲間や自分を守るためにも、経験したことがない者には経験させるべきだと私は考えます」

 元戦士団の団長らしい考え方というべきだろうか。

 

 自分の中では、まだ躊躇いが少しある。

 前にアミルには俺が経験させたのだが、護衛メンバー全員に経験させるべきなのだろうか。

 アミルの顔をチラリと見ると、彼女はなんとも言えない表情をしている。

 

 ヘルミーネに視線を向けると、彼女も頷いている。俺が過保護なのだろうか。

 護衛任務をするのなら、いつかは体験させなければならないのを先送りしていたか。

 

「盗賊の討伐等で人を殺した経験がない者はどのぐらいいるのだろうか?」

「実際には多くありません。

 マヤ、フレイヤ、トカラ、ドロテアぐらいですね。

 他の者は、タケダ家に加わるまでに戦士団、騎士団、護衛任務等で経験があるか、

 タケダ家に加入後、クーラタルの迷宮で盗賊に遭遇した際に討伐して経験した者達です」

 そういえば、クーラタルの迷宮で盗賊を討伐した報告も前に受けていたな。

 

 今、レドリックがあげた四人は、その後に加入した者か。

 迷宮探索の経験がそれなりにあると思っていたが、ドロテアもないのか。

 

 そして、今回の迷宮へ派遣する対象者だとマヤ、フレイヤ、ドロテアの三人だけだな。

 マヤとフレイヤは同時に派遣しないから、パーティー内での対象者は最大で二人か。

 

 トカラは別途考えなければならないが、まだ加入して間もないので焦る必要はないだろう。

 

「六人パーティーで最大でも二人が経験してなくて、他の四人が経験しているから、

 盗賊に襲われても高い確率で、問題なく対応できるということか?」

「はい。おっしゃる通りです。

 最悪、ドロテアは自分の身を守る程度の経験でも今は構いません。

 迷宮内で単体攻撃魔法や壁魔法を詠唱できるのが理想ですが、

 まずは自分の身を守ることが優先でしょう」

 確かにその通りな気もするが、もう少し確認しておきたい。

 

「迷宮内で盗賊と遭遇して怖いのは、パッと俺が思いつくのは2つのケースだ。

 一つは、複数の盗賊のパーティーに挟撃されること。

 もう一つは、モンスターとの戦闘中に背後から襲撃されることだ」

「階層にもよりますが11階層までなら、

 六人パーティーのうちモンスターとの戦闘は三人でも対応できると思っています。

 一人は常に後方を注意しながら、背後からの奇襲に備えるようにします。

 盗賊の挟撃は場所次第ですね。

 挟撃されそうな位置を速やかに抜けることと、万が一挟撃されても、

 スキルと装備品の力で乗り切るつもりです」

 まあ、今は皆、上位のジョブでLv50近辺なのだよな。

 

 今日見た盗賊集団程度なら、確かに半分のメンバーでも対応できてしまうかもしれない。

 盗賊はアクティブ系攻撃スキルがないから、まともに戦えば楽勝だろう。

 今日見た盗賊達はジョブのレベルも大した事なかったし、装備品も貧弱だった。

 複数の盗賊集団を見た訳ではないから、油断は禁物だが。

 

 ハインツ一味が隠れていたケースなどを考え始めるとキリがないか。

 村を盗賊集団が襲撃したというのは少し気になるが、規模も分からないし、規模が大きいとなれば騎士団の仕事だよな。

 

「12階層以降だと、その階層まで来る盗賊達も限られますし、

 盗賊達もモンスターに備える必要があります。

 挟撃よりも、後方からの奇襲に備えるべきでしょうね。

 その場合でも、モンスターへ四人と後方への対応二人などで、凌ぐことができるでしょう」

「そうだな。上の階層に行くほど、盗賊達と遭遇する機会が減るかもしれない」

 

 とはいえ騎士団が20階層ぐらいまで突破するのを待ってから、我が家が探索に参加するという訳にもいかない。

 

 いろいろな意味で経験を積ませるためにも、低階層から迷宮に派遣するのが良いか。

 

「あとは・・・・・・もし、マヤやフレイヤが盗賊の討伐ができない

 ・・・・・・人をどうしても殺せないとなった時はどう考えている?」

「一度の失敗でダメだとは判断しません。

 失敗した時の理由や本人と話をしながら、今後どうするか考えます。

 先ほども言いましたが、護衛や迷宮探索をするなら、克服してもらわなければなりません。

 それでも、どうしても盗賊を殺すことを躊躇うようなら、

 護衛部隊メンバーから外して後方支援で向いたジョブがないか考えてはどうでしょうか?」

 確かに、我が家では戦うことしか選択肢がない訳ではない。

 

「そうだな。向き不向きはあるので、その場合は本人が納得できるように考えよう。

 レドリックの考え方は分かった。

 ヘルミーネの方は何か意見があるか?」

「盗賊を倒せないようでは、今後、肩を並べて戦うのに不安が付き纏います。

 レドリックの言う通り、乗り越えてもらわなければなりません」

 この世界は盗賊を討伐するのが当たり前なのだよな。

 

 我が家には盗賊に痛い目を見させられて奴隷になった者も多いから、案外問題ない気もするが、こればかりは盗賊と遭遇してみないことは分からないか。

 

「分かった。では、レドリックの言った通りでいこう。迷宮の中、村の中でも注意してくれ」

「承知しました」

 今まで訓練を重ね、レベリングして鍛えてきたメンバーを信じよう。

 

「ご主人様、もしよろしけば、

 先日実験していた『対人強化』のアクセサリーを検討しましょうか?

 ダマスカス鋼の腕輪に『対人強化』と『身代わり』のスキルを付与するのは

 どうでしょうか?」

「そうか、その手があるか。アミルの言う通りだな。

 30個も作れば空きスロットが2つ以上のものが6個は作れるな」

 俺の言葉に彼女も頷いた。

 

 もう少し検討したかったが、ただの身代わりのミサンガよりは安心できるはず。

 

 護衛部隊メンバーの高レベルによるレベル補正、質の高い装備品やスキル融合武器、『対人強化』のスキル補正・・・・・・これだけ準備があれば問題ないか。

 

「では、アミルはダマスカス鋼の腕輪の準備を頼む。

 レドリック、ヘルミーネもそれで問題ないか?」

「はい、旦那様、アミルさん、ありがとうございます」

 レドリックとヘルミーネが俺とアミルに頭を下げた。

 

 いやいや、タケダ家メンバーの安全のためには努力は惜しまないよ。

 努力してるのはアミルやミラだけど。

 

「では、次は迷宮との往復方法についてだ。

 護衛部隊はクーラタルから、まずはザビルの拠点へ拠点間移動スキルで移動してもらう。

 その後、ピコにゲートを繋いでもらって、ザビルの本館から村へ移動する。

 事前にザビル第二迷宮のある村まで、俺とピコで一緒に移動して準備を整えておく。

 帰りの方は騎士団の冒険者を利用するのでどうだろうか?」

「そうですね。それで良いかもしれません。

 レイモンドを冒険者のジョブに変える程のものではないでしょう」

 そうだよな。地図もないし、慣れない迷宮では探索者ジョブの方が有効のはずだ。

 

 と言って、迎えにいくためにピコを村に派遣するのは危険だ。

 朝はゲートを開くだけで、ピコは村まで移動しない。そうしておけば、安全だからな。

 ピコは戦闘要員ではないから、危険な場所には移動させたくない。

 

 ローザやロベルトを急いでレベリングして、冒険者ジョブを取得するのもアリだが。

 ザビルはザビルで活動するから、あまりあてにはできない。

 そのうち、冒険者にはするだろうけど。

 

「水は各自が水筒を持っていくのと、ドロテアの水魔法で事足りるだろうか。

 どうしてもという時は、一度、迷宮を出て詰所の裏にある井戸が使える」

「水はそれで大丈夫でしょう」

 今までは、昼食のタイミングで戻ってきたので水の補給もスムーズだったよな。

 

「食事はどうする?」

「正直なところ、盗賊達の襲撃も警戒しながら迷宮を探索するのであれば、

 集中力の持続という点からも、拠点に戻って安全な場所で食事をするのが良いと考えてます。

 低階層のうちは恐らく昼食の時間前後で戻れると思いますので、

 騎士団の冒険者を利用させてください」

「そうだな。それでやってみて、探索が進むにつれて上手くいかなくなってきたら、

 パンに肉とか野菜とか挟んだ簡単なものを持っていく等、やり方を工夫してみよう」

 考えておくことは、こんなところかな。

 

「迷宮の探索はいつから開始しようか?」

「三日後からで、いかがでしょうか?

 それまでに該当メンバーと話をしておきます」

 そうだな。それぐらいが妥当か。

 

「対人強化を融合したアクセサリーの準備もあるので、三日後で問題ないと思う」

「はい。では、準備を進めたいと思います」

 ザビル迷宮対策については、こんなところか。

 

「ターレ迷宮の方も今は49階層を攻略しているので、そろそろ迷宮討伐が視野に入ってきた。

 迷宮討伐前に、迷宮ボスにどのようにして挑むのか説明しようかと思っている。

 意見を聞かせてほしい」

「はい。是非参加させて下さい。

 とはいえ、迷宮討伐の経験などないので、どこまでお役に立てるか」

 いやいや、迷宮ボスの特性を踏まえると、レドリックの助言はきっと役に立つと思っている。

 

「あの、私も参加させていただきたいのですが。できればラファ様もよろしいでしょうか?」

「ヘルミーネだけでなく、ラファもか?まあ、別に構わないが」

 元貴族だから、迷宮討伐と聞くと血が騒ぐのだろうか。

 

 打ち合わせを終わりにして、解散とした。

 

 

 自室に戻って、今日までのまとめ。

 

■情報▶

 

■人材育成/採用(ユキムラ)▼

①人材育成(ザビルの新規加入メンバー中心にパワーレベリングを行う)

<クーラタル>

(1)迷宮組

 ユキムラ(百鬼夜行Lv79/鬼神Lv79/英雄Lv79/勇者Lv79/遊び人Lv79/忍者Lv79/博徒Lv79)

 アミル(鍛冶師Lv78⇒隻眼※/冒険者Lv75/探索者Lv79)

  ※隻眼のジョブ取得条件不明(バルドルフの発言から装備品のスキル融合数を増やす)

 ヴィルマ(百獣王Lv79)、イレーネ(くのいちLv51)、オリビア(竜将軍Lv66)

 

(2)護衛部隊

 レドリック(剣聖Lv51/騎士Lv26)、モニカ(剣聖Lv45)、レイモンド(冒険者Lv49)

 ケリー(百獣王Lv48)、マリー(百獣王Lv48)、フラウス(斎王Lv45)

 ラファ(魔道士Lv40/斎王Lv29)、ヘルミーネ(冒険者Lv32/聖騎士Lv32)

 ミラ(鍛冶師Lv47/剣匠Lv47⇒剣聖★)、マヤ(剣匠Lv60/剣聖Lv1★)★剣聖の育成は保留中

 フレイヤ(竜騎士Lv49)、ドロテア(魔法使いLv50⇒魔道士※) ※魔道士ジョブ取得できず 

 トカラ(魔法使いLv50⇒魔道士※)  ※魔道士ジョブ取得できず 

 

(3)後方支援

 エネドラ(武器商人Lv47)、チクルス(薬師Lv34)、ポーラ(沙門Lv27)

 アネット(商人Lv18⇒武器商人)、シルビア(商人Lv18⇒防具商人)

 フローラ(薬草採取士Lv32⇒薬師)、クララ(商人Lv18⇒奴隷商人)

 

 イレーネのジョブがLv51を超えたので、迷宮討伐戦でレベル補正を気にする必要がなくなった。

 護衛部隊はレドリック、ヘルミーネ、ラファを中心にレベリングして、Lv50近辺まで上げたい。

 あとは、後方支援メンバーで新たに加入したメンバーを中心にレベリングして、上位ジョブ取得を目指したい。

 

<ベイル>

(1)後方支援

 ミモザ(薬草採取士Lv45⇒薬師)、ビンス(冒険者Lv8)、リック(冒険者Lv8)

 クルト※(商人Lv21⇒防具商人) ※ビンス、リックの交代要員

 

<ザビル>

(1)護衛部隊

 マテウス(剣聖Lv44)、ニケ(暗殺者Lv48⇒刺客)、ヒューゴ(神官Lv48⇒禰宜)

 ニクラス(剣匠Lv23⇒剣聖)、ゾフィ(巫女Lv41⇒斎王)

 ローザ(探索者Lv44)、ロベルト(探索者Lv44)

 マチルダ(薬草採取士Lv40/魔法使いLv40/騎士Lv17) ※当面は後方支援

 レベッカ(薬草採取士Lv40/魔法使いLv40/巫女Lv1) ※当面は後方支援(迷宮探索NG)

 

(2)後方支援

 カラダン(奴隷商人Lv15)、ピコ(冒険者Lv20/防具商人Lv7)

 ミシェル(武器商人Lv17)、ナナ(農夫Lv38)

 サライ(防具商人Lv9)、ティナ(探索者Lv32/薬草採取士Lv40/商人Lv31)

 

 ベイル拠点のメンバーは新規加入のクルトのみレベリングか。

 

 ザビル拠点は新規加入のニクラス、ゾフィを中心にレベリングする。

 マチルダ、レベッカは騎士、巫女のジョブをLv40程度まで上げたい。

 

 

②採用

 後方支援メンバー、護衛メンバー、迷宮探索メンバーを拡充(逐次奴隷商館巡りをする)

  ⇒帝都の奴隷商館でオリビアの契約に成功。今後も竜人族、魔法使い入荷時に連絡を依頼

 

 ザビルの奴隷商館で有望そうな者がいればタケダ家に組み込む

 ⇒盗賊襲撃で壊滅したザビルの村の者が数名合流。今後も増える可能性有。

 ⇒アルマーの商館からも有望そうな者を購入していく。既に2名を購入済。

 

■軍事(ユキムラ/レドリック)▶

 

■商業/取引(ユキムラ/エネドラ/カラダン)▶

 

■開発(エネドラ/カラダン)▶

 

■生産(チクルス/アミル)▶

 

■その他/クエスト▶

 

 まとめが終わったので、エネドラからもらったベイルに来ている子供達の進路を確認。

 フラムとリクは薬草採取士で既にジョブ取得して、ミモザの下で生薬生成OJTをしている。

 あとは、商人、探索者、剣士、獣戦士、未定が一人か。

 意外に将来のことをちゃんと決めてる子が多いのだな。

 あとは、次の組の7名が来たら、ある程度の数はまとまるのかな。

 

 だけど、獣戦士はニムラルのオッサンに習ってくれと言いたい。こちらで支援は難しいぞ。

 他にも戦闘系ジョブはちょっとこちらで支援するべきか悩むなぁ。

 ジョブ取得は簡単に支援できるが、そもそも子供を迷宮で戦わせるのは拙いだろう。

 

(コン、コン・・・・・・)

 

 来た、来た・・・・・・と。

 

 ドアを開けると、アミルの姿が。今日は普通の恰好だな。いや、普通でも十分可愛いのだが。

 照れる彼女をお姫様抱っこして、ベッドへ。

 

 俯せにして優しくマッサージしながら、今日の防具屋の話題を振ってみる。

 

「ザビルの防具屋に自分の作った防具が陳列されているのって、誇らしい気分なのか?

 俺は鍛冶師ではないから、よく分からないのだけど」

「上手く生成できた防具の場合は、気分が良いですけど、

 そうでなかったら上手く生成できたものと取り換えたくなります」

 それは作り手ならではの感想だな。

 

 俺には、防具屋に並べられた彼女達が作った額金や鎧が、全く同じように見えるのだが。

 ましてや、アミルが作ったのか、ミラが作ったのか等は当然見分けられない。

 

「でも、きっと購入してくれた客は喜んでいるよ」

「そうだと良いのですが、役に立つ時というのは攻撃を受けた時ですから

 購入してくれた人が無事に帰ってきてくれると嬉しいですね」

 これもまた、作る者の想いだな。

 

 アミルと俺の気分が温まってきたかな。

 そのまま、スルスルと脱衣させる流れへ。

 抱き起こして、ほんのりと赤い顔をする彼女の前に白い帽子を差し出す。

 

「これは、前に作った『皮の帽子』ですね。これがどうしたのでしょうか?」

「こんな風に被る必要があるのだ」

 見本のために、まずは俺がスイミングキャップを被った。

 

「えっ、今、装備するのですか?」

「そうだ。今、必要なのだ」

 この感じだと、チクルスやエネドラから何も聞いてないな。

 

 今日はイロイロと驚かせたから、最後に一番のサプライズをアミルにプレゼントだ。

 

「えーと、こんな感じで良いでしょうか?」

「いや、髪の毛が完全に帽子の中に入るようにしなければならない」

 俺の言葉に素直にアミルが髪を仕舞っていく。

 

「そうしないと、大変なことが起きるかもしれない」

「えっ、そうなのですか。何かとっても嫌な予感がするのですけど」

 アミルは勘が鋭いのか、鋭くないのか時々分からなくなる。

 

 まあ、今回はサプライズなので、事前に察知されない方が良いのだけど。

 

「きゃっ、ど、どこに行くのですか?」

 

 頭をスッポリ帽子で覆ったので、彼女を抱き上げて、ドアを開けて隣の書斎に向かった。

 

「こ、これは何ですか?何故、大楯がこんな形で・・・・・・」

 

 さすがはアミル(さすアミ)。あの組み立て後の秘密基地を一瞬で大楯だと見抜くとは。

 だが、その目的までは、さすがに察することは無理だろう。

 無言で、基地の窓をくぐって中に入った。

 

「い、一体、何が起きるのですか?」

「いや、いつぞやのお礼をするだけだ。まあ、リラックスしてくれ」

 挙動不審な表情になったアミルをマットの上に俯せに寝かせる。

 

 どちらかという挙動不審なのは俺なのだが、気にせず、そのままマッサージの続きをする。

 

 マットはベッドの布団よりも柔らかいので、新鮮な気分だろう。

 でも、今日はもっと新鮮な気分にさせる小道具を用意してあるのだ。

 

 緊張しているアミルが少しリラックスしてきたところで白い布を取り出し、背中を向けたアミルの背後から目隠しをした。

 

「ちょ、ちょっとご主人様、何を・・・・・・」

「この前、俺がやってもらったことのお返しだ」

 この白い布はチクルスから借りてきた。

 

 エネドラの左腕を治した夜、三人に侍女の嗜みを受けた際に、目隠しされたからな。

 しっかりとお返しをしてあげないと。心を込めて、全力で。

 

「こ、怖いですよ」

「大丈夫、俺もしてもらった時は、直ぐに気持ち良くなったから」

 

 目隠しを外させまいと、後ろからアミルの両腕をマッサージしながら拘束。

 

 空いた二本の腕でカメリアオイルのフタを開けた。

 腕が四本あるって本当に便利だ。

 

 ゆっくりとオイルを彼女の背中に垂らした。

 

「ん、んふっ~」

 顔をマットに押し付けてしまったから、くぐもった声になってる。

 

 垂らしたオイルの違和感に彼女の背中がビクッ、ビクッと反応。可愛い。

 

「ひっ・・・・・・ちょ、ちょっと・・・・・・」

「直ぐに気持ちよくなるから、大丈夫だって」

 

 垂らしたオイルをゆっくりと彼女の背中の上で広げていく。

 白くて透明感のある彼女の肌をオイルでコーティングしながら、掌で感触を楽しむ。

 天井からの照明に照らされて、輝くその姿は妖精のように思えてしまう。

 俺に背中を向けた滑らかな起伏の肢体に感動すら覚えてしまう。

 

 身じろぎしようにも、彼女の両腕の掌は俺の両腕で揉みこむようにマッサージしている。

 徐々に彼女の息づかいが大きくなってくるのが分かって、とっても楽しい。

 

「あ、ああ・・・・・・あうぅ・・・・・・う・・・・・・」

 背中を向けていて何をされるか分からない中、四本の腕を駆使した手技に抗うことは不可能だ。

 

 彼女の両腕にもオイルを垂らして、両手で磨き上げる。

 並行して、背中から腰の(くび)れ、太腿までにかけてオイルの上で掌を滑らせる。

 

 そもそも背中を向けている時点で目隠しは無意味だが、役に立つのはこれからだ。

 観念して脱力した彼女の両脇に腕を入れて、俺の胸に背中を付けるように抱き起こす。

 

「あ、あれっ・・・・・・」

 

 そのまま背後から、カメリアオイルをたっぷりと付けた四本の掌で彼女の前面を緩やかに揉みこむ。

 彼女のありとあらゆる尖りをオイルをまぶした指で磨き、優しく刺激する。

 

「ひっ、ひぃ・・・・・・」

 

 アミルが小さく痙攣しているのが、オイル越しに俺の胸に伝わってくる。

 ダメだ。楽し過ぎる。

 アミルを後ろから抱きながら、この基地の改善点に気付いてしまった。

 排水溝と逆の壁面に大きな鏡を設置しておけば良かった。

 

 次回以降の改善点として、是非検討したい。

 ペルマスクの鏡の工房に確か大きな鏡が販売されていたはずだ。

 それを購入してみるか?

 

 でも、その時は目隠しを外した方が良いかもしれない。

 きっと、イロイロと新しい道が開けそうな気もする。

 ひょっとしたら、新しいジョブが取れるかもしれない(取れない)。

 

 それはともかく、掌にオイルをたっぶりと取って、目隠しした彼女への全身マッサージを少し強めに施す。

 

「も、もう・・・・・・参りました。降参です」

 

 彼女は息も絶え絶えになりながら、肌の色がほんのりと赤く色づいてきた。

 敏感な場所をアチコチ奇襲しながら、さらに彼女の興奮度を上げていく。

 

「は、はあ・・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・」

 アミルの息が急激に荒くなり、体温も上がってきたように感じた。

 

 頃合いを見計らって、彼女の中に侵入。

 

「くっ・・・・・・」

 

 背をのけ反った彼女を更に優しく揉みこむ。

 

 ヤ、ヤバイ・・・・・・俺の方も気持ち良過ぎて、戻ってこれなくなりそう。

 腕の中で柔らかくうねりながら動くアミルを、少し強めに蹂躙する。

 

 息づかいが更に荒くなるのを感じながら、目隠しを外した。

 

「あっ、あっ、あっ・・・・・・」

 

 急に明るくなった視界と自分の姿を意識して、彼女がきつく目を閉じたのが見えた。

 

 そのまま、彼女を更に高い頂きに上げるため、激しく律動を繰り返す。

 自由になった彼女の両手は、俺の両膝を掴んだまま。

 

「も、もう、ダメです・・・・・・」

 

 更に何か言おうとした唇を塞いだ。

 ゆっくりと啄みながら、彼女の唇の感触を楽しむ。

 

 そのまま、アミルの息づかいを感じながら、一気に高みに上げた。

 足の指を強く折り曲げて、激しく痙攣する彼女を感じて俺も欲望を解放した。

 

・・・・・・

 

 いろいろと弾けてしまった。

 この秘密基地は、男のロマンというだけでなく、理性も弾けてしまう何かがある。

 『恥蹴る』と『弾ける』は何か似たニュアンスがある気がするのは気のせいだろうか。

 

 

 アミルが俺の胸から顔を上げて、こちらを見上げてきた。

 この上目遣いのアングル・・・・・・全身が痺れてしまいそう(攻撃力5倍の破壊力)だ。

 

「ご主人様、待って下さいって言いましたよね?」

「えっ、言ったっけ?」

 弾けてしまった後に待てる訳がない。適当に惚けよう。

 

 

(ガブッ)

 

 あっ、アミルがイレーネ化した。

 

(ガブッ、ガブッ・・・・・・)

 

 甘噛みから、真剣(マジ)噛みになってきた。ちょっと痛い。

 

「アミル、待て、落ち着け!」

「私も待って下さいって言いましたよね?」

 えーと、こういう時、なんて返せばいいのだっけ。

 

(ガブッ、ガブッ、ガブッ・・・・・・)

 

「ごめん、ごめん。俺が悪かったよ」

「分かれば、いいのです」

 今日は、いつもより押しが強い?なんかキャラが変わってないか?

 

 

「ご主人様には、時々、言葉が通じないのではないかと思う時があります」

「・・・・・・」

 言葉は通じているけど、話が通じてないだけだ・・・・・・口に出しては言えないけど。

 

 それにしても、今日のアミルは少し挙動不審だな。

 

「何か心配事でも、あるのじゃないか?」

「言葉は通じないのに、察しがよいですね」

 それって、誉め言葉なのだろうか。アミルがちょっとおかしいな。

 

「半年ぐらい前は迷宮の2、3階層を探索していたのに、

 これから迷宮討伐に向かうかもしれないなんて、

 地に足がついてないというか、本当に大丈夫なのだろうかと不安に思います」

「そうか、そうだよな」

 俺だって、半年前はこんな所でモンスターを戦うとは思ってなかった。同じだよ、同じ。

 

「十分な準備をしてから臨むし、皆の意見も確認するよ。だから、アミルは心配しないでくれ」

「はい。ご主人様を信じていますから。だから・・・・・・普段から自重をお願いします」

 秘密基地以外では自重することにしよう。秘密基地での自重は・・・・・・無理だ。

 

 彼女の頭を撫でながら、深い眠りに落ちた・・・・・・。

 

・・・・・・




お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/3/7(土)の予定です。
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