滝を案内してくれたヒューゴと別れて二階に上がったが、カラダン達は戻っていなかった。
ボーデとターヘラの二箇所を回るし、今日はミシェルの紹介やら取引内容を教える必要もあるから時間はかかるだろう。
空いた時間ができたので、一仕事片づけることにするか。
一度、クーラタルに戻り、エネドラに帰宅を伝えた。
「旦那様、随分、早いお帰りですが?」
「ああ、今、カラダン達と別行動で取引を片づけているんだ。
ペルマスクに行く時には合流するのだけどな」
別れて行動した経緯を軽く説明して、エネドラの都合も確認。
隙間時間を使って、クーラタルの商人ギルドに行き、スキル融合装備の附帯契約の打診をしてくることを伝えた。
エネドラは手が離せないようなので、一人でギルドに向かうことにする。
二階の作業部屋でアミルに融合してもらったスキル融合防具をアイテムボックスへ収納。
併せて、巫女のジョブ取得ができそうな場所を見つけたことも伝えた。
「では、いつか滝に連れていってもらえますか?」
「分かった。だが、川の水に打たれることになるので、
薄着になるのと風呂の準備をしてから行くことになるだろう」
説明したが、あまりピンときてなさそうだ。
まあ、滝に打たれたら巫女のジョブが取れるとか、からくりを知ってなければ意味不明だ。
ましてや、俺がやった『瞑想』なんて傍から見たら、居眠りしてるようにしか見えない。
こちらの世界の流儀でジョブ取得する方が良いだろう。
それにしても『滝に連れていって』って、なんだかデートに誘っているみたいだけど、実際には全然違うのがなんともね。
「多分、今日の午後にでも試してもらうことになると思う」
「分かりました。準備しておきます」
彼女のやる気があるうちに挑戦すべきだな。
二階から降りて、商人ギルドに向かうことにした。
・・・・・・
ギルドでルーク達と商談。
『耐土のダマスカス鋼プレートメイル』を附帯契約の候補としたことを伝え、こちらの希望するモンスターカードと素材のリストを渡した。
彼に防具鑑定をしてもらい、特に問題ないことも確認。
後はルークからの提案待ちなので商談を終了しようと考えたところで、別件を持ち掛けられた。
「先日いただいた一般富裕層向けの石鹸セットですが、
我が家で取扱いさせていただけないでしょうか?」
「それは構わないが、どのような取引形態にするつもりだ?
こちらから1セット1000ナールで卸すのと、委託販売というやり方もあるが」
「委託販売ですか?」
先日、ベイルのビッカーにも提案したやり方だ。ビッカーからの返事はまだないが。
「売上の1割を手数料として、ルークの取り分とするやり方だな。
貴族用なら1セット2500ナールで手数料が250ナール、
一般用なら1セット1000ナールに対して手数料は100ナールだ」
「なるほど、委託販売ですか。一般用だけでなく、貴族用も販売して構わないのですね」
彼のこちらを探るような問いかけに頷く。
「実は今日の午後にハルツ公との取引がある。
こちらはカシア様の口添えで貴族用の石鹸セットを定期的に販売させてもらっている。
もし、それ以外のタイミングでハルツ公なり、カシア様が石鹸を欲しいと思われたら、
ルークは定期的にハルツ公との取引があるので、石鹸セットが売れるかもしれないな」
「なるほど。では、貴族用、一般用それぞれ委託販売という形式でお願いしたいです」
まあ、仕入れてしまうと在庫を抱えるリスクがあるから、委託販売の方が無難だろう。
一度、委託販売で様子見して、仕入れる方式へ切り替えるというやり方もある。
こちらとしても倉庫に寝かせておくよりは、別の場所に陳列してもらう方がありがたい。
「具体的な数量の希望があるだろうか?」
「まずは、貴族用と一般用を20セットずつお願いします」
どの程度、売れるか分からないから、無難な量だろうか。
「手数料は説明した通り、売り上げの1割なのだが構わないか?」
「はい、構いません」
ルークの商家的には大した金額ではないと思うが、話題作りに使うのだろうか。
この前、オークションに出したせいで、ギルドでも噂になっていると言ってたよな。
こちらとしても、大商家のルークの所で販売してもらえると多少の宣伝効果になるかも。
これを機会に石鹸を広めたい。
「分かった。では、後でここに届けさせればよいだろうか?
あと、今日の午後にハルツ公にお会いした際に
ルークの商家で石鹸の委託販売をすることを伝えても構わないだろうか?」
「届け先はここで構いません。
委託販売の件をお伝えいただくのは、是非お願いします。
当方からも無論お伝えしますが、早い方が良いでしょう」
契約締結前の見切り発車だが、こちらの売上と利益にも繋がるはずだから問題ないだろう。
「後ほど、委託販売の契約書を届けさせるので、確認してくれ」
「はい。お待ちしておりますので、よろしくお願いいたします」
商談が成立したので、ルークとガッチリと握手を交わした。
スキル融合防具についてはルークからの提案待ちになったので、伝言を待つ旨を伝えてギルドを後にした。
ギルドの壁から、クーラタルの玄関にワープで移動。
エネドラに、ルークとの石鹸の委託販売の商談をまとめたことを伝えた。
「では、私の方で契約書を作成して、石鹸のセットを持ってルーク様の所に参ります」
「忙しいのに悪いが、よろしく頼む。
俺はこれからザビルに移動し、カラダンと合流してからペルマスクに行ってくる。
ペルマスクで鏡を仕入れたら、午後から石鹸セットを持ってボーデに行く予定だ」
鏡を収納した背負子は俺が持つとして、石鹸セットは皆で分散して持っていってもらう。
ルークとの契約書は新しく加入したメンバーとも相談するらしい。
今後のエネドラの負担を減らすためにも是非、仕事を覚えてもらいたい。
「午後の取引はエネドラはどうする?」
「同行いたします」
行くのは俺、エネドラ、カラダン、ミシェル、ピコの五人か。
かなり大所帯だな。ピコはほぼ荷物持ちの役目になるだろうけど。
「分かった。では午後から一緒に行こう」
「はい。お願いします、旦那様」
エネドラと別れて、ザビルの本館に移動。
今日は事務処理デーだから、本当に飛び回っているな。
二階に上がったが、まだカラダン達は戻ってきてないようなので、そのまま待つことにした。
・・・・・・
しばらくすると、カラダン達が戻ってきた。
カラダン、ミシェル、ピコ、マテウスの四人が開いたドアから入ってくる。
「お待たせして申し訳ありません」
「いや、こちらが頼んだ訳だから気にする必要はない。
お互いの結果を共有しようか。
マテウスも、このまま残ってもらえるか?」
護衛は終わったが、神官ジョブ取得のための滝の存在を共有しておきたい。
「では、神官のジョブ取得のための滝探しだが、
ヒューゴに案内してもらって、人気のない滝の場所は確認した。
小さい滝だが恐らくジョブ取得には問題ないだろう。
ザビルとクーラタルで神官・巫女のジョブを希望する者を連れて試してみたいと思う。
クーラタルの方ではアミルだけだが、ザビルの方ではロベルトのみだったか?」
「はい。今のところ、ロベルトだけです」
追加で希望を取るとティナやマチルダも手を挙げかねない。今はロベルトだけで十分だ。
「今日の午後で時間の空いた時にロベルトを連れていってみることにする。
マテウスの方から彼に話を通しておいてもらえるか?
川の水に頭から打たれることになる。
事前に風呂の準備と、薄着の服と体を拭く大き目の布を用意しておいてくれ。
かなり暖かくなってきたが、水を浴びたままで長い時間いると体調を崩すからな」
「承知しました、ご主人様」
滝行のノウハウなんて、そんなにないけど元の世界での知識と経験が役立つかどうか。
「では、マテウスはもう戻ってもらっても構わない」
「旦那様、今後ペルマスクに行く際に旦那様抜きで行くことを考えて、
今回のペルマスクにマテウスを同行させたいと考えますが、いかがでしょうか?」
そうか、その場合は護衛はザビル側で出すことになるのだよな。
「なるほど、それなら同行してもらった方が良いな」
「はい。では、マテウスは引き続き我々と行動を共にして下さい」
カラダンの言葉にマテウスが頷いた。これは事前に伝えてあったみたいだな。
「では、カラダンの方から取引結果を教えてもらえるか?」
「はい。まずはボーデの方から御報告いたします。
琥珀の原石は12個購入できました。
代金は9600ナールです。
店の主人からは次のネックレスの購入予定を訊かれましたが、
現時点では未定だと答えておきました」
「ネックレスの件はそれで良い。思っていたよりも原石が購入できたな。ありがとう」
まあ、ペルマスクの鏡工房の女主人の口利きがないとネックレスは売れないからなぁ。
ザビルの子爵家の方は、宝飾品の購入とか微塵も考えてなさそうだし。
そのうち、石鹸の販路拡大も兼ねて顧客の開拓もしないとな。
今の販路はエルフ領、ペルマスク、ルークか。ビッカーは乗ってくるかどうか微妙だ。
「次はターヘラのマリア様との取引についてです。
瑪瑙の原石については、ペルマスクとの契約にある通り、20個購入いたしました。
代金は2万ナールです。
マリア様からも次の瑪瑙の装飾品の販売会はいつやるのだと、せっつかれました。
こちらも現時点では未定と答えたのですが、あちらから出向こうかとゴリ押されたので、
丁重にお断り申し上げました」
「そ、そうか。取引については予定通りだな。
販売会は、そのうち新しく加わった女性メンバーのために開催すると思うが、
今はその回答で問題ない」
マリアさん、商魂たくましいな。だが、押し売りはノーサンキューだ。
「孤児院への食料提供の契約ですが、残り8か月分の対価をマリアさんの店にお渡ししました。
蝶の羽400個、蝙蝠の羽250個、蜜蝋550個、蝙蝠の爪400個です。
これで過去に納めたドロップ品と合わせて一年分をお渡ししたことになります」
「そうか、ありがとう。マリアさんの方は何か言ってなかったか?」
一度にそれだけ納めて、使い切れるほど需要があるのだろうか。
「ターヘラは近くに迷宮が無くなり、供給がギルド経由しかなくなっていたので、
安く手に入る時に大量に欲しいようです。
それと、石鹸の箱の木枠も現金ではなく、装飾品での交換で問題ないそうです」
「なるほど、どうせ迷宮探索するうちに増えていくから問題ない」
交換できるものはドンドン交換してしまおう。
「では、マリア様にもそのように返答しておきます。
次回の木枠の注文から利用させていただきます」
「よろしく頼む」
カラダンの隣でミシェルがニッコニッコなのだが、特にツッコミは止めておこう。
琥珀や瑪瑙の原石よりも、装飾品の方が大商いになったな。金は全く動いてないけど。
「ボーデとターヘラの取引はそんなところか」
「いえ、実はもう一点、御相談したいことが。
マリア様から石鹸セットと平民用の鏡を卸してほしいと相談を受けました。
なんでも帝都に伝手があるらしく、そちらで販売したいそうです」
帝都?・・・・・・帝都で販売するなら、平民用ではなく貴族用ではないのか?
帝都の伝手って、まさか・・・・・・いや、どうだろう。
「石鹸セットと鏡か。
帝都には今のところ、こちらも伝手がないので、販路ができるのはありがたいが。
マリアさんは勝算ありそうな感じだったのか?」
「そうですね。自信ありそうな感じでしたが、マリア様はいつもそんな感じなので」
彼女は腹の内がよく分からないのだよなぁ。やり手なのは間違いないのだけど。
「クーラタルのルークの商家でも委託販売を始めそうな感じになっている。
マリアさんのルートでも委託販売でどうだろうか。
ただし、売上の1割が手数料だから、
マリアさんとその帝都の提携先で1割の中の取り分を決めてもらう感じだろうか。
そのやり方でマリアさんに納得してもらえるかどうかだが。
相手のメリットとしては、在庫を抱えても場所を取るだけで損害にはならない。
デメリットとしては、手数料以上の儲けにはならないってところだな」
「マリア様に委託販売方式での提案をしてみます。
その反応次第で、また相談に乗っていただけますか?」
頷きながら・・・・・・もう少しクーラタルとの連携をしたいな。
「ルークとの委託契約の契約書をエネドラの方で作成しようとしている。
午後から、彼女もハルツ公との取引に同行する予定なので、
マリアさんの件も含めて二人で相談してもらえるか?」
「はい。承知しました」
俺とカラダンの話の横で、ミシェルがもう楽しくて仕方ない表情になっている。
こういう商売というか取引が彼女はしたかったのかな。まあ、楽しくて何よりだ。
ただ、あまりにもカラダンと一緒に行動し過ぎると、ザビルの留守番役がいなくなってしまう。
また、商人ジョブを持つ者を増やしても構わないけどね。
「ボーデとターヘラの取引は、こんなところかな。
じゃあ、ペルマスクに行くことにしよう」
「はい。よろしくお願いいたします」
「まず、四人は俺のパーティーに入ってくれ」
カラダン、ミシェル、ピコ、マテウスが俺のパーティーに加わった。
そして、石鹸の箱を満載した背負子を背負う。
帰りは鏡を満載して帰ることになるのだよなぁ。
「この背負子は俺専用だけど、俺がいない場合の輸送方法は考えないと拙いな」
「ベイルで背負子を注文した店に旦那様の背負子の小型版を注文してあります。
旦那様ほどは多く運べませんので、3人分で3個作らせています。
一つ試しに作らせて、クーラタルの在庫にある鏡で試して問題ないことは確認しました。
一人7~8枚ぐらい運べれば、今後の取引は大丈夫だと思います」
「では、ペルマスクに移動するぞ」
・・・・・・
ペルマスクに移動して、いつも通りの案内人に先導されて工房の店舗に。
やがて、女店主が親方と案内人を引き連れて入室してきた。
まずは、型通りの挨拶とミシェルの紹介。マテウスは護衛なので紹介はなし。
カラダンの片腕という表現で紹介すると、値踏みするような視線を向ける女主人。
「これからは、カラダンとミシェルが中心となって
特に鏡と石鹸の取引を強化していきたいと思っているので今後とも贔屓に」
「石鹸の取引量が増えるのは、こちらも歓迎ですね。
今回も契約通りの数量を持ってきてるのでしょうけど、追加で発注を考えてます」
この主人とはお互いが客でもあり、販売店でもある。
もはや、俺と彼女の言葉遣いも対等な感じだ。
「追加の発注と言いますと、どの程度の数量でしょうか?」
「貴族用を50セットと一般用を50セットね。どの程度の期間で用意できるかしら?」
カラダンの質問に対する彼女の回答は、予想外の多さだ。
もともと30セットを30日毎に納品する契約だったはず。その単位よりも多いな。
カラダンがこちらをチラリと見たので、無言で頷いた。
「3日ほどいただければ、ご用意いたします」
「そんなに早く。店舗もザビルに構えたから、納品も早いのかしら」
普段からクーラタルとベイルで量産しているからだな。輸送は拠点スキルで簡単だし。
3割アップのスキルが使えるところだが、この取引はカラダンとミシェルに任せているので、俺は介入しないぞ。
「では、こちらも装飾のない鏡の追加購入をお願いしたいです。
石鹸50セットずつを納品する際に、30枚ほど追加の購入をさせて下さい」
「30枚ですか・・・・・・」
おおぉ、カラダン上手い交渉だな。
確かに鏡を多めに仕入れておいた方が、今後の石鹸販売にも役立つかもしれない。
「分かりました。追加で30枚の販売をいたしましょう」
「ありがとうございます」
断られるかと思ったが、譲歩してくれたか。
元々は貴族の委任状があって初めて、装飾のない鏡を調達できるという制約付きの取引だった。
ハルツ公から委任状はもらったが、それとは別に作業員の肺を守るためにマスクの試用品とノウハウを提供して、特別に許可をもらって長期契約を結んだ。
今回は石鹸セットという交渉材料を使って、鏡を手に入れることができた。
このぐらいの取引がアドリブできるのなら、今後のペルマスクとの取引はカラダンに任せても問題ないだろう。
彼単独だと抜け漏れがあると危ないので、ミシェルをチェック役にしたいが、まだ経験の差があって無理か。
「では、契約の内容ですが・・・・・・」
カラダンと女主人を中心に契約の内容が詰められていく。
ミシェルはまだ口を差しはさめるレベルではないので、その成り行きを真剣に眺めている。
それにしても、クーラタル、ターヘラ、ペルマスクと急に石鹸の取引が活発になってきた。
在庫は今までにかなり積み上がっていたが、エネドラに在庫管理に注意するように言っておかないと拙いかも。
やがて、契約の内容がまとまったようだ。
「後ほど、契約書を用意しますので、先に納品を済ませましょうか?」
「はい。では、こちらが本日お持ちした琥珀と瑪瑙の原石で・・・・・・」
カラダンが、ボーデとターヘラで調達した原石を次々とテーブルに並べた。
親方が満面の笑みを浮かべている。
原石の状態をチェックし終えたので、代金を受領。全部で14万8000ナール。
石鹸30セットも取り出して、確認してもらった後、代金を受領。
こちらは7万5000ナール。やはり、装飾品と比べると安いな。
とはいえ、原石の仕入れ値を差し引いても、20万ナール近い儲けだ。
それに、冒頭の石鹸100セットの販売と鏡30枚購入の差額では、7万ナールの儲けだ。
ネックレスの取引ほどではないが、順調に利益が積みあがっている。
契約書の作成を待つ間、タケダ家側は装飾のない鏡を20枚選ぶことに。
カラダンとミシェルを中心に大きさに適度なバリエーションがあるものを次々に選んでいく。
俺は・・・・・・秘密基地用の大き目の鏡を選定。
選択肢があまりないので、直ぐに選び終わった。
「随分、大きい鏡を選びましたね?」
「ピコ、これは商売用ではなく個人で使うものなのだ」
彼は少し首を傾げたが、直ぐに気を取り直してカラダン達の方に行ってしまった。
うん、若いピコにはこの鏡の用途を説明するのは時期尚早だ。
この世界の実年齢では2才しか離れていないけど。
説明する日が訪れる気はしないが。
鏡の選定が終わって、応接室に戻り、暫くすると女主人が案内人を連れて戻ってきた。
親方は原石と格闘し始めたのだろう。この場に戻ってはこなかった。
個別の新規契約の書類をカラダンとミシェルで確認。
その間に俺はデカい鏡の交渉を実施。
1枚7000ナールを3割引をセットして、4900ナールで購入。
こちらは個人取引なので、キッチリとスキルを適用した。
また、同じサイズの鏡を購入することはあるのだろうか。
案内人が巨大な鏡を包むカバーを取りにいってくれた。スマンね。
書類の確認が終わり、カラダンが署名した。
お金のやり取りは納品時に実施する。
今回は長期契約の20枚分の鏡の代金4万9000ナールを支払った。
お互いに利のある取引を結べたので、カラダンと女主人が握手をして商談は終了。
今回の取引の主役はカラダンだ。
俺は荷物持ちに徹した。いつも荷物持ちをしているのだが。
店を後にして、ギルドで出市手続きを済ませ、ザビルの拠点に帰還。
「午後のボーデでの取引はザビル側は誰を連れていくつもりだ?」
「よろしければ、先ほどのペルマスクと同じメンバーで。
石鹸セットを運ぶのに人手が必要ですから、マテウスとピコを連れていきたいです。
ミシェルも外せないので、結局は4名となります」
「こちらは俺とエネドラなので、ちょうど6名になるな。ザビル側の人選に問題はないと思う。
では、午後になったらクーラタルに来てくれ」
拠点間物資輸送のスキルで、鏡を満載した背負子と巨大な鏡をクーラタルの倉庫に直接転送。
拠点構築のスキルが使えると本当に便利だ。
ワープを使って重装備状態でも移動できるが、倉庫に直接移送できるから楽チン。
カラダン達と別れて、クーラタルに帰宅した。
・・・・・・
昼食時にエネドラと商人娘グループに今日の午前中の情報を共有。
エネドラ配下にアネット、シルビア、クララの商人系ジョブの者が加わったので、エネドラに話す内容は三人も興味を示している。
特にカラダンとミシェルに取引を任せたことは、何か感じることがある雰囲気だ。
自分達の未来の姿を思い浮かべているのかもしれない。
チクルスにはフローラという薬草採取士のジョブを持つ仲間が増えたので、仲良く生薬生成に勤しんでいるようだ。
だが、あまり仲が良くなり過ぎて、悪戯集団が組織化されないように注意が必要だ。
フローラの方がチクルスよりも四つ年上なので、ストッパーになってほしいのだが。
食事を終えて、午後からの公爵との取引の準備に入るために食堂を去ろうとしたところで、俺の前に迷宮組の三人が立ちふさがった。
「主、アミルだけ狡い。あたしも主と一緒に行きたい」
「行きたいって?アミルと行くのは巫女のジョブ取得のために滝に行くだけだぞ。
まあ、モンスターがいるかもしれないが、
Lv1のニードルウッドぐらいしかいないから、つまらないと思うけど」
あらら、どこかで話がこじれたか?
「御館様はアミルと一緒に水浴びに行くって聞いた。あたしも行きたい」
「ユキムラ君、お姉ちゃんも行きたいなぁ~♪」
「いや、俺は水を浴びないぞ」
既に神官のジョブは持っているし。
そもそも、打たせ湯・・・・・・じゃない、一人しか水に打たれないような小さな滝なのだ。
水遊びに行く訳でもないし、そんな季節でもないだろう。
「みんなで行きたいのか?」
俺の言葉に三人が頷いた。アミルは苦笑している。
そもそも、滝行の件はアミルにもちゃんと説明してなかったから、俺のせいかもしれない。
アミルと俺が何か楽しい外出をするとでも思ったのだろうか。
「三人とも巫女のジョブを取得するか?」
俺の言葉に三人とも頷く。でも、絶対意味を理解していないと思うぞ。
それにしても、三人共ちゃんとジョブ取得できるだろうか。
オリビアは謎の力で取得しそうだが、ヴィルマは天然だし、イレーネは魚好きじゃないから、今回厳しくないだろうか。
それ以前に、あの滝の周りには魚が見当たらなかった気もするが。
まあ、別に良いか。ある意味、気分転換になりそうだし。
「じゃあ、午後の取引が終わったら、呼びに行くのでそれまで待っていてくれ」
四人とも頷いて去っていった。
アミルは二階の作業室に、前衛組三人は修練場に向かうのだろうな。
そのうち迷宮組だけでなく、他の護衛部隊のメンバーも巫女や神官のジョブを取得したいって言い出したりして。
まあ、複数のジョブを持つこと自体は悪くないが、どうだろうね。
少し釈然としない気持ちだが、これからハルツ公との取引なので、二階に上がって準備することにした。
お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/3/11(水)の予定です。