廊下を少しだけ歩くと、直ぐに目的地だったようだ。
ドアの両脇に立つ騎士に女性騎士団員が合図し、扉が開かれた。
ちょっと仰々しくて、ビビッてしまう。
その先にはホールのような広い部屋が見えた。
ドアを通ってすぐの所に、カシア様とその両脇に二人の女性が控えていた。
一人はゴスラー騎士団長の奥方かな・・・・・・見覚えがあるような気もする。
確かオークションで我が家の石鹸を落札した方だと思うのだが、エルフは全員美形なので、服装が変わるとイマイチ記憶に自信がなくなる。
「お待ちしておりました。ようこそおいでくださいました」
俺達が入室すると、カシア様と両側の女性が綺麗に頭を下げた。
慌てて、こちらも頭を下げる。
遅れて入ってきて、公爵の奥方に頭を下げてもらうなんて恐れ多過ぎる。
「タケダ殿のパーティーメンバーのアミル、ヴィルマ、イレーネ、オリビアとエネドラじゃ」
公爵の紹介に彼女達を見ながら、もう一度頭を下げることにした。
すると、五人も俺に合わせて頭を下げてくれる。
同調圧力だ。今回はヴィルマも空気を読んでくれた。
エネドラは何度も公爵夫妻と顔を合わせているし、なんならシェル達を引き受けてもらう時の交渉で会話もした。
彼女は公爵夫妻の人となりは理解しているが、他の四人は面識がないので不安だ。
まあ、アミルは大丈夫だと思うが、問題は残りの三人。
続いてハルツ公がカシア様と両脇の二人を俺達に紹介してくれた。
一人はやはりゴスラー騎士団長の奥方で、もう一人も爵位持ちの貴族の奥方のようだが、俺の記憶にない名前の方だった。
「タケダ殿も皆も、座られるがよい。
先ほどの模擬戦で喉も乾いておるだろうし、まずは食事にいたそう」
中央のテーブルを挟んで公爵側の五人と、こちらの六人が席に着いた。
公爵側は左から公爵、カシア様、騎士団長、その奥方、もう一人の女性という順。
タケダ家は左から俺、ヴィルマ、アミル、オリビア、エネドラ、イレーネの順。
俺、アミル、エネドラの良識派で、問題児を挟んで監視する形だ。
本当はカシア様の前にエネドラを座らせたかったのだが、何か起きると怖いので今回はこのフォーメーション。
「お飲み物はお酒にいたしますか」
「ハーブティーか何かがあれば」
「かしこまりました」
酒は拙い・・・・・・きっと良くない事が起きるはずだ。
アミルとエネドラに目配せしたので、俺以外の五人もハーブティーに落ち着いたようだ。
酒だけは絶対に避けなければならない・・・・・・酒だけに。
ミラが隻眼のバルドルフをヘッドロックした光景が思い浮かんで・・・・・・消えていった。
「それではタケダ殿とそのパーティーメンバーの迷宮討伐を称えるための饗宴を始めたい。
よくいらしてくれた。今日は存分に食べ、楽しんでもらいたい」
ハルツ公の挨拶で夕食会が始まった。
特に乾杯などはないようだ。俺達に酒を出してもらってないから当然か。
テーブルの上に出されている豪華な料理に舌鼓を打つ。
アミルは、向かい合ったゴスラー騎士団長と無難な世間話をしている。
鏡や石鹸が話題に上がると途端、彼は苦笑いを浮かべた。
苦労人同士気が合うのかもしれない。
これなら問題なく済みそうな気がする。
「今はどの辺りで戦っていらっしゃるのでしょう」
「クーラタルの34階?」
「それはなかなかでいらっしゃいますわね。私共も負けてはいられません」
ヴィルマ、何を訊かれても『なんだっけ、主?』と言う約束だっただろう?
先ほどの模擬戦で、晩餐会用に決めた約束事の記憶が飛んでしまったのかもしれない。
でも、クーラタルの56階層って言わなくて助かった。
午前が56階層で、午後が護衛部隊と組んで34階層だったから、午後の記憶しか残ってなかったのかもしれない。
50階層の迷宮ボスを討伐した俺達が何故34階層なのかというツッコミはなかった。
修行し直すと伝えたから、34階層で修行していると思われたのだろうか。
内密の情報の方を洩らさないか、冷や冷やしてしまう。
迷宮討伐戦のことは、なるべく話題から避けるように誘導しよう。
話題を選びながら、迷宮や戦闘の話題を避けるように慎重に会話を行う。
カシア様が迷宮討伐戦を話題にしようとすると、
「そういえば、そろそろ石鹸とは違う商品を開発しようかと研究中で・・・・・・」
と言って、公爵を凍らせる。
カシア様の鋭い視線がこちらに向くが、陽動作戦なので仕方がない。
「なかなか簡単には新商品は作れませんので難儀しております・・・・・・」
と言って、お茶を濁す。その場しのぎだ。
その後は原作にも出てきた『つぐみの丸焼き』の料理が出されて美味しくいただいた。
確かに上手いけど、食べにくいし、ボリュームはないな。
遠目にイレーネが笑顔で食べている姿が見えて、可愛かった。
「タケダ殿、少しよろしいか」
おっと、ようやく来たか。
公爵が手にコップを持って立ち上がったので、俺もハーブティーの入ったコップを持って後に続くことにした。
エネドラとアミルに『三人のフォローよろしく』と電波を送っておいた。後は任せたぞ。
テーブルから離れた窓際の所まで連れていかれる。
おもむろに公爵が口を開いた。
「タケダ殿は帝国解放会というのを知っておられるか」
「いいえ」
俺の知っている原作にでてきた帝国解放会と、こちらの世界の組織が同じか分からないから、そう答えるしかない。
「迷宮に入って戦う者の相互扶助を目的とした団体じゃ。
帝国の領土を迷宮や魔物から解放することを目指しておる」
「なるほど」
原作と同じか。今のところは。
「皇帝に直属する帝国騎士団の母体ともいえる組織じゃ。
その帝国解放会にいずれタケダ殿を招請したいと考えておる。
迷宮を討伐したタケダ殿であれば、相応しいと考えておるからな」
「私がですか?」
相応しいかどうかはともかく、こちらとしては情報収集の場として使いたい。
「迷宮に入って功を立てようとするならば、入っておいて間違いがない。
パーティーメンバーの実力も見させてもらったし、迷宮討伐も成し遂げておる。
タケダ殿ならば、余も自信を持って推薦できる」
「左様ですか」
迷宮討伐しているのに推薦が必要なのか?・・・・・・という疑問はあるが、秘密結社なら推薦人がいないと入会できないのか。
「実力を評価した上での推薦なのですか」
「迷宮で戦う者の相互扶助が目的じゃ。戦えない者が入会しても仕方あるまい」
公爵の言葉に頷くしかない。
「帝国解放会に入れば様々な援助が受けられる。
任意だが入っている迷宮を伝えれば、迷宮を倒したときすんなりと承認を得られやすい。
帝国解放会では装備品の売買も行なっている。
また迷宮に関する情報などを得ることもできよう」
「承認ですか」
そういえば、俺達が討伐したターレ迷宮の承認ってどうなったのだろうか。
その迷宮がある土地を誰も領有していなければ、領地持ちの貴族になる可能性があるということだろうか。
ターレの土地は領有者が決まっているだろうから、承認に意味などないか。
領有者と異なる者が迷宮討伐しても、領有権が変わる訳でもないし。
確か領地持ちは男爵からだとヘルミーネが説明してくれたな。
そもそも、貴族でもない者が一つの迷宮を討伐しても、士爵になれるだけであって男爵でなければ領地を持てない。
それはともかく、ターレ迷宮は誰が討伐したということになったのだろうか。
公爵の騎士団が討伐したことになったのか?
ギルド神殿はこちらで持っているのだが。
名もなき冒険者が討伐して立ち去ったということになっているのかも。
まあ、こちらはギルド神殿が手に入ったから、扱いはどうなっていても構わないか。
「装備品の売買も行なっているのですか?」
「売買には多少の制限もあるが、大したことではない。
義務や禁則事項もほとんどなく、入会したことでデメリットが生ずることはない。
全ての人々の解放を目指しているので異種族に対する差別が禁止されているが、
これはタケダ殿のパーティーメンバーを見る限り、なんの問題もあるまい。
その他には、会で得た情報やメンバーについての守秘義務が課せられることくらいか」
守秘義務か・・・・・・我が家は内密情報も多いから機密保持には注意を払うべきなのだが、できていると言えるかというと怪しい気もする。
「それにしても、何故我々を?」
「タケダ殿ほどの力があるならば、推薦者になるのは当然のことじゃ。
迷宮を討伐したのだから、貴族に列せられる資格を得ておるも同然じゃ。
今日見たパーティーメンバーの実力も申し分ない」
表向きの話としては、実力を評価しただけだと言ってるのだが。
貴族になれば、その力を派閥に取り込みたいということだろうな。
本当は公爵も俺のような迷宮討伐者を他の者に取られたくないだけなのでは?
うぬぼれが過ぎるか?・・・・・・芽が出るかもしれないから唾をつけておくというだけのことかも。
原作でもエルフヒロインを下賜する時に、帝国解放会の推薦人は誰の目から見てもその陣営下にあるとか言い放ってたものな。
帝国解放会は世俗のポストなど関係のないと建前論があったけど、世俗とべったりな面も存在していると感じる。
「入会試験が必要だが、申請は余の方から出しておこう」
「入会試験というのは・・・・・・迷宮を討伐していても必要なのでしょうか?」
俺の問いにハルツ公がニヤリとした。
「貴族にはならないと言っておるタケダ殿が、迷宮を討伐したと公言するのもどうかの」
「確かに・・・・・・入会試験を受けることにいたします」
なかなか微妙な判断だ。
自分達の力を認めさせたいと思う一方で、それを利用する者のちょっかいが増えるのは困る。
迷宮はコッソリとザクザク討伐したいのだよなぁ。
タケダ家の真の実力や全貌は隠したままで、一定の影響力を保ちたい。
そんな都合の良い部分だけ選ぶことができるだろうか。
それは別にしても、帝国解放会に入会するメリットは大きいのだよなぁ。
試験を受けることについてはリスクが低いから、迷宮討伐の件は今暫くは限られた貴族に伝わってる程度で構わないか。
いずれは他の貴族の知るところにはなるだろうし、ハルツ公の貴族内には知られてしまったから広がるのは時間の問題かもしれないが。
迷宮情報や討伐ノウハウ、貴族しか入手できない高品質の装備品が得られるのは利点だ。
特に迷宮情報は自分でフィールドを歩き回って探す訳にはいかないから。
街の探索者ギルドに寄れば場所は分かるだろうけど、先行者がいたり、騎士団員が配置されていたりすると面倒なのだよなぁ。
帝国解放会に入会したら、各街の探索者ギルドを回って、情報収集を必要に応じてやるか。
ロッジの資料室の調査と突き合わせて、手頃な迷宮があれば討伐しても良いが、探索者ギルド経由では都合よく見つからないだろう。
帝国解放会の資料室であっても都合良く攻略しやすい迷宮があるとは限らないが、他家が敬遠する迷宮でも俺達なら攻略しやすいものがあるかもしれない。
情報は広く集め、精査は後からしっかりとやればいい。
ダメ出しされた情報でも、時間が経過し、観点が変われば見直される情報もあるはず。
「タケダ殿の入会試験は、クーラタル迷宮の45階層でのモンスターとの戦闘やボス戦になる。
迷宮討伐した実力があれば、なんの問題にもならないであろう」
「なるほど。心して臨みます」
いつも通りの戦闘は見せられないよな。
特に通路での通常モンスターとの戦闘は後ろからチェックされるから、いつもよりスペックダウンして戦う必要がある。
まあ、それも事前に練習しておけば問題ないだろう。
「直ぐに申請しても話が通るまで十日近くかかる。
タケダ殿には十日後にまた来ていただきたい」
「分かりました。十日後にこちらに参ります」
公爵と席に戻り、その後も歓談を続けた。
エネドラがゴスラー騎士団長の奥方に鏡の話を振ると、横にいたゴスラー騎士団長が関連した話をしてくれた。
「鏡についてはボーデの騎士団側で冒険者ジョブを持つ者を募って
引き継ぐことも考えたのですが、あいにく手が足りません」
「今は隣国との兼ね合いで人が出せない状況なのじゃ」
騎士団長の話を公爵が補足した。
「まあ、手配できるようになりましたら引継ぎしますので、今のままでも別に結構です」
「最近は国境近くの領地だけではなく、あちこちの街で盗賊が例年より多く出没して、
公爵領だけではなく、他の領地でも手を焼いているようです」
何故かカシア様まで話に乗ってきたのは鏡関連だからだろうか。
俺を通すと余分に費用がかかるのだろうが、冒険者のジョブを持つ複数人の騎士団員を一時に集合させて、移動&輸送作業に従事させるのが煩雑なのかな。
冒険者は確かに便利だものな。
それはともかく、こういう広い地域での治安情報やら隣国との政情やらは、貴族との付き合いがなければ入手できないよなぁ。
やはり、貴族との付き合いは必要なのかもしれない。
貴族そのものになれば情報が格段に入手しやすくなるが、余計な
傀儡に仕立てられる貴族でもいるのなら考えるが、そう簡単ではない。
いくら傀儡と言っても、あまりに頼りにないのでは傀儡にすらなり得ない。
とはいえ、ラファやヘルミーネ等を傀儡にする訳にもいかない・・・・・・本人達は諸手を上げて立候補しそうだが、それは傀儡とは呼べないだろう。
『諸侯会議で活躍するのが夢でした』と言って、本当に活躍しかねないしな。
ラファとヘルミーネのいた国に諸侯会議に該当するものがあったのかは知らんが。
帝国解放会の試験を申し込むことが決まり、公爵やカシア様との会話も無難にこなす。
模擬戦に話題が移るのは、まあ問題ない。
ただ、『主はあたしの3倍強い』と言うヴィルマの発言には苦笑するしかなかった。
俺は赤い●星ではない。
ヴィルマ二人がかりでも勝てないと思う。
三人になったら、サンドバッグ状態になる自信があるぞ。
公爵からは『タケダ殿は是非、貴族に・・・・・・』、『今後も領内の迷宮に是非・・・・・・』という熱烈な勧誘を受けた。
彼は酔っているのではないだろうか。
『新商品の開発が忙しいので』という伝家の宝刀を使って、酔いを醒ましてあげた。
もちろん、カシア様の『タケダ様、是非頑張って下さい』という応援つきだ。
今後も有効活用させてもらおう。
これ以上、ボロが出ないように適当なところで暇乞いして、城を立ち去ることにした。
・・・・・・
クーラタルの自宅に戻り、アミル、エネドラと食堂へ。
三人で晩餐会で収集した情報の確認のためだ。
前衛組の三人は風呂へと送り出した。
いつ戻ってこられるのか分からなかったから、今日は夜の会議は中止にしてある。
エネドラとアミルに夜の残業をあまりさせたくないので、短時間で終わらせよう。
「鏡はタルエムの装飾がなされて、かなりの数が領内、領外へと贈られているそうです。
石鹸セットと共に贈られることも多く、かなり評判になっているとおっしゃってました」
「そうか、一応狙い通りだな。
後はルークの所の委託販売でどれだけ売れるかを確認していくか」
エネドラはゴスラー夫人ともう一人の女性の前に座っていたので、良い情報が得られたな。
「ハルバーの迷宮の方はもう少しで迷宮討伐が視野に入るそうです。
ボーデの方はまだ時間がかかりそうだとゴスラー様はおっしゃってました」
「そうか。やはりターレ迷宮の探索の方が進捗が良かったのだな」
とはいえボーデ迷宮を討伐しても威霊仙がもらえる訳でもないし、他の迷宮討伐を目指すか。
「アミルは、今日の模擬戦で戦ってみて、相手の強さをどう思った?」
「そうですね。少し違和感がありました。
手を抜いてるという訳ではないのかもしれませんが、
全力を尽くしているとも思えませんでした。
何かこちらの実力を探っているようにも思えました」
やっぱり、そうなのか。
「まあ、こちらも相手の実力を測っていたので、お互い様だな。
それなりにタケダ家の実力は示せたので問題ないだろう」
「はい。実力の全てを見せずに済んで良かったです」
三人の模擬戦での戦い方は、それほど悪くはなかったと思う。
手の内を見せずに実力もそこそこ示せただろう。
そのおかげで帝国解放会に誘われた訳だし。
「俺の方はハルツ公から帝国解放会という組織への勧誘を受けた」
「帝国解放会ですか?聞いた事ないですね」
原作ではドワーフヒロインが知っていたが、普通の探索者だったアミルは知らないのか。
ってか、知っている方が不思議な気もするのだが。
秘密結社ではなく、知る人ぞ知る組織なのだろうか。
パーティーメンバーとそれに準じるタケダ家の家宰だから、この件は話しても大丈夫だろう。
あとで、ラファやヘルミーネなどにも確認しておくか。
我が家には、帝国の元貴族というのはいないのだよなぁ。
ハルツ公から説明のあった帝国解放会の概要をかいつまんで説明した。
「ご主人様、貴重な情報が入手できるのは嬉しいですね」
「そうだな。情報や装備品を得られる可能性があるので、入会する価値はあると思う。
10日後に入会試験があるが、試験官の前でモンスターと戦闘をすることになる。
いつも通りの戦いは見せられないので、注意が必要だ。
魔法なし、槍二刀流なし、俺の四刀流も隠して戦うことになるだろう。
アミルは巫女のジョブで戦うことになるかもしれない。
ボス部屋の攻略も合格条件らしいが、そこではいつも通り戦っても構わないだろう。
ボス部屋には俺達以外のパーティーは入れないからな」
俺の言葉にアミルも神妙に頷いた。
今日せっかく手の内を隠したのだから、入会試験でも隠しておきたい。
概ね情報共有が終わったので、晩餐会の話は終わりにした。
後は・・・・・・ちょっと言い出しづらいのだけど。
「アミル、こんな時間に話をするのは申し訳ないのだが・・・・・・」
「竜人族の双子さんのためのスキル融合ですね。エネドラさんから既に伺っていますよ」
「これが、そのリストだ。こんな時間に頼んで本当に申し訳ない」
「大丈夫ですよ。四つだけですし、明日の昼までには仕上げておきます」
スキル融合はアミルに頼み、双子の教育はエネドラに頼むことに。
アミルとエネドラを苦労人役にしているのは、やっぱり俺だよなぁ。
今度、秘密基地で特別な接待をしてあげよう。
二人にお休みの挨拶をして、各自、自室に戻ることにした。
部屋着に着替えて、いつもより少し遅い風呂へ。
・・・・・・
風呂を終えて、自室の机で今日の一人反省会。
午後の竜人族の双子を迎え入れる件は、イロイロと失敗した気がする。
普段の自分以上に感情的になってしまった。
迷宮討伐を達成したりして、驕りが出たか。
でも、迷宮討伐は嬉しかったけど、威霊仙を得た以上の高ぶりではなかったよな。
リカルド騎士団長にまでガンを飛ばすとか、自分でもビックリの行動だ。
今までも奴隷を散々受け入れたり、見切りをつけて受け入れなかったりしたのに、あそこまで感情的になるとは。
この世界に適応して慣れで気が緩んだのか、いずれにしても戒めなければならない。
アミルにも急なスキル融合を頼むことになったり、エネドラに教育を丸投げすることにしたり、皆に無理を強いたか。
竜人族なのに竜騎士のジョブじゃない者を身請けするなど、今までの奴隷選定基準から逸脱している気がする。
とはいえ、身請けすると決めた以上は、ちゃんとサポートして我が家に馴染んでもらおう。
明日の午後イチでザビルに行って引き取ってくるか。
夕方の晩餐会の首尾はどうだったか。
帝国解放会に誘われるという最低限の成功ラインは満たした。
鏡の取引が継続になったのは、別にどちらでも構わないと思っていたので評価外。
騎士団員がヴィルマとに模擬戦を挑んでくるのは一応想定していたが、ヴィルマがドレス姿で受けることや三戦もやることになったのは想定外だった。
ただ、一定程度は公爵レベルの騎士団の上澄みの戦力が確認できたかもしれない。
向こうも全力ではなかったかもしれないが、それはこちらも同じだ。
公爵の騎士団、タケダ家の精鋭レベルでは、きっと実力は遜色ないものだと判断できるかな。
僧侶Lv90の位置づけはどうなのだろうな。
俺に模擬戦を挑んでくるぐらいだから、近接戦闘はこなしているのは間違いない。
ひょっとして、迷宮ボス戦ではお供を引き受ける役割なのかも。
レベル補正の力と治癒魔法を使えば、互角に戦えるのかもしれない。
神官の方が適切な気もするが、たまたま就いた僧侶のジョブでかなり努力をして上げたのだろうか。
単体治療の絶対値は大きいのだろうけど、タケダ家だと神官ジョブの方が標準だよな。
ザビル騎士団とハルツ公騎士団の比較はどうだろうか。
ジョブ構成は似たような面子だが、レベルは明らかにハルツ公の騎士団が高い。
レベルが全てではないが、まともに戦えばザビル騎士団の劣勢は否めないか。
レベル補正削減や対人強化のスキルの有効性の再認識した。
原作でも、狼人族ヒロインがドーリットルへの攻撃がほとんど通じなかったとあったよな。
レベル差は23ぐらいだったか。
二人の戦いがどういうものだったのか分からないけど、実剣ではなく木刀か何かで模擬戦をしたのだろうか。
剣の質とレベル補正でのダメージ軽減がどの程度関係するのか分からないな。
今度、また実験してみるか。
銅、鉄、鋼鉄、ダマスカス鋼等でそれぞれ、レベル補正のスキル有無でどの程度変化するのか?
実験ばかりしていると変人扱いされるんだよなぁ。まあ、今更か。
(コン、コン・・・・・・)
ドアを開けると・・・・・・イレーネか。
いつも通り、彼女はずんずんと部屋を突き進み、ボンッとベッドの上に飛び乗って横たわる。
彼女は俺にお姫様抱っこさせてくれる隙を見せないのだよなぁ。
俺に背を向けて、うつ伏せになっている彼女にマッサージを始める。
首、背中、腰、太腿・・・・・・丁寧に、なるべく優しく揉み解していく。
唯一、俺が彼女の上に乗っかっても機嫌を損ねないシチュエーション。
彼女はだいたいにおいて、俺の上に乗ろうとしてくるので、俺が乗っかろうとすると激しく抵抗してくる。
「っ・・・・・・」
少しは気持ち良いのだろうか・・・・・・時々可愛い吐息を洩らす。
「今日はボーデの城の模擬戦は楽しめたか?」
「全然・・・・・・相手は本気じゃなかったし」
アミルも似たようなことを言っていたが、イレーネもそう感じたのか。
「相手は手を抜いていたのか?」
「こちらを試していたような・・・・・・ムカついた」
だから厳しいカウンターを与えていたのか。
自分より弱い相手に、ドS性が発揮されたのかと思ったけど、相手の態度が問題だったのか。
イレーネは昔に比べれば筋肉が柔らかくなったかな。
前はもっと硬かった気がする。
ヴィルマに教えてもらいながら、柔軟性を高めているのだったか。
努力が少しずつ形になってきたかもしれない。
マッサージが終わり、彼女を仰向けにした。
(ポイ、ポイ、ポイッ・・・・・・)
一気に彼女は自分の着ているものを脱ぎ捨てる。素早いというか鮮やかという一言。
こちらも負けずに服を脱ぎ捨てる。
彼女は俺の肩を掴んで、ベッドに押し倒して上に圧し掛かってきた。
(ガブッ、ガブッ、ガブッ・・・・・・)
首やら、肩やらアチコチを噛んでくる。もう、これもお決まりの流れだな。
マウンティングとマーキングは彼女の夜伽の儀式になってしまった。
彼女が我が家に来て直ぐの頃は、所謂マグロ状態でなすがまま・・・・・・というか、早く終わってくれって感じだったよな。
その頃を懐かしく感じてしまう。
噛まれても、俺は無詠唱で手当をかけまくるようにしている。
手当をかけても肌が赤くなったりしてる箇所は直ぐには消えないのだけど、内出血痕が翌日まで残ることはない。
その間、俺は彼女のアチコチを触って愛撫しまくるのだが、それは嫌ではないみたいで好きにさせてくれている。
そして、彼女が欲情しているのも体の反応からちゃんと伝わってくる。
少し上気させた彼女の顔をゆっくりと引き寄せる。
抵抗を少しみせていたけど、今はイレーネの方から俺の口を蹂躙し始めた。
イニシアチブを取られるのが嫌なのだろう。
口を離して勝ち誇った顔をしているのが見えた。
こちらも対抗するために、彼女の中にゆっくりと侵入。
「くっ・・・・・・うっ・・・・・・」
彼女の顔から悔しそうな表情が見てとれる。
俺を睨みつけながら、彼女の方から上下に動き始める。
この振る舞いは他の娘にはない彼女独特のものだ。
本当に負けん気が強い。絶対不服従の構え。
でも・・・・・・こういう気性が可愛く感じてしまう。
こちらも彼女の期待に応えるために、腰の位置を調整しながら、彼女の中を攪拌していく。
頬を赤くしながら、涙目で睨みつけくる彼女を一層愛おしく感じる。
一息つくために動きを止めた彼女の隙をついて、こちらが律動を開始。
不意をつかれ、俺の胸に顔を押し付けて耐えているのが分かる。
「御館様、狡い・・・・・・」
「勝負で油断する方が悪い」
俺と彼女の夜のやり取りはいつも、こんな感じだ。
甘々トークはなく、勝つか負けるか。
力が入らないまま、両腕でポカポカと俺の肩を叩くが、彼女が頂点に向かって疾走し始めたのが感じられた。
「っ・・・・・・、っ・・・・・・!」
痙攣し、息を止めながら彼女が果てたのを感じて、こちらも欲望を解放した。
今日は終わっても噛んでこないな。
俺の胸に荒い息を吐くのが感じとれて心地が良い。
(ガブッ、ガブッ、ガブッ、ガブッ、ガブッ、ガブッ、ガブッ・・・・・・)
やっぱり噛むのか。これがないと一区切りついた気がしないのだよなぁ。
噛んだ後に優しく舐めてくれるのが希望だけど・・・・・・それは無理か。
まだ、お互い体力が余っているから、次に期待しよう。
・・・・・・
お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/3/29(日)の予定です。