異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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079.才能?(その1)

 ゼノとゼナを迎え入れたが、エネドラ達に二人の教育は任せっきりだ。

 ブラヒム語は話せるようにキッチリと勉強させられたようだが、他の教育の方はかなり怪しいと思っている。

 なので、一般常識含めて教えるのはそれなりに大変かもしれない。

 奴隷村では学べなかったことが、結構たくさんあるだろうから。

 

 教師陣はそれなりの人数がいるので大丈夫だと思うが、後方支援部隊を増やす前だったら、ちょっと大変だったかもしれない。

 エネドラには先見の明があったということか。

 俺の行動を見越してのことかもしれないな。

 

 そして、その後方支援部隊のおかげで戦闘部隊の方は迷宮に集中できる。

 戦闘部隊の方は主に3つのパーティーで迷宮を探索している。

 

 ザビル第二迷宮に派遣している部隊は17階層の攻略に取り掛かった。

 レイモンド、フラウス、ドロテアを固定メンバーにレドリック組(レドリック、フレイヤ、ケリー)とモニカ組(モニカ、マヤ、マリー)が一日ごとに交代で探索。

 心配していた盗賊との遭遇はなく、盗賊殺しの経験は積めないままの状態。

 まあ遭わなければ、それはそれで問題ない。

 探索の方は一日に一階層ずつ、着実に上の階層に上がっていっている。

 

 騎士団のパーティーとは、ほとんど遭遇しないそうだ。

 レイモンドが騎士団員に聞いた話によると、騎士団のパーティーは低階層の魔物部屋を潰して回っているらしい。

 探索終了宣言のためだろうか。

 確か低階層でエリアを探索しつくして、魔物部屋もキッチリ潰すとか原作にもあったような。

 

 この世界の魔物部屋は原作よりも広いし、モンスターの湧くスピードも高い気がする。

 3日で10m四方の魔物部屋がいっぱいになるよな。

 それで、だいたい40匹前後のモンスターで満員御礼になる。

 一度殲滅しても、一日で13、4匹発生?

 二日経つと、二十数匹になるから、毎日潰さないと安全にはならないだろう。

 

 低階層だからモンスターも大して強くないが、数が増えると脅威だし、スキル持ちや毒を与える奴がいると更にやっかいだ。

 低確率とはいえ、数が集まり、攻撃回数を増やされると状態異常が発生する確率も高まる。

 十数匹でも安全に倒そうと思ったら、騎士団も2パーティーぐらい投入するべきかも。

 

 1階層から11階層の魔物部屋を潰すとなると2パーティーを使って1日仕事かもしれない。

 魔物部屋に辿り着くまでだって、モンスターと遭遇すれば倒す必要がある。

 管理された迷宮を維持するというのも、なかなか大変なのかもしれない。

 

 

 階層の更新を行なっているのは、ほぼタケダ家のレイモンドのパーティーだけのようだ。

 毎日のように階層案内の報酬をもらって帰ってきている。

 それがレイモンド達のパーティーのモチベーションになっているようで、送り出した俺としても誇らしい気分。

 

 迷宮探索で上の階層を目指すのは暫くは一般の探索者に任せて、34階層以降になったら騎士団の主力が投入されるのかもしれない。

 今回は騎士団ではなく、タケダ家の力で討伐したいと思っているけど。

 ターレ迷宮でやったように、実際の最新到達階層と到達報告階層をずらすやり方を今回も適用してみるかな。

 

 

 一方で午後限定だが、クーラタル迷宮の34階層以降を攻略する迷宮組と護衛部隊の混成チームも順調だ。

 毎日一階層ずつ攻略して特段事故のようなものは起きていない。

 迷宮組の前衛三人は俺がいなくても生き生きと戦っているとアミルが教えてくれた。

 

 魔法使いはトカラ固定で、探索者をアミルとヘルミーネが一日置きに交代している。

 治療役はラファとアミルで、やはり一日置きにする編成をレドリックが決めた。

 

 このままなら、44階層までは問題なく行けるかもしれない。

 45階層以降はどうするかだな。

 数日後には45階層に到達してしまいそうだから、その後のことも考えないと。

 

 

 そして、午前中のみクーラタルの56階層を攻略している迷宮組は、探索を開始して6日目にようやくボス部屋まで辿り着いた。

 このボスをアッサリ倒せるかどうかが、63階層のボス戦の試金石になるはずだ。

 

 待機部屋で念入りにブリーフィング。

 

「56階層のボス戦は恐らく今までのボス戦の中で一番手強いはずだ。

 皆、心して戦ってほしい。

 56階層のボス戦はボスが二匹とお供が四匹出現する。合計六匹だ。

 対して、俺達のパーティーは五人しかいない。

 つまり、最低でも一人は二匹を相手しなければならない。

 俺が二匹と戦う場合、オリビアが二匹と戦う場合、俺とオリビアが二人とも二匹と戦う場合・・・・・・いろいろと試してみたい。

 なので、この階層のボス戦は何度か戦ってみたいと思う」

「主、あたしらはダメなのか?」

 ヴィルマとイレーネが不満気な顔だ。

 

 そういえば、原作のヒロインも『56階層からの魔物は期待が持てそう』とか言ってたっけ?

 ヴィルマとイレーネも56階層のボスモンスター戦に期待していたのだろうか?

 

「いや、ダメじゃないぞ。

 まず、複数武器持ちの俺とオリビアが試してみて問題なければ、

 ヴィルマとイレーネも二匹引き受けるパターンを試してみたい。

 ただし、二人が引き受ける二匹は、まずはお供の方だ。

 他にも、ヴィルマとイレーネでボスを一匹ずつ受け持ってもらって、

 お供の二匹ずつを俺とオリビアで対応する等、いろんなパターンで試したい。

 アミルは遊撃に専念してほしい。

 誰か苦戦していたり、飛行型のモンスターがお供で出現した場合にフォローしてくれ」

「了解しました。ご主人様」

 ヴィルマとイレーネも少し機嫌が良くなったか。

 

 自分達もボスとの戦闘や二対一の戦闘ができると分かって、やる気が出てきたのかも。

 別に二人を信用してない訳じゃないが、剣一本で二匹と戦うのはちょっと不利だから、初めは様子見してほしいのだ。

 

 今までだって、通常の戦闘では相手が六匹なんてことはザラだったが、今回はスペースの広いボス部屋だ。

 通常の戦闘では直ぐに仲間がヘルプに駆けつけられるし、明らかな数的不利の状態は長い時間は発生しなかった。

 今回は油断せずに戦っていきたい。

 

「クーラタルの56階層のボスモンスターはソリッドスライムだ。

 ローザの調査によると、中身が詰まった少し硬い表面のスライムらしい。

 ゼリースライムよりも、更に物理攻撃に耐性があるようだ。

 動きはゼリースライム同様に大して速くないらしいが、

 飲みこもうと被さってくるのは同じなので注意してくれ。

 まずは、普通に石化や麻痺の状態異常が付与できるか確認しながら戦おう。

 お供で出てくる可能性があるのは、

 ゼリースライム、オイスターシェル、ボトルマーメイド、ラフシュラブ、ロールトロールだ。

 一戦目は俺とオリビアがボス一匹と横のお供のモンスターをそれぞれ受け持つ。

 一番右のお供はヴィルマ、一番左のお供はイレーネが対応してくれ。

 魔法はいつも通り、雷魔法を使う。

 アミルは遊撃で苦戦しそうな所のフォローを頼むぞ」

「了解!」

「了解!」

「了解!」

「了解」

 今回はローザの調査資料を有効活用させてもらった。

 

 母親から教えてもらっていた情報と自分で調べた情報を合わせて資料化してくれたようだ。

 結構、大雑把な性格に見えたのだが、資料の方はかなり具体的で分かり易くまとめてあったので驚かされた。

 何か、引っ掛かるというか違和感があるのだが・・・・・・今は捨ておくか。

 

 

 セブンスジョブは百鬼夜行、鬼神、勇者、英雄、遊び人、魔道士、忍者で多分、手持ちのジョブ構成では最強のセット。

 

 装備品は、この前の迷宮ボス戦で使った槍も加えた。

 今回は装備品破壊のリスクはないので、ボーナス装備のデュランダルもアルフレイルも使う。

 

 ボスに対しては、硬直のダマスカス鋼槍と硬直のダマスカス鋼剣を使い、お供の方はひもろぎの聖槍とデュランダルを使う。

 まずはボスモンスターの無力化を優先。

 

 

装備 

 デュランダル(攻撃力五倍、HP吸収、MP吸収、詠唱中断、レベル補正無視、防御力無視)

 硬直のダマスカス鋼剣(石化添加、攻撃力2倍、MP吸収、クリティカル二倍)

 硬直のダマスカス鋼槍(石化添加、麻痺添加、催眠、MP吸収)

 ひもろぎの聖槍(知力2倍、攻撃力2倍、MP吸収、HP吸収、空)

 アルフレイル(防御力2倍、魔法ダメージ削減、状態異常無効、レベル補正無視)

 耐水のダマスカス鋼額金(水耐性、火耐性、風耐性、土耐性)

 耐毒の竜革グローブ(毒耐性、石化耐性、睡眠耐性、麻痺耐性)

 駿馬の竜革靴(移動力増強、回避力二倍、空2)

 身代わりのミサンガ(身代わり)

 

 56階層以降のボス戦を意識した装備セットだ。

 

 

「小荷駄隊外しで、始めるぞ。まずはフォーメーションを組んでからだ」

 

 ラファを小荷駄隊から通常部隊に入れて、ボス部屋に入る。

 扉は閉まらずに各自、配置につくのを待つ。

 

「では、戦闘を開始するぞ」

 

 ラファを小荷駄隊に戻すと、モンスター出現のエフェクトが始まった。

 

 ボスのソリッドスライム二匹と、お供は・・・・・・ゼリースライム三匹とオイスターシェルか。

 

(オーバーホエルミング)

 

(サンダーストーム)

 

(状態異常耐性ダウン)

 

 まずは、俺の目の前のソリッドスライムに博徒のスキルをかける。

 

 オーバーホエルミングが切れる前に、硬直のダマスカス鋼槍と硬直のダマスカス鋼剣でソリッドスライムを連打。

 元から動きが遅いので、当て放題だ。

 左右のバランスを取るため、ゼリースライムに対してもひもろぎの聖槍とデュランダルを連打。

 

 ソリッドスライムに20発ぐらい当てたところで、オーバーホエルミングが切れるまでの残りの時間で、左側にいるゼリースライムを硬直のダマスカス鋼槍と硬直のダマスカス鋼剣で連打。

 

 オーバーホエルミングが切れる・・・・・・が、これでどうだ。

 ソリッドスライムもゼリースライムも石化した。

 56階層のボスモンスターにも状態異常化の戦術は有効のようだ。

 

 

 次の獲物は・・・・・・先にイレーネの方から片づけるか。

 

(状態異常耐性ダウン)

 

 イレーネの前のオイスターシェルに博徒のスキルをかけ、石化したゼリースライムを避けながら援護に入る。

 

 槍で牽制をしながらオイスターシェルのバランスを崩させ、イレーネに攻撃させる隙を作る。

 彼女はオイスターシェルの側面に回りながら、硬直のエストックで連打。

 最近、彼女は盾をまた使い始めた。

 多分、迷宮ボス戦を見据えてのことだろう。

 盾を使い捨てにするための練習かもしれない。

 

 おっと、石化したな。これで、相手の戦力は半減した。

 

 次は近い順に片づけるか。

 

 オリビアはボスであるソリッドスライムと、お供のゼリースライムを交互に槍で突きながら距離を取った戦いをしている。

 

(状態異常耐性ダウン)

 

 まずは、ボスのソリッドスライムに博徒のスキルをかける。

 

 イレーネがオリビアの援護でソリッドスライムと戦うので、残りのお供二匹へと向かった。

 お供のゼリースライム二匹の背後に回って、槍で連続突きをかます。

 スライムに前後があるのかは知らんが。

 

 アミルとヴィルマが一番端っこのゼリースライムと戦っているが・・・・・・あれは既に麻痺しているようだな。

 プルプルしているけど、攻撃を仕掛けている感じには見えない。

 元々スライムはプルプルしているので、通常状態なのか麻痺状態なのかイマイチ分かりにくい。

 

 もう一方のゼリースライムに硬直のダマスカス鋼槍で連続突きを見舞う。

 これで・・・・・・石化したか。

 

 オリビアの方はソリッドスライムに連続突きを仕掛けて、石化させるつもりか。

 イレーネとどちらが早いか・・・・・・ああ、石化したな・・・・・・と言っても、二人の武器にはどちらも石化添加のスキルがあるので、どちらが石化させたかは分からんが。

 

 残りのヴィルマとアミルが戦っていたゼリースライムも石化した。

 

 これで石化させたモンスターを削って、煙に変えれば終了だ。

 

 石化したソリッドスライムは、なかなか削り倒すのがしんどかったが、デュランダルも駆使してなんとか煙に変えた。

 皆で分担して、ひたすら削って殲滅させた。

 

 ドロップ品は、スライムゼラチン3つとボレー1つ、そして、スライムマンナンが2つ。

 スライムマンナンって、コンニャク?

 なんか、多少はプルプルしてたけど・・・・・・蒟蒻系のゼリーを思い出してしまった。

 腸活に良いとかあるのだろうか。食材ではない可能性もあるが。

 

 

「オリビア、ソリッドスライムと戦った感想はどうだ?」

「頑丈で攻撃が通っている感じはしないかな。

 でも、状態異常に持ち込むまで、ひたすら突くだけだから楽と言えば楽かも。

 動きも遅いから、それほど怖いとは感じないかなぁ~♪」

 確かに彼女の感想には賛同する・・・・・・賛同するのだが。

 

 

「主、次はどうするんだ?」

「ああ、そうだな。まずは待機部屋に移動しようか」

 今後についての考察を中断して、ワープゲートを開けて待機部屋に移動した。

 

 

「次は、ヴィルマとイレーネの二人に、ソリッドスライムを一匹ずつ受け持ってもらおうか。

 お供は俺とオリビアが二匹ずつ受け持つ。

 アミルは自分の判断で、支援に入ってくれ」

「任せろ!主」

「やっと、出番・・・・・・」

 いやいや、先ほどもイレーネの出番はあったから。

 

 :

 :

 :

 

 その後も戦う相手を代えながら、ボス周回を繰り返した。

 ヴィルマとイレーネは初戦が始まる前まではウキウキな感じであったが、その後は徐々にダウン気味に。

 

「スライム遅い・・・・・・つまらない」

「主、硬いけど、それほど気持ち良くない。時間がかかっているだけ」

 イレーネ、なんちゅう我儘な。

 

 ヴィルマ、なんかそれ、俺のテクニックがイマイチと(なじ)っている訳じゃないよね?

 でも、二人のボス戦に対する評価はだいたい分かった。

 『56階層からの魔物は期待外れでした』ということだろう。

 

 

「アミルは強くなったボスとの戦闘や、お供が増えた56階層のボス戦はどう感じた?」

「スライムということもあって、うちのパーティーとの相性が良いので評価が難しいですね。

 飛行系のボスに飛行系のお供のモンスターだったら、評価が変わるのかもしれませんが」

 やっぱりそうだよなぁ。

 

 それなりにボス周回したから、午前中はここで引き揚げるか。

 

 57階層に抜けて、クーラタルの自宅に戻ることにした。

 

 

・・・・・・

 

 昼食を終えると、今日はザビルのカラダンの所に行くことになっている。

 食堂でゼノとゼナを取り囲むアネットやフローラ達教師陣を横目に見ながら玄関へと向かう。

 

 エネドラもヘルミーネと一緒に玄関に向かっているが、彼女達は奴隷商館巡りだ。

 レドリックが今日はザビル第二迷宮に行かず、クーラタル待機組なのでヘルミーネと共に外出できる日だ。

 

「旦那様、今日で概ね全ての主要な街の奴隷商館を回れると思います。

 戻りましたら、推薦する奴隷を提示しますので、お時間のある時に一緒に参りましょう」

「ああ、分かった。ありがとう」

 完全に分業制になってきたな。

 

 3日かけて奴隷商館巡りしていたらしいが今日が最終日か。

 1、2箇月周期で巡回するとか言ってたっけ。

 

 エネドラ達と玄関で別れて、ザビルの拠点へ移動。

 二階の会議室へと向かった。

 

・・・・・・

 

 会議室に着くと、既に俺以外のメンバーは集まっていた。

 カラダン、ピコ、マテウス、ローザ、ロベルト・・・・・・結構なメンバーだな。

 ピコはもうすっかりカラダンの秘書役になっている。

 

 ミシェルがこの場にいないのは、相談内容のせいなのかもしれない。

 俺が席に着くと、会議が始まった。

 俺は相談を受ける役なので、今回は聞き手に回る。

 

 

「では、始めてもらえるか。ローザのことで相談ということしか聞いてないのだが」

「旦那様、お忙しいところ、お呼び立てしてしまい申し訳ありません。

 マテウスから相談を受け、私では判断しかねる事案だったので、

 旦那様のお知恵を借りるしかないと考えました」

 なんか、ローザを身請けする時も似たような話だったな。

 

 ローザが何かやらかしたのだろうか。

 好奇心が先行するあまり、皆の各部屋を覗いて回ったとか。

 

「一昨日、迷宮で盗賊に遭遇した件を報告したと思いますが、それにも関係があります」

「確か、販売奴隷と一緒にザビル第一迷宮で探索していた時に

 盗賊を返り討ちにしたと言ってたよな」

 マテウスが頷く。ローザの表情は何故か冴えない。

 

 ザビルの第二迷宮の方で盗賊の襲撃を受けると思っていたのだが、予想に反して第一迷宮側の方でマテウス達が遭遇した。

 販売奴隷という戦力としては中途半端な者を抱えていたが、タケダ家所属のメンバーが四名いたので問題なかった。

 マテウスは今や剣聖だ。

 他にもヒューゴ、ニクラスもいたので、簡単に討伐できたと報告を受けた。

 

 

「初めに盗賊の襲撃を警告したのはローザです。初見で注意喚起されました。

 もちろん、迷宮ですれ違うパーティーには必ず疑いの目を向けるようにしていますので、

 ローザから言われなくとも警戒はしております。

 初めにすれ違った時は何も起こりませんでした。

 その後にもう一度すれ違い、三度目に出くわした際に後ろから襲撃をかけられました。

 その時にローザが警告の声を発したので盗賊の奇襲は失敗して、我々が撃退しました」

 

 

 ローザは探索者として参加していたはずだが、彼女が盗賊を討伐した訳ではなく警告を事前に発したのか。

 まあ、お手柄といえばお手柄か。

 それの何が問題なのだろうか。

 

「他にもですが、彼女はボス部屋を見つけるのが早いです。

 探索していると、概ね指し示した方に行けば、その方向にボス部屋があります」

「ん?次の話はボスモンスターの話になるのか」

 マテウスの話題の振り方がよく分からないな。

 

「ボス部屋を見つけるのが上手いというのは、どの程度の頻度なのだ?」

「説明が難しいです。ローザの示す方向に行くとボス部屋があることも、ないこともあります」

 それって普通じゃないのか?

 

 右に行くか左に行くか、アタリを引く確率は二分の一だし。

 三方向あるのなら、三分の一だし。

 

「あの、ロウ姉・・・・・・いえ、うちの姉は迷宮の位置が分かるのです」

「迷宮の位置・・・・・・それはどういう意味だ?

 ロベルトの言ってるのは、迷宮の中にいて自分の座標が分かるということ?

 

「ロビー、きっと理解してもらえないから、もういいよ。

 母さんも黙っておいた方がいいって言ってたんだし」

「だって、ロウ姉、説明しないと・・・・・・もっと分かってもらえないよ。

 諦めずに説明した方が絶対にいいから」

 この姉妹、お互いを『ロウ姉』、『ロビー』って呼び合ってるのか。

 

 まあ、身内同士の会話の時に使っているだろうけど、今は素の言葉が出てしまったのか。

 

「ローザ、自分の言葉で説明してもらえるか?

 なるべく自分の感じていること、考えていることを忠実にそのまま説明してくれ。

 君の話していることを他人が信じるとか、疑うかもとかいったことは忘れて説明してほしい」

「はい。分かりました」

 おっ、彼女の顔に珍しく緊張したものが見えた。

 

 いつもは飄々とした感じなのにな。

 

「私は近くに迷宮があると、それが分かります。

 近いと言っても目の前という意味ではなくて、歩いて結構な距離があったとしても、

 その迷宮の位置・・・・・・というか、迷宮のある方向が分かります。

 自分のいる場所から、どのぐらい離れた所に迷宮があるかまでは分かりませんが、

 迷宮のある方向だけはハッキリと分かります。

 上手く言えないのですけど、迷宮のある方向から嫌な感じがするのです。

 幼い頃はそんなことはなかったのですが、数年前から分かるようになって、

 そうなってからは、迷宮があると思って歩いた方向に迷宮がなかったことはありません」

「ロウ姉は、母さんが亡くなった村に向かっていた時、その村に行ったことがなかったのに、

 村に着く前から迷宮があると断言していました。

 そして、実際に迷宮はありました」

 ふむ、あのザビル第二迷宮は最近できた迷宮だよな。

 

 村の関係者とかでもなければ迷宮の存在なんて、普通は知らないはずだが、それを言い当てたということか。

 

「母さんには、そんなこと言っても誰も信じてもらえないから、

 自分の胸の中に仕舞っておけと言われました。

 もちろん家族の中では、迷宮があることは伝えます。

 母さんは特に迷宮探索に熱心だったので、気付いたら教えてくれと言われました」

「なるほど、分かった。ありがとう」

 彼女の言ってることはイマイチ釈然としないが、今は反論すべき時ではない。

 

 ローザの今の状態は・・・・・・今は探索に行かないときだから冒険者か。

 急速にパワーレベリングし、探索者をLv50にして、ベテラン冒険者程度まで上げたのだよな。

 

 

ローザ(エマーロ族 ♀ 16才 奴隷)

冒険者Lv32

装備 強権のダマスカス鋼槍 竜革のジャケット

    竜革の靴 耐火のダマスカス鋼額金 耐毒の竜革グローブ 身代わりのミサンガ

(控えのジョブ)村人Lv7 戦士Lv1 剣士Lv1 商人Lv1 薬草採取士Lv1 探索者Lv50 巫女Lv1

 

 装備にもダウジングできそうなロッドみたいな物は持ってない。

 

 別に冒険者って、普通のジョブだよな。

 何かを探知するようなジョブではない。

 控えのジョブにも、変わったジョブが生えてもない。

 

 そもそも、元は普通の探索者のジョブだったし、探索者のジョブにマッピングスキル等は存在しないからなぁ。

 

「それから、ボス部屋の位置・・・・・・方向が分かると言ったのも、

 迷宮のある方向があるのと同じことなのです。

 その嫌な感じのする方向に行くと、ボス部屋を見つけることが多いという意味です」

「なるほど。それは同じという意味では同じなのかもな」

 となると気になるのは・・・・・・。

 

「ボス部屋でボスモンスターを倒すと、どうなるんだ?

 その嫌な感じがなくなるのか?」

「いえ、その嫌な感じというのはボスモンスターから発している訳ではないようです。

 ボスの後ろ側に回っても、嫌な感じがボスの方から感じ取れることはなく、

 むしろ次の階層への扉の方からします。

 そして、その迷宮の嫌な感じとは別に、

 ボスモンスターや通常のモンスターからも不快なものが感じられます。

 その・・・・・・信じてもらえないかもしれませんけど、

 その不快なものというのは、盗賊達から感じるものと同じなのです」

 そ、それは・・・・・・なんとも、おもしろい感覚だな。

 

 本人は真剣に悩んでいるから、おもしろいなんて言ってはいけないのかもしれないが。

 

 でも、その『嫌な感じ』とか『不快』とか言ってるものって、アレじゃないのか?




お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/4/2(木)の予定です。

 ちょっと話が長くなってしまったので、ここで区切りました。
 執筆していると、想定外に長くなってしまうのは構想能力の問題なのかもしれません。

 昨年の夏に執筆を開始した時には150話ぐらいで戦乱に移行しているのではと想像していたのですが、思いっきり外してます。
 小説なんて執筆するのは初めてのことなので、その難しさと面白さを感じているところです。
 今のところ、楽しく執筆しているので、エタるのは暫く先ではないかと思っています。

 小説情報の『あらすじ』の項目には、戦乱を記載するのは『250話くらい?』と記載してましたが、それも外しそうなのが見えてきたので、『』に修正しました。
 2章で予定しているプロットで、まだ未掲載なのが、20個ぐらいありまして(苦笑

 これで原作の14巻でも出版されようものなら、更に戦乱が遠くなるかも。
 でも、14巻は出てほしいです。続きを読みたい!
 12巻が出てから13巻が出るまで二年と三か月。
 次もその期間とするなら、14巻が出るのは今年の7月末ぐらいになるのでしょうか。

 今から四か月後・・・・・・また戦乱が遠のくのでしょうか。
 私の予想は全く当たらないのですけど、出版日は的中してほしいです。
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