ローザって、まさか異世界転生者?
実は索敵スキルの上位スキルを持っているとか。
『索敵』や『拠点構築』のような原作にはなかったスキルは、二周目特典のおかげでもらえたと思っている。
この一見頼りなさそうなローザが、複数周回を達成した異世界転生者なんてあり得ないか?
俺は
『索敵』や『キャラクター再設定』のスキルって、鑑定やパーティージョブ設定で確認できないのだよなぁ。
絶対ないとまでは言い切れないか。
三週目から実はエマーロ族が選択可能とか。
それでもエマーロ族を種族設定で選ぶ奴がいるかぁ?
俺がこちらの世界に来る時はエマーロ族はなかったと思うけど、選択肢を見落としたかな。
『友好的な世界』を選択してスローライフを期待したのに、何故かこちらの世界に流れてきて記憶を失っているとか?・・・・・・妄想が過ぎるか。
鬼人族を選ぶ奴がいるなら、エマーロ族を選ぶ者がいても不思議ではないのだろうけど。
ローザからは全く異世界転生者の雰囲気が伝わってこない。
それに母親も弟もいたのだから、赤ちゃんスタート?・・・・・・いせはれでは、それはないか。
考えても分からないから、試してみよう。
「話を聞くだけだと分からないから、今から実験して確認してみるか?」
「・・・・・・」
カラダンの目が胡散臭い者を見る目になっている気がするのは被害妄想?
ドロテアから何か聞いたのだろうか。
「ローザはベイルという街に行ったことはあるか?」
「ベイルですか?街の名前は聞いたことがありますが、行ったことはありません」
ローザの話にロベルトも頷いた。まあ、ここは信じるしかない。
「カラダンとピコは留守番していてくれ。
マテウスとロベルト、ローザは俺のパーティーに入ってくれ。
友に応えし信頼の、心のきよむ誠実の、パーティー編成・・・・・・」
「えっと、私も行くのですよね?」
ローザが行かないと意味がないよ。ニッコリ笑って頷いた。
マテウスとロベルトもパーティーに入ったので、会議室を出て玄関に。
玄関から、まずはベイルの自宅の玄関にワープした。
「ここがベイルなのでしょうか?」
「ベイルにあるタケダ家の邸宅だ」
ローザがキョロキョロしているけど、所有している三軒の邸宅で最も小さな家だ。
ドアを開けて、外に出た。
「ローザ、迷宮を感じることができるか?」
「えっ、あっ、はい。感じます。あちらですね」
ローザの指差した方角には確かにベイルの迷宮がある。
本当に分かるのか。ちょっとびっくりだ。
ベイルの迷宮は街からそう離れてはいないけど、ここから目視で見えるような位置ではない。
まあ、門の位置や人の流れから類推することは可能か。
疑いだすとキリがないな。
「ご主人様、ローザの指差した方角に迷宮があるのでしょうか?」
「その通りだ、マテウス。確かにベイルの迷宮がある」
彼は難しい表情になり、ローザとロベルトが少しホッとした表情になった。
俺でも行ったことがなければ、迷宮のある方角など分からない。
ローザには特殊な能力があるということか。
エマーロ族ということで生えてくる能力なら、同じような環境で育ったロベルトにだって、その能力があっても不思議ではないよな。
旅亭がエマーロ族の固有ジョブだったはず。
ローザの能力とジョブの依存関係は薄いのかもしれないな。
別の実験をしてみるか。
適当な木陰からワープゲートを繋げて、ベイルの一階層の中間部屋に移動した。
「ほ、本当に野外から直接、迷宮に移動できるのですね?
カラダン様から聞いてましたけど、実際に移動してみて、ようやく実感が湧きました」
「そうだな。便利なスキルだけど、リスクを伴うから内密にな。
そして、ここがベイルの迷宮だ。
周りから何か感じることはあるか?」
ローザに話を振りながら、俺は索敵スキルを発動。
「あちらにボス部屋があると思います」
「ボス部屋の方向以外で何か感じることは?」
「えーと、特にないと思います」
ボス部屋の方角は確かに合っている。本当に凄いな。
いくら俺の索敵スキルでも、エリアをクリアにした場所でなければ、ボス部屋だろうがモンスターだろうが分からない。
だが、この部屋を出た近くにモンスターがいるのだけど、それは探知できないのか。
なんともアンバランスな能力だな。
更にワープゲートを開いて、モンスターが適度にいる場所の近くに皆で移動した。
「この場所で感じることは?」
「ボス部屋の方向はあちらだと思います」
方角はピタリ合っている。
だが、この場所のすぐ近くに魔物部屋があるのだけど、それは分からないのか。
便利ではあるけど、迷宮探索で絶大な威力を発揮できるかと問われたら違うかもしれない。
そして、ローザの指差した方角は確かにボス部屋の位置を指しているが、その向きに従って進むと、その通路は行き止まりだ。
迂回して進まないと、ボス部屋には辿り着けない。
マテウスの説明にあった指し示した方向にボス部屋があったり、無かったりしたというのはこういうことか。
俺みたいに通路が可視化されたマップを広げて見れば、ボス部屋の方向の正しさや道順が分かるけど、普通の人間には理解不能だ。
それでも、方向が分かればボス部屋に辿り着くための難易度は下がるか。
物凄く迂回しないとボス部屋に行けないような道順の場合は逆に迷うかもしれないが、レアケースだろう。
魔物部屋に行きたい、開始地点に戻りたい場合には使えないな。
そして、モンスターも検知できないと。
これは索敵スキルや、その上位スキルとも違うようだ。なんなのだろうか。
思いつくものが一つがあるが、その前にいくつか追加の実験をするか。
俺を先頭にして、四人で暫く通路を歩いた。
この辺りかな。
「全員、いったんここで止まってくれ。
そして、元来た方向を見てくれ。特にローザはそちらの方向を注意して見るように」
「はい」
不審に思っているのだろうが、彼女は俺の言葉に素直に従ってくれた。
俺が最後尾にいる状態で、ローザが先頭。
俺と彼女の間にマテウスとロベルトがいて、皆が同じ方向を見つめるだけの間抜けな構図。
そろそろだな。
「ご主人様、後ろにモンスターです!」
「分かっている」
ローザの悲鳴のような声に冷静に答えながら、後ろを振り返った。
振り向きざまにニードルウッドをデュランダルで一撃で屠る。
「ローザが奇襲を受けないというのは、こういうことだったのか」
「えーと、ご主人様もモンスターが襲ってくるのが分かるのですか?」
俺の場合は索敵マップでモンスターの動きをトレースしているだけだ。
「ローザのものとは違うようだが、俺にも似たような能力があるんだ」
「そうだったのですか」
俺の場合はハッキリとしたボーナススキルだけど、ローザのはなんなのだろうな。
「ローザがモンスターを発見できるのは、
相手がこちらを認識して、攻撃対象と認めた場合に限るようだな。
先ほど視線を前に向けるように命じたのは、後ろの角からモンスターが来るのが分かっていて、
モンスターに後ろから襲わせるために、わざと背を向けるように仕組んだのだ。
ローザが警告の言葉を発したのと、
モンスターがこちらを認識したタイミングは恐らくほぼ同時だったのではないだろうか」
「これが実験だったのですね」
ローザは感心しているようだが、マテウスは呆れているように見える。
「ひょっとして、マテウス達が遭遇した盗賊達は初めから、お前達を襲う気だったから、
ローザが気付いたのかもしれないな。
襲われた時はどうだったのだ?」
「初めに遭った時よりも、背後から襲いかかろうとした時の方が強い不快感がありました」
それは、もうなんて言うか、驚きの能力だな。
モンスターや人間の攻撃意図が分かるのか。
殺気を感じるということなのだろうか。
半殺しのつもりと全殺しのつもりの相手で、不快感が異なるとか?
「不快感ということは、臭いや音ではないのだよな?」
「はい。臭いや音の違いというのは感じません。
上手く言えないのですが、頭の後ろがヒリヒリする感じというか・・・・・・」
なんか、ガ●ダムに出てくるニュ●タイプみたいだ。
初めは絶対嗅覚があって、ボス部屋やモンスターの足跡が分かるのかと思ったのだが。
原作のヒロインが持っていたのと似たような感覚とか技術かもしれないと想像した。
ボス部屋に向かう方向に探索者達が多く歩く痕跡があって、それが嗅覚で分かるのではないかと疑っていた。
だが、ローザの指し示す方向は、通路の方向というよりはハッキリとボス部屋に対する最短距離の方向を差し示していた。
そして、それに近い通路を行こうとすると行き止まりだったりする。
嗅覚は無関係なのだろう。
では、何を意味するのか・・・・・・それは現時点では分からない。
一つ仮説は思いつくが、それは別の実験で確認しよう。
ボス部屋の前の待機部屋の近くの通路にワープで移動した。
「ボス部屋の位置が分かるか?」
「はい。こちらですね」
ローザの指し示す方向に向かって四人で歩き、間もなくボス部屋が発見された。
「凄いな。本当に分かるのだな。しかも来たことのない迷宮なのに」
「なかなか信じてもらえないのですが、ご主人様は私が嘘を言ってないことが分かるのですね」
まあ、俺は索敵で予め正解を確認できるからな。
ボス部屋は誰も戦闘していないので、扉は開いている。
当然、ボスモンスターも出現していないので、ガランとしている。
「今の状態で、一番奥の方向から、その嫌な気配がするのか?」
「はい。その通りです。ボスモンスターの気配ではなく、奥からしてきます」
それなら、このベイル迷宮にこれ以上いても仕方ないな。
「もう一度、確認するけど、迷宮の気配がして、
その方向に向かって迷宮がなかったことはないのだよな?」
「はい。その通りです」
ローザは神妙に頷いた。
「あ、あの・・・・・・」
「ん?なんだ、ロベルト」
彼はローザの表情を探るように、発言を求めているようだ。
「ロウ姉は迷宮の気配がして、迷宮を見つけられなかったことはないと言っていて、
それは多分事実だと思うのですが、逆の場合におかしなことはありました」
「おかしなこと?」
逆の場合って、どういう意味だ?
「えーと、目の前に迷宮があるのに、迷宮の気配がしなかったことがありました」
「ああ、そういえば、そんなことあったね。ロビーはよく覚えているね」
ローザ、お前はやっぱり大雑把な奴なのか?そんな大切なこと、忘れるなよ。
「それって、どこの街にあったどんな迷宮か覚えているか?」
「いえ、結構昔に母さんに連れまわされていた時にフラッと寄った街の迷宮で
場所までは・・・・・・でも、かなり遠い所だったような気がします。
母さんは、本当にアチコチの迷宮に僕達を連れていくので。
もう、討伐されてしまったかもしれません」
討伐、討伐ねぇ・・・・・・ちょっと確認してみるか。
「そうか。じゃあ、もう一つ実験してみるか。俺の後に付いてきてくれ」
ワープゲートを開いて、四人で移動した。
全員揃ったところで、再び確認。
「ローザ、この近くに迷宮があるか分かるか?」
「いえ、特に迷宮の気配はありません」
『迷宮の気配』って、おもしろい表現だな。
「あれを見てみろ」
「え?あれって・・・・・・迷宮の入口?なんで?」
俺の指差した方向には、迷宮の入口が黒くぽっかり開いている。
「ロウ姉、あれを感じられないんだ。ご主人様、あれは特別な迷宮なのですか?」
「あれは最近討伐されたターレ迷宮だ」
討伐されても、数日は残っていると聞いてたので、まだ残っていて良かった。
そうか、討伐された迷宮は検知されないのか。
それなら、俺の仮説は合っているかもしない。
アイテムボックスを開いて、ローザに差し出した。
「これはどうだ?」
「えっ、それはなんですか?」
ローザは首を傾げている。
「これからは、何も感じないか?」
「えっ、感じるって、ただ丸いもの?」
あ、あれっ、予想が外れたか?
「これはギルド神殿だ。その先にあるターレ迷宮を討伐した際に得たものだ」
「えっ!こんなちっぽけな球がギルド神殿なのですか?
ちょっとビックリですね。
もっと、なんていうか、凄いモノだと思っていました」
ローザの感想には同意する。見た目はチンケな球体だ。
「これからは何も感じられないか?」
「はい。全く何も感じません」
そうか、じゃあ仮説はハズレか。
ギルド神殿が、よくゲームに出てくるアーティファクトみたいなもので、ローザを引き寄せる何かがあるかと思っていったのだけどな。
迷宮が討伐されると
ローザはボス部屋ではなく、迷宮ボスがいる場所に至るための最短経路を探し出す能力があって、その源泉となるのがギルド神殿ではないかと仮説を立てたのだが外れたな。
別にローザにギルド神殿を探知できる能力がある訳ではないのか。
うーん、となるとローザはいったい何を感じているのだろうか。分からん。
「前にロウ姉が迷宮の気配がしないと言っていた迷宮は
特に討伐された迷宮ではなかったと思います。
探索者達が普通に出入りしていましたので」
「そうか。そのようだな」
先にロベルトに確認しておくべきだったな。無駄足だったわ。
「今回の実験で分かったのは、
例外もあるようだが、ローザは概ね討伐されていない迷宮は探知できるということ。
各階層のボス部屋のある方角が分かるということ。
自分達を攻撃しようとしているモンスターや人間が事前に検知できるということ。
これぐらいかな。
探知できない迷宮を見つけたら、その迷宮がどんな迷宮か考えてみようか?」
「ご主人様は、私の言うことを信じてくれるのですね?」
「信じるもなにも、実験結果がローザの言ってることが正しいと示しているじゃないか。
疑う余地がないと思うのだが」
厳密には盗賊を使った実験はしていないけど、それはまた別の機会にやってみよう。
こんなこと言うと、またマテウスにドン引きされそうな気もするけど。
「じゃあ、マテウスはローザのこの能力を少しだけ考慮に入れて迷宮に入るようにしてくれ。
この能力は迷宮内のモンスターに対して絶対有利な状況を作れるほど万能ではない。
盗賊の検知には役立つかもしれないがな。
迷宮内で盗賊を見つけたら、
ローザから相手に分からないようなサインでも決めておくと良いかもな。
あまり、ローザの能力を過信しない程度に役立ててみたらどうだ?」
「はい。ちょっと考えてみたいと思います」
適当な木陰から、ザビルの玄関に移動。
「じゃあ、俺はカラダンに今日のことを報告してくるわ」
「あ、私もカラダン様の所に参ります。ローザとロベルトは訓練に戻って構わないぞ」
二人と別れてマテウスと共に二階に上がった。
・・・・・・
会議室で、カラダン、ピコ、マテウスと四人で、迷宮で実施した実験内容を共有した。
「そうだったのですか。ローザにそのような能力が。
攻撃しようとしているモンスターと盗賊だけ識別できるのか、
他にも悪意を持つ者を検知できるのかは気になりますが、
こればっかりは実験のしようがないですからね」
「・・・・・・」
実験のしようがないだろうか?
あっ、カラダンが俺の方をジト目で見ている。
変な実験をしようとするなよ!・・・・・・と電波を送ってきている気がするぞ。
ローザを危険に晒すような真似はしないよ。多分。
「まあ、ローザにそのような能力があるかもしれないからって、
この拠点で四六時中、不審者がいないか警戒してろって訳にもいかないしな」
「まあ、そうですね」
睡眠が少なくて済むエマーロ族とはいえ、24時間監視サービスをしろとは言えない。
「まずは、少し勘が良い人間がいる程度で構わないだろう。
無理にローザのその能力を生かそうと考えても、きっと上手くいかないと思う。
また何か気になることを発見したら、相談してみてくれ。今はそれで十分だ」
「はい。わかりました。
ただ、盗賊だけは危険な存在なので、それは警告するようにローザとも話をしておきます」
そうだな、確かに盗賊だけは要注意だ。
ローザの能力は気にはなるが、今はこれ以上考えても何も得るものがない。
別に害になる能力でもないしな。
「じゃあ、俺はクーラタルに戻るから」
「今日はお忙しいところ、ありがとうございました」
「いや、これからも気になることがあれば、遠慮なく相談してくれ」
二人と別れて、クーラタルの自宅に戻ることにした。
・・・・・・
自室に戻ろうと階段を上がろうとしたら、アネットがこちらに向かってきた。
「旦那様、今、お時間少しよろしいでしょうか?」
「ああ、別に構わない。食堂に行くか?」
アネットが頷いたので、彼女の後に続いて食堂へと向かった。
テーブルにいるのはチクルス、フローラ、アネット、シルビア、クララの五人とゼノとゼナ。
今日の午後はエネドラとヘルミーネは奴隷商館巡りなので、教師役は五人か。
数人が毎日付きっきりで教えているのかな。なかなか豪華だな。
ゼノは女性陣に囲まれて大丈夫なのだろうか。
俺なら気後れしてしまうけどな。
それで相談事は?・・・・・・ローザじゃないけど、また何か特殊な能力を持っていたとか?
「二人のジョブの希望を確認したのですが、僧侶と薬草採取士の両方をやってみたいそうです」
「なるほど。それなら、今からジョブを取得してみるか?」
普通の話だったな・・・・・・二人は不安そうに見えるが、シッカリと頷いた。
薬草採取士も僧侶も迷宮に行かないとジョブ取得できないから、不安になるのも無理はない。
戦闘を嫌う二人からすると、迷宮は怖い場所なのかも。
「エネドラに許可を得なくても問題ないのか?」
「お母様は二人が決めたのなら、後はユキムラ様にお任せしろと」
そこまで信頼されたら、期待に応えなければならないぞ。
「今から、迷宮に行くから、まずは俺のパーティーに入ってくれ。
友に応えし信頼の、心のきよむ誠実の、パーティー編成・・・・・・」
「・・・・・・」
若干、顔色が悪そうな二人だが、パーティーには加入してくれた。
「ちょっと準備してくるので、待っていてくれ」
二階に上がって、倉庫から二人用の防具一式を持ってきて渡した。
食堂で二人が装備をつけている間に、玄関からベイルの2階層に移動。
まずは、2階層の魔物部屋を殲滅して二人の村人ジョブをLv5以上にする。
ドロップ品を拾って、1階層へと移動。
今日はベイルの1階層に来るのは二回目だな。
魔物部屋の中にいたニードルウッドをサクッと殲滅。低階層だから楽勝。
食堂に戻って、二人に声をかけた。
「じゃあ、二人をちょっと借りるぞ。危険なことはないので大丈夫だから」
「ゼノ君、ゼナちゃん、ご主人様の傍を離れたらダメだからね!」
アネット、それは逆に心配させる言葉じゃないか?・・・・・・まあ、間違ってはいないが。
二人を連れて、玄関からベイル1階の魔物部屋に直接移動。
「えーと、ここは?」
「ベイル迷宮の1階層だな。
そこに落ちている葉っぱのようなもの・・・・・・
リーフって呼ばれているのだけど、拾ってもらえるか?
一人一枚は絶対に拾ってくれ」
ゼノとゼナは指示通りにリーフを拾い始めた。
レアドロップなので、数枚しか落ちていない。
俺は床に転がっている大量のブランチを拾い始めた。
二人がリーフを2枚ずつ持って、俺の所にやってきた。
うん、薬草採取士のジョブが取れているな。
まずは一つ目はクリアと。
そのまま、ブランチを一緒に拾ってもらい、ドロップ品を回収し終えたら三階層に移動。
ここに来るのは久しぶりだな。
僧侶のジョブ取得する時の聖地みたいな気がする。
「モンスターは俺が対処するから、二人はまずは見学しておいてくれ。
必要になったら呼ぶから」
「は、はい。分かりました」
モンスターという言葉に少し緊張してしまったか。
だが、僧侶のジョブを取得しようと思ったら、全く魔物と接触しない訳にはいかない。
コボルト一匹が含まれる赤い点を探して、ワープで二回ほど移動。
俺達の少し前方にコボルト二匹がいた。
「あれが、コボルトというモンスターだ。
大して強くないから、武器無しでも問題ない」
「武器なしで立ち向かうのですか?危険では?」
セブンスジョブで7つのジョブともLv80を超えているから、腕力補正だけで問題ないのだ。
こちらに近寄ってきたコボルト一匹を回し蹴りで、壁に叩きつけた。
もう一匹のコボルトはスっ転ばして、両脚を掴んで振り回して、壁にガンガン打ち付ける。
プロレス技のジャイアントスイングだな。
壁に7回叩きつけたら煙になった。
素手じゃなくて、壁でモンスターを倒しても僧侶のジョブが取得できるのだろうか。
既に僧侶のジョブを取得した俺には分からないが。
もう一匹のコボルトが寄ってきたので転ばせて、両脚を掴んでジャイアントスイング。
ブンブン振り回しながら、ガンガン壁に叩きつけて、5回ぶつけたところで、振り回す速度を落として床に優しく寝かせた。
コボルトがギャーギャー文句を言っている。気持ちは分かるが手は離せない。
「ゼノ、このコボルトの背中の上で、飛び跳ねてくれ」
「えっ、そんなことをして大丈夫なのですか?」
「大丈夫だ。背中を向けているから安全だ!」
俺の言葉に恐々と背中に乗って、ぴょんぴょんとジャンプを始めた。
ゼナのジョブは村人ジョブだが、俺のセブンスジョブの腕力補正のパーティー効果が乗っているから、直ぐに終わるだろう。
脚力でも腕力補正は上がると思いたい。
三回飛び跳ねたところで、煙に変わった。
「うわぁ!」
急に煙になったから、バランスを崩したな。
よろけたついでに、コボルトソルトを踏みつぶしてしまった。残念。
でも、僧侶のジョブは取得できた。
そして、意外にゼノは体幹が良いな。
直ぐにバランスを取り直したし。
鍛えれば良い戦士になったかもしれないが、残念だ。
別に後方支援部隊でも構わないけどね。
「じゃあ、次はゼナだ。コボルトを探すので移動するぞ」
「こんなことで僧侶のジョブが取得できるのですね?迷宮って不思議な所ですね」
コボルトを踏んづけて僧侶のジョブを取得するのは、タケダ流かもしれないけどね。
その後、同様の手順でゼナも無事、僧侶のジョブが取得できた。
二人とも、薬草採取士と僧侶のジョブが取得できたから、この後はパワーレベリングだ。
クーラタルの自宅に三人で戻って、食堂で二人をチクルス達に引き渡した。
「ちょっと俺は迷宮でモンスターを倒して、二人のジョブに経験を共有してくるから」
「ユキムラ様、ありがとうございました。
薬草採取士の基本的なことは、これから私とフローラさんで教えますので」
「そうか、よろしくな」
チクルスだけでなく、ゼノとゼナの二人もペコリと俺に頭を下げている。
二人とも素直な子達だな。
そんな二人にコボルトを踏みつけさせて、申し訳ない気持ちになってしまった。
必要なこととはいえ。
・・・・・・
二階に一度上がって、準備を整え、クーラタルの30階層へ。
ここ最近は、ターレ迷宮の討伐に注力していたけど、迷宮討伐してしまったので手頃な魔物部屋がない。
しかたなく、クーラタルの30階層から35階層までの魔物部屋を殲滅して回った。
2時間弱程度のパワーレベリングだが、双子の薬草採取士はLv22、僧侶はLv31まで上がった。
これなら、ちょっと生薬生成する程度なら問題ないだろう。
また時間を見つけてレベリングするか。
ジョブを使いこなすよりも、今はしっかり食べて心身ともに健康になってもらうのが先だけど。
発想が父親のようになってしまったが、まあ、タケダ家の当主だから仕方ないな。
お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/4/4(土)の予定です。