異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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083.人材育成

 混沌とした飲み会翌日の朝練の風景。

 

 ミラは元気に剣を振り回している。

 同室のマヤが打ち合いに付き合っているのは、彼女の体調を心配してのことだろうか。

 

 昨晩俺が背負って連れ帰ったことはマヤから聞いたらしく、しきりに恐縮して謝ってきた。

 そして予想通り、昨晩のことは全く覚えていないとのこと。

 飲み会で乾杯して以降の記憶が全くないそうだ。

 開始一分で記憶を失ったということだな。

 楽しそうにしていたのに、記憶に残っていないというのは少し気の毒に感じてしまう。

 

 それはそれとして、二代目泥酔凶女(ドランククイーン)は爆誕しなかったようで一安心。

 

 

「ご主人様、ミラちゃんにあまり飲ませない方が・・・・・・」

「そうだな。俺も失敗したと思っている」

 アミルの言葉に頷くしかない。

 

 でも、飲んでいる時の彼女は、これまで見たことないぐらい楽しそうに見えた。

 

 実は普段からイロイロと我慢しているのかも。

 まあ、奴隷になっている時点で我慢しているも何もないか。

 いくら衣食住がマシになったとはいえ、自分の人生に制約をかけられている訳だから。

 

 それにミラは15才。

 酒に強そうなイメージのあるドワーフ族で、この世界では成人に達しているとはいえ、元の世界なら飲ませるのはNGの年齢なのだよなぁ。

 どうも、元の世界の法律や倫理観と、こちらの世界のものが入り混じって、判断に迷うことが多い気がする。

 いつかは慣れて、違和感なく生きれる日が来るのだろうか。

 

 ミラは昨晩の泥酔状態など全く感じられないぐらいに、キレキレの状態で体を動かしている。

 少し長めの剣先の長巻型片手剣を右手に持ち、マヤを攻めたてているが、マヤの方も盾で器用に受け流している。

 二人とも防御が得意であることや、ジョブのレベルがほとんど同じになったこともあり、体力が続く限り打ち合いをしていることが多い。

 この二人の攻防はなかなか決着が付かないのだが、見ているのは非常に楽しい。

 

 その更に後方では、ゼノとゼナが泥だらけになりながら武器を持たずに組手争いをしている。

 今日はケリーやマリーが相手ではなく、双子同士でやり合っている。

 これはこれで見ごたえがある。

 

 というか、こちらの世界に来てから戦闘訓練で、素手での取っ組み合いなんて見られないから、ある意味新鮮だ。

 アブダビコンバットの格闘技を見ているみたいな錯覚に陥る。

 本物のアブダビコンバットは関節技ありだから、組手争いと投げ技しか使ってない双子の訓練は別物だろうけど。

 

 ゼノとゼナは竜人族だけど、やっぱり闘争本能が抑えられないのだろうか。

 竜人族が好戦的というのは偏見が過ぎるか。

 

 泥だらけで汗まみれなのに、とっても楽しそうで、見ているこちらも楽しくなってしまう。

 ただ、服も泥だらけなので、訓練後にチクルスあたりに怒られるかもしれない。

 

 増築工事が終わってシャワー室が使えるようになれば、洗濯の負担が少しは減るだろうか。

 そういえば、シャワーノズルもどきの用意をしなければならない。

 あとでエネドラに確認してみるか。

 

 二人の迫力ある格闘技の模擬戦を見ていると、イレーネが笑みを浮かべながら近づき、俺の視線を遮ってきた。

 休憩時間は終わりにしろと。

 相手をすればいいのだろう?

 

・・・・・・

 

 その後、帝国解放会の入会試験前日までは各部隊の迷宮探索も順調だった。

 

 迷宮組はクーラタルの58階層の攻略中だが、イレーネのレベリングはそこそこ進んだ。

 アミルの斎王ジョブはレベルアップのための必要経験値が多いため、20台前半までしか上げられなかった。

 明日の入会試験ではアミルは斎王ではなく、巫女のジョブでの参加になりそうだ。

 

 迷宮組と護衛部隊の混成チームも綻びを見せず、目標の44階層攻略まで目前に迫ってきた。

 そろそろ次をどうするのか、相談して決めなければならないな。

 

 ザビル第二迷宮の方も着々と最新階層到達の更新を続けている。

 盗賊との遭遇も全くないらしい。

 あの村を襲撃した盗賊の残党はどこに消えたのだろうか。

 

 

 そして、今日の午前中は入会試験の予行演習を行う。

 俺達は正規会員である第二位階なので、45階層での試験となるらしい。

 

 クーラタル45階層は、ターレ迷宮の討伐の際にエンブレムを見せて案内してもらっていたので、直接ワープで移動した。

 ボス部屋に一番近い小部屋でブリーフィングから。

 

「明日の帝国解放会の入会試験に向けて、これから練習を行う。

 入会試験では、普段の自分達の実力を全て見せる訳にはいかない。

 一人ずつ説明するから、分からないことがあれば質問してくれ」

 全員が頷くのを確認して個別説明を開始。

 

「まずはヴィルマだが、今は百獣王だが明日の試験は獣戦士で戦うぞ。

 ビーストスラッシュは使えず、ビーストアタックになるから注意してくれ」

「主、分かった。任せろ」

 ヴィルマは縛りプレイが好きだから問題ないだろう。

 

 ちょっとSMチックに聞こえるけど、ヴィルマは公私ともにドMだから問題ない。

 

「次にイレーネだが、明日は『一閃』のスキルは使えない。

 『くのいち』で『一閃』を使わないのと、『刺客』のジョブで戦うのとどちらにしたい?」

「御館様、あたしも『刺客』で戦いたい」

 ヴィルマに対抗して、ジョブをダウングレードして戦うのか。

 

 ドSのイレーネは『くのいち』を主張するかと思ってたから、ちょっと意外だ。

 

「オリビアもイレーネ同様に『ドラゴンファング』のスキルが使えない」

「ユキムラ君、あたしは竜将軍のジョブのままで大丈夫だよ、

 別に『ドラゴンファング』を使わないのも普段からやっていることだし」

 まあ、そちらは別に大丈夫だろうが、次の事のほうが重要だ。

 

「他にもオリビアは明日の戦いでは槍二刀流は封印だ。

 つまり槍1本で戦ってもらいたい。そちらについてはどうだ?」

「久しぶりだけど、これから練習するから大丈夫だと思う。

 それに槍一本だと『ドラゴンファング』は使えないから好都合かも♪」

 そうか、『ドラゴンファング』は二刀流前提だったな。

 

 それにしても、槍一本で彼女が戦うのは、いつ以来だろうか。

 我が家に来て直ぐの頃はまだ竜騎士ではなかったから、二刀流じゃなかったはず。

 剣のセンスが壊滅的にダメで、槍の扱いは抜群だった。

 そして竜騎士になってから槍二刀流が開花したのだっけ。

 

 今日の戦いぶりを見てからの判断となるが、正直、今回の要はオリビアだと思う。

 オリビアが槍一本になって、どれだけ戦えるかで攻略の難易度がかなり変わるだろう。

 タケダ家随一の槍使いのセンスに期待したい。

 

 くのいち、百獣王、竜将軍のジョブに就いていることは秘密にするつもりだ。

 オリビアの槍二刀流も他家に見せたくない。

 

 

「アミルのジョブは明日は巫女だ。

 最近は斎王で戦うことも多かったと思うが、大丈夫だろうか?」

「巫女も斎王も役割は変わりませんので、大丈夫だと思います」

 アミルは武器も槍のままで変わらないから、問題ないかもしれない。

 

「そして、俺についてだが、冒険者ジョブに偽装する関係で魔法攻撃は封印だ。

 更に四刀流も封印なので槍一本で戦う。

 まあ、オリビアと一緒だな。

 オーバーホエルミングもオーバードライブも使わない。

 スキルの無詠唱は使えるから、博徒の『状態異常耐性ダウン』は使う」

「手数も減り、雷魔法も使えないので、

 今までよりは麻痺になりにくいと想定して、戦う必要がある訳ですね」

 アミルの言葉に頷いた。

 

 超速スキルを封印すると連続攻撃で状態異常に持っていく戦術が使えない。

 正直、俺が一番戦力ダウンの要素がデカいが、切り札は見せられないので仕方ない。

 

「イロイロと制約をつけて戦うことになるが、状態異常に持っていく方針は変わらない。

 他にもサインプレーは封印だが、スイッチの声掛けぐらいは使っても構わない。

 まずは変更したジョブや武器で今日の午前中に戦ってみて慣れよう。

 ボス戦は俺達だけで戦うのだが、待機部屋までは試験官のパーティーが付き添うはずだ。

 ボス部屋に入って扉が閉まるまでは装備品が変更できない。

 ジョブだけは変更しておくから、ヴィルマとイレーネはいつも通り戦えるが、

 オリビアと俺は武器一つで戦うことになる。

 魔法は使うつもりだが、注意してくれ」

「主、ボス部屋以外では全力で戦ってはダメなのか?」

 前衛組の三人に手抜きをしろというのは難しいよな。

 

「いや、全力で戦って構わない。

 中途半端に手抜きをすると思わぬ怪我を負う事もあるからな」

「主、分かった」

 あとは練習で確認していこう。

 

「入会試験なのだが、俺達の実力を全て見せる訳にはいかない。

 だが、手抜きをして実力が無い者と判断されても困る。

 試験に不合格になるのなら、初めから受けない方がマシだからな」

「御館様、試験見にくる奴と戦って分からせばいいか?」

「いやいや、試験官に戦いを挑むなよ。

 あくまで戦う相手はモンスターであって、試験官と戦うのはダメだぞ」

 大事な事なので二度言いました。

 

 迷宮内で帝国解放会会長を暗殺するのはダメだからな。

 死体も迷宮に飲み込まれて完全犯罪が可能とはいえ。

 いや、俺達が真っ先に疑われるから、完全犯罪でもなんでもないか。

 

「クーラタルの45階層に出現するモンスターは

 ネペンテス、ホワイトキャタピラー、パーン、ハントアント、ウドウッドの順に多い。

 パーンが足が速いだけで、他はそれほどでもない。

 ホワイトキャタピラーの糸の攻撃とパーンの火魔法に注意だ。

 スキルのキャンセルに心がけてくれ。

 基本的には戦ったことのあるモンスターばかりだ。

 初めのうちは武器やジョブの違いがあるので慎重に戦っていこう」

「了解!」

「了解!」

「了解!」

「了解」

 

 小部屋を出て、ボス部屋に向かって探索を開始。

 

 :

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 戦ってみた結果、心配するほどのことはなかった。

 オリビアは槍一本でも45階層のモンスターを子供扱いにしている。

 ヴィルマとイレーネもパーン相手に回避の練習をするぐらい余裕があった。

 

 槍一本になった俺が一番練習が必要だったぐらいだ。

 つい、空いた手で何かをしようとして何もできないことに気付き、慣れるのに時間を食った。

 魔法も撃てないし、ホント手持無沙汰だ。

 

 ともあれ、明日の入会試験で問題なく戦えることが分かってホッとした。

 ボス部屋まで試そうかと思ったのだが、前衛組三人が退屈し始めたので、開始二時間ぐらいで切り上げることにした。

 最終試験になるのか知らんが、ボス部屋での戦いは余裕だろう。

 超速スキルも魔法も使えるのだから。

 

 適当な壁からワープで帰宅した。

 

・・・・・・

 

 探索を早めに切り上げたので、昼食の時間までにミモザと共にターヘラの孤児院へと向かった。

 今日はベイルに来ている子供達は、休息日というか入れ替え日で孤児院に戻っている日だ。

 なので、ニムラルのおっさんも孤児院に必ずいるそうだ。

 

 なんだかんだ言って、あのオッサンも子供達とのふれ合いを大切にしているのだろうか。

 

 食堂に向かい、ナナイに訪問の意図を告げた。

 オッサンは食堂にはいないから、訓練をしている広場の方に向かった。

 ナナイもミモザとおしゃべりしながら、俺の後ろを付いてくる。

 

 広場に着くと、やはりオッサンが子供達に剣を教えている。

 前に来た時よりも、教えてもらっている子が多い気がするな。

 

「ナナイ、前に見た時よりも、稽古している子が増えてる気がするのだけど」

「食べ物がかなり良くなったので、体もしっかりとしてきた子が多くなったのだと思います。

 お父さんも子供達の体力を考えながら、稽古の量を調節しているみたいです」

 あのオッサンにそんな細やかな配慮ができることに驚きを感じてしまう。

 

 意外に教えるのが上手かったりするのだろうか。

 目の前で子供達に教えているオッサンは、口元に笑みを浮かべながら子供達の攻撃を軽々といなしている。

 剣術指南所の道場主が教えるのが上手いのは、当たり前と言えば当たり前か。

 まあ、その方がこちらにとっては好都合だ。

 

「ナナイは子供達が迷宮探索者となって戦うのに反対はしないのか?」

「あの子達の人生ですから、手助けすることはあっても止めることはしません」

 そうか・・・・・・まあ、一生面倒をみてやれる訳でもないからな。

 

 それにナナイにはナナイの人生がある。

 アルマーとその後はどうなったのかと揶揄おうとしたら、稽古が休憩時間になった。

 確認は別の機会にするか。

 

 オッサンがこちらに近づいてきた。

 

「お父さん、ユキムラさんが子供達の進路のことで相談があるって」

「食堂で待っていろ。体を拭いたら向かう」

 こちらの返事は待たずにオッサンは井戸の方に去っていった。

 

・・・・・・

 

 俺、ミモザ、ナナイとニムラルのオッサンが食堂のテーブルを囲んだ。

 

 昨晩、ミモザから委託作業で来ている子供達の希望するジョブの最終報告をもらった。

 未定の子もいるが、現時点で大半の子の希望が確認できたので、今後の相談に来た。

 

「これが子供達が将来希望したジョブのリストだ。

 未定の子もいるようだが、希望しているジョブのほとんどは我が家で取得の支援ができる。

 ただ、戦闘職のジョブを希望している子がいるので、そのジョブ取得については、

 保護者の許可が必要かと思っている」

「いつ盗賊に襲われるとも知れない世情だ。希望するなら取得させたい」

 そうか、戦禍に巻き込まれて孤児になった子もいたのだったよな。

 

 できる時にジョブ取得させた方が良いのかもしれない。

 俺の考えが甘かったな。

 

「戦闘職のジョブ取得はこちらで支援するか?そちらでやるか?」

「どちらでも構わない」

 他の条件を片づけてから決めるか。

 

「前に相談した、詠唱隠蔽の技術を教えてほしい。

 我が家から1、2名こちらに寄越すので、その者に伝授してもらいたい。

 その代わりに、我が家からスキル融合装備品の提供と子供達のジョブ取得支援を行う。

 これが提供できるスキル融合装備品のリストだ。

 希望を言ってくれれば、3日後までに用意する」

「・・・・・・」

 おっさんはリストを一瞥して、テーブルの上に静かに置いた。

 

「武器は上の三つ、防具は一番上のものにしてくれ」

「分かった」

 武器を三つということは、自分用だけでなく他の者に使わせたいのか。

 

 用意するのは激情のダマスカス鋼剣、強権の鋼鉄槍、催眠のレイピア、防毒の竜革ジャケット。

 

「我が家の者を受け入れてくれると思ってよいのか?」

「今日からでも構わない。来れば教えてやる」

 それは結構、太っ腹だな。

 

 スキル融合装備品をもらう前でも構わないのか。

 となると、こちらもサービスしない訳にはいかないよな。

 

「そうか。なら、こちらも子供達のジョブ取得は全面的に支援しよう。

 ただし、獣戦士のジョブ取得だけは支援できない。

 子供達がベイルに来たら、希望のジョブを取得できるように支援する。

 ギルドの登録費用も全て、こちらで支払う。

 ギルド登録は全て、ターヘラで構わないか?」

「ユキムラさん、ありがとうございます。

 獣戦士以外は全員、ターヘラでお願いします」

 ギルド登録の判断はナナイがするのか。

 

「獣戦士のジョブ取得は、こちらでやるから手出し無用だ」

「分かった」

 正直、そちらの方も興味があったりする。

 

 先ほどの稽古を見てたけど、子供達の中にはなかなか良い動きをしている者がいた。

 才能がありそうだから、将来の獣戦士候補ではないだろうか。

 

 逆にこちらから研修生を派遣して、獣戦士のジョブ取得を支援してもらいたいぐらいだ。

 ジョブ取得の条件さえ満たせば、我が家の場合はギルド無しでもジョブに就けられるからな。

 一人支援してもらう毎に、スキル融合装備でも高級防具でも対価を支払うことにして。

 そのうち考えようかな。

 

 

「ナナイは、子供達のギルド登録に立ち会うか?」

「はい。立ち会わせて下さい」

 それなら、もう交渉成立で構わないか。

 

「分かった。では、午後に今の取り決めを記載した契約書を持ってくるので確認してくれ。

 詠唱隠蔽を教わる者も午後に連れてくる」

「契約書などなくても、ユキムラさんを信頼しています」

 ナナイの言葉に首を横に振る。

 

「子供達の将来に関わる話でもあるから、しっかりと書面を出させてほしい。

 ミモザの方から何かあるか?」

「ジョブ取得後ですが、商人や薬草採取士であれば、ベイルで教えられる者がいます。

 ベイルでやってもらう石鹸作りの合間に時間を取りましょう」

 ミモザの言葉にナナイの涙腺が緩んでしまった。

 

 ベイルには薬草採取士のミモザと商人のクルトがいる。

 教える体制は整っているよな。

 

 子供達が成長して自立すれば、石鹸の委託作業は将来無くなるだろう。

 その時はタケダ家の者で平民富裕層用の石鹸作成作業を行えばよい。

 それまでは、お互いの利のため協力していく。

 

「あとは、子供達から聞いているかもしれないが、

 朝は騎士団に所属している者が稽古をつけてくれている。

 戦闘職を望んでいる子達も運動不足にはならないだろう」

「・・・・・・」

 ナナイは涙でいっぱいの表情になり、俯いてしまった。

 

 こういう時はアルマーの出番なのだが、あいにく彼はここにいない。

 今日はアポ無しで訪問したから、アルマーには何も伝えていなかった。

 まあ、今日はオッサンとナナイに任せれば問題なかったので仕方ない。

 

「では、また午後に来るから」

「はい・・・・・・」

 ナナイは一言、返事を返すのがやっとだった。

 

 ミモザと共にクーラタルへと帰宅。

 

・・・・・・

 

 エネドラにターヘラの顛末を説明すると、商人グループの娘達を交えて契約書を至急用意してもらうことになった。

 今日はレドリックが待機組なので、午後からターヘラで研修に参加するように打診。

 お供にケリーを連れて行くことにしたようだが、ただの里帰りになる予感。

 一応、一時的に彼女のジョブを百獣王から獣戦士に変更しておいた。

 

 アミルが取り急ぎ、激情のダマスカス鋼剣だけ、スキル融合してくれたので俺が持っていく。

 ターヘラへの運び役がいないので、レドリックとケリーを送る役目でもある。

 迷宮に複数パーティーを派遣していると、クーラタルでも意外に人手不足になる。

 

 昼食が終わり、用意してもらったスキル融合武器と契約書を持ってターヘラへ。

 ニムラルに武器と二人を引き渡し、ナナイに契約書を渡した。

 夕方に二人の迎えを寄越すことを伝え、俺はクーラタルへとんぼ返り。

 

 子供達のジョブ取得はベイルに来てからで、14日単位で1組ずつのローテーションだから、ジョブ取得が全て終わるのに30日ぐらい必要か。

 ギルドでの登録はナナイにも同席してもらうから、もう少しかかるかもしれない。

 

 まあ、ボチボチやっていこう。

 ジョブ取得も重要だが、OJTの方がもっと重要だ。

 実際の職場斡旋まではできないが・・・・・・商人ならターヘラのマリアさんの店があったか。

 薬草採取士は個人事業主みたいなものだから、孤児院にいながらでもできるのかな。

 素材はおっさんとアルマーの戦闘奴隷が組むパーティーが、迷宮から持って帰るだろうし。

 

 

 次はザビル拠点へと向かった。

 新しく加えた六人の奴隷達のジョブ育成の調整だ。

 

・・・・・・

 

 ザビル本館の二階に上がると、会議室にはカラダン、マテウス、ミシェル、ピコの他に何故かマチルダまで待ち構えていた。

 マテウスは戦闘職、ミシェルは後方支援の者のフォローだが、マチルダも幹部昇格したのか?

 

「旦那様、申し訳ありませんが今日の相談内容が増えました。

 初めに事前にお話ししてあった通り、六名のジョブ育成について相談させて下さい。

 追加の相談は二つあります。

 一つ目はマチルダとレベッカの今後についての相談となります。

 二つ目はマテウスからローザについての報告と相談になります」

「そうか。今日は時間があるので可能な限り、相談に乗ろう」

 俺の発言にマチルダは少しホッとしたようだが、至急の相談なのだろうか。

 

 午前中は入会試験の予行演習、孤児院の子供達の育成関連や詠唱隠蔽の技術取得調整。

 午後は多数の者のジョブ育成計画の策定と、なんだか人事・育成担当になったみたいだ。

 

 まあ、大所帯の当主なら、そんなものなのかもしれない。

 

 まずは、カラダンが六名のジョブ育成計画の報告メモを俺に提示してくれた。

 

 戦闘職は剣士1名、探索者1名、巫女1名だったので、そのまま育成することになった。

 剣士は剣匠、探索者は冒険者、巫女は斎王を目指すコースだが、まずは現行のジョブで実技経験を積む。

 パワーレベリングの方は俺が引き受け、装備品はタケダ家側から標準装備品を支給する。

 

カイ(狼人族 ♂ 21才 奴隷)

剣士Lv19

 

レジーナ(人間族 女 19才 奴隷)

探索者Lv11

 

ジゼル(猫人族 ♀ 20才 奴隷)

巫女Lv10

 

 後方支援組は商人1名、薬草採取士2名でやはり、現行ジョブに沿って育成。

 薬草採取士は高レベルまで育て、薬師にするのは保留。商人は武器商人として育成する。

 サライの娘ティナは既に商人として育成しているので、ティナは母親同様に防具商人とする方針らしく、新規加入のダフネは武器商人にする計画。

 ティナは薬草採取士と探索者も育てていたが、進路選択はまだ最終決定ではないそうだ。

 

 後方支援部隊はとりあえずパワーレベリングだけして、ギルド登録は保留にする。

 正規にギルド登録している者はいるので、ギルドに直接出向かなければ未登録でも問題ない。

 

 

ダフネ(猫人族 ♀ 22才 奴隷)

商人Lv12

 

エルザ(人間族 女 20才 奴隷)

薬草採取士Lv9

 

ノーラン(人間族 男 22才 奴隷)

薬草採取士Lv10

 

 これで、一つ目の相談事はアッサリと終了か。

 先日加わった六名は訳アリの者はいなさそうだったし、基本的には普通の人材って感じだ。

 

 問題は次からか。

 このザビルの会議室で起きたこと(レベッカが暴れたこと)相談したこと(ローザの特殊能力)を考えれば、マチルダやローザの相談事というのは一筋縄ではいかないレベルだろうか?




お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/4/10(金)の予定です。
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