異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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084.才能?(その3)

 一つ目の相談事が終わり、ミシェルは退室していった。

 マチルダ母娘やローザの話は、戦闘関連ということか。

 

 貴族の係累であることが発覚し、レベッカがこの会議室で暴れようとしてマリーに取り押さえられたのだよな。

 それ程昔の話ではないのだが、なんだか懐かしく感じてしまう。

 

 まずはカラダンが口火を切るようだ。

 

「マチルダの方から込み入った相談があるそうです。マチルダ、説明を・・・・・・」

「はい。お時間を取っていただき、ありがとうございます。

 今回は私達母娘の今後についての相談となります。

 今まで、私とレベッカはご主人様のご厚意で後方支援の作業をさせていただき、

 商人や薬草採取士のギルドに出向くことも、迷宮に行くことも控えておりました」

 二人は貴族関連のトラブルに巻き込まれるのを避け、表舞台には出さない方針だった。

 

 今は二人とも薬草採取士として、ザビル拠点で生薬生成で貢献することになっている。

 護身の名目でマチルダは騎士と魔法使い、レベッカは魔法使いと巫女のジョブ育成をした。

 ただ、迷宮には派遣せずに訓練のみしているという状態だ。

 

 

「ですが、二人で話し合った結果、薬草採取士で生薬生成するだけではなく、

 迷宮に入って戦いたいと考え直しました。

 タケダ家の育成方法や実際に迷宮や訓練で実力をつけていく方達を見て、

 私達も経験と能力を高めた方が護身という意味でも安全になりますし、

 タケダ家にも貢献できるのではないかと考えた次第です」

「なるほど」

 まあ、初めのうちは半信半疑だったのだろうが、実力をつけていく者達を見て安心したと。

 

 

「娘にいつまでも人目を避けた生活を強いるのが、忍びないということもございます」

「そうか・・・・・・まあ、そうだろうな。

 だが、貴族の目を全く注意しない訳にはいかないだろう。

 それも考慮した上で、訓練や迷宮探索に出ることを考えるべきだろうな」

 俺の言葉に彼女は真剣に頷く。

 

「地図のあるクーラタルの迷宮は探索面では安全な迷宮だと思う。

 魔物部屋を回避できるからな。

 だが、クーラタルは人の出入りが多く、貴族の関係者達も探索しているはずだ。

 マチルダ達が探索に行くなら、ザビルの第一迷宮が良いかもしれない」

「お心遣い、ありがとうございます」

 貴族が全く出入りしていない野良迷宮って、知らないのだよなぁ。

 

 帝国解放会に入会したら、ロッジで調べてみるか。

 探索者ギルドや冒険者ギルドで公表されていない迷宮があれば、狙い目かもしれない。

 おおよその場所が分かれば、俺がローザを連れてワープしながら調査するという手もあるか。

 

 ベイルの迷宮はゴッゼル士爵家やアイリス家の者達も出入りしている。

 その二つの家がマチルダ達が忌避する貴族と関係がある可能性はかなり低いと思うが、用心に越したことはない。

 

 ザビル子爵の騎士団は今はザビル第二迷宮に注力している。

 第一迷宮の方は以前は放置されていたようだが、最近は入口に騎士団員を置くようになったとも聞いている。

 

「ザビル第一迷宮は今は騎士団を定期的に探索のために派遣してないと聞いている。

 低階層であっても探索終了宣言は出てないようだしな。

 探索の危険は伴うが、貴族が出入りする可能性は低いのではないかと思っている。

 普段はマテウス達は販売奴隷達を連れて、ザビル第一迷宮に行ってるのだろう?

 マテウスの意見はどうだ?」

「はい。ご主人様のおっしゃる通りかと。

 入口に騎士団員の関係者はいらっしゃいますが、階層案内だけのようです。

 迷宮内や入口付近で騎士団員っぽいパーティーに遭遇したことはございません」

 なら、決まりか。

 

「それなら、ザビル第一迷宮でマチルダ達は探索してみるか。

 ところでジョブの方はどうするつもりだ?」

「はい。私とレベッカで交互に魔法使いをやるのはいかがでしょうか?

 私が魔法使いをやる時は、レベッカは巫女か剣士のどちらかを担う。

 レベッカが魔法使いをやる時は、私が探索者か騎士をやるのはどうでしょうか?」

 なんか一気に大胆になってきたな。

 

「騎士のジョブはトラブルの元になるから、迷宮探索では避けるべきではないか?

 マチルダは当面は魔法使いと探索者のどちらが適切だと思うぞ。

 あと、レベッカは剣士を育成していないと思うのだが・・・・・・」

「なるほど、分かりました。

 当面は魔法使いと探索者を交互に使うようにします。

 親馬鹿かもしれませんが、レベッカには剣の才能がございます。

 槍の技術も磨かせていますので、巫女でも十分お役に立てると思いますが、

 剣の才能も一層磨かせたく存じます」

 この前と言ってる事が違うが、欲が出てきたのかもしれない。

 

 前は危険だから、剣士はダメと言ってなかったか。

 まあ、剣技を身に付けた方が、安心できるというのは分かるが。

 

「マテウスの許可が出たら、剣士系のジョブでの探索を認めよう。

 マテウス、確認を頼むぞ」

「ご主人様、二人の訓練は今はクーラタルの朝練限定となっております。

 確認はレドリックにしてもらった方が適切かもしれません」

 そういえば、そうだった。

 

 人目を避けるためにザビルでは訓練させず、クーラタルの朝練だけ参加しているのだったな。

 

「分かった。では、この後、レドリックに伝えておこう」

「よろしくお願いいたします」

 マテウスとマチルダが揃って頭を下げた。

 

 しかし、3名の戦闘奴隷が追加され、マチルダ母娘が魔法使い兼中衛として迷宮探索に加わると、ザビル側の戦闘部隊も一気に強化されるかもしれない。

 育成と訓練がまだ必要とはいえ。

 

 ザビル拠点の特性は販売用の戦闘奴隷の訓練や迷宮探索のOJTも必要なところ。

 タケダ家の戦闘部隊の全リソースを迷宮探索には割り当てられない。

 今はタケダ家メンバーが3、4人に対して、販売奴隷を2、3人連れて低階層の迷宮探索をしてると聞いている。

 

 販売奴隷達を連れた迷宮探索でもドロップ品やモンスターカードを得られるので、贅沢な悩みかもしれないが。

 ベイルの奴隷商人であるアランの店でも、似たようなことをやってるのだろうな。

 原作では、信用のおける者をパーティーに入れて、奴隷達と共に探索させていると表現されていた気がする。

 

 

「では、マチルダの探索者ジョブ、レベッカの剣士ジョブに経験を共有するように配慮する」

「私達の希望を受け入れていただき、ありがとうございます」

 彼女は立ち上がって、深々と頭を下げた。

 

 結局は自分達のやりたいことと、タケダ家の利益の方向性が同じであることが重要だ。

 自分で自分の身を守る実力をつけることは、戦闘部隊であれば必要最低限のレベルだ。

 後方支援のメンバーを護衛することを求められているのだから。

 

 戦う気持ちと向上心があるのなら歓迎したい。

 因縁のある貴族に目を付けられるというリスクを極力排除することが前提だが。

 

 カラダンが彼女に目配せすると、マチルダは一礼して会議室から退出していった。

 

 次はローザか。最近、彼女の話題が上がることが多いな。

 話題のルーキーといったところだろうか。

 

「マテウス、ローザの件を説明してもらえますか?」

「はい。ローザについての報告と相談となります」

 マテウスが手元のメモを見ながら説明を始めた。

 

 迷宮や盗賊を探知できるローザの能力について、何かあれば相談してくれと伝えてある。

 何かおもしろい発見でもあったのかもしれない。

 

「最近、ローザと迷宮探索をして気付いたのですが、

 ローザは探索者としての才能があるようです」

「?」

 ジョブは今でこそ冒険者だが、元々探索者だ。

 

 探索者の才能があるってどういう意味だ?

 元の世界のラノベ常識からすると、探索者の才能というよりは斥候の才能という気がする。

 いせはれの世界には斥候というジョブは存在しないようだけど。

 

「パーティーを組んで間もない頃は、

 支援のために槍を使う中衛の役割を淡々と果たしていたのですが、

 そのうち遠慮がちではありましたが、他のメンバーに指示を出すようになってきました。

 特に前衛のメンバーに対して、モンスターへの攻め方、守り方、連携の仕方などを

 細かく指示を出すようになりました」

「マテウスを差し置いて、ローザが戦闘の指揮を執るような感じだったのか?」

 彼は苦笑しながら頷いた。

 

「彼女の指示はかなり細かくて、初めは指示を出された側も対応に苦慮しました。

 ですが、彼女の方で各メンバーの能力や経験を考慮したのか、

 対応できそうな指示に調整すると、迷宮での戦闘がかなりスムーズになったと感じました」

「それは結構凄いことだな。

 ただ、彼女の経歴を全て知っている訳ではないが、そんなことが起こり得るのか。

 彼女達は母親と様々な迷宮を探索していたとはいえ、

 それほど他の者達と連携する経験が豊富だったとは思えないのだが」

 どちらかという彼女は暴走気味というイメージがある。

 

 実は迷宮や盗賊を探知できるというのは謎のコミュニケーション能力で、その能力を使ってパーティーを統率するとか?

 

 

「その・・・・・・ローザとロベルトに聞き取りをしたのですが、

 どうもミラの支援があったおかげで、そのようなことができるようになったとのことです」

「ミラ?」

 ローザとミラが全く結びつかない。別に仲が悪い訳ではないけど。

 

「ミラが木彫りの人形をたくさん作っているのはご存じでしょうか?」

「ああ、知っているぞ。

 迷宮のモンスターやらタケダ家のメンバーの人形を作って棚にたくさん飾ってあったな」

 天気が悪くて朝練ができない日に、食堂で人形を使った戦闘シミュレーションに興じたな。

 

「その人形を使って、姉弟で夜通し模擬的な戦闘を繰り返しているようです。

 ミラに頼んで木彫りの人形をたくさん作ってもらい、部屋に置いてあるようです。

 探索する迷宮のモンスターの編成を変えたり、自分達のパーティーメンバーも代えながら

 次のモンスターがどのように動くのか、パーティーメンバー側がどう動くべきなのかを

 長い時間かけて繰り返し検討しているようです」

「それはまた・・・・・・エマーロ族だから、夜はかなり長い時間かけてやっていそうだな」

 俺の指摘にマテウスはカラダンの方に視線を向けて苦笑した。

 

 カラダンも笑っているのは、身に覚えがあるからだろう。

 まあ、完全に睡眠無しとはいかないのだろうが、他の種族よりは夜の時間を長く使える。

 拠点構築のスキルのおかげで、照明設備を使い放題ってアドバンテージもあるのだよな。

 

「それに彼女は母親の影響もあって、迷宮のモンスターについての知識も豊富です。

 書物で新しい情報を収集しようとすることにも興味がありますから、

 知識と模擬戦闘の検討、それを迷宮で実践しながら調整しているのだと思います。

 戦っているモンスターの特徴を把握した上で指示を出すのが上手いです」

「なるほど・・・・・・迷宮探索者としての才能か。

 才能と言えば才能かもしれないが、それは彼女達の努力によるものだな」

 マテウスとカラダンが揃って頷いた。

 

 今までは魔法使いがいなかったがマチルダとレベッカが加われば、弱点属性を考慮した戦いが行えるようになるかもな。

 

 ピコは神妙な面持ちで、話に聞き入ってる。

 何か学ぼうとしている姿勢が見えて、好感が持てる。

 

 彼女が努力を惜しまない性格であることは才能の一つかもな。

 階層ボスのいる方向や盗賊が探知できることと比べればはるかに分かり易い。

 そして、ローザ達がやっている努力は他の者でも真似できることだ。

 向き不向きはあるとはいえ。

 

「それはローザだけでなく、ロベルトにも同様な指示ができるということなのだろうか?」

「ローザ程ではないですが、弟のロベルトにも似たようなことができそうです。

 ロベルトだけパーティーに加えた時にやらせてみましたが、

 そこそこ形になっていたと思います」

 それは朗報だな。

 

 ロベルトは探索者だけでなく、神官のジョブで最近戦っている。

 治療魔法を使う者は、パーティー全体を俯瞰できる役割も求められる。

 このまま二人が司令塔の技術を向上させてくれると、ザビル側の迷宮探索が安定するだろう。

 

 

 ローザとロベルトだけでなく、キッカケを作ったミラもファインプレーだ。

 後でちゃんと褒めておこう。

 さすがタケダ家の次席鍛冶師だ。

 筆頭鍛冶師のアミルとは違う形で貢献してくれている。

 

 ローザの好奇心旺盛な姿勢も化学反応を呼んだのだろう。

 やはりザビルとクーラタルの交流は重要だな。

 

 

「ローザが有能な探索者になりつつあることは理解した。それで相談というのは?」

「彼女には、これからも知識を蓄積できる機会を増やすように配慮したいということ。

 それに加えて、ザビルとクーラタルで彼女の知識や技術の交流をしてみたらどうかと」

 マテウスはザビル側の戦闘統括リーダーということもあって、視座がレドリックと同じだ。

 

 良い人材を得たという意味ではマテウスにも当てはまる。

 戦闘メンバーを育成するだけではなく、組織として強くなることを考えようとすることに頼もしさを感じる。

 統率の才能を持った人材はなかなか得られないので、本当にありがたい。

 

「そうだな。確かに複数拠点に分かれているが交流は重要だと思う。

 今はローザとクーラタルの一部の者だけの交流になっているが、

 将来的には他の者にも広げていきたいな。

 迷宮探索に限るのではなく、後方支援部隊の交流があっても良いと思う。

 それこそ、奴隷商人の知識、武器商人・防具商人の知識、

 タケダ家の商品や生薬の知識など、お互いに研鑽して理解を深めるべき内容は多いだろう。

 普段は話をしたこともない者同士でも、

 交流させてみれば思わぬ才能を持つ者が見つかるかもしれない」

「それはまた大がかりな・・・・・・」

 そうは言ったものの、直ぐには無理だろうさ。

 

「今は、ザビルの戦闘部隊の編成、ザビル第二迷宮の探索、クーラタルの34階層以降の探索等

 各部隊が重要な目標を持って、それに注力しているから交流と言っても難しいだろう。

 タケダ家全体で定期的に迷宮探索を休みにする日を設ける等して、

 交流可能な日を意図的に作り出す必要があるな」

「確かにおっしゃる通りかもしれません。

 ベイルの方は孤児院の子供達を受け入れている関係で休みが取りにくい状況です。

 子供達の入れ替え日のタイミングで休暇日を考えた方が楽かもしれません」

 確かにカラダンの言う通りだ。ベイルの元統括責任者だったからな。

 

 そして、それは今日だったりする。

 休暇日と言いながら、休ませる気があるのかというところが問題だが。

 

「そうだな。15日周期になるが、そのあたりを休みの日にすることを考えるか。

 まずはエネドラやレドリック、カラダン、マテウス、ミモザといった

 各拠点のリーダー層で話し合ってみてくれないか。

 それまでは、個別にローザがクーラタルのメンバーと交流するのは好きにさせよう。

 ローザは自由にさせた方が面白いことをやりそうな気もするしな」

「あまり自由にさせ過ぎるのも考えものかもしれませんが」

 カラダンとマテウスが顔を見合わせて苦笑してるのは、何かやらかしてるのだろうか。

 

「初めから大風呂敷を広げても、きっと上手くいかないだろう。

 最初のうちは、お互いを知るための顔合わせ程度で十分だ。

 戦闘する者なら模擬戦や訓練、後方支援なら商品を使ってみた感想や

 生薬生成する際の悩み事や愚痴を話す程度で構わないと思う」

「はい。上の者が決めたことを部下達に浸透させるまでは時間がかかります。

 焦らずに徐々にやっていくべきでしょう」

 耳の痛い話だが、マテウスの言う通りだ。

 

 

「リーダー層の話が出たので、カラダンとマテウスに確認したいのだが、

 カラダンの商売の面を補佐をするのはミシェルで合っているよな?」

「おっしゃる通りです。

 簡単なことはピコに頼むこともありますが、相談事はミシェルが多いかもしれません」

 これから、ミシェルに次ぐ幹部候補の育成が必要か。新規加入のダフネはどうだろう。

 

「一方で、マテウスの補佐はニケなのだろうか?彼女は会議の場に出てこないようだが」

「彼女は戦闘訓練等、体を動かしながら教えることは得意ですが、

 この手の話し合いには不向きなのです。

 大勢の人間や位の高い人間に対して、自分の意見を説明するのが苦手でして。

 方針が決まれば、それに向かって集団を引っ張ったり、育成することはできますが」

 さすがに自分の嫁さんの事は把握しているな。

 

 クーラタルで当てはめると、モニカかフラウスのような感じなのだろうか。

 

 クーラタル側の護衛部隊はレドリックとヘルミーネの両輪で回している。

 ザビル側もマテウス以外にもう一人は欲しいところだ。

 

 

「なら、統括面の補佐役にマチルダを考えてみるのはどうだ?

 元貴族だし、案外、そのような役回りは得意かもしれないぞ。

 今は自分と娘のことで手一杯かもしれないので、将来的にはということだが」

「なるほど、直ぐには無理かもしれませんが、それとなく彼女に打診してみます」

 自分達の居場所を作ろうと思ったら、統括する側に回るのも一つの手だろう。

 

 向き不向きもあるから、適性次第かもしれないが。

 

 

「ザビルもメンバーが増え、奴隷商館、防具店、迷宮探索と幅広くやっている。

 上に立つ者を少しずつ増やさなければならないので、

 候補になりそうな者がいたら、その者の育成も考えてみてくれ。

 俺やエネドラ、レドリックやヘルミーネに相談しても構わないから」

「分かりました。足元を固めながら、考えていきたいと思います」

 ザビルの責任者はカラダンなので、采配に期待したい。

 

 

「今回入った六人だが、クーラタル側に住居の空きがないので、

 全員、ザビル拠点住まいにさせてもらった。

 後方支援の者達はザビル側で活躍してもらうつもりだが、

 戦闘メンバーの方はどうしたいか希望はあるか?

 やはり三人共、ザビルで使っていきたいか?」

「はい。人が急激に増えて不安な面はありますが、人手不足なのは明らかなので。

 せめて三人のうち二人はザビルに加えていただきたいと思います」

 ザビルは戦闘奴隷の訓練と迷宮OJTがあるから、やっぱりそうなるよな。

 

「そうだな。ザビル側の事情は理解しているつもりだ。

 今回は俺の決断ということで三人ともザビルに配属させるつもりだ。

 だが、マテウスとレドリックは俺を挟まずに

 二人でそれぞれの拠点の状況を理解するために話をしてほしいと思っている」

「レドリックと話をするのは構いません。

 ですが、ご主人様が決めたのなら、それぞれの統括責任者はそれに従うだけなのでは?」

 確かに上の決めたことに下がゴチャゴチャ言ってると統率もへったくれもなくなる。

 

「マテウスの指摘はその通りだと思う。

 だが、二つの拠点の責任者はそれぞれの与えられた役割を理解して、

 その上で、お互いの拠点の状況も共有してほしいと思っている。

 例えば、ザビル拠点には奴隷商館があり、タケダ家のメンバーを増員しやすい環境にある。

 戦闘メンバーや後方支援メンバーの人材の供給拠点という役目があるからだ。

 現時点では、ザビルは人材を供給できるような準備はまだ整ってはいない。

 環境が整えば、そのうちクーラタルやベイルの拠点に人材を供給できるようになるし、

 そうなってもらいたいと思っている」

「なるほど、そのために他の拠点の状況を把握すべきだと思っているのですね。

 どのようなメンバーを求めているかの希望を知っておくことも重要ですね」

 マテウスは理解が早い。

 

「そうだ。そして、ザビル側の状況も伝えておくべきだと思う。

 今は無理でも、そのうち人材を供給するのだからな。

 ザビル側の実情を伝えておけば、教師役を融通してもらう事も可能かもしれない。

 そういった事は俺を経由しないで、拠点のリーダー達同士でやってもらいたいのだ」

「なるほど、分かりました。

 交流が必要なのは、別にローザ達のような配下の者に限った話ではないということですね」

 カラダンとマテウスの顔を見ながら頷いた。

 

 

 夜に更新している育成メモやパーティー表に、最近加わったメンバーの情報を記載。

 

<クーラタル(27名)>

(1)迷宮組(5名)

 ユキムラ(百鬼夜行Lv88/鬼神Lv88/英雄Lv88/勇者Lv88/遊び人Lv88/忍者Lv88/魔道士Lv88)

 アミル(鍛冶師Lv86⇒隻眼※/冒険者Lv78/探索者Lv86/斎王Lv25)

  ※隻眼のジョブ取得条件不明(バルドルフの発言から装備品のスキル融合数を増やす)

 ヴィルマ(百獣王Lv88)、イレーネ(くのいちLv67)、オリビア(竜将軍Lv85)

 

(2)護衛部隊(13名)

 レドリック(剣聖Lv54/騎士Lv47)、モニカ(剣聖Lv56)、レイモンド(冒険者Lv49)

 ケリー(百獣王Lv54)、マリー(百獣王Lv54)、フラウス(斎王Lv45)

 ラファ(魔道士Lv55/斎王Lv52)、ヘルミーネ(冒険者Lv40/聖騎士Lv51)

 ミラ(鍛冶師Lv50/剣匠Lv63/剣聖Lv1★)、マヤ(剣匠Lv60/剣聖Lv1★)★剣聖の育成は保留

 フレイヤ(竜騎士Lv49)、ドロテア(魔法使いLv50/魔道士Lv1)

 トカラ(魔法使いLv50⇒魔道士※)  ※魔道士ジョブ取得待ち 

 

(3)後方支援(9名)

 エネドラ(武器商人Lv47)、チクルス(薬師Lv34)、ポーラ(沙門Lv27)

 アネット(武器商人Lv17)、シルビア(防具商人Lv17)

 フローラ(薬草採取士Lv46)、クララ(奴隷商人Lv15)

 ゼノ(薬草採取士Lv45/僧侶Lv46)、ゼナ(薬草採取士Lv45/僧侶Lv46)

 

<ベイル(4名)>

(1)後方支援(4名)

 ミモザ(薬草採取士Lv45⇒薬師)、ビンス(冒険者Lv8)、リック(冒険者Lv8)

 クルト(防具商人Lv35) ※ビンス、リックの交代要員

 

<ザビル(21名)>

(1)護衛部隊(12名)

 マテウス(剣聖Lv44)、ニケ(暗殺者Lv48⇒刺客)、ヒューゴ(神官Lv48⇒禰宜)

 ニクラス(剣匠Lv43⇒剣聖)、ゾフィ(巫女Lv47⇒斎王)

 ローザ(探索者Lv50/冒険者Lv32)、ロベルト(探索者Lv50/冒険者Lv12/神官Lv47)

 マチルダ(魔法使いLv48/探索者Lv28/騎士Lv47/薬草採取士Lv40)

 レベッカ(魔法使いLv48/巫女Lv48/剣士Lv1/薬草採取士Lv40)

 カイ(剣士Lv19⇒剣匠)、レジーナ(探索者Lv11⇒冒険者)、ジゼル(巫女Lv10⇒斎王)

 

(2)後方支援(9名)

 カラダン(奴隷商人Lv15)、ピコ(冒険者Lv20/防具商人Lv7)

 ミシェル(武器商人Lv17)、ナナ(農夫Lv38)

 サライ(防具商人Lv9)、ティナ(探索者Lv32/薬草採取士Lv40/商人Lv31/防具商人Lv1)

 ダフネ(商人Lv12⇒武器商人)、エルザ(薬草採取士Lv9)、ノーラン(薬草採取士Lv10)

 

部隊編成(3/6)(クーラタル)

 ユキムラ隊▼

 (ユキムラ(L)、アミル、ヴィルマ、イレーネ、オリビア)

 レイモンド隊▼

 (レイモンド(L)、レドリック、マリー、フレイヤ、ラファ、トカラ)※メンバーは適宜入替

 ヘルミーネ隊▼

 (ヘルミーネ(L)、ケリー、モニカ、マヤ、フラウス、ドロテア)※メンバーは適宜入替

 ※待機メンバー:ミラ

 

部隊編成(2/6)(ザビル)

 ローザ隊▼

 (ローザ(L)、マテウス、ニケ、ニクラス、ヒューゴ、マチルダ)※メンバーは適宜入替

 レジーナ隊▼

 (レジーナ(L)、カイ、ロベルト、ジゼル、ゾフィ、レベッカ)※メンバーは適宜入替

 

 

 上下の命令系統は大切だけど、タケダ家も総勢52名になったので、全部俺を経由して指示するのは無理だ。

 報連相はお願いしたいけどね。

 

 ザビル側のパーティーはクーラタル側と比べると、まだまだバランスが悪い。

 前衛メンバーを充実させていかなければならないだろう。

 まだ、編成途上だから、焦らずに人材集めをする必要がある。

 人材供給拠点にしたいので、クーラタル同様にいずれは増築工事を計画しなければならない。

 

 

「今晩の会議の後にでもレドリックと話をしてみたらどうか」

「はい。お互いの抱える問題を話し合ってみます」

 レドリックとマテウスが腹を割って話せるようになると助かる。

 

 俺の見えない所で、愚痴大会をやるかもしれないが、それはそれで必要なことだろう。

 

「今日のところは、相談はこれぐらいで大丈夫だろうか?」

「はい。旦那様、お忙しいところ、ありがとうございました」

 

 皆から礼を言われ、ザビルを去ることにした。

 

・・・・・・

 

 ターヘラにレドリックとケリーを迎えにいくには、まだ時間がある。

 

 せっかくなので、新規メンバー六人をパワーレベリング。

 クーラタル迷宮の30~35階層の魔物部屋を殲滅。

 これで、戦闘メンバーはLv30を超えたので、低階層での事故は防げるだろう。

 

 レベリングが一区切りついたので、二人を迎えにターヘラに移動した。

 

・・・・・・

 

 剣術指南所の広場では、ニムラルのオッサンとレドリックが模擬戦をやっていた。

 今は剣聖のレベルが上がったせいなのか、レドリックの方が押し気味に戦っている。

 

 少し離れた木陰で子供達とケリーが二人の戦いを楽しそうに見ている。

 しばらくすると、特に勝敗を決める訳でもなく、二人とも木刀を下げて終了にしたようだ。

 

 レドリックが俺に気づき、こちらに近づいてきた。

 オッサンはその場所に留まり、別の子供に稽古をつけ始める。

 

「どうだ、習得できそうか?」

「理屈は理解できました。あとは反復練習と応用あるのみですね」

 そうか、目処がついたのは良かった。

 

「まだ、通う必要はあるか?」

「いえ、大丈夫だと思います。

 何度も体に馴染ませるように練習して、それでダメだったら、また来ようかと思います」

 戦闘中の偽装だから、練習が必要なのだろうな。

 

「他の者も習得できそうか?ケリーの方は?」

「理屈はシンプルなので、他の者も習得できると思います。

 ただ、器用さが必要になるので、習得時間は個人差がでてくるかと。

 ケリーは・・・・・・後で自分が教えます」

 やっぱり、ただの里帰りになったか。まあ、いいけど。

 

 

「もう、帰れるか?」

「ええ、ニムラルさんに挨拶してきます。ケリーにも声を掛けてきます」

 彼は子供に稽古をつけているオッサンの方へと走っていった。

 

 もう、かなり陽が傾いてきたな。

 こんな時間まで、泥だらけになりながら楽しそうに木刀を振り回してる子供達を見るのは、なんとも言えない気分だ。

 

 ただの遊びなら微笑ましい光景だが、生き残るための技術をオッサンが徐々に教えているのだろうかと考えてしまう。

 どちらでもあっても、楽しみながら学ぶことは大切だと思うけど。

 

 ケリーを連れたレドリックが戻ってきたので、オッサンの方に腕を振って、クーラタルへ戻ることにした。




お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/4/12(日)の予定です。
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