異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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 ハルツ公視点の閑話です。

 話はユキムラ達がターレ迷宮を討伐した頃まで遡ります。


閑話007 手練れ

 硬い表情で団員が入室してきたの。緊急な用件か。

 

「御報告いたします。

 先ほど、ターレ迷宮に詰めていた団員より報告があり、ターレ迷宮が討伐されたとのこと。

 討伐した冒険者の者を団員が同行させておりますが、いかがいたしましょうか?」

「ターレ迷宮が討伐じゃと。(まこと)か?」

 ターレは他の迷宮と違い、騎士団の戦力を投入していない迷宮じゃ。

 

 タケダ殿だけが驚異的に頑張っておるとだけ報告を受けておった。

 それが、こうも早く討伐されるとは。

 

 ゴスラーが立ち上がって、団員に向かって手を振った。

 

「その団員をここに連れてまいれ。直接、話を聞きたい」

「了解しました。少々お待ち下さい」

 ゴスラーも信じられぬか?わしも同感じゃ。

 

・・・・・・

 

「では、お前は確かにターレ迷宮に入れないのを確認したのだな?」

「はい。おっしゃる通りです。

 討伐された迷宮は入口から、どこにも行けないと伺っておりましたので確認いたしました。

 確かにどこにも移動できませんでした。

 そして、タケダ様は私にギルド神殿を見せてくれました。

 ただ、私はギルド神殿を見たことがありませんので本物かどうかは分かりません。

 それもあって、タケダ様に城への同行をお願いしました」

 その判断は正しい。

 

 直接、タケダ殿から話を聞きたいの。

 

「閣下、私がタケダ殿を迎えにいって参ります」

「ゴスラー、それは構わぬ。それよりも先に確認しておきたいことがある」

 

 報告した団員をいったん下がらせた。

 

「タケダ殿が迷宮を討伐した件、其方はどう思う?」

「まず、迷宮討伐までの期間が早過ぎます。

 団員の話では他のパーティーは、ほとんど迷宮に入ってないとのことなので、

 単独パーティーで迷宮討伐を成し遂げたことになります。

 騎士団でも50階層近くになってくると複数のパーティーでローテーションをしながら

 休息を取らせて、最終階層で精鋭で挑むというのが最近のやり方です」

 そうじゃな。単独パーティーでの攻略など、最近はなかったの。

 

 もっとも騎士団員の安全を考えれば当然の処置じゃ。

 おかしくもなんともない。

 むしろタケダ殿のパーティーが異常なのじゃ。

 

「49階層や50階層の到達報告は受けておったか?」

「いえ、なかったはずです」

「ということは、タケダ殿は横槍を気にしておったのか。

 誰にも邪魔されずに、単独で迷宮討伐を速やかに成し遂げるために」

 危うい考えじゃが、その気概は悪くない。

 

 じゃが、そこまでして迷宮討伐をしたい理由はどこにあるのか?

 前に騎士団に誘った時には断られたの。

 別の領地からの叙勲を狙っておるのか。

 

 

「タケダ殿の意図は掴めぬが、まあ本人と話をしてみるしかあるまい。

 しかし、今の我が領内の状況からすれば朗報は朗報じゃの?」

「はい。それは確かに。

 春先の水害対応や盗賊討伐、それに加えて立て続けに迷宮が出現したせいで

 団員もかなり疲弊しておりましたので」

 優先度を落としていた迷宮から討伐されるとはの。

 

「では、ゴスラー、タケダ殿の所に行ってもらえるかの?」

「はい。では今から」

 

 慌ただしく出ていったが、さてどうしたものか。

 

 タケダ殿の思惑は分からぬが、領内で役立てるための良い駒ではあるな。

 こちらの望む通りに動かすためにはどうするかの。

 

 

・・・・・・

 

(迷宮討伐を労うためにユキムラ達を晩餐会に招き、解散した後の執務室での会話)

 

 これで、先ほど模擬戦を行なったメンバーは全員揃ったの。

 記憶の薄れぬうちに確認しておかねば。

 

「目の前でタケダ殿のパーティーメンバーとの模擬戦を見たものの、

 実際に戦った者達の意見も確認したい。

 戦って感じたことを皆、話してくれ」

 

 まずはゴスラーからじゃな。

 

「ゴスラー、近くで見ていた其方の意見はどうじゃ?」

「はっ。正直、あれほどの者達とは思いませんでした。

 ヴィルマという者の決闘は目の前で確認し、実力は理解していたつもりでしたが、

 今日の方が剣筋の鋭さ、身のこなし共に見事に感じました。

 決闘の時ですら、まだ全ての手の内を見せていなかったのかもしれません」

 なるほど、そういうこともあるのか。

 

 タケダ殿のパーティーメンバーの戦いを複数回見たのはゴスラーだけじゃ。

 それが差を感じると言うのであれば、今回の方が本気であったということか。

 問題はまだ真の実力を見せてはいないかもしれないということじゃが。

 

「実際に戦った者の意見も聞きたい」

 今日、戦った者三名の顔を見回す。

 

 

「では、私の方から。

 私の戦ったヴィルマという獣人の女。まだ手の内を全て見せてはいないと思われます。

 こちらの剣は全く届かず、かといって大した反撃を仕掛けてもきませんでした。

 回避に徹しているようにも見えませんでしたので、まだ全力は出しておらぬと感じました」

「そうか。止めるのが早過ぎたようじゃな。

 其方は騎士団の中でも最も剣の腕が立つ。それでも相手の実力の底が見えなんだか」

 タケダ殿は商人兼迷宮探索者などと申しておるが、過ぎた戦力よな。

 

 

「私も宜しいでしょうか。

 私の戦った獣人の女は攻撃を仕掛けてきましたが、こちらの対応に業を煮やした感じでした」

「ふむ?それはどういう・・・・・・」

 淡々と戦っているように見えたのじゃが。

 

 

「こちらが実力を探っているのを察して、不満に思ったのやもしれませぬ。

 こちらの攻撃に合わせて、逆に誘うようにカウンターを返してきました。

 私に言えることは、あの者の実力は私よりも上であるということのみです。

 どのぐらい上なのかは正直、分かりませんでした」

「そうか、其方でも全く勝てぬと思ったのじゃな」

 騎士団の最精鋭パーティーの主力でも敵わぬのか。

 

 

「では、最後に私の方から。

 初めは当主であるタケダ殿と戦いたかったのですが、ドワーフの女に割り込まれたため、

 タケダ殿の実力を確認することはできませんでした。

 その代わりに、その者と対峙した訳ですが、実力の底が見えないという点では同じですが、

 戦闘の経験という意味では、私に匹敵するものに思えました」

「それは真か?其方の経験は騎士団の中でもトップクラスであろうが。

 あの者が経験で其方と同等というのは信じられぬぞ」

 いくらなんでも、それは見込み違いであろう。

 

「今一度確認したいのじゃが、其方があの者を経験豊富と感じた理由はなんじゃ?」

「一度だけ、こちらの剣があの者に届いた時の感触です。

 タケダ殿のパーティーはどのメンバーもかなり立派な防具を装備してましたので、

 訓練用の武器では攻撃が当たっても、ほとんどダメージは与えられないでしょう。

 それでも武器が当たれば、防具が攻撃を吸収しているのか、

 経験の違いでダメージを削減しているかの違いは私には分かります。

 今回、あの者に攻撃を当てた時の感触は後者だったと思われました。

 前に帝都で侯爵家のパーティーメンバーの猛者と模擬戦をやった時の感触に似てましたので」

 なるほど。経験豊富な其方がそう感じたのなら、そうなのじゃろうな。

 

「小柄でしたし、服装も若そうに見えましたが、ドワーフの年齢は我々には分からないので

 槍の熟練者で意外に年齢も経ているようです」

「其方の印象は理解した。そうか、熟練者か」

 にわかには信じられないが。

 

 

「閣下。では、三名ともかなりの実力者ということでしょうか。

 それにしても、解せないことが多いですね」

「ゴスラー、其方が一番解せないと感じたことはなんじゃ?」

 今回、直接戦ってはいないが、近くで見て感じることがあったか。

 

 

「一番、理解できないのはパーティーメンバーの構成です。

 今日、エネドラという商人を除くと戦った三人、タケダ殿、そして恐らく竜騎士と思われる女、

 どれも近接戦闘を得意としているように見えます。

 ターレに派遣していた団員の話では、パーティーメンバーは五人だけのようです。

 そして、魔法使いらしき者は見かけなかったと。

 報告を受けた五人の風体と、本日、城に来た五人は同じように思われます。

 そのようなメンバーだけで迷宮討伐が成し遂げられるものなのかと。

 確認したギルド神殿は本物でしたし、

 迷宮討伐直後に出てきたのは、タケダ殿のパーティーだけだったと報告を受けております」

「確かに妙なパーティー構成じゃな。

 タケダ殿は冒険者か探索者であろうから、

 残りの四人・・・・・・竜騎士の者を除けば三人か。

 その三人のうちの誰がが巫女か僧侶なのであろう。

 魔法使いなしで、剣と槍のみで五人で迷宮討伐か・・・・・・

 余程の手練れと見なすべきであろうの」

 見回した面々が、ため息をついている。

 

 

「我が家に出入りしておるルークの話では、

 タケダ殿は次々とスキル融合装備品を持ち込んでおるそうじゃ。

 装備品が優れているからと思っておったが、今日使ったのは木製の武器じゃ。

 それでも、我が騎士団が敵わないということであれば、実力は本物ということじゃな。

 しかも、竜騎士の女とタケダ殿の戦いは今日は見れなんだ」

「タケダ殿はサボーなる狼人族の猛者を決闘で倒しております。

 魔法ではなく、剣で倒したのは私が確認しましたので、剣の腕も見事だと思われます」

 今日はもう少し模擬戦の時間を引っ張るべきじゃったか。

 

 

「いずれにしても、侮りがたい相手じゃな。

 我が陣営に引き込もうと誘ってはみたものの、見事に袖にされてしもうた」

「閣下。正直、脇が甘いのか甘くないのか測りかねております。

 石鹸や鏡の取引でこちらに積極的に近づいてきてますので、

 公爵家と接触したいのは間違いないと思われます。

 とはいえ、タケダ殿のパーティーメンバーの振る舞いを見る限りは

 隣国の間諜というのも考えにくいかと」

 確かにゴスラーの見立ては的を射ている。

 

 

「そうじゃな。獣人の女二人、竜騎士の女、商人の女達は間諜とは程遠い。

 用心深そうに見えたが、ドワーフの女もそうじゃろう。

 ルークからタケダ殿は外国の出身と聞いておったが、隣国の間諜ではなさそうじゃな。

 とはいえ、振る舞いを見ている限りでは帝国の出身とも思えぬので

 外国の出身というのは間違いなさそうじゃ。

 せめて、どの国の出身か知りたいのじゃが」

「これからも、それとなく情報収集いたしましょう。勘づかれない程度に」

 それしかないようじゃな。

 

・・・・・・

 

 ゴスラー以外の者を下がらせ、二人でテーブルで相対する。

 

「ゴスラー、先ほど話がでたアミルというドワーフの娘は鍛冶師ギルドでの試験に合格して、

 まだ半年も経っておらぬそうじゃ」

「それで・・・・・・我が騎士団の精鋭と経験が同等などありえますでしょうか?」

 通常なら、あり得ぬ。

 

「各街の鍛冶師ギルドに調査の者を放って調べさせたが、あの娘は16才だそうじゃ」

「16才?それはいくらなんでも・・・・・・誤報ではないですか?」

 信じられない気持ちには賛同するが、首を横に振るしかない。

 

「事実じゃ。

 知っての通り、鍛冶師ギルドにはエルフが入りにくいので、

 知り合いのドワーフの者を幾人か経由させて調べさせた結果じゃ」

「あの娘が16才とは・・・・・・」

 他の見方もできるか。

 

 

「調査した者と同一人物ならあり得ぬの。

 替え玉で別人なら、あるやもしれぬ。

 名前は同じようじゃが、我らから見ればドワーフの娘が同じ者かどうかは分からぬ故」

「確かに。しかし、そこまでのことをやるでしょうか?

 もし、やっているのであれば、相当胡散臭い者達ということになりますが・・・・・・」

 まあ、他にも不可解なことは多い。

 

「さて、分からぬの。

 一つだけ言えるのは、

 16才で我が騎士団の精鋭の者達と経験が同じなどあり得ぬということじゃ。

 まあ、他の者も話しぶりや振る舞いから、相当若そうではあるが、

 今日明らかに不可解と思えたのはドワーフの娘だけじゃからな」

「となると別人の可能性もあるやもしれませぬか」

「まあ、こちらが秘密裡に調査したことは明かせられぬから指摘もできぬ。

 労うために招いておいて、インテリジェンスカードの確認もできぬしな。

 不可解な話とだけ、今は覚えておこう。

 そのうち何か掴めるやもしれぬ」

 ゴスラーは黙って頷いた。

 

「まだ、あのドワーフの娘が若いという情報はわしと其方までに留めておこう。

 騎士団の其方のパーティーメンバーにも他言無用じゃ。

 この情報がどのように生きるかも分からぬからの」

「なるほど」

 ことの重要さが分かるまでは広げぬ方が良い。

 

 

 他にも確認しなければならぬ事がある。

 

「ゴスラー、其方から報告があったが、

 タケダ殿はクーラタルとベイル以外にも邸宅を構えておるそうじゃな?」

「クーラタルの家はかなりの規模のようで、現在、増築工事をしているようです。

 ベイルの方は大きさは、それほどでもないようですが、

 邸宅内の敷地に士爵家の者を住まわせているようです。

 そして最近になって分かったのが、ザビルにクーラタルと同じ規模の家を構えたようです。

 ザビルの方では奴隷商館と防具屋も同じ敷地で営んでいるようです」

 なかなかの財力じゃな。

 

「かなり大がかりな商家のようじゃな。

 その資金がどこから出ておるのかが気になる」

「閣下。現時点でタケダ殿の資金源がどこにあるのかまでは掴めておりませぬ。

 鏡や石鹸だけの取引だけでは成し得ぬ金額だとは思いますが」

 やはりそこか。

 

「隣国からの資金援助の線は考えておるか?」

「今のところは、そのような者がタケダ殿の近辺をうろついているという情報はありませぬ。

 というか、タケダ殿の周りは我が国の奴隷で固められております故」

 急に勢力を伸ばしてきたのは不気味じゃ。

 

「閣下はタケダ殿と隣国との関係を疑っておいでですか?」

「そこまでの判断はしておらぬ。だが、完全に白とまでも言い切れぬ。

 判断は保留じゃ」

 間者であれば、もっと目立たずにやるであろうがの。

 

 

「ゴスラー、其方はタケダ殿をこちらに引き込む何か良い手を思い浮かぶか?

 金、女、名誉・・・・・・どれにも興味を示さぬように思えるが」

「あえて言えば、女でしょうか?タケダ殿のパーティーメンバーを見る限りは。

 こちらの息のかかった貴族の令嬢を送り込むというのは?」

 足がかりはその辺か。

 

「確かにわしも、そう思うが・・・・・・却って、警戒されるやもな。

 タケダ殿は貴族を恐れてはいないように思うのじゃ。

 正確に言えば、貴族の力というものを警戒してはいるものの、

 普通の平民のように貴族という者に畏怖を抱いてはおらぬ。

 我らを見る目は、畏怖ではなく、冷酷に観察するような者の目じゃ」

「それは・・・・・・確かに、そうかもしれません。

 私もタケダ殿と話をした限りでは、必要以上に緊張した様子が見えませんでした。

 こちらを値踏みするような、実力を測っているような目でした」

 ゴスラーの見立ても同じか。

 

 

「とはいえ、別に我らに取って代わろうという様子ではないな。

 言ってしまうと、不可解な輩ということじゃな」

「は、はは・・・・・・確かに不可解ではありますな。良い意味でも悪い意味でも」

 ゴスラー、笑い事ではないぞ。

 

 

「願わくは、我が領地にとって便利な駒として動かせれば良いのじゃが。

 そうもいかなさそうじゃな」

「確かに読めない駒ではありますが、何か懸念される点が?」

 天井を見上げて、大きく息を吐いた。

 

「タケダ殿は複数の貴族と接触しておる。

 我が家の他にもベイルのゴッゼル士爵家、そしてザビル子爵じゃな」

「公爵家よりは位の低い者ばかりですが、複数の貴族を相手にするということは、

 どの貴族にも与しないということですかな」

 ゴスラーの言葉に頷く。

 

「そのようじゃな。複数の街にまたがる貴族と取引するなど、大商家の商いじゃ。

 もはや狙いも皆目分からぬ故、暫くは様子見しかなかろう。

 あまりそちらばかり目を向けていても、得るものはなさそうじゃ。

 それよりも隣国の対応、盗賊の対応、迷宮の討伐、やることが山積みじゃ」

「確かに。タケダ殿のことは使える時に便利に使えるかもしれない駒という程度でしょうな」

 今はあの者よりも、片づけなければならぬことが多い。

 

「カシアの実家の方も何とかせねばならぬ。

 あのままではエルフの影響力が削がれかねない故な」

「そのために全エルフ最高代表者会議で根回しをしたのではないのですか?」

 そう・・・・・・その通りなのじゃが。

 

「じゃが、あの男が大人しく、今の地位を譲るなどはなかろう。

 いずれは武力による制圧が必要となるやもしれぬ。

 そうでなくとも、騎士団員は今は疲弊している状況だ。

 こちらの犠牲は少なく片をつけたい」

「そうですな・・・・・・皆、疲れております。

 無理を強いれば、欠員が増えるばかりで補充もままなりませぬ。

 やはり、使える駒を有効に使いたいというのが本音です」

 だが、強い駒というのは、得てして扱いにくい。

 

 

 今日のところはこれまでか。

 

 時間の割には得るものはなかったようじゃ。

 タケダ家一党が手練れ集団ということだけは、誰の目にも明らかになったがの。

 

 迷宮討伐の腕前だけでなく、個々人の技量も一流。

 あとは集団戦闘の経験や実力じゃが、こればっかりは試せぬからの。

 

 

・・・・・・

 

(ユキムラが帝国解放会へ入会した日の晩のゴスラーとの会話)

 

「ゴスラー、タケダ殿は無事に帝国解放会の入会式を終えた。

 その件について、其方に相談がある」

「はい。どのような?」

 前に話したことを覚えておるかどうかじゃが。

 

「エステルは詳しくは申さなかったが、

 タケダ殿は年齢の割に睦事に深いこだわりがあるようじゃ」

「そ、それはまた・・・・・・」

「故に、前に話した女子(おなご)をあてがう件を考えようかと思う」

「ああ、こちらに引き込むのであれば、女であろうと言った件ですな」

 さすがにゴスラーは覚えておったか。

 

「そうじゃ。タケダ殿は身内に甘そうじゃからな」

「身内に甘いですか?・・・・・・しかし、閣下の配下に適当な者がおりましたか?」

 ゴスラーの問いに首を横に振る。

 

「我が家の身内でなくともよい」

「では、適当に奴隷商から?」

「それはダメじゃ。あてがうなら、それなりの身分の・・・・・・領地持ちの家系の貴族じゃな」

 首を傾げるということは分かっておらぬか。

 

「タケダ殿は身内に甘いと言ったであろうが。

 領地持ちの貴族の女子なら、その女子の言葉で貴族になる気になるやもしれぬ。

 そうでなくとも、エルフの貴族の女子を入れておけば、

 こちらにとって使い易い駒になる可能性もあるじゃろう」

「しかし、それは逆に警戒するという話だったのでは?」

「そうじゃ。それ故に公爵家所縁の女子はあえて外した方がよかろう」

「なるほど。確かにそうかもしれません」

 本当分かっておるのかの。

 

「ゴスラー、わしがタケダ殿が身内に甘いと言ったのは、エネドラという商人のことよ」

「エネドラ・・・・・・あの商人の女が何か?」

「あの者、我が家に出入りし始めた時には左腕が無かったであろう?

 それが今は回復しておる。

 恐らくタケダ殿がどこからかエリクサーを用意したのであろう。

 迷宮探索者であれば、今後の戦いのためにエリクサーも必要であろう。

 だが、あの者は商人じゃ。不自由は不自由だが、別に左腕がなくとも商売はできる。

 にもかかわらずエリクサーを与えたのじゃ。

 タケダ殿は身内に甘いと言ったのはそのことじゃ。

 そして、迷宮討伐した後にも威霊仙を求めてきおった。

 おそらくタケダ家内にまだ治したい者がおるのじゃろう。

 タケダ殿のパーティーには、そのような者が見当たらなかったから別の者じゃろうな。

 とにかく、つけ入る隙はあるということじゃ」

 ゴスラーは謀略面という意味はまだまだ弱いの。もうそれなりの年なのじゃが。

 

 それに女子をあてがうのは、もう一つ理由もある。

 

 

「ゴスラーよ、タケダ殿のパーティーメンバーにはエルフ族の者がおらぬ。

 今なら五人なので、もう一人加えることも可能であろう。

 そして、タケダ殿のパーティーには魔法使いがおらぬ。これは好機じゃ」

「確かに。公爵領以外で領地持ちの係累で魔法使いの令嬢を探しておきましょう。

 もちろん、公爵家と敵対していない家系の者で」

 ようやく理解してくれたか。

 

 しかし、そう簡単に見つかるかどうか。

 

「念のため申しておくが、カッサンドラ嫗には内密じゃ」

「た、確かに・・・・・・カッサンドラ様が関わると面倒なことになるやもしれませぬ。

 気取られないように注意します」

 あの婆さんに介入されると、こちらの思惑通りに事が運ばぬわ。

 

「それと、タケダ家には竜人族の者が2名加わったようじゃ。

 ザビルからの取引報告書が帝都の商務省に届いており、手の者に確認させた。

 取引先の詳細は特に明記されておらぬが、ザビルの商人と記載があった。

 竜人族二人を取引できるほどの商家はザビルには数えるほどしかおらぬ。

 まず、間違いなくタケダ家であろう」

「共和国から仕入れた竜人族を二人も抱えたのですか。

 それは侮れませぬな」

 そう二人も一度に抱えるということは相当な財力じゃ。

 

「これから、更に力をつけてくることも考えられる。

 先ほどの女子のこと、少し急がねばならぬかもしれぬ」

「確かに。まだ、探し出した候補は2名程ですが、どうにもパッとしませぬ。

 選出作業を急がせます」

 せっかくの攻め口じゃ、有効に利用せねば。

 

「では、引き続き頼むぞ」

「はい」

 さて、都合の良い者が上手く見つかるかどうか。

 

「ゴスラー、もう一つタケダ殿に関することで、頼みたいことがある」

「はい、なんでしょうか?」

 今日、エステルから聞いた件で、気になることが一点あるの。

 

 さて、どう説明したものか・・・・・・こやつは変に真面目な所があるからのぉ・・・・・・。




お読みいただき、ありがとうございます。
原作でもエルフヒロインをセニ号作戦の後に下賜しましたが、あれは単なる褒美というよりはエルフ寄りに主人公を引き寄せるためだと解釈しました。
なので、拙作でもユキムラを釣るのに、エルフ女性をあてがうハニトラ(?)戦略を画策する表現にしてみました。

公爵側も勘違いしていることが多いのですが、この後、どのような展開になるのかは・・・・・・?

次回投稿日は2026/4/26(日)の予定です。
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