クーラタル迷宮の60階層を攻略した翌日は勢いのまま、61階層の攻略に着手。
迷宮組メンバーで話し合いをした結果、61階層以降は1階層ずつ攻略していくことにした。
全エリアをクリアするのは、さすがに効率が悪いので、ボス部屋に一番近い小部屋から開始してボス戦攻略までを目標とする。
それでも一階層あたり攻略にかかる日数は、のべで3日ほどかかるはずだ。
61階層の狙いは、ハイサイクロプスのカード。
ただし、ボス戦でのみしかドロップしないらしい。
そして、ボス戦では金を稼げるチャンスもあるとのこと。
61階層の開始地点の小部屋でブリーフィング。
「61階層からシルバーサイクロプスが出現する。ドロップ品は銅で、レアドロップが銀貨だ。
ボスはゴールドサイクロプスでドロップ品は銀貨だが、たまに金貨を落とすらしい」
「ご主人様、稼ぎ時ですね」
珍しくアミルが、ニコニコしながら打算的なことを言ってる。
実際、アミルの言う通りか・・・・・・ボスマラソンすれば、結構な財産が築けるだろうか。
ハイサイクロプスのカードも狙えるから、一石二鳥かもしれない。
レアドロップの確率が1/10だとしたら、金貨は銀貨の100倍の価値だから、ボスマラソンしたら期待値的には美味しい階層だよな。
金貨に目が眩んで、命を
ハイサイクロプスのカードがドロップするには、相当の周回を重ねる必要があるか。
ハイコボルトも持ってないので優先度は低いが、ドロップしたらラッキーぐらいのノリで。
でも、多分、ヴィルマ達が飽きるだろうから、ほどほどにして先に進むと思うけど。
今は、お金に困ってないし。
「ここはシルバーサイクロプス、マザーリザード、カープカープ、フロックフロッグの順に多い。
タフなモンスターばかりだから注意していこう」
「了解!」
「了解!」
「了解!」
「了解」
小部屋を出て、ボス部屋に向かって歩き始めた。
60階層越えた辺りから、敵モンスターのタフさが目立つようになり、前衛組三人の機嫌はすこぶる良い感じ。
三人共スキップでもしそうな表情だ。
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シルバーサイクロプスはタフではあるが、むしろ扱いやすい相手だと感じた。
しっかりと状態異常に追い込めるからなぁ。
マザーリザードの方が召喚をしてくるだけ嫌な相手だと思う。
とはいえ、たまに裏拳の攻撃をしてくるので、前衛陣にとっては手頃な相手であり、接近戦をバチバチと楽しんでいるようだった。
そして、索敵で見ると61階層には、そこそこ他のパーティーが探索しているように見える。
ボス部屋の方向ではない通路でも他のパーティーを見かけるな。
これは、56階層以降では、あまり見なかった光景だ。
やはり銀貨狙いなのだろうか。
この階層に長く居座って銀貨を稼ぐという目論見なのかもしれない。
午前中だけではボス部屋に辿り着けないので、適当なところで探索を切り上げた。
・・・・・・
昼食を挟んで、午後から迷宮組と護衛部隊の混成チームはクーラタルの55階層の攻略。
このチームの最終目的階層だ。
今日は本来はラファではなくヘルミーネの出番だったのだが、ラファに譲ってやったようだ。
55階層の攻略を終えたら、混成チームの探索は終了し、解散することになっている。
ヘルミーネは、最後にラファに花を持たせたのだろう。
俺の方は、いつも通り初めの一時間で問題ないことを見届けて別行動へ。
55階層の魔物部屋の発見と殲滅を行い、その後は一時間だけ60階層のボス部屋でボスマラソンを実施した。
60階層のボスをソロで攻略など、普通なら正気を疑う話だ。
万が一に備えて、危険を感じたらオーバーホエルミングで逃げる算段はしていた。
実際にはオーバーホエルミングとオーバードライブのはしごで、状態異常付与の槍を三本とデュランダルを使えば、問題なく倒せることが分かった。
やはり、Lv90の俺とLv60のモンスターにはセブンスジョブの効果もあり、実力差がかなりあるのかもしれない。
問題ないと言っても石化した後に煙に変える作業があって、むしろその時間が長い。
ソロなのでフレンドリーファイアの危険がなく、槍を縦横無尽に振り回せるのが楽しい。
一時間で20戦ぐらいいけるかと思っていたが、タフなボスモンスターが二匹もいて削る時間が長いため、10戦止まりで終了となった。
それでも、聖銀2個と銀を18個ゲット。
やっぱりレアドロップは1/10ぐらいなのだな。これで、昨日と合わせて聖銀は3個か。
銀はターヘラのマリアさんの店で、瑪瑙のブレスレットと交換してもらえないだろうか。
瑪瑙よりは銀の方が価値が高いと想像している。
銀は小さなインゴットで加工されていない状態でドロップする。
一方でブレスレットは当然、装飾品としての加工がされているから、重さで単純に交換という訳にはいかないのだろうな。
それはともかく、それなりに暴れて、スッキリした。
大量にかいた汗を拭いながら、水分補給をして一息つく。
こんな結果を見ると、63階層まで一人で行けるかもと思ってしまうが、それはダメだよな。
迷宮組全員で強くなっていこうって決めたし。
また、『自分達を信じてないのか?』とヴィルマの機嫌を損ねてしまう。
その後は混成チームに合流して、ボス戦の試験官を実施。
アバロニシェル二匹を相手にするボス戦も混成部隊は難なくこなした。
前衛陣がしっかりしていて、ラファの雷魔法と各メンバーの持つ状態異常付与可能な武器が猛威を振るって、順調に石像を増やしていく。
55階層攻略後は混成チームは一度解散なので、ラファはボス周回のおねだりをして粘ったが、時間切れで終了。
彼女は最後まで槍を振り回し、突き入れ、雷魔法を唱え、元気一杯にボス部屋を走り回った。
「もう終わりの時間だ。帰るぞ」
「了解!」
「了解!」
「了解!」
「了解」
「・・・・・・」
終わりを告げると、ラファは寂しそうな表情。
狼人族の彼女の尻尾も元気なくシンナリしている。
そこばかり見ていると、某伯爵のような性癖を疑われてしまうので視線を逸らす。
56階層の小部屋に抜けて、ワープゲートを開き、皆に帰宅を促す。
いつもは殿の俺の前にゲートをくぐるアミルが、ラファよりも先にゲートへと姿を消した。
ラファはゲートに向かわずに、俺の顔を真っすぐに見据えている。
「ユキムラ様、私を迷宮組の六人目に加えてもらえないでしょうか?」
「それはダメだな」
このやり取りは初めてではない。
彼女の表情には縋るような感情も見て取れる。
だが、今回も回答は変わらない。
迷宮組はハーレムメンバーで構成すると決めている。
14才のラファを加えることはできない。
そんな理由は説明できないし、説明したらラファは喜んで身を投げ出しかねない。
迷宮組はR15指定なのだ。
あれっ・・・・・・ハーレムメンバーという意味ならR18なのか?・・・・・・18才を迎えているのはオリビアしかいないけど。
なんなら俺も17才だし。
「ラファ、君にはレドリックやヘルミーネのように、
主力のパーティーを任せられるようなリーダーになってほしいと思っている。
まだ14才で、これからもドンドン成長の期待できる君なら、それが可能だと思っている。
そのパーティーでいつか迷宮討伐を成し遂げられると俺は確信している」
「・・・・・・何か別の理由があるのを誤魔化された気がしますが、
期待されているということは理解しました。
今後も精進いたします」
真の理由を気取られている気もするが、そんなことは言えない。
「じゃあ、帰ろうか」
「はい・・・・・・」
ラファはもう一度、56階層の小部屋を振り返るとゲートへと消えていった。
・・・・・・
翌日の迷宮組は終日、クーラタルの61階層の攻略を満喫。
ザビル第二迷宮の攻略も順調で、33階層の攻略を終えて34階層の探索に突入。
34階層からはワンランク強いモンスターが出現する。
部隊編成のスキルでマップを開き、ザビル第二迷宮の部隊の状態をチェックしながら、迷宮組の探索も並行して進める。
レイモンドを中心にしたパーティーは、フラウスの補佐もあってか綻びを見せずに淡々と最高到達階層の更新を重ねている。
とはいえ、上の階層にいけば探索するエリアが広くなる。
34階層に突入にした日にはボス部屋を発見できず、階層攻略は翌日へと持ち越された。
一方で迷宮組との混成チームは解散し、ラファやトカラは暫く訓練で待機となった。
トカラはこの機会に最近取得した魔道士のジョブのレベリングを行う。
小荷駄隊に一人だけ入れてレベリングしているので、レベル上昇が早い。
ラファが訓練だけで欲求不満にならないように、次の手を打ちたい。
彼女は迷宮攻略の実力を確認するため、45階層以降の護衛部隊単独攻略を目指したいのだろうが、今は頭数が足りない。
それは明日の結果次第か。
明日は奴隷商人専用のオークションの日だ。
前回参加した際に、フラウス、ミモザ、ピコ達三人の人材を獲得した。
もうあれから90日も経つということなのだな。
時が流れるのは、あっという間だ。
前回のオークションでは、実力はあっても訳アリの奴隷だったり、売れ筋とは程遠い者が出品されているようだった。
即戦力は難しくても、我が家にマッチする者がいれば獲得したい。
迷宮探索の合間にロッジに行って、エナメルのハイヒールブーツの返礼品を納品した。
イロイロ考えた結果、全員に『
手持ちの『
既に利用用途をアミルは知っているので、なんとも言えない表情だったが、俺が土下座せんばかりに頼み込んだので、渋々引き受けてくれた。
ある意味、入会儀礼よりも辛い懺悔のような状態だった。
ロッジでは、セバスチャンに五人分の『
包装はできないので、返礼品だと伝言だけお願いした。
ヘルミーネはミラがスキル融合した駿馬の竜革靴をマヤに無事届けたようだ。
彼女の話では、マヤはかなり喜んでいたようで、早速使ってくれるとのこと。
実際の成果が出るかはともかく、元気で怪我なく帰ってきてほしい。
・・・・・・
奴隷オークションの当日。
迷宮探索は全てのパーティーでお休みということにした。
その日は、ベイルの子供達も孤児院に帰宅している。
クーラタル、ベイル、ザビルの人材が交流する日ということにして、各々の拠点から離れて興味のある所に行って、おしゃべりをするということにした。
ザビルの奴隷商館も防具屋も今日に限っては休業にしてある。
とはいえ、各拠点に最低限の護衛は必要なので、主に幹部連中を配備した。
幹部連中は普段から会議等で交流しているから、今日はメンバー中心で交流してもらう。
後方支援系の者はザビルで、戦闘系はクーラタルで交流だ。
戦闘系は交流と言っても、模擬戦等をすることになるので、広めのクーラタルに集合だ。
今日だけは増築工事はお休みにしてもらって、その分、広く修練場を使えるようにした。
エネドラ達は石鹸と新商品を持って、ザビルへお茶会に向かった。
一方で俺とカラダンはザビルで合流。
今回の奴隷商人専用のオークションの開催地はザビルなのだ。
開催地の商人ギルドは、ある一定規模の敷地が必要なので、自ずと限られてくるそうだ。
ザビルの商人ギルドで奴隷商人に転職したクララも参加させたかったのだが、今回は見送り。
彼女はアルマーの奴隷商館から購入した奴隷なのだが、購入した際には村人ジョブだった。
さすがに数十日で奴隷商人になりました・・・・・・では怪し過ぎる。
アルマーは今回も参加予定なので、バッタリ遭遇して『実は私、奴隷商人になりました。てへっ』という訳にもいかないだろう。
今日はアルマーとは別行動なので、俺はカラダンの護衛という扱いで参加することに。
身内と行動するから全く遠慮もしないで戦闘奴隷、後方支援奴隷の目利きをしながら、片っ端から見て回る。
途中、護衛を連れたアルマーとも会い、少しだけ情報交換。
アルマーは今回も村人ジョブ狙いのようだ。
「また、ジョブ取得の支援をお願いしても大丈夫ですか?
いつもニムラルさんにお願いしているのですが、最近忙しいみたいで」
「ああ、タイミングが合えば構わないぞ。
こちらも新しく仕入れる者の中にジョブ取得させる者が出てくるだろうからな」
前に一度、三人ばかりジョブ取得支援をしてやったな。
カラダンの奴隷商人のジョブ取得も手伝ってもらったし、持ちつ持たれつだ。
「実は狼人族の優秀な者を仕入れて、
ニムラルさんに鍛えてもらっていたのですが最近戻ってきまして。
獣戦士のジョブを取得したので、もし興味があるのなら、紹介しますよ」
「興味あるぞ。是非、紹介してくれ」
丁度、前衛も欲しかったところだ。是非お願いしたい。
ターヘラへ面談に向かうことを伝えて、アルマー達と別れ、人材探しのためにうろつく。
目に留まったのは、戦闘奴隷二人。
一人は狼人族の小柄な女性の剣士、もう一人は人間族の戦士だが値段が二人とも安い。
性奴隷非承諾とはいえ、剣士が7万ナール、戦士が5万ナール。
戦士の方はLv11なのだが。
「こちらの戦士は迷宮でしくじりまして、喉が潰されて声がほとんど出ません。
詠唱ができないので、ラッシュが使えませんが、
前衛での戦闘経験が長いのでお買い得となっております。
こちらの剣士は少し非力ですが、戦闘経験はそこそこあります。
人間族に育てられたらしく、バーナ語は話せませんが、ブラヒム語はそれなりに話せます」
「なるほど」
やはり安いには安いなりの理由があるのか。
(鑑定)
ドリス(狼人族 ♀ 18才 奴隷)
剣士Lv9
装備 皮の靴
クロード(人間族 男 21才 奴隷)
戦士Lv11
装備 皮の靴
剣士Lv9と戦士Lv11か。
戦闘経験がそれなりにあるのなら問題ないが、戦士でラッシュが使えないのは不利に違いない。
それ以前に喉が潰れていて会話が困難だと日常生活にも支障をきたすし、戦闘の連携時にも問題があるな。
模擬戦をさせてもらえれば技量は分かるのだろうが、あいにく商人ギルドにはそのようなスペースはなかった。
ドリスの方はともかく、クロードの方は雰囲気がある。
姿勢や体重移動など、鍛えられている感じはするのだよなぁ。
まあ、購入してダメなら、ザビルの販売奴隷にする手もあるか。
カラダンに目配せすると、彼も頷いたので購入する方向で問題なし。
二人合わせて15万ナールか。
俺が直接取引できるのなら、3割引きが効いたのに。
その後は、治癒系ジョブ希望の村人一名、後方支援向きの者二名を購入した。
三人合わせて17万ナール。
購入した五名はいずれも性奴隷非承諾だが、それにしても安い。
アラデル(人間族 男 16才 奴隷)
村人Lv3
装備 皮の靴
ニクシー(猫人族 ♂ 19才 奴隷)
薬草採取士Lv4
装備 皮の靴
マギー(エマーロ族 ♀ 20才 奴隷)
旅亭Lv4
装備 皮の靴
その後、アルマーに挨拶だけして、午前中で引き上げることにした。
・・・・・・
ザビル拠点に戻ると、交流会でなにやら賑やかな雰囲気だ。
後方支援の女性中心のお茶会なので、楽しそうに談笑している。
まずは知識や技術の共有に走るのではなく、お互いを知るところから始めようってことだったから、楽しそうにおしゃべりしているだけで目的達成と言えるだろう。
あの中にご主人様権限で割って入る勇気は俺にはないな。
何かクッキーとか甘味の差し入れでもあるなら別だが、そんな気の利いたモノは用意してない。
そんな中、カラダンはミシェルに目配せして、二階に連れ出してくれた。
さすが拠点リーダー・・・・・・そして、空気を読んだエネドラも後を追って出てきてくれた。
盛り上がっていたのに悪いな。
二階の会議室で新メンバーの五人とミシェル、エネドラの顔合わせ。
自己紹介を軽くして、いったん五人ともカラダンの所有奴隷とした。
奴隷の教育はミシェルが引き受けてくれるらしい。
クララも勉強のために派遣するとエネドラが言っている。
ザビルの商人ギルドでクララは奴隷商人のジョブにはなったものの、業務経験が足りないのでザビルでミシェルとカラダンから教わるらしい。
五人から当面希望するジョブを聞き出して、育成方針の確認も依頼した。
新加入メンバーの住居はクーラタル拠点になるので、拠点間を移動しながら教育することになるが仕方がない。
アラデル、ニクシー、マギーの三人は、このままザビルに残ってミシェルから説明を受けることになった。
一方でドリスとクロードはザビルの修練場に行って、俺と模擬戦をやってもらう。
奴隷オークション会場では腕前を確認できなかったからな。
修練場で二人に模擬戦用の武器を選ばせた。
ドリスもクロードも木刀と木の盾を選択。俺は木刀二本を手に取った。
「じゃあ、ドリスの方から適当に打ち込んできてくれ」
「はい」
さて、狼人族の剣士の技量はどの程度か。
小柄なドリスは俊敏な動きで剣を次々に繰り出してくるが・・・・・・ことごとく俺がいなし、隙ができた部分に斬撃を軽く入れる。
ムキになって俺を追いかけようとしてバランスを崩して、そしてまた打ち据える。
やる気があって悪くはないから合格点だけど、ちょっと攻め方が雑というか粗いというか。
「分かった。もう大丈夫だ。休んでくれ」
「ああぁ~、全然当たらない~何故?」
しょんぼりしながら彼女は下がっていったが・・・・・・何かクロードと会話を交わしてるような・・・・・・あれっ、何故会話ができるのだ?
ドリスに代わって、クロードが進み出てきた。
軽く俺に向けて一礼をした後、静かに構えた。
声が出ないから静かというよりは、ちょっと雰囲気がある感じだな。
「攻撃してきても構わないぞ」
「・・・・・・」
無言のまま、スルスルと静かに歩を詰め、鋭い刺突を繰り返す。
鋭くて素晴らしい突きだ・・・・・・だが、この程度なら楽々躱せる。
伊達にイレーネ達と模擬戦をやってないからな。
俺が余裕で躱せるのを見て安心したのか、刺突の速度や回数が上がってきた。
おおぉ~、こいつはやるな。
戦士のジョブなんて勿体ない・・・・・・声が出て詠唱できるのなら、剣士系のジョブの方がベターじゃないか。
小柄でよく喋る剣士と無口な戦士か・・・・・・ちょっと癖があるけど、この二人はアタリだ。
「もう、分かったから止めにしよう。ありがとう」
「・・・・・・」
始めた時と同様に無言で一礼した。
そしてクロードが下がった時にも、ドリスと何か会話しているように見える。
実際には声が聞こえないのだけど。
「その、ご主人様、もう一度お願いします。今度は二人で・・・・・・」
「二人か・・・・・・いいぞ。相手をしよう」
俺が余裕で応じたのが気に入らなかったのか、ドリスから笑みが消えた。
彼女は意外に負けず嫌いなのかな。戦闘奴隷としては良い傾向だ。
クロードの方は先程と表情が変わらず、ポーカーフェイス。
ドリスが先に俺に剣戟を振るい、低い姿勢からクロードが刺突をかましてきた。
うん、絶妙な連携だ。
彼女の粗い攻め方をクロードが補っている。
今度はクロードが少し前に出て、俺に次々と刺突を繰り出して距離を詰めてくる。
一瞬できた俺の死角から、ドリスの斬撃が俺に肩口に向かい・・・・・・右の木刀で軽くいなした。
クロードの攻めにドリスが合わせることもできるのか。
なかなか面白い。
新加入の際に、ここまで連携が合っていたのは、ケリーとマリーを思い出すな。
あの双子の連携には敵わないが、それでも及第点以上の連携だ。
なんで、こんなに息がピッタリ合ってるんだ?
別に男女の仲って感じでもなさそうだが。
時間を忘れて、二人からの打ち合いに応じ、躱し、カウンターを見舞う。
「ひゃんっ・・・・・・」
「・・・・・・!」
「大丈夫か?そろそろ止めるか?」
ドリスにカウンターの一撃が少し強めに入ってしまった。
「まだまだ・・・・・・!」
「・・・・・・」
ドリスの言葉にクロードが少し笑みを浮かべたように見えた。
こいつら、良いコンビじゃないか。
タケダ家に加入させよう。
販売奴隷に回すのは勿体ないや。
「もういいだろう。実力があるのは分かったから」
「うー、全然、当たらない。ここまで歯が立たないなんて」
「・・・・・・」
ドリスが悔しそうな反面、クロードは嬉しそうだ。
「なあ、クロード、暗殺者のジョブって知っているか?
戦士で経験積んで、別の条件を満たせば転職できるのだけど、
モンスターを状態異常にするのが上手いジョブなんだ。
もし、興味があるのならやってみないか?」
「・・・・・・?」
まあ、疑問に思うよな。
「暗殺者のジョブは詠唱が必要ない。
詠唱が無くても、パーティーの役に立てるジョブだぞ」
「・・・・・・!」
詠唱無しに反応したか。
「うちだと暗殺者に必要な装備品が渡せるし、
既にザビルには暗殺者のジョブになって活躍している奴がいるんだ。
ニケという名のマテウスの相方なのだけど、もし興味があるのなら話だけでも・・・・・・
あっ・・・・・・会話が難しいのか」
「はい、はい。私がいれば大丈夫ですよ。普段からクロードさんのサポートしてますから」
普段からしてたのか・・・・・・それで、上手くしゃべれなくても会話が成り立つのか。
このドリスもローザとは異なる謎のコミュニケーション能力の持ち主・・・・・・ではないよな。
一緒にいるうちに、なんとなく意思疎通ができるようになったのだろう。
「じゃあ、後で紹介してやるから、話だけでも聞いてみたらどうだ?
気に入ったのなら、暗殺者のジョブ取得を目指そうか。
別に今のままでもダメじゃないから、無理して変更しなくても構わないぞ」
「・・・・・・」
クロードがコクコク頷いている。
暗殺者とはいえ、迷宮では連携が必要だから、ずっと無言って訳にはいかない。
他の者と会話できない、コミュニケーションが取りにくいというのは明確なハンデだ。
しばらくは、ドリスと二人一組で行動させるべきだろうな。
そのうち、エリクサーが潤沢に確保できたら、クロードも治療しよう。
修練場を後にして二階に上がり、カラダンに二人をタケダ家に加えることを伝えた。
二人は暗殺者のジョブに詳しくないので、ニケから説明するようにカラダンへ調整を依頼。
次はターヘラのアルマーの奴隷商館に行くか。
もう、この時間ならオークションから戻ってきているだろう。
取引のほとんどは午前中に終わってしまうからな。
お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/5/2(土)の予定です。