アルマーの館を訪ねて、応接室に通された。
対応してくれたのは、前に見なかった奴隷だ。
村人ジョブだったが、新顔を教育中なのだろうか。
彼の商館も経営が順調である証拠だな。
暫く待つと、アルマーが二人の獣人の男を連れてきた。
(鑑定)
レイフ(狼人族 ♂ 28才 奴隷)
剣士Lv34
装備 鉄の剣 硬革の鎧 革の靴
タイレル(狼人族 ♂ 17才 奴隷)
獣戦士Lv1
装備 皮の靴
うん、若い方は見事にLv1だ。
まだ、獣戦士になったばっかりということだな。
俺と同い年・・・・・・若くして、獣戦士のジョブ取得したということは期待できそうだな。
それにしても、もう一人の男は・・・・・・?
年齢的に二人が親子ということはなさそうだが。
「ユキムラさん、こちらのタイレルがオークションの時にお話しした獣戦士です。
その横にいるレイフはうちの商館の戦闘奴隷の教師役を務めている者です。
よろしくお願いいたします」
「そうか、教師役がいるということは、商売は上手くいっているようだな」
俺の言葉に彼は嬉しそうに頷く。
剣士Lv34なら、それなりの経験者だから、販売奴隷の教師役にはピッタリかもしれない。
アルマーの護衛役という意味でも十分だろう。
「この二人の模擬戦を見てもらってから、
ユキムラさんに購入の判断をしてもらおうかと思うのですが、いかがでしょうか?」
「なるほど、それは有難い。是非、見せてもらおう」
アルマーもこんな提案ができるようになったのだな。
奴隷商人Lv1だった頃のアタフタした感じはもう見られない。
なんだか、急に自分が老けたように思えてしまう。まだ17才なのに。
・・・・・・
裏庭で模擬戦を見せてもらったが、獣戦士とはいえLv1の17才の若者では剣士Lv34には全く歯が立たなかった。
さすがに経験の差があり過ぎる。
レイフという男はタイレルの木刀を易々といなして、軽く剣を鎧に当てながら指導している。
確かに教えるのが上手そうだな。
我が家の奴隷商館があるザビル拠点にも、欲しい能力の持ち主だ。
アルマーもなかなか良い人材を見つけたな。
タイレルは小回りが利くというか、俊敏な動きを見せている。
さすがに獣戦士になるだけのことはある。
これはこれで、我が家に是非欲しい人材だ。
「アルマー、だいたい分かった。ありがとう」
「はい。ご満足いただけたようで良かったです」
俺の人材センサーに引っ掛かったのがバレテーラ。
:
:
:
再び、応接室に戻って商談開始。
二人は既に下がってもらっている。
「それで、あのタイレルという若者はいくらなのだ?」
「そうですね。
私の値付けだと15万から20万ナールぐらいはいける気がするのですが・・・・・・、
戦闘経験の無さがネックでしょうか」
まあ、妥当な値段かな。それにしても取引相手にぶっちゃけ過ぎじゃないか?
「今回は金銭ではなく、スキル融合装備品での取引はダメでしょうか?
使うのはレイフを想定しているのですが」
「なるほど」
そうきたか。
いや、こちらとしては悪くない取引だが。
「どのようなスキル融合装備品を希望したいのだ?」
「そうですね。その希望を言う前に、もう一つお願いしたいことがあるのですが・・・・・・」
もう一つねぇ。
アルマーも俺相手に駆け引きをするようになったか。感慨深いものがあるな。
「レイフは剣士としてそれなりに経験を積んだのですが、
剣士ギルドで剣匠のジョブが取得できませんでした。
そこで、ユキムラさんに剣匠のジョブを取得する支援をしていただきたいのです」
「ふむ・・・・・・」
さきほど、鑑定した際には剣士のジョブはLv34だった。
ということは条件を満たしたいなら、ボス戦を二度経験させれば取得できるはずだ。
「彼は剣匠のジョブ取得条件を知らないのか?」
「はい。知らないそうです。僕も知らないです。
自分の知り合いで知ってる人がいるとしたら、ユキムラさんではないかなと思いまして」
確かに俺は知っている。
というか、レドリックに教えてもらったのだけどね。
「そうだな。俺はジョブ取得条件を知っているし、支援もできると思う」
「では、剣匠のジョブが取得できる前提で、スキル融合装備品は剣二本をお願いしたいです」
上位ジョブ取得とスキル融合した剣二本とは大きく出たな。
どの程度の剣なのかにも依るが、普通は成り立たない取引な気がする。
「うーん、15万から20万ナールとの取引なら、
ジョブ取得とスキル融合の剣1本ぐらいが相場じゃないかな」
「そうなのですか」
アルマーにスキル融合装備品の目利きはできないから、値ごろ感などは分からないだろうな。
剣匠で、Lv1から使うならレイピアあたりが妥当だな。
まあ、ジョブ取得時に少しだけパワーレベリングしてやっても構わない。
探索者と違って、レベルが目に見えないから、ばれないだろう。
「では、剣の質を落として二本とするのは?」
「アルマー、迷宮で戦うのあれば、剣の質を落とすのは止めるべきだ。
スキル融合に拘って剣の質を落とすと、迷宮で命を落としかねない。
あのレイフという男はアルマーの商館の大事な人材なのだろう?
変に妥協をするべきじゃないと思うぞ」
俺の言葉に少しションボリとさせてしまったようだ。
「焦らなくても、また別の良い戦闘奴隷でも紹介してくれたら、
その者とスキル融合装備品を交換する手もあるだろう。
良い装備、良い人材を着実に手に入れていったらどうだ?」
「そうですね・・・・・・分かりました
剣匠のジョブ取得支援とスキル融合武器一つでお願いします」
それが、双方に利のある落としどころだろう。
「それで、スキル融合武器はどのようなモノが欲しいのだ?本人を呼んで確認するか?」
「そうですね。少々お待ち下さい」
アルマーがベルを鳴らして、教育係っぽいおばさんを呼び出した。
「レイフを呼んできてもらえるか?」
「かしこまりました。旦那様」
彼女は一礼すると、ドアを静かに閉めて去っていった。
やがてレイフが再び登場し、アルマーが経緯を説明。
欲しいスキル融合装備品を挙げてくれと伝えたが・・・・・・レイフも特にスキル融合武器に詳しい訳ではないようだ。
結局、俺の方から選択肢を出すことにした。
「もし、剣匠になれたら、片手剣の二刀流をこなすのが標準的だ。
お薦めするのは鋼鉄製の片手剣であるレイピアだな。
レイピアにスキル融合するのは、いくつかのパターンがあるので例を挙げるぞ。
攻撃力を重視する攻撃力2倍、モンスターのスキルを中断する詠唱中断、
相手に毒や麻痺などの状態異常を付与するもの、
HPやMPを吸収するもの・・・・・・主なものは、それぐらいかな」
「なるほど・・・・・・ただ、どのように選ぶべきなのか」
今までスキル融合武器と無縁だったら、選ぶのは難しいよな。
「自分の戦うスタイルに合わせたり、今までの迷宮の経験を参考にするのが良いと思う。
目の前のモンスターのスキルを防げたら楽になったのにと思うことが多いのなら、
詠唱中断を選択するのは悪くないだろう。
僧侶や神官のサポートがあれば、もう少し思いっ切り戦えるのに思うことが多いのなら、
HP吸収を選択するとか。
攻撃力不足を実感することが多いのなら攻撃力2倍を選ぶのも悪くないだろう。
剣匠になったら、二刀流になるので、もし二本目もスキル融合武器を狙うのなら、
一本目に一番優先したいものを選び、二番目を次に回す手もある」
「二本目もスキル融合武器なんて、あり得るのでしょうか?」
それはアルマー次第さ・・・・・・と思いながら、レイフのご主人様に視線を向けた。
「では、詠唱中断を望みます。迷宮で生き残るために安全を取りたいです。
攻撃力不足は手数で補うことができますし、回復は僧侶や神官がいれば何とかなりますから」
「そうか、悪くない選択肢だと思うぞ。アルマーもそれで構わないか?」
自分にボールが来ると思ってなかったアルマーだが、一応は頷いている。
「では、ジョブ取得支援は今からでも問題ないか?
スキル融合武器は後ほど、届けさせるので」
「はい。では、タイレルの手続きもしてしまいましょう。
死後相続はカラダンさんの所でできますよね?」
おっ、もうタイレルを連れていけるのか。それは助かる。
一通り、奴隷に関するルールを規定通り読み上げ、インテリジェンスカード操作を行い、タイレルが俺の所有奴隷になった。
レイフのジョブ取得支援と強権のレイピアを納品する旨の記載があるのを、契約書で確認して署名をした。
レイフは普段使っている防具や剣を装備してもらい、二人をパーティーに加える。
アルマーの商館を出て、クーラタルの自宅玄関へ移動。
「ちょっと、ここで待っていてくれ。武器を取ってくるので」
「はい、分かりました」
急いで二階の作業部屋に行き、倉庫から激情のレイピアを取り出す。
昔、ミラやマヤが使っていたけど、最近使わなくなったものだ。
玄関に向かい、ゲートを開いてザビルへと繋げた。
「タイレルを我が家の者に預けてくるので、レイフはここでもう少し待っていてくれるか?」
「はい。大丈夫です」
タイレルをザビルに連れていき、カラダンへ引き渡した。所有もカラダンに変更。
ローザかロベルトがいないか確認すると、ローザがいたので彼女をパーティーに加えた。
「ローザ、悪いな。ベイルの迷宮に行くので、ちょっと探索者が必要なんだ」
「大丈夫ですよ。私でお役に立てることなら」
今日はお休みの日だったのに悪いな。
俺は冒険者ってことになっているから、外部の者と迷宮に入る際にはダンジョンウォークが使えないので不便なのだ。
クーラタルの自宅へ戻り、今度はベイル迷宮の入口近くの木陰に繋げた。
迷宮に入り、ローザのダンジョンウォークで3階層のボス部屋に一番近い小部屋に三人で移動し、その後はボス部屋に向かって突き進む。
デュランダルは使えないから、時々使っている激情のエストックを振り回す。
さすがに3階層のモンスターに後れを取ることはない。
数は少ないが、途中で遭遇するモンスターをひたすら撫で斬りにして、待機部屋に到着。
剣匠の取得条件を説明し、激情のレイピアを渡した。
「そのような条件だったのですね。知りませんでした」
「まあ、戦士団とかに所属していたら、教えてもらえるような知識らしいぞ。
これから、剣士の者を鍛えることがあれば、覚えておいて損はないだろう」
レドリックのいた戦士団では一般的な知識だったようだからな。
ボス部屋に入り、とりあえずコボルトケンプファーを右手で抹殺してもらった。
さすがに剣士Lv34だと、コボルトケンプファーLv3程度なら楽勝だ。
一度、4階層に抜けて再び3階層の小部屋に移動し、ボス部屋を目指す。
二度目のボス戦は、今度は左手で抹殺してもらった。
うん、パーティージョブ設定で確認すると、ちゃんと剣匠のジョブが取得できていた。
「この剣は良い剣ですね。モンスターがアッという間に討伐できます」
「それは、先ほど話をしていた『攻撃力2倍』のスキルが付与されたレイピアだ。
激情のレイピアと呼ばれている」
「なるほど・・・・・・やはりスキルが融合された武器は凄いのですね。
いつも使っているレイピアとは威力が違います」
まじまじとレイピアを見ながら、彼はため息をついた。
ベイル迷宮の外に出て、一度、クーラタルの玄関に戻る。
「ローザ、ちょっと二人でここで待っていてもらえるか?」
「えっ?あ、はい」
「分かりました」
ちょろっと、迷宮に行ってパワーレベリングだ。
輜重隊にレイフ一人だけ入れておけば、レベルも直ぐに上がる。
クーラタルの迷宮の中階層の魔物部屋を殲滅して、レイフの剣匠をLv14まで上げた。
このぐらいのサービスは問題ないだろう。
クーラタルの玄関に移動し、二人と合流。
その後、直ぐに彼のジョブを剣士Lv34に戻しておいた。
あとは、アルマーがレイフを剣士ギルドに連れていけば転職できるはずだ。
ゲートを開いて、ザビルへと繋げた。
「ローザ、ありがとうな。助かった」
「いいえ、こちらこそ」
「ありがとうございました」
レイフもローザに頭を下げている。
ローザは軽く手を振りながら、ゲートの中に消えていった。
ゲートを改めてターヘラのアルマーの館の近くの木陰に繋げて、彼の奴隷商館に向かった。
・・・・・・
応接室でアルマーと再び会談。
「彼は剣匠のジョブ取得条件の一つを満たした。
経験が十分であれば、ギルドで転職を依頼すれば剣匠になれるはずだ」
「そうですか、ありがとうございました」
実際には剣匠のLv14になっているので、転職に失敗することはないはず。
あとは踏ん切りの問題だけだ。
判断はアルマーに任せた。
「強権のレイピアだが、3日後までにこちらに届けさせるので確認してくれ。
一応、鑑定書をつける予定だが、必要なら武器屋で鑑定を依頼してみてくれ」
「大丈夫です。信用していますので」
信用し過ぎると痛い目を見ると思うが、俺が言うことではないか。
「では、世話になったな。こちらもタイレルのような有望な獣戦士を加えられて良かった。
また、良さそうな人材がいれば紹介してほしい。
そちらが今日得た村人ジョブの者で転職の手伝いが必要なら、カラダンの方に手紙をくれ。
時間を見て協力しよう」
「ありがとうございます。
まずは、こちらで奴隷教育をした後で、相談させてもらうと思います」
こちらも六名加わったから、教育が必要だ。
ミシェルとクララの頑張りに期待したい。
アルマーにもう一度礼を言い、レイフに見送られて奴隷商館を後にした。
・・・・・・
ザビルに戻って、カラダンの部屋を訪ねた。
今日、加わった六名の各拠点へのアサインをどうするかという認識合わせだ。
「エネドラ様が交流会で、こちらにいらっしゃっていますから、
レドリックとマテウスを呼んで、旦那様と幹部連中で相談しますか?」
「いや、せっかくの交流会だから、呼ぶのは止めておこう。
さきほども、連れ出してしまったしな。
拠点の護衛を幹部連中がやってるし、レドリックは模擬戦も見ていたいだろう。
明後日の夜の会議で相談しよう」
今日は交流会、明日は晩餐会の日なので、夜の会議も休みにしている。
幹部が次に全員集まるのは明後日の夜だ。
「六人の奴隷教育の方はザビルの方でやってもらうが、
ジョブの育成方針が決まった奴がいれば教えてくれ。
経験の共有を適宜やっていくので」
「承知しました。明後日にはまとめて報告しますが、決まった者からお伝えします」
まずは教育が先だろうけどな。
タイレルは改めて呼び出して、カラダンの所有に変更した。
こいつは、タケダ家所属が決まっている。
バランスを考えるのなら、ザビル所属になるだろうな。
獣戦士系ジョブはクーラタルには三人もいるが、ザビルにはいないから。
実際の配属先を決めるのは明後日以降だが。
夕飯まで時間があるから、レイモンド、ドロテア、フラウスのパワーレベリングをしよう。
あの三人はザビル第二迷宮の探索があるから、なかなかレベルを上げにくい。
どこを使うか・・・・・・クーラタルの60階層のボス部屋にするか。
あそこなら、ボスドロップで銀か聖銀が得られる。
索敵で待機部屋近辺を確認しながら、ボス周回しよう。
一人で体を思いっ切り動かせるから、ストレス発散にもなるし。
:
:
:
2時間で・・・・・・20周した。
聖銀はこれで7個になったな。
銀もそこそこ大量に入手できたので、マリアさんと交渉か。
交渉するのは主にカラダンの仕事だけど、必要なら俺も出ていこう。
夕食の時間が近づいてきたので、クーラタルの自宅に戻ることにした。
・・・・・・
翌日は事務処理デー。
ターヘラ、ペルマスク、ボーデと回って瑪瑙、琥珀、鏡等を売買する日。
いつもなら、俺は忙しく飛び回っているのだが、カラダン、ミシェルにほぼ丸投げできるようになったので楽チンだ。
事前に長期契約を結んで冒険者も用意しているので、俺抜きで完結できるようになった。
トラブルや新しく大きな契約がある時だけ、俺が出陣することになっている。
ボーデの琥珀商、ターヘラのマリアさんの店、ペルマスクの方は任せっきりにした。
ハルツ公の方は今日は晩餐会があるので、その時に納品する予定。
晩餐会に、あの背負子を背負っていくのは何ともだが、今さら気にする程のこともないだろう。
夕方の晩餐会まではクーラタルの61階層の迷宮探索を満喫。
新しく加わった六人のジョブ育成方針も決まったので、そちらも並行してパワーレベリング。
クロードはニケの話を聞いて、暗殺者になる決意を固めたらしい。
ドリスは剣士から剣匠を目指すとのこと。
クロードとドリスは二人一組で行動することにした。
クロードには早速、ベイルの3階層でコボルトへ毒針の連続突きを体験してもらった。
元々、戦士Lv11なので、Lv30まではアッと言う間だ。
その日のうちにLv30に到達して、暗殺者に転職して更にレベル上げを続行。
タイレルは獣戦士のまま育成、アラデルは僧侶のジョブを取得してレベリング。
ニクシーはいったん薬草採取士でレベリングしていくが、商人にも興味があるらしく、そちらの方は保留中。
マギーは我が家で三人目のエマーロ族で旅亭ジョブだが、ナナの手伝いをしながら旅亭のままジョブ育成をしていく。
いつか、宿屋などを経営する日が来るのだろうか・・・・・・謎だ。
・・・・・・
夕方になったので、晩餐会のためボーデへ移動。
今日も俺以外の女性陣五人は着飾って登城している。
俺の方は背負子に鏡を入れ、隙間に石鹸セットを差し込んで大荷物を背負い、完全にポーターのような様相。
城門の傍の詰所で用件を伝えて、待合室で待機。
背負子を背負って待合室にいると、完全に業者のような雰囲気だ。
まあ、納品に来たのだから間違ってはいないのだが。
今日はいきなり広場に通されることなく、執務室へ。
先に納品から済ませようということだな・・・・・・はっきり言って俺もその方が助かる。
執務室に入り、背負子の中から鏡と石鹸セットを取り出して納品。
まずはカシア様のチェックを受けることに。
いつものルーチンなのだが・・・・・・今日はカシア様の様子がおかしい。
何やらソワソワしているような。
いつもより、かなり早く検品が終了。
このまま、また広場に通されるかと思っていたら、前回案内されたホールに直接通された。
正直、先日の模擬戦のリターンマッチを挑まれるのかと思っていたので拍子抜けした。
せっかく対人戦用のダマスカス鋼の腕輪を作って迷宮組全員に渡し、模擬戦に向けて準備していたのに無駄になったな。
心の準備もなくホールに通されたので、背負子を背負った俺はかなり当惑した。
背負子を背負ってホールに登場した俺を見る貴族の女性陣の方がビックリしたと思うけど。
・・・・・・と思っていたが、俺の方は全く眼中にない模様。
まあ、背負子を背負った主賓などいる訳ないしな。
とりあえず前回同様の席順で座るので、後ろの空いたスペースに背負子を置かせてもらった。
:
:
:
今のところ、晩餐会はいたって普通の夕食会だ。
帝国解放会の入会祝いなのだが、会員であることを表立って口にできない分だけ、何を祝っているのか分からない食事会という感じ。
会話も前回以上に無難な話題になっている。
これなら我が家の連中が変な事を言う心配もないか・・・・・・油断は禁物だが。
エネドラが一度、セルマー伯の実家の状況に探りを入れようと、カシア様の実家へ石鹸の売り込みを話題にしたが不発に終わった。
というか、公爵側の女性陣が何か浮ついているというか、心ここにあらずという雰囲気だ。
アミルの前に座っているカシア様からして、妙に落ち着かない感じだし。
執務室でお会いした時からソワソワしている気がするのだが、どうしたのだろうか。
実は
彼女の視線は正面のアミルから逸れて、少しだけ挙動不審な感じだ。
「タケダ殿、少しよろしいか」
「はい・・・・・・」
ハルツ公が俺を誘って、窓際の方に歩いていくので俺も続く。
前回の晩餐会では、こんな感じで帝国解放会の入会を勧められたのだったよな。
今回は二人だけでなく、ゴスラー騎士団長も一緒だ。
三人で窓際の方に行くと、今度はカシア様が立ち上がって、何やらエネドラを誘って俺達と逆方向へと歩いていった。
カシア様だけでなく、ゴスラーの奥さんともう一人の女性もそれに続いているが・・・・・・?
我が家のアミル、ヴィルマ、イレーネ、オリビアだけがテーブルについて淡々と食事をしている・・・・・・なんだコレ?
前回と違って、一しきり他愛もない世間話をした後に本題を切り出してきた。
「タケダ殿、実は四日後にも晩餐会を開こうと思っておるのじゃが、是非来ていただきたい」
「四日後?・・・・・・それは別の迷宮討伐の祝勝会か何かですか?」
ハルツ公は少し考えるように俺の方をジッと見つめている。
「そうじゃな。ハルバーの迷宮が討伐目前なので、その前祝いのようなものじゃ」
「閣下・・・・・・」
ゴスラー騎士団長が何か言いたげだが、黙り込んでしまった。
ハルツ公も特に彼に返答をしない。
何かを無理やり押し切ろうとしているのか。
今の言い方だと、ハルバーの迷宮はまだ討伐されてないのか。
原作だと、このタイミングだと既に討伐されていたはずだが。
「次回はタケダ殿の迷宮討伐メンバーだけで来てほしい。
前回やった模擬戦の続きもやりたいのでな。
殺伐としてるやもしれぬので、エネドラ殿には遠慮願いたい」
「そうですか・・・・・・」
それって、
Web原作でも晩餐会の三日後だか四日後に決行された記憶が・・・・・・。
「閣下、それはいけません!」
「・・・・・・!」
ハルツ公を止めようとしているのは・・・・・・ゴスラー騎士団長ではなくカシア様?
「エネドラ様には是非、次回も来ていただかなければなりません!
タケダ家で開発された新商品の納品をしていただかなければなりませんので」
「・・・・・・」
ハルツ公の目が死んだ魚のようになった。
こんな状態で
そして、彼女はセルマー伯に討ち入りするのを止めろと言ってる訳ではないのね。
まあ、この段階ではカシア様は作戦が決行されることを予想していないのか。
大丈夫だろうか・・・・・・
エネドラの髪を見て、貴族女性陣は心を奪われたのかもしれない。
俺が彼女達の眼中になかったのも、ひょっとしてそれが原因か?
「カシア、購入すると言っても予算の方がだな・・・・・・」
「
死んだ魚の目になりながら、ハルツ公も頑張るな。
応援する気にはなれないが。
「値段を確認しましたが、こちらの派閥形成を強固にするには妥当な投資だと判断しました」
「・・・・・・」
そんなに安くはなかった気もするが、貴族女性の歓心を買おうと思えば安いのか?
「カシア、分かったが決まったものを納品するだけなら、
エネドラ殿ではなくタケダ殿だけでも問題あるまい。
当日は迷宮討伐者の集いなのじゃ」
「むっ、左様ですか。購入が確定しているのなら、やむを得ないでしょう」
何がやむを得ないのか、さっぱり分からないが、エネドラが当日来ないのは確定したようだ。
普通の晩餐会ならストッパー役がいないのは不安だが、当日作戦が決行されるのなら後方支援メンバーはいない方が安全だ。
今回はハルツ公の案に乗っかろう。
当日は背負子や女性陣のドレスは止めておくか。
どの程度の納品数か分からないが、シャンプーの容器が壺だとしたら意外に重いのだよなぁ。
皆で分散して持ってもらうことにしよう。
「では、四日後を楽しみにしております」
「承知いたしました」
楽しみなのは晩餐会ではなく、シャンプーなのだろうな。
その後は全員席に戻って、穏やかな普通の晩餐会になった。
四日後のイベントに向けて、ドンドン事態が進行していくのだろうか。
胸にモヤモヤしたものを残して、晩餐会はお開きになった。
・・・・・・
自宅に戻り、エネドラに四日後の納品数を確認。
試作品が完成品にほぼ近づいたので、貴族女性に使ってもらって反応を見る。
先日の夜の会議で彼女も宣言していたから、既定路線ではある。
試作品の提供から始めると思っていたのだが、今日の貴族女性陣の反応を見て、定価販売に切り替えたらしい。
まあ、今日の感じだとエネドラの髪を見せて、十分なプロモーションになったのだな。
納品数は壺の容器に入れて30個で、1個あたり2000ナール・・・・・・6万ナールか。
結構な額だと思うのだが、公爵領の予算を食い荒らしていないよね?・・・・・・さすがに6万ナールぐらいなら問題ないか。
1個500gの重さとすると、15kg?・・・・・・俺の腕力なら余裕だが、リュックに30個は入れられないな。
輸送方法は当日までに考えなければ。
「だが、シャンプーは初めて利用する者には説明が必要ではないか?」
「そうですが、さすがに我が家にお招きして実演する訳にもまいりません。
詳しい説明書を作成して、納品するつもりです。
使い方通りでないと悪影響が出ることも、今晩、御説明しましたので、
なんとかなるのではないかと思っております」
そりゃそうか。
委託販売等も考えると、いつかはやはり説明書付きで販売せざるを得ないから、手探りになるが始めてみるしかないか。
石鹸なら既存のモノがあるから予想がつくだろうが、シャンプーは無さそうだからな。
「分かった。当日までに、もう少し納品方法などを調整しようか」
「はい。説明書も是非、旦那様に確認をお願いしたいです」
もう、頷くしかないな。
エネドラ達もかなり頑張って開発したみたいだから、その努力に報いるためにも俺も協力は惜しまないぞ。
「化粧水や保湿クリームも、かなり良い出来になってきました。
今はタケダ家内で試している段階ですが、
近いうちにハルツ公の所に持ち込めればと考えております」
「そうか・・・・・・それは頼もしい」
ハルツ公領内の予算がタケダ家にとって便利な貯金箱扱いになってたりして・・・・・・そこまで暴利は貪ってないから大丈夫か。
「じゃあ、今日はお疲れ様。おやすみなさい」
「はい。旦那様、おやすみなさいませ」
エネドラと一緒に二階に上がり、自室へ戻る。
今日は夜の会議も中止にしてあるから、後は風呂に入って寝るだけだ。
・・・・・・
風呂から戻って、今日のまとめ。
■情報▶
■人材育成/採用(ユキムラ)▼
①人材育成
<クーラタル(30名)>
(1)迷宮組(5名)
ユキムラ(百鬼夜行Lv91/鬼神Lv91/英雄Lv91/勇者Lv91/遊び人Lv91/忍者Lv91/魔道士Lv91)
アミル(鍛冶師Lv86⇒隻眼※/冒険者Lv78/探索者Lv86/斎王Lv57)
※隻眼のジョブ取得条件不明(バルドルフの発言から装備品のスキル融合数を増やす)
ヴィルマ(百獣王Lv91)、イレーネ(くのいちLv78)、オリビア(竜将軍Lv91)
(2)護衛部隊(16名)
レドリック(剣聖Lv61/聖騎士Lv25)、モニカ(剣聖Lv61)、レイモンド(冒険者Lv56/探索者Lv67)
ケリー(百獣王Lv60)、マリー(百獣王Lv60)、フラウス(斎王Lv62)
ラファ(魔道士Lv60/斎王Lv61)、ヘルミーネ(冒険者Lv54/聖騎士Lv60)
ミラ(鍛冶師Lv50/剣匠Lv63/剣聖Lv1★)、マヤ(剣匠Lv60/剣聖Lv1★)★剣聖の育成は保留
フレイヤ(竜騎士Lv60)、ドロテア(魔道士Lv52)
トカラ(魔道士Lv40)、サンドラ(鍛冶師Lv50/探索者Lv50/冒険者Lv24)
ニクラス(剣匠Lv43⇒剣聖)、ゾフィ(巫女Lv47⇒斎王)
(3)後方支援(9名)
エネドラ(武器商人Lv47)、チクルス(薬師Lv34)、ポーラ(沙門Lv27)
アネット(武器商人Lv17)、シルビア(防具商人Lv17)
フローラ(薬草採取士Lv46)、クララ(奴隷商人Lv15)
ゼノ(薬草採取士Lv45/僧侶Lv46)、ゼナ(薬草採取士Lv45/僧侶Lv46)
<ベイル(4名)>
(1)後方支援(4名)
ミモザ(薬草採取士Lv45⇒薬師)、ビンス(冒険者Lv39)、リック(冒険者Lv39)
クルト(防具商人Lv35) ※ビンス、リックの交代要員
<ザビル(25名)>
(1)護衛部隊(14名)
マテウス(剣聖Lv44)、ニケ(暗殺者Lv48⇒刺客)、ヒューゴ(神官Lv48⇒禰宜)
ローザ(探索者Lv50/冒険者Lv32)、ロベルト(探索者Lv50/冒険者Lv12/神官Lv47)
マチルダ(魔法使いLv50/探索者Lv50/冒険者Lv38/騎士Lv47/薬草採取士Lv40)
レベッカ(魔法使いLv50/剣匠Lv49/巫女Lv48/薬草採取士Lv40)
カイ(剣匠Lv50⇒剣聖)、レジーナ(探索者Lv50/冒険者Lv36)、ジゼル(巫女Lv49⇒斎王)
タイレル(獣戦士Lv31)、ドリス(剣匠Lv11)、クロード(暗殺者Lv13)
アラデル(僧侶Lv29)
(2)後方支援(11名)
カラダン(奴隷商人Lv15)、ピコ(冒険者Lv39/防具商人Lv13)
ミシェル(武器商人Lv17)、ナナ(農夫Lv38)
サライ(防具商人Lv19)、ティナ(探索者Lv32/薬草採取士Lv40/商人Lv31/防具商人Lv14)
ダフネ(武器商人Lv20)、エルザ(薬草採取士Lv43)、ノーラン(薬草採取士Lv43)
ニクシー(薬草採取士Lv32)、マギー(旅亭Lv26)
ザビルに6名を加えたので、剣匠のニクラスと巫女のゾフィをクーラタルに異動予定。
今日、カラダンに用事があり、ザビルへ訪れた時にマテウスから二人の異動の提案があった。
最終決定は明日の夜の会議になるが、クーラタル側も迷宮探索メンバーを追加したかったから、ほぼ決まりだろう。
クーラタルの護衛部隊は16名になるが、異動する二人の訓練が終われば、2パーティーを迷宮に派遣しても4名が拠点で護衛につける。
今はマヤが武者修行中だから、3名になるが。
ザビルが徐々に人材供給拠点としての機能を発揮し始めたので、今後も期待したい。
■軍事(ユキムラ/レドリック)▼
①部隊編成(3/6)(クーラタル)
ユキムラ隊▼
(ユキムラ(L)、アミル、ヴィルマ、イレーネ、オリビア)
レイモンド隊▼
(レイモンド(L)、レドリック、ケリー、フレイヤ、フラウス、ドロテア)
ヘルミーネ隊▼
(ヘルミーネ(L)、モニカ、マリー、ミラ、ラファ、トカラ)
※待機メンバー(訓練中):サンドラ、ニクラス、ゾフィ
※マヤ:ターヘラで武者修行中
②部隊編成(2/6)(ザビル)
ローザ隊▼
(ローザ(L)、マテウス、ニケ、カイ、ヒューゴ、マチルダ)※メンバーは適宜入替
レジーナ隊▼
(レジーナ(L)、ドリス、クロード、タイレル、ロベルト、レベッカ)※メンバーは適宜入替
※待機メンバー:ジゼル、アラデル
③スキル装備品
⇒ザビルの護衛部隊のスキル融合装備品を揃えることを優先する
■商業/取引(ユキムラ/エネドラ/カラダン)▶
■開発(エネドラ/カラダン)▶
■生産(チクルス/アミル)▶
■その他/クエスト▶
・・・・・・
ベッドに寝転がりながら、今日の晩餐会の記憶を手繰る。
ハルツ公からの次の晩餐会への誘い、原作と照らし合わせたスケジュール感・・・・・・やはり
原作通りなら、運び屋をして終了だが、エネドラが商人ギルドで仕入れた噂話では既にクーデターが発生しているらしい。
どの情報をどこまで信用するべきなのか判断がつかない。
戦う準備をしておくべきなのだろうが、貴族の尖兵となるのは避けたい。
一方で、人材確保や情報収拾のための重要なステップではないかとも考えてしまう。
無理はせずに一歩引いて、全体を見渡せる所からタケダ家の利となる選択肢を掴み取れるかどうか・・・・・・。
(コン、コン・・・・・・)
ドアを開けるとエネドラが立っている。
今日は普通の恰好だ・・・・・・いや、普通で全く問題ないのだが。
彼女をベッドまでエスコートして、俯せに横たえる。
着衣のまま、いつも通りにマッサージから入った。
「今日はカシア様にシャンプーの売り込みしたので、緊張したのではないか?」
「いえ、我々が執務室に入るなり、カシア様が髪の毛の方に凄く興味を持たれていたので、
これはいけると思いました。
後はゴスラー様の奥方に新商品の話をしたところ、お三方とも凄く食いつきが良かったので
こちらのペースで商談が進められました」
正にエネドラの目論見通りだったのか。
今日は大きな商談への第一歩となったので、エネドラも気分良さそうだ。
リラックスした中にも充実感というか高揚感が感じられる。
・・・・・・というか、今日のエネドラ、凄い良い香りがするのだけど。
こっちの方が興奮を抑えられなくなりそうだ。
マッサージを終えて、静かに着衣を剥いでいく。
体全体から心を揺さぶる芳香が漂い、本当にこちらがおかしくなる。
(オーバーホエルミング・・・・・・)
・・・・・・からの高速脱衣。
最近、夜に使うオーバーホエルミングの回数が増えてきた気がする。
使うのは初めだけだが。
我慢を押し殺して、ゆっくり優しく彼女の背中にダイブした。
しっとりした肌に触れ、それだけでもう涙が出るぐらいに気持ちが昂る。
これって、開発した化粧品やシャンプーの効果なのだろうか。
だとしたら、かなりヤバイものを作り出してしまったのかもしれない。
首筋に唇を這わせていたけど、我慢ができず彼女を仰向けにした。
「いつも綺麗なのだけど、今日は特別に感じる。何故だろう?」
「さあ、何故なのでしょうか・・・・・・」
桜色に染まったエネドラの顔を見ると、背筋にゾクゾクしたものを感じる。
普段の夜伽では、俺より年上なのに初心な少女のように感じることが多いのだけど、今日は妖艶であり気高くもある女神のように見えてしまう。
仕事で成果も出し、クーラタルでは正真正銘の幹部で実力者であり、頑張り屋の彼女が誇らしくも愛おしい。
でも今は・・・・・・理性のタガが外れ、恥も外聞もなく、彼女の唇を蹂躙してしまう。
「旦那さっ・・・・・・んお、うおお、んお~っ!」
彼女の豊かな腰を抱き、胸の先端を嬲り、掌を掴んで揉みこみ・・・・・・抱き締める。
力を入れ過ぎないようにセーブするのがやっとだ。
唇を放し、潤んだ瞳を見て、また理性が消し飛びそうになる。
今日はちょっとヤバイかも。
鼻孔をくすぐる甘い匂いに惹かれて・・・・・・初めて感じる焼かれるような熱さ・・・・・・限界だ。
「はっ・・・・・・おっ・・・・・・」
準備の整った彼女の中に深く侵入。
照明の下で薄く光る汗と芳醇な香りに律動が止められない。
「うん、ん~っ、うんっ~」
彼女が快美に震え、幸せそうに鼻を鳴らす。
彼女の胸の先端、真ん中の先端を順番に指で弄び、頂点に追い上げていく。
「旦那様、そこは・・・・・・もう・・・・・・」
背を反らし、喉元を晒して目を瞑る彼女を更に追い詰める。
あまりの快感に意識が一瞬飛びそうになる。
「はあ、はああ、はっ・・・・・・あああぁっ・・・・・・!」
彼女の中を苛烈にかき混ぜながら、涙に濡れる彼女の表情を眼下に眺め、お互いの頂点が近い事を感じた。
「ああ、ああぁ・・・・・・旦那様!」
彼女の燃え上がった裸身が喜びの痙攣に震え、頂上に登りつめたことを確認し、こちらも欲望の全てを叩き込んだ。
彼女の荒い息を感じ、また芳醇な香りに鼻孔をくすぐられ、身震いした。
今日はこんなものじゃ終われそうにないな。
・・・・・・
お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/5/4(月)の予定です。