晩餐会の後も迷宮組は淡々とクーラタルの61階層の探索。
今日は計画通り、午前中のうちにボス部屋を発見。
ボス部屋に辿り着くまでの戦闘でサイクロプスのカードもドロップした。
なかなか幸先が良い。
まずは待機部屋でブリーフィング。
「61階層のボスはゴールドサイクロプスだ。
シルバーサイクロプスを一回り大きくした肉弾戦闘系のモンスターらしい。
シルバーサイクロプス同様に腕を振り回して裏拳で攻撃してくるので注意してくれ。
いつも通り、俺とオリビアが中央で右翼にアミルとヴィルマのペア、左翼にイレーネだ。
魔法や博徒のスキルの使い方も同じだ。
初戦は小荷駄隊外しを使う。
アミルの方から何かあるか?」
「イレーネさんの所にカープカープが出現したら、私が対応します。
声を掛けながらスイッチしますので、よろしくお願いします」
「了解!」
「了解!」
「了解!」
「了解!」
ボス部屋に侵入し、決められた配置に着く。
トカラをメインパーティーから輜重隊に移すと、モンスター出現のエフェクトに移行。
中央には金色をしたゴールドサイクロプス二匹、お供はシルバーサイクロプスが三匹とマザーリザードか。
金色と銀色のサイクロプスとか冗談にしか見えないが、油断禁物だ。
(オーバーホエルミング)
(サンダーストーム、サンダーストーム)
(状態異常耐性ダウン)
イレーネの前にマザーリザードがいるから、召喚注意だな。
ゴールドサイクロプスの動きがスローモーションの間に、硬直のダマスカス鋼槍の連続突き。
左右の上腕でひたすら突きまくる。
計30発ぐらい見舞ったところで、左のシルバーサイクロプスにも同様に見舞う。
やがて、オーバーホエルミングの効果が解けて、ゴールドサイクロプス一匹、シルバーサイクロプス一匹が石像になったことを確認。
イレーネはマザーリザードとのバトルを楽しそうにやってるし・・・・・・他の連中もそうか。
とりあえず、俺は石像でも削ろう。
デュランダルを使って、まずは硬そうなゴールドサイクロプスからガンガン削り始めた。
暫くすると、イレーネの前のマザーリザードも石像と化した。
召喚されたモンスターはいなさそうだ。
イレーネは石像に目もくれず、次の獲物へと向かった。
これで相手の戦力は半減したので、戦局が覆ることはないだろう。
(状態異常耐性ダウン)
オリビアの前のゴールドサイクロプスに博徒のスキルをかけた。
彼女が戦っているのを横目で見ながら、ひたすら石像を削り倒す。
ゴールドサイクロプスの裏拳にダマスカス鋼の槍を使ったカウンターで迎えうち、相手の攻撃力を上手く相殺している。
ホントに槍を持たせると、オリビアは器用なものだ。
あっ、右翼の方も石像になったな。
残りはオリビアの前のゴールドサイクロプスのみだが、多勢に無勢だ。
包囲され、あっという間に石像になった。
みんな高レベル者でモンスターとのレベル差もあるから、一方的に攻撃の手数も増やせて状態異常にするのが早い。
残った石像を全て煙に変えて・・・・・・ボスドロップは銀貨二枚か。
さすがに初戦から金貨は出ないな。
シルバーサイクロプスの方も銀貨ではなく、銅がドロップしただけだった。
「ボス周回やるよな?」
「「「・・・・・・」」」
一人を除いて皆、無言でコクコクと頷いている。
その後、追加で四戦ほどボス周回。
俺もオーバーホエルミングを封印して戦ってみたが、余裕で勝てた。
金貨は1枚ゲットしたが、さすがにハイサイクロプスのカードがドロップするまで、ボス周回を重ねる気はない。
62階層の小部屋に抜け、昼食のためクーラタルの自宅に戻ることにした。
・・・・・・
クーラタルの拠点は今、3パーティーを迷宮に派遣している。
俺達の迷宮組、レイモンドをリーダーとするザビル第二迷宮探索組、そしてラファを中心にしたクーラタル中階層探索組だ。
ラファは新加入のサンドラと、ザビルから移ってきたニクラス、ゾフィの修練のために護衛部隊でクーラタル迷宮の探索を始めた。
サンドラは迷宮に入る時は鍛冶師ではなく、探索者に据えてパーティーを組んでいる。
まずは23階層から開始しているが、一日で2階層を走破するという、若干強行軍な計画。
ラファ、ヘルミーネ、トカラ、マリー、フレイヤという強力な従来メンバーがローテーションで入って半数を占めるので、事故は起こりにくいはず。
とにかく、サンドラ、ニクラス、ゾフィを迷宮で慣らして、徐々に高い階層への挑戦を目標にしたいようだ。
ニクラスは剣匠、ゾフィは神官なので、ある程度の経験を積んだら、上位ジョブへの転職をさせたいと思う。
レベルだけ上げても、モンスターとの戦闘経験がないと迷宮での探索は厳しい。
ある程度、万遍なく様々なモンスターと戦わないと未知のモンスターへの応用も利かない。
レドリックがクーラタルへ詰めている時は、ヘルミーネにも探索パーティーに加わってもらい、ラファが無理しないように確認をすることになっている。
迷宮で焦りは禁物だ。
我が家は無理して、実力に合わない階層を探索する必要はないのだから。
俺と違って、他の2パーティーはワープが使えないので、好きなタイミングで自宅に戻ることはできない。
特にザビル第二迷宮の方は地図もないので、帰宅時間にかなりブレがある。
必然的に昼飯の時間がズレることはあるのだが、それは仕方ない。
昼食の時間が被る時は元気な姿を確認し、目視で確認できない時は、たまに部隊編成のマップで確認しておく。
良い武器、良いジョブを与えていても、事故が発生すると命に係わるのが迷宮だから。
・・・・・・
午後から、迷宮組は62階層の攻略に取り掛かる。
62階層からは、33階層下のボスモンスターであるボスタウルスが出現するが、既に戦った相手なので問題ないはず。
62階層は肉類のドロップ品なので、パーティー内のモチベーション維持のための攻略。
そして、63階層は当面の目標にしているボスドロップの威霊仙を狙う。
ボスドロップであっても、レアらしく、何度かボス戦をこなさないとドロップしないだろう。
だが俺には索敵スキルとワープのボーナス魔法がある。
待機部屋に他のパーティーが確実にいない時を見計らって、ボス周回ができる。
ボス部屋にさえ辿り着き、よほど手強いボスモンスターでなければ、恐らく威霊仙は入手できるはずだと思っている。
エリクサーはチクルスとフラウスの治療のため。
そして、最近加わったクロードにも投与したい。
ポーラも出産が近づいてきたので、母子の生命・健康を守るため準備しておきたい。
是非とも複数個を入手したいところだ。
ザビル第二迷宮の討伐の報酬に威霊仙を所有している貴族と取引ができる約束を取付けているが、今となっては、それは保険の扱いだろう。
63階層の攻略は、それなりに現実味を帯びてきたと思っている。
エリクサーが入手できたら、64階層以降の攻略は、その時また考えることになるだろう。
64階層のボスモンスターのレアドロップでオリハルコンがドロップするという情報を入手したので、64階層は攻略すると思う。
あとは、成り行きかな。
66階層はドラゴンの階層なので、実力を測る意味で攻略に挑むかもしれないぐらいか。
前に案内してもらった時、63階層ではインテリジェンスカードを確認していたな。
くのいちや百獣王、竜将軍のジョブは事前に変えておくべきか・・・・・・俺の鬼神もだ。
チェックする理由は他国の者が紛れ込まないように確認しているのだったっけ。
威霊仙を勝手に他国に渡すのは帝国の法律に違反するからだとかなんとか。
確か、そんな説明をヘルミーネから受けたことがあったな。
通商同盟らしきものを結んでいる共和国には正規の手続きで輸出できるが、王国へ輸出はできないと言ってたか。
アイテムボックス持ちのジョブの者をどうやって、取り締まるのか興味があって確認したな。
国境にギルド神殿が配置されていて、一度、村人に戻されるのだっけ。
その後に元のジョブに戻されて、出国するとか言ってたよな。
アイテムボックスの中身を全て吐き出させるための措置だとか。
そこまでして、輸出を制限したいのか。
そして、訳が分からないのは、フィールドウォークで国境を越えられないと言ってたな。
それも意味不明な制約だが、国境を越えた経験がないので実情が分からない。
俺は外国の出身と方々で話をしているので、その件を知らないとイロイロとボロが出そうだから気を付けないと。
インテリジェンスカードのチェックを受けて、先に進んだ場合、適当な日数のところで、64階層に抜ける偽装工作も必要になるのか。
ウッカリ64階層に抜けるのを10日後にしたりすると、『奇跡の生還』と騒がれるかもしれないから注意しないとな。
62階層の探索も問題なく終了した。
自宅に戻ると・・・・・・迷宮組以外のパーティーメンバーも無事に探索を終えて帰宅している姿を見てホッとする。
そんな毎日の繰り返しだ。
・・・・・・
翌日の午前中も62階層の探索を行い、ドロップ品のロースが積みあがっていく。
たまにザブトンや酪もドロップするが、数は少ない。
あと、二日ほどはこんなのが続くから、暫くは肉に困らないだろう。
今までにドロップした様々な肉が、拠点の倉庫に山ほど保管されていて、日々の料理でも消費し切れていない。
それでも、前衛組の三人は容赦なくボスタウルスをしばき倒して肉のドロップ品を量産する。
ロースは美味いから、食卓が豊かになるのは大歓迎だ。
昼食の時間が近づき、自宅に戻った。
今日は珍しく3パーティーが昼食の時間に勢ぞろいしている。
こんな小さな偶然も幸運に感じてしまい、笑みがこぼれる。
エネドラ達が作ってくれた肉たっぷりの昼食に舌鼓を打つ。
この世界に来て、アミルやエネドラ達を身請けした直後は、昼食は軽めで構わないと言っていた頃が懐かしい。
いつの間にか、三食の差がなくなってしまった。
食事を終えた者がポツポツと出始めた頃に、食堂の一角がざわついている。
視線を向けると・・・・・・そこにはマヤの姿が!
戻ってきたのか・・・・・・こんなに早く戻ってくるとは思わなかったぞ。
短くとも数カ月とか半年は戻ってこないのかと思っていた。
相当、努力したのかもしれない。
皆に声を掛けられながら、彼女は俺の方に歩いてきた。
見る限りは大きな怪我もなく元気そうだ・・・・・・そして何より笑顔だ。
これが一番嬉しい。
「ご主人様、ただいま修行を終えて戻りました」
「そうか、思っていたよりも早かったな。何か掴んだか?」
俺の言葉に元気より彼女は頷いた。
「獣戦士になりました」
「ほう・・・・・・」
あのベタ足で守り重視だったマヤが獣戦士!
(鑑定)
マヤ(狼人族 ♀ 15才 奴隷)
獣戦士Lv1
装備 激情のエストック ダマスカス鋼の盾 頑強の竜革のジャケット 駿馬の竜革靴
耐火のダマスカス鋼額金 耐毒の竜革グローブ 身代わりのダマスカス鋼腕輪
確かに獣戦士のジョブが取得できている。
ただし、Lv1だ。
転職したばかりということか。
ニムラルに鍛えられ、あのマヤが獣戦士に・・・・・・剣匠Lv60から獣戦士Lv1って微妙な気もするが、レベルは直ぐに上がるし・・・・・・何よりマヤが喜んでいるのだから問題ない。
イロイロあったのかもしれないが、何かを会得したのかもしれない。
「確かに、獣戦士になっているようだな」
「はい。とっても、頑張りました!」
おおぉ、自己肯定感がある発言が出るのは素晴らしい。
「後で、修練場で成長した姿を見せたいと思います」
「そうか、それは楽しみだな。
だが、腹が減ってるだろうから、まずは食事を済ませてからにしよう」
俺の言葉に、彼女は満面の笑みで頷いた。
修業先では我が家ほどの食事にはありつけないだろうから、久しぶりに美味い飯を食ってくれ。
・・・・・・
修練場でマヤの周りに仲間が集まっている。
皆、獣戦士のジョブを取得したマヤを祝福している。
ザビル第二迷宮を探索するレイモンド達のパーティーは既に迷宮へ出発したが、ラファ達のクーラタル迷宮探索組は残って、マヤを取り囲んでいる。
ラファやヘルミーネも同じ狼人族の仲間だから嬉しいのかも。
そして、同室のミラもとても嬉しそうだ。
彼女が駿馬の竜革靴のスキル融合して、マヤに贈ったのだよな。
敏捷を重視する獣戦士だから、そのスキル融合装備品が役立ったのかもしれない。
おっと、大事な事を確認しておかないとな。
「マヤ、ニムラルのオッサンの所の修行は厳しかったか?」
「オッ?・・・・・・師匠の稽古や修行は厳しかったです。
でも、師匠に的確な指導をしてもらったおかげで、
こんなに早く獣戦士のジョブが取得できたのだと思います」
あのオッサンの修行が的確?・・・・・・まあ、でも成果が出てるのだから否定はできない。
「獣戦士への転職はギルドでやったのか?」
「はい。師匠に獣戦士ギルドへ連れていってもらいました。
500ナール支払うだけだったので、エネドラさんからもらった小遣いを使いました」
や、安いな・・・・・・500ナールって、戦士ギルドで戦士になる時の値段と一緒だ。
何も管理してないのだろうな。
それにしても、獣戦士はそれなりのステータスのジョブな気もするが、金勘定には拘らないということなのだろうか。
「どんな修行だったのだ?」
「『とにかく回避しろ』と言われ、
剣術指南所での稽古や迷宮での戦いでも
剣での反撃や盾で受けることは禁じられ、回避の練習ばかりしてました」
極端だけど、普通と言えば普通だな。
「2階層にチープシープが出現する迷宮で、
チープシープ二匹がいる時に、一人で回避ばかりする訓練をしました。
他の人は遠巻きに見るだけで、手助けしません。
100回連続で回避が成功するまで、何度も何度も繰り返しやりました」
「・・・・・・」
それって、ひょっとして獣戦士のジョブ取得条件?
『複数のモンスターの攻撃を100回以上連続で回避する』とか?
盾で受けたり、攻撃したり、被弾したら回数がリセットされて、とにかく100回以上連続で回避が成功しなければならないのかも。
「それでオッサンの的確な指示って、例えばどんなことを教わったのだ?」
「モンスターがフッと動いたら、ハッと引けと言われて・・・・・・そのうちになんとかなりました」
・・・・・・ニムラルって、どこかで原作ヒロインの師匠だったことがあるのじゃないだろうな?
そんなので、本当に動きが良くなるのだろうか?
努力家の一般人枠に見えていたマヤも、実は原作ヒロインと同じ枠の人材だったとか?
「じゃあ、ちょっと俺と模擬戦してみないか?」
「はい。成長した姿をお見せしたいと思います!」
やる気に満ち溢れているのは素晴らしい。
マヤと修練場の真ん中で木刀のみを持って対峙した。
相手は獣戦士とはいえLv1だ。
手加減が必要なので、俺の方はパーティーに誰もいない状態で、鬼神のシングルジョブのみ。
彼女も盾は持たずに右手に木刀を持ち、真剣な表情でこちらを見ている。
「いつでもどうぞ」
「そうか・・・・・・」
相手が回避するのだから、こちらから仕掛けなければならない。
鬼神も高レベルだから、いきなり厳しい一撃をLv1の相手に入れるのは控えるか。
抑え目で・・・・・・まずは小手調べだ。
軽く右手に持った剣を左右に振って・・・・・・横一閃!
「フッ・・・・・・」
(パコ~ン)
「グエッ・・・・・・あ痛たた・・・・・・な、なんで当たるの?」
「・・・・・・」
女の子が『グエッ』なんて言ってはいけません!
『フッ』も全然、回避と関係が無さそうに思える。
そもそも声に出す必要があるのだろうか?
「あ、あれっ、おかしいな。前はちゃんと回避できたのに」
「・・・・・・」
正直、修行前と比べて違いが分からない。
元々、彼女は避けタンクでもないし、盾を使った防御術は見てきたけど、俊敏に回避するテクニックは見ていない・・・・・・というか回避術を持っていたのかも分からない。
「もう一回やってみるか?」
「は、はい・・・・・・今度こそ」
やはり強い一撃は控えるべきだな。
再び、軽く右手に持った剣を左右に振って・・・・・・正面から突き!
「フッ・・・・・・」
(ゴッ)
「ゴゲエッ・・・・・・くうぅぅ・・・・・・お、おかひぃぃ」
「・・・・・・」
もはや、喋り方からして危ない。
『フッ』って言ってる分だけ、回避が遅れているのではなかろうか。
マヤは本当に動きが速くなっているのだろうか・・・・・・駿馬の竜革靴で底上げした分だけ速くなっているだけじゃないか?
剣匠Lv60と獣戦士Lv1の敏捷効果による回避力って、どの程度の差があるのだろうか。
ジョブのスペックは、
ジョブ 剣匠
効果 腕力小上昇 敏捷微上昇 HP微上昇
スキル スラッシュ、二刀流(片手剣)
ジョブ 獣戦士
効果 敏捷中上昇 体力小上昇 器用小上昇
スキル ビーストアタック
・・・・・・となると、あまり変わらないか、へたすれば剣匠の方が素早かったりして。
木刀は回避できずに、普通に当たっているよなぁ。
「師匠の下にいた時は、もっと回避できたのです。信じて下さい・・・・・・」
「・・・・・・」
俺の下にいると回避能力が下がる?・・・・・・うーん。
「私は本当に頑張りました。
師匠の連れてきた子達が次々に獣戦士のジョブを取得して、
最後に残った私も頑張った末にようやく獣戦士になれて・・・・・・本当です。
初めは全然できなかったですけど師匠の言う通りにしていたら、
徐々に動きが良くなって、上手く躱せるように・・・・・・信じて下さい!」
「・・・・・・」
信じるも何も、マヤが獣戦士のジョブを取得できていることは間違いない。
「ご主人様、それって・・・・・・」
「アミルもそう思うか?」
俺とアミルはお互いの顔を見合わせて、頷き合った。
一緒にパーティーにいた子供達とやらが次々に獣戦士のジョブを取得した。
引率していた獣戦士の高レベル者であるニムラルと獣戦士Lv1の子供達のパーティー効果で、『敏捷』の効果が累積した結果、マヤの回避能力が底上げされたのでは?
その他にもミラが渡した『駿馬の竜革靴』の効果も加わって。
今のマヤはソロ扱いなので、他の者からの『敏捷』のパーティー効果が受けられてない・・・・・・その結果、剣匠Lv60だった頃よりも、回避能力が落ちているのかもしれない。
俺とアミルは、小声で答え合わせをして納得した。
「あの、私はやっぱりダメな子なのでしょうか?」
「マヤちゃん・・・・・・チガウッテ、ソンナコトナイヨー(棒)」
「マヤは将来、百獣王になって・・・・・・カツヤクスルニチガイナイ(棒)」
アミルと俺は自信を失いかけそうなマヤを必死で励ます。
「そう・・・・・・でしょうか?」
「マヤちゃん・・・・・・獣戦士になればビーストアタックも使えるから、
守り一辺倒でじゃなくて攻めに転じた時の強力な武器が手に入ったんだよ。
ご主人様の言う通り、百獣王になれば、更に強力なスキル攻撃だって使えるのだし」
ミラの方が俺達二人よりも、一生懸命にマヤを励まそうとしている。
確かに百獣王という上位ジョブになれば、ビーストスラッシュが使えるから攻撃の手段としては悪くないはずだ。
高レベルになれば、その威力も増すし、『クリティカル発生』で運が良ければ攻撃力も増大される訳だし。
ジョブ 百獣王
効果 敏捷大上昇 体力中上昇 器用中上昇
スキル クリティカル発生 ビーストスラッシュ
「では、私はこのまま獣戦士として、頑張りたいと思います!」
「うん、マヤちゃん、一緒に頑張ろう」
同室のミラのおかげでマヤは持ち直したようだ。
マヤが今後、避けタンクとして活躍できるかはなんとも言えないが、通常タンクであっても百獣王になれば強力な攻撃手段を持つことになるので悪い事ではない。
ミラが振り返って、俺の方を真っすぐと見据えて真剣な表情だ・・・・・・どうした?
「あの、私もマヤちゃんと同じように自分を変えようかと・・・・・・」
「・・・・・・ん?」
ミラはドワーフ族だから種族固有ジョブは鍛冶師で、既に取得済だ。
迷宮でのジョブは主に剣匠で高レベルまで育成したけど、剣聖として育成するかは保留中。
自分を変えるって一体何を?
「暗殺者のジョブを取得して、上位のジョブ取得を目指そうかと考えましたがダメでしょうか?
鍛冶師で防具生成する際、盾に
盾に状態異常を付与するスキルを付けて、片手剣にも状態異常にするスキルを複数付ければ
防御だけでなく、攻撃でも活躍できると考えました」
「それは・・・・・・良い考え方じゃないか!」
アミルの方を見ると、彼女も頷いている。
そういえば催眠を付与した盾とか作って、三、四十日前ぐらいにも実験をやったよな。
今度は暗殺者のジョブで、それを本格的に取り組む感じか。
というか、これはアミルも
「あの私も暗殺者をしてみたいなって・・・・・・」
「サンドラもか?」
大柄なマヤの横から最近加入したサンドラも進み出てきた。
彼女は剣を巧みに使いこなすから、剣士系のジョブの適性も高そうだが暗殺者も悪くはない。
「まあ、二人とも暗殺者をやってみたいというなら、やってみるか?」
「「はい、よろしくお願いします」」
なんか、防御重視だった者達が、急に攻撃面にも目を向け始めた感じだ。
この前、ミラはスキル融合をさせてみたので、それも今回の選択に関係しているのかな。
二人の様子を嬉しそうな表情で見るアミルに視線を向けた。
「私は前衛よりも中衛が向いているので、暗殺者はやらないと思いますよ。
今も斎王のジョブで学ばなければならない事が多いので」
「そうか・・・・・・そうだよな」
アミルは働き過ぎだから、セーブしようね。
やりたいことがあって、やれる環境があるのだから、やらせてみるのが一番だよな。
タケダ家には、その余力がある訳だし。
スキル融合武器・・・・・・それも複数スキルを付与することが容易にできる環境があるからこそ可能な選択肢だ。
博徒のスキルが無くても、片手剣と盾で各々が複数の状態異常を付与できれば、状態異常の発生率は一気に高まる。
麻痺と石化の2つを付与して、二刀流っぽく運用すると効果的だ。
今までも二刀流のスキルがある剣匠や剣聖のジョブで、その効果が確認できている。
更に暗殺者系ジョブの『状態異常確率アップ』のスキルの相乗効果が加わるのだし。
護衛部隊の戦闘力アップに期待が持てそうだな。
そして、今後検証が必要ではあるが、マヤのおかげで獣戦士のジョブ取得方法が判明した。
ギルド神殿無しでも俺がジョブに就けさせることができるから、マヤのもたらした知見は今後のタケダ家の力にきっとなるはずだ。
こちらは、俺のセブンスジョブで、勇者、英雄、鬼神、忍者、百鬼夜行、剣聖、遊び人をセットして敏捷のパーティー効果を大幅に上げることができる。
ヴィルマ、ケリー、マリー、イレーネという敏捷効果の高いジョブの者を加えて、あと一人獣戦士ジョブ希望者を入れて、迷宮で回避訓練をすれば簡単に取得できるかもしれない。
誰か候補がいたら試してみるか。
「百獣王に私もなりたいです!」
「!」
ラファ、いつの間にそこにいたんだ。
そして、一瞬、海賊●に聞こえたぞ。空耳か?
ラファの尻尾は今まで見たことないぐらい高速回転している。
そして、その横にいるヘルミーネの尻尾まで・・・・・・。
あまり、そこばかり見てると変質者かと思われるから目を逸らしたけど。
「私は本気です」
「私もお願いします!・・・・・・多分、ここにいないフラウスも同じ事を言うと思います!」
いやいや、ラファとヘルミーネの本気度を疑って、目を逸らした訳ではないから。
「まあ、また機会があればな」
「「はい、よろしくお願いします!」」
戦闘のオプションが増えるから悪いことではないか。
それにしても、ラファは、魔道士に斎王のジョブを取得し、その次は百獣王も?
なんか三冠タイトル達成みたいな感じじゃないか?
14才にして、タイトル総なめになるかも。
ヘルミーネも探索者、冒険者、聖騎士のジョブを育てているから、アクティブ系攻撃スキルを持つ獣戦士系のジョブは良いオプションになるのかも。
狼人族の者にとって、獣戦士への憧れって強いのかな?
ドワーフの者が鍛冶師に憧れるように。
お読みいただき、ありがとうございました。
原作では獣戦士のジョブ取得条件は明示されておりませんが、今回拙作で独自設定しました。
(獣戦士のジョブ取得条件)
複数のモンスターの攻撃を100回(※)連続で回避する
※盾で受ける、反撃する等したら、回数はリセットされる
原作の超絶避けタンクヒロインが子供の頃にモンスター相手に回避の遊びをしていたことから、独自設定の内容を考えました。
ただし、相手が一匹だと簡単に達成できてしまうので、『複数モンスター』という条件にして、『回避のみで100回連続』に限定しました。
ただの回避100連続成功は、剣匠のような『敏捷』効果を持つジョブの高レベルになれば、容易に取得できてしまうかなと。
イレーネなんかもタイマンで100連続回避だけだと、楽勝で達成してそうなので。
(彼女は攻撃をするので回避回数がリセットされ、ジョブ取得条件はクリアしていません)
獣戦士のジョブ取得条件は、そのうち原作でも明らかになるかも。
そうなったら、記載内容は修正するかもしれません(変更が大変・・・・・・汗)。
次回投稿日は2026/5/6(水)の予定です。