この部屋からは遠く感じるが、低い轟音と地鳴りのような振動だ。
ドアの外に視線を向けるハルツ公のメンバー達の表情が強張っている。
あのような爆発音というか轟音が発生するのは、どういう仕組みなのだろうか。
自爆玉と言っても、人間は破裂するけど、攻撃力は対象の相手に向かうのであって、爆発して周囲を巻き込む訳ではなかったよな。
となると自爆玉などではなく、魔法攻撃でも使われたのだろうか。
屋内で攻撃魔法を使うのは御法度だと聞いた気がするが。
追いつめられるとなんでもアリか?
「私が見て参ります」
「私も同行します」
ハルツ公と一緒に来た騎士団員二人が名乗りを上げた。
「気を付けて行ってくるのじゃぞ」
「はい。状況を把握したら、直ぐに戻ります」
二人は開いたドアを抜けて、緊張した面持ちで足早に去っていった。
沈痛な表情のカシア様と、その隣に難しい顔をしたハルツ公・・・・・・このままで大丈夫か?
「閣下、状況は分かりませんが、この場所が必ずしも安全とは言い切れません。
閣下とカシア様は、一時、ボーデの城に退いてはいかがですか?」
「タケダ殿。次期セルマー伯が前面に出ているのに、余が後方に隠れることはできぬ。
・・・・・・しかし、カシア、お前は一時、ボーデの城に戻ってはくれまいか」
ハルツ公の言葉に、彼女は泣き出しそうな顔で首を激しく横に振った。
「このような状況で城には戻れません。私も行く末を確認したく存じます」
「タケダ殿の言う通り、今のままでは、ここもいつまで安全かは分からぬ。
其方のパーティーは、そういった戦いには向いておらぬじゃろう。
ボーデの城におってくれた方が余も安心して指揮が執れるというものよ」
彼女は唇を嚙みしめて、俯いてしまった。
「分かりました。一時、城に戻ります。
ですが、状況が分かりましたら、ボーデにもお知らせください。
大勢が決しましたら、私も戻ってまいります」
「そうじゃな。必ず伝える故、待っていてほしい」
「はい。閣下もお気を付けて」
ハルツ公が頷くと、彼女はパーティーメンバーと共にエンブレムの方へと歩き出した。
エンブレムの前で、こちらへ一度振り返ると、冒険者が開けたゲートの先に消えていった。
この部屋の戦力は俺達五人以外だと、ここに残っているのがハルツ公と騎士三人。
先ほど、この謁見室を出て、状況を確認しに向かった二人も騎士のジョブだった。
騎士で固めるのも悪くないけど、探索者や冒険者を置かないのか。
ちょっと油断し過ぎじゃないだろうか。
騎士のレベルもそれ程、高くはないし。
それにしても、多くの騎士団員がここを経由して移動していったはずだが、ほとんど戻ってこないのはどういうことだ。
開かないドアを破るのに難儀しているのだろうか。
状況が分からない時に根掘り葉掘り訊くのも拙いか。
戦力が足りない所に行って、俺達が代わりに穴埋めする訳にもいかないし。
原作だと、次のポイントはエルフヒロインの登場だったはずだが、それに近いイベントが起きるまでは、ここを離れられないな。
索敵のマップを見ていると、グレーの点が一つ近づいてきた。
こちらのドアに向かっているようだな。
通路の方から、部屋に飛び込んできたのは・・・・・・先ほどの二人の騎士団員とは別人だ。
「閣下。セルマー伯を見つけました」
「おおぉ、して捕縛は成功したか?」
ハルツ公の顔に笑みが一瞬見えた。
「いえ・・・・・・それが、既に身罷られておりました」
「なんじゃと・・・・・・」
ここにカシア様がいなくて良かった。
いつかは知らせなければならないだろうけど、今はちょっと厳しいだろう。
「セルマー伯には嫡子の長女がいたはずじゃ。その者の行方は?」
「いえ、把握できておりません。
ゴスラー様より急ぎ、セルマー伯の状況を伝えろと言われまして。
セルマー伯の遺体の傍には、召使らしき男がいまして、
その者が『自分が毒を盛ったのではない』と、取り乱しておりました。
今、ゴスラー様が尋問をしております」
ハルツ公は苦虫を嚙み潰したような表情で手を震わしている。
「余もゴスラーの所に・・・・・・」
「閣下、なりませぬ。安全な場所が判明するまで、ここを離れるのは危険です。
ご自重願います」
周りの騎士団員が、ハルツ公が移動しようとするのを諫めている・・・・・・正しい判断だよな。
あの爆発音が何か分からないが、ブービートラップみたいなのが仕掛けられているのなら、闇雲に動くのは悪手だ。
もっとも、この場所も安全なのかというと疑問だが。
ボーデの城に戻るのが一番安全だと思うが、万が一作戦が失敗した時にボーデの城にいたことが伝わると立場が悪くなるのかもしれない。
成功したのなら、どこにいようと騎士団を出したという事実だけで、十分な貢献をしたことになる気もするが。
「私はゴスラー様の所に戻ります」
「待て!
ミンツ、クラウディオ、其方二人もゴスラーの所に行って、手の足りない所を助けてまいれ」
名前を呼ばれた二人は、さっきからハルツ公を護衛している騎士団員三人のうちの二人だ。
騎士Lv21と騎士Lv18・・・・・・公爵レベルの護衛と考えると、ちょっと寂しく感じる。
「しかし、閣下の護衛が・・・・・・」
「ここにはタケダ殿達がおる。心配無用じゃ」
えぇ~、俺はただの
アミルならともかく、ハルツ公を身を挺して守る気はないぞ。
先ほど署名した委任状には、総大将を護衛する契約条項はなかったはず・・・・・・いや、全部ちゃんと読んでないから、実は記載されていた?
だとしたら、とんだ詐欺商法だ・・・・・・皇帝直訴権を使う時かもしれない。
俺が脳内で戦っていると、指名された二人の騎士団員はハルツ公に『くれぐれも自重して下さい』と釘を刺している。
なんだか、俺とエネドラの会話を思い出した。
人の振り見て我が振り直せではないが、とっても説得力がある気がする。
「では、タケダ様、閣下のことをお願いいたします」
「・・・・・・」
ええぇ~そんなこと、君達に言われたくない。
『やっぱり行かないで』と言いたくなってしまう。
二人はこちらを振り向きもせず、伝令で来た騎士団員と共に駆け出していった。
残されたのはタケダ家の五人とハルツ公、騎士Lv23の男。
一応、残っていた三人の騎士団員の中で一番腕が立つのだろうか?
レベルだけでは比較できないが。
残っていた三人の中では一番年齢が上なので、リーダー格なのかもしれない。
「閣下、念のためドアの傍から離れて、エンブレムの近くにいて下さい。
私はドアの外で見張りをしておきます。
タケダ様も・・・・・・」
「そうか、油断するなよ」
ハルツ公と共に、そのリーダー格っぽい騎士団員に勧められてエンブレムの方へ。
何か確認しておくべきことはないだろうか・・・・・・そうだ。
「閣下は今、誰かのパーティーに入ってるのですか?」
「そうじゃな。ゴスラーがうるさくってな。
今、ここにいない探索者の騎士団員のパーティーに入っておる」
うーん・・・・・・それって、大丈夫なのか。
冒険者ではなく、探索者?
しかも、今ここにいない?
人手不足なのかもしれないが、ちょっと迂闊な気もするけど・・・・・・そうでもないか。
移動できる場所が、城の門の近くとかここぐらいなら、冒険者でも探索者でも同じかな。
ボーデの城もそうなのかもしれないが、セルマー伯の城は遮蔽セメントだらけで警戒してあるって言ってたっけ。
緊急脱出用に冒険者はハルツ公の傍にいるべきだと思うけど、そこまでの危機感は持ってない?
それに、その探索者が、ゴスラー騎士団長の傍にいれば、公爵のいる方角ぐらいは分かるのか。
携帯電話もない世界だから、方位磁針代わりになるし、意外に便利なのかも。
というか、ハルツ公がひょいひょい移動するかもしれないから、レーダー代わりに探索者をそばに置いてるのかも。
実際、移動しようとしてたしな。
まあ、だいたいの方向が分かる程度だから万能ではないけど。
公爵とゴスラー騎士団長が同じパーティーだと便利なのだろうが、別々の方が動き易いか。
俺には拠点構築の部隊編成のスキルがあって、各部隊の動きは把握しやすいが、各部隊から見た他の者達の動きは分からないよな。
今回の作戦はイロイロと気付きが多い。
ん?マップの通路側から灰色の点が一つ、こちらに近づいてくる。
ドアから騎士団員が一人だけ入ってきた。
さきほど支援に回したミンツという騎士だ。
ハルツ公の所まで真っすぐに歩いてくる。
立ち止まって、報告を始めた。
俺達は少し離れた所で見守る。
俺達が聞いて問題ないのか疑問だが、護衛を仰せつかった以上、あまり離れる訳にもいかない。
面倒くさい立場だ。
「閣下、この城のアチコチに遺体が散見されます。
我々と戦った結果ではなく、その前に死んだ者達です。
その中に気になる遺体が・・・・・・」
「なんじゃ?」
ミンツという騎士は、俺達の方をチラリと見た。
雰囲気を察して、俺達は二人から離れるように移動。
俺達には聞かせたくない情報なのだろうな・・・・・・本当に面倒くさい。
やがて、ミンツはハルツ公の傍を離れて、部屋の外に出ていった。
何が起きてるのか聞きたいが、聞かせたくないのだろうな。
ハルツ公の傍に再び寄って、護衛を再開。
少し刺激して、何か聞き出せないものか。
「閣下、まさかセ三号作戦が並行して発動されているのではないでしょうね?」
「ない。それはあり得ぬ」
ちょっと言い過ぎたか。
ハルツ公はあからさまに不機嫌な表情になっている。
作戦が計画通りに進んでいないからかもしれないが。
ん?
マップのドアの近くの通路に赤い点が一つ、二つ・・・・・・うぉっ、ドンドン増えてきてる。
「通路の外、警戒を・・・・・・!」
声を発したが、ドアの傍にいた騎士に届いたかどうか。
マップで見ると、通路に灯っていたグレーの点が一つ消えた・・・・・・殺られたのか。
「アミル、6番の準備を!」
「は、はい」
俺の言葉に反応して、彼女はパーティーの一番後ろに下がった。
「なんじゃ、どうしたのじゃ?」
「閣下、ドアの外の通路から大勢の者達が、こちらに向かってくる気配がします。
最大級の警戒をお願いします」
ハルツ公が警戒しても、どうなるものではないが、今は相手をしている暇がない。
アイテムボックス操作の呪文を詠唱し、デュランダルを取り出した。
ここに至っては、デュランダルを使うしかない。
オリビアにも硬直のダマスカス鋼の槍を一本取り出して渡す。
槍二刀流も解禁だ。
激情のダマスカス鋼剣と硬直のダマスカス鋼剣も取り出し、下椀の左右の手で掴む。
硬直のエストック含めて三本の剣を束ねて、下椀の両手で後ろに回して握り込んで隠す。
「ヴィルマは俺の右、イレーネは左、オリビアは俺の後ろに付いてくれ」
「了解!」
「了解!」
「ええぇ~私、前の方が気持ち良さそうだなぁ~♪」
艶っぽい声を出してもダメだから。
オリビアには俺達三人の取りこぼしがあった場合の刈り取りをお願いしたいんだよ。
「オリビアは俺の後ろだ!」
「了解~♪」
俺達の小芝居をよそに、十名を超える者達が室内になだれ込んできた。
何故だ・・・・・・こいつら、どこから湧いてきたのだ?
どいつも顔を覆うマスクのようなものか、フルフェイス型の頭防具を着けてやがる。
(鑑定)
(鑑定)
(鑑定)
(鑑定)
(鑑定)
獣戦士Lv62、聖騎士Lv25、海賊Lv59、冒険者Lv35、凶賊Lv37、騎士Lv48、
冒険者Lv42、獣戦士Lv47、僧侶Lv67、海賊Lv61、神官Lv48、騎士Lv42
12名・・・・・・2パーティー分か。
どいつも、かなりレベルが高い。
ん?この聖騎士の名前、どこかで見たような・・・・・・身分が表示されてないから、爵位持ちの貴族ではないのだろうが。
聖騎士の者が一番後方に陣取り、俺達を包囲するように展開した。
リーダーは聖騎士なのか。
俺達のいる場所は玉座・・・・・・じゃないセルマー伯が謁見時に座っていた無駄にデカい椅子の前。
少し高い位置にあるから、包囲している奴等が見えるけど、逃げ場はない。
エンブレムは少し離れている・・・・・・ハルツ公は別のパーティーに入ってるのだったか。
「貴様ら、何者じゃ?」
「公爵・・・・・・お命頂戴する・・・・・・」
エルフの聖騎士の男が低い声で剣呑なセリフを吐いた。
ハルツ公と分かっていて、ここに移動してきたのか。
ボーデの騎士団がここに攻め入るのが分かっていて、待ち伏せされたのかもしれない。
あるいは、ボーデの城に見張りを紛れ込ませていたのか。
しかし、本当にハルツ公の護衛をすることになるとは。
というか、他の騎士団員の奴等は何しているんだよ。
お前らのトップが絶体絶命のピンチだってのに。
「閣下、お下がり下さい。彼奴らの狙いは閣下の命です」
「むっ・・・・・・」
もう、後はいつぞやの作戦通りにいこう。
「アミルは6番、俺だけ2番で、他は1番な」
「あ、主、ズルい」
「御館様、あたしも2番がいい!」
「後ろにいるなら何番でもいい。こっちに適当に逃がしてね~♪」
「おい、何をしゃべっている?」
聖騎士は怒りの口調だが、フルフェイスの頭防具を着けているので、表情はよく分からん。
「その格好は・・・・・・貴様ら、冒険者共か。
公爵を引き渡せば、お前たちの命までは奪わぬと約束しよう。
逆らえば、全員、死ぬものと覚悟しろ」
「・・・・・・」
いやいや、お前ら全員、索敵で赤いし、約束を守らないだろう。
海賊や凶賊が仲間にいる連中を信じるのは無理だから。
「降伏すれば、命は助けてくれるのだな?」
「むっ、まずは武器を捨てろ。話はそれからだ」
デュランダルを一度、天井に掲げ、床に突き刺した。
「これでどうだ?」
俺は両手を上げて、掌を開いて、降参のポーズを取った。
こちらの世界に降参があるのかは知らんが、聖騎士の殺気が少し減った気がする。
実際のところは、フルフェイスなので表情が読み取れないけど。
下椀の両手は後ろで、三本の剣を持ったままだ。
そして、上げた両手のそれぞれの手の指を三本ずつ立てた。
「お前だけでなく、他の者も・・・・・・」
聖騎士の呼びかけは無視だ・・・・・・アミル、そろそろ大丈夫か?
「公爵様、お許しを・・・・・・」
「そ、其方、何をするのじゃ・・・・・・」
アミルが始めたな。
「おい、後ろで何をしている。早く、公爵を引き渡せ!」
★セ二号作戦におけるセルマー伯の城(謁見の間)での戦闘マップ
「戦闘開始だ!」
(オーバーホエルミング)
(状態異常耐性ダウン)
左側を向いて、イレーネの前の獣戦士Lv47に博徒のスキルをかけた。
後ろに回していた三本の剣を三本の手で握った。
これで四刀流だ。
四本の剣を持った俺は、正面の三人の敵に駆け寄る。
中央が凶賊Lv37、右に騎士Lv48、左に海賊Lv59。
スローモーションだが、剣を構えようとする凶賊Lv37の首をデュランダルで刎ね飛ばした。
そのまま、左に走り海賊Lv59に近づく。
このレベルは狂犬のシモンよりは上だったか、下だったか。
海賊の視線は俺を追っているが、体の方は付いてこれずにゆっくりと動いている。
構わずにデュランダルを横一閃し、首を刎ねた。
さすがに、このレベル差とデュランダルなら下級職のジョブは楽勝のようだ。
ターンして、次は右の騎士Lv48へ小走りで向かう。
こいつはエルフ族だったな。
スローモーションの中にも、こちらを向いて目を見開き、驚いたような表情が見て取れた。
かまわず激情のダマスカス鋼剣と硬直のダマスカス鋼剣で滅多切りにする。
さすがに騎士は堅いな。
(ダブルスラッシュ!)
剣聖のスキルを使い、デュランダルで横から斬りつけ・・・・・・胴体を真っ二つにした。
硬直のエストックは途中までめり込んで・・・・・・空振りした感触。
更に前に進むと冒険者Lv42と神官Lv48だ。
まずは神官を斜めから、デュランダルで一刀両断。
冒険者Lv42は硬直のエストックの連続刺突をしながら、更に前の聖騎士に迫る。
そろそろ超速スキルの効果が切れるか・・・・・・はしごしよう。
(オーバードライブ)
(状態異常耐性ダウン)
聖騎士に博徒のスキルをかけた。
硬直のエストックと硬直のダマスカス鋼剣で聖騎士に10回程度斬りつけて、冒険者Lv42の男の背後に回り、後ろからデュランダルで袈裟懸けに真っ二つにした。
(索敵)
赤い点は7つ減っている。
聖騎士はまだ生きているな。
俯せに倒れているが、状態異常になったかどうか・・・・・・確認は後回しだ。
後ろを振り向くと、スローモーションだが、イレーネが海賊Lv61と戦っている。
博徒のスキルをかけた獣戦士の男は倒れている・・・・・・石化させたのか?
いや、点が見えなかったから、死んでいるのか。
僧侶Lv67は治癒魔法を使っているのだろうか、前に出てきていない。
アミルはデカい椅子の後ろに回り、ハルツ公を抱えて椅子の背中に押し付けて守っている。
というか拘束して、こちらを見せないようにしているだけだ。
俺のセブンスジョブのパーティー効果に鍛冶師Lv86の腕力で押さえつけられたら、聖騎士Lv14のハルツ公では身動き取れないだろう。
ヴィルマの方はオリビアが支援に入って、騎士Lv42、獣戦士Lv62と戦っているが、こちらは余裕がありそうだな。
たしか、冒険者だった奴がいたはずだが、倒れていて点が見えないので死んでいるのか。
イレーネの方にいる僧侶から片づけるか。
(状態異常耐性ダウン)
イレーネの前の海賊に博徒のスキルをかけた。
彼女の相手している海賊の後ろにいる僧侶まで、一直線に迫る。
全く、こちらを見てないので、僧侶の首を横から刎ね飛ばした。
ここで、オーバードライブの効果が切れた。
「ああぁー、あたしの獲物!」
「いいから、目の前の男を始末してくれ!」
俺の方へ振り向いた海賊Lv61をイレーネが、鋭い連続刺突をかました。
これで石化させたか?・・・・・・あっ、『一閃』使ったな・・・・・・首が刎ね飛ばされた。
聖騎士を見ると倒れていて、先ほど見た時の状態のままだ。
これは石化したのだろうな。
残りはヴィルマ達の戦っている二人か。
いや、二人とも倒れた。
ヴィルマのビーストスラッシュと、オリビアのドラゴンファングの餌食になったのか。
悪いな。二人の戦いはほとんど見られなかった。
索敵のマップを開くと、赤い点は一つだけになった。
石化した聖騎士のみだ。
「アミル、もう終わったぞ。閣下を解放しても大丈夫だから」
「は、はい。あの・・・・・・閣下、お怪我はないでしょうか?」
敵からの攻撃は受けてないが、確かにアミルの剛腕で怪我などは・・・・・・?
「い、一体何が?・・・・・・これはなんじゃ?」
「・・・・・・」
彼が椅子の後ろから前に回ったら、11人の死体と1つの石像だ・・・・・・どう説明したものか。
首も数個転がっているし、床も血塗れ・・・・・・俺達も結構、返り血を浴びている。
「何か威勢の良い割には、あまり強くなかったみたいで・・・・・・」
「・・・・・・」
他にどう説明しろと・・・・・・嘘は言ってないつもりだが。
「大声で何か怒鳴っていた騎士っぽい者は、そこに石化させておきました。
もし、尋問なさるのなら・・・・・・ああぁ、石化しても尋問できるのでしたっけ?
とにかく扱いはお任せします。
他は討伐しました」
「・・・・・・」
石化させたら、尋問させるにはエリクサー使わなければならないのだろうか。
後は任せるしかないな。そこまで責任持てない。
「とりあえず、インテリジェンスカードだけでも回収するか」
「了解!」
「了解!」
「了解!」
「り・・・・・・了解」
アミルは俺達の戦闘を見てなかったから、この斬殺現場は刺激が強すぎたかも。
とにかく左腕を切り落としていこう。
索敵のマップを開いて周囲を警戒しつつ、放心状態のハルツ公は放置して作業にかかった。
主に俺のデュランダルで切り落としていく。
レベルの高い海賊とか凶賊がいたから、懸賞金がかかっているだろうか。
今回はハルツ公側と折半だったっけ。
盗賊の場合は、どうなるのだろうか。
そもそも、襲ってきた奴等は貴族なのか?
海賊や凶賊もいたから、本当にセルマー伯の手下なのだろうか疑問だな。
これだけレベルが高ければ迷宮討伐も捗りそうな気もするし。
あっ、いや、そもそもセルマー伯は亡くなられているのか・・・・・・となると、嫡子の長女の手下?・・・・・・うーん分からん。
とりあえず、石像と化した聖騎士の傍に11本の左腕を積み上げた・・・・・・シュールな光景。
マップを見ると、今度は複数のグレーの点がこちらに近づいてきた。
今度はなんだ?
嫡子の長女でも、発見されたのだろうか。
ドアから入ってきたのは、ゴスラー騎士団長と数人の騎士団員だ。
顔見知りの者も何人かいる。
2名ほど、ドアの傍のいるのは、殺された騎士を確認しているのかもしれない。
ゴスラー騎士団長が血相を変えて、俺に詰め寄ってきた。
「タケダ殿、これはなんとしたことですか・・・・・・」
「騎士団員が手薄になったタイミングを狙われたようです。
12名程がいきなり襲いかかってきたので、そこの石化した者を除いて切り捨てました。
尋問するなら、その石化させた奴を回復させるのがよろしいかと」
あれっ、なんか怪我してるっぽいな。
「怪我をされていますか?」
「ええ、こちらも襲撃を受けまして。
撃退しましたが、負傷者が多くて僧侶や神官の手が足りませんでした」
「タケダ殿、ゴスラーをパーティーに入れて治療を・・・・・・」
「閣下、私の今のパーティーに治療役はおりません。
全て、生薬で回復させております故。
ゴスラー騎士団長には、この滋養剤をお渡ししますので」
懐から滋養剤10個取り出して渡すことにした。
俺の今のパーティーに回復役のジョブの者はいないので、生薬を使っていると言い張らざるを得ないのだ。
アミルは今は鍛冶師だし。
一緒に戻って来た騎士団員が襲撃者達の死体の検分を始めたので、その場を離れてドアの外の通路へ向かう。
ドアの傍には変わり果てた騎士団員の手を取って、涙にくれる二人の姿があった。
この二人の騎士団員は亡くなった者と親しい間柄だったのだろうか。
今は悲しむよりも、周囲の警戒を・・・・・・と喉元まで出たセリフを飲み込んだ。
俺には彼等へ命令する権利などない・・・・・・今は自分ができることをやろう。
静かに二人の横を通り過ぎて、壁を見ながらゆっくりと歩いた。
:
:
:
ここか・・・・・・壁面の色が少しだけ異なる。
フィールドウォークの呪文を詠唱した。
うん、ゲートが開いて、別の場所に繋がるな。
ここは遮蔽セメントが削られて、奇襲用の出入り口か緊急の脱出口になっているのか。
あいつら、この辺りから急に大挙して出現したからな。
後でゴスラー騎士団長に伝えておこう。
再び、二人の横を通り抜けて、謁見室の中に戻った。
その時、部屋の片隅で何かを砕く音が聞こえた。
あそこにいるのは・・・・・・イレーネか?
急いで彼女のいる場所に向かった。
「御館様、ゴメン・・・・・・気付くの遅れた・・・・・・」
「どうした?」
彼女の近くには木片が散らばっている。
戸棚を壊したのか・・・・・・戸だなの中には死体が。
「こいつは?」
「あたしらのことを見張っていたのかもしれない。
この部屋でなんか、変な雰囲気を感じてたのだけど、今さっき、気付いた。
『一閃』を使って壊したら、こいつがいるのを見つけた」
それで戸棚を攻撃したら、勢い余って中の者も殺したのか?
死んでしまうと、どういう立場のどのようなジョブの者だったのかも鑑定では確認できない。
こいつの左腕も回収しておくか。
デュランダルで切断して、さきほどの腕を集積した場所に重ねて置いた。
戸棚に隠れていたセルマー伯になんの所縁もない一般人なんてことはないだろうな。
さすがにそれは無いか。
ハルツ公とゴスラー騎士団長が話をしているので、報告のために向かう。
二人の話し声が聞こえた。
ハルツ公の騎士団員に死傷者がかなり出ていること、セルマー伯の死因は毒殺であること、セルマー伯の嫡子の長女が行方不明であること等を話しているようだ。
そして、まだ扉が開かない部屋が数箇所あるそうだ。
轟音が聞こえたのは、部屋を破って突入した騎士団員に魔法使いのファイヤーストームが使われたらしい。
その魔法使いは隣室のドアから、その部屋に魔法攻撃を加えた模様で、騎士団員に死者と重傷者が出た模様。
ご丁寧に、突入した部屋に油の壺やら、燃えやすい物が集積してあったとのこと。
室内では魔法攻撃は御法度と聞いてたが、こんな戦い方というか罠の張り方があるのだな。
今後に役立つか分からんが、覚えておこう。
火を消し止め、犯行に及んだ魔法使いを取り押さえようとした時には既に事切れていたとの事。
外傷は見当たらず、死因は不明らしい・・・・・・用意周到過ぎる。
魔法使いのインテリジェンスカードは回収され、奴隷身分だったことは判明している。
その名前はゴスラー騎士団長の記憶にあるらしいが・・・・・・えっ、それって俺にも記憶があるぞ。
思い出した・・・・・・あいつだ。
このまま、二人の話を聞き続ける訳にもいかないので、割って入ることにした。
「今、ゴスラー騎士団長が話をされていた魔法使いの名前、私も記憶があります」
「えっ、タケダ殿も?どのような者でしたか?」
かなり日数が経過したけど、何度か会った。
「恐らくですが、私がバラダム家の者と決闘した際に、一緒にいた魔法使いの者だと思います」
「あっ、そういえば、城の詰所に戻れば記録が残っているかも・・・・・・」
決闘に一緒に立ち会った者の名前まで記録しているのだろうか?・・・・・・それよりも。
「そして、その魔法使いの者は確か、
クーラタルの季節毎のオークションに奴隷として出品されていたと記憶しております。
商人ギルドに連絡を取って、落札した者の足取りを追うべきかもしれません」
「そうだったのですか・・・・・・では、配下の者に命じておきます」
ここまで用意周到に準備しているのだから、足が付かないようにやってる気もするけど。
まあ、捜査までは手伝えないから騎士団に任せるしかない。
あっ、もう一つ思い出したけど、それは伝えられないな・・・・・・うーん、どうしたものか。
今は、先に報告を済ませるか。
そのままの流れで追加の報告を実施。
扉の傍にフィールドウォークで行き来できる場所があり、そこから12名の襲撃者が移動してきたのではないかと予想を話した。
加えて、この部屋の戸棚の中に見張りをしていた者がいたようで、討伐した事も伝えた。
フィールドウォークの移動場所、見張りについては、ここで発見したもの以外に他にもある可能性も指摘しておいた。
「待ち伏せされていたのやもしれぬな」
「そうですね・・・・・・ここまで被害が出るとなると」
二人の表情はかなり深刻に見てとれた。
これで、伯爵の地位を持つ者を捕縛しないと作戦としても失敗になるのかもしれない。
そして、ハルツ公の騎士団員にも多数の被害が出ている。
引き際を考えるべき時なのじゃないか。
このまま、この城を占拠して伯爵位を奪ったことの正当性は担保できるのだろうか。
とはいえ、俺は指揮官でもなければ参謀役でもないので、しゃしゃり出る訳にもいかない。
まだ未確認の部屋もあると言ってたようだし。
ん?索敵のマップに、グレーの点が一つ現れた・・・・・・後方のエンブレムの方か?
振り返ると、血を流した冒険者がこちらに・・・・・・いや、ハルツ公の方に歩いてきている。
足取りも怪しい感じだ。
「閣下、ボーデの城が襲撃を受けています。早く・・・・・・お戻りを・・・・・・」
「なんじゃと・・・・・・」
原作と全く違う展開じゃねぇかよ・・・・・・この先、収拾がつくのか?
お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/5/14(木)の予定です。