異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

259 / 259
102.再起への道は険しく

 セ二号作戦の翌日も、迷宮組は通常運転。

 クーラタルの63階層の迷宮探索を実施。

 隻眼のカーラのこともあるし、他に治療をしたい者もいる・・・・・・威霊仙の入手に向けて着実に進んでいきたい。

 

 

 とはいえ、63階層は今までと違う。

 最もボス部屋に近い小部屋でインテリジェンスカードのチェックを受け、ひょっとしたら64階層に抜けた小部屋でも何か取り調べを受けるかもしれない。

 昨日の午後に63階層に入り、小部屋に戻ることもなくワープで迷宮を立ち去った。

 

 通常の探索者なら、迷宮の中でモンスターを凌ぎながら先に進むのにズルして外に出たのだ。

 本日、再開する時にも、いきなりワープで迷宮の壁に出て、続きの探索を行うつもりだ。

 56階層以降では、いつもやっていたことだが、63階層は少し注意が必要だ。

 

 昨日63階層の通路を索敵スキルで確認した際には、他の階層に比べて探索しているパーティーが多かった気がする。

 再開する時に、ダンジョンウォークで移動できないはずの壁に移動するのだ。

 見つからないように、上手く移動する必要がある。

 

 なので今回は迷宮探索の開始時のみ、少し工夫することにした。

 

 

「ご主人様、今日はそれを使うのですか?」

「ああ、せっかくアミルに作ってもらったのだしな」

 アイテムボックスから、頭装備を取り出した。

 

 鑑定上は、ただの『皮の帽子』だが・・・・・・見た目はパーンの顔に似せた全頭マスク。

 眼の部分だけは見えるようにしてあり、それ以外はパーンの顔にソックリなので、まあまあ悪人顔に見える。

 モンスターなので、悪人に決まっているのだが。

 悪役覆面プロレスラーのマスクみたいだが、背に腹は代えられない。

 

 これで、ワープゲートから顔だけ出せば、俺だと気付かれずに周囲が見渡せる・・・・・・はず?

 一応、なるべく見つからないようにするため、セ二号作戦の初回偵察時と同じようにオーバーホエルミングを先にかけて通路を覗く。

 索敵スキルで周囲を確認して、他のパーティーがいないのを見計らって全員で移動する。

 もし、他のパーティーがいるようなら、顔を引っ込めて別の場所に顔を出すつもりだ。

 一瞬の早業でやるから、普通は気付かれないし、見つかったとしてもモンスターだから、迷宮にいてもおかしくはない・・・・・・?

 問題なく移動できれば、その後の迷宮探索は、いつも通りだ。

 

 

 で、実際に使ってみると、誰もいなかったので空振りだったりする。

 いや、別に空振りではない。

 他のパーティーを驚かそうとしている訳ではないので。

 『63階層で何故かパーンを見た!』という噂を広げたいということでもない。

 

 他のパーティーがいないのを確認して、迷宮探索を再開した。

 

 迷宮組はいつもの五人。

 

 昨日、セ二号作戦で一緒に戦ったメンバーだ。

 昨日の血生臭い戦いから、今度はモンスターをひたすら殲滅する戦いへと変わる。

 モンスターは、倒しても鮮血が吹き出ることなく煙に変わるだけなので遠慮なくしばき倒す。

 昨日は血塗れで大変だったよな。

 

 

 セ二号作戦と言えば、昨晩は帰宅後にエネドラから、お小言を少しだけもらった。

 まあ五人のうち、アミルを除いた四人がそれなりに血塗れだったので。

 それでも眉を(ひそ)められ、お小言が少しだけだったのは、カーラの存在のおかげ。

 

 急に彼女がタケダ家のメンバーになったとエネドラに伝えると、直ぐに彼女のために風呂と食事と部屋を用意し始めた。

 さすがにエネドラは頼りになる。

 

 彼女はクーラタルの商人娘達に緊急招集をかけ、対応してくれた。

 夕食の時間を遥かに過ぎて、風呂も終わっていたはずなのに・・・・・・すまねぇ、すまねぇ・・・・・・足向けて眠れないな。

 

 その間に、カーラの奴隷所有者を俺に設定して、エネドラを死後相続先に指定。

 手続きはクララに全てやってもらった。

 やはり、クーラタルの方にも奴隷商人のジョブを持つ者がいると楽チンだ。

 

 所有者が俺になったら、索敵スキルで確認したカーラの色が青色になっていた。

 想定通りだが、索敵カラーが青色に変わっても彼女が俺に心を許した訳でもなんでもない。

 淡々と手続きが流れていくのを、魂が抜けたようにカーラが見ていたのが気になった。

 

 

 ちなみに、カーラの部屋は二階の最後の空き室があてがわれた。

 二階はハーレムメンバー専用のフロアなのだが、何かエネドラに見透かされている気がする。

 もちろん、傷心の彼女に手を出すような鬼畜な真似はしない。

 

 エネドラが風呂に入れてやり、食事を摂らせた後も彼女は塞ぎこんでいるようで、食事以外ではなかなか自室から出てこないようだ。

 父親を亡くし、弟妹を人質に取られ、貴族の身分を失って、奴隷として俺の所にきた。

 短期間にこれだけの事が身に降りかかり、元気でいろというのは無理な話だ。

 

 今は彼女が立ち直るのを、時間をかけて見守るしかない。

 あと2、3日もすれば、きっと威霊仙が手に入るだろう。

 そうなれば、彼女の隻眼を治療できるはず。

 

 だが、体の傷は治せても、心の傷まではエリクサーでどうこうできる訳ではない。

 こればかりは自分で立ち直るしかなく、時間が必要だろう。

 今日の朝練でも、二階のバルコニーから俺達の練習風景をチラッと見ただけで、自室に戻ってしまったようだ。

 まだまだ時間がかかりそうだな。

 

 迷宮組の変化で言うと、イレーネが詠唱隠蔽の技術習得に励み始めた。

 今朝の朝練でレドリックから熱心に教えを乞うていたようだ。

 彼に聞いた話では、昨日のセ二号作戦で、くのいちの『一閃』のスキルを使う際に、相手に悟らせないで使うことに有用性を見出したようだ。

 今までは詠唱共鳴の心配のないレアジョブ持ちということもあって、詠唱隠蔽の習得には興味を示さなかったのだが、昨日の戦いで何かを感じたようだ。

 

 そして、そのイレーネは昨晩、俺に夜襲を仕掛けてきた・・・・・・ユ二号作戦だ。

 ノックもせずにいきなり入ってきて、襲い掛かってきやがった。

 昨日のセ二号作戦で、かなり激しく戦ったので、昂ってしまったのだろう。

 俺もクールダウンに苦労してベッドで悶々としていたので、気持ちは凄く分かる。

 おかげで、お互いに激しく求めあい、貪りあった。

 

 エネドラからは、昨晩は夜伽無しにするから、しっかり休んでほしいと言われていたのに。

 まあ、体力を使い尽くして、その後は二人ともぐっすり眠れたけど。

 

 

 他の三人は特に変化はないようだ。

 

 いや、オリビアは昨日のイレーネとヴィルマを二階のバルコニーに放り上げたのが面白かったのか、今日の朝練でケリーとマリーを代わる代わる空中に放り投げていた。

 そのうち、二人まとめて両手でジャグリングでも、やり始めるのではないだろうか。

 

 俺は空中に放り投げられるのは嫌なので、もっと安全に高所へ移動する方法を模索したい。

 人目が無ければワープで移動するので、他人の目を気にせずに移動できる方法がベストだが。

 

 今の懸念事項はカーラのメンタル面だけだな。

 剣技には何か拘りがあるようだから、修練場に来て剣でも振れるようになれば、また気分が上がってくるのではないかと思っている。

 今日は午後に話をする機会もあるので、その時に様子を見ることにしよう。

 

 ハートハーブをひたすら斬りながら、合間にセ二号作戦の反省をしつつ、戦闘を繰り返す。

 

 :

 :

 :

 

 昼食を挟んで、63階層の探索を続行。

 再開時の全頭マスクの使い方にも慣れてきた。

 今のところ、マスク姿で他のパーティーに出くわすという事態には陥ってない。

 

 午後の探索での戦闘も特に問題なく、緑豆をひたすら積み上げていく。

 イレーネも詠唱隠蔽の練習をしながら、ノリノリでハートハーブに『一閃』を見舞う。

 モンスターはこちらのスキルの詠唱を気にしているとは思えないので、練習相手としてはどうかと思うのだが。

 

 順調とはいえ、今日中にボス部屋の発見には至らず、探索を終了にした。

 

 今日の夕方はセ二号作戦後の確認で、ハルツ公に会うためボーデに行かなければならない。

 その前にカーラからヒアリングをする必要があるから、迷宮探索を早めに切り上げた。

 

 迷宮の壁にワープゲートを開き、クーラタルへ帰宅。

 

・・・・・・

 

 自宅に戻ると前衛組三人は修練場へ、アミルは二階へと上がった。

 アミルは着替えた後は作業室に行って、武器生成するらしい。

 最近、ジョブ変更した者が多いから、忙しくなってきたよな。

 二階に上がる前にエネドラに声を掛けて、カーラとヘルミーネを呼び出すように依頼。

 

 自室で着替えて、食堂に向かうと、俺以外の者達は既に揃っていた。

 基本的には俺がカーラからヒアリングするのだが、ヘルミーネには助言を、エネドラにはカーラのサポートをお願いしている。

 

 カーラとの面談は、セルマー伯の城であったことのヒアリングだ。

 ちょっと彼女には酷な内容だとは思っている。

 そっとしておいてやりたいのだが、こちらの記憶が薄れないうちにカーラの持つ情報とのすり合わせをやっておかなければならない。

 この後、ハルツ公と会うという事もがあるが、セルマー伯領やハルツ公からちょっかいをかけられる事に備えるためだ。

 

 カーラの表情は元気がない・・・・・・というか虚ろだ。

 

「カーラ、君からセルマー伯の城であったことや、

 君の家であったことを教えてもらいたいと思っている。

 だが、どうしても辛い内容については話さなくても構わない」

「昨日以上に辛いことなんて・・・・・・もう、ないはず。

 何を訊いてもらっても答えます」

 

「初めに訊きたいのは、君が伯爵位に就いていたことだ。

 元々は毒殺されたと言われているセルマー伯が伯爵位だったはず。

 何故、君に伯爵位が継承されていたのか教えてくれないか?」

「発端は・・・・・・姫様と私の弟妹が人質に取られてしまったことから始まります」

 ん?・・・・・・どういうことだ。姫様って?

 

「姫様というのは、セルマー伯の嫡子で、継承順位が一位の女性か?」

「はい。ルティナ姫です。レーガンに捕らえられていたと姫から伺いました」

 原作のヒロインの名前だ・・・・・・原作ヒロインの名が出てきたのは、この世界に来て初めてか?

 

 レーガンという男は、オークションに来ていた聖騎士の名前と一致するな。

 その時のメモによると子爵になっているが・・・・・・昨日の戦闘時に鑑定で見た時には爵位が消えていたように思えたが記憶違いか?

 

「そのレーガンって奴は、姫様を人質にして何をしようとしていたのだ?」

「父上が言うには、姫様と結婚して傀儡にし、行く行くは爵位を奪うためではないかと。

 伯爵様から姫様に伯爵位を譲位させて、婚姻を結ぼうとしたようです。

 直系でも傍系でもない者に直接、伯爵位を譲ることはできませんので」

 結婚したからって、そんなことが可能なのか?

 

「そんなことをしても、伯爵の騎士団が黙ってない気もするが、

 それはともかく、レーガンという男はどういう奴なんだ?」

「彼の素性の詳細は私にも分かりません。

 どこかの領地持ちの貴族の子息のような感じでしたが、

 私はこれまで会ったこともない者でしたので。

 ただ、姫はレーガンと結婚するぐらいなら自害とすると主張したようです」

 それはまた・・・・・・。

 

 原作でも、『殺しなさい』と主張していたものな。誇り高き女性なのかも。

 

「そうなると、伯爵位の持っていきどころがなくなるよな?

 それに、姫様の命が危うくなるのじゃないか?」

「はい。それで私の方に婚姻の話が持ち込まれたことになります。

 もちろん、私の弟妹も人質に取られていたので、脅されてという形ですが」

 ん?・・・・・・なんか分からなくなってきたな。

 

「君はセルマー伯から伯爵位を譲位可能な立場なのか?」

「はい。私の父も傍系ですが、伯爵家の血族扱いですので私も譲位の対象となり得ます」

 カーラもカシア様の従弟と同じ立場だったのか。継承順位は低かったのかもしれないが。

 

 それにしても、剣匠のジョブでも伯爵位に就けるのだな。

 原作でもエルフヒロインは村人だったから可能と言えば、可能なのか。

 

 

「立場は分かったが、君は弟妹を人質にされたから、

 やむを得ず伯爵を引き受けたということなのか?

 セルマー伯も自分の娘が人質にされていたから譲らざるを得なかったと?」

「そこは少し違うのですが、結果としては譲るしかない状況に追い込まれたのです」

 状況は厳しいが、ただ追い込まれただけでは、このような状況にはならないと思うが。

 

「父上と私はエストグリュン家の騎士団を率いて、

 誘拐した賊軍のいる場所を突き止めて急襲しました。

 もちろん、姫様と私の弟妹を救出するのが目的です。

 姫様と私の弟妹が囚われていた場所は別々でしたので、二箇所を同時に。

 姫様の所を父上が、弟妹の所を私が騎士団の部隊を率いました。

 父上は姫様の救出に成功しましたが、私は・・・・・・失敗しました。

 弟妹を救い出せませんでした・・・・・・その場所には既に人質はいなかったのです」

「そうか、それは残念だったな」

 カーラは俯いてしまった・・・・・・テーブルに彼女の涙がポタリポタリと落ちていく。

 

 襲撃先に救出対象がいなかったのなら、失敗するのは仕方ないだろう。

 別に彼女の責任ではないはず・・・・・・いや、裏をかかれたのか?

 動きが遅かったのかもしれないが、一人は救出したのだからタッチの差だったのかも。

 

 エネドラがカーラの涙を拭いてやり、彼女は天を一度仰いで、再び話し始めた。

 

「父上が姫様の救出で攻撃を仕掛けたのですが、

 賊達はあまり抵抗せずに、姫様を置いて逃げ去ったそうです。

 私達は姫様だけでもセルマー伯の所にお届けしたかったのですが、

 その時には城はレーガン達の襲撃を受けて、

 セルマー伯は囚われの身になっていました」

「それはまた・・・・・・」

 ハルツ公がセ二号作戦をやる前に、レーガンという奴が先にやったのか?

 

 今回のセ二号作戦の動きを見ても分かるけど、内通者が予め用意されていて、やりたい放題やってるのじゃないか?

 ただ、それにしては作戦自体がかなり無茶な建付けな気もするが。

 無理やり伯爵になっても、なんの後ろ盾もなしに持続できないだろう。

 あるいは、まだ背後に何か強力な勢力でもいるのかもしれない。

 

 

「仕方なく、父上は姫様と、その弟妹を信頼のおける者の所に預けて逃がし、

 私と共に城に出向きました。

 レーガンが私の弟妹の命を盾に、私の身柄の要求をしたからです。

 姫様の身柄も要求されましたが、父上はその要求を無視しました。

 止めたのですが、父上は私と一緒に行くと言い張って、二人ともレーガンに捕らえられました」

「そうか、それは悔しかっただろうな」

 子供達三人を見捨てることも、主であるセルマー伯を見捨てることもできなかったのか。

 

 

 しかし、それだけのことをされたのなら、全エルフ最高代表者会議だかなんだかに助けを求めるべきだったのでは?

 他のエルフの爵位持ち貴族に助けを求めるとかも・・・・・・まあ、今更言っても後の祭りか。

 他領の干渉を避けるため、自領で解決しようとしてしまうものなのかね。

 

「城で捕らえられた後、直ぐに伯爵様は私に伯爵位を譲られました。

 そうしなければ、私の弟妹が殺されてしまうことになってましたから。

 伯爵様は父上が姫様を救出してくれた恩に報いてくれたのだと思います」

「なるほど・・・・・・」

 普通なら、譲位なんてしないよな。

 

 自分の嫡子である娘が生き延びて別の場所にいるのだから、自分が死んでも、その嫡子に伯爵位が移る。

 伯爵位を継げるだけの実力があるかどうかは別として、自分の子供に継承させればセルマー伯家としては継続できる。

 セルマー伯自身は命を失うだろうけど。

 

 にもかかわらず、カーラに譲ったというのは、娘を救出したことに報いたのか。

 実際問題、カーラに譲位した判断が貴族として適切な選択なのかは分からないが。

 

「伯爵様は今回の件の直前まで、父上を疎んじておられました。

 正確には父上と私を・・・・・・」

「ん?それはどういう?」

 父親はともかく、何故カーラを?

 

「エストグリュン家は武断の家柄で、迷宮探索、迷宮討伐に積極的な領地でした。

 私は領地では剣の腕前がそこそこの者として評価されていて、

 父上と共に伯爵の傍系の血族ですので、次期伯爵の候補に推す者達もいたのです。

 エストグリュン家はセルマー伯の寄子貴族で忠誠を誓ってました。

 私も父上も、伯爵位に就く気は全くなかったのですが」

「それでセルマー伯から疎まれていたと。

 できれば、自分の嫡子に継がせたいと思うのが人情だからな」

 俺の言葉に彼女も黙って頷いた。

 

「ですが、今回の襲撃の少し前に和解していたのです。

 父も私も伯爵位を望まないと誓約書を提出し、共に伯爵様と姫様を支えると誓ったのです。

 それで、伯爵様は姫が17、8歳ぐらいになったら譲位すると、おっしゃってました。

 姫様は迷宮探索の経験はほとんどありませんでしたが、聡明で努力家でしたから、

 政務をある程度は学んで、我々エストグリュン家が迷宮探索の助力をすれば、

 伯爵家は盛り返せたと思っています。

 その頃には私の弟妹二人とも成人を迎えていますので、

 迷宮で活躍できるように直ぐになったでしょう。

 あと三年、いえ、せめて二年あれば・・・・・・」

「そうか」

 うーん、それはどうだろうな。

 

 果たして、二年も待てるだけの余裕があったのかどうか。

 ああ、ハルツ公は『傷の浅いうちに』と言っていたか。

 実際、今の時点でセルマー伯の領地にどれだけの迷宮被害が出ていたのかは分からない・・・・・・待てたのか待てなかったのか。

 あるいは、ハルツ公は手駒になるカシアの親族を伯爵に据えたかっただけかもしれないが。

 

 今となっては確認のしようもないし、手遅れの話だが。

 

 

「譲位された、その日に公爵が城に攻め込んできました。

 なので、私とレーガンという者の結婚式は執り行えませんでした」

「では、昨日伯爵になったばかりだったのだな」

 タイミングが良いというか、悪いというか。

 

 日本だと籍だけ入れるとか、手続きだけで済ませることもあるけど、こちらの世界の貴族ではそうはいかないのかな。

 それにしても、三日天下ではなく一日伯爵・・・・・・そのあげくに奴隷とか笑えない冗談だ。

 

 ただ、それならレーガンという奴にとっても、セ二号作戦は虚を突かれたのではないか。

 それにしては、見事な逆襲だったと思うが。

 

「ハルツ公がセルマー伯の城に攻め込んできたのは、

 『セ二号作戦』という作戦名なのだが、それを事前にレーガンという奴は知っていたのか?」

「いつかはハルツ公が攻め入ってくることは知っていたようです。

 私の世話をしていた者が漏らしておりましたので。

 ただ、タイミングまでは知らなかったと思います。

 私はずっと囚われていたので、城の内部事情までは分かりませんが。

 それでも、昨日のハルツ公の襲撃が起きた際には、城は大騒ぎになってましたから」

 ん?・・・・・・それって。

 

 ハルツ公はセ二号作戦の存在自体を、領内の騎士団員にどこまで教えていたのだろうか。

 もし、ゴスラー騎士団長や、一部の信頼できる者にしか教えていないのだとしたら、その作戦の存在を他に知っている者は・・・・・・全エルフ最高代表者会議の参加者?

 会議の承認を得て、行動しているとハルツ公は言ってたよな。

 セルマー伯は自分を攻める決議に参加している訳はないし、原作でもそんな感じだった。

 ハルツ公を除く残りの二人の侯爵と、その他に会議の参加者がいれば、その辺りがレーガンという奴に情報を流したか、もしくは今回の黒幕なのかも。

 レーガンって奴も一応はエルフ族だから、会議の参加者と繋がっていたという線はあるか。

 作戦というか、伯爵を討つことの了解は会議で得ていたが、攻めるタイミングはハルツ公に一任されていたのだろうしな。

 

 

「カーラは、そのレーガンって奴が、今回の諸々の陰謀の首謀者だと思うか?」

「分かりません。私はレーガンと言葉を交わしたことが少ないので。

 城に出向いて直ぐに父と離されて監禁され、その後、なんの情報も無いままでした。

 むしろ、リオン達の方が今回の件について情報を握っていると思います。

 だから、公爵は三人・・・・・・いえ、四人を手放さなかったのかもしれません。

 レーガンは頭は良さそうでしたが、どうにも酷薄そうな裏表のある人物に感じました。

 今回の件を主導できる程の器量があるのかまでは分かりません」

 分からないけど、特別な器量を感じもしなかったということか。

 

 正直なところ、あのレーガンという聖騎士の男、セルマー伯の城で瞬殺で石化してしまったので、俺も判断できるほどの材料がない。

 だが、ボス格の奴があんなにアッサリとやられるか?

 俺的には全然ボスの雰囲気を感じなかったのだが。

 

 陰謀が得意で、戦闘が得意ではないということはあり得るかもしれない。

 だが、そんな奴なら前線に出てきて戦うなよと思ってしまう。

 アイツを石化して捕まえたが、正直なところ、今回の幕引きができたとは全然思えない。

 

 

 あと、一つ確認することがあったな。

 

「それで姫様の方は、安全な場所に今もいらっしゃるのか?」

「父上が手配したので、私もどこにいらっしゃるのかまでは分かりません。

 ですが、父上は他の貴族が絶対に手出しできない所に送る手配をしたと言ってました。

 姫とその弟妹は、そちらに移動されたと思います」

 ああ、きっとあの場所だな・・・・・・そういえば、シェル達は元気にしているだろうか。

 

 

「私は伯爵に無理やりならされて、本当の伯爵様も父上も殺され・・・・・・

 ハルツ公が攻めてくる直前に、二人とも毒を盛られて・・・・・・

 父上はセルマー伯の侍女の手で、伯爵様はルイの渡した水差しで。

 侍女は既に殺されていたようですから、

 恐らくルイと同じように毒の入った水差しを持っていっただけだと思います・・・・・・」

「そうか、辛いことを思い出させて悪かったな」

 カーラは再び俯いて涙を流し始めた・・・・・・彼女にかける気の利いた言葉が出てこない。

 

 ルイというのは、あの山賊ジョブになった盗賊落ちした未成年の男の子だったな。

 確かリオンという女性騎士の弟だったか。

 セルマー伯の侍女が殺されたというのは口封じだろうな。

 ルイが生き残ったのは、リオンに対する人質のためか、それとも殺す時間もなく、ハルツ公が攻めてきたからか。

 

 しかし、直前に毒殺されたということは作戦の発動を察知されたということか。

 やはり、ボーデ側にも内通者がいるのじゃないだろうか。

 そうでなければ、あそこまで見事にボーデに奇襲はできないと思う。

 石化したレーガンという奴を回復させれば、今回の件を尋問できるのだろうが、その権限はハルツ公が持っている。

 

 

 そして、ハルツ公はカーラを俺に押し付けた。

 意図はなんとなく分かるが、いくつかの狙いがあるのだろうな。

 俺をハルツ公の派閥に組み入れようとしている・・・・・・それは間違いなくあるはず。

 

 他には・・・・・・カーラは伯爵位の継承権を得られるぐらいだから、次期伯爵に就けたカシア様の従弟の政敵になる可能性があるよな。

 ひょっとしたら、それを排除したかったのかも。

 奴隷にして懲罰的な対応をしたものの、へたな者に任せたら・・・・・・カーラを担いで伯爵か子爵家の再興がどうこうとやられると、次期伯爵には邪魔者でしかない。

 原作でも似たようなことを言っていたような。

 ハルツ公は俺に貴族になってほしいのか、なってほしくないのかどちらなのだろうか。

 まあ、直接問い質す訳にもいかないし、本心を教えてくれる訳もないか。

 

 

 それにしても、亡くなったセルマー伯はどんな想いで死んでいったのだろう。

 譲位したのに毒殺されたことへの無念か、残された子供達への不安?

 それとも迷宮討伐が上手くいかなかったことへの後悔だろうか。

 貴族の者達がどんな教育を受けて、どのように貴族の務めを思ってるのかなんて、俺には理解できない。

 生まれも価値観も違うし、こちらに持ち込んだチートスキルや知識もあって、急速に成り上がりつつある俺が彼等の気持ちを理解するのは難しい。

 肯定も否定もできない・・・・・・ただ、そういった貴族の価値観や義務と距離を取りたいだけだ。

 

 エストグリュン家の・・・・・・カーラの亡くなった父親も同様だ。

 カーラの話では迷宮討伐は上手かったらしいが、領地経営や政治的な手腕はイマイチだったとハルツ公は言っていた。

 元の世界の常識に照らして、分業できなかったのかとか、それっぽい事はいくらでも言えるけど、それがこの世界の貴族の常識で可能だったのかなんて俺には分からない。

 貴族そのものを恐れてはいないけど、貴族の価値観に染まることは恐ろしい。

 アイリス家のジーク様やキャロルなんかを見ていると、どうしてもそう思ってしまう。

 貴族の価値観に染まると、元の世界の客観的で冷静な判断力が無くなってしまうと思うし、いざという時に逃げの一手が打てなくなるかもしれない。

 

 あまり考え過ぎるのは止めよう。

 カーラが俺の顔を覗き込んで不安な顔になっている。

 

 

 ヒアリングはこんなところか。

 

「分かった。辛いことをイロイロと思い出させてしまって悪かったな。

 話はこれで終わりにしよう。

 今日はありがとうな。

 暫くは何もする気が起きないかもしれないが、今はゆっくりと体と心を休めてくれ」

「はい、分かりました。

 あの・・・・・・私もユキムラ殿にお尋ねしたいことがあります」

 ん?()()()()殿()だって?・・・・・・なんだ、その呼び名は?

 

 

「ユキムラ殿は、いずれ迷宮を討伐して貴族に列せられると、あの場で聞きました。

 本当にそのような力をお持ちなのでしょうか?」

「・・・・・・」

 これはまた、ストレートな質問だな。

 

 どう答えたものか。

 ギルド神殿を見せるのが早いか?・・・・・・いや、それよりも根本的な部分を正さないと。

 

「迷宮討伐を達成する力があるかどうかは、自分の目で見て判断してくれ。

 剣に自信があるのなら、他人の言葉よりも自分で見て確認すべきだと思う。

 だが、俺は貴族になることを目指してはいない。

 それだけは、間違えないでほしい」

「なっ・・・・・・それでは、約束が違う!ユキムラ殿は私を騙したのか?」

 うーん、でも俺は貴族になるつもりだと誰の前でも言った覚えはない。

 

 だが、ハルツ公の言葉を否定しなかったのだから、肯定したことになっているのか。

 Noと言える日本人ではなかったから、こちらに来てからも、それを引き摺ってしまった。

 何よりも、彼女は『エストグリュン家の再興』を条件につけて奴隷になると宣言していた。

 客観的に見て、俺の対応が彼女に対して不誠実だったことになるか。

 

「そんな・・・・・・どうして、こんな事ばかり・・・・・・」

 

 彼女は俯いて泣き出してしまった・・・・・・今は何を言っても言い訳にしか聞こえないだろう。

 この話し合いをする前よりも、彼女の俺への信用は間違いなく低下してしまった。

 俺の言動が招いたことだから、自業自得なのだが。

 

 

「旦那様、後の事は私とヘルミーネにお任せ下さい。

 ハルツ公の所に行かなければならないのではないですか?」

「そうだな。申し訳ないが、後の事を頼む」

 今は俺が何を言っても逆効果だ。

 

 情けないが、二人に任せよう。

 

 後ろ髪を引かれる思いだが、食堂を去って二階に上がった。

 自室に戻り、ボーデの城に行く準備をする。

 

 と言っても、準備するものは大してない。

 セ二号作戦関連でまとめた資料を少し読み返して、リュックの中にいれた。

 

 一階に降りて、ボーデに向かうために玄関へと向かう。

 

・・・・・・

 

 城の詰所で用件を伝えると、そのまま騎士団員が俺を連れて、執務室へと向かい始めた。

 昨晩、この城で暴れまわったのかと思うと不思議な気分だ。

 一緒に戦ったせいか、顔見知りも増えた。

 

 さきほどもクリストフとすれ違って、会釈を交わした。

 だが、彼はかなり疲れている様子だ。

 昨晩、かなり死者と怪我人が出たのだよな。

 やるべきことも、悩み事もきっと多いのだろう。

 

 そして、俺はこの城でそれが一番多いと思われる人物の所に向かっている。

 騎士団員がノックして来客を伝えたが、中から反応がない。

 それでも構わず彼はドアを開けて、俺を案内してくれた。

 

 入った部屋の中では、ハルツ公とゴスラー騎士団長が突っ伏していた。

 

「閣下、タケダ殿がいらっしゃいました」

「おー、タケダ殿か。すまんな、昨晩から結局徹夜でな」

 書類が頬に張り付いているが、こんな時にもエルフはイケメンで困る。

 

 イケメンは死ね!・・・・・・というか、死にそうなイケメンだ。

 

「お疲れのようで」

「・・・・・・」

 会話が一往復しただけで、眠りに落ちそうになっている。

 

 こりゃダメだな。

 

 右横を見るとゴスラー騎士団長も舟をこいでいる。

 こちらもダメだ。

 

「忙しいのであれば、後日また来ましょうか?」

「いや、大丈夫だ。彼女の様子はどうだ?」

「まあ、元気はないですが、体調が悪い訳ではないので、今暫くそっとしておくのが良いかと」

 時間が経過しても、俺が態度を改めない限りは彼女の信用は得られないだろうな。

 

 とはいえ、貴族を目標にしないことを改める気はない。

 あくまで、貴族になるとしたら、手段としてだ・・・・・・その方針がぶれることはない。

 

 

 一方でハルツ公は揺れている。

 一度ちゃんと寝てから作業した方が効率的なのではなかろうか。

 

「閣下・・・・・・」

「おお、大丈夫だ。して、これが今回の其方の成果だ・・・・・・」

 左手に持った紙を俺に差し出してきた。

 

 

 手渡された書類を見ると、なんだこれ?

 

・・・・・・

(セ二号作戦被害状況)

■ボーデ側

 騎士団員:死者6名。重傷者10名(3名治療済、3名療養中、4名退役予定)、行方不明2名

 城奉公人:死者13名。重傷者4名(3名療養中、1名退職予定)

 城の破損は軽微(修理作業依頼中)

 

■セルマー伯領側

 伯爵(死亡)

 騎士団員:死者5名。重傷者4名(3名療養中、1名退役予定)

 城奉公人:死者9名。重傷者6名(5名療養中、1名退職予定)

 城の破損状況(火災発生二箇所、その他は調査中)

 

■エストグリュン家側

 子爵(死亡)

 捕虜5名(4名拘留中で1名は山賊。1名はタケダ殿へ譲渡済)

 

(参考)賊軍(正体不明)

 死者36名(うち22名はタケダ家で討伐)

 捕虜2名(タケダ家で捕縛(石化状態))

 

・・・・・・

 

 これは成果ではなくて、被害状況なのでは?

 重傷者の治療済というのは、エリクサーでも投与したということなのだろうか。

 だとすると、騎士団員を優先したということか?

 退役やら退職やらの人間がそれなりにいるな。

 死者と合計すると、結構な戦力ダウンになっているのが分かる。

 非戦闘員の方が被害が大きかったのだな。

 

 ボーデの城の騎士団員や奉公人の死者、重傷者がなんでこんなに多いんだ?

 行方不明2名ってのはなんだ?

 ひょっとして、この2名が内通者じゃないだろうな?

 それにセルマー伯側も結構、被害が多いな。

 

 そういえば、攻め込んだ時に既に死んでいた者がいたと報告されていたような。

 いったい何がどうなっているのやら。

 元バラダム家の魔法使いの奴隷は賊軍扱いにされているのだろうか。

 死んだと報告があったけど。

 

 エストグリュン家は子爵家らしいけど、また別の者を据えるのかな。

 あえて言えばポストができたから、これが褒美として与えられる者もいるのだろうか。

 人手不足で、それどころじゃない可能性もあるが。

 

 

「閣下、この紙に記載されているのは成果ではなく被害状況なのでは?」

「おっ?おおぉ・・・・・・すまない。渡したかったのはこちらの方だ」

 改めて別の紙を差し出してきた。

 

 大丈夫か?・・・・・・朦朧としているのかもしれないけど、結構重要な情報じゃなかったのか。

 部外者に見せてはいけない情報な気がするぞ。

 

・・・・・・

 

(セ二号作戦の戦果報酬:タケダ家)

 

■冒険者輸送/要人警護(計算中)

 

■捕縛3名

 騎士1名、ジョブ不明2名(石化状態)

 

■討伐関連(計算中)

 回収したインテリジェンスカード:22枚

 獣戦士3名、冒険者2名、探索者1名、騎士2名、僧侶1名、神官3名、暗殺者1名、剣士1名

 凶賊2名、海賊6名(懸賞金:78万6000ナール)

 

■取得装備品

(スキル融合装備品)

 激情のエストック、硬直のエストック、催眠のエストック、頑強の竜革鎧、防毒の竜革グローブ

 防毒の硬革グローブ、駿馬の硬革靴、盗賊のバンダナ

 

(装備品)

 ダマスカス鋼の剣2、エストック2、・・・・・・

 竜革の鎧2、硬革の鎧5、鉄の鎧3、・・・・・・

 ダマスカス鋼の額金2、硬革の帽子5、・・・・・・

 竜革のグローブ2、硬革のグローブ6、・・・・・・

 竜革の靴2、硬革の靴8、革の靴7、・・・・・・

 

■その他

(押収したアイテム)

 自爆玉3

 滋養丸28、強壮丸5、滋養剤11、強壮剤2、滋養錠2、強壮錠1、毒消し丸5、万能丸6

 

(押収した所持金)

 24万8000ナール

 

・・・・・・

 

 懸賞金はこんなものか。

 ドブローで30人ぐらい斬り捨てた時は白金貨ぐらいにはなっていたっけ。

 今回の方が人数が少ない割には、それなりの金額のようだな。

 やっぱりレベルが高かったから、懸賞金もそれなりにかかっていたのかも。

 

 改めて俺達が討ち取った敵のジョブを見ると、盗賊系ジョブの者が多いな。

 迷宮探索を生業にしている者達というよりは、対人戦に強そうなパーティーに盗賊集団を混ぜた感じなのだろうか。

 

 『計算中』って記載があるのは、これからまた何か変わるのかね。金額換算するのかも。

 

 今回、戦う前に鑑定で確認した時も、スキル融合装備品を身に着けていた者は少なかった。

 

 通常の装備品の方も、やっぱりショボいな。

 鑑定で確認した時も、ジョブのレベルが高い割には貧弱な装備だなって気がしていた。

 タケダ家の豪華な装備品に慣れ過ぎているせいなのかもしれないけど。

 身代わりのミサンガを着けていた者もいたはずだけど、俺が討伐の際に滅多切りにしたせいで切れてしまったからな。

 

 武器は剣ばかりで槍持ちは見かけなかった気がする。

 まあ、城の中の狭い通路で戦うのに槍は不向きだからな。

 オリビアは器用だから槍を持たせたままだったし、アミルは遠間から突かせたかったから、そのままにしておいたけど。

 

 アイテムや所持金というのは、懐に入れていた物を回収したのかな。

 自爆玉持っていた奴がいたのか。

 使われる前に仕留められて助かったな。

 

 それで、これを俺達がそのまんま貰えるということなのだろうか。

 折半すると事前に委任状というか契約書を作成していた気もするが。

 

 

 ハルツ公を見ると、またもや意識を失っている。

 

「閣下、途中経過かもしれませんが、共有していただき、ありがとうございます」

「あ、ああっ・・・・・・タケダ殿、なんじゃったかな?」

 もう、本当に寝た方が良いと思うぞ。

 

「そうじゃ、懸賞金じゃ。

 懸賞金はギルド神殿で直ぐに支払うことができるので、本日、持って帰ってくれ。

 おい、ゴスラー、準備の方を・・・・・・」

「えっ、あっ、なんでしたっけ?

 あっ、これはタケダ殿、いつの間に・・・・・・昨日はありがとうございました。

 あれっ、昨日でしたっけ?」

 今、ようやくゴスラー騎士団長は起きたようだ。

 

 寝ぼけてる時に感謝されても、全然嬉しくないな。

 

「ゴスラー、タケダ殿に懸賞金を渡すのじゃ」

「ああ、そうでした。えーと、ギルド神殿はどこに・・・・・・」

 偉い人の醜態に、見かねた騎士団員が割って入った。

 

 フラフラの二人に代わって、ギルド神殿を操作して、懸賞金を取り出してくれた。

 俺の所に来て、懸賞金の入った袋を提示する。

 

「タケダ様、懸賞金が入っておりますので、ご確認をお願いします」

「えーと、凶賊やら盗賊の懸賞金ですよね?

 討伐した者達の懸賞金をそのまま、受け取っても構わないのでしょうか?」

「はい。懸賞金は討伐した者が受け取るのが我が国のルールですから」

 折半せずに、そのまま貰えるのなら有難くもらっておこう。

 

 テーブルの上に金貨と銀貨を出して、数え上げる。

 こればかりは相変わらず面倒な作業だ。

 

 金貨78枚と銀貨60を確認できた。

 問題ないが、とっても重たいのでアイテムボックスに仕舞うことにした。

 これだけでも悪くない収入だ。

 命懸けの対価と思うと微妙な金額だが。

 

 ハルツ公とゴスラー騎士団長の方に視線を向けると、二人とも生ける屍と化している。

 

「えーと、この後はどうしたら?」

「はっ!・・・・・・いや、タケダ殿、今回の支援、感謝いたす。

 まだ計算が途中故、今回は懸賞金だけでも持ち帰ってほしいのじゃ。

 おい、ゴスラー、懸賞金の準備を・・・・・・」

 大丈夫か?何度も同じ所をループしているぞ。

 

「閣下、既に懸賞金はいただきました」

「そ、そうじゃったか?

 では、計算が終わったら改めて分配する故、その時はタケダ殿に伝言をさせていただく。

 何度も足を運ばせて悪いが、また来てくれ」

「承知しました」

 黙っていれば、もう一度もらえたか?・・・・・・正気の騎士団員がいるから無理か。

 

 

「では、邪魔になりますので、私はこれでお暇させていただきます」

「そうか、今回の助力、感謝いたす」

 感謝もループしているのじゃないか?

 

 

 意識の切れかかってる二人に挨拶をし、騎士団員にエスコートされて城の出口へと向かった。

 さすがに昨日の今日だから、城の中もそれなりに警備が厳しいようだ。

 

 それにしても、誤って提示された情報を見る限りはセ二号作戦での損害は深刻のようだな。

 あれを元の状態に戻すまでには、数年どころから十年単位の時間が必要なのではなかろうか。

 死んだ者は生き返らないし、重傷者、退役者もいるが、人の育成なんて簡単にできない。

 

 ハルツ公、新セルマー伯、陰謀を企てた者、セ二号作戦の勝者は果たして誰なのだろうな。

 

 城を出て、適当な木陰から自宅にワープで戻ることにした。




お読みいただき、ありがとうございました。
話の切れ目が作りにくく、長くなってしまい申し訳ありませんでした。
原作のエルフヒロインの名前が出てくるのは、本話で最後の予定です(多分)。

次回投稿日は2026/5/20(水)の予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

異世界迷宮と斉奏を(作者:或香)(原作:異世界迷宮で奴隷ハーレムを)

突然目の前に現れたのは、読んでいた小説と同じ文面だった。▼冗談でも行けるものなら、記憶を頼りに "彼" のいた世界と近い場所へと向かいたい。▼気がつくと自分がいたのは、小説とは似ているようでどこか違う、聞き覚えのない場所。▼───違っていたのは風景だけでなく、自分自身もだった。▼--- ▼本小説は原作「異世界迷宮で奴隷ハーレムを」様、「異…


総合評価:3116/評価:8.57/連載:187話/更新日時:2026年05月18日(月) 12:00 小説情報

異世界迷宮へ行ったなら(作者:三星織苑)(原作:異世界迷宮でハーレムを)

十数年あこがれ続けた世界への入り口を見つけてしまった。▼死ぬ可能性がある?▼そうだろうな。▼現代文明の恩恵を受けられず不便な生活を強いられる?▼そうだろうとも。▼食文化が発展していなくて好物は二度と食えないだろう?▼そりゃそうだ。▼でも、そこには彼女がいるかもしれない。▼それだけでも行く価値がある!


総合評価:11222/評価:8.95/連載:298話/更新日時:2026年05月16日(土) 20:00 小説情報

異世界迷宮でロマンスを【完】(作者:ノイラーテム)(原作:異世界迷宮でハーレムを)

 本作品は『異世界迷宮で奴隷ハーレムを』と『異世界迷宮でハーレムを』を元にした二次作品です。何か問題が生じた場合は消去いたしますね。▼


総合評価:1016/評価:7.27/完結:101話/更新日時:2026年04月01日(水) 21:21 小説情報

勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム(作者:Lilyala)(原作:異世界迷宮で奴隷ハーレムを)

両親の仲は良好。親友と呼べる人間もいる。▼金銭面で困った事は無いし、社会的地位もある。▼そんな男の異世界迷宮奴隷ハーレム暮らし。▼◇注意◇▼この作品は小説家になろうで更新停止中の▼『異世界迷宮で奴隷ハーレムを』▼書籍化作品の▼『異世界迷宮でハーレムを』▼漫画版の▼『異世界迷宮でハーレムを』▼の三作品をチャンポンしている作品となっています。▼なろう版の『異世界…


総合評価:5339/評価:8.57/完結:126話/更新日時:2025年06月27日(金) 06:00 小説情報

Re:異世界迷宮で奴隷ハーレムを(作者:載せられた人)(原作:異世界迷宮で奴隷ハーレムを)

これは“ミチオ・カガ”が取り戻す物語


総合評価:3178/評価:8.51/連載:51話/更新日時:2024年02月18日(日) 09:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>