カーラとの激闘に辛勝したが、エネドラの剣幕に震え慄き、汗を拭って急いで食卓へ。
エネドラやチクルス、その他朝食を用意してくれた者達の顔色を窺いながら静かに食事を摂る。
回りを見渡すと、昨晩よりも人数が少ない。
いないのは、ラファ達か・・・・・・ラファ、ヘルミーネ、フラウスの三人。
他にも元エストグリュン家の五人組もいないようだ。
さきほどの修練場でのゴタゴタが影響しているのだろうか。
「旦那様、ラファさん達やカーラさん達は自室で食べるそうです」
「そうなのか」
俺が何を考えているかなんて、エネドラには丸分かりのようだ。
ラファは大丈夫だろうか。
今まで、かなり頑張っていたから、カーラのことはショックだったろうな。
少し立ち止まって、足下を確認する時期が来たのかも。
タケダ家は実力重視だから、ラファだけを依怙贔屓はできない。
優遇するのではなく、ラファを元気付けるための何かを考えるか。
カーラは朝練でちょっとイケイケ過ぎだったから、クールダウンになるかもしれない。
しっかり者のシーナとお目付け役っぽいリオンに任せておけば、大丈夫だろうか。
シーナの性格はなんとなく分かったが、リオンの方はまだ分からないんだよなぁ。
槍の扱いが非常に上手いから、ヘルミーネと重なって見えるのだけど、カーラのストッパー役を果たしてもらえるのかどうか。
それにしても、カーラは6歳の頃から眼帯をしていたとか言ってたよな。
筋金入りの剣バカかもしれない。
貴族だから迷宮討伐は当然目指していただろうが、努力家というかネジが飛んでいるというか。
今朝の『全員倒す』宣言ではないが、実力で周りを黙らせていたのかも。
カーラ以外の者達も、実力はそこそこありそうだったな。
頼もしい反面、同じ方向に暴走し始めたら、とっても危険な気がする。
ノエルとルイの男の子二人はエストグリュン家の女性陣と比べれば、かなり大人しく感じる。
あの二人では、カーラを止めるのは難しいだろう。
そういえば年下の男の子が加入したが、オリビアのセンサーには引っ掛からないのだろうか。
今のところは、なんの興味も示していないようだが。
オリビアの好みの傾向もイマイチ分からないんだよなぁ。
食事を終えて、二階に上がり迷宮探索の準備へ。
・・・・・・
迷宮組五人で玄関に集合。
今日の行先はボーデだ。
ハルツ公から依頼された迷宮討伐を当面は優先するから。
まずは、ボーデの冒険者ギルドに移動。
職員に話を聞かなければ。
早朝とはとても言えない時間なので、ギルドの受付はそれほど混んではいない。
さして時間もかからずに、俺達の順番が回ってきた。
まずは、リュックからハルツ公のエンブレムを取り出して職員に提示。
「見ての通り、公爵様からボーデに出現した迷宮探索を依頼されてな。
このエンブレムを見せれば、迷宮まで連れていってもらえると聞いたのだが」
「はい。問題ありません。
今から担当の冒険者を紹介しますので、私に付いてきてもらえますか?」
ギルド職員の女性がカウンターから出てきたので後に続く。
連れられていった先のテーブルの一角に、冒険者らしき男が座っていた。
「ハルン、ボーデの迷宮までお願い。費用はギルド持ちよ」
「ああ、分かった。そこの五人だな?俺をパーティーに入れてもらえるか?」
ハルンという男を紹介すると、彼女は早々にカウンターへと戻っていった。
パーティー編成の詠唱をして、ハルンがパーティーに加わる。
「じゃあ、案内するから付いてきてくれ。もっとも、ゲートを繋げるだけだがな。
繋いだ先には、騎士団員がいるはずだから、詳しくはそちらから聞いてくれ」
「なるほど。分かった」
移動用の絨毯がかかった場所まで歩く間に、この後の段取りを説明してくれた。
ハルンがフィールドウォークの詠唱をして、絨毯に移動用のゲートを開く。
「俺は向こうには行かないから」
「ああ、分かった。ありがとう」
彼に礼を言って、五人でゲートをくぐった。
少し先に迷宮の入口が見えた。本当に近くだな。
確かに、これなら案内は不要だ。
入口の傍に騎士団員っぽい者が立っているようだが、一人しかいない。
ハルツ公が人手不足と言っていたのは本当のようだな。
ハルンをパーティーから外して、騎士団員のいる所まで歩いていく。
あれっ、この男は・・・・・・。
「また、会いましたね」
「ああ、元気そうだな?」
ターレ迷宮の入口にいた兄ちゃんじゃないか。
ボーデの城が襲撃された時の犠牲者ではなかったのだな。
騎士団員の死亡人数のメモを見たけど、誰が死んだとか重傷を負ったのかの情報は記載されてなかったので、秘かに心配していたのだ。
兄ちゃん、あんまり強くなさそうだったから。
「ここを一人で面倒をみているのか?」
「そうですね。ハルバーの方にみんな行っちゃいましたから」
ってことは、ハルバーの迷宮は討伐されていないということか。
原作通りなら、もうとっくに討伐されているはずだ。
セ二号作戦の影響なのか、他の原因なのかは分からないが、進捗がかなり悪いってことだな。
「今度はいきなり『迷宮討伐したよ』って報告しないで下さいね。
途中経過もちゃんと報告してもらわないと、心の準備ができないので」
「?・・・・・・善処しよう」
正直なところ、何故、心の準備が必要なのかは理解できない。
でも、これから暫くは顔を合わせるので、友好的な態度で臨もう。
「38階層から48階層のモンスターの出現情報を教えてもらえるだろうか?」
「えーと、ちょっと待って下さいね」
兄ちゃんは、懐に入れたメモかなんかを取り出した。
「えーと、48階層がロールトロールで、その下がラフシュラブで、・・・・・・」
「ふむふむ・・・・・・」
俺とアミルで彼が読み上げるモンスター情報をメモしていく。
この世界は原作のいせはれとは異なり、連続する11階層分の出現モンスターが分かれば、あとはその規則性通りに出てくる。
兄ちゃんから情報を入手できれば、今後の攻略の道筋がつくはず。
「分かった。ありがとう」
「先ほど言った件、よろしくお願いしますよ。
階層突破の報酬だってちゃんと出るのですからね」
「分かった、分かったから。じゃあ、48階層への案内を頼めるか?
こちらのパーティーに入ってくれ」
「相変わらず、五人で探索をしているのですね・・・・・・」
そのうち六人になるかもしれないけどな。
パーティー編成の詠唱をして、兄ちゃんがパーティーに入り、48階層へ案内してくれた。
「それでは、気を付けて下さいね」
「ああ、ありがとう」
彼はゲートをくぐり、迷宮の入口へと戻っていった。
まさか、またここで会うことになるとはね。
まずは、小部屋でブリーフィングから。
手元のメモを見ながら、説明する内容を頭でまとめる。
「先ほどの情報からすると、
迷宮が50階層までなら、迷宮ボスはノドグロで、51階層までならレイジマーメイドだな。
50階層のボス部屋が見えてきたら、またクーラタル迷宮で練習するぞ」
「主、今度は前回戦っていないメンバーでボスと戦わせてくれ」
珍しく遠回しに言ってるけど、それはヴィルマとイレーネということだよな?
俺とオリビアは既に迷宮ボス戦で戦ったし、アミルはボスとの戦闘に立候補しないから。
「まあ、その時が近づいたら考えようか。
だけど、クーラタルでの練習結果がイマイチだったら選ばれないぞ」
「大丈夫だ。それまでには万全の状態にするから」
ヴィルマだけでなく、イレーネもコクコク頷いている。
やる気があるのは良いことだな。
ノドグロでもレイジマーメイドでも水生系のモンスターか。
まあ、なんとかなるだろう。
「ボス戦はまだ先だな。まずは48階層の攻略からだ。
48階層はロールトロール、ラフシュラブ、パットバット、オイスターシェルの順に多い。
敵モンスターの移動速度がマチマチだから各個撃破がやり易いぞ。
既に戦った相手ばかりだから、いつも通りの陣形と魔法で戦う。
皆、油断しないようにな」
「了解!」
「了解!」
「了解!」
「了解」
小部屋を出て、48階層の探索を開始した。
:
:
:
クーラタルの63階層で戦っている俺達が、48階層のモンスターに後れを取ることはない。
地図がないとはいえ、探索は順調に進み、索敵でクリアしたエリアがどんどん増えていく。
とはいえ、午前中の探索は少し早めに切り上げて、昼食のために戻ることにした。
朝食は遅刻したから、エネドラ達の心証に配慮したのだ。
・・・・・・
着替えて一階に降りて食堂に行き、席に着いたが朝よりも人数が少ないな。
相変わらずラファ達やカーラ達は自室で食事を摂るようで、レイモンド達のパーティーも帰宅が遅れているようだ。
こちらも待つ訳にはいかないので、エネドラと雑談をしながら、美味しい昼食をいただいた。
彼女の機嫌がマシになったので、ちょっとホッとしたよ。
二階に上がる前に、レドリックを捕まえてラファ達のことを確認。
「ラファは今日は迷宮に行かないのかな?」
「いえ、午後からクーラタルの36階層に行くと聞いてます。
ヘルミーネも一緒だから、きっと大丈夫でしょう。
朝練で、カーラさんに負けたからショックだったのでしょう。
周りの皆と顔を合わせるのを避けて、自室で食事を摂ってますけど、
そのうち立ち直るのじゃないですか?
迷宮でモンスターと戦ってれば、余計な事を考えなくて済みますし」
そんなものか・・・・・・気を紛らわすために迷宮に行くというのも、なんだかと思うが。
命がかかってるのだから、真剣勝負だし、そうやって体を動かしているうちに雑念が抜けていく感じなのだろうか。
それにしても、レドリックはカーラが迷宮組に入ると決まった途端、『さん』付けで呼ぶようになったな。
迷宮組は一目置かれてはいるからなのかね。
「分かった。ありがとう。
俺の方も注意するけど、レドリックの方も、それとなくラファのことを気にかけてみてくれ」
「はい。承知しました」
過保護とも思うが、まだ14歳の女の子だからなぁ。周りの助けが必要な年齢だ。
レドリックと別れて、二階の自室へ戻ることにした。
ドアを開けて、自室に入ると・・・・・・そこにはカーラが土下座をしていた。
カーラだけでなく、シーナの姿もある。何故、二人が俺の部屋に?
シーナがカーラに何か言い含めたに違いない。
「こ、これは?」
「はい。姉上もちゃんとお話ししたら、分かってくれました」
シーナの笑顔が黒く感じる。
O・HA・NA・SHIしたのだろうか?
何を話したのか、とっても気になる。
「ユキムラ殿の剣技を見て、目が覚めました」
「そ、そうか」
確かにカーラは俺のオーバーホエルミングを目で追っていた。
あの動きを目で追うのは大変だと思うが、彼女にはできるのだよな。
目が覚めたというか、眼帯を外しただけのような気もするが。
「はい。これからは心を入れ替え、ユキムラ殿の指示に忠実に従います。
魔法使いのジョブにも一生懸命取り組みます。よろしくお願いいたしします」
「そうか、魔法使いも頑張ってくれるのだな」
目は特に死んではいないようだ。
シーナの指示無しでは動かなくなってしまっても困るからな。
「それでは、よろしく頼むな。本当に大丈夫か?」
「はい、我が剣に誓って魔法使いを誠心誠意務めさせていただきます」
魔法使いなのに、剣に誓うのか?
「そうか、今日のところは修練場で訓練をして体調を整えてくれ」
「ユキムラ殿、直ぐに迷宮に行っても大丈夫だと思うのだが・・・・・・」
「『大丈夫だと思うのだが』じゃありません!」
「か、かしこまりました、ユキムラ殿」
本当に何を言ったのだろうか?
『指示に従わないと、迷宮に連れていかない』とか?(子供か!)
それとも、『村人ジョブに戻しますよ!』とかだろうか?(二刀流禁止!)
カーラなら村人ジョブでも、ひょいひょい攻撃を回避しそうだけど、攻撃時にスキルが使えないと困るか。
カーラは俯き加減で、退室していった。
「シーナ、カーラには何を言ったのだ?」
「いえ特には。姉上の立場を理解してもらっただけです」
立場か・・・・・・何か飴と鞭になる話をしたのだろうな。
これ以上は追及しないでおこう。
まあ、明日か明後日からの迷宮探索で頑張ってくれればいいや。
「ユキムラ様、今後ともエストグリュン家の者達にご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
「あ、ああ・・・・・・こちらこそよろしく頼む」
シーナは深々と頭を下げると、退室していった。
ハルツ公には『反旗を翻したら処断する』と言ったのだから、やるしかない。
思っていた展開とは違うけど。
ボーデの迷宮探索を続けながら、カーラ、シーナ、リオンの三人とコミュニケーションを取るようにするか。
だが、今は午後からのボーデの迷宮探索に集中しよう。
急いで準備を整え、一階の玄関へと向かった。
玄関に行くと既に四人が待ち受けていた。
遅れたことを詫びて、ボーデの迷宮へと移動。
午後の探索を再開した。
午前と同様に順調に探索は進む。
途中で変化をつけるため、1時間ほどクーラタルの63階層のボス部屋の周回を行なった。
威霊仙の予備をゲットするためだ。
威霊仙が2個ドロップしたところで、ボーデの迷宮へ移動して探索を再開。
そのまま探索を続けたが、中間部屋までには辿り着けずに切り上げることにした。
・・・・・・
翌日もボーデ迷宮の48階層の探索を続行。
そして、ここからカーラが参加することになった。
アミルが頑張って装備品を準備したのと、朝練で迷宮組メンバーと連携の確認をしたからだ。
連携の確認というよりは、イレーネ、ヴィルマ、オリビアとひたすら模擬戦をやっていただけの気もするけど。
入口の兄ちゃんには『久しぶりに6人パーティーですね?』と指摘され、護衛部隊のメンバーとターレに6人で行ったことを思い出した。
確かにハルツ公の領内の迷宮では、6人パーティーは久しぶりかもしれない。
まずは剣匠のカーラを前衛に入れてみて、動きのチェックをしたのだが・・・・・・48階層のモンスターの攻撃をものともせずに避けまくる。
避けるだけではなく、二本の硬直のエストックでビシバシ攻撃を当てるから、状態異常にするのが非常に早い。
それにしても、アミルも一応は中距離レンジの近接戦闘役だから、ある意味6名全員が近接攻撃役だ・・・・・・非常にバランスが悪いというか。
カーラを魔法使いのジョブにして、パワーレベリングを始めたら変わるのだろうか?
魔法を放ちながら、前衛に出ていく姿が思い浮かんでしまう。
我が家の魔法使いって、防具は前衛の軽戦士とあまり変わらないからな。
持っている武器が魔法使い用なのかどうかという部分しか違いがない。
2、3日前まで
俺のジョブは48階層ではレベルキャップに引っ掛かって成長しないので、剣聖の代わりに魔道士を入れている。
百鬼夜行Lv93、鬼神Lv93、勇者Lv93、英雄Lv93、遊び人Lv93、魔道士Lv93、忍者Lv93の構成。
百鬼夜行にも、鬼神にもパーティー編成のスキルがあるから、こういう時は編成が楽チンだ。
アミルが斎王をやってくれているので、治癒系のジョブを入れなくても済む。
もっとも皆、被弾はほとんどしないのだけど。
だが、カーラは俺のセブンスジョブや他の高レベル者のジョブの恩恵を受けて、『今までに経験したことのない体のキレだ!』と大喜びしていた。
テンションが高過ぎて、クールダウンさせるのが大変だったぞ。
もはや俺が前衛に出ることは全くなく、他の四人で前衛をローテーションしながら、順調に探索が進んでいく。
レベルキャップに引っ掛かっているから、俺が積極的に倒しても獲得経験値系ボーナススキルの恩恵を受けないし。
:
:
:
昼食をはさみ、48階層の探索を続行。
中間部屋を通過して、魔物部屋らしきものを発見したが入口は特に確認することもせずスルーすることに。
今更、48階層の魔物部屋に用はない。
ボス部屋発見が優先だ。
もっとも、その日のうちにボス部屋の位置は特定できず、探索を切り上げることになった。
・・・・・・
迷宮から戻ると、ハルツ公からの呼び出しの伝言があったそうだ。
最近、このパターンが多いな。
急ぎらしいので、明日の朝一で訪問するとエネドラには伝えた。
夕食、風呂を終えて会議を開催。
メンバーは変わっていない。
元エストグリュン家のメンバーが誰も出てきてないが、レドリック、ヘルミーネと調整しているらしい。
レドリックから迷宮の探索状況の説明があり、あの後、ラファも特に問題なく迷宮探索をこなしていると補足があった。
新しく加入したエストグリュン家の4名の方は訓練では全く問題なく、護衛部隊にいつ組み込むかといったタイミングの問題らしい。
装備品の準備もあるし、連携の確認もあるから2、3日後から徐々にクーラタルの適当な階層に入れてみたいとのこと。
6名は揃えられないので、5名で12階層から22階層あたりを探索対象の候補にするようだ。
カーラを除いたエストグリュン家の4名に、今の護衛部隊の1名を追加する感じでローテーションを組むらしい。
焦ることはないので、安全第一で考えてほしいと要望を出しておいた。
その後は、定例の報告が淡々と進み、会議は終了。
皆にお休みの挨拶をして、各自、自室に戻った。
・・・・・・
自室のドアを開けると・・・・・・なんだか、ベッドの布団が盛り上がっているような・・・・・・。
(索敵)
自室や隣の書斎をマップで見ると、いくつか青い点が見える。
なんだこれは?
まずは、ベッドの布団をめくると・・・・・・そこにはカーラの姿が。
「お前、こんなところで何をやっているんだ?」
「い、いや、その・・・・・・ユキムラ殿が寒いかもしれないと思って、温めておこうかと」
「はあ?」
お前は豊臣秀吉か?
それに、もうそんな時期じゃないぞ。
元の世界なら、4月下旬だ。
ドアの外を指差すと、彼女は脱兎のごとく逃げていった。
かなりダブダブの全身を覆うような服装だったが、あれで温めるのに最適だったのだろうか。
次に反応があった青い点は・・・・・・隣の書斎か。
書斎に続くドアを開けると・・・・・・リオンが・・・・・・こちらは薄着で煽情的な姿で佇んでいる。
顔見ると、真っ赤だ・・・・・・恥ずかしいなら止めておけばいいのに。
「何をやっているんだ?」
「いえ・・・・・・この格好をするとユキムラ殿が喜ばれると、お聞きしまして」
「はあ?」
いや、確かに嬉しいけどさ・・・・・・でも、なんかおかしくない?誰の入れ知恵だ?
ドアを開けたまま、黙って出口の方を指差すと、彼女は俯いたまま去っていった。
他には・・・・・・クローゼットを開けると、そこにはルイの姿が・・・・・・もう勘弁してくれ。
「誰に言われてやってるんだ?」
「僕は・・・・・・本当は嫌だって言ったのですけど・・・・・・」
俺は男の娘には興味はないし、未成年はNGだ!
(索敵)
まだ青い点が見える。
机の下と、棚の横か・・・・・・。
「お前ら、いい加減にしろよ。俺の部屋から出ていけ!」
「・・・・・・」
机の下からノエルが、棚の横からシーナが出てきて、開けたドアから去っていく。
ノエルは顔を真っ赤にして、シーナはすまし顔だがほんのり赤い・・・・・・これはシーナの策略か?
まさか、こんなことでエストグリュン家の再興を企んでいるのじゃないだろうな。
エネドラに言って、お灸を据えてもらうか?
もう一度、索敵スキルを使ったが、自室と書斎には青い点は見当たらなかった。
一応、五人が出ていったのは目視で確認したからな。
まさか、こんなことで索敵スキルの有用性が確認できるとは思わなかったわ。
ドアを閉じて、鍵をかけた。
普段から鍵をかけておくべきか。
食事や夕食のわずかな間だから油断したな。
盗賊対策などは、拠点構築の侵入検知のスキルがあるからと高を括っていたが、内部からの犯行だと危ないかも。
無駄なことを考えていると・・・・・・なんだか、どっと疲れたぜ。
・・・・・・
ベッドに横たわって目を閉じた。
リオンの奴、年齢の割に結構、可愛かったな。
さすがはエルフ族か・・・・・・いや、そうじゃない。
あいつら、油断も隙も無いな。
今日の迷宮探索の反省会でもしよう。
カーラは・・・・・・最初だけサインプレーに少しだけ手間取っていたけど、問題なく48階層で戦えるようだな・・・・・・まあ、分かっていたけどさ。
彼女は剣聖と魔道士を育成してみるか。
回避のできる魔道士というのは、結構、面白いかもしれない。
だけど、アイツがひもろぎのスタッフを振り回している姿が想像できないな。
いや、スタッフは振り回すものではないか・・・・・・吸精のスタッフなら、ありえるのか。
うーん、どうしたものか。
(コン、コン・・・・・・)
今度はどんなドッキリを仕掛けてくるつもりだ?
索敵スキルを発動すると、ドアの外には青い点が一つ。
鍵を開けて、ドアを開くと・・・・・・そこにはカーラの姿が。
周囲をもう一度確認したが、彼女一人のようだ。
「あの、エネドラ殿が今日だって・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
「あ、あの・・・・・・」
「・・・・・・」
イニシアティブを取るために、無言でお姫様抱っこでベッドへと運ぶ。
「えっと、どうしたらいいのか・・・・・・」
「いいから、そこに俯せで寝てくれ」
彼女は観念したのか、ベッドの上で俯せになった。
「じっとしてろよ・・・・・・」
「は、はい・・・・・・」
緊張させ過ぎたか・・・・・・まずはマッサージでリラックスさせよう。
それにしても、ゆったりとした服を着ているな。
マタニティードレスとまでは言わないが・・・・・・こういう服装が好みなのだろうか。
どうせ後で脱がせるから構わないのだけど。
いまは、その服の上から首、肩、背中と丁寧に揉み解していく。
ゆったりした服のせいで、ちょっとやりにくいけど、いきなり脱がせる訳にもいかないしな。
「ユ、ユキムラ殿、一体何を・・・・・・?」
「ここに来る者達全員にやっていることだから、気にしなくて大丈夫だ。
俺に触られるのは嫌か?」
「いや、そういう訳ではないのだが、なんだか当主の者にこんな事をさせるのが申し訳なくて」
堅い、堅いなぁ。真面目なのだろうな。
「初めて会った時、・・・・・・
俺の奴隷になった時にエストグリュン家の再興を誤解させるようなことを言って悪かったな」
「いや、もう終わったことだ。
それに今はシーナ達四人を引き取ってもらったことに感謝している。
ユキムラ殿が気にすることは、もう何もない」
このやり取りも既に何回目だろうか。
ことあるごとに謝っている。
当主として、それはどうかとも思うのだが、この娘はそれでマウントを取りにきたりはしない。
真っすぐな性格だから、こちらも誠実に対応するべきだろう。
腰を揉みながら、ふくらはぎの方へ移行する。
彼女は体がとっても柔らかい。
修練場での訓練も見たが、始まる前と終わった後にしっかりと体を解している。
疲労が抜けやすく、怪我しにくい体づくりをしているのかもしれない。
「エストグリュン家の再興を今でも考えているのか?」
「ユキムラ殿が貴族を目指していないことは承知している。
でも、ヘルミーネ殿の話では、手段として考えるのは問題ないとも。
私はエストグリュン家の再興を手段として目指したいと思う」
ん?ん?ん?・・・・・・それは典型的な手段と目的を混同しているという事じゃないか?
「私には難しいことは分からないので、考えることはシーナとリオンに任せるつもりだ。
私は剣を振るうことに専念しようと思う」
「魔法使いも忘れないでくれよ」
「・・・・・・」
おーい、返事はないのか?
それにしても、リオンはともかくシーナに任せると、先程のような奇襲を仕掛けてくるのではないだろうか。
マッサージは終わったかな。
カーラの緊張は少し解けた気もする。
彼女は体を少し揺すりながら、俯せから仰向けに向き直った。
「ユキムラ殿に身も心も捧げると申した言葉に偽りはないつもりだ」
「そうか・・・・・・」
なかなか心に刺さる言葉を投げかけてくるじゃないか。
多い被さるように顔を寄せ、彼女の唇を啄むように塞ぐ。
「私は偽装結婚をさせられそうになったが、純潔は守った。だから・・・・・・」
「分かったから泣くな」
彼女の眼には涙が溢れていた。
セルマー伯の城であったことを思い出したのかもしれない。
具体的なことは何も俺は知らない。
彼女の主君である伯爵が死んだこと。
父親もほぼ同時に毒殺されたこと。
どれも、つい最近起きた悲惨な出来事。
彼女の両頬に流れる涙を拭いてやる。
「お前は俺のものだということだな?」
「そうだ。ユキムラ殿のものだ、だから・・・・・・」
彼女の口を再び塞ぐ。
「大切にしよう」
「頼む。私はよく分からないから・・・・・・」
何が分からないのか、よく分からないが。
彼女の服を脱がせにかかると、両手で防ぐように彼女が慌てだした。
そして、ガバッと布団を被ってしまった。
「恥ずかしいから・・・・・・」
「そんなに恥ずかしがらなくても」
と言っても経験がないと無理なのか。
「私は汗臭い女だから」
「それはどうかな?・・・・・・では確認しようか」
彼女の羽織った布団の中に潜り込み、彼女の前に顔を出した。
「全然、汗臭くなんかないぞ。むしろ良い香りだ」
「そんなこと・・・・・・ない」
羞恥で赤く染まる彼女の顔を見下ろしながら、彼女の着衣を脱がしにかかる。
「あ、灯りを消して・・・・・・」
「?・・・・・・」
彼女は右手を少し布団の中から出したが、照明のスイッチまで手を伸ばそうとはしない。
あれっ、拠点構築の照明の使い方を教えていなかったっけ?・・・・・・そんなことないよな。
疑問に感じながらも、スルスルと彼女の衣服を脱がしていく。
ゆったりとした服装だから、脱がすのはとっても簡単だ。
上腕の両手で彼女の服を脱がしながら、下椀の両手で自分の服も脱いでいく。
我ながら器用だ。
「あ、灯りを・・・・・・」
「・・・・・・」
彼女は両手で自分の前を覆い、胸の辺りを隠そうとする。
そんなに恥ずかしがり屋なのか。
普段の訓練をしている姿からだと、上半身裸で男の前で堂々と水浴びでもしそうな雰囲気だと思っていたのだが。
なんだか、ギャップを感じる。
仕方なく、掛け布団で彼女の顔も覆い、全体を見えなくしてから、布団の中に潜り込む。
俺は鬼人族で暗い中でもバッチリ見えるから、なんの問題もないのだ。
ん?・・・・・・こ、これは・・・・・・!
彼女は腕の先や首筋など、肌が露出している部分は健康的に小麦色に焼けているが、服で隠れていた部分は白い肌理の細かい綺麗な色をしている。
その黒と白のコントラストがなんとも艶めかしく感じる。
よく見ると、彼女の顔にも眼帯の跡が陽に焼けずに薄く白っぽく残っていて、少し間抜けにも見えるけど、情けない顔をしながらへにょっとした垂れ目の表情がなんとも可愛らしくて。
有体に言って、食べてしまいたいぐらい可愛い!・・・・・・
あ・・・・・・ヤ、ヤバイ・・・・・・俺のリトル・ユキムラが獣戦士にジョブチェンジしそうだ・・・・・・。
衝動的に彼女を抱きしめてしまった。
「ユ、ユキムラ殿、どうしたのだ?」
「『
その魅力に参ってしまったということだ」
自分でも何を言ってるのか分からん。
「確かに、そのように呼ばれることもあるが、『灰色の剣鬼』とも呼ばれていたぞ。
私の肌は黒いからな」
「・・・・・・」
布団の中で見える彼女の顔は情けない顔というよりは、悲しげな顔だ。
肌の色がコンプレックスなのかな。
それとも、黒と白の肌の差異が恥ずかしいのだろうか。
俺にはとっても魅力的に見えるのだが。
それしても・・・・・・。
「あ、暑っ・・・・・・」
「あっ・・・・・・」
掛け布団の中に潜っていたせいで、暑さが限界に達した。
布団が飛んでいき、彼女の裸身が照明の下に晒される。
カーラが真っ赤な顔をして、アワアワしながら手で自分の体を隠そうとしているが、全く隠せていない。
こんなに綺麗な体を隠すのなんて勿体ないぞ。
彼女は剣を握ってなければ、へなちょこだな・・・・・・だが、そのギャップが素晴らしい!
俺の前でだけ、見せるのであればだが。
彼女の両手の掌を上椀の両手で握って、下椀の両腕で抱き締め、体を重ねる。
「カーラの体は綺麗だから、隠さなくても大丈夫だ」
「嘘だ、ユキムラ殿は嘘を言っている・・・・・・」
涙目で俺に訴えかけてくる彼女の唇を塞ぐ。
しばらく舌で彼女を味わいながら、抵抗が治まるのを待った。
「嘘じゃないって」
「本当に・・・・・・本当に?」
彼女の頭を抱えて、胸に押し付ける。
「本当だ。その証拠に俺の胸はこんなにも激しく動いているだろう」
「うん・・・・・・」
もう今は、パンダにカンフーキックを浴びせられた気分だ。
今度は彼女の口をやや強引に蹂躙する。
両胸の先端を嬲りながら、両脚の間に右脚を差し入れる。
「うっ・・・・・・」
エルフ族にしては珍しい彼女の黒髪を撫でながら、お腹の肌理の細かい肌を指の腹で楽しむ。
暫くは彼女の準備ができるまで、ゆったりと彼女の肌の滑らかさを確かめる。
「はあ、はあ・・・・・・」
「疲れたか?」
俺の問いかけに彼女は首を横に振った。
もう大丈夫そうだな。
「少しだけ痛いけど、力を抜いていられるか?」
「分かった・・・・・・」
彼女が少し真剣な表情になった・・・・・・力を抜いてほしいのだけど、大丈夫かな。
少し気を逸らすために、彼女の唇を奪って、ゆっくりと彼女の中に侵入を果たす。
(手当、手当、手当・・・・・・)
治療魔法をかけながら、彼女の口を蹂躙する。
「大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だけど、・・・・・・ああぁっ・・・・・・」
まだ、それほど動いてはいないけど、ゆるやかに彼女の体を揺さぶる。
涙目になりながら、俺の下で揺れる彼女の白と黒の肌にも薄っすらと汗が浮かんでいる。
それが照明の光に時々照らされ、キラキラと光り、なんとも贅沢な光景だ。
これ、結構、破壊力あるな・・・・・・我を忘れそうになる。
視線を感じたのか、胸の前を隠そうとするのを手に取り、両腕を万歳の姿勢にさせる。
少し俯き加減に彼女がなったところで、律動を開始。
少しずつ激しく揺らして、彼女を頂きへとゆっくりと持ちあげていく。
「ユ、ユキムラ殿、ちょ、ちょっと待って・・・・・・」
「ん?どうした?」
少しテンポを緩めながらも、動きは止めない。
「なんだか、おかしい・・・・・・体が熱い」
「それは・・・・・・運動しているからな」
「そ、そういうものなのか?」
「そういうものだな。では・・・・・・」
再び、テンポを上げていく。
先ほどより、彼女は少し多く汗をかいているようだ。
でも、その香りは全く不快ではないし、むしろ俺を高揚させてくれている。
「あっ、あっ、あっ・・・・・・ああぁ・・・・・・」
彼女は体を弓なりにして登りつめた。体柔らかいな。
荒い息を吐きながら、痙攣する彼女を見据えて俺も欲望を吐き出した。
体重をかけ過ぎないように、彼女の体に覆い被さり・・・・・・首筋に当たる彼女の吐息が・・・・・・とても心地良いな。
ちょっと、これ・・・・・・また俺のリトル・ユキムラが・・・・・・。
彼女を見ると、情けなく垂れ目になったパンダ柄の顔が目に入る。
獣戦士どころか、百獣王にジョブチェンジしそうだ。
さすがに初回から百回というのは拙いよな。
どこかでブレーキを・・・・・・かけられるだろうか・・・・・・ちょっと自信がない。
・・・・・・
お読みいただき、ありがとうございました。
次の話は(多分)閑話になります。
次回投稿日は2026/6/3(水)の予定です。