後書きで、今後の投稿予定等についての記載をしましたので、御覧いただければと思います。
カーラとシーナの二人と共に、昨日も来た屋敷のロビーっぽい所にワープで移動。
ゲートを出ると昨日同様、警備をしている者がこちらに視線を向けてくる。
「とりあえず、我々がここに到着したことを相手に伝えよう。
ハルツ公が先に来ている可能性もあるからな」
「はい。それがよろしいかと」
せっかちな性格だから、先に来たのに俺達を待ってるなんて、きっとないだろう。
カーラはシーナの後ろに隠れている。
身長差があるから、全く隠れられていないのだが。
それはともかく、こちらに視線を向けていたエルフ族の男の方へ三人で向かった。
「本日、カッサンドラ様に面会予定があるタケダ家の者です」
「はい。伺っております」
シーナがエルフ語で話しかけると、相手もそれに応じた。
こういう時、異世界言語のスキルは便利だな。
相手には多分、俺がエルフ語を理解しているなんて思われてはいないだろうけど。
「では、こちらへどうぞ」
「カーラ、行くぞ」
へっぴり腰になっている彼女の手を引いて、受付の者に付いていく。
廊下を歩き、大きな扉の前に辿り着いた。
「カッサンドラ様に面会の者が来ております」
「お通しせよ」
「では、どうぞ」
開かれた扉の中に三人で入ると、扉がデカい割には先にあったのは小部屋のようだ。
「カッサンドラ様に面会だ」
「はっ」
更に奥にいる者と案内の者が話をしている。
「こちらへどうぞ」
案内の者に導かれて、更に奥へと進んだ。
「今、カッサンドラ様をお呼びいたしますので、こちらでお待ちください」
「はい」
奥に進んだ先の別室で待つことになった。
「立っていても仕方ないので、座ろうか」
「はい」
「・・・・・・」
シーナと違い、先ほどからカーラは一言も発していない。大丈夫なのだろうか。
しかし、ここに来るまでに非常に仰々しいとも言える道程だったが、複数のゲートがある分だけ、堅牢なセキュリティと言えるかもしれない。
いや、この世界では、いきなりフィールドウォークで押し入ってくるから、遮蔽セメントの塗られていない所があると危険なのだよな。
セ二号作戦の時に思い知らされたのだった。
俺はワープのスキルがあるから、更に危険人物とも言えるが。
「失礼いたします」
侍女らしき人がノックをして、入室してきた。
「お茶をどうぞ」
「ありがとう」
俺達三人の前にハーブティーらしきものが入ったカップを置いて去っていった。
「いただこうか」
「はい」
「・・・・・・」
三人ともカップを持ち、ハーブティーをいただく。さすがに美味いな。
シーナは優雅で上品にハーブティーを飲んでいる。
まさに貴族の令嬢という感じだ。
一方で、カーラは手をプルプルさせながら飲んでいる。
カップをプルプルさせているから水面が凄く揺れているが、眼帯をしているにもかかわらず、全くこぼさずに飲んでいる。
こちらは一流の武芸者ということなのだろうか。
眼帯をしたままでも、箸でハエを摘まめるとか・・・・・・この世界で箸は見たことないけど。
それにしても、こんな面会の時であっても眼帯を外さないというのは、ある意味筋金入りだ。
面会時や、ハーブティーを飲む時ですら何かを鍛えているのだろうか。
「失礼します。こちらへどうぞ」
「では、行こうか」
カーラの観察をしていたら、お呼びがかかった。
通路の先を歩き、突き当りの部屋の扉が開くと、中から出てきた人が案内をしてくれる。
正面の豪華な椅子には、エルフの婆さんが座っていた。
「カッサンドラおばば様」
「よう来たね」
シーナが呼びかけをして、おばば様が応じた。
でも、呼びつけられていたのはカーラじゃなかったか?
カーラはシーナの後ろに隠れるのは無理だと悟ったのか、俺の後ろに隠れている。
そして、鑑定すると確かに107歳だった。
生ける屍・・・・・・じゃない、生ける伝説?
偉業を成し遂げたのかは知らないが、生きているだけで伝説みたいな。
「シーナかい。いろいろと大変だったようだねえ。
それで、カーラはどこにいるのかえ?」
「・・・・・・」
絶対に見えていて言ってると思う。
カーラは俺の後ろでプルプルと震えている。
本来の主役であるカーラが一番落ち着きがない感じだ。
護衛部隊を全員倒そうとする
「あんたの父親、グランフェルトは残念だったね。迷宮討伐の腕はピカイチだったのに。
あれで領地経営が上手かったら、伯爵はあんたの父親だったはずだよ」
「はい」
はいって言い切ったな。
それにしても、シーナは普通に受け答えをしている。大したもんだ。
「して、おぬしがかえ?」
おっと、こちらに矛先が。
「おぬしが、そのじゃじゃ馬の飼い主になったのかえ?」
「はい」
流れで俺も、はいと言い切ってしまったな。
でも、俺の後ろで震えているカーラは、おばば様の前では、じゃじゃ馬どころか生まれたばかリのポニーにしか見えないのだけど。
プルプル震えているだけだし。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
みんな沈黙しているけど、この間は?
「ふん、ちったあやるのかね。シーナ、紹介しておくれでないかい」
「はい。おばば様。
こちらが私達の主人であるユキムラ タケダです。
ユキムラ様、こちらはカッサンドラ、私達のひいひいひいひいおばあ様の末の妹になります。
一族の女性にとっては母にも等しいお方です」
『女性にとって』だけなのか。男性にとってはなんなのか確認してみたくなるな。
そして、ひいの数が原作と同じなのかまでは覚えていない。
まあ、一つ二つ違っていたからといって、どうということもないのだけど。
カシア様がいないから、シーナがその代わりをこなしてくれて、とっても助かる。
今のカーラには、その役目は無理っぽいしな。
「おぬしは冒険者なのかえ?」
「はい」
冒険者のジョブは持っているけど、本当は鬼神ジョブだ。
さすがに、それは言えないけど。
「まだ若そうなのにやるもんだね」
「ありがとうございます」
おばば様からみれば、たいがいの者は若く見えると思うのだが。
鬼人族の俺は一体いくつに見えているのだろうか。
「エルフ族ではありませんが」
「ふん、あたしの亭主はエルフ族じゃなくて、人間だったよ。
あたしは・・・・・・」
ああ、余計なことを口走ったせいで、長い話が始まってしまった。
原作でも読んだ長話がひたすら続いていく。
きっと今の俺は、魚の死んだような目をしているに違いない。
「・・・・・・シーナも、そいつがろくでない男なら、さっさと見切りをつけるがいいよ。
どうとでもしてやるからね」
「いえ、ユキムラ様なら遠からず、
エストグリュン家を再興して、領地持ちの貴族になることに疑いありません」
おーい、迷宮討伐をすっ飛ばして、家の再興とな?
「ほお、そうなのかえ?」
「はい。公爵からボーデの迷宮討伐の依頼を受けております。
もう少しで迷宮討伐まで手の届く階層まで来ております」
今回のボーデ迷宮の攻略は48階層からスタートした。
でも、シーナ。それはハルツ公の騎士団の力だと俺は思うのだけど。
あっ、カーラの震えが止まった。
迷宮ネタになると、正気に戻るのか?
でも、俺の背後から、おばば様を見たら、また震え始めた。
この感じだと、迷宮に連れていけば、きっと復活するのだろうな。
「50階層まで、あと少しですが、そこからが慎重を期して臨みたいと思ってます」
「ほほう。分かっているじゃないか」
ちゃんとクーラタル迷宮で予行演習もするしね。
誰が迷宮ボスに挑むのか、セレクションもしなければならない。
他にも検討したいことがあるから、今回は慎重に臨むつもりだ。
「カーラは、まだ帝国一武闘会に出場する夢を持っているのかえ?」
「は、はい!」
おっと、カーラが再起動した。このタイミングでカーラにキラーパスが出るとは。
それにしても、今、ド●ゴンボールのイベントのように聞こえたのは空耳?
舞踏会じゃなくて、武闘会って言ったよね?ダンスバトルじゃないよな。
「それは、幼い頃から今に至るまでの夢です!」
「あまり貴族らしくない夢な気もするがね」
おばば様の言ってることが正論な気もする。
子供の頃の夢が大人になっても変わらないって凄いことな気もするけど、眼帯の件もあるから、カーラなら納得してしまう。
「シーナは、諸侯会議で活躍する夢をまだ持っているのかえ?」
「はい。エストグリュン家を再興して、必ずやその夢を叶えてみせます」
おお、こちらも言い切った。
だけど、何度もエストグリュン家の再興を繰り返し宣言しているな。
同調圧力には負けないぞ。
「立派な夢だよ。しっかりやりな」
「はい」
なんだか、このおばば様、原作と違ってマイルドな感じがするな。
「種族の違う所に行くのも悪い事ばかりじゃない・・・・・・」
ああぁ・・・・・・マイルドなのだけど、話が長いのは原作通りだな。
俺の目が再び・・・・・・。
それにしても、まるでシーナが俺のハーレムメンバーのような扱いで会話が進んでいるような。
俺は14歳の女の子には手を出さないぞ。
ハーレムメンバーは
「・・・・・・まあ、そんなのだから、
セルマー伯領やエストグリュン家のことも、がたがた騒ぐほどのことじゃない。
一族の人数も増えたし、それなりにはある話さ」
「そうなのですか」
あんな殺伐としたことが、それなりにあるのか?
やはり、こちらの世界はハードモードだ。
本当にどこまで、おばば様がセ二号作戦の結果を知っているのか分からないけど。
でも、エルフヒロイン達が逃げてきた先がここなら、それなりに掴んでいるのかもしれない。
シェル達も、ここに避難している訳だから、やはりそれなりにある話と言えるか。
「いいだろう。あたしも手伝ってやるよ。
ネスコという街の少し奥に迷宮がある。ネスコの奥の迷宮といえば分かるだろう。
しばらくは、そこで修業を積みな」
「ネスコですか?」
修業はクーラタルで十分積んでいるから不要なのだけど。今、63階層までクリアしたし。
「今、うちの一族が総力を挙げて討伐しようとしている迷宮だ。
そこで力をつけたなら、次やその次にはチャンスも巡ってくるだろう」
「ふむ・・・・・・」
正直、ネスコの迷宮討伐には全く興味はない。
だが、総力を挙げている一族とやらの戦力には興味がある。
是非、鑑定スキルで戦力分析をさせてもらいたい。
ハルツ公の騎士団は今回、実戦での戦闘もそれなりに確認させてもらったし、鑑定スキルを使いまくったので、そこそこ戦力分析ができた。
「シーナはこの話、どう思う?」
「ユキムラ殿、是非、やろう!」
「姉上、いけません。これは罠です」
カ、カーラ・・・・・・迷宮討伐の話になると俄然張り切るのだな。
まあ、俺も別の意味で興味はあるが、ここはカーラの発言はスルーしよう。
「シーナ、これは罠なのか?」
「はい」
「ふん。鍛えてやろうと思ったが、やはりシーナは優秀だね」
マイルドに見えても、おばば様は毒をしっかりと持っているようだな。
「今は、ボーデの迷宮の討伐がありますから」
「まあ、そちらが終わったら、ネスコにおいで。悪いようにはしないから。
それと、こいつを持っていきな」
おばば様の横にいた側仕えっぽい人が、エンブレムの入ったワッペンを差し出してきた。
「ありがたく」
「それを受け取った以上、逃げるんじゃないよ」
しまった。罠にまんまと、かかってしまった。
それにしても、ネスコって聞くだけで、怪しさ満載な気がするのは元の世界に毒されている?
迷宮ボスは首長竜みたいな水生モンスターだったりして。
「シーナとは違って、おぬしは迂闊なようだね。
だけど、シーナももっと鍛えておやりよ。
そうだね。シーナにも時々は少額のお金が入るように考えてやりな」
「なるほど・・・・・・?」
カーラがどんどん置き去りになっているような。
まあ、カーラは修練場と迷宮で鍛えてやっているから問題ないか。
「諸侯会議で活躍しようと思うのなら、まずはお金の使い方を鍛えな。
交渉、効率的な資源配分、適切な資産管理が重要だね。
お金の使い方を通して、その感覚が身につくもんさ」
「なるほど・・・・・・?」
エネドラに鍛えてもらうべきかもしれない。
「まあ、そうだね。シーナ、金貨5枚分の小遣いが貯まったら、あたしの所に来な。
一族の秘宝をお前に売ってやるよ」
「・・・・・・」
しまった。まさかシーナの方に話が行くとは思わなかった。
シーナは多分、金貨5枚どころか1枚も持ってないだろう。
カーラは先日の夜伽の際に下着や衣類のチェックして、金貨を縫い付けてないのは確認済だ。
というか、このネタをすっかり忘れて、ここに来てしまった。
それに金貨5枚ってハードル上がっていないか?
「・・・・・・いる」
ん?
「カーラ、どうかしたか?」
「ユキムラ殿、金貨5枚なら持っていると言ったのだ」
「えっ、そうなの?」
カーラは眼帯を外して、その中から金貨5枚を取り出した。
確かに金貨5枚あるな。
「これって、両親のどちらかから言われた教えとか?」
「いや、師匠から眼帯に重しを入れて、首や体幹を鍛えろって」
パワーアンクルかよ!
「なんだい?どうしたんだい?」
「いや、カーラが金貨5枚を持っているみたいです」
「はあ?」
おばば様じゃないけど、俺もビックリだ。
「なにやら、カーラの剣の師匠から、常に身に着けておくように言われたみたいで」
「あの爺ぃか。余計なことを・・・・・・」
この、おばば様が『爺ぃ』呼ばわりするって、その師匠とやらは200歳ぐらいなのか?
「おい、リュート」
「はっ」
「今からしばらく、この部屋に誰も入れるんじゃないよ」
「承知いたしました」
リュートと呼ばれた男が扉の所に行き、外の護衛と何やら話をしている。
「こっちに来な」
「はい」
おばば様が立ち上がり、部屋の隅にある大きな衝立の方に歩いていく。
足取りはしっかりしているので、確かにカクシャクとしているようだ。
「リュート、これをどかしな」
「はい。少々お待ち下さい」
扉から戻ってきたリュートが、重そうな衝立を動かし始めた。
その衝立の陰から大きな扉が姿を現した。
「これから宝物庫に案内してやる。
でも、衝立や、宝物庫とこの部屋にも遮蔽セメントが使われているからね。
冒険者だからと言って、飛んでくることはできないよ」
「なるほど」
ワープなら可能だけど、問題は宝物庫に価値のあるものが本当にあるかだ。
おばば様が扉を開けて中に入っていくので、俺達も続いて中に入ることにした。
「好きなのを持っていきな」
「へえ」
好きなのを選んでいいのか?
原作だと、おばば様の方で選んでボディークリップとか渡されていたよな。
金貨5枚に上がったから、ボディークリップの代わりにビキニアーマーでもくれるのかと思ったら、そんなことはなかったようだ。
それはともかく、宝物庫の方には・・・・・・ミセリコルデやオリハルコンの剣、聖槍等、かなりの数が並んでいるな。
だが、空きスロットの数が少ない。あまり魅力的には思えないな。
やはり隻眼のバルドルフの所とは比べ物にならないか。
まあ、ボディークリップなんてもらっても使い道がないし。
カーラが夜伽時に体幹を鍛えるため、どうしても使いたいというのなら吝かではないが。
「じゃあ、これ」
「えっ?」
カーラが一振りの剣を手にとった。
(鑑定)
聖剣 両手剣
スキル 空き 空き 空き
うーん、なんだろう。
無印というかプレーンの聖剣?
デュランダルでもなく、エクスカリバーでもない。
空きスロットも3つと微妙な感じだ。
3つで微妙とは、我ながら贅沢になったものだが。
「それが欲しいのか?」
「ユキムラ殿、これが気に入った」
カーラって、剣を見る目があるのだろうか?
業物や真贋を識別するような鑑定眼を持っているようにも見えないのだが。
俺の鑑定でも分からないものをカーラが見抜けるのか?
「それは・・・・・・カーラは魔法使いになれるのだったかえ?
その秘宝は魔法の威力を高めるとされている。いつかきっと役に立つだろう」
「は、はい?」
思わず疑問を口に出してしまった。
今のおばば様の台詞は、小説版でボディークリップを渡した時のものと全く同じなのでは?
おばば様の台詞、バグってないか?・・・・・・カーラが手に取ってるのは聖剣だよな?
確かに、空きスロットの数も3つで、ボディークリップと同じだったような気もするが。
まさか、デュランダルも気付いてないだけで、魔法攻撃の威力を高める効果があるとか?
「まあ、なんにせよ頑張ることだ。そのうち、いいこともあるだろう」
「おばば様、ありがとうございます。この剣は大切にします。
これで、帝国一武闘会で勝ち上がってみせます」
当人は魔法使いをやる気が全く無さそうに聞こえるのだが。
それにしても、今まで聖剣なんて見たことなかったよな。
今度、バルドルフの所に行った時に訊いてみるか。
カーラは聖剣を手に持ち、うっとりとするような目で見ている。
そして、今にも振り回しそうな雰囲気だ。
「カーラ、この狭い部屋で振り回すなよ」
「そうか?分かった」
そうかじゃないだろう?・・・・・・フリじゃないぞ、本当に振り回すなよ!
お前と違って、ここにいる三人は避けタンクじゃないから、回避は難しいぞ。
誤って、おばば様の首を刎ねでもしたら、本当にワープで逃走することになるから。
ワープで逃げたからって完全犯罪にはならないから、おばば様の一族とタケダ家で総力戦が始まるかもしれない。
案外、一族の者達から喜ばれたりして・・・・・・いや、フリじゃないからな、カーラ。
「もういいかえ?とっとと出るよ」
「はい」
俺が見えない何かと戦っている間に、おばば様はしびれを切らしたらしい。
おばば様に連れられて、宝物庫を出ることにした。
「リュート、なにかあったかえ?」
「ハルツ公と騎士団長殿がいらっしゃっております」
「そうかい、じゃあ案内しておやり。
丁度、ここにいる者達含めて話しておきたいことがあるから」
「はっ、承知しました」
リュートは扉を出て、ハルツ公達を呼びにいったようだ。
彼らが来るまでに、こちらの用事も済ませておくか。
「あの、これはせっかくの機会ですので、ご挨拶の品をお持ちしました」
「ほう、気が利くじゃないか。誰かに入れ知恵でもされたかえ?」
石鹸のセットが入った袋をお付きの人に手渡した。
さすがに
そして、徐々に毒舌がこちらに向きつつあるな。
できれば毒を吐くのは、ハルツ公達が来てからにしてほしいのだが。
「それと、カシア様にお願いさせていただき、こちらで預かってもらっています、
シェル達は元気でやっていますでしょうか?」
「ああ、あの三人か。しっかりと鍛えてやっているよ」
おばば様の言葉に、俺の背中に手を置いてるカーラのプルプルの振動数が上がった気がする。
カーラ、俺の言葉まで震えてしまうから勘弁してくれ。
シェル達は本当に大丈夫なのだろうか。
覚悟の上で行ったのだから、頑張っていると思いたいが。
やがて、リュートがハルツ公とゴスラー騎士団長を連れて入室してきた。
「タケダ殿、もういらしていたか」
「はい、お先にお邪魔しておりました」
ハルツ公とゴスラー騎士団長に軽く会釈をした。
おばば様のご機嫌はあまりよろしくないようだ。
「おや。ハナ垂れ小僧のブロッケン坊やと、その金魚のフンじゃないか」
「無沙汰しておる」
ハルツ公の後ろに隠れたゴスラー騎士団長は、おばば様と目を合わせようとしない。
なんとなく、俺とカーラの関係のように見えてしまう。
「セルマー伯を排除しようとして、手痛い目に遭ったらしいね。
もっと早く下しておけば、不幸も広がらなかったものを」
「ぐっ」
痛い所を突かれている。
実際、どこまで早く動いていれば、今回の被害が少なかったのかは分からないけど。
その後も、おばば様とハルツ公の間でギスギスとした会話が展開される。
俺とゴスラー騎士団長の目が死んだ魚のようになっていく。
もう、帰りたいよ。
「なんでも、公都の傍に現れた迷宮を他人に任せてるんだって?」
「タケダ殿は余が見込んだ人材故、なんの問題もない」
「そんな事を言ってると、どこかの伯爵領と同じ憂き目に遭うよ」
雲行きが怪しくなってきた・・・・・・こちらに飛び火しないでほしい。
「そんな人材なら、うちで使ってやってもいいよ。
ちょうどネスコの辺りの迷宮で人手が足りていないからね」
「余が先に頼んだのじゃから、こちらが優先じゃ」
まだネスコの件は諦めてなかったのか。
「仕方ないね。それなら、簡単な仕事ぐらいはいいだろう?
ブロッケン坊やが見込んだ冒険者なら、直ぐにできることだから」
「な、何を言っておる・・・・・・」
俺の意向は完全に無視されて、話が進んでいくようだ。
さすがのシーナもこの二人の間に割って入るようなことはできない。
下手すると、本当に火傷しかねないもんな。
カーラとゴスラー騎士団長は、おばば様の視線に入るまいと必死に隠れている。
おばば様の視線に石化の呪いでもあるかのような対応だ。
「なに、簡単な頼み事だ。
迷宮討伐と違って、失敗したからといって問題になるようなものでもない。
時間も大してかからないから、軽い気持ちでやってくれればいい」
「・・・・・・」
おばば様は既に公爵の方に顔を向けておらず、こちらを見据えている。
公爵から完全におばば様のターンになってしまったようだ。
「頼み事というのは?」
「ネスコから沖に出た海の向こうに、グリニアという土地があるはず。
あたしが小さい頃には、まだ中継地が生きていて、帝国の一部だったんだ。
向こうに渡った一族の女達もいたんだよ。
もう、さすがに生きてはいないだろうがね」
ここでグリニア探しのイベントか。
少し展開が早い気がするな。
「お前さんには、できればグリニアに渡って、どうなっているのか見てきてほしい。
ただ行って見てくるだけだから、力のある冒険者ならば無理なことはないはずだ。
そうだろう?ブロッケン坊や?」
「・・・・・・」
ハルツ公は首を縦にも横にも振らない。
「単にあたしが知りたいっていうことさね。生きているうちにね」
「そのような興味本位のことは後回しでも・・・・・・」
「五月蠅いね。
悪戯と称して一族の若い娘の入浴を覗こうとしたエロ餓鬼に、そんな事は言われたくないね」
「ぐぬぬっ・・・・・・」
なんか時間の無駄に思えてきたから、とっとと結論を出してほしい。
「闇雲に探すのは、さすがに無理だと思います。何か手がかりのようなものはありませんか?」
「そうだね。ブロッケン坊やの所領にターレという村がある。
先々代のハルツ公爵、坊やの爺様が、グリニアとの中継地が魔物の手に落ちた時、
確か、そこの住人を迎え入れたはずだよ。
ターレに行けば、今でも何か知ってる者がいるかもしれないね」
ここは、原作と同じ流れか。
ターレは、この間まで通い詰めていたから、そこそこ馴染みがある。
住人と大した交流はしていなかったけど。
「では、グリニアについての情報を探ってみるということで。閣下もよろしいでしょうか?」
「まあ、時間をかけないのであれば構わぬ」
「優秀な冒険者なら年単位で時間がかかるような依頼でもあるまい。
頼むよ。こっちも暇じゃないんだ。さっさとお行き」
おっと、これで解放されるのならありがたい。
「では、我々はこれでお暇させていただきます」
「リュート、送っておやり」
「はっ」
これでようやく帰れる。
おばば様に三人で頭を下げ、退出させてもらうことにした。
カーラ。俺の後ろにいると頭下げても、おばば様に見えないだろうが。
まあ、視界に入れたくない、入りたくないのだろうけど。
退出する時に、恨みがましそうにゴスラー騎士団長がこちらを見てきた。
いやいや、そちらはまだ来たばかりなのだから、ゆっくりとおばば様の相手をしてもらいたい。
こちらは既にお腹いっぱいだからさ。
来た時の道順で、リュートに案内され、ロビーの方へと向かった。
「タケダ様はターレの場所はご存じですか?」
「そうですね。この前まで迷宮に行ってましたから」
「なるほど。では、案内は不要ですね」
おばば様やリュートは、俺がターレ迷宮を討伐したって知っているのだろうか。
まあ、どちらであっても、こちらのやることは変わらないのだけど。
ロビーに着いたのでリュートと別れ、こちらは移動用の絨毯のある場所へ三人で向かった。
「時間が中途半端だな。
俺は自宅に戻った後、ターレに行って、グリニアの聞き込みをしてこようかと思う。
カーラはどうする?」
「迷宮に行かないのなら、ユキムラ殿と一緒に行く!」
「あの・・・・・・私もユキムラ様とご一緒させていただきたいのですが」
えっ、シーナも行くの?
「まあ、シーナが行きたいのなら構わないぞ。
一応、何かあるといけないから、装備品を身に着けてから出発しよう」
「はい。ありがとうございます」
「ユキムラ殿、新しい剣を試したい!」
いやいや、その聖剣をいきなり使うの?
それに、強いモンスターと遭遇することはないと思うぞ。
壁にかかった絨毯にワープゲートを開き、三人で自宅へと戻ることにした。
お読みいただき、ありがとうございました。
読者の皆さまから感想、誤字脱字指摘、ココスキ登録などをいただき、非常にありがたく感じており、執筆活動の励みになっております。
原作の流れに沿ってここまで進めてきましたが、戦乱パートへの切り替えが徐々に近づいてきており、既に戦乱への切り替えからエピローグに至るまでのプロットは一通り作り上げました。
戦乱に入ってからの創作も徐々に始めているのですが、従来の表現方法から変更しなければならない事情がありまして、それに思いの外苦戦をしております。
ある程度は形にした上で、戦乱パートを迎えたいので、非常に申し訳ないのですが、投稿のペースを今の隔日から、週二回に変更させていただきます。
(投稿予定日)毎週水曜日・土曜日の19:00
★変更が発生した場合には、後書きの所で告知させたいただきます(投稿後の予定変更も同様)
戦乱パートでの記載が落ち着いたら、また投稿スケジュールは変更するかもしれません。
引き続き、拙作にお付き合いいただければと思います。