異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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115.シーナの野望

 クーラタルの自宅にシェル達三人と共に移動。

 上履き履き替えルールは三人も覚えていたので、スムーズに食堂へと案内できた。

 

 徐々に彼女達の目には生気が戻ってきた気がする。

 

「やっと戻ってこれました」

「もう絶対にここから動きません」

「あそこは生き地獄・・・・・・」

 なんだか、自分の家に戻ってきたように安堵しているようだ。

 

 

 食堂に着くと、まずはエネドラに説明。

 

「えーと、この三人は我が家に戻ってくることになったようだ」

「あらあら、そうなのですか。シェルちゃん達、お帰りなさい」

「「「・・・・・・」」」

 涙を流しながら、三人ともエネドラに抱き付いている。

 

 おばば様の所は、そんなに恐ろしい場所なのか。

 選択したのは彼女達だったとはいえ、元々提案したのは俺だ。

 少しだけ胸が痛む。ほんの少しだけだけど。

 

「急に連れて帰ることになったけど、部屋は大丈夫だろうか?」

「増築工事も結構進みましたので、一階部分は完成していますから問題ありません」

 俺が質問した時に、三人の体がピクンッと反応した気がする。

 

 ちょっと怖がらせてしまった・・・・・・反省。

 

「これから、俺はシーナ達と合流しなければならないのだけど、三人を任せても?」

「はい。大丈夫です。後の事はお任せ下さい」

 エネドラに頭を下げ、俺は玄関へと向かった。

 

 最近、エネドラに丸投げしてばっかりだな。最近というか、いつもだけど。

 だが、今回は不可抗力だ。

 まさかグリニア捜索の報告に行って、三人を引き取ることになるなんて思ってもいなかった。

 

 玄関からワープゲートを開いて、フリュウの村へと移動。

 

・・・・・・

 

 村に近づくと、既にシーナとカーラは門の傍に立っていた。

 ニートアントから助けたヒルダ、テルモ、アベルの三人や見張りの者達と話をしている。

 雰囲気は悪くなさそうだから、交渉は良好だったのかもしれない。

 

 パーティー効果で、俺が来たのが分かったのだろう。

 二人が笑顔でこちらを見て、手を振っている。

 

「交渉は終わったのか?」

「はい。まだ、準備段階ですが、まずまずだと思っています」

 ふーん、そこまで言い切るということは、結構な手ごたえを得たのだな。

 

「詳細は帰ってから、御報告いたします。相談事項もございますので」

「そうだな。ここでする話でもないだろう。じゃあ、もう帰っても大丈夫か?」

「はい。大丈夫です。では、皆様、お世話になりました」

 シーナはそこにいた三人の若者と見張りのエルフ男性二人に深々と頭を下げた。

 

 三人だけでなく、見張りの二人もシーナに頭を下げているので、彼女はかなり信用を得たのかもしれない。

 オマケの俺も軽く手を振って、その場を後にした。

 

 森の道を歩く二人の歩調はかなり軽快だ。

 特にカーラはスキップでもし始めそうな雰囲気。

 カーラ、おばば様の所に行かなくて助かったな。

 シェル達の変わり果てた姿を見て、心底そう思ったよ・・・・・・俺は行ったのだけどさ。

 

 適当な木陰から、ワープで自宅へと戻った。

 

・・・・・・

 

 二人から詳細の報告を受けるため、着替えて食堂に移動。

 もう、午前中は迷宮には行かないので、報告を聞いたら、そのまま昼食だ。

 

「あのエルフの方達は?」

「ああ、あの三人は前に我が家にいたことがある者達だ。あとで紹介してやるよ。

 先に報告をしてもらえるか?」

 俺達から離れた所にシェル達三人がエネドラとお茶を飲んでいた。

 

 もう、かなり復活したようで、死んだ魚の目ではなくなっていた。

 さて、シーナはどんな交渉をしたのだろうか。

 

「まず、一つ目の御報告です。

 私と姉上はグリニアに至るまでの中継地の一つに行ってまいりました」

「はあ?」

 行ってまいりました・・・・・・だと?

 

「それは、どういうことだ?放棄されたと聞いてたのだが」

「はい。確かに放棄されていたようです。廃墟でしたから。

 ですが、移動可能な場所と移動可能な冒険者は存在してるということのようです。

 フリュウ村の村長は元冒険者の方で、あの村の冒険者に移動場所を教えたそうです。

 中継地は荒れ果てていて、冒険者ギルドの移動用絨毯も撤去されていました。

 ですが、森や廃墟の一部に移動可能な場所がありますので、

 モンスターに気を付ければ移動自体はできるようです。

 廃墟となっていますから、もちろん生活することは困難ですが」

 なるほど。フィールドウォークを使える場所が存在すれば、移動だけなら問題ないのか。

 

 そして、昨日、村長はグリニアへの行き方なんて知らない風だったが、芝居をしていたのか。

 まあ、よそ者に余計な事をしゃべりたくないって気持ちは分からなくもない。

 

 

「移動を確実にするために、その中継地の近くに複数の移動場所を確保しているようです。

 一つがダメになっても、別の場所に移動できるように。

 ダメになった場所があれば、また別の場所を確保するようにしてると申しておりました」

「なるほど」

 それは用意周到だが、そこまでするのは一体?

 

「彼らはグリニアに行く経路を確保するために、そこまでのことを?」

「いえ、それは違うようです。長老のお話では、『森を見守る』ためだそうです」

 『森を守る』ではなく『森を見守る』ため?

 

「『見守る』というのは、具体的にはどういうことなのだ?」

「文字通り、森が自然な姿であり続けることを確認しているようです。

 人や獣の手で荒らされないように、必要に応じて問題を排除するとのことです。

 確かに私達のエストグリュン家でも、そのように森を守っていた者がいましたので」

 そういえば、あの長老のジョブは森林保護官だったか。それと関係あるのか知らんけど。

 

「しかし、わざわざ遠く離れたグリニアの中継地にそこまでの事をするものなのか?」

「それは私にもよく分からなかったのですが、長老はこう申しておりました。

 『その地で誰もやっていないから、自分達がやっているだけ』だと」

 ふーん、なるほどと思えてしまうな。

 

 使命感とは違う、長老にとっては自然な振る舞いなのか。

 

「ひょっとして、フリュウの村やミタカウの村に残っている人達って?」

「全員が長老と同じ考えではないようですが、

 一部の者達は長老の考え方に共感しているのではないかと思われます」

 なるほどね。その延長で中継地は放棄されても移動可能になっていると。

 

「それで、エルフ族の種族固有ジョブの森林保護官って、みんなそんな感じで・・・・・・?」

「いえ、それは違うと思います。全員がそんな考え方ではないと思います」

 そんな固有ジョブの持ち主ばかりだと、それはそれで困るよな。

 

「そして、グリニアへの中継地への案内については、フリュウ村から対価を求められました。

 事後承諾となりますが、私の一存で応諾しました。

 具体的には、フリュウの森に出現した迷宮の発見、もしくは武器の提供のいずれかです。

 武器については、鋼鉄の剣三本ということでした。

 タケダ家の力では問題ないと私が判断して、中継地への案内をお願いしました。

 ユキムラ様には事後承諾となりまして、申し訳ありません」

「いや、その程度のことは問題ない。

 武器はシーナの見立て通り、鋼鉄の剣三本なら安いものだ。

 彼らの言ってることが本当か確かめるのは必要なことだからな。

 むしろ、その取引をよくまとめてくれた。感謝しているよ」

 俺の言葉にシーナは笑顔で頷いている。カーラも横でニコニコだ。

 

 それにしても、シーナはできる奴だな。14才でここまでやるか。ホントに頼もしいな。

 

「今までの話はフリュウの村との取引の前提条件の確認となります。

 取引の材料は幾つかありますので、それをお話ししたいと思いますが、よろしいでしょうか?」

「ああ、説明してくれ」

 なんか、シーナのペースに巻き込まれているような気もするな。

 

 話の進め方も上手いと思うぞ。

 初めに、中継地への移動の話を持ってきたのも、俺にインパクトを与えようとしているのではないだろうか。

 実際、シーナの話に惹きつけられてしまっているしな。

 

 

「フリュウ村から求められたのは、迷宮討伐への助力です」

「『迷宮討伐』ではなく、『迷宮討伐への助力』なのか?」

「はい、その通りです。

 フリュウ村から提供できる対価をこちらがどこまで受け入れるかによるのだと思います。

 迷宮討伐をしてもらいたいのだと思いますが、それがダメでも助力がほしいのだと。

 助力と言っても、いろいろなことが考えられますが」

「それは、相手の提供できるものを吟味してから決めるということだな」

「おっしゃる通りです」

 なるほど。だとすると相手が提供できるもの次第か。

 

「その迷宮討伐や、その助力というのが長老の要求なのだな?」

「いえ、それは違います。

 長老は『迷宮は討伐されても、されなくてもよい』とおっしゃられてました」

「されてなくてもよい・・・・・・って、討伐しないと村が滅びるだろう?

 それでも、長老は構わないのか?」

 言ってることが段々分からなくなってきたような。

 

「長老に言わせると、迷宮やモンスターが森を荒らすことはない。

 人や獣が荒らすのだから、迷宮で人が滅びるのなら、それは是非もないとのことです。

 もちろん、村の者全てがそのように考えていませんし、村長は迷宮討伐に積極的です。

 この依頼は、どちらかという村長の依頼だと考えた方がよいでしょう」

「なるほど。長老は積極的に迷宮討伐を求めないが、反対もしないということか」

 俺の言葉に二人が頷いた。

 

 

「村長の話では、フリュウ村から提供できるものがいくつかございます。

 一つ目は冒頭お話しした、グリニアと中継地への案内です」

「グリニアにも行けるのか?」

 俺の言葉に彼女は頷く。

 

「今回はグリニア手前の中継地への案内でしたが、グリニアにも行けると申しておりました。

 もっとも、グリニアも既に放棄されいて、廃墟になっているようですが」

「そうか、グリニアに行けるのか」

 さっき、おばば様には行けませんでしたと報告したばかりなのだけど。

 

 まあ、それはいいか。

 実際、俺達は行けなかったのだし、ミタカウの村の者も無理だと言ってたから。

 いや、ミタカウの長老は行けると知ってて黙っていた可能性もあるか。

 

「二つ目はタルエムの提供です。

 ご存じかと思いますが、タルエムは高級木材です。

 フリュウ村のある島で、森に負担のかからない範囲での提供が可能だと申しております」

「タルエムか・・・・・・」

 使い道はありそうか。

 

 石鹸の箱、鏡の装飾、ターヘラのマリアさんの店との取引にも使えるな。

 どの程度の量が、どの程度の価格なのかの相場感が俺にはないのだけど。

 

「だが、島で伐採したタルエムには輸送の問題があるよな?」

「はい。フリュウの村からは、村の敷地内にタケダ家用の家屋の提供が提案されております。

 家があれば、拠点のスキルで、拠点間の輸送は可能だとエネドラ様からお聞きしました」

 エネドラにも話をつけてあるのか。シーナ、恐ろしい娘。

 

「三つ目は、家の建築にも使われる通常の木材の提供です」

「通常の木材?」

「はい。ザビルでは、近々増築工事の計画が持ち上がっているとか。

 ザビルは最近、迷宮が出現したこともあって人が増えているため、

 住居用の木材が不足しがちだと、カラダン様からお聞きしました。

 大工との交渉の際に木材の提供を申し出れば、安く工事を引き受けてもらえるのではないかと」

 カラダンにも話を通してあるのか。用意周到な。

 

 しかし、この話は相手から提案があったと言ってるが、シーナから持ち掛けているだろう?

 午前中に提案があったのなら、エネドラやカラダンに相談する時間なんてないのだから。

 

 おばば様、シーナは諸侯会議でも活躍できそうな気がしますけど・・・・・・。

 

「そして、その輸送も拠点のスキルが使えば問題ないと?」

「はい。もっとも、フリュウの森に負担がない程度の量に限られてしまいますが」

 タルエムにしろ、通常の木材にしろ、取引量の確認は必要だ。

 

 だが、魅力的ではあるな。

 

「四つ目は、村人の者達が迷宮で取得したアイテムやモンスターカードの提供です。

 村で消費可能な食材や日用品の類以外は提供すると申しております」

「なるほど」

 こんなタケダ流の取引方法をフリュウ村が提案してくる訳ないだろう!

 

 絶対、エネドラやカラダンから助言が入っているに違いない。

 もちろん、タケダ家の者から情報や助言をもらうには才覚が必要だから、シーナの手柄だが。

 逆に言えば、エネドラやカラダンがシーナの能力を認めたってことかもしれないな。

 

 フリュウの村に初めて行ったのが、昨日の午前中だよな。

 午後に戻ってきて、一晩でタケダ家の主要人物と会って、交渉案をまとめたのか。

 リオンあたりがひょっとしたら関わってるかもしれない。

 いや、ヘルミーネと会っていたとレドリックが言ってたな。

 彼女からの助言があったのかも。

 

 エルフとしての森の知識や、ひょっとしたら貴族教育で受けた知識も使ったのかもしれない。

 なんにしても、シーナが頑張ったのは間違いなさそうだ。

 

 

「どうでしょうか・・・・・・フリュウ村からの提案は?」

「これ、本当に全部、フリュウ村からの提案か?

 君の方で取引内容を誘導しているのじゃないか?」

 俺の指摘に彼女は少しばつが悪そうな顔をしたものの、俺の視線を正面から受け止めている。

 

 

「ダメでしょうか?」

「ダメではない。むしろ、よくできた提案だと思うぞ。

 細かい部分で問題がないか、エネドラやカラダンにチェックしてもらった方がよいと思うがな」

「!・・・・・・では?」

「ああ。今の話を基本線に交渉を進めても構わない」

 シーナとカーラは嬉しそうな表情だ。

 

 

「あの、もう一つ提案があります。

 これは、フリュウ村からの提案ではなく、私からの提案ですが」

「聞くだけ、聞こうか」

 なんとなく予想はついているが。

 

「もし、フリュウ村との取引の結果、迷宮討伐を引き受ける場合、

 迷宮討伐を行うパーティーは、旧エストグリュン家の者達に任せていただけないでしょうか?

 そして、可能なら姉上の力も貸して下さい」

「・・・・・・」

 予想通りだったな。

 

 というか、この話に持っていくために、彼女は全ての取引や段取りを考えていたのだろう。

 シーナが領地経営を担って、カーラが迷宮討伐を担えば、エストグリュン家の再興は夢じゃないのかもな。

 貴族になる目があるのならばだが。

 

 

「タケダ家では、迷宮探索や迷宮討伐は実力制・・・・・・

 実力がないと認められないって事は理解しているのだろうな?」

「はい。それは、もちろんです。逆に実力が伴えば、認めてもらえるものだと思っております」

 実力があることというのは、最低限のラインだ。

 

 それ以外にも条件を加味する場合もあるが、それはまあいいか。

 

「迷宮討伐に選出される最低限の条件は今のところ2つだ。

 一つは、迷宮討伐を行う上での十分な経験が積まれていること。

 もう一つは、クーラタルの迷宮で迷宮討伐対象のボス戦の事前練習をして、

 十分に勝てる見込みがあると判断されることだ。

 その2つがクリアできるのか?」

「なるほど。では、それに向かって精進いたします」

「大丈夫だ。任せろ、ユキムラ殿!」

 何故、最後だけカーラが答えるのだ・・・・・・こればっかりだな、お前は。

 

 十分な経験というのは、レベルが高いことだ。彼女達には説明が難しいが。

 迷宮ボスには装備品を破壊する特性があるが、レベルが高ければ破壊される確率が減るという情報を得ている。

 だから、レベル補正が十分かかる程度の高レベルジョブの所有者が条件だ。

 

 

「取引の結果次第だが、もし、フリュウの迷宮の場所を特定する必要があるのなら、

 ザビル拠点にいるローザに協力を求めることになるだろう。

 彼女は迷宮を見つけ出す第一人者だ」

「そのような方がいらっしゃるのですね。承知しました」

 まあ、迷宮を探すとなったら、ローザの探知能力と俺のワープを駆使するだろうな。

 

 ローザには、フリュウの迷宮だけじゃなく、タリカウやミタカウあたりの野良迷宮の探知をしてもらいたいのだよなぁ。

 グリニアに至るまででも、他に野良迷宮があるのなら、それも対象にしたい。

 あまり高い階層まで成長しているのは見送るかもしれないが、野良迷宮だと階層攻略情報はないのだよな。

 無理に56階層より上の迷宮を攻略したとしても、特別なメリットがある訳でもないし。

 

 

「そういえば、カッサンドラ様の所に報告に行った際に、書庫への立ち入りを許可された。

 そこにはエルフの一族が管轄している迷宮の攻略情報等があるらしい。

 昨日、案内してもらったタリカウやタリカウ南の迷宮等の情報があるかもしない。

 フィールドウォークを使って、自由に出入りして構わないらしい。

 アミルやローザ等も連れていくと思うので、必要なら同行してくれ」

「分かりました。一度、リオンも連れて、ご一緒させていただいて調査します」

「わ、私は行かないぞ」

 誰も、カーラを連れていくなんて言ってないぞ。おばば様から期待もされてないし。

 

 カーラは1mでも、おばば様に近づきたくないのではないか?

 

「ダメです。姉上も一度は行っていただきます。

 一度ぐらいは行っておかないと、後でおばば様になんと言われるか」

「・・・・・・」

 カーラがイヤイヤと首を振っている。

 

 本当にどちらが、姉なのか分からない光景だ。まあ、シーナに任せよう。

 

 この前、リオンは冒険者のジョブが取得できるまで育成したから、今回のフリュウ村との取引にも役立つだろう。

 エルフの書庫に行くのにも便利かもしれないな。

 あとはヴェロニカも探索者ジョブだったから、パワーレベリングして、彼女にも冒険者のジョブを取得させるか。

 エルフ族なら、きっと立ち入りも問題ないだろう。

 カーラ同様、おばば様の所に近づくのを嫌がる可能性はあるが。

 まだ来たばかりだから、ジョブ希望などの確認が先か。シェルとメリルもだが。

 

 

 その後、まだ食堂にいたシェル達をシーナ達に紹介した。

 おばば様の所から難を逃れてきたと説明すると、カーラに凄く同情されていた。

 似たような経験をした者として、共感したのかもしれない。

 

 シーナがシェル達に向かって、『一緒に迷宮討伐、頑張りましょう』と言っていたのが、少し引っ掛かった。

 なんだか、エルフ派閥が形成されている気がしないでもない。

 ラファ達と揉めないでほしいな。

 

 

「エネドラとカラダンに相談して、細部を詰めてもらえるか。

 まとまったら、一度関係者を集めて会議をしよう。

 集めるメンバーは二人と相談してくれ」

「はい。お任せ下さい!」

 おおぉ、元気いいな。

 

「言っておくが、取引をまとめるだけじゃダメだぞ。

 普段の訓練や迷宮探索もこなさないとな。

 他の者達に迷宮攻略を任せるというのなら別だが・・・・・・」

「そちらの方も抜かりなく頑張ります」

「ユキムラ殿、任せろ!」

 だから、カーラさぁ・・・・・・お前一人で迷宮討伐やるんじゃないのだから。

 

 その前に、ボーデの迷宮討伐も控えているし。

 

「では、準備に取り掛かりますので、私はこれで」

「ああ、無茶するんじゃないぞ」

 焚きつけた俺が言うのもアレだが、無理は禁物だ。

 

 

 シーナとカーラが去ると、少し遠くにいたレドリックが近づいてきた。

 

「ご主人様、今、よろしいでしょうか?」

「ああ、大丈夫だ」

「ヘルミーネに確認しましたが、ラファをボーデの迷宮討伐戦に加える件、問題ないそうです」

「そうか。まあ、そうだろうな。では、後は本人の意向を確認するか」

 ラファは否とは言わないだろう。

 

「分かった。ありがとう。後は俺がラファに確認してみるよ」

「はい。よろしくお願いします」

 レドリックは去っていったので、部隊編成のスキルを発動。

 

 ラファは午前中はクーラタル迷宮探索で、午後から護衛任務だったか。

 ヘルミーネの部隊だったはず・・・・・・部隊編成のマップを見ると・・・・・・今、まさに帰宅中か。

 迷宮は既に出て、自宅に向かっているようだ。

 

 彼女達は、通常の時間に昼食を取れそうだな。

 クーラタルは地図があるから、時間が読み易くて助かる。

 昼食が終わったら、早速、ラファに確認してみよう。

 

・・・・・・

 

 食事が終わったので、既に食事を終えて雑談していたラファのテーブルに近づく。

 

「ラファに確認したいことがあるのだけど、あちらのテーブルに移動してもいいかな?」

「はい。大丈夫です」

 ラファを誘って、皆から離れたテーブルへと移動。

 

 だが、ラファの後にヘルミーネとフラウスも付いてきた。

 ヘルミーネは多分、俺が何を相談するのか感づいているのだろう。

 そして、フラウスも一緒に誘ったに違いない。

 まあ、この二人ならいいか。

 

 

「迷宮組は、多分、10日以内にボーデの迷宮討伐戦が予定されている。

 今回の迷宮討伐戦では、俺は迷宮組から抜け、俺抜きで戦ってもらう予定だ。

 俺が抜けることで一人分枠が空くのだが、ラファはそこに入って挑戦してみたいか?」

「えっ・・・・・・私がですか?それは・・・・・・挑戦したいです」

 予想通りの回答だな。

 

「カーラを含めた五人にも言えることだが、事前にクーラタルで迷宮討伐戦の練習を行う。

 その練習結果で問題がある場合には、迷宮討伐戦には参加させられない。

 誰が二匹の迷宮ボスと戦うのかも、その練習の中で判断する予定だ。

 ラファが希望しても、練習結果次第では参加できない可能性もある。

 それでも挑戦したいか?」

「はい。挑戦したいです」

 ラファは真剣な顔で頷いた。後ろに控えている二人も嬉しそうな表情。

 

「参加を希望するのなら・・・・・・今、迷宮組はボーデで49階層の探索をしているが、

 49階層か50階層の探索の途中で合流して、連携の確認をしてもらうことになる。

 今、ラファはクーラタルの迷宮探索を護衛部隊でやっているよな?

 そちらの対応をどうしたいのか教えてほしい」

「今日の午前中、43階層の攻略を終えました。午後は44階層ですが、私は参加しません。

 一日に2階層分攻略しているので、明日から3日あれば50階層まで到達します。

 50階層までは、今の護衛部隊の皆と攻略して、それから合流というのはダメでしょうか?」

 ちゃんと考えているようだな。

 

 ラファ達は、今、クーラタル迷宮の45階層以降の攻略を、帝国解放会の入会試験と同じ方法で実施している。

 明確に彼女の口から聞いた訳ではないが、自分達にはそれだけの力があると俺に見せたいのだろうな。

 なんとも強気で頼もしい限りだが、半日で1階層ずつ上がっているので、少し性急過ぎる気がしなくもない。

 だが、やる気もあるし、実際に成果も出しているから、止めにくいのだよな。

 

 半分はザビル第二迷宮の攻略にも参加しているローテーションメンバーで、半分がサンドラ、ニクラス、ゾフィといった育成途上のメンバーを加えている。

 安定した実力を見せるだけでなく、メンバーの育成も兼ねているので、なおのこと止めにくい。

 

 

「構わないぞ。今やりかけている探索に区切りをつけるのは重要だ。

 4日目なら、50階層に到達しているが、ボス部屋には到達してないから間に合うだろう。

 既にラファはクーラタルの55階層まで迷宮組と一緒に戦った経験もあるから、

 連携の確認は短時間でも問題ないだろう」

「では、今の護衛部隊の50階層の攻略が終わってから合流させてください」

「分かった。ボーデの迷宮討伐戦もそうだが、今のクーラタル迷宮でも無理は禁物だからな」

「はい。肝に銘じます。チャンスを下さって、ありがとうございます」

 まだ参加が確定した訳ではないが、迷宮ボスとの直接戦闘でなければ参加はほぼ確定だろう。

 

 ラファが迷宮討伐戦に参加するとなると、装備品破壊のレベル補正対策のために優先してレベル上げするか。

 彼女のジョブは魔道士Lv62だから、せめてLv70近くまでは上げたいな。

 今の時点でもレベルだけなら、ゴスラー騎士団長クラスなのだけど。

 

 

「話はそれだけだ。邪魔したな」

「はい。頑張ります!」

 ヘルミーネとフラウスも、ラファを囲んで祝福している。

 

 カーラとの模擬戦に負けてから落ち込んでないか心配していたのだが、これで大丈夫だろう。

 雰囲気の良くなった三人から離れて、二階の自室へ。

 

 フラウス達の方も、ザビル第二迷宮は40階層まで到達している。

 50階層までは、もう少し日数がかかるだろうが、そちらの迷宮討伐戦も考えなければな。

 

・・・・・・

 

 午後から、ボーデの49階層の探索を再開。

 今日は午後の時間を目一杯使って、探索を実施。

 カーラは午前中のシーナの提案の影響か、昨日にも増してノリノリで回避しまくっていた。

 負けじと、イレーネやヴィルマもキレの良い動きでアニマルトラップを叩きのめしている。

 この階層で出現するモンスターは癖がないから、探索が順調に進んでいく。

 

 

 おかげで、カーラの剣匠はLv46まで達した。

 この分だと明日にはLv50に達するから、剣聖のジョブ取得は確実だろうな。

 剣聖を取得しても、レベル上げに時間がかかるから、迷宮討伐戦は彼女は剣匠のジョブで臨むことになるだろうけど。

 

 ラファが合流するまでには、カーラをしっかりと仕上げておかないとな。

 夕方が近くなってきたので、適当なところで探索を切り上げた。




お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/6/24(水)の予定です。
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