玄関で外靴を脱いで、内履きに替えて装備を解いた。
アミルの装備品はいったん俺が預かってる。伝えていないが、アミルは今、探索者ではない。
コミュニケーションを重視すべきと思っているのに、つい後回しにしてしまっている。反省。
二階の自室にいったん戻って着替え、ベイルの旅亭に夕食に行くことにした。
風呂場から桶に水を移し替えて、アミルの部屋に渡しにいった。これで汗でも拭きたまえ。
アミルが非常に恐縮していたが、こういった細かいことも追々決めていかないとな。
自室で桶の水で布を濡らし、顔と体を軽く拭いて、一息ついたところで一階に降りた。
アミルも既に食堂で待っていたので、玄関を出て旅亭に向かう。
ボイルに夕食二人分のコボルトスクロース12個を渡して木札をもらい、二人分の夕食を受け取ってテーブルについた。
夕食の合間にお互いの話をする。
と言っても俺のできる話は、最初の村で盗賊の襲撃に遭ったことや、迷宮内で盗賊とよく出くわしたことなど、概ね殺伐とした話になってしまった。
さすがに10日足らずで50人前後の盗賊を討伐しているとかまでは言えないが。
一方で、アミルの話もあまり明るい話ではなかった。
奴隷になったキッカケというのが、アミルの兄が迷宮内で盗賊に襲われて大けがを負い、その傷を治す薬を買うためにアミルが奴隷として売られることになったということだ。
似たような話が原作にもあった気がする。
そして、この世界はやっぱり盗賊が多い気がする。
俺は索敵と鑑定ができるので、たまに確認しているが、普通にその辺りを歩いていたりする。
ベイルだからなのか、他の街でも同様なのかはちょっと謎だが。
見つけると、つい獲物を狙う目で見てしまう。
夕食を終えてボイルに木札を返却し、アミルと共に自宅に戻った。
話題はともかく、二人で食べる夕食は素晴らしい。
時間はまだあるので、鍛冶師の件をちゃんと話そう。
アミルを食堂に誘ってハーブティーを二人分淹れ、対面でテーブルに座った。
「アミルに相談があるんだ」
アミルは身構えながら、こちらを見つめている。
「私に相談ですか?ご主人様からのご命令であれば可能な限り、努力いたします」
うーん、そういう回答は求めていないんだよな。あくまで相談であって、助言も欲しい。
パーティージョブ設定で、アミルのジョブを探索者に設定した。
「まずは、アミルには鍛冶師になってもらいたいと思っている」
「は、はい・・・・・・なれるかどうかは分かりませんが、精一杯努力いたします。
ご存じかは分かりませんが、鍛冶師になるには探索者レベル10になる必要がありますので、
少し時間はかかりますが、まずそれを目指したいと思います」
「鍛冶師になれる条件は俺も知っている。師匠から教わったからな」
アミルは少し考えるような顔をして、
「そうでしたね。こん棒で2匹同時に殴るともおっしゃられてました」
「アミルは今、探索者レベル10だ」
「は、はぁ?」
「嘘だと思うのならアイテムボックス操作で、アイテムボックスを開いてみてくれ。
収納できる箇所が10箇所あるはずだ」
アミルは不承不承、俺の指示に従って、アイテムボックス操作のブラヒム語を唱え、アイテムボックスの数を数え始める・・・・・・が、途中で手が震えている。
「本当に10箇所あります・・・・・・でも、何故?」
アミルは突然レベルが上がっているので、不安そうな顔を隠せない。
「実は例の内密のスキルの件で、俺のスキルの中に仲間の成長を早めるスキルがあるんだ。
具体的に言うと、20倍の成長速度にするとか」
「は、はぁ?」
アミルが今度はジト目に変わった。怪訝そうな顔よりも、こちらの方が可愛い気がする。
「今日、ザビルの迷宮で半日ほど探索をしたけど、
かなり早いペースで多くのモンスターを倒しただろう?」
「仮に20倍に成長を速められたとしても、半日の20倍なら10日ほどですよね。
ご主人様の奴隷になる前は、私の探索者のレベルは3でしたが、
10日でレベル10になるとはとても信じられません」
おっ、何かが吹っ切れたのか、俺にハッキリと反論した。良い傾向かもしれない。
「そうだな。普通なら10日では無理だろう。たとえ100倍の成長速度であっても無理だな」
「はい」
「今日、モンスターを俺とアミルで何匹倒したと思う?」
「え?・・・・・・正確には分かりませんが、100匹くらいでしょうか?」
「210匹を少し超えるくらいだ」
「え?そんなに・・・・・・ああぁ、魔物部屋ですか」
「そうだな。魔物部屋は俺一人で倒したが、パーティーなのでアミルにも経験が共有されている」
「そうですね。ご主人様、一人で全滅させたので、実感がありませんでした」
「アミルが昔、組んでいたパーティーだと1日にどれだけのモンスターを倒していた?」
「日によって変わりますが、最後のあたりは、だいたい40匹前後でしょうか。
私達のパーティーは回復職がいなかったので、戦闘後の休憩を長めにとっていました。
アイテムを六人で平等に分けて、1日に6、7個くらいでしたから」
「そうだな。だとすると、アミルの昔のパーティーでいえば、5日分程の戦闘をこなした訳だ」
「はい。そういうことになりますね」
「あと違いがあるとしたら、俺たちのパーティーは二人だな」
「そうですね・・・・・・あっ、パーティーの人数が少ない方が多く経験が共有されるからですか?」
「そうだ。六人パーティーと比べると三倍。つまり210匹で5日分の3倍で15日分だ」
「はい。そう・・・・・・なりますね」
「先程説明した通り、俺のスキルで20倍の経験になるので、六人パーティーだったとしたら、
ざっくりと300日分の経験が半日で得られたことになる。
通常の探索者パーティーは毎日、休みなく迷宮に入るのは、ごく少数だと聞いている。
一概には言えないが、年単位の経験を積んでることにはならないだろうか?」
「も、申し訳ありません・・・・・・言葉の意味は分かるのですが、理解が追いつきません」
ジト目が涙目に近くなった気もする。これだとパワハラになってしまうな。
「まあ、難しいことは置いておいて、
今のアミルが探索者レベル10になったのは、自分で確認した通りだろう?
だから、鍛冶師の条件の一つを満たしたことになっているんだ」
「は、はい。ただ、探索者レベル10になったとしても、
本当に優秀なドワーフしか鍛冶師にはなれないと伺っています。
試験を受けてみないと分かりませんが、結果次第ではご希望に添えないかもしれません。
その時は申し訳ございません」
俺はアミルの言葉にうなずいた。そして、アミルのジョブを鍛冶師に変更。
ジョブに騎士を設定し、アミルの左手を持って、インテリジェンスカードオープンと念じた。
「アミルは今、鍛冶師だ。インテリジェンスカードを見てくれ」
「えっ?何故、インテリジェンスカードが?えぇぇ・・・・・・何故、私のジョブが鍛冶師に?
先ほどまで探索者だったはずなのに」
今度こそ、アミルは泣きそうだ。うれし泣きではないのが残念だが。
「今日、ザビルの迷宮でモンスター2匹をこん棒で同時に攻撃しただろう?
あれも鍛冶師になるための条件の1つだと説明したよな。
あと、インテリジェンスカードが表示されるのは、
俺のジョブを一時的に騎士のジョブに変更したからだ。この件も、『内密』で頼むよ」
俺は淡々とアミルに説明したが、アミルはオロオロとしていて、話が通じている気がしない。
「えーと、私は探索者レベル10だったけど、今は鍛冶師になっていて・・・・・・
鍛冶師は優秀なドワーフしかなれないはずなのに・・・・・・私でよろしいのでしょうか?」
「アミルが優秀であることを俺は確信しているよ。
ただ、それとは別に、鍛冶師になれるかどうかは・・・・・・
優秀なだけでなく、その条件を満たせるかどうかの運も必要だと思っている」
「俺はその条件をたまたま知っていたから、その状況をうまく作り出せるように、
アミルにいろいろやってもらったんだ。
後は成長促進のスキルがあったので早く鍛冶師のジョブ取得が実現できたってことかな」
「いろいろ試しながら迷宮で戦っていたのは、そのためだったのですね。
分かりました。では、これから鍛冶師として頑張りたいと思います」
アミルが真剣な顔で俺に意思表明をしてくれた。
立ち直ったのだろうか?混乱して自棄になっているのでなければ良いのだが。
「ああぁ、ちょっと待って。
今、鍛冶師にジョブ変更したけど、アミルには鍛冶師の試験を受けてもらおうと思ってる。
条件は満たしているから、絶対に合格はすると思っているけど。
鍛冶師ギルドで正規な試験を受けて合格しないと、正式な鍛冶師とは認められないし、
鍛冶師で生成する装備に必要な素材情報も正式に入手したいと思っているんだ」
「試験を受ける場所や条件を確認して、試験の前にいったん探索者Lv10に戻すつもりだ。
この後、迷宮で探索する際には、
アミルのジョブは剣士とか戦士のジョブに変更して、経験を積むことにしようかと思ってる。
鍛冶師に正式に転職した後に剣士とか戦士のジョブを使うことはないかもしれないけど、
せっかく得られる経験を捨てるのはもったいないからな」
「探索者をLv11以上にしてしまうと、正式な試験が受けられない可能性もあるだろうから」
アミルに今後の展開について説明する。
アミルは頷いて、
「確かに、正式な試験を受けて鍛冶師になった方が良いですね。
私では、どんな装備にどんな素材を使えば良いのかが分かりませんので。
私の兄は鍛冶師でしたが、実家に確認しに行くわけにもいきませんし」
「アミルのお兄さんは鍛冶師だったのか?
この前まで探索者Lv3であったことを知ってるのだから相談するのは無理だろうな。
やっぱり試験に合格して、正式な鍛冶師になっておいた方が良いだろうね」
「ドロップ品を全く売却していないのは、装備に必要な素材が分からないから、
売却しない方が良いと思って残しているんだ」
「初めから、いろいろと計画されていたのですね。恐れ入りました」
アミルは深々と俺に頭を下げた。そういうのはいいから。
「それで、初めに言っていた相談というのはだな・・・・・・」
「ひゃ、ひゃい」
アミルの声が裏返っている。
「アミルは鍛冶師のジョブは取得できているのだが、
正式に鍛冶師ギルドで試験を受けた方が良いと思うのだが、どうだろうか?
・・・・・・という話だったのだ」
「は、はい。あまりに普通の相談なので、逆にびっくりしました。
先程、お話しした通り、正式に試験を受けた方が良いと思います」
「そうか、じゃあ、相談は終わりだ」
「相談の前の話で、意識が飛びそうになりました」
「すまなかったな。
だが、迷宮に入る前に、一日二日で鍛冶師になる話をしても信じられなかっただろう?」
「確かにそうですね。今でも、信じられない気分ですし」
「実際に鍛冶師になれそうだと分かっていた方が、
俺の質問に対して本当に自分のこととして回答してもらえるのかなと思って、
説明の順番がこうなってしまった。混乱させてしまってすまなかったな」
「いろいろ気を使っていただき、ありがとうございます」
なんか、俺のアミルに対する気遣いって、裏目に出ていることが多い気がするのだが。
思えば、元の世界でも、彼女にいろいろ尽くしていたつもりでも最後は二股。
異世界に来たからと言って、すぐにそれが矯正される訳ないか。
い、いかん、思考の迷路に迷い込んできたので、気持ちを切り替えねば。
「迷宮攻略に限らず、俺のスキルは秘密にしなければならないことが多くて大変だが、
これからもよろしく頼むよ」
「はい。頑張ります」
不器用な主人で申し訳ないですが、これからもよろしくお願いします。
「迷宮での戦いのやり方を内密にすること、食事を主人と一緒に取ること、
外出から戻ってきたら、玄関で上履きに履き替えること・・・・・・
まあ、いろいろと我が家にはルールがあるので、守ってほしい」
「は、はぁ。正直、事の重大さが全然、違いますが、この家のルールをしっかりと守ります」
アミルがまた深々と頭を下げた。堅い、堅いなぁ。まあ、徐々に慣れていってほしい。
そのあと、我が家のルールについて、アミルがブツブツと頭の中で繰り返してる。
いきなり、詰め込み過ぎただろうか?
その間にアミルを拠点構築のスキルでリーダーに登録してみた。
既にメンバー登録は済ませてある。
前に我が家に来てもらった時の感じだと、メンバー登録してないと、明るいだけで照明設備そのものは見えないようだったし。
照明が明るく照らしてるのに、照明設備が見えないとか迷宮みたいだよな。
で、アミルをリーダー登録してみると、情報の表示に変化が。
【特 産】装備品(品質小上昇)
鍛冶師をリーダーにしたからだろうが・・・・・・品質って?
鉄製品を生成したら、鋼鉄製品になるとか?それとも空きスロットの数が増えるとか?
俺が怪訝な顔をしたからか、アミルが俺の顔を覗き込んでいる。
ポーカーフェイスに戻して、拠点リーダーをアミルから俺に変更した。
また別の機会にいろいろ試してみよう。アミルを正式に鍛冶師にした後が良いだろう。
今、アミルに拠点構築スキルでいろいろやってもらうと、よりカオスな状態になる気がする。
アミルのジョブを鍛冶師から戦士に変更した。
まだ、いろいろと話をしたいのだが、これ以上はアミルも限界だろう。俺も限界だ。
アミルとの話はお開きにした。
これから風呂を沸かすので、アミルには休憩しておいてよいと言ったのだが見学させてほしいと言ってきた。
ということで、俺が魔法を使うところを初披露することになってしまった。
しかも、無詠唱のウォール魔法の二重掛けとか。
そこでまたアミルが驚く。内密事項がどんどん増えていく。
今晩は追い焚きなので、水をウォーターウォールで追加して、ファイヤーウォールを数回かけて良い湯加減となった。
湯気がもうもうと立ち込める中、アミルに我が家のルールを一つ伝えた。
「水はこのように確保するので、我が家では基本的に井戸に水を汲みにいく必要はない」
「魔法って、迷宮以外でもこのような使い方があるのですね」
アミルが驚いていたが、多分違う。異世界転生者の特別仕様だ。
そのあと、アミルも風呂に入るという話をして、ひと悶着。
「お風呂は貴族様が入るものであって・・・・・・」
俺は貴族でもないし、風呂に入って体を清潔にすることが、この家の絶対ルールだと主張。
風呂の入り方を俺が実地で教えることと合わせて(強引に)。
まずは石鹸を使った頭の洗い方を俺がやってみせて、次にアミルの頭を俺が洗ってやる。
頭にお湯を被せたのに少し驚き、まあ、慣れてもらうしかない。
その後はもう一度、アミル自身に頭を洗わせる。
原作にもあった山本五十六方式だ。最後に褒めると子供扱いになるので、やらなかったけど。
さすがに一度も風呂に入ったことがなく、石鹸と大量のお湯で頭を洗ったことはなかったようなので、念入りに洗ってやった。
次は体の方も同じように・・・・・・教えてやった。その後、二人で湯舟に浸かる。
初めて湯舟に使ったアミルは、お湯の温度に驚いていたが、慣れると気持ちよさそうだった。
その後は用意しておいた大きな布で体を拭いた。
風呂場で襲いかかるようなことはしない。俺はジェントルマンなのだから。
洗濯は明日の朝にして、風呂に蓋をしたり、汚れものをカゴにいれておく等、細かなルールを教えて風呂の作法伝授は終了した。
食堂に二人で行って、少し温いハーブティーを淹れて、雑談。
お風呂に入ると、体の水分が不足するので、水分補給が重要だと伝えた。
あと、ハーブティーはコップに入れて、自分の部屋に戻ってからも飲んだ方が良いと伝える。
食糧庫を見せて、また驚かれたのだが、食糧庫にハーブティーを保存したり、そこからハーブティーを自由に飲んで良いことも伝えた。
ルールというほどじゃないけど、説明することが多い。普通の奴隷の扱いと違うからなぁ。
二人ともそれぞれの自室に戻って、俺は明日以降の計画をチェックだ。
まずは当面の計画目標の進捗だが、
①新規ジョブ取得とレベリング :アミルのレベリングを優先
⇒取得可能なジョブはほぼ取得済。自分自身のレベリングはほぼレベルキャップまで実施
②資金集め :元の世界から持ち込んだ物品の値付け
⇒ビー玉は2個で13000ナール(残り48個)
⇒次回から4個単位で売却。次回は5日後くらい
⇒ルークと1枚15万ナール、2枚で39万ナールで取引実施。次回以降も2枚単位を希望
③資金集め :魔結晶の結晶化促進(資金に使うか拠点に使うかは要検討)
⇒1日1300ナールほどの魔結晶は可能(レベリングを犠牲にしたボス周回で改善可能)
④パーティーメンバーの拡充(1人~2人) :避けタンクか、暗殺者候補、竜騎士候補か?
⇒アミルを迎え入れた。次のメンバーも前衛が良いだろう
⑤拠点の確保 :ベイルの賃借した家で試行(一カ月契約)
⇒アミルを鍛冶師にしたら、どの程度のことができるのか要検証
⑥モンスターカードの購入の窓口確保 :ルークに依頼中
⇒コボルトハンターとの伝手は入手済。商人ギルドに出向き、ルークに大量依頼中
⑦鍛冶師による装備の作成 :未進捗
⇒アミルの鍛冶師のジョブ取得済。鍛冶師ギルドの正式加入方法を調査する
⇒魔法使い用の装備強化や詠唱中断のスキル付与も考える
⑧ベイル以外の街の確認及びワープ地点の拡大 :次はペルマスクに行ってみる
⇒ザビルまでは到達済。ペルマスクは未。ボーデ方面も未
⑨装備品の充実 :攻撃力、防御力の強化。空きスロット付き装備品の充実
⇒掘り出し物チェックの街巡り。ドブローのダマスカス鋼の工房を探そう
⑩石鹸の作成 :中断中
⇒石鹸を試作して、風呂での普段使いに役立てる
明日は、午前中は鍛冶師ギルドを探して訪ねよう。鍛冶師の試験の詳細を確認するためだ。
終わったら、ザビルの迷宮の攻略の続きだ。
鍛冶師については、ギルドで説明を受けるのも良いが、図書館でアミルに調べてもらうのも良いかもしれない。
(コン、コン・・・・・・)
暫くするとドアをノックする音が聞こえた。俺以外にドアをノックする者は一人しかいない。
ドアを開けると、アミルが立っていた。俯き加減で表情は読み取れない。
アミルはゆっくりと顔を上げ、俺を上目遣いで見上げた。
メッチャ、可愛い。どこかで俺の理性がはじけ飛んだ音が聞こえた気がする。
「・・・に参りました」
よく聞き取れなかったが、意図は伝わった。
俺はアミルの頭を撫でで、ベッドに誘った。
ベッドの上で彼女を抱き上げようとすると、体が酷く冷たいのに気付いた。
これは・・・・・・かなり緊張しているのか。
さきほど風呂に入れたばかりなのに、もうこんなに冷えて。
初めての夜で体を温める余裕もなかったのか。
これは少し時間をかけてからだな。
掛け布団を被せて、体を包み込むように抱きしめた。
そして、昼間の戦闘でも夜であっても、便利に使える鬼人族の体(腕四本)。
四本の腕で彼女を包むようにして、じっと温める。
何も分からないまま・・・・・・彼女が上目遣いで、こちらを見上げていて・・・・・・可愛いと思う。
時々、下腕の腕を伸ばして彼女の冷えた足先を揉みこんで温める。
まだひんやりしているな。
彼女が少し震えているのが分かる。
可哀想に・・・・・・こんなに緊張して。
初めての夜にあまり知らない男に身を任せるのだから、怖くて当たり前だ。
とはいえ、こちらもここまで来て、後には引けない。
彼女が少しでもリラックスできるまで待とう。
暫くの間、ただ抱きしめて、手足の先を揉みこむだけの時間が続く。
「あの・・・・・・ご主人様、私は大丈夫ですから・・・・・・」
「・・・・・・」
こんな手足が冷えた状態で無理はさせられないよ。
彼女の頭を撫でながら、今暫く温まるのを待つ。
:
:
:
かなり温まってきた。これなら・・・・・・。
「大丈夫?」
コクリと無言で頷いている顔が、とっても可愛い。
ゆっくりと唇を近づけて優しく啄む。
「ん、ふっ・・・・・・」
少し体を強張らせた彼女を抱きしめながら、空いた手で彼女の肢体をゆっくりと撫でる。
彼女の速くなった鼓動が伝わってきた。
背中、胸の先端、太腿・・・・・・緩やかに指を這わせて、彼女の反応を確かめる。
まだ、緊張が完全には無くならないか・・・・・・今日は初めてだしリラックスなんて無理だな。
それでも、アチコチ指や掌を使って撫でていると、彼女の準備が整ってきたのが分かった。
「初めは少しだけ痛いけど、我慢して」
上目遣いで無言で頷くアミルは・・・・・・儚げで可愛い。
彼女の両脚の間に体を入れ・・・・・・無理に体重をかけないように、ゆっくりと侵入を果たした。
「いっ、つっ・・・・・・」
(手当、手当、手当・・・・・・)
痛みを取り除くために、僧侶の治癒魔法を無詠唱で連続してかけた。
「もう、大丈夫かな?」
「あっ、はい。痛みが無くなったような・・・・・・?」
なら大丈夫か。
迷宮の傷以外も癒す効果があることは事前にヒアリングしていた。
質問した時は、下心があったので、ちょっと後ろめたかったのだけど。
その後は優しくアミルを翻弄しながらも、異世界迷宮仕様を堪能。
唇をゆっくりと蹂躙しながら、四本の腕でアチコチ撫でながら彼女の熱い息を胸に感じる。
初めての夜が四本腕の男とか、色魔のジョブを持つ男に遭遇する以上に稀な経験ではないだろうかと思ってしまう。
でも、こちらも抑えるのが困難だ。
初回だし、添い寝だけで終わろうかと思っていた自分はどこかに行ってしまった。
スリムで引き締まった肢体を両腕で抱き締め、胸の先端を優しく転がし、今日は止めておこうと思っていた体の中心の先端も指の腹で慎重に撫で上げる。
「あっ、あっ、・・・・・・」
ちょっと刺激が強すぎたか。
でも、桜色に染まった彼女の顔を見てしまうと、ブレーキをかけられない。
ゆっくりと律動を開始して、彼女を高みに持ち上げていく。
やがて、彼女は体を反り上げて、
悶絶する彼女を確認し、こちらも欲望を解き放つ。
固く目を閉じて、震える彼女の頭を撫でながら、四本の腕でゆるやかに抱き締めた。
初回から、ちょっと飛ばし過ぎたか?
それでも、今晩はこれで終わり・・・・・・にはできないよなぁ。
その後も・・・・・・風呂場ではジェントルマンだったが、ベッドの上では魔王の振る舞い。
今まで我慢していた反動のせいかもしれない。
転移前に、この鬼人族を選択して正解だったと心の底から感じた。
お読みいただき、ありがとうございます。
これで、ようやく序章が一区切りです。
このあと、閑話を2つ挟んで、1章に続きます。
序章は転移してから、一人目の奴隷を得るところまで。
1章は拠点活動が本格化して、仲間が増えていくところを描く予定です。
1章になったから戦乱モードになったりはしません(できません)。
戦乱の話を本格的に記載するのは、相当先になります。
本格的な戦乱を描く前でも、ちょこちょこ戦乱の兆しは記述する予定です。
ただ、戦闘のルールとか、勝利条件とか、まだ決めかねてる感じだったりします。
・基本的には貴族同士の戦い(冒険者パーティーを雇うのはアリ)
・国同士の戦いでも、前線では局地戦(SRPGっぽい感じ)
・自国および相手国の領民の虐殺などはほぼできない(盗賊落ちする等の縛り)
・宣戦布告後は、相手国の騎士団員を殺しても盗賊落ちなどはしない
みたいなことを考えています。
いせはれのスキルや特性を使ったギミック等を描きたいとも思っています。
何か、面白そうなアイディアがありましたら、感想欄にお願いいたします。
いせはれの好きな人なら、私の考えよりも戦乱に刺さる発想があるのではないかと思います。
(2026/3/22追記)
夜の課外活動については、序章から暫くの間、少し弱めの表現にしていたのですが、1章の途中から強めの表現にしました。
その後、特に問題指摘もなかったので、序章以降も徐々に記載レベルを合わせるために修正をしていきます。
少し修正には時間がかかると思いますが、読み直す方がいらっしゃいましたら、『ああ、修正したのね』程度でスルーしていただけると。
今後とも、拙作をよろしくお願いいたします。