異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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124.次の迷宮討伐に向けて

 50階層のボスモンスターを討ち果たして、ギルド神殿がドロップした。

 ボーデ迷宮の討伐が確定したことになる。

 

 これで、シーナやリオン達を身請けした際のハルツ公との約束を果たしたな。

 後は迷宮討伐の報告とギルド神殿の引き渡しをするだけだ。

 

 

 討伐を成し遂げた6人へゆっくりと近づく。

 ラファはヘルミーネとフラウスに囲まれ、祝福されている。

 

 一方で他の五人は嬉しそうな顔をしているものの、いたってクールな感じだ。

 カーラは初めての迷宮討伐のはずだが、今回の見学者には元エストグリュン家のメンバーはいないし、自分自身が迷宮ボスとガチで戦っていないからかも。

 

 ヴィルマとイレーネは、もう少し喜ぶかと思ったのだが意外だな。

 バーナ語で、小声で感想を言い合っているようだ。

 ボスモンスターとの戦いで何か得たものや、感じることがあったのだろうか。

 

 オリビアはお供を早々に片づけ、迷宮ボスとの戦闘にも参戦した。

 彼女の活躍で一気に局面を打開したように感じた。

 それなのに得意げに何かを言う訳でもなく、クールにギルド神殿を持つラファを見ている。

 

 アミルはリーダー役を無事果たして、ホッとしているのかもしれない。

 ある意味、一番プレッシャーがかかっていたのは彼女だ。

 リーダー役としての一面と鍛冶師としての一面・・・・・・見える部分、見えない部分での彼女のタケダ家への献身には本当に頭が下がる思いだ。

 それだけに俺抜きで迷宮討伐を成し遂げたことに、素直に称賛したい気持ちが湧いてくる。

 

 他の護衛部隊のメンバーも、これに続いて迷宮討伐を次々と達成できるといいな。

 

 

 アミルに近づいていくと、彼女も小さくこちらに手を振っている。

 うん、頼もしいだけじゃなくて、可愛いわ。才色兼備というやつだ。

 

「迷宮討伐、無事終わらせたな。お疲れ様。そして、おめでとう」

「はい。ありがとうございます。皆さんが頑張ったおかげだと思います」

「その皆さんの中に、アミルもしっかりと入ってると思うぞ。お世辞抜きで」

「あはは、そうだといいですね」

 謙遜しているのか、まだ自信が無いのかどちらだろう。

 

 半年ぐらい前までは探索者Lv3だったが、今の彼女からは想像もつかない成長ぶりだ。

 迷宮組の中核メンバーであり、筆頭鍛冶師としての自負を持っているのだと思いたい。

 

 

「これからも頼りにしているぞ」

「はい。お任せ下さい」

 俺は気の利いた言葉の一つもかけられない残念な男だな。

 

 こちらも、彼女達に負けないように成長しなければ。

 

 アミル以外の四人にも次々に労いの言葉をかけ、最後にラファの所へ。

 

 

「ラファ、やったな。迷宮討伐戦はどうだった?」

「私は今回、お供のモンスターを牽制しながら、雷魔法を撃っていただけですから。

 やはり、迷宮組の皆さんとは実力の差を痛感しています」

 いやいや、モンスター一匹と近接戦闘しながら魔法を放つのなんて、簡単にできないだろう。

 

 14才にして、迷宮討伐パーティーの標準レベルを十分に越えていると思うけど。

 この帝国の標準なんて知らないけど、エステル達のパーティーでも魔道士は魔法を撃つのに徹していた気がする。

 迷宮討伐戦になると、別のフォーメーションや戦術を行使するのかもしれないが。

 

 

「次は護衛部隊の・・・・・・自分達のパーティーで迷宮討伐を成し遂げたいと思います」

「そうか。次か・・・・・・」

 もう、次のことを見据えているのか。

 

 ラファはヘルミーネと一緒に迷宮討伐を成し遂げたいのかもしれない。

 一緒に王国から帝国に流れ着いた訳だし。

 ヘルミーネが何か真剣な顔でラファの言葉に頷いているな。

 横にいるフラウスもレイモンドのパーティーで迷宮討伐戦に志願している。

 頼もしい連中だよ。

 

 やがて、見学者のメンバーが俺の周りに集まってきた。

 

 

「じゃあ、ここから出るか。事前に話していた通りにパーティーを組んでもらえるか?」

 

 俺の指示に、各パーティーのリーダーがパーティーを組み始めた。

 

ザビル第二迷宮探索組:レイモンド、モニカ、マリー、フレイヤ、フラウス、ドロテア

 

クーラタル拠点帰還組:ヘルミーネ、レドリック、ケリー、ミラ、トカラ、マヤ

 

ザビル拠点帰還組  :ローザ、マテウス、ニケ、ヒューゴ、マチルダ、ラファ

 

 ラファは、ボーデ迷宮を出るために、一時的にザビル組に合流する。

 ここから移動しようとしても、全て迷宮の出口に繋がってしまう。

 24人なので、4つのパーティーを組む必要がある。

 

 そして、ここを出る時にはラファの替わりに俺が迷宮組に入ることになる。

 俺は迷宮討伐を成し遂げてはいないのだが、公爵に報告する手前、表向きには俺も迷宮討伐を成し遂げたと説明するしかない。

 少し、ラファに対して後ろめたい気分だけど。

 

 

「ユキムラ様、これを・・・・・・」

「ああ、ありがとう。この後、ハルツ公に報告して渡してくる」

 ラファからギルド神殿のボールを受け取り、リュックに仕舞った。

 

 

「じゃあ、レイモンド、ヘルミーネ、ローザの順で、時間を少し空けながら出てくれ。

 迷宮を出たら、今朝の移動場所のあたりで待っていてほしい」

 

 一度に4パーティーが同時に出ると不自然なので、少しだけ時間差をつける。

 朝と同様の細かい偽装工作だ。

 本来は迷宮討伐を成し遂げた俺達が最初に出るのが自然なのだが、トラブルがあると拙いので最後に出る予定。

 

 

 時間を潰すために、近くにいたレドリックに話しかけた。

 

「今日は迷宮討伐の振り返りの後、次の迷宮討伐を含めた目標設定の相談をしたいと思う。

 レドリックも参加してもらえるか?」

「はい。承知しました。

 多分、今日の見学会で自分達も迷宮討伐に参加したいという気運が高まったでしょう」

 きっと、そうだろうな。

 

 実際に自分の目で見ると、目標に近づこうとする意欲が湧いてくるだろう。

 そのために、見学会を企画したのだから。

 だが、人選は難航するかもしれない。

 手近に討伐できそうな迷宮が限られており、希望者の分だけ対象となる迷宮がない。

 

 迷宮討伐を『手近』なんて表現するのは、少しアレだが。

 タケダ家でも貴族家ほどではないが、迷宮討伐希望者の待ち行列ができるかも。

 

 やがて、ヘルミーネのパーティーが迷宮を抜け出し、ローザ達も時間を置いて後に続いた。

 残されたのは、俺やアミルのいる迷宮組のみだ。

 

「こんなに続けて、迷宮討伐をするなんて不思議な気分です」

「そうだな」

 ターレの迷宮討伐をして、その数十日後にボーデだもんな。

 

 次はザビル第二迷宮か、アキシマの迷宮だろうか。

 

 

「じゃあ、俺達も出ようか」

「了解」

「了解」

「了解」

「了解」

「了解」

 入口の兄ちゃんに報告するために、ボーデ迷宮を後にした。

 

 

「あっ、丁度良いところに・・・・・・

 先ほどから、たくさんのパーティーが続々と迷宮から出てきてるのですけど。

 朝も複数のパーティーが迷宮に入ってましたし、これは一体?」

「ああ。先ほど、迷宮討伐をしてきた」

「は?」

 リュックからギルド神殿を取り出して、兄ちゃんの掌に乗せた。

 

「ほら、この前見たのと同じだろう?

 疑うのなら、迷宮の入口に入ってみたらどうだ?どこにも行けないぞ」

「また、ですか?」

 今回は、ちゃんと最新階層の案内もしていたのに、何故『また』呼ばわりされるのだろうか?

 

 

 兄ちゃんはギルド神殿をいったん俺に返却して、小走りで迷宮の入口へと向かった。

 やがて、首を傾げながら戻ってきた。

 

「確かに、どこにも行けませんでした。迷宮討伐されたのでしょうね。

 でも、これは一体どういうことなのでしょうか?」

「・・・・・・?」

 何か不満や疑問に感じることがあるのだろうか。

 

 最新階層の案内もしていたし、ギルド神殿も見せたし、迷宮にも入れない。

 紛うことなき迷宮討伐だと思うのだが。

 

「何か疑問な点でもあるのだろうか?」

「この前だって、五人で迷宮討伐していたじゃないですか?

 今回、一人増えて六人になったのは置くとして、

 迷宮討伐の日・・・・・・最終日に、こんなに探索者が増えるのっておかしくないですか?」

「ああ、それは、迷宮討伐の日を我が家の者に体験してもらおうと思ったのだ」

「体験?何を体験するのですか?」

 一応、この不自然さの振る舞いの説明論理は考えてある・・・・・・それでも不自然なのだけど。

 

「迷宮が討伐されると、その時に入っていた探索者のパーティーは、

 ダンジョンウォークを使おうとしても、みな出口に向かってしまう事象が発生する。

 それは知っているか?」

「ああ・・・・・・そういえば、そんな事を聞いたことがあったような」

「それを我が家の者に体験してもらいたかっただけなのだ」

「は、はあ?」

 く、苦しいが、それぐらいしか最終日に4パーティーを集結させる理由は思いつかなかった。

 

「迷宮討伐をするかもしれない日に、我が家の他の者にも貴重な経験を積んでもらった訳だな」

「はあ。まあ、今更変わったことの一つや二つ増えたところで、別に構いませんけど・・・・・・」

 一つや二つって・・・・・・お前なぁ。

 

 そんなに俺は奇行が目立つという意味か?

 だが、馬鹿正直に『迷宮討伐見学会をやってました』とは言えない。

 言ったところで信じてもらえるはずもないのだが。

 

 

「えーと、ハルツ公の所に報告に行った方が・・・・・・」

「お願いします!・・・・・・私では説明できませんので」

 いやいや、二回目だから、もう説明できる気もするけど。

 

 今回は、ギルド神殿を納品したという確約を取る必要があるから行きますけどね。

 

 

「じゃあ、ちょっと、我が家の者を帰宅させるので、少しだけ待っていてもらえるか?」

「はあ。別に構いませんけど」

 ちょっと俺しかできないことがあるので、待ってもらうしかない。

 

 タケダ家のメンバー達がいる所に行き、迷宮討伐の報告をするため、俺だけボーデの城に行くことを伝えた。

 そして、レイモンド達のパーティーをザビル第二迷宮の中へとワープで送り出した。

 迷宮討伐戦の直前に、ザビル第二迷宮からボーデ迷宮へと引っ張ってきたので、戻す時にはザビル第二迷宮へワープで直接送らなけばならない。

 ザビル第二迷宮の出口から出てきてないので、今から迷宮入口を使って入ると、常駐している騎士団員に怪しまれるからだ。

 

 偽装に偽装を重ねると、作業が煩雑になるなぁ。

 この辺りが、さっきの兄ちゃんに『奇行』呼ばわりされる原因なのだろうか。

 でも、せっかくの見学会の企画だったので、レイモンド達を呼ばないのは可哀想だったし。

 ザビル第二迷宮の探索もさぼりたくなかったので仕方ないのだ。

 

 ヘルミーネとローザのパーティーは普通にクーラタルの自宅へと戻っていった。

 ラファを送り届けたら、ローザ達は拠点間移動でザビルへ行けるから楽だろう。

 さて、これで見学会関連の作業は終わりかな。

 

「待たせたな。じゃあ、ボーデの城に行こうか」

「はい。よろしくお願いします」

 なんだかんだと、この兄ちゃんとは迷宮討伐報告は二回目だ。奇妙な縁だよな。

 

 兄ちゃんを俺のパーティーに加え、ボーデの城の近くまでフィールドウォークで移動。

 二人で騎士団の詰所に歩きながら雑談。

 

「ボーデ迷宮が討伐されたら、次はハルバーに行くのか?」

「うーん、どうなのでしょう。下っ端なので、命じられた所に行くしかないですね。

 次も迷宮番かどうかなんて分かりませんし」

 そんなものか。まあ、必ずしも外勤とは限らないのかも。

 

 でも、この兄ちゃんは迷宮の入口に突っ立っているイメージしかないのだけど。

 この返事の仕方だと、ハルバーの迷宮はまだ討伐されていないようだな。

 原作だと、もっと早く討伐されていたはずだが、盗賊やらセ二号作戦の影響なのだろうか。

 

 兄ちゃんは門の護衛騎士に一声かけ、奥の方へと去っていった。

 さて、ハルツ公への説明は特に詳細の説明は不要だよな。

 ターレの時も大した説明をした記憶がない。

 むしろ、他の余計な依頼を受けないように注意しないと。

 まさか『では、次はハルバーをよろしく』なんて言われることはないと思うけど。

 

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 前回と違い、結構待たされるな。

 というか、いつもが早過ぎるだけで、普通はこんなものなのかもしれない。

 それでも、セ二号作戦の返り討ちでセルマー伯領がギルド神殿を奪われたから、一刻も早く追加のギルド神殿が欲しいはずだ。

 『忙しいから、また明日来てくれ』なんてことはないだろう。

 

 

 やがて兄ちゃんではなく、別の騎士団員が呼びにきたので、後について執務室へと向かった。

 ・・・・・・向かっているのは、執務室ではないようだ。今日は別室か。

 着いた先で騎士団員がノックすると、返事をしたのはゴスラー騎士団長っぽい。

 

 団員のエスコートで室内に入ると、そこにはゴスラー騎士団長しかいなかった。

 珍しい、今日は騎士団長と一対一か。

 ここは騎士団長の執務室なのかもしれない。

 大きくて豪華な執務机で彼は書類仕事をしているようだった。

 そして、兄ちゃんの姿を見ないということは、今頃報告書でも書かされているのだろうか。

 前も確か、そんな事をやっているとか言ってたような。

 

「タケダ殿、よくいらっしゃいました。本日、閣下は所用で外しております。

 先ほど団員から迷宮討伐されたと報告があったのですが・・・・・・」

「はい。その通りです。これがギルド神殿となります」

 リュックから丸い珠を出して、彼に手渡した。

 

「確かに。このわずかな期間にターレに続き、ボーデの迷宮まで。

 閣下もきっと、お喜びになるでしょう」

「いえ。約束を果たしただけのことですから」

 シーナ達の身請けの取引条件だったからな。

 

 これで貸し借り無し・・・・・・というか、取引完了になったはず。

 次回からは、迷宮討伐の対価は、もっと値を吊り上げるかもね。

 

「我らもハルバーの方を早々に片づけたいのですが、人手を回せずに難儀しております」

「まあ、一つ片付いたので、人材が集中できるでしょう」

 あの兄ちゃんが迷宮探索の戦力になるのかは知らんけど。

 

 ハルバー討伐までは契約外なので、余程良い条件でなければ引き受ける気はないし。

 ハルツ公から引き出せる魅力的な対価というのが、ちょっと思いつかないのだよなぁ。

 魔法使いか竜人族の奴隷を二、三人もらえるのなら考えるけど、そんな人材いたら、ハルツ公領内で活躍させるだろうし。

 それと貴族令嬢(ハニトラ要員)は、もうノーサンキューだ。

 

 そして、迷宮討伐の完了を認めた書類を受領。

 ギルド神殿の受領書ってやつなのかな。ハルツ公の公印が押されているようだけど。

 

 その後も、差しさわりのない雑談で流して、騎士団長の執務室を後にした。

 団員の後について、出口へと向かう。

 

 途中、セ二号作戦で知り合った騎士団の者達にも会い、軽く会釈をした。

 なんだか、俺もこの城に馴染んできたような気がする。

 それでも『勝手に執務室へどうぞ』と原作のような展開にならないのは、危険人物と見なされているのだろうか。

 もう今更、気にしないけど。

 

 門までエスコートしてくれた団員に礼を言い、城を出て自宅へとワープで移動。

 エネドラに帰宅を告げ、二階の自室へ。

 着替えながら、結構腹が減っているのに気づく。

 そういえば、もう昼をかなり過ぎているものな。

 午前中も結構、バタバタとして時間があっという間に過ぎたし、腹も減る訳だ。

 

 一階へ降りて、遅めの昼食を取ろうとするとエネドラから報告が。

 

「旦那様、増築工事の居住部分が終わったと親方から報告がありました」

「おっ、そうか。となると、残りは厨房、食堂と二階に拡張した作業部屋になるのか」

「食堂の方は増築部分はかなりできているので、

 今のこの場所と繋げるために壁を外すだけですね。

 あとは、お風呂のスペースやシャワー室の部分もほぼ完成しているようです。

 残っている大きな部分は二階の作業部屋と、厨房の拡張です。

 厨房を拡張する時は、今の厨房が使えなくなるので、ザビル拠点に協力してもらいます」

 それはそうか。食べるスペースはなんとでもなるけど、調理場所は流石に無理だよな。

 

「そこは、ザビルのナナさんとも話をしてありますし、

 こちらも人手を出しますから大丈夫だと思います」

「ザビルの増築工事の時は、逆にこちらが助ける事にもなるから、

 お互いが上手くやっていこう」

 大き目の拠点が2つあって、拠点間物資輸送が使えるから、調理済の料理は輸送できる。

 

 まさか、拠点のスキルで料理を運ぶことになるとはね。

 クーラタルの店で買ってくるにしても、うちは人数が多いからなぁ。

 しかも三食だから、かなりの分量になる。

 

 

「いろいろ面倒をかけるが、よろしく頼む」

「このぐらい何でもありません」

 そうか、長期間に渡った増築工事も、ようやく終わりに近づいてきたな。

 

 クーラタル側が終われば、今度はザビル側で始まるのだけど。

 

・・・・・・

 

 昼食を終え、二階に上がり、迷宮へ行く準備。

 時間が中途半端になったので迷宮組とは行動は共にせず、パワーレベリングをする。

 今回はエルフ組を中心に、前衛、後衛をバランス良く育成する予定。

 

 ザビル第二迷宮の42階層に移動し、1階層ずつ降りながら、魔物部屋を殲滅して回る。

 35階層の魔物部屋を殲滅したところで終了。

 

 この後は迷宮討伐の振り返りがあるので、少し早めに切り上げた。

 

・・・・・・

 

 着替えて、食堂に向かうと、集まり具合は半分を超えたぐらいのようだ。

 迷宮組とラファは修練場にいたので、既に着席している。

 ザビル拠点組も時間調整をしたのか、集まっていた。

 

 あとはザビル第二迷宮の探索組か。

 地図無しのガチ探索だから、簡単には戻ってこられない。

 それでも、部隊編成のスキルでマップ確認すると、既に迷宮を出たようなので、そのうち戻ってくるだろう。

 

「レイモンド達が今、迷宮を出たばかりなので、彼等が帰宅するのをもう少し待とうか」

 

 エネドラ達が気を利かせてハーブティーを配ってくれているので、寛ぎながら待つことに。

 レドリック達がまとめてくれた迷宮討伐の希望者リストに目を通しながら、次の迷宮討伐戦の編成について検討。

 

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 やがて、帰宅して着替えたレイモンド達が食堂に現れ、席に着いた。

 

 

「じゃあ、全員集まったようだし、始めるか。

 今日のこの場はボーデ迷宮の討伐戦の振り返りと、次の迷宮討伐戦に向けた議論をする場だ。

 まずヴィルマ、イレーネ、オリビア、アミル、カーラ、ラファ・・・・・・迷宮討伐おめでとう。

 タケダ家のメンバーによる二回目の迷宮討伐戦の成功したのは六人の努力の賜物だ。

 同時に、迷宮での戦いを支えてくれたエネドラ達、後方支援メンバーの日々の献身や、

 他の護衛メンバーの支えがあって、二度目の迷宮討伐が成功したのだと思っている。

 タケダ家の総力で成し遂げたのだと俺は思う。

 改めて感謝したい。みんな、ありがとう!」

 

 立ち上がって、皆を見回して頭を下げた。

 ちょっと儀式臭い言い回しだが、本心だ。

 前回の振り返りの時も似たような事を言った記憶がある。

 

「見学していたので、みな分かっていると思うが、今一度、今回の迷宮討伐戦の説明をする。

 今回は、迷宮ボスと対峙したのはヴィルマとイレーネ、お供はオリビアとカーラが受け持った。

 魔法攻撃と遊撃をラファが担い、全体の指揮をアミルが執った。

 本来は治療職が一人入るべきところだが、

 今回はスキル融合武器を使うことで神官系のジョブを加えることはしなかった。

 近接戦闘が得意な者が多かったので、その力で押し切った形になるが、

 それは特殊なことなので、基本は一人治療職が入るべきだと思っている。

 標準的な迷宮討伐戦の編成としては・・・・・・、

 前衛職が3名、魔法職1名、治療職1名、探索者1名だと思っている。

 ここまでは、大丈夫だろうか?」

 

 参加者の何人かは頷いているのが見て取れた。

 だいたいの迷宮探索の編成がそのような形で進められているので、異論はないのだろう。

 特にタケダ家では、魔法使い系のジョブを持つ者がそれなりにいるため可能な編成なのだ。

 

「今回はヴィルマとイレーネが迷宮ボスを回避と攻撃のバランスを取りながら抑えてくれたので、

 お供のモンスターを無力化したオリビアが迷宮ボスの戦闘に支援に入り、

 そのまま一気に討伐への流れを作ったと思っている。

 カーラやラファの所も飛行系のモンスターを抑えてくれていたので、安心して見ていられた。

 そして、探索者であるアミルが全体の戦線の綻びが生じないように、常に目を配っていた。

 オリビア以外の所が、飛行系のモンスターだったので三か所は膠着させ、

 一点突破を図りながら勝ち筋を付けたことになる」

 

 参加した迷宮組のメンバーを見ると頷いているので、一応は理解してくれたのだろう。

 

「事前に昨日、アミルが説明していた通りのプランで進められた訳だな。

 全員がプラン通りに自分達の役割を果たしたことが、成功に繋がったと思っている。

 これから迷宮討伐戦に挑むことを希望している者は、今回の迷宮討伐戦を雛型にして

 自分達のパーティーがどのように迷宮討伐戦に挑むべきなのかを考えてもらいたい」

 

 レイモンドが大きく頷いている。

 次の迷宮討伐戦が近づいてきているし、希望者でもあり、リーダーでもあるからな。

 

「レドリック達から、迷宮討伐戦の希望者のリストを受け取った。

 正直なところ、これだけ多くの者が希望していることに頼もしさを感じている。

 既に説明を受けていたと思うが、参加に際しては50階層で十分に戦えることと、

 50、51階層の階層ボス戦をクーラタル迷宮で事前に確認し、

 勝算が見込めると判断されない限りは参加は認められない」

 

 ここまでの説明では、あまり動揺が見られない。

 事前に説明していたからな。だが、問題はこの後の説明だ。

 

「今回の迷宮討伐戦のボスモンスターとの事前戦闘の基準では、

 10戦して、ボスからの攻撃を被弾した回数が通算で1回以下、

 つまり2回以上受けた場合にはボスとの対峙は認めないことにした。

 ヴィルマとイレーネは、それをクリアできたので、迷宮ボスとの戦闘が認められた訳だ。

 知っての通り、迷宮ボスは装備品を破壊する能力を持っているので、

 それを意識した基準にしてある」

 

 基準の説明をすると、主に前衛職がざわついてるのが分かる。

 自分達にできるだろうかと不安に思ったのかもしれない。

 

 

「この基準は今後、見直す可能性もあるし、

 武器や盾を使い捨てにする戦術を使いたい場合は、それを認めることを検討しようと思ってる。

 それでも、前衛職と探索者での連携が十分であることを判定基準に加えることになるはずだ。

 装備品の受け渡しが上手くできないようでは、とても許可ができないからな。

 それを踏まえて、自分達の日々の探索を頑張ってほしいと思っている」

 

 少し雰囲気が和らいだか。

 自分達にできること、できないことを吟味し始めたのかもしれない。

 

 

「特に迷宮ボスとの戦いを望む前衛職の者は、ボスモンスターと単独で戦う能力が求められる。

 だが、それは必ずしも単独で倒すことを意味する訳ではない。

 ボスの攻撃を回避できる、もしくは封殺できる能力があること。

 それは、防御に徹することでも構わない。

 両翼のお供のモンスターを討伐、もしくは無力化したのを待つのも立派な戦術だ。

 それに我が家の基本戦術は、討伐ではなく状態異常による無力化だからな。

 ボスモンスターとの戦いを膠着戦術にする場合、お供のモンスターとの戦いが突破口になる。

 どのような戦術を使いたいのかは、日々の迷宮探索の仲間同士でよく話し合ってほしい」

 

 

 おっ、ドロテアが手を挙げて発言を求めている。

 こういう場で発言する彼女は珍しい気もする。

 

「あの、私は魔道士のジョブに就いていますが、

 ラファさんのような近接戦闘は得意ではありません。

 そのような者には、迷宮討伐戦への参加は認められないのでしょうか?」

「必ずしも、そうではない。

 確かに魔法職や治療職でありながら、

 近接戦闘ができる者は戦闘での選択肢が増える分だけ有利になることは事実だ。

 だが、魔法職、特にサンダーストームが使える魔道士は迷宮討伐戦では要となる存在だ。

 サンダーストームを撃ちながら、近接戦闘以外の役割をこなすことを考えても構わない。

 例えば、探索者が果たす全体管理の補佐をしたり、

 装備品破壊の際の予備の装備品の受け渡し役を担う等だ。

 今回は装備品の破壊は発生しなかったが、次回もそうだとは限らないからな」

 俺の言葉に彼女はホッとしたようだ。

 

 それにしても、彼女も迷宮討伐戦に志願してるのだよな。

 我が家に参加したての頃には、そんなことを希望するとは思ってもみなかったのだが。

 

「もう一度言うが魔法職や治療職の者は

 魔法攻撃のみ、治療魔法のみの役割に拘泥するのではなく、

 近接戦闘に参加する、探索者の補佐をする、装備品の受け渡しを行うなど、

 自分の活動範囲を広げることも考えてほしい。

 その延長が日々の迷宮探索や迷宮討伐戦の安全に繋がるのだからな。

 そして、それは魔法職、治療職に限らない。

 前衛職で攻撃が得意な者、回避が得意な者、防御が得意な者、

 自分の得意な分野だけでなく、他の分野に活動の幅を少しだけ広げることも考えてほしい。

 探索者についても同様だ。

 そして、個人だけでなく、仲間との連携方法も今まで以上に考えてもらえると嬉しい」

 

 主にリーダー格のメンバーが頷いてるから、彼等彼女等に任せて大丈夫だろうか。

 

 

 ミラが周りを気にしながら、恐る恐る手を挙げているので発言を促した。

 

「私は今、暗殺者のジョブに就いてますが、

 状態異常を付与する特殊な盾やリーチの長い特殊な片手剣を使って

 活動の場を広げたいと思っています。

 タケダ家では、あまり標準的な戦闘方法ではないと思いますが、

 こんな私でも迷宮討伐戦に志願していますが、問題ないのでしょうか?」

「ああ、全く問題ないぞ。

 そもそもミラの模索している装備品は、迷宮探索で使おうとしているよな?」

 ミラは少しキョドりながらも頷いた。

 

 

「まだ、模索中だからダメになるかもしれないし、改善が進んでもっと役に立つ可能性もある。

 迷宮討伐戦は通常の迷宮探索の延長だと思っているので、

 迷宮探索で役立つのであれば、迷宮討伐戦で役立つかもしれない。

 確かに今は標準的ではないかもしれないが、今後は使う者が増える可能性もあるしな。

 スキル融合装備や通常装備品、戦闘方法の改善は日々の積み重ねだと思っているし、

 その積み重ねの結果が今のタケダ家に繋がっていると考えている。

 だから、日々、模索をすることを止めないで挑んでほしい」

「分かりました。頑張ってみたいと思います」

 今日はドロテアといい、ミラといい、普段発言しない連中が発言するので新鮮だな。

 

 

 その後も、数名から今回の迷宮討伐戦への感想や、自分達の戦い方への助言が求められたりして、それなりに盛り上がった。

 避けタンクと通常タンクの役割や改善方法など、結構熱い議論になった。

 残念ながら『博徒』についてはルイもいなかったので話題に上がることはなかったが、次にエルフ組が参加した時には議論しても面白いと思った。

 

 最後は、何名かのグループに分かれて、ほぼグループワークの様相を呈してきたので、いったん終了することにした。

 

 迷宮討伐見学会にしても、振り返りの会にしても、タケダ家で迷宮討伐に挑もうとする者達のモチベーション向上に繋がったのではないだろうか。

 企画した甲斐があったかもしれない。

 

・・・・・・

 

 迷宮討伐戦の振り返りを終え、護衛部隊の幹部だけ残って今後についての相談。

 参加者はレドリック、ヘルミーネ、マテウスの三人のみ。

 

「次の迷宮討伐に向けて、パーティーの編成を少しずつ固めていくべきかと思ってる。

 具体的にはザビル第二迷宮とアキシマの迷宮のパーティー編成だ」

「アキシマ・・・・・・」

 ヘルミーネの目が真剣になった。

 

 彼女が目指す迷宮討伐の対象だからな。

 

 三人に対して、まずは俺の提案の説明。

 基本的には、2つの迷宮討伐に挑むパーティーの割り振り。

 

(ザビル第二迷宮)

 リーダー:(探索者)レイモンド

 メンバー:(前衛)レドリック、ケリー、フレイヤ、(治療職)フラウス、(魔法職)ドロテア

 

(アキシマの迷宮)

 リーダー:(探索者)ヘルミーネ

 メンバー:(前衛)モニカ、マリー、ミラもしくはマヤ、(治療職)ラファ、(魔法職)トカラ

 

「前衛職については、2つのパーティーで多少は入れ替えても構わない。

 だが、レドリックとヘルミーネは分かれた方が良いし、

 同じジョブの者が重ならない方が良いかもしれない。

 それぞれの迷宮を探索中に適宜メンバーを入れ替えて、適性を吟味しても構わないだろう」

「なるほど。ただし1名は選ばれないのですね」

「ああ、ミラとマヤ、もしくはサンドラも候補に入れても良いかもしれないが、

 希望者全員が迷宮討伐戦に参加することはできない。

 もう1、2箇所ぐらい手頃な迷宮がないか探したいとは思っているが、

 現時点の候補は2つしかないからな」

 リーダーのヘルミーネは少し難しい表情だ。

 

 

「今の時点で候補者を絞ったと伝えない方が良いかもしれませんね」

「その通りだな。それに、候補であっても確実に選ばれる訳ではないからな。

 あまり過剰な競争をさせるつもりはないが、

 適宜メンバーを入れ替えながら日々の探索をして、刺激を与えるべきかもしれない。

 メンバーを入れ替えすぎると、迷宮討伐戦に向けた戦術が組みにくくなるから、

 ある程度は最終的な迷宮討伐戦を意識して、固めていく必要があるだろう」

 なんだろう。サッカーの日本代表の監督はこんな気持ちなのだろうか(違う)。

 

 

「迷宮組の方は、クーラタルの63階層のボス周回と64階層の攻略をしたいと思っている。

 ただし、午後限定で考えている」

「午後限定?・・・・・・午前はどうするのですか?」

「午前は・・・・・・俺は剣技の習熟をしたいと思っている」

「なるほど」

 暫くは時間をしっかりと確保して、グラ爺の言うところの基礎をミッチリとやりたい。

 

 

「64階層の攻略ができたら、他の迷宮探索を考えるかもしれない。

 具体的にはタリカウ近辺か、もしくはローザと迷宮を探して、新しい討伐対象の迷宮とするか。

 正直、やってみないと分からないな」

「人知れず、迷宮を討伐するのですね・・・・・・」

 ヘルミーネが難しい表情をしている。

 

 『迷宮討伐はこっそりするものではない!』と言いたげだ。

 でも、どこぞの貴族に大した見返りもなしに、いいように使われるのは嫌なのだよね。

 

 

「他には、ザビル側の方も、そろそろ、上の階層を目指してみたらどうだろうか?」

「そうですね。今はザビル第一迷宮の15階層ですが、上を考えたいと思います」

 ザビル側も陣容が厚くなってきたから、そろそろ一軍は23階層より上を目指してほしい。

 

 日々の販売奴隷の訓練もあるが、二軍の連中に任せるという手もあるはず。

 ドリスやクロード、タイレルも加わったから、今なら可能だろう。

 

 

「シーナ達の迷宮探索はエルフ組で固めてしまうのですか?」

「そうだな。本来は、あまり特定の種族で固めたくはないのだが。

 ただ、フリュウ村はエルフの村だから、

 現時点ではエルフの割合が多い方が都合が良いだろう。

 フリュウ村自体が、領主の手の及ばない村でもあるし」

 日々の訓練以外でも、迷宮探索ではタケダ家内で交流を図りたいのが本音なのだけど。

 

 

 次の迷宮討伐戦をエルフ組の何名かには見学させて、徐々に交流を増やすか。

 迷宮探索で交流を図るのが一番なのだけどな。

 命がかかった迷宮探索では、コミュニケーションを密にせざるを得ないから。

 

 

「エルフ組のことは脇にいったん置くとして、2つの迷宮討伐のメンバー選定と、

 ザビル組のステップアップについては、考えてみてほしい」

「承知しました」

 レドリック以外の二人も頷いている。

 

 次の迷宮討伐は、どのパーティーが成し遂げるだろうか。

 迷宮組ではないから、一波乱、二波乱はあるかもしれないが、是非乗り越えてほしいものだ。




お読みいただき、ありがとうございました。
次回投稿日は2026/7/25(土)の予定です。
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