異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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132.豪商貴族

「貴方がタケダ殿ですかな?

 貴方には前々から会いたいと思っていたのですよ。

 申し遅れましたが、私はファビオと申す者。

 ザビルを拠点に、各地で商売をしておりますので、以後、お見知りおきを」

「は、はあ・・・・・・ユキムラ タケダと申します。

 こちらこそよろしくお願いいたします」

 にこやかな表情をして丁寧な口調で話しかけられているのに、ほとんど頭に入ってこない。

 

 今まで出会った貴族の中で、格段に物腰が柔らかい気がする。

 だが、それ以前に目の前の男の風体にくぎ付けになってしまう。

 

 この男、背が低い割に顔が大きく、体は肥満気味なのか寸胴で・・・・・・なんと言うか、見た目がマトリョーシカ人形にそっくりに思える。

 

 こけしとはちょっと違う、ボーリングのピンの先を少し太くしたような感じ。

 髪型も金色の長髪で、左右に広がってるのが台形のように見える。

 本来、顔が台形になるはずはないのだが、首が隠れてるせいもあって台形なのだ。

 

 首チョンパして外したら、小さい人形が出てくるのではないかと思ってしまう。

 鑑定スキルで見る限り、身代わりのミサンガ以外は特別な装備は身に着けていない。

 激情のダガーという武器を持ってはいるが、護身用にしか使えないよな。

 スキルが融合されているとはいえ、攻撃力は大したことなさそうだし。

 戦いには不向きな体形にも思えるが、手練れのダガー使いなのだろうか。

 

 身に着けている服装は貴族らしく、お金がかかっていそうだ。

 マトリョーシカ体形なのに、ベストフィットしてるから、オーダー品なのだろう。

 俺も特殊な体形の持ち主であるから、洋服選びに苦労しそうだなと慮ってしまう。

 

 もっとも洋服のセンス等ないから、高品質なのか、高価なのかも本当は分からないけど。

 豪商のジョブ持ってるぐらいだから、高い服着てるんじゃねぇ?・・・・・・ぐらいの感覚。

 それでも、目立つ洋服を着ているのは間違いない。

 

 

「タケダ殿、彼が其方に威霊仙を融通できるかもしれないと、以前説明していた者だ。

 もし、ギルド神殿を手放す気があり、威霊仙が欲しいのなら、相談してみたらどうだろう?」

「うむ、うむ、それは願ったり叶ったりなのです。是非、取引をお願いしたい」

「え、えーと、どうしようかな・・・・・・」

 ダメだ・・・・・・マトリョーシカ人形に話しかけられるというシュールな状態に頭が全く働かない。

 

「おい、こんな奴を相手にする必要はないぞ。

 貴族なんだから、自分で迷宮討伐をして自分でギルド神殿を得ればいいじゃねぇか」

「リカルド、今は私がタケダ殿と話をしているのだ。

 余計な差し出口は控えてもらおうか」

 いつの間にか、リカルド騎士団長がやってきていた。しかも険しい表情。

 

 ここまでストレートに言い合うってことは、相当仲が悪いのだろう。

 軽口で言い合ってるような感じには全く見えない。

 

「それで、タケダ殿。威霊仙一つとギルド神殿一つを交換してもらえるでしょうか?」

「えっ、それは止めようかなと思ってまして・・・・・・」

 騎士団長の横槍のおかげで頭がリセットされ、なんとか取引NGを伝えられた。

 

「むっ、では威霊仙二つとなら、どうでしょうか?」

「いえ、それもちょっと。数の問題なのではなく、別ルートで入手できましたので」

 『自前で数十個入手しております』とは言えないので、やんわりと断ろう。

 

「くっ、くっ、くっ・・・・・・残念だったな、ファビオ」

「威霊仙でなければ、何となら交換してもらえるのでしょうか?」

 やはり豪商ともなると、簡単に諦めたりはしないのか。

 

 諦めそうな取引を持ち掛けるのは失礼だろうか・・・・・・でも、今なら騎士団長が味方してくれそうな気もするな。

 

「ファビオ様は、ギルド神殿の価値を金銭に置き換えるとしたら、

 幾らぐらいが妥当だとお考えでしょうか?」

「金銭の方が良いのですか?意外ですね。

 そう・・・・・・白金貨2枚から3枚ぐらいでありましょうか。

 むろん、欲している者の状況に依存するとは思いますが」

 ということは目の前の彼は白金貨3枚までなら出せるという意味か。

 

「御存じの通り、こちらは迷宮探索にも力を入れております。

 なので、装備の充実のためにモンスターカードや鍛冶素材でしたら、

 取引を是非お願いしたいと思います」

「むっ、金銭ではなく、モンスターカードや素材ですか。

 むろん、そちらも得意分野ですから問題ないです」

 へえぇ~得意だと言い切ったな・・・・・・では、遠慮なく。

 

「では、ギルド神殿と交換にモンスターカード500枚ではいかがでしょうか?」

「5・・・・・・500枚ですか?」

 豪商貴族は口をアングリと開けている。

 

(ドンッ)

 

「ぐぇっ・・・・・・」

「聞いたか、ファビオ。ギルド神殿の価値をこいつは分かってるじゃねぇか。

 500枚だとよ・・・・・・くっ、くっ、くっ・・・・・・」

 笑うのはいいけど、俺の背中にパンチを入れるのは止めて下さい!

 

 リカルド騎士団長は先程の仏頂面から、満面の悪そうな笑みに変わった。

 

「500枚の理由を伺っても?」

「御存じかと思いますが、モンスターカードはオークションでの落札価格に幅があります。

 安いカードもあれば、高いカードもある。

 平均して5000ナールぐらいだとすると、500枚で金貨250枚になります。

 先ほど、白金貨2枚から3枚とおっしゃっていたので、妥当な枚数かと思っています。

 もちろん、需要の少ないハズレカード500枚は困りますけど。

 取引するのなら、半分の250枚はコボルトで、

 他は高いカード、安いカードが適度にバランスが取れていることが条件となります」

 マトリョーシカ貴族は、顔を下に向けてしまった・・・・・・諦めたかな。

 

 ギルド神殿一つで貴族になることはできる。

 実力もないのに、士爵などになっても後が苦しいだけだが。

 それでも、貴族の身分が手に入るのなら、白金貨2、3枚は妥当だと感じられる。

 その対価と同じモンスターカード500枚もね。

 モンスターカードと鍛冶素材をタケダ家はまだまだ求めているのだから。

 

 他には竜騎士や魔法使い2、3人と交換っていうのもアリかもしれない。

 なんだか、悪の人身売買組織の親玉のような感覚だが。

 まあ、無理だろうけど。

 

 やがて、ファビオ士爵は顔を上げ、口を真一文字から、への字にした。

 うーん、見ようによっては愛嬌がある顔かも?

 

「モンスターカード1000枚の取引を検討したいのですが」

「はあ?・・・・・・1000枚?」

 先ほど500枚で驚いていた男が何故1000枚の取引を持ち掛けてくるのだ?

 

「気は確かか?ファビオ?」

「さっきから、リカルドは何故、口を差し挟んでくるのだ。

 お前には何も頼んでおらんぞ」

 再び、険悪な雰囲気になってしまった。

 

「リカルド、その辺にしておけ。タケダ殿にはファビオを紹介すると約束していたのだ。

 その邪魔をすることはならんぞ」

「ガルシア、そんなこと言ってもよう・・・・・・」

 そういえば、ザビル子爵のファーストネームはガルシアだったか。

 

 この二人は気安い仲なのだな。

 

「タケダ殿、別室を用意するから、ファビオと個別に話をしてくれ。

 エミリオも同席しろ」

「はい。承知しました」

 エミリオ士爵に先に承諾され、子爵に仲介されてしまったら断りにくい。

 

 それに事務方のエミリオ士爵は、どちらかといえば話し易い方だ。

 過去には竜人族のゼノとゼナの件で、動いてくれたからな。

 

・・・・・・

 

 三人で隣接する会議室へと移動。

 レイモンド達を残していくのは不安があるが、レドリックもいるから大丈夫だと思いたい。

 

「では、改めまして。ザビルで士爵位を拝命しているファビオと申します。

 貴方には、お会いしたいと思っていたのですよ。

 なにやら、いろいろと面白い取引をされているようですから」

「お、面白い・・・・・・?」

 このマトリョーシカ貴族、俺のことを事前に調べ上げていたのか?

 

「ザビルで奴隷商館だけでなく、防具屋も営んでいること。

 ドブローで何やら、手広くスキル融合装備品を納品していること。

 帝都やクーラタル、ベイルやペルマスクなどで石鹸を売りさばいてるとか」

「・・・・・・」

 迂闊に肯定できないけど、かなり調査されているな。

 

 タケダ家の拠点がある街や主要取引先を把握されてしまっているようだ。

 ドブローは一応、口止めしてたはずだがダメだったか。

 取引相手としては、ちょっと注意すべき相手だな。

 

「まあ、そう警戒しないで下さい。私は面白い商売をしている者が大好きなのですよ」

「ソウデスカ・・・・・・」

 あまり男に好かれても嬉しくない。

 

「それで、先ほどの取引の話の続きですが、

 モンスターカード1000枚を提供する対価にギルド神殿一つを貰い受けるのと、

 迷宮を一つ討伐していただきたい」

「は、はあ?」

 仕事を増やそうとしていたのか。

 

「ファビオ、その討伐する迷宮って、この前、別のパーティーに依頼していた件では?」

「ああ、依頼していたのだが、失敗したみたいだ。

 違約金をもらったが、正直金には困ってないから意味がない。

 迷宮を討伐してもらいたかったのだが」

 『みたいだ』って、そんな他人事のような言い方はダメだろう。

 

「ファビオは、戦闘もダメだし、実力者のパーティーを見極める能力が丸っきりないですものね」

「その分、稼いでるのだから問題ないだろう。

 人には向き不向きというものがあるだから、仕方がないではないか」

 得意不得意があるのは仕方ないだろうけど、そもそも貴族に向いてないのでは?

 

 原作では、迷宮の討伐に失敗した某伯爵は強制退場させられたぞ。

 士爵なら許されるのだろうか。

 

 でも、一芸に秀でていて、堂々と貴族の振る舞いができるのなら向いてるのかなぁ。

 俺が考えることではないのだが。

 

「それで、モンスターカード1000枚なら引き受けてもらえるでしょうか?」

「1000枚と軽くおっしゃられますけど、簡単に集められるものなのでしょうか?」

 貴族相手に質問に質問を返すのは失礼な気もするが、確認をせざるを得ない。

 

「はい、全く問題ありません」

「まあ、ファビオならできるでしょう。多少、時間はかかるでしょうけど」

 マジっすか。

 

「ご心配なら、段階を踏んでみますか?

 たとえば、まずモンスターカード500枚集まったら、ギルド神殿1つと交換する。

 次に、迷宮の50階層到達でモンスターカード200枚と交換して、

 迷宮討伐したら残りの300枚を引き渡すという事なら、いかがでしょうか?

 もちろん、正式な契約書を取り交わし、違約金の条項も追加させていただきますが」

「その攻略途中の迷宮というのは、どこまで探索が進んでいるのでしょうか?」

「ああ、どうだったっけな・・・・・・たしか、40階層だか45階層だったか・・・・・・」

 ア、アバウト過ぎるだろうが!

 

「他にも確認しておきたいことがあります。

 その攻略を依頼したい迷宮はいつ出現したのでしょうか?」

「えーと、いつだったけかなぁ・・・・・・」

 おいおい、大丈夫かよ・・・・・・55階層を超えてたらどうするんだよ。

 

「ファビオ、今年の春ですよ。自分の担当している迷宮のことぐらい頭に入れておいて下さい」

「ああ。確か、そんな感じだったか。

 まあ、私よりも息子達の方がしっかりしているから、きっと覚えているはず」

 そのシッカリしている息子達に迷宮討伐を任せるべきなのでは?

 

「ファビオの息子達は、未熟なので迷宮討伐を任せるのは無理ですね」

「・・・・・・」

 俺の心を読まれている?・・・・・・いや、誰でも思いつくことを指摘されているだけか。

 

 というか、未熟な息子達よりもしっかりしてない父親が当主で大丈夫なのかよ。

 

 

「他にも頼みたい迷宮があるのですけど・・・・・・」

「ち、ちょっと待って下さい。いくらなんでも、性急過ぎるのではないですか?」

「ん?ガルシアの話では、迷宮探索に自信のある商人だと伺ってましたが。

 私の集めた情報でも、武力も経済力も申し分ないと判断いたしました。

 商人なら、利が見込める取引をどんどんやるべきではないでしょうか?

 こちらとしても、士爵位をキープしなければならないので、是非お願いしたいのですが」

 言葉は丁寧だけど、ぶっちゃけ過ぎじゃないか?

 

 なんか外見だけでなく、中身も普通の貴族とは全然違うじゃないか。

 このマトリョーシカ貴族、首チョンパして中から出てくるのが悪魔人形ってことないだろうな。

 迷宮を攻略させるパーティーの実力を見誤るのだから、彼のタケダ家の武力の評価も怪しい気がするのだけど。

 

 助けを求めるようにエミリオ士爵に視線を向けると、何故かにこやかな表情。

 

「まあ、ファビオの商売の腕はかなりのものですから、

 しっかりと納得のいく契約を結べれば、対価を踏み倒されることはないでしょう」

「・・・・・・」

 このエミリオ士爵の能力も未だに測りかねている部分があるのだよなぁ。

 

 二人の言葉を鵜吞みにしても問題ないのだろうか?

 最悪は契約書で縛れるから大丈夫か。

 

 

「モンスターカードだけでなく、鍛冶素材の調達でも対応可能でしょうか?」

「もちろんですとも。カードよりは早く集められる自信があります。

 何が欲しいのでしょうか?オリハルコンか聖銀でしょうか?」

「いえ、さすがに隻眼へ依頼する訳ではありませんから。ダマスカス鋼か竜革となります」

「意外に普通の素材なのですね。

 クーラタルでタケダ殿がやられている、ギルド価格の半額を基準とする取引を望まれますか?

 モンスターカード1000枚集めることに比べれば、造作もないことだと考えております。

 クーラタルでやられているスキル融合装備品との取引も、できればお願いしたいです。

 まずは、迷宮討伐をやっていただいた後になるでしょうが」

 

 この男、クーラタルでの等価交換の取引まで把握しているのか。

 ってことは、クーラタルの商人ギルドに所属している有力商人とのパイプがあるのかも。

 結構大々的にスキル融合装備品の取引をやってしまったから、いつかは知られてしまうとは思っていたのだが。

 

「他にも、竜人族や魔法使いとの交換でも構いません。

 私は共和国の商人にも知り合いが多いのです。

 石鹸の情報も融通できますし、竜人族を入手する独自のルートも持っております」

「ファビオ、竜人族は国家間の取引以外では控えてほしいのですが。

 タケダ殿、今、ファビオが言ったことは忘れて下さい」

 なんか、こちらの手の内が読まれてしまっている気もする。

 

 それにアングラ?もしくはグレーゾーンの取引もやるのかよ。

 このまま、取引を進めても本当に大丈夫か不安になるな。

 商売人としての実力も測り切れていない相手にリスクが高い気もする。

 こちらがカード500枚の取引を持ち掛けたのに、今や俺の方がビビっているぞ。

 

「即答しかねます。

 一度、我が家に持ち帰って吟味させていただいた上での回答にさせて下さい」

「せめて、ギルド神殿1つとカード500枚の取引の感触だけでも教えていただけないでしょうか」

「それだけでしたら、近日中に回答したいと思います」

「なるほど、では、こちらはカードの調達に入ることとします。

 タケダ殿はきっと取引に応じていただけると確信していますので・・・・・・」

「いえ、確約はできませんから、お止めになった方がよろしいかと」

「大丈夫です。私は、私の判断信じておりますので」

 どうして、こんなに自信満々なのだろうか。

 

 物腰の柔らかさに反して、グイグイくるな。

 豪商ジョブのスキルって、取引を無理やり成立させるようなスキルがあるのじゃないだろうな。

 3割引きや3割アップを強制するスキルを使う俺が言うのもアレだが。

 

 

「では、さっそくカードの調達に入ることとします。

 タケダ殿、朗報をお待ちしておりますよ」

「ファビオは相変わらずセッカチですねぇ」

 マトリョーシカ貴族は、さっさと退室していった。あの体型でフットワーク軽いな。

 

「まあ、あんな風に見えても、取引については信頼できる男ですから」

「エミリオ様は、ファビオ様との付き合いは長いのでしょうか?」

 前に、ここの館に模擬戦や取引等で訪れた時には、彼はいなかった気がする。

 

「ガルシア、リカルド、ユリア、ファビオとは年齢がバラバラですが、

 それなりに昔からの付き合いになりますかね」

「なるほど」

 ザビルの騎士団って、あまり格式張っていないのだよなぁ。

 

 年齢や爵位に関係なく、呼び捨てみたいだし。

 

 当主であるザビル子爵の意向なのだろうか。

 ざっくばらんに本音で語り合える仲なのだろうな。

 それだけに対立した場合にも、分かり易く見えてしまう。

 リカルド騎士団長とファビオ士爵のように。

 男爵位と士爵位の身分差があっても、考え方や価値観の差から対立するのだろうな。

 

 とりとめのない考えに耽っていると、ザビル子爵が入室してきた。

 

 こちらが立ち上がろうとしたのを制して、目の前の椅子にどっかりと腰かけた。

 

「どうだったかな、ファビオの奴は?・・・・・・なかなか個性的な男であっただろう?」

「なんと言ってよいのか、私の周りで見ないタイプの御仁でした」

 うちには木彫りの人形を作る鍛冶師はいるが、マトリョーシカ人形は置いてない。

 

 ミラの今後の作成予定にも多分ないはずだ。

 あんな風貌の人間は初めて見たな・・・・・・いや、見た目はこの際、横に置こう。

 

 取引の強引さだけなら、ターヘラのマリアさんに似ているかな。

 商いの実力は、きっとマトリョーシカ貴族の方が数段上なのだろうけど。

 

 

「迷宮の討伐依頼を出されましたが、よろしいのでしょうか?」

「よろしいも何も、つい先ほど討伐した迷宮では、其方も受けていたではないか」

「確かにそうですが、ファビオ様は全く自身の手で討伐する気はなさそうでしたが」

「まあ、人には得意不得意があるから仕方ないだろう」

 マトリョーシカ貴族と同じ台詞じゃないか。

 

 実はマトリョーシカ貴族を首チョンパしたら、ザビル子爵が出てくるのじゃないだろうな。

 

「まあ、こちらとしてはファビオには迷宮探索よりも

 ザビルの商業面で活躍してもらいたいと思っている。

 ファビオの子供の方は、迷宮討伐をさせるには経験不足だ。

 其方達がファビオに代わって討伐してくれるのなら、それはそれで構わぬ。

 もちろん、そちらに十分な利があることが前提でだ。

 だが、ファビオの力なら、それは問題なく達成できるであろう」

「そうなのですか」

 迷宮討伐と服のセンスはともかく、商売の腕は確かなのか。子爵からの信頼は厚いと。

 

「では、持ち帰って我が家の主立った者と検討してみます」

「おお、吉報を期待しているぞ」

 台詞がそっくりなのだが・・・・・・本当にファビオ士爵の中身がザビル子爵じゃないのだろうな?

 

 二人に頭を下げて、退出させてもらった。

 

 宴会場に戻ると閑散としている・・・・・・人が全くいない訳ではないのだが。

 リカルド騎士団長やユリア士爵がいない。

 というか、レイモンドやレドリックもいないぞ。

 

 ケリー、フレイヤ、フラウス、ドロテアの女性陣は残って食事&おしゃべりの真っ最中。

 彼女達に近づき、状況を確認・・・・・・なんとなく想像がつくけど。

 

「レイモンドとレドリックはどこに行ったのだ?」

「騎士団長に連れられて、練兵場に向かいました。他の騎士の方達と共に」

「二人だけで?」

「レドリックさんは騎士団長に、レイモンドさんは女性騎士に絡まれてました」

 女性騎士ってユリア士爵かな。槍持ち同士で気になったのだろうか。

 

 まさか、レイモンドがユリア士爵の好みなのか?・・・・・・モニカに知られたら血の雨が降るぞ。

 

「ケリーは行かなかったのか?騎士団長との模擬戦は?」

「一度、勝ってるし、どうでもいい。それよりコレ」

 彼女は皿の上の料理を指して、ニッコリした笑顔。

 

 ザビルの騎士団長を格下扱いにして、それよりも食い気を優先したのか。

 ある意味、豪傑だな。

 最近、グラ爺と模擬戦しているから、目が肥えてきたのかも。

 

・・・・・・

 

 結局、騎士団長達が暫く模擬戦を堪能した後、二人は解放されて戻ってきた。

 貴族との取引に俺がかまけていたせいもあり、さして待つほどではなかったが。

 

 レドリックとレイモンドの二人の戦績は、引き分けを挟んで負け知らずだったらしい。

 さすが、我が家の精鋭で、かつグラ爺に鍛えられてるだけのことはある。

 レドリックはともかく、レイモンドも腕を上げたな。

 俺も負けずに訓練に励まねば。

 

 少し疲れた顔の二人を回収して、クーラタルの自宅へと戻ることにした。

 着替えて食堂に集合することを告げ、俺も自室へ。

 

 

 その後は、いつも通りに迷宮討伐反省会をして、お開きにした。

 彼等の迷宮討伐は純粋な護衛部隊での戦果だったので、他のメンバーのモチベーション向上に大きく寄与したことだろう。

 

 先ほどファビオ士爵に依頼された迷宮討伐の件は、その場では明かさず。

 夜の会議で方針を決めなければ、そもそも迷宮討伐をするのかも分からないし。

 次の討伐対象の迷宮があることを知れば、名乗り出るメンバーがいるのは予想がつく。

 まだ決まってない段階で、期待させてしまうのは可哀想だからな。

 まずはヘルミーネ達のアキシマの迷宮討伐が先だし、方針が決まったら相談しよう。

 

・・・・・・

 

 夕食のため食堂に行くと、エネドラから連絡事項が。

 しかも、どうやら面倒事の雰囲気。

 

「旦那様。先ほど使いの者がいらして、お手紙をお預かりしたのですが・・・・・・」

「手紙?」

 彼女の表情からして嫌な予感。

 

 だいたい、我が家に来る俺宛の手紙は碌なものではなかった気がする。

 皇帝から、かなり豪華な手紙をもらったりしたこともあったよな。

 それに比べるといささかマシだが、目の前の手紙もかなり立派な見栄えだ。

 

 元の世界なら、手紙じゃなくて目録じゃないのか?・・・・・・と思えるようなデカいサイズ。

 

 

 見たくないけど、見るしかないので、開けてみると・・・・・・エステル男爵からだ。

 帝国解放会会長という肩書での手紙ではないから、男爵位貴族からの手紙ということになる。

 平民の俺からすると、ちょっとしたプレッシャー。

 

 しかし、用件がよく分からない。

 先日の襲撃事件での支援について具体的な表現を避けながら、感謝の言葉を伝えてきている。

 

 感謝の気持ちは伝わったが、用件は伝わってこない。

 この手紙の目的が感謝を伝えることなら問題ないのだが、それは違うようだ。

 

 何故なら、手紙の終盤にロッジに来てほしいと記載がある。

 本来の用件はセバスチャンに伝えてあるということなのだろうか。

 用件を知らされずに出向いた場合には、かなりの確率で面倒事が発生してる気がする。

 今回もきっと悪い事が起きるな・・・・・・俺のゲーム脳(サイドエフェクト)がそう言っている。

 

 行きたくないけど、曖昧なまま放っておくのも気持ち悪い。

 仕方がない。ロッジに行くか。

 

「エネドラ、手紙は確かに受け取った。

 どうも前回のクーラタル迷宮での襲撃事件の関連だと思うのだが、呼び出しを受けている。

 明日の午前中にでも、ロッジに行ってこようと思う」

「旦那様、くれぐれも自重をお願いします」

「もちろんだ」

 今までだって自重しているつもりだ。

 

 俺が自重したくても、俺の運命が自重を許してくれないのだ。

 まあロッジに行って、いきなり戦闘になったりはしないと思うが。

 それにしても、最近は貴族案件が多いな。

 俺がいろいろな街の貴族への接触を厭わないせいもあるのだろうけど。

 

「商人ギルドで、タケダ家の情報を確認して回っている商家か貴族などはいないだろうか?」

「こちらから情報を流していますので、多くの商家の注目を集めていると思いますが」

 そうなのだよなぁ。

 

 初めのうちはともかく、今はクーラタルの商人ギルドでは情報統制をほとんどしてない。

 ファビオ士爵なんかも我が家の情報を集めやすかったことだろう。

 

 

 夕食を頂きながら、エネドラから商人ギルドの噂を共有してもらう。

 

 おっと、久しぶりにクエストのウィンドウが表示された。

 

 

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①ハルツ公爵領での噂(迷宮関連)

 公爵領で出現した迷宮3つが全て討伐された。領民の間に安心感が広がっている

 

②ハルツ公爵領での噂(政情不安)

 原因は不明だが、ボーデの騎士団員に欠員が多く出たらしい

 迷宮討伐は順調のようだが、公爵配下の貴族内で不安が広がってるようだ

 

③セルマー伯領での噂(政情不安)

 セルマー伯爵領内で発生したクーデターは鎮圧されたらしい

 新しい伯爵が就任して、領民の間に安心感が広がっている

 迷宮討伐が加速するのではないかと領民は期待しているようだ

 

④クーラタル迷宮の噂

 クーラタル迷宮で貴族パーティーが襲われたとの噂が流れている

 高階層の事件なので、盗賊ではなく貴族内の内輪もめではないかとの噂だ

 

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 エステル達が襲われた事件が商人ギルドで噂になっているのか。

 どのあたりから情報が洩れてるのだろう?

 

 ロッジ経由では漏れないとすると、騎士団員経由かも。

 有名人のエステルが血で汚れた状態で迷宮から出てきたから、騎士団内で噂にでもなったか?

 襲撃の首謀者が意図的に噂を流しているのというのも考えるられるな。

 

 それにしても、このウィンドウに表示されたから、俺が解決しなければならないってフラグだったら困るのだけど。

 

 

・・・・・・

 

 夕食と風呂を終えて、会議を開催。

 定例の報告を手早く済ませてもらい、個別テーマの議論。

 

 リオンの報告では、フリュウ村の木材とタルエムの運び出しは軌道に乗ったとのこと。

 ザビル拠点の木材置き場には、順調に木材が保管され、逐次増築工事に利用されているらしい。

 

 カラダンの話では、迷宮アイテムの提供と合わせ、増築工事の費用はかなり抑えられたと。

 とはいえ、木材はまだまだ必要数には満たないので、引き続き運搬の進捗を確認するようにリオンの方で監督してもらう必要がある。

 

 

 そして、本題のファビオ士爵からの提案内容の吟味へと移った。

 初めに軽く概要を説明し、こちらの取り得る選択肢について議論を進める。

 

「・・・・・・という訳で、

 士爵からモンスターカード500枚相当とギルド神殿の交換の取引が打診された。

 皆の意見を確認したい。賛成、反対、その理由があれば説明してほしい」

 

 参加者を見渡すと、エネドラが手を挙げている。

 

「私は取引に応じても構わないと考えます。

 今までもスキル融合装備品とモンスターカードや鍛冶素材の交換をしてきました。

 それがギルド神殿に代わっただけですから、特に問題は感じません。

 ただ、タケダ家であってもギルド神殿はそう多くは所有しておりません。

 なので、使ってしまうと次の取引で必要になった際に、

 支障をきたすかもしれない点が懸念点でしょうか」

「なるほど」

 レドリックも頷いてるから、彼女の意見に賛同しているのだろう。

 

 ヘルミーネが発言の許可を求めてきた。

 

「基本的には賛成ですが、エネドラ様の御指摘通り、

 最低一つはギルド神殿が手元にあった方がよろしいのではないかと」

「ふむ・・・・・・」

 彼女の指摘はエネドラの懸念点というよりは、別の意図がありそうにも思える。

 

 ギルド神殿は士爵位を得るための手っ取り早い手段だ。

 取引のためというよりは、貴族への道を一時的とはいえ、手放したくないのではないか?

 

「確かに予備はあるに越したことはない。

 だが、今はモンスターカードや鍛冶素材も必要だ。

 新しいメンバーの装備の強化や、迷宮討伐専用のスキル融合装備品の数も揃えておきたい。

 ヘルミーネ達のアキシマ迷宮の討伐も迫ってきているだろう?

 今なら、ギルド神殿を手放しても問題ない気がする」

「はい、確かにそうかもしれません。ユキムラ様の意見に賛同いたします」

 彼女もどうしても残しておきたいとまでは主張しないか。

 

 自身の手でギルド神殿を得るのが近いからな。

 

「他に異論がなければ、モンスターカード500枚の取引は進めたいと思うが・・・・・・

 大丈夫そうだな。では、ギルド神殿との交換に応じることとする。

 次の話はファビオ士爵から依頼された迷宮討伐を受けるかどうかだ。

 対価はモンスターカードもしくは鍛冶素材を打診されている。

 そちらについてはどうだ?」

「迷宮討伐は機会があれば引き受けても問題ないと思います。

 ただし、達成困難な高階層まで伸びた迷宮でないことが条件だと思いますが」

「レドリックの言う通りだな。

 まだ若い迷宮だとは聞いたので、50か51階層限定ということで契約したいと思う。

 55階層ぐらいまでなら討伐可能だとは思うが念のためだな」

 周りを見渡すと、皆頷いている。

 

 反対する者はいないのか。

 貴族の言いなりになるのはダメだと思うのは・・・・・・俺ぐらいか。

 迷宮討伐を是とする価値観が浸透しているせいなのかもしれない。

 こちらが貴族なら、政治的な駆け引きがあるだろうが、平民の商家だからな。

 

 あとは、取引相手がザビル子爵の配下であるということも安心材料があるのかも。

 今までの取引で裏切られたということがないから。油断は禁物だが。

 

「では、新しい迷宮討伐については、基本的に受ける方針とする。

 討伐迷宮の条件を盛り込む契約が締結できたら、探索・討伐を行うメンバーの選定をしたい。

 レドリック、ヘルミーネ、マテウスの方で相談してくれ」

「承知しました。ご主人様」

 ちょっと、ファビオ士爵の思惑通りに進み過ぎている気もするが。

 

「レイモンド達は当面は、クーラタル迷宮の50階層以降で探索するので問題ないか?」

「はい。新しく討伐を目指す迷宮が決まりましたら、部隊の再編成をしますので、

 それまではクーラタル迷宮で経験を積むことで問題ないでしょう」

 また、新しいパーティーの編成か。

 

 まあ、護衛部隊は今までもメンバー変更をしてきたし、いろんなメンバーとの技術交流ができて良い効果を生むだろう。

 

 

「では、これで会議を終了とする。遅くまでありがとう。ゆっくり休んでくれ」

 皆にお休みの挨拶をして、解散とした。

 

 

・・・・・・

 

 自室に戻って、今日のまとめ。

 

■情報▶

 

■人材育成/採用(ユキムラ)▼

①人材育成

<クーラタル(40名)>

(1)迷宮組(6名)

 ユキムラ(百鬼夜行Lv97/鬼神Lv97/英雄Lv97/勇者Lv97/遊び人Lv97/忍者Lv97/魔道士Lv97)

 アミル(鍛冶師Lv93⇒隻眼※/冒険者Lv94/探索者Lv97/斎王Lv97)

  ※隻眼のジョブ取得条件不明(バルドルフの発言から装備品のスキル融合数を増やす)

 ヴィルマ(百獣王Lv97)、イレーネ(くのいちLv97)、オリビア(竜将軍Lv97)

 カーラ(剣聖Lv67/魔法使いLv55/魔道士Lv1)

 

(2)護衛部隊(25名)

 レドリック(剣聖Lv71/聖騎士Lv62)、モニカ(剣聖Lv71)、レイモンド(冒険者Lv62/探索者Lv67)

 ケリー(百獣王Lv71)、マリー(百獣王Lv71)、フラウス(斎王Lv69/獣戦士Lv1)

 ラファ(魔道士Lv70/斎王Lv71/獣戦士Lv51)、ヘルミーネ(探索者Lv74/獣戦士Lv48/聖騎士Lv71)

 ミラ(鍛冶師Lv50/刺客Lv46⇒くのいち/剣匠Lv63)、マヤ(百獣王Lv46/剣匠Lv60)

 フレイヤ(竜騎士Lv75)、ドロテア(魔道士Lv70)

 トカラ(魔道士Lv71)、サンドラ(鍛冶師Lv50/刺客Lv46⇒くのいち/探索者Lv72)

 ニクラス(剣匠Lv48⇒剣聖)、ゾフィ(巫女Lv47⇒斎王)

 リオン(冒険者Lv50/探索者Lv57/巫女Lv50⇒斎王)

 シーナ(剣匠Lv49⇒剣聖/魔法使いLv50⇒魔道士/巫女Lv50⇒斎王)

 ノエル(剣匠Lv50⇒剣聖/神官Lv41⇒禰宜/魔法使いLv50⇒魔道士)

 ルイ(剣匠Lv50⇒剣聖/神官Lv50⇒禰宜/博徒Lv64)

 グラシア(剣匠Lv59⇒剣聖/巫女Lv50⇒斎王)、グラジオラス(剣聖Lv74)

 シェル(剣匠Lv48⇒剣聖/魔法使いLv44⇒魔道士/巫女Lv42⇒斎王)

 メリル(暗殺者Lv50⇒刺客/魔法使いLv50⇒魔道士/巫女Lv50⇒斎王/騎士Lv40)

 ヴェロニカ(冒険者Lv45/探索者Lv50/巫女Lv50⇒斎王/騎士Lv13)

 

(3)後方支援(9名)

 エネドラ(武器商人Lv75)、チクルス(薬師Lv70)、ポーラ(沙門Lv72)

 アネット(武器商人Lv56)、シルビア(防具商人Lv56)

 フローラ(薬草採取士Lv66)、クララ(奴隷商人Lv58)

 ゼノ(薬草採取士Lv66/僧侶Lv46)、ゼナ(薬草採取士Lv66/僧侶Lv46)

 

<ベイル(2名)>

(1)後方支援(2名)

 ミモザ(薬師Lv53)

 クルト(防具商人Lv35)

 

<ザビル(27名)>

(1)護衛部隊(14名)

 マテウス(剣聖Lv63)、ニケ(暗殺者Lv48⇒刺客)、ヒューゴ(神官Lv48⇒禰宜)

 ローザ(探索者Lv61/冒険者Lv55)、ロベルト(探索者Lv61/冒険者Lv55/神官Lv47⇒禰宜)

 マチルダ(魔法使いLv50⇒魔道士/探索者Lv50/冒険者Lv52/騎士Lv47/薬草採取士Lv40)

 レベッカ(魔法使いLv50⇒魔道士/剣匠Lv49⇒剣聖/巫女Lv48⇒斎王/薬草採取士Lv40)

 カイ(剣匠Lv50⇒剣聖)、レジーナ(探索者Lv50/冒険者Lv47)、ジゼル(巫女Lv49⇒斎王)

 タイレル(獣戦士Lv48⇒百獣王)、ドリス(剣匠Lv46)、クロード(暗殺者Lv47⇒刺客)

 アラデル(僧侶Lv41⇒沙門)

 

(2)後方支援(13名)

 カラダン(奴隷商人Lv67)、ピコ(冒険者Lv54/防具商人Lv55)

 ビンス(冒険者Lv54)、リック(冒険者Lv54)

 ミシェル(武器商人Lv47)、ナナ(農夫Lv65)

 サライ(防具商人Lv47)、ティナ(探索者Lv32/薬草採取士Lv40/商人Lv31/防具商人Lv46)

 ダフネ(武器商人Lv47)、エルザ(薬草採取士Lv48)、ノーラン(薬草採取士Lv48)

 ニクシー(薬草採取士Lv50)、マギー(旅亭Lv48)

 

 当面は、後方支援組もLv70近辺まで上げる(レベル補正対策のため)

 

■軍事(ユキムラ/レドリック)▶

 

■商業/取引(ユキムラ/エネドラ/カラダン)▶

 

■開発(エネドラ/カラダン)▶

 

■その他/クエスト▶

 

・・・・・・

 

 ベッドに横たわって、今日のザビルでの出来事の振り返り。

 それにしても、ファビオ士爵のインパクトは凄かった。

 見てくれも変わった人物だったが、取引の内容や決断力が図抜けていた気がする。

 やはり豪商のジョブになる者というのは、即断即決即実行なのだろうか。

 

 モンスターカード500枚か・・・・・・今まで入手した総カード枚数からすれば、べら棒に大きな数値ではないが、無視できる枚数とも言えない。

 

 これからもドンドンとスキル融合をしていくのだから、入手できるのならしておきたい。

 

 

(コン、コン・・・・・・)

 

 ドアを開けると、ヴィルマが恥ずかしそう佇んでいた。

 彼女はいつまで経っても、初々しいままだな。

 

 :

 :

 :

 

 マッサージを終えると、秘密基地に誘いたい気持ちをなんとか抑えてベッドで抱き合う。

 

「最近、主と模擬戦できないから、つまらない」

「まあ、そう言うなよ。俺も早くヴィルマ達に追いつきたいとは思ってるのだから」

 最後にヴィルマと模擬戦をやったのはいつだろうか。

 

 基礎練を卒業するまでは、ヴィルマやイレーネ達との模擬戦はグラ爺から禁じられている。

 色魔のジョブではないが、我慢した分だけ解放された時は最高の気分になるといいな。

 

 そっと彼女の唇に唇をつけると、甘えたように口づけを返してくる。

 唇を舌であやしながら、お互いの衣服を脱ぎ捨てた。

 下腕の両手で彼女のなだらかな背中とお腹の曲線に掌を滑らせて堪能する。

 

 上腕の両手は胸の先端を緩やかに嬲り、彼女の息づかいが荒くなってくるのを楽しむ。

 

「主は修練場では二本しか腕を使わないのに、こういう時は四本なのだな・・・・・・」

「二本でも、四本でも常に全力を尽くしているぞ」

 今から、それを証明しよう。

 

 ヴィルマを優しく背中から押し倒して、首筋に唇を這わせる。

 薄っすらと汗に包まれた裸体を抱き締め、火照った身体の中心に沿って指で撫で上げて、両脚の付け根の頂点を嬲る。

 

 顔をのけ反らせ、開いた口元に見える犬歯が・・・・・・可愛いな。

 そのまま指でゆるゆると溶かしながら、胸の先端も同時に弄ぶ。

 

 体全体が桜色に染まり、芳醇な香りが立ち込めるような錯覚に陥りそうだ。

 ゆっくりと侵入を果たそうとすると、今日は彼女の方が躊躇せず体をぶつけてきた。

 

「くっ、ふうぅ・・・・・・」

 彼女の肢体が一瞬浮き上がり、沈んだ。

 

 そのまま、離さないように律動を開始。

 時々、口の形を変えながら、絶えず小さな叫び声が漏れ続ける。

 開いた口を肩にぶつけるように噛みついてくるけど、力の入ったものではなく甘嚙みだ。

 

 泣き濡れた彼女の瞳を見てしまうと、こちらも抑えられなくなってきた。

 お互いに唇を貪り合いながら、頂きを目指して駆け上がる。

 

「あ、主、もう・・・・・・はっ、ああぁ・・・・・・おおおっ~」

 

 最後に彼女が痙攣しながら低い喜悦の声を放つのを確認して、こちらも解放した。

 

 ガクンッとベッドの上に落ちたヴィルマの体を引き寄せ、もう一度口づけをする。

 荒い息をはずませながら、応えようとする彼女がなんとも愛おしい。

 少し汗を含んだ彼女のおでこを撫でる。

 

 

 これで終われないよな・・・・・・彼女が参ったをするまで何度でも挑もう。

 今は剣技では勝てないから、せめてベッドの上では勝たせてもらわないと。

 

・・・・・・




お読みいただき、ありがとうございました。

豪商のジョブは登場させようか迷ったのですが、諸般の事情で登場させることにしました。
原作でもチラッとだけ触れてあって詳細不明なので、原作で明らかになったら拙作でも追随するかもしれません。

個人的には取引金額(白金貨50枚とか100枚とか?)がジョブ解放条件かなと予想してます。
取引の質よりも量ではないかと。
白金貨の枚数は、ザビルで疑似的に防具屋や奴隷商館を経営してみると、一年で白金貨1枚は楽勝で取引できるなと感じました。
十年防具屋や奴隷商館経営してジョブ取得だと、ちょっとハードルが低すぎるかもと思った次第。
原作でも、主人公が武器屋や防具屋で金貨数枚を頻繁に使っていたことを考えると、武器屋、防具屋の年間総取引金額は結構なものではないかなと想像しました。
それにしても、小説の次巻が待ち遠しい。

次回投稿日は2026/9/2(水)の予定です。
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