異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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■1章 拠点活動開始
001.アミルからの相談


 朝起きて、二人で少しまったりしていた。

 なんとも言えない幸せな気分だ。異世界チートのスローライフとはこの事なのだろうか?

 が、アミルは身支度をしに自室に戻っていった。ちょっと寂しいような、嬉しいような。

 

 俺の方も顔を洗って、身支度を整えて、軽くストレッチをした後、一階に降りた。

 アミルは既に食堂の椅子に座って俺を待っていてくれたようだ。スマンね。

 

 玄関を出て、二人でベイルの旅亭に向かった。

 まだ早朝と言ってもよいぐらいの時間だ。空気が澄んでいるような気もする。

 こっちの世界は元の世界と比べれば全然空気が綺麗なのだが、本当に気持ちの良い朝だ。

 気の早い連中はもう迷宮に向かうようだ。生活がかかってるからか。

 

 ベイルの旅亭でオリーブオイルを12個渡してボイルから木札を二人分もらう。

 なんか、コボルトスクロースじゃなくて、オリーブオイルでも良いらしい。

 コボルトスクロースも、かなり減ってきていたから、正直助かる。

 食堂の担当に木札を見せて、朝食を受け取り、アミルとテーブルにつく。

 

 雑談をしながら今日の予定の相談と確認。

 装備の洗浄と洗濯等の雑用を済ませたら、

 ①鍛冶師ギルドに行く

 ②ザビル迷宮で攻略の続きをする

 ...の2点だけ

 俺の話とは関係なく、なんとなくアミルの挙動がおかしい。

 昨日の夜が原因じゃないよね?

 

「あの、ご主人様に相談があるのですが...」

 アミルの方は俺に何か相談があるらしい。探索に関連する話だろうか?

 

「構わないよ。それで、相談というのは?」

「えぇ..と、この場ではちょっと。屋敷に戻ってからで良いでしょうか?」

「分かった。じゃあ、戻ってから話をしよう」

 

 ここで相談しにくいことって何だろうか?『内密』に関わる話だろうか?分からん。

 食事を終え、ボイルにオリーブオイル6個を渡して昼の弁当二人分をゲット。

 

 食堂でアミルの相談の話をしようと思ったら、装備の洗浄や洗濯しながらでも良いとのこと。

 なんだろう。気軽な相談事なのかな。

 

 で、風呂の残り湯を使って、魔物部屋で全滅したパーティの装備の洗浄を二人でやった。

 二人でやると作業が捗る。共同作業をすると、二人の仲も深まるに違いない。

 アミルも迷宮探索していた頃に装備品の整備はしていたらしく、慣れた手つきだ。

 多分、俺より上手いように思える。

 

 装備品の洗浄が終わった後に、別室に運んで、暖房をつけて乾燥させた。

 暖房装置を見て、アミルがまた驚く。

 そして、ワンパターンだが「まあ、これも内密に」ということにした。

 我が家のルールに内密の対象が非常に多い。

 

 装備の洗浄をしながら、アミルが淡々と話す相談事について、耳を傾けた。

 

 相談の内容は予想の斜め上の話だった。

 

 アミルの話をまとめると...

 

 アランの商館に居る奴隷で、俺に奴隷として買ってほしい者が二人いる。

 奴隷契約してほしいのは本人達の希望であって、アミルの希望ではない。

 アミルは二人のうちの一人の奴隷(女性)からブラヒム語を習ったとのこと。

 女性には娘が一人いて、二人合わせての奴隷契約を望んでいる。

 

 その女性のジョブは商人。商人の経験があるから世事に明るく、頭の回転も速いらしい。

 商人の女性の娘のジョブは商人ではなく、薬草採取士。

 商人の女性の希望は、せめて娘だけでも奴隷契約を結んでほしいと望んでいるらしい。

 娘側の希望は二人まとめてで、離れ離れは嫌だと言っている。

 

 二人は家事奴隷を希望しているが、性奴隷も厭わない。

 二人とも、大けが(割と重傷)しており、アミルの感想では俺の食指が動くとは限らないと思っている(おいおい)。

 彼女達の実家(商家)は、郊外の村に訪れていた際に、盗賊の襲撃に遭った。

 その際に女性の旦那さんは死亡、積み荷は奪われ、二人は大けがを負った。

 

 襲撃のせいで実家は没落。借金の穴埋めのために安値で奴隷に落ちてしまった。

 大きな怪我のせいもあって、奴隷としての買い手がなかなかつかなくて、焦りを感じている。

 ひと月以内に買い手がないと、税金の件もあり、過酷な環境に移らされる可能性が高い。

 

 怪我は、母親が左手首切断と背中に大きな裂傷、娘が首の近くと腹に大きな裂傷がある。

 ケガの回復の見込みはなく、現時点でも体調はよくないらしい。

 

 女性商人の要望は、アミルから積極的に提案してもらう事は望んでおらず、事実を淡々と伝えてもらいたいとの事。

 奴隷契約の検討にあたって、一度で良いので面談の機会(プレゼン?)を希望している。

 会って、奴隷契約されなくとも、主人を恨むようなことはない。踏ん切りをつけたいらしい。

 

 なんとも重い話だ。

 確かに家事奴隷を希望してはいるのだが、怪我人で二人か。さて、どうしたものか。

 何となくだが、商人の女性はアミルから俺の話を聞いて、俺が好む方向での情報提供や提案がされる気がするんだよな。

 

 アミルからの話が終わり、今度は洗濯に入った。

 アミルは自分が全部洗濯すると主張したが、二人でやった方が早いということで押し通した。

 

 俺は考え事をする時は、単純作業をしていた方が、集中力が発揮されるんだよね。

 

 アミルは自分の境遇もあってか、この二人には同情しているのが窺われる。

 

 俺を観察してから、二人を引き合わせても良いか決めようと思ってたのじゃないだろうか?

 最終的には二人の主人にふさわしいと判断したのだろうか?

 昨日の出来事でアミルの信頼を得てる自信は俺にはない。考えがまとまらない。

 

 洗濯が終わり、俺は少し考えてから、

「じゃあ、今から会いに行くか?会ってみないことには、ここで考えても分からないからな」

 

 アミルは嬉しそうに頷いた。なんで、そんなに嬉しいのだろうか?

 食堂でハーブティーを飲んで一息入れてから、アランの商館に向かった。

 

 商館の門番にアランとの面会(商談)の用件を伝え、応接室で待つことになった。

 アミルは俺の背後に控えている。

 

 ほどなくして、アランが入室。連日、押しかけてスマンね。

 

 家事奴隷として負傷した母娘の二人と購入の検討を行うために面談したい旨を伝えた。

 アランは苦笑しつつ、お薦めの家事奴隷は他にもいますがと、やんわりと提案をしてきた。

 アランの顔を立てて、先に3人までアランのお薦めの家事奴隷と面談を行なった。

 最後に母娘との面談をセッティングしてもらう。

 

 アランお薦めの家事奴隷は、なんというか言い方がアレだが、高級電化製品の購入提案。

 ルックスと料理と夜の奉仕と...3点セットで種族を変えて、3人ほど提案してきた。

 面談した感じでも、どの娘も愛想がよく、そつのない感じの応対だ。

 各自の得意料理までアピールしてきた。なんとも対応に困る。

 

 お値段は、だいたい30~40万ナールほどらしい。

 ちなみに、例の母娘は2人合わせて7万ナールとのこと。

 だが、今、俺は高級家電製品が欲しい訳ではない。

 

 話半分で流しているのに、何故か、アミルにジト目で見られている気がする...解せぬ。

 

 そして、アミルから相談のあった母娘との対面となった。

 

エネドラ(人間族 女 27才 奴隷)

商人Lv26

 

チクルス(人間族 女 18才 奴隷)

薬草採取士Lv3

 

 母親の商人のレベルは思っていたよりも高い。ビッカーよりも全然高いじゃん。

 迷宮で鍛えたのか、商談で鍛えたのかは分からないが。

 そして、年齢を見る限りは本当の親子ではなさそうだ。

 

 一方で娘の方のレベルは思っていたよりも低い。

 迷宮で鍛えずに生薬生成で上げたのなら...年齢的にはこんなものかという気もするが。

 

 二人とも、金髪で母娘というほど、顔が似ている気はしない。

 事前に鑑定情報を見ているせいだろうか。

 

 異世界補正なのか、二人とも十分美人と言ってよい容姿だ。

 貴族でないからか、髪はショートヘアだ。

 長髪は富裕層の証だと、どこかのラノベで読んだ記憶がある。

 実際に、街を歩いてる平民で髪が長い奴など、ほとんどいなかった。

 ただ、それでも、エネドラはやや髪が長いかもしれないかな。

 

 それはともかく、二人の顔色はよくない。

 負傷の影響なのか、緊張のせいなのかは判然としないが、青ざめているようにも見える。

 

 アランに外してもらって、二人と面談を開始。

 

 まず、エネドラがアミルに面談の仲介してくれたことに礼を述べた。

 次に、自分たちが家事奴隷として貢献出来ることをアピールしてきた。

 

 エネドラは料理を、チクルスは掃除をメインに担当する。

 二人で分業して家事をそつなくこなせるであろうということ。

 体調面の不安は感じられるかと思うが、衣食住での良い環境を望んでいない。

 だから、低コストで質の良い労働力を提供できるといった提案だ。

 

「うーん」と俺が少し躊躇しているような素振りに見えたのか、二人に緊張が走る。

 俺は、エネドラからの提案に感謝の言葉を伝え、提案と全く関係のない質問を始めた。

 

・エネドラはどこの街の商家で、商人として、どのような仕事をしていたのか?

・商人として伝手はまだ健在なのか?もしくは復活可能か?

・得意な商品は何か?商売以外で秀でている知識は何か?

・分からない情報があった場合にどのように調べるのか?

・チクルスの薬草採取士としての経験は?

・薬草に関する知識はどのように入手したのか?もしくは入手するのか?

・二人のギルド復帰の可能性はあるのか?

・負傷の治癒見込や治療をする場合の最善の方法は何なのか?

 

 家事奴隷とは全く場違いな質問に二人は最初は戸惑っていた。

 だが、二人で相談しながらも、俺の質問にテキパキと答えてくれた。

 まあ、もう、これは採用だな。

 

 二人の回答に俺は礼を言って、「前向きに検討させてもらう」と伝え、アランと交代。

 

 アランが入室してくる前にアミルにも意向を確認。

 

「ご主人様の判断に問題ないと思います」

 うーん、そういう答えを期待していた訳では...まあ、良いか。時間もないし。

 

 アランが入室してきて条件闘争に入った。

 元々が7万ナールとあまり高くないので、大した値引き交渉もせず、受け入れまでの確認だ。

 

 いったんアランの方で二人に治療を施す(負傷の程度が大きいので完治は絶対にしない)。

 治療師(僧侶)の手配があるので、迎え入れられるのは明後日の午後以降の予定が濃厚。

 明日午前中に二人と面会を行う。治療前でも問題ない。

 

 その条件で、元の提案から2割引してくれて価格は56000ナール。

 どうしても売りたいのか。

 遺言(死後解放)二人分600ナールに3割引き価格で39620ナールとなった。

 だが40000ナール支払うので、迎えに行くまでの二人の食事を豪華にしてくれと伝えた。

 

 銀貨・銅貨の支払が面倒臭いから、キリの良い金額にしたかっただけ。

 2割引してくれたのに、更に3割引きさせてしまい申し訳ないな。

 

 アランが二人を呼んで、奴隷契約をする旨、伝えると、二人の表情が途端、明るくなった。

 アランが主人の果たす責任等、型通りの説明をし、インテリジェンスカードに手続きをする。

 

 俺にアミル、エネドラ、チクルスの3人の奴隷が出来た訳だ。

 俺が自分の年齢を告げると、エネドラが驚愕の表情となった。

 若造と思わなかったのか?まあ、俺は老け顔に見られる傾向にあるのかもしれない。

 

 そして、アミル、お前は何故、ドヤ顔をしているのか?...お前も通った道だからか?

 お前、緊張していて、俺のインテリジェンスカードを見ていなかっただろう?まあいいけど。

 

 明日の午前中にまた会いに来る旨を二人に伝え、滋養剤と強壮剤を2つずつと滋養丸と強壮丸を10個ずつ渡して遠慮なく飲むように伝えた。

 治療を待ってから渡しても良いのだが、つらいなら、今薬を飲んだ方が良いと思うんだよね。

 どれほど効果があるのかは分からないのだけど。

 

 やるべきことは全てやり終えたので、アミルと共にアランの商館を後にした。

 アミルが少しホッとしているような、機嫌がよくなったような...家事奴隷が増えたから?

 まあ、不機嫌よりは良いのでヨシとしておこう。

 

 次にベイルの世話人の店(家具屋)に行くことにした。二人に必要な家具を購入するためだ。

 アミルと相談しながら、シングルベッドを2つ(マット、布団つき)、椅子を2つ、テーブルを一つ、中小の桶を都合4つ、箪笥を1つ購入。

 店主のおばさんは短期間でまた家具が売れたことにホクホク顔だ。

 こちらは3割引をセットしても心が全く痛まない。タケダ家に慈悲はない。

 

 すぐに荷造りして持ってきてくれるということなので、鍛冶師ギルドに行くことにしよう。

 今までの経験から、すぐに自宅に持ってこられたりはしない。

 

 二人の日用品のようなものは、だいたい揃っている。

 服などは、実際に二人を迎え入れてからで良いだろう。

 調理器具とかも、本人達の希望を確認しながら、クーラタルで購入するのが良いはず。

 

 探索者ギルドで、鍛冶師ギルドの場所を教えてもらい、言われた通りの場所に出向く。

 

 教えてもらった場所に行き、ドアをノックすると想像通り、ドワーフの親父が出てきた。

 用向きを伝えると、少し怪訝そうな顔をされたが、建物の中に通してもらえた。

 中で、責任者(ギルドマスター?)に会わせてもらえた。話が早過ぎないか?

 

バルツ(ドワーフ族 ♂ 46才)

鍛冶師Lv37

 

 レベルはこんなものか、ギルドマスターだから隻眼という訳でもないんだな。

 簡単に隻眼なんかに会える訳ないか。

 面倒臭そうな顔をしながらも、丁寧に説明をしてくれた。

 

・季節毎に鍛冶師の試験を実施してるが、金を払えば個人で試験を受けることも可能

 個人の試験は銀貨50枚、定期試験の場合は銀貨10枚

・合格すれば合格章と鍛冶師の定本がもらえる

・鍛冶師は会費として毎年ギルドに銀貨50枚を納める

・住居を移転したら、移転先で最寄りの街の鍛冶師ギルドで手続きをする。

 そこで会費を納めたり、情報を入手可能

 

 元居た世界のチェーン店みたいな感じだな。

 

 我が家のアミルに鍛冶師の個人試験を受けさせたい旨の話をバルツに説明。

 バルツはアミルが奴隷なのを見て取り、奴隷で鍛冶師は主人とうまく行かずに悪い結果になることが多いと釘を刺された。

 

 まあ、言ってることは分かるし、バルツはアミルの事を心配して言ってくれてるようだ。

 顔に似合わず、優しいオヤジだな。

 助言に感謝の言葉を述べ、それでも本人の将来の希望でもあるので、是非、そこを曲げて受けさせてほしい旨、頭を下げて頼み込んだ。

 

 少し怪訝そうな顔をされたものの、

 

「金を払う奴なら誰でも試験は受けさせてやるよ」

 と言われたので、それに乗っかる。

 

 バルツの気が変わる前に、試験の費用をその場で支払った。

 

 試験は準備の関係で明後日の午前中となった。朝食食べてから来れば良いと。

 元居た世界の日本の受験と比べればかなりアバウトだな。でも、準備って何だ?

 

 試験の内容を訊いたのだが、ガン無視された。外部に教える気はないようだ。

 まあ、合格に疑いはない。既にジョブは入手しているのだしな。

 

 鍛冶師ギルドを後にして、アミルに明後日の午前中、リラックスして受ければ良いと伝えた。

 心配半分、期待半分というところだろうか、とりあえず頑張ろうとする意思は見てとれた。

 

 レベル10の確認とかやるのだろうか?

 アイテムボックスを空にして、100個アイテムを収納してレベル10を確認するとか?

 

 ギルド神殿で何かイベントをこなせば、条件をクリアしていれば、鍛冶師になれるのだろう。

 

 その時点で待機ジョブに鍛冶師があれば、ジョブ変更してるだけではないかと予想している。

 

 鍛冶師ギルドでの目的も果たしたので、とっとと自宅に戻ることにした。

 自宅に向かってると、荷車が俺の自宅に近づいてくるのが見えた。

 思っていたよりも早かったな。

 

 俺は玄関のドアを開けて、ジョブ構成とボーナスポイントを脳筋モードに変更した。

 

 玄関前に到着した荷車から俺とアミルで家具をドンドン新居の玄関の先の廊下に運び入れる。

 本日も作業員の出番は全くなく、作業を終えて帰宅してもらった。

 もはや作業員も特に驚きもせず、慣れたものだ。

 

 二人の部屋は廊下を挟んで食堂の向かい側の部屋。アミルが先に、その部屋の掃除をする。

 俺は届いた家具を軽く絞った雑巾で拭いていく。

 掃除が終わった場所から拭き終わった家具を運び入れて置いていく。

 

 大して時間がかからず、作業終了。アミルも一仕事を終え、可愛い笑顔。

 それにしても、装備の洗浄とか、引っ越し作業とか、生活臭い技術が高くなった気がする。

 

 実際の収入のほとんどは盗賊討伐による懸賞金なので、血生臭いのだが。

 

 アミルはまだ掃除をしたそうだったので、俺は屋台の食い物やパンを購入するため外出。

 昼食の弁当は事前に購入していたが、予備の食い物として、買ってきたものを食糧庫に収納。

 

 俺は厨房に火を入れ、お湯を沸かしてハーブティーを作る。

 アミルも掃除が一段落ついたようなので、昼食にするから手を洗ってくるように伝えた。

 厨房の水瓶から水を掬って手を洗い、席に着いた。

 なんか、昨晩立てた午前中の計画とイロイロ違ったけど、ひとまずは昼食だ。

 食堂で二人で雑談しながら、ハーブティーを飲みつつ、ベイルの弁当をパクつく。

 

 これはこれで、和むな。やっぱり一人で食う食事よりは全然良い。

 もう、しばらくすると、四人での食事?...なんか、急展開だ。

 

 雑談と言っても、アミルは鍛冶師試験を心配しているようで、その話題がもっぱらだ。

 朝の時点では、それほど心配してなかったように見えたけど、急に不安になったのだろうか?

 

 まあ、昨日の昼までは鍛冶師になれるという具体的な話が何もなかったのに、「今からは君は鍛冶師です」みたいな無茶ぶりをしたので、混乱するよね。

 それでいて、正式な試験を後から受けて...とか、意味不明だよな。

 手順をいろいろとすっ飛ばして、申し訳ない。

 

「アミル、既に鍛冶師になる条件を満たしているので試験は何の心配もないはずだ。

 もし、試験で何か問題があって、試験に不合格になったとしても、

 俺のスキルでアミルは鍛冶師にはなれる。

 装備を作成するための素材の情報は、別の手段で入手することが出来るかもしれない。

 例えば、帝都にある図書館とか、奴隷商館で鍛冶師から別のジョブに変更した者の資料が

 奴隷商館に残されているかもしれないから、それを入手するとかだ」

 

「そう...ですね。確かに鍛冶師のジョブ自体には、ご主人様の力でなれるので、

 あとは素材情報だけ入手すれば、お役に立てるのですね。

 装備をたくさん作れば、売却できてお金がもらえますし」

 うーん、装備品の作成で儲けることは考えていないんだよなぁ。

 

 モンスターカード融合して、パーティメンバの装備品を強化とか、オークションで売却して資金作りとかは考えているのだけど。

 まあ、それは今は言わないでおこう。情報が多くなると混乱するだけだから。

 

「なんなら、明日にでも、帝都の図書館に行って、鍛冶師の情報をアミルの方で調べてくるか?

 入館料が銀貨数枚と保証金が金貨1枚だっけ?それぐらいは俺の方で出してやるぞ。

 今日は、この後、ザビルの迷宮で探索するけど、

 明日一日は図書館で鍛冶師のことや自分の気になる書物を読んできて構わないぞ。

 まあ解決できるかどうかは分からないが、図書館で安心材料を調べるのでも全然問題ないし。

 朝、俺が帝都まで送って、夕方俺が迎えに行っても良いからさ」

 俺は、アミルを安心させられるように出来るだけニコやかに話しかけた。

 

「その間、ご主人様は、どうされるのですか?」

「エネドラ達と面会した後は...うーん、一人でベイルの迷宮でも探索しているかも」

 

「本当の目的はそれなのでは?」

 アミルがジト目で見てくるが、それはご褒美です。

 アミルの指摘は図星だけど。

 

「まあ、無理にとは言わないけど」

「いえ、分かりました。明日、帝都の図書館に行ってみたいと思います」

 

「じゃあ、筆記用具を渡しておくので、明日、一緒に帝都に行くか」

「はい。楽しみです」

 アミルの顔と声が明るくなった。

 やっぱり原作のドワーフ娘と同じで図書館が好きなのかな。

 某ラノベ主人公のような執着心までは感じられないけど。

 

 アミルの不安が少し払拭できたところで、俺たちはザビルの迷宮に行くことにした。




お読みいただき、ありがとうございます。

この作品は結構前から、ローカルで書いて遊んでいたのですが、エネドラとチクルスの合流タイミングは、もう少し先の予定でした。
投稿にあたって、いろいろ変更して、序章で余計なエピソードを入れてしまった関係で合流が早まってしまいました。
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