異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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016.イレーネとヴィルマ

 食堂の二人に声掛けして、アミルと共に二階に上がって着替え。

 汗もかいたので布を絞って顔と体を軽く拭いた。本音としては風呂に入りたいぐらい。

 水差しの水をコップに注いで二杯ほど飲んで一息ついた。

 

 新しい服に着替えて、商館に向かうための準備は完了。

 服はチクルスが繕ってくれたので、俺の四本の腕にも非常にマッチしていて快適だ。

 チクルスは結構、器用だな。もし裁縫に興味があるのなら、いろいろ頼んでみるか。

 

 階下に降りると、既に俺以外のメンバは食堂に集合してハーブティーを飲んで待っていた。

 俺もエネドラが淹れてくれたハーブティーを飲んで、これからの予定を少し話した。

 まずはドブローに行って、イレーネと面談。

 加入が確定しても、その場で引き取らずに明日以降の受入にする。

 新しいメンバ用のベッドや家具類が全くないから。

 

 そして、次は帝都でヴィルマと面談。こちらの対応もイレーネと同じ。

 一人でも迎え入れると決まったら、家具類をベイル、日用品をクーラタルあたりで購入する。

 面倒なので、受入メンバが一人でも今後に備えて全て二人分揃えてしまおう。

 

 部屋もエネドラ母娘は二人部屋だが、二階は個室にしてるので二人とも受け入れたら、作業部屋を除いて我が家の全ての部屋が埋まる感じだ。

 そろそろクーラタルで次の家探しをしても良いかもしれない。

 エネドラ達のギルド加入も計画したい。

 

 四人で玄関からドブローの冒険者ギルドにワープ。ギルドを出て商館に向かった。

 

 商館では昨日同様、ドアをノックして応接室に案内してもらった。

 やがて店主がイレーネを連れて入ってきた。

 身内だけの面談ということで、店主は中座していった。

 

 俺の方から軽く紹介して、イレーネに最後の意思確認。

 肉を食わせてくれて、剣を振るえれば構わないと全くブレない回答。

 

 エネドラ始め三人の意見は特に加入に問題なしとのこと。

 元が犯罪奴隷でも戦争奴隷でも、立ち振る舞いに問題なければ良いと。

 気が強いのは迷宮探索メンバとすれば、むしろ自然なことだとも。

 ブラヒム語の拙いところはエネドラとチクルスで教えるそうだ。非常に助かる。

 

「この二人に逆らったら、食事の肉がなくなることを覚悟しておけよ」

 エネドラ達を軽んじないように、俺の方から釘を刺した。

 態度が少しでも変わってくれると良いのだが。

 

「明日、迎えに来るので、それまで待っていてくれ。あとこれを」

 俺はイレーネに革の靴とマントを渡しておいた。

 

 イレーネが去り、店主が入ってきたので条件闘争。

 ブラヒム語の拙さで一押ししたので、1万ナール下げてくれたが17万ナールが限界だと。

 死後解放の遺言とセットで3割引が効いて、11万9210ナール。

 明日受け入れるので、今晩の夕食を豪華にしてくれと頼んで11万9300ナールで契約。

 12万ナール渡して、銀貨7枚お釣りをもらった。

 

 イレーネが呼ばれて、主人と奴隷の責務の説明とインテリジェンスカードへの手続き完了。

 索敵で確認したけど、イレーネは手続き前はグレー、手続き後は青になった。

 やっぱり所属変更で色が変わるんだろうな。店主は一貫してグレーのままだった。

 イレーネに明日の午後以降に迎えに来る旨を伝え、店主に礼を言って商館を後にした。

 

「先程の取引の値引きが、旦那様のおっしゃっていた特別なスキルによるものなのですね」

 さすがにエネドラは元は商人のジョブに就いていただけあって、すぐに気づいたようだ。

 

「そうだな。商人系のジョブにあるカルクというスキルに働きかけるようだ」

「カルクですか?聞いたことないですね」

 自分で持ってるジョブのスキルでも見えないのだから知らないよな。

 

 俺は、エネドラのジョブを商人に戻した。

 

「エネドラは5000ナールに3500ナールを加えて、3割引するといくらか分かるよな?」

「はい。5950ナールですね」

 エネドラのジョブを探索者に戻す。

 

「じゃあ、4000ナールに4500ナールを加えて、3割引にするといくらになる?」

「はい。えっ...分からなくなりました」

 

「先程はエネドラのジョブを一時的に商人に戻して、今はまた探索者に戻したんだ。

 商人には計算を瞬時にできるカルクというスキルがあるので、

 それがあると計算が簡単に出来るけど、今は探索者にしたので出来なくなった」

「商人になると計算が速くできるようになるのですが、カルクというスキルだったのですね」

 

「そうだな。

 商人のカルクのスキルに対して3割引や3割アップが有効になるように働きかけるので、

 逆にカルクを持たないジョブには有効ではないんだ。

 農夫から野菜をたくさん買っても値引いてもらえないとかな」

 

「そして、この値引き等のスキルは複数の対象でないと効果が発揮されない。

 先程の例でいうと、奴隷の売買に遺言という複数の対象がないと割り引かれないんだ。

 2つの値段を足し算する時にカルクのスキルが働くので、俺のスキルが有効になるみたいだ」

「複数の取引ですか。

 商人のジョブを持つ者と旦那様が大きな取引で交渉すると、かなり有利に働くのですね」

 

「そうだ。これからも同様な状況が発生すると思うので意識しておいてほしい」

「承知いたしました」

 

 3割引の実演が出来たので、これからも有効に活用するように考えてもらえるだろう。

 

 次は、帝都の冒険者ギルドにワープ。ギルドを出て、昨日の商館に向かう。

 商館で、守衛の者に用向きを伝えて、応接室へ案内された。

 さほど待つことなく店主がヴィルマを連れてきた。

 

 ヴィルマは部屋に入るなり、怒りの表情を隠しもしないで、俺を睨みつけている。

 長身で美人の女豹(虎?)系の女に睨まれるのもイイね。

 

 俺がヴィルマの紹介を軽くエネドラ達にした後、ヴィルマに俺の下に来るのかを改めて確認。

 

「弱い主人の所に行く気はない」

 はっきりとした拒絶。エネドラの表情が険しくなった。

 原作でエルフ娘の言葉に反応した狼人族娘の表情もこんな感じだったのだろうか?

 

「では、貴方様が模擬戦で、この者に強さを示してやれば良いのでは?」

 はぁ?この店主、何言ってるの。

 なんで俺がそこまでしなければならないのか。そうまでして売りたいのか?

 去る者は追わず、来る者は拒まずの精神の俺なのに。奴隷にしたら、簡単に解放はしないけど。

 いや、来たいと行っても拒否することはあるか。まあ、俺の好みで決めるってことだ。

 

「この愚か者に、ご主人様の強さを示してやれば良いのです」

 アミルまで...もう、仕方ないか。

 

「分かった。じゃあ、軽く手合わせしてみようか。木剣などはあるだろうか?」

 店主が頷き、俺達は裏庭に移動した。索敵で確認する限りはヴィルマは赤でなくグレーだ。

 

 俺のジョブ構成は、脳筋セット。

探索者Lv42 英雄Lv42 鬼武者Lv42 遊び人Lv42 剣匠Lv42 暗殺者Lv43 僧侶Lv43

 遊び人には、腕力中上昇をセットしたままだ。敏捷の方が良いかな。まあ、いいや。

 

 俺は木製の剣を受取り...鑑定してみたら、「木の棒」って出た。

 これって、装備品じゃないってこと?

 木の棒同士で殴り合うの?なんかコントみたいな気がしてきた。

 ハリセンじゃないからコントではないか。

 いや、ハリセンは状態異常を回復する真面目な装備品だったっけ?

 

 彼女の方に視線を向けると、木製の剣を握っていた。

 素振りをしているけど、まあまあ鋭い振りな気がする。

 

 彼女を鑑定しても、何の装備品も表示されない。

 相手だけ、木製の装備品を使ってるという不正はないようだ。

 だけど、防具もつけてないってことか。

 

「彼女にも何か防具を...」

「当たらないんだから、防具なんて要らないね」

 よほど、腕に自信があるのか。他に何か意図があるのか?

 大きなケガをさせたくないから、防具を装備してほしいのだけどな。

 

 オーバーホエルミングを使って、ゆっくりした動作で瞬殺するか?

 もしくは木刀(木の棒)でもへし折るか?まあ、後者かな。

 

 俺とヴィルマは5mくらいの離れた距離で、お互いの持っている木刀を構えた。

 

 「いつでも来な、この粗●ン野郎!」

 口悪いな。挑発するにしても、もう少し言葉を選べよな。あれで大概の男は激高するのかね。

 

 まずは小手調べだな。

 俺の方から、素早く近づき、軽く横なぎに剣を振るう...のは見せかけだけのフェイント。

 俺の剣に合わせようとしたヴィルマの鋭く振った剣は空振り。

 

 うーん、やっぱりカウンター狙いなのかな。

 重心見てたけど、思っていたよりも前のめりじゃなかったしな。

 

「どうした?久しぶりの剣で素振りが足りなかったか?」

 こちらも挑発の言葉をかけてみるが、反応は薄い。思っていたよりも冷静な奴なのか。

 

 ヴィルマは一瞬のうちに間を詰めて、俺の方に上段で切りかかる。

 この程度の速度ならオーバーホエルミングなしで対応可能。剣で緩やかに受けて、下に流す。

 いったん距離を取るように下がる。こっちのカウンターを警戒したのかもしれない。

 

「そちらから来ないのか?つまらんな」

 俺は独り言のような口ぶりで彼女に近づき、先程よりも力を込めて横なぎに鋭く振るった。

 

 ヴィルマも剣に反応したが、立てた彼女の木刀を俺の剣が真ん中で叩き切った。

 

「あっ」

 ヴィルマが声を発した時には、木刀は手元から10cmの長さになっていた。

 

「もう終わりで良いだろう?戦場なら死んでるところじゃないか?」

 彼女の表情は強張るが、あれは降参した顔ではないな。

 

 言葉も発せず、無表情のまま俺に近づき、短くなった木刀の柄を俺の顔にブン投げてきた。

 木刀の欠片は額で受け、視線は真っすぐヴィルマを見据える。

 こっちは装備品着けてるから、木の棒があたっても痛くないよ。

 

 ヴィルマは距離を詰め、右足でローキックをかましてくる。

 俺にローキックとか武道経験者をなめるなよ。

 左足で軽く受け、彼女の軸足の左足首をひっかけ、右腕を掴んで、地面に背中から叩きつけた。

 

 しまった。手加減しているとはいえ、受け身も取れない奴を地面に落としちまった。

 武道の技を立て続けにド素人に使ってしまった。反省。

 元の世界なら過剰防衛で警察に連行されるかも。警察来る前に走って、逃げるけど。

 

「カハッ...」

 防具着けてなかったのに...ゴメンよ。だから着けろと言ったのに。

 

「まだ、やるか?」

 と言ったは良いが、彼女は声も出せないし、呼吸もシンドそうだ。

 ありゃ、彼女の瞳に大粒の涙が...前言撤回、全然、冷静な奴じゃなかったらしい。

 

 流石に戦う気力はないだろう。俺は彼女から距離を置き、奴隷商の店主に顔を向けた。

 店主もヤレヤレという表情をしているが、元はと言えばお前が言い出したのではなかったか?

 なんだか、納得がいかない。店主の背後でアミルがドヤ顔をしているが、それも別にいいや。

 

 思っていたよりもカオスな状態になってしまった。

 ヴィルマはまだ、寝転がったまま泣いている。

 これだと俺がいじめっ子みたいじゃないか。

 少し強引にヴィルマを抱き起こしたら、俺にしがみついて更に泣き出した。

 もう、俺にどうしろと?

 

「...ってやる」

「ん?なに?」

 

「主人と認めてやるって云ったんだよ」

 はあ?ツンデレかよ。

 

 店主が近づいてきた。

 胡散臭げでニコやかな笑顔がすげぇムカつく。売却の算段がついたって顔だ。

 索敵で確認すると店主の色はグレー。赤だったら、木刀で斬りつけたかも。

 まあ、敵ではないので赤はないか。

 

 そして、近くに青色が...ヴィルマ。契約前から青色ってどういうこと?

 契約してフラグが立てば、青色になるんじゃないの?なんか地雷臭が。

 ツンデレではなく、ヤンデレ疑惑が...?

 

 とにかく、このままだと埒が明かないので、応接室に戻ることにした。

 

 ヴィルマが俺のそばから離れないので、そのまま店主と交渉。

 仮に、ヴィルマを身請けするのなら、いくらになるだろうか?...と。

 

 店主の提示額は18万ナール。昨日は23万ナールとか言ってなかったか?

 5万ナール下げた訳だ。もう俺にしか売れないからという理由からかもしれない。

 俺に地雷女を売りつけてるんじゃないだろうか?

 

 死後解放の遺言とセットで、12万6210ナール。

 5万ナール引いてくれたけど、さらに3割引にしてやった。

 

「し、死ぬときは一緒だ~!」とか言い出す始末だが、スルーして死後解放だ。

 

 『死ぬときは一緒』の意味って、俺が死んだら後を追うって意味だよね?

 まさか、お前が死ぬときに俺を道連れにするって意味じゃないよね?

 どちらなのだろうか?そこはかとなく、ヤンデレ臭がするのだが。

 

 原作主人公とヒロインでも似たような会話していた気がするけど、コッチの方は微妙にポンコツに思えるのは俺の被害妄想?

 

 ヴィルマは俺の腕にしがみついて離れない。

 やっぱり今からでも、この契約はなかったことにした方が良いのではないだろうか?

 

 そんなこと言ってしまったら、この後が怖いかもしれないが。

 オーバーホエルミングかけて、ダッシュで走れば逃げ切れるだろうか?

 どこまでも追いかけてくるイメージが思い浮かんでしまう。

 そして、俺の腕を結構ガッチリと掴んでいる。逃げ道はないのか。もう、諦めるか。

 

 だから、チクルスは、そのニヤニヤを止めなさい。

 

 こちらも準備があるので、明日の午後以降の引き渡しで、それまでの食事を豪華にしてもらうことにして、12万6400ナールで契約した。

 

 店主から定型文言の説明と、インテリジェンスカードの手続きを行い、終了。

 ヴィルマから、「えっ、同い年?」とか聞こえてきたけど、無視だ無視。

 

 小声で、「初年度奴隷の初物です...」と昨日も聞いた店主からの情報。

 聞こえたのか、ヴィルマの顔が真っ赤だ。

 元の世界なら、SNSで叩かれてるセクハラ事案だ。ちょっと可哀そうになった。

 

 でも、俺の腕から手を放して、顔を覆ってるので、助かったよ。

 さり気なく、俺はヴィルマから距離を取った。

 

「ヴィルマには迷宮に入ってもらうけど、得物は何にする?」

「片手剣と盾で...防具は何でも良い」

 何か、原作の狼人族の娘も似たようなセリフを言っていたような気がするが、ヴィルマの方が初々しさを感じるのは何故だろう?

 セクハラ情報でフィルターがかかってしまったのかもしれない。

 

 でも、ヴィルマは原作の狼人娘枠ではないのは間違いない。こいつはポンコツ過ぎる。

 

 まあ、装備は俺が適当に見繕うか。

 

 改めて、明日の午後に迎えに来ることを伝え、店を後にした。

 適当な木陰から、自宅にワープした。

 

 エネドラ達二人は食事の準備を。アミルは二階の二人の部屋の掃除をするそうだ。

 俺の方は、いつもの家具屋に出かける。

 あの店は、市の日ではなくても俺が来ると歓迎してくれる。カモられているとも言えるが。

 

 店主が俺を見るなり、もみ手をしてきた。俺も慣れたもので、手早く家具を選んでいく。

 シングルベッド(マット、ふとん付)2つ、小さめのテーブル2つ、椅子4つ、タンス2つ、取り回しの良さそうな桶を6つ程...と3割引が効いて、4200ナールと。

 中古とはいえ、安いよな。装備品等とつい比べてしまう。

 

 明日の午後一番で届けてもらえるか尋ねると問題ないと、にこやかな表情。

 料金を支払い、俺は店を後にした。

 

 そのまま、コボルトハンター達の宿に向かった。

 

 宿屋の店主に言伝の件を確認すると、俺に伝言を預かってると言われたが食堂の方に居るので直接聞いてくれと指さされた。

 酒場に向かうとガルム達三人がテーブルで食事中...ではなく、終わったタイミングか。

 俺は三人に手を振ると、空いた椅子にかけるように勧められた。

 

「やあ、景気が良さそうだな?」

「おおぉ、来た来た...金蔓が」

 ストレート過ぎる言い方に苦笑せざるを得ない。

 

「あれから10日ぐらい経ったけど、カードは入手できたか?」

「ああ、相変わらず、なかなかドロップしないんだが...なんとかな」

 

「おっ?何がドロップした?」

「芋虫だ」

 芋虫か...微妙だな。まあ、ないよりはマシだ。

 

「芋虫なら、2500ナールくらいか」

「ああ、実は2枚ある」

 

「おっ、2枚ドロップしたのか?そりゃ運が良いな」

「いや、俺達の方でドロップしたのは1枚だけで、もう1枚は同業者から買い上げたんだ」

 へぇ...そんなことまでやるのか。まあ、有難いが。

 

「じゃあ、5000ナールもらえると思ってよいのか?」

「ああ、ただ...金でも良いけど、装備品と交換というのはどうだ?」

 

「はぁ?なんだそりゃ?」

「今、お前らが使っている装備品は銅の剣とか皮の鎧だよな?」

 

「ん?だからどうだってんだ?」

「例えば、鉄の剣2本と革の鎧1つをそちらのカード2枚と交換ならどうだ?」

 

「ん?うーん」

「武器屋なら鉄の剣は1本4000ナール、防具屋なら革の鎧は2400ナールするだろう?

 鉄の剣2本と革の鎧1つなら、合計で10000ナールをちょっと超えるくらいだが、

 それを半額相当の値段にするから、芋虫2枚と交換ならどうかって話だ」

 俺は前々から考えていた物々交換の取引をコボルトハンター達に持ち掛けた。

 

「鉄の剣2本じゃなくて、鉄の剣1本と鉄の槍1本でも良いぞ」

「ちょ、ちょっと待て、こっちで相談するから」

 三人はちょっと離れたテーブルに移動して、相談をし始めた。

 まあ、金でも装備でもどっちでも良いのだけどな。

 

 ただ、今後のことを考えるとコボルトハンター達の装備品は強化してもらって、安定的なカード供給に努めてほしい。

 

 やがて、相談がまとまったのか、こっちのテーブルに移動してきた。

 

「装備品というのは、今出せるのか?」

 俺は、鉄の剣2本と、革の鎧を1つテーブルの上に出した。

 

 コボルトハンター達は一応、品物をチェックし始めた。

 

「一応、紛い物じゃないことを確認するために

 こっちの探索者メンバのアイテムボックスに一度入れてもよいか?」

「別に構わんぞ」

 探索者...確か、槍持ちの奴だったと思うが、アイテムボックス操作をして一つずつ入れては出してを三回繰り返した。

 鉄か銅かは持ってみれば分かるし、アイテムボックスに入れば装備品であるのは分かるから。

 

「おお、問題ないようだな。それで、この3つと芋虫のカード2枚の交換で本当に良いのか?」

「ああ、こっちも余ってる装備品だからカードと交換なら、悪くない取引だ」

 

「丁度、カードを売った金で装備を強化しようと思っていたから、

 良い買物になったぜ。助かったわ」

「そうか、これからもカードの取引に必要なら装備品にしても良いぞ。

 まあ、金でも別に良いのだけど。

 防具もグローブや帽子や靴も革製の予備を持っているから、それと交換でもいけるぞ。

 他にも鋼鉄の武器も余ってるのがあったかも」

 

「はは、そんなに頻繁に装備品を入れ替えられねぇだろう」

「そうか?お前らがカードを入手したという別のパーティに、

 お前らが要らなくなった装備品と交換でカードを入手するってやり方もあると思うぞ」

 

「そうか、確かにそうだな」

「俺としてはカードが入手出来れば良いのだけど、

 出来ればカードの取引をしてくれるパーティの装備品が強化される方が

 今後も長く付き合えるだろうからな」

 

「確かに違ぇねぇな。迷宮じゃ命のやり取りだしな」

「ああ、そうだな。まあ、今日はともかくカード2枚、ありがとうな」

 

「おお、こっちこそな。それにしても商人みたいな奴だな。どこかの商家のお坊ちゃまか?」

「違うって。それより、また10日後くらいに来るわ。

 そっちもカードを入手したら、ここの宿屋の店主に言付けておいて、

 俺に伝わるようにしても良いんじゃないか?」

 

「そうだな。この宿屋も暫く泊っていて、顔なじみになってるから、それくらいは頼めるな」

「ああ、じゃあな。また」

 俺は芋虫のカードを2枚入手して、自宅に戻った。

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