今日は珍しく早起き出来たので、アミルの寝顔が見ることが出来て得した気分。
すぐに目を覚まして、居なくなってしまったけど。もう少し見ていたかったのに残念。
食堂に行くと既に全員が俺を待ち構えている。なんかすごいな。この一糸乱れぬ統制。
一部の者はやる気?...で目を爛々とさせている。
朝から肉が食える嬉しさと、これから迷宮に行ける嬉しさの者が一名ずつ。
あまり待たせると反乱が起きそうな雰囲気なので、そそくさと席に着いて朝食開始。
今日の予定をザッと説明して、雑談しながらの朝食。人数は増えたがいつもの風景。
しかし、イレーネは肉を頬張りながらも薄っすらと笑顔。なんか和む。
ヴィルマは久しぶりの迷宮でウッキウッキな感じだ。
あまりテンション高すぎて、足を掬われないようにな。
アミルは今日から革防具を作り始めたようだ。まずは靴とか頭装備等から。
昨日、ダマスカス鋼の工房から諸々の素材を大量にもらってこれて良かった。
しばらくは手持ちの素材で経験が積めそうだな。いろいろ作って楽しんでくれ。
今日はオネスタさんの所に行くので、クーラタルの賃貸事情の情報収集をしたい。
別に今の家に全く不満等ないのだが、拠点情報の規模値の大きい物件に興味がある。
規模値の大きい物件を手に入れたら、何か良いことが起きそうな予感。
ゲーム感?...いや、ゲーム勘?
「今日は、クーラタルの13階層を攻略したら、迷宮攻略は終わりにするので、
多分、昼頃には戻ってくると思う」
「はい。お待ちしております。旦那様」
食事を終え、四人でエネドラ達に感謝の言葉を述べ、二階に上がって出発準備。
なんか、人数が増えてパーティっぽくなってくるかな。
アミルと二人で迷宮行ってた頃も、あれはあれで楽しかったけど。
俺が一階に降りると、既に三人は準備完了で待ち受けていた。
ヴィルマはもうなんか満面の笑みで、楽しくて仕方がないって雰囲気。
脳筋女め。俺も他人のことをとやかくは言えないが。
二人に見送られて、俺達四人は玄関から迷宮へワープした。
玄関から迷宮に直接移動したので、ヴィルマとイレーネは少し落ち着かない感じだ。
だけど、アミルからは、昨日、エネドラが説明してくれた事を小声で教えてくれた。
事前に説明を受けていても、実際に移動してみないと実感出来ないものね。
向かった先はクーラタル13階層...ではなくベイルの3階層。コボルト階層とも言う。
まずは、イレーネの暗殺者ジョブの取得条件のクリアだ。
「クーラタルの13階層に挑む前に、ちょっと寄り道して、やらなければいけないことがある。
イレーネはこれを持っておいてくれ」
俺はイレーネに一本の毒針を渡した。怪訝そうな顔で受け取るイレーネ。
「ここはベイルの3階層で、コボルトがよく出る階層だ」
「主、コボルトなんて雑魚はどうでも良いんじゃない?」
その通りなのだけど、倒すことよりも倒し方に意味があるんだよ。
「ここではイレーネにコボルトを毒化して倒してもらう。
それが終わったらクーラタルの13階層に移動するから、それまで辛抱してくれ」
イレーネは納得出来ていないものの、一応は頷いてくれた。空気読むね。
索敵で適当にモンスターを探しながら、コボルトがいる集団が見つかるまでワープで移動。
コボルト1匹とニードルウッド1匹のペアを見つけた。
「コボルトを俺が押さえるので、とにかくイレーネはその毒針をコボルトに刺しまくってくれ」
俺はニードルウッドをデュランダルで瞬殺して、コボルトをスっ転ばす。
前のめりに倒れたコボルトを斬りつけないように、三本の武器で地面に押さえつける。
「主、一撃で倒すのはスゴイな!」
褒めてくれるのは有難いが、今は先にやることがある。
「イレーネ、俺が押さえてるから、毒針をガンガン刺してくれ」
イレーネは俺の指示に従って、コボルトの後頭部に毒針を刺しまくる。ヒドイ構図だ。
ギャーギャー言ってるが、20回ぐらい刺したところでコボルトが苦しみ始めた気がする。
元々、苦しめていた気がしなくもないが。
「イレーネ。毒針はもう良いぞ。少し離れよう」
うつ伏せだったコボルトが起き上がろうとするが、酩酊してるかのように立ち上がれない。
毒が効いてるのだろう。別に酔ってる訳ではないと思う。
コボルトの顔色って、毒化してもイマイチ分かりにくいんだよなぁ。
暫くすると煙とともに迷宮に消えて、コボルトソルトが残った。
イレーネの待機ジョブを見ても、このタイミングでは暗殺者は出てこない。
戦士をLv30にしてからやった方が良かったかな?
タイムラグがあってから煙となったから、きっと毒化したのは間違いないだろう。
「今のは、イレーネに暗殺者というジョブになってもらうために必要な行為なんだ。
じゃあ、クーラタルに行くぞ。ここからが本番だ」
俺はワープゲートを開いて、四人でクーラタルの13階層に移動した。
クーラタルの13階層の新規モンスターはフライトラップだ。ボスはアニマルトラップ。
雑魚モンスターのドロップ品は遠志、ボスドロップは陳皮。
12階層以降での新規出現モンスターは11階層までのモンスターよりも強いのは経験済。
13階層になれば、その割合が7割程度には増えるだろうから、より一層の注意が必要だ。
サラセニアと同じく、フライトラップも遠距離攻撃で飛ばしてくるので早めに倒したい。
シックスジョブで、基本4ジョブに剣匠と魔法使いを追加。
今までの12階層の戦いでは僧侶の出番はほぼ無かった。
今回は攻撃重視で試してみよう。魔法使い用の武器も強化したので。
遊び人はサラセニアとフライトラップの弱点属性の初級火魔法と腕力中上昇をセット。
探索者Lv42 英雄Lv42 鬼武者Lv42 遊び人Lv42 剣匠Lv42 魔法使いLv42
三人に任せるのは、近接攻撃を主体とするモンスター1匹にする。
後は俺が魔法二連発とオーバーホエルミング&デュランダルの力押しで倒す。
まずはヴィルマとイレーネの戦い方を見たい。
二人の戦い方を見る前に、俺達の戦い方も見せた方が良いだろう。
「初めに俺とアミルでいつもの戦い方を二人に見せるので、見学していてくれ」
ヴィルマは不服そうな感じで、イレーネは黙って頷く。対照的な二人。
初戦はフライトラップとエスケープゴートの2匹編成。
アミルにエスケープゴートを任せて、俺はオーバーホエルミングからのファイヤーストーム2連発からのダッシュでフライトラップに近づく。
遠距離攻撃をされる前に、こちらが連撃態勢に入ってフライトラップを滅多打ちにする。
多少、攻撃を受けてもデュランダルで回復可能だから気にしない。
アッサリと煙に変えたので、アミルの方に戻る。
アミルはうまく牽制したり、脚を槍で攻撃したりして突進攻撃への移行をガードしている。
俺が後ろから近づき、デュランダルでスラッシュを使って煙に変えた。
魔法使い用の武器のスタッフに知力2倍が付与されたせいで攻撃力が上がった気がする。
今のところは目論見通りかもしれない。
「見た通り、基本は魔法を放った後に、俺が中央突破して、後続のモンスターを倒して、
アミルが抑えてくれた残りを倒す感じだ。
今回は全部で2匹しかいなかったけど、4匹の時はアミルに1匹任せて、
俺が剣で前に居るモンスターを倒して、中央突破して後続を倒して戻ってくる感じだ」
「主の動きが速すぎて、目で追うのが大変だった。一撃で倒してるし、スゴイな」
ヴィルマは目をキラキラさせて俺を見てくる。イレーネもコクコクと頷く。照れくさいな。
一撃といっても、実際には強化された魔法が2発入ってるからな。
アミルが説明してくれていたようだが、実際には見てもらわないと理解出来ないだろう。
「じゃあ、次はアミルの役目をヴィルマに替わってもらって、アミルはヴィルマのフォローな。
イレーネはちょっと見学していて、何か問題あれば指摘してほしい」
さあ、ヴィルマのお手並み拝見だ。
次の集団は3匹編成でフライトラップ2匹、サラセニア1匹だ。難易度高めの相手だ。
「中央と右側は俺が引き受けるから、左側をヴィルマに任せるぞ。アミルはフォローを」
「分かった。主、任されたぞ」
「ご主人様、今回は後ろに下がりながら魔法を使わないのですか?」
「ああ、今回は下がらずに俺とヴィルマ主体で戦ってみよう。みんな遠隔攻撃に注意してくれ」
俺は三匹が近づいてくる前にファイヤーストームを2発お見舞いする。
徐々に三匹が真横に並んで近づいてくる。
遠隔攻撃が俺に向かって飛んでくるが、避けずに受けるようにした。
回避すると、アミルかイレーネのどちらかに攻撃があたる可能性があったためだ。
痛ぇ..な。攻撃を正面から受けたのは久しぶりだな。
いつもは斜めにずらして受けながら、カウンター気味でデュランダルで回復してたのだが。
少し、ジンジンする左腕を我慢しながら、俺とヴィルマで前線のラインを上げる。
近接戦闘の距離まで、もう少しという所で、俺はオーバーホエルミングをかけた。
ファイヤーストームは撃ち込まずに、デュランダルでスラッシュと連撃を叩きつけた。
俺の相手にしていたフライトラップ2匹は煙と消えた。
ヴィルマの方を見ると、器用に避けながらもカウンターでエストックの攻撃を加えている。
サラセニアの攻撃はパッと見は当たる感じには思えなかった。
避け方は別に紙一重などではないが、体を思っていたよりも柔軟に動かして滑らかな回避をしているように見える。
なんか、虎のイメージと違う。別に回避が上手いに越したことはないので良いのだが。
アミルの方も、合間合間にサラセニアにちょっかいをかけながらヴィルマを援護している。
割と良い感じの連携に思えた。
「仕留めるぞ」
俺はサラセニアの背後に近づき、デュランダルでスラッシュを撃ち込んで煙に変えた。
「ヴィルマとの連携は特に問題なさそうだな。俺が戻ってくるまでの足止めも大丈夫だな」
「はい。ご主人様。槍で牽制していても、特に危険を感じることはありませんでした」
「主の攻撃はスゴイな。あっという間に倒してる」
アミルのお墨付きは良いとして、ヴィルマはそればっかりだな。攻撃至上主義か?
「イレーネは特に気になったことはなかったか?」
「御館様の動きを目で追うのが大変だったくらいで...特に何もない」
オ・ヤ・カ・タ・サ・マ?...親方?...土建会社の社長?...ではないな。
『御館様』の方か?武家の当主だったか...またなんでナッポン呼びになった?
急な呼び方の変更に頭をひねらざるを得ない。呼び名はお任せにしてるとはいえ。
「次は、ヴィルマに替わってイレーネが前に出てもらえるか?」
不服そうなヴィルマを尻目にイレーネは頷く。呼び名の話はとりあえず今はスルー。
見た感じは、イレーネの表情に変化はなく、特に緊張もしていないようだ。
次の相手はフライトラップとサラセニアの2匹編成。
「右側は俺が相手するので、左側はイレーネの方で頼む」
イレーネは黙って頷く...が、それはダメだな。声を出さないと。
「イレーネ、了解する時は皆にも伝わるようにハッキリと返事をしてくれ」
「はい!」
おっと、思っていたよりも大きな声で逆にびっくりした。声が大きい分には問題なかろう。
「遠くからの攻撃を減らすために、御館様と一緒に前に出たい」
「そうか、じゃあ待ち受けずに前に出よう」
ファイヤーストームを2発撃ち込んだ後、俺達二人は小走りで並走して前に出る。
そういえば、原作のヒロイン達も前方に駆け出していたな。
遠隔攻撃が飛んできたが、イレーネは危なげなく避ける。
距離があるからとはいえ、軽々と避けるな。目が良いのか?
イレーネが避けた射線上に、アミルかヴィルマが居たのかは分からないが、特に被害は出てないようだ。
俺の方が的がデカいはずなのに、遠隔攻撃が飛んでこずにフライトラップまでたどり着いた。
オーバーホエルミングをかけていたけど、イレーネと並走するように速度を合わせていたので、モンスターからは何か視認しにくかったのだろうか。
フライトラップにスラッシュを撃ち込んで煙に変えた。
魔法をもう1セット撃ち込むと終わりそうな雰囲気なんだよなぁ。まあ、今は慣らしだし。
それに魔法ばかりで倒すとMPだけ減っていくしな。
イレーネの方はサラセニアの攻撃をモノともせずに避けまくり、攻撃をドンドン入れている。
カウンターというよりは、攻撃の打点...手数を増やす感じでガンガン突いている。
ヴィルマが斬り払うのに対して、イレーネは突き刺すという攻撃か。
イレーネの回避はヴィルマと対照的で、直線的に見える。速度に任せた回避だ。
ただ、この回避だと体に負担がかかるのではないだろうか。ちょっと心配だ。
回避方法なんて急に変えられないから今日はこのままで、後で本人に確認してみるか。
アミルも遠間から槍でちょっかいを出して、イレーネの手数を増やす援護をしている。
こっちも問題なさそうだな。サラセニアに近づき、スラッシュの一撃で煙に変えた。
「イレーネとの連携も問題なさそうだな」
「はい、ご主人様。お二人とも、攻撃も防御も私よりも全然問題なさそうです」
「アミルとは役割分担が違うのだから、他人と比べて優劣をつける必要なんてないぞ」
「は、はい。連携の方は特に問題ありません。3人で戦う時は声掛けに注意します」
アミルは前衛を軽々とこなす二人に引け目を少し感じたのかもしれない。
けれど、アミルに求めている役割は全体のバランス調整だ。
「初めのうちは間違っても構わないので、思い切ってヴィルマやイレーネに
指示を出してみた方が良いぞ」
「私がお二人に指示をですか?」
戦闘経験の浅い者が熟練者に指示を出すのは躊躇われるのだろう。
「そうだ。アミルのように距離を置いて戦闘を見ている者の方が
戦場全体を上手く把握出来ていて、適確な指示を出せる場合もあるはずだ。
このパーティにとって良い判断なら採用すべきだと思う」
「私にそんなことが出来るでしょうか?」
初めから、適確な指示なんて出来る訳ないよな。
「すぐには無理だろうな。最初のうちはどんな指示を出したら良いかを考えるだけで良いぞ。
頭の中で指示を出す練習をするくらいにしておけば良い。
慣れてきて、指示が素早く出せると思った時点で、思い切って指示を出してみなよ。
さっきも言ったけど初めのうちは間違った指示でも構わない。
戦闘が終わった後で、三人でアミルの指示をどう思ったのか確認して
徐々に良くしていけばよいのだから」
「分かりました。考えてみます」
アミルは頷いてくれたが、これは俺の指示...命令と受け取ったのかもしれない。
結果が伴えば、そのうち自信に繋がるはずだ。
ヴィルマはきょとんとした顔だが、これは理解していないな。
イレーネは冷ややかな目で見ている気がする。
戦闘経験の浅い者の指示なんて従える訳がないという感じか?
それとも言ってる意味が分からないのか。
アミルを舐めるなよ。アミルはきっとやり遂げるはずだ。
一つのことに集中し始めたアミルは、いつも良い結果を出してきた。
アミルの適確な指示に従うイレーネの姿が俺には思い浮かぶぞ。
まあ、すぐには無理だとは思うけどな。
「じゃあ、探索を続けようか。
相手が3匹以上の編成の際には俺が中央、右がヴィルマ、左がイレーネだ。
俺の後ろにアミルについてもらって、俺は中央突破をする。
アミルは二人のフォローを頼むな。お互いの声掛けを忘れないように」
しばらくは、このフォーメーションでやって、問題あれば微調整だ。
探索を再開すると、初めのうちはぎこちなかった連携が徐々にこなれてくる。
ファイヤーストームの二連発を2セットで倒せるのも途中で確認しつつ、クリアしたエリアを広げていく。
あまり魔法ばかり使うと連携の訓練にならないので、抑え気味にしている。
魔物部屋も途中で俺が一人で殲滅させ、ドロップアイテムだらけの部屋を見せて、二人を驚かせたりしながら、順調に探索を継続する。
全滅したパーティはいなかった。クーラタルは定期的に騎士団が巡回しているのだろうか?
やはり、そこそこ使える前衛二人が入ったのは大きい。安定感がかなり増した感じだ。
アミルのフォローも問題ない。アミルは支援に回った方が輝きを増す気がする。
アミルに詠唱中断の武器を持たせれば安定感は更に増すだろう。
この階層のモンスターの大半はフライトラップとサラセニアになったので、11階層までと比べれば、難易度はかなり上がってる。
だが、今のところ事故の発生する気配はない。実際、手当もほとんど使っていない。
新しく加わった二人も新しい武器を思う存分に振るえて、水を得た魚のようだ。
何というか、機嫌が良過ぎて怖いくらい。
ヴィルマは見るからに楽しそうだし、イレーネは無表情に見えても口角が上がっている。
今まで何かうっぷんが溜まっていたのだろうか?アミルがドン引きしてる気がする。
普段、アミルが見ている俺というのは、あの二人のような感じに見えるのだろうか。
ちょっと考えさせられるな。迷宮探索は楽しいので二人には共感するのだが。
次の接敵までの歩きの間には、徐々にではあるが四人での会話が弾んできている。
と言っても、やはり話題は迷宮攻略に関してだ。
戦闘の連携や、武器の取り回し、自分の好みの武器やモンスターの特徴等、話題は尽きない。
ただ、イレーネの会話の量はちょっと少ないか。
イレーネも拙いブラヒム語で何とか、会話をしてはいるので今後に期待か。
こうやって、ブラヒム語を覚えていくものなのだろうか。
好きな話題の方が言葉の理解も学ぶ速度も上がるよな。
アミルから二人への戦闘指示はまだ一度も出ていない。
でも、焦る必要はない。アミルの初めの指示が出るまでは急かさずに我慢だ。
初めの指示は失敗するかもしれない。それは大した問題ではない。
アミルが一つ壁を乗り越えて二人に指示する時が楽しみだ。
いろいろ試しながら戦ったせいもあって、少し時間はかかったものの、ボス部屋以外の全てのエリアをクリアした。
ボスを倒して、今日の探索は終わりにしよう。
ボス部屋では、いつも通り小荷駄隊外しの手法で臨む。
ボス部屋に四人で入っても扉が閉まらなかったことに二人とも驚いていたが、アミルから説明してもらって四人でフォーメーションを組む。
俺がボスのアニマルトラップを引き受け、残りの三人でお供のモンスターの相手をする。
俺が合図をして、チクルスを小荷駄隊に戻してボス戦開始だ。
お供はグリーンキャタピラーだ。三人で囲んで、滅多打ちにしている。
俺の方はオーバーホエルミングをかけて、魔法を2発撃った後にスラッシュとデュランダルの連撃でボスを煙に変えた。
そのまま三人の所に駆けつけ、包囲の輪に加わる...と速攻でデュランダルのスラッシュで倒した。
少し、不完全燃焼気味の顔のヴィルマだが、攻撃力の差はいかんともし難い。
もう少し攻撃力の高い武器を渡せば、殲滅能力が高まるだろう。それまで我慢してくれ。
俺のジョブがレベルキャップにかかってしまった後は、ヴィルマにビーストアタックを多めに使わせても良いだろう。
アクティブスキル系はMPの問題があるから、多用するならMP吸収の武器を与えたいな。
13階層の攻略は、気持ち12階層の攻略よりも楽だったかもしれない。
前衛の層が厚くなってアミルの負担が軽減し、俺も自由に動けるようになったからだろう。
とはいえ、まだ四人パーティで始めたばかりだ。
もう少し他の迷宮の13階層も回って、戦闘経験を積みながら連携の熟成をさせたい。
ボスドロップを拾い、そのまま14階層に抜けた。いつも昼食の時間よりは若干早いか。
13階層の魔物部屋、ボス部屋含めた戦果は、大量の附子と糸、ヤギの糸。ヤギの糸と毒針が少々。陳皮が一つ。モンスターカードはなし。
午前中、それなりに戦いながら歩き回ったが、三人とも体力的には問題ないように見える。
途中、少しだけ休憩を挟んではいるものの、なかなかタフな連中だ。
モンスターの強度が上がってきているのに頼もしい限りだ。
特にアミルは戦闘経験がそれほどでもないのに、かなり頑張っていると思う。
知らない間に無理をさせ過ぎていないか、もっと気にかける必要があるだろう。
昔の俺の過酷な職場でも、知らないうちに産業医の世話になる同僚とかいたしな。
そのようなことにならないようにホワイト企業の社長を目指そう。
「じゃあ、これで今日の探索は終了にするぞ。帰ろうか」
若干、2名のしっぽがシュン..となった気もするが、きっと気のせいだ。
虎人族も豹人族も分かりやすいな。
ワープゲートを開いて、俺達は帰宅した。
「すぐに迷宮から家に戻れるのは便利だな、主!」
お前、元気だな。さっきはシュンとしていたのに。
それに、イレーネ。
食堂から肉の焼ける匂いがしてきたら、急にシッポがブンブンと...クールな顔をしてるように見えて、お前もホントに分かりやすいな。
アミルと無言で顔を見合わせて、苦笑い。
「さあ、二階で着替えてから食事にしよう」
二人はそそくさと二階に上がっていった。俺達も急がないとな。
お読みいただき、ありがとうございます。
本作での、主人公の呼び名についてのお話です。
主人公は自分の呼び名を自由に決めて良いと言っていますが、執筆者側の都合だったりします。
本作は主人公目線でストーリーを書いていて、会話も主人公以外の者と入り乱れているので、呼び名で誰が発言しているのかを少しだけ補おうという魂胆です。
実際に分かり易くなってるかは微妙かもしれません。誤記の温床になる可能性も否定できません。
呼び名は以下のような感じです。
アミル:ご主人様(基本形です)
エネドラ:旦那様(これしかエネドラにはイメージがつきませんでした)
チクルス:ユキムラ様(執筆者が主人公の名前を忘れないように呼ばせています)
ヴィルマ:主(ポンコツの表現に使い易いからです)
イレーネ:御館様(こいつは忍者枠なので和風です)
イレーネからの呼び名は「武家の当主」ではなく、別のことに由来するのですが、それはイレーネの閑話でも書いて表現しようかと思っています。