異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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023.本領発揮

 起きたら、既に独り寝の状況。

 昨晩は手数の多さで圧倒してイレーネを調伏したのに、朝は去る気配すら感じられなかった。

 何故か負けた感じすらしてしまう。

 

 手桶に溜めた水で顔を洗い、ストレッチして体と気持ちを解きほぐす。いつものルーティン。

 体が徐々に暖まり、頭もスッキリした頃に、アミルが呼びに来たので階下に降りた。

 

 席に着こうとすると、肉の盛られた皿を前にイレーネの目が爛々としている。

 既に戦闘態勢が整っている。慌てて席につき、朝食が始まった。

 

 今日はほぼ一日、迷宮探索ということもあってヴィルマの機嫌は良さそうだ。

 イレーネも朝から肉がたっぷり食えて、ご機嫌。

 他の三人も穏やかに談笑していて、雰囲気は非常に良い。

 俺の目指すホワイト企業の風景のひとコマのはず。

 

 エネドラ達の作ってくれた食事に不満はないが、クーラタルに拠点を移せば、より良い食材が身近に手に入るようになるだろう。

 家自体も立派なものに替えて、我が家の生活のグレードを上げていきたい。

 昨日は「衣」の向上を図ったので、「食」と「住」の向上も目指したい。

 難点があるとしたら、目指す規模の家だと中心街ではなく、郊外になることで少し買物が遠くなることか。

 それだけではなく、家も広くなると家事の負担も増えるかもしれない。

 やはり家事奴隷の契約も視野に入れた方が良いかもしれない。

 

 二人奴隷を増やしたばかりだから、すぐにまた次となるとエネドラ達の負担が増えるか。

 人を増やせば増やすほど、管理する者の負担が増えるのだよなぁ。

 エネドラは管理もするけど、作業もするので余計大変だ。

 せめて、作業部分だけでもエネドラの負担を減らせるようにしないとな。

 

 食事を終えてハーブティーを飲みながら、イレーネの幸せそうな顔を眺めてまったり。

 エネドラ達に感謝の言葉を伝え、迷宮組は探索準備のために二階へ。

 

 一階に降りると、昨晩与えた竜革のジャケットを着た二人とアミルが既に集合している。

 エネドラとチクルスに見送られて、俺達はベイルの13階層にワープした。

 

 

 ベイルの13階層の新規モンスターはクラムシェル、ボスはオイスターシェルだ。

 遠隔攻撃と挟みこみ攻撃に注意が必要。挟みこみ攻撃は麻痺をさせるのだったか。

 雑魚モンスターのドロップはシェルパウダー、ボスドロップはボレーでレアドロップが牡蠣。

 石鹸の材料確保の階層だな。

 現時点でシェルパウダーが大量に必要な訳ではないが。

 

 三人に任せるのはスパイスパイダーやニートアントあたり。

 クラムシェルやロートルトロールは俺が引き受ける。

 毒化攻撃のモンスターは若干不安だが、12階層以降のモンスターの方が厳しいだろう。

 

 ...等と思っていたら、ロートルトロールやクラムシェルの相手も三人は問題なかった。

 クラムシェルが3匹並んでしまったので、1匹を三人に任せたのが、全く危なげなかった。

 竜革のジャケットをもらって気をよくした訳ではないだろうが、二枚貝の攻撃を躱す躱す。

 

 原作の狼人娘程ではないだろうが、躱しざまにヴィルマはカウンターを入れる。

 イレーネもアミルと連携しながら、エストックを突き刺しまくる。

 最後に、俺が倒してしまうのは攻撃力の差だから仕方がないが、もう少し時間をかければ三人で倒してしまいそうだった。

 実際、俺が止めを刺す前に倒し切ってしまったことも、その後に何度か発生している。

 倒しきった後は、ヴィルマは何とも言えない爽快感の顔をしているし。

 

 ヴィルマは特にノリノリな感じで、見てるこっちが冷や冷やするのだが、タイミングよくカウンターを入れるんだよなぁ。

 アミルも、クラムシェルの下部に槍を入れて、うまく隙を作らせるので二人の攻撃が小気味よく入る。

 昨日よりも明らかに三人の連携が良くなってる。

 新しい装備品にも慣れ、お互いの攻撃のタイミングが掴めたのかもしれない。

 

 こちらも負けてはいられないので、オーバーホエルミングをかけながら、魔法攻撃2発と連撃で倒す回転速度をあげる。

 あまり倒し過ぎると、ヴィルマが不完全燃焼になるので加減はするが。

 いずれにしても昨日よりは殲滅速度が上がっていく。

 

 そして、俺が待ち望んでいたアミルからの戦闘指示が発せられた。

 だが、初回の指示は失敗だった。

 指示自体は的確だと思ったが、イレーネはその指示に従わなかった。

 

「アミルの指示はやりたいことと違う」

 イレーネの言葉はシンプル。だが圧倒的な説明不足。

 

 迷宮での戦闘では、コミュニケーションの齟齬は致命傷になりかねない。

 でも、今は失敗しても良いと俺は思っている。

 それだけの余裕がこのパーティにはあるのだから。

 

 そして、頭ごなしに俺からイレーネにアミルの指示に従えとも言わない。

 こいつらの頭は実力至上主義で染まってるに違いない。

 無理やり命令しても逆効果だと感じる。

 

「アミル、無視されても良いから指示を出し続けろ」

「えっ、でも...」

 アミルの自信は揺らぎかけているのかもしれない。

 このまま、今日の迷宮探索を終わらせる訳にはいかない。

 

「アミル、この後の戦闘指示はヴィルマに多めに出すようにしてくれ。

 ちょっとつらいかもしれないが、イレーネにもこのまま指示を出すようにしてくれ」

 俺はアミルに小声で囁いた。

 

「はい。分かりました」

 アミルは俺の言葉に頷いてくれたが、まだ不安は拭えないだろう。

 まずはヴィルマの方を突破口にしよう。

 

 戦闘が再開し、アミルはヴィルマに指示を出したがヴィルマはあっさりと従った。

 素直というか何も考えてないのでは?

 

 アミルとヴィルマの間には少しだけだが連携の精度が上がり始めた気がする。

 別に指示に従ったからといって、攻撃力が上がる訳ではない。

 ヴィルマの動きが少しだけスムーズになった気がする程度だ。

 

 時々アミルも指示をミスるので、その時はヴィルマの頭の上に「?」が浮かんでいるようだ。

 アミルはヴィルマと話をしながら、その齟齬を埋める努力をしていく。

 

 一方でイレーネとアミルの連携は一方通行だ。これが連携と言えるのかどうか。

 アミルが指示を出すがイレーネはそれに応えず、自分のやりたいようにやるといった感じ。

 アミルはイレーネの動きを見ながら、的確なサポートをしている。

 ただ、それはアミルがイレーネに合わせているだけだ。

 それでも戦闘では問題も起きずに終了する。

 これではイレーネとコミュニケーションが取れているとは言えないだろう。

 

 それでも、アミルとヴィルマの間に芽生えてきた連携のスムーズさを見ていれば、その不自然さを感じているのだろう。

 表面的にはそつなく戦闘をこなしてるように見えるが、イレーネの表情にもわずかに苦しそうなものが見て取れる。

 それはアミルにも言えることだ。

 1回の戦闘で必ず指示出しがある訳ではないが、指示を出す度に無視されるのはつらいよな。

 

 イレーネ、それでお前はこれからどうするつもりなのだ?

 

 俺は索敵でモンスターを見つけては、戦闘開始の合図を送り続ける。

 1名を除き、少し重苦しい戦闘が続いていく。

 

 あっ、イレーネがミスった?イレーネがアミルの指示に従う機会が訪れた。

 

 ヴィルマの一撃の後に、アミルの指示でイレーネの刺突がロートルトロールのひざに炸裂して、バランスを崩した。

 ヴィルマがたたみかけて、イレーネがそれに続く。

 俺がスラッシュを唱えてデュランダルで斬りつけて戦闘は終了。

 

「アミルの指示が正しい時だけ...従う」

 イレーネ、言っていることは分かるが、それじゃダメだ。

 

「イレーネ、何が正しくないと思ったのか、ちゃんと理由をアミルに伝えろ。

 自分が何をやりたかったのかも、ちゃんと話せ」

 この言葉を言うのが今のタイミングで良かったのか、初めから指示した方が良かったのかは分からない。

 

 だが、お互いに言いたいことを言えるようになってくれ。

 二人が戦闘している時に必ず俺がその場にいるとは限らないのだから。

 

 イレーネは「はい」と応じて、アミルの方に近づいて少しずつだが、会話を増やし始めた。

 まだ、四人でパーティを組み始めたばかりだ。まだまだ時間と戦闘回数が必要だ。

 

 それでも重苦しかった雰囲気が少しだけ溶けだしたような気がする。

 初めからウッキウッキの雰囲気の人も1名だけいるが。

 

 だけど、こいつのおかげでパーティが暗くなることがないと思えば長所と言えるのかも。

 空気を読まない人ほど世界に通用する...とか、何かの本で読んだ気がする。

 ヴィルマは読まないのではなく、読めない人なのだが。

 

 イレーネとアミルの間にで連携が生まれると、戦闘がスムーズになり、テンポがよくなる。

 戦闘開始の合図から戦闘を終了して、次の戦闘に向かう流れにもリズムが出来てきた。

 パーティとしての一体感が徐々に醸成されていく。

 

 殲滅速度も徐々に上がり始め、討伐数もあがっていく。

 前衛陣のテンションが上がりすぎないように、強制的に休憩をしないとダメなくらいだ。

 

 途中、魔物部屋を見つけて殲滅しようとすると、ヴィルマがこっそりと付いていこうとしてアミルに羽交い締めされていた。

 身長差から、羽交い締めというよりは腰をガッチリと掴まれてるだけなのだが。

 ヴィルマ、ちょっと大人しく待っていてくれ。

 魔物部屋はアッサリ片づけたが、全滅パーティは特になし。

 

 その後も快調にエリアをクリアにしていく。

 ボス部屋の相手はオイスターシェルとクラムシェルのペアだった。

 俺がボスを倒し、お供は三人で倒してもらった。

 今回は初めから、お供は三人で倒してくれと伝えていたので、やる気に満ちていたようだ。

 ただ、止めを刺したのがイレーネだったのでヴィルマは悔しがっていた。

 ビーストアタックで倒したかったようだが、先を越されたな。

 

 13階層の魔物部屋、ボス部屋含めた戦果は、大量のシェルパウダーと錫、ショウガ。毒針とウサギの毛皮が少々。ボレーが一つ。モンスターカードはなし。

 

 アミルの鍛冶師がLv40に達した。

 このまま行くと、すぐに俺と同様に階層のレベルキャップにひっかかるだろう。

 アミルは小荷駄隊に入れて成長のペースを少し落として、エネドラの探索者を育成するか。

 

 イレーネはもう少しで戦士Lv30なので、暗殺者のジョブが取得できそうだ。

 暗殺者のスキルはパッシブだから、戦闘方法は今まで通りで問題ないだろう。

 

 ヴィルマはまだレベル20台の前半なので、しばらくは成長の余地がある。

 今しばらくは、このままの状態で育成を継続すれば良い。

 

 14階層に抜けて、午前中に探索は終了。

 

・・・・・・・

 

 昼食をはさんで、引き続きザビルの13階層の攻略。

 

 ザビルの13階層の新規モンスターはビッチバタフライ、ボスはマダムバタフライだ。

 空中に浮かんで時々、麻痺にするスキル攻撃をしかけてくるので注意が必要だ。

 風魔法が弱点で、ドロップ情報は特にない。倒してから確認だ。

 遊び人のスキルは初級風魔法をセットした。

 

 一応、俺がビッチバタフライとケトルマーメイドを引き受けて、残りを三人に任せる感じ。

 とはいえ午前中の感じだと、そこまで固定的にしなくても大丈夫な感じではある。

 

 オーバーホエルミングからブリーズストームを連射して、後はデュランダルで斬り伏せる。

 午前中終盤の好調をそのままにザクザクと倒していく。

 

 四人パーティとはいえ、この階層に比して高品質な装備品と俺のシックスジョブ効果もあって危機に陥ることは全くない。

 アミルの指示が出る回数も午前中より増え始めた。

 

 戦闘の頻度も高いので合間に会話を重ねて、微調整が上手く出来ているからだろうか。

 午前中は自信なさ気だったアミルも、大きな声で指示を出している。

 大きな声を出すのは、自分を鼓舞するためにも重要だ。

 声出しは緊張感を和らげる効果だってある。

 

 チームワークが良くなり、結果が出てくると何をするにも非常に気分が良い。

 俺以外の三人にも余裕が見て取れるようになってきた。

 クールな顔のイレーネもシッポはフリフリだ。思わず掴みたくなってしまう。

 

 このパーティのチームワークにはまだまだ改善の余地がある。

 それでも、パーティ結成後の滑り出しはまずまずではないだろうか。

 

 途中、魔物部屋を殲滅。全滅パーティは無し。

 

 ボスのマダムバタフライとお供もアッサリ倒した。

 ビッチバタフライのドロップは蝶の羽で、マダムバタフライのドロップは蝶の触角だった。

 何に使うんだこんなもの?ちょっと気持ち悪い。

 仮面なんかの装飾品?鍛冶素材だと良いのだけど望み薄か。まあ、どうでもよいや。

 

 ヴィルマはお供をビーストアタックで倒せて、ご満悦だ。

 アミルがイレーネに指示し、ヴィルマが倒せるように段取っていたように見えたのは内緒だ。

 イレーネがアミルのそんな指示をちゃんと守っているところが、なんだか可笑しい。

 お前、午前中はアミルの指示を無視し続けていたのにな。

 

 イレーネは、まだ我が家の誰にも心を開いてないのかもしれない。

 来てすぐに主人に忠誠を誓うとか心を開くとか、そんな都合のよい話はないだろう。

 契約前から青色の人も居た気がするが、きっと気のせいだ。

 

 徐々にだが信頼を勝ち得ていけるように、焦らずに地道にやっていこう。

 アミルもそうだったが一緒に暮らして迷宮で戦っていけば、そのうち何とかなるかもしれない。

 

 13階層の魔物部屋、ボス部屋含めた戦果は、大量の蝶の羽と黄銅、皮。コボルトソルトとブランチが少々。蝶の触角が一個。モンスターカードはなし。

 

 14階層に抜けたので、いったん休憩。水分補給をしながら、みんなと相談。

 

「まだ時間があるから、クーラタルの14階層に挑戦するか?

 階層の攻略をするまでの時間はないだろうから、途中までになるだろうけど」

「主、もう少し戦いたい」

 ヴィルマ以外の二人も賛成のようで頷いている。今、みんなノリノリだからな。

 

 なんか、原作主人公を困らせる好戦的なパーティメンバの様相。

 原作との違いはパーティリーダの俺が好戦的なところか。

 

 休憩を終えて、クーラタルの14階層の小部屋にワープ。

 

 クーラタルの14階層の新規モンスターはハットバットだ。ボスはパットバット。

 ここもドロップ情報がない。そして飛行系モンスターが続くな。

 ワンフロア上がったから、もう、ほとんどが12階層以降の一段階強いモンスターだ。

 強さの差はほとんどないので1匹任せて、俺は残りを片づける。

 

 とはいえ、フライトラップとサラセニアに比べればエスケープゴートやハットパットは移動速度が速いので三人に任せて、俺は後続の足の遅いモンスターを相手にすることが多い。

 オーバーホエルミングで一気に詰められるからな。

 

 飛行系はアミルがうまく槍で叩き落として、二人に地上戦を任せ、うまく対応している。

 

 俺の方は遊び人でファイヤーストームを2発かまして、デュランダルで撫で斬りにする。

 植物系のモンスターへの定番戦略だ。

 

 ハットパットのドロップは蝙蝠の羽だった。ボスドロップはなんだろう?

 コウモリに触角はないよな。耳とか?...やっぱりキモいドロップ品なのかな。

 

ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)

探索者Lv44 英雄Lv44 鬼武者Lv44 遊び人Lv44 剣匠Lv44 魔法使いLv44

装備 デュランダル 硬直のエストック ダマスカス鋼の剣 ひもろぎのスタッフ

    アルフレイル ダマスカス鋼の額金 硬革のグローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ

110万8050ナール

 

アミル(ドワーフ族 ♀ 16才 奴隷)

鍛冶師Lv41

装備 ダマスカス鋼の槍 ダマスカス鋼のプレートメイル ダマスカス鋼の額金 革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ

 

ヴィルマ(虎人族 ♀ 17才 奴隷)

獣戦士Lv27

装備 エストック 鉄の盾 竜革のジャケット 硬革の帽子 革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ

 

イレーネ(豹人族 ♀ 17才 奴隷)

暗殺者Lv6

装備 エストック 鉄の盾 竜革のジャケット 硬革の帽子 革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ

 

エネドラ(人間族 女 27才 奴隷)

探索者Lv29

装備 皮のグローブ 皮の靴

 

チクルス(人間族 女 18才 奴隷)

薬草採取士Lv30

装備 皮のグローブ 革の靴

 

 クーラタルの14階層も、問題なく戦っていけそうだ。

 中間部屋まで達したところで、今日の探索は終了にしよう。

 ちょっと頑張りすぎたかもしれない。

 でも、せっかく勢いに乗っていたので水を差すのも嫌だったので仕方ないか。

 

 エネドラの探索者もLv29まで来たので、あと少しで武器商人のジョブが取れるはず。

 イレーネは戦士がLv30に達し、暗殺者のジョブが取得出来たので切り替えた。

 レベルが上がれば状態異常を頻繁に誘発出来るのだろうが、武器が追いついていない。

 俺の硬直のエストックと交換するか?

 

 ただイレーネだけスキルつきの武器を渡すと...ヴィルマがねぇ。

 

 ヴィルマにも何か考えた方が良いかもしれない。贅沢な悩みだろうか。

 エストックの片手剣ではなく、いっそ両手剣にして激情のダマスカス鋼剣にするか?

 サイクロプスもコボルトもモンスターカードは手元にある。

 ビーストアタックにも生かせそう気がする。麻痺付与とかもつければ更に有効だろうな。

 だが、灌木のカードは持っていないんだよなぁ。

 

 アミルにも何か持たせないと...強権が良いのだろうがウサギのカードもない。

 

 バランスを考えると、3人へのスキルつきの武器はもう少し保留にするか。

 午前中はギクシャクしたけど、別に今は困難な状況ではなく順調である訳なので。

 

 

 三人に今日の探索終了を告げた。

 ヴィルマはもう少し、探索を続けたさそうだった。どんだけ戦うのが好きなんだよ。

 放っておくと夜中まで探索続けそうだよな。他人のことはとやかく言えないが。

 

 ワープゲートを開いてヴィルマを押し込み、最後尾で俺も自宅に戻った。

 厨房のエネドラ達に俺はもう一度外出することを伝えて、ザビルの冒険者ギルドにワープ。

 

 冒険者ギルドで戦士ギルドの場所を教えてもらい、目当ての建物を探す。

 さして立派ではないが、それらしき建物を発見して中に入った。

 

 受付っぽい所に暇そうな男が座っている。こいつがギルド長ってことはないよな?

 

「ここは戦士ギルドで合っているだろうか?ここで戦士に転職できるのか?」

「ああ、そうだよ。500ナール払えば誰でも出来るぞ」

 

「何か特別な条件等はあるのか?試験の内容などは?」

「はあ?試験というか500ナール払って、ギルド神殿の前で手をかざすだけだ。

 それで戦士になれる奴はなれる。なれない奴はなれない。

 なれなかったら、また迷宮で経験積んでからもう一度来てくれ。

 何回来ようと、その度に500ナールはもらうけどな」

 割とアバウトな感じだな。

 

「戦士になれたら、ギルドで登録とかするのか?」

「うちでは、そんなことはしてないな。

 戦士になる奴なんて腐るほどいるけど、全員、登録して管理したって仕方ないし。

 たくさん戦士になるけど、迷宮でたくさん死ぬしな。

 それで、あんたは今から戦士に転職するのか?

 500ナール払えば、すぐに挑戦できるぞ」

 実験したいだけだから、500ナール払ってみるか。特にデメリットはなさそうだし。

 

 ファーストジョブを念のため村人にして、戦士は待機ジョブの方にあるのを確認。

 村人も戦士もレベル40を超えてるけどな。

 シックスジョブのうち、5つだけジョブをセットして、一つは空けてある。

 村人、探索者、英雄、鬼武者、遊び人だ。

 村人の違和感が半端ない。でも字面的には村人が一番まともな人間に見える。

 

「じゃあ、これで頼む」

 俺は男に500ナール支払って、奥のギルド神殿がある部屋まで案内された。

 ギルド神殿が置いてあるからって別に神聖な雰囲気はない。

 むしろ小汚い感じの部屋じゃないか。詐欺じゃないだろうな?

 

「左腕を、そのギルド神殿にかざしてくれ」

 インテリジェンスカードが出てくるのが左腕だから、左手をかざすのだろうか?

 何か男がギルド神殿を操作しているけど、こちらからは何をしてるのかは見えない。

 やがてギルド神殿が大きく光って...元の明るさに戻った。

 

「はいよ。これで終了。戦士に転職完了だな。ちゃんと経験を積んでいたようだな」

 確かにファーストジョブに戦士になっている。

 戦士、探索者、英雄、鬼武者、遊び人だ。

 村人は待機ジョブにまわされてしまったようだ。別に空けておく必要はなかったか。

 まあ、普通は複数ジョブを持てないのだから当たり前か。

 これで検証は完了かな?

 

「この転職のやり方は、他のギルドでも同じなのか?」

「さあ、他のギルドは知らんな。

 戦士になったばかりで、もう次のジョブのことを心配しているのか?

 地道に戦士で頑張ってから考えたらどうだ?」

 戦士はすでにLv44なのだが...この男は何も知らないみたいだし、もういいか。

 

「ああ、そうだな。なんだかアッサリ戦士になれたので驚いたよ」

「そうか。戦士になったからって急に強くなるわけじゃないから命を大切にな」

 なんか心配してもらったよ。初めは詐欺かと思ったから悪かったな。

 俺は男に礼を言って、戦士ギルドを後にした。

 

 実験は期待通りの結果だったし、これで目標は達成したかな。

 これ以上ここに居ても仕方ないので、適当な木陰から自宅にワープした。

 

 エネドラ達に帰宅の挨拶をして、ドロップアイテムを倉庫に仕舞って二階に上がった。

 コップに水を入れて飲み、顔を洗ってさっぱりしてから水に浸した布で体を拭いて、さきほどの戦士ギルドでの実験結果を記録。

 

 転職させたいジョブが別にLv1ではなくてもギルド神殿で転職は可能。

 複数ジョブ持ちの俺の場合は、ファーストジョブは転職条件の元ジョブにする方が無難。

 戦士は村人Lv5が条件だったはずだ。

 普通の人は村人から転職するから心配する必要はないのだろうが。

 これらの事から転職条件を満たして転職先のジョブを得たら、パーティジョブ編成で新ジョブに変更してレベリングしても、後から正式にギルド神殿で転職も可能なはずだと分かった。

 

 今後、アミルを隻眼にしたり、チクルスを薬師にしたりするのに、ジョブを得てギルド神殿で正式に転職するのは直ぐに実施しない方が良いかもしれない。

 二人とも、近い将来に上位ジョブを取得するだろうが、かなり若い年齢で上位ジョブに正式に就任するのは悪目立ちするからな。

 後から正式にギルド神殿で転職する道も残しておきたいので、実験結果は有意義だったはず。

 俺の心配し過ぎかもしれないが。

 

 ノートへの記録を終えて、ストレッチをしているとチクルスが俺を呼びに来た。

 食堂に行くと、欠食児童が俺を待ち受けていたのでそそくさと席についた。

 今日一日あれだけ戦闘で体を動かしたのに、よくそんなに食えるな、イレーネ。

 俺もお前ほどじゃないけど腹ペコなので、いつもよりたくさん食った気がするけど。

 食事がマジで美味いので、いくらでも食べたくなる気持ちは分からなくもない。

 

 食事も風呂も終わって、皆が集まったところで会議を開始。

 

 まずは明日の予定を説明。

 

 午前中はクーラタルの14階層の攻略の続き。レベリングが目的だ。

 クーラタル14階層の攻略後は、ベイルの迷宮の14階層の攻略。

 階層ボスの攻略までは出来ないかもしれないが、それは成り行きで。

 午前中目途でエネドラの武器商人のジョブ取得をしておきたいので、その進捗次第。

 

 それが終わったら、昼食をはさんで午後からクーラタルでギルド加入だ。

 エネドラは商人ギルドに加入して、そのまま転職、その後は薬師ギルドでチクルスも加入。

 迷宮組はギルドに随伴。今後はエネドラ達の護衛で付き添うかもしれないので、ギルドに顔を出して雰囲気を知っておくことが大事だ。

 

 ギルド加入が無事終われば、オネスタさんの店に行って、家探しだ。

 後は、流れ次第だな。簡単に希望の家が見つかるかどうかも分からないし。

 希望の規模の家は数は少ないらしいので、選択肢は少ないかもしれない。

 

 アミルからは、革の防具を今日で一通り作ったので、次は鉄の装備品作成予定と報告。

 チクルスからは、滋養丸の作成個数を朝晩9個に増やしたが問題はないとのことだ。

 エネドラの方の石鹸の試作は、そこそこの品質のものが出来上がったので自分達で風呂で使って確認してみたいとのことだった。

 

 今日は大きな話題や課題もないし、アッサリと終わりかな。

 

「じゃあ、これで会議は終わりにするね」

 昨日は、フライングで二階にあがった二人もコクコクと神妙に頷いている。

 あれからエネドラに指導されたのだろうか...目が真剣でおもしろい。

 だが、その真剣さは会議中の会話の際に見せてほしかった。

 お前ら二人は会議で全く発言しないものな。まあ、良いけどさ。

 

 皆におやすみの挨拶をして、各自、自室に戻ることにした。

 

明日の予定

(午前)

・俺    :クーラタルの迷宮(14階層)、ベイルの迷宮(14階層)

・アミル  :クーラタルの迷宮(14階層)、ベイルの迷宮(14階層)、(朝:装備品作成)

・ヴィルマ:クーラタルの迷宮(14階層)、ベイルの迷宮(14階層)

・イレーネ:クーラタルの迷宮(14階層)、ベイルの迷宮(14階層)

・エネドラ :朝食、昼食の準備、洗濯、時間あれば石鹸試作

・チクルス:朝食、昼食の準備、洗濯、生薬生成

(午後)

・俺    :ギルド加入(護衛)、家探し(クーラタル)

・アミル  :ギルド加入(護衛)、家探し(クーラタル)

・ヴィルマ:ギルド加入(護衛)、家探し(クーラタル)

・イレーネ:ギルド加入(護衛)、家探し(クーラタル)、(ブラヒム語勉強)

・エネドラ :ギルド加入、家探し(クーラタル)、夕食・朝食の準備、(掃除)

・チクルス:ギルド加入、家探し(クーラタル)、夕食・朝食の準備、(掃除)、生薬生成

※夜は定例会議

 

 今日の迷宮攻略はなかなかの充実感があった。

 イレーネとアミルの間のギクシャクはあったが、最終的になんとかなったし。

 戦闘でも事故に繋がる綻びはなかったし、最後はみな集中していて良い感じだった。

 13、14階層程度で満足してはいけないのだろうが、低階層では問題なく攻略できる基礎的な土台は感じ取れた。

 

 この後のメンバ追加は原作に従う訳ではないが、攻撃力の強化となる魔法使い、防御力の強化となる竜騎士あたりを目指すか。

 俺とヴィルマ、イレーネが前衛なので、パーティ全体としては近接攻撃寄りの編成になるが、それで問題ない気もする。

 俺は魔法使いも兼用だし、状態異常付与の役割も果たすオールラウンダーの立ち位置だから。

 

 アミルと分担してパーティ全体の指揮・管理をしていければ良いと思ってる。

 アミルは中距離攻撃で支援を担当。

 この戦略で、どの階層まで行けそうか挑戦してみたい。

 今日の戦闘形態を基本にして、メンバ間の連携を熟成させていこう。

 上位のジョブを取得して装備も充実させられれば、50階層までいけないだろうか。

 複数のエストックに状態異常を付与して、鬼武者の連続攻撃で相手を沈黙させるオプションもある。

 

 迷宮の討伐ラインとなる50階層以上の攻略は、その近辺になってから、自分達の実力が追いついているのか冷静に見極めた上で、より上位の階層を目指すことにしたい。

 まだ、遠い先の話ではあるが確実に進めていこう。

 

 充実感に浸りながら、将来の迷宮攻略に思いを馳せていると、ドアをノックする音が。

 

 ドアを開けると...エネドラ...の後ろにヴィルマが。

 今日は二人?

 まずは、二人に俺のベッドに横たわってもらって、昨晩同様のマッサージの施術。

 四本腕があっても、二人いっぺんには出来ないので一人ずつだ。

 

 エネドラは何か別のことを考えていたようだが、俺がやっているマッサージが意図していたことと違うのに気づいて、非常に恐縮し始めた。

 

「旦那様、これは一体?」

「俺のいた国では割と一般的で、疲労を取るために体を揉み解すものだな」

 

「あの、それは奴隷が主人にしていただくことではないような...」

「俺のいた村には奴隷がいなかったので、俺には分からないな」

「.....」

 エネドラの話はスルーして、俺はエネドラを解しまくった。

 

 次は、ヴィルマの番だ。

 ヴィルマはイレーネと違って、柔らかそうな筋肉だな。ちゃんと柔軟とかやってそうだ。

 所謂、アスリート体型か?

 

「主、なんかエネドラに聞いていたのと違う気もするけど、気持ち良い...」

 エネドラ、ヴィルマに何を教えていたのだ?まあ、良いけど。

 

 ヴィルマの話もスルーして、解しまくった。

 やっぱり、迷宮で激しい運動をした後はマッサージが重要だよね。

 

 この後の運動のための準備運動をしてるだけという話もあるのだけど。





お読みいただき、ありがとうございました。

ちょっと1話が長くなってしまい、申し訳ありません。切れ目を作るのが難しくて。
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