あれだけダウンさせたのに、朝起きると寝てるのは俺一人。何故なのだろうか?
引っ越しまでの2日間は通常運転だった。
迷宮組はひたすら迷宮探索。
留守番組は、家事と生薬生成、石鹸の試作で試行錯誤。
迷宮の方はベイル、ザビルの15階層、クーラタルの16階層まで攻略完了。
2日目は引っ越しに備えて、少し早めに切り上げたのでヴィルマがお冠だった。
仕方ないだろう、翌日に備えて少しは片づけておかないとダメなのだし。
引っ越しの準備を全て、留守番組に押し付ける訳にはいかないんだよ。
クーラタルの16階層から、エンカウントするモンスターの数が最大5匹になった。
15階層までと比べれば難易度が上がるかと懸念していたが、さほどでもなかった。
5匹と遭遇する際には、俺が中央突破して後衛の2匹を片づける力押しで十分対応出来た。
前衛の両翼はヴィルマとイレーネが受け持ち、アミルがフォローすれば膠着に持ち込め、俺が戻ってきて片づけたり、後衛が遠隔攻撃不可能な場合は、前衛、後衛を各個撃破で殲滅可能だった。
ヴィルマとイレーネはアミルが作成した鋼鉄の盾をもらって、ニコニコのノリノリだ。
装備品がグレードアップしていくと、やはり嬉しいのだろうな。
ちょうど16階層の攻略が始まるタイミングで渡したので、16階層の攻略も気持ちよく出来たのではないだろうか?
二人の動きも今まで以上にキレキレになった。
四人パーティで始めた当初はアミルとイレーネの間がギクシャクしていた時期もあった。
だが、今は二人の間に信頼関係が少しずつ積み上がってきているように見える。
戦闘が終わると、その戦闘の振り返りで会話する。
戦闘の合間に装備品の話をして、それを聞いたアミルが二人に作った防具を渡す。
この繰り返しが、パーティのチームワークを良くする好循環になっている気がする。
16階層からモンスターの数が増えると、少しだけ戦闘時間が長くなる。
ヴィルマは長くなった分、戦闘を満喫している感じすらある。
イレーネは淡々と手数を増やす戦いを継続しており、状態異常武器を早く与えたいという欲求に駆られてしまう。
アミルはダマスカス鋼の槍でモンスターに牽制を仕掛けて、二人をフォローしている。
鋭く一撃を入れてバランスを崩させ、その隙を二人が攻撃するという連携が取れている。
モンスターにはフェイントのような崩しは効かないが、移動や攻撃の際には重心が存在するので、それをずらしてやるだけで隙を作ることを出来る。
コボルトを俺もよくスっ転ばしてたしね。
俺の戦い方を見ていたせいか、重心をずらす攻撃を器用に実践している。
そして、イレーネの方がモンスターに隙を作らせ、アミルが力強い一撃を入れる時もある。
イレーネの気まぐれなのか、アミルの実力を認めたからなのか今後も見ていきたい。
スキルつきの武器を渡すタイミングは三人同時にしたいと思っている。
渡したら今まで以上にテンションが高まりそうで、楽しみのような怖いような。
そのためにもモンスターカード集めが必要だ。
ザビルの迷宮では、盗賊のパーティを発見したので、いつものハメ技で討伐した。
ヴィルマがついてきたがったのだが、原作主人公ではないけども、今のところ盗賊の討伐は俺一人でやることにしている。
ヴィルマは戦場で人を殺めたことがあると言っていたので、俺の覚悟がまだないだけだ。
懸賞金はザビルの騎士団詰め所で換金した。
クーラタルでは盗賊に遭遇したことがないのに、クーラタルばかりで懸賞金をもらうのは不自然に思われるのではないかと感じたからだ。
気にし過ぎかもしれないが。
2日間でレベリングは順調に進んだ。
アミルは階層+30のレベルキャップにかかるまで成長し、レベルキャップにかかった後は探索者をサブのジョブとして育成を始めた。
アミルに限らないが、ヴィルマ、イレーネも目標のジョブがレベルキャップにかかったら、探索者をLv50まで上げて冒険者のジョブを取得させたい。
冒険者になれば、パーティを組んで既知の場所にフィールドウォークで移動できて行動範囲が広がるからだ。
ヴィルマの獣戦士、イレーネの暗殺者、エネドラの武器商人も順調にレベルが上がっている。
チクルスは一貫して小荷駄隊に入れていたが、Lv40に手が届きそうな所まで上がった。
チクルスもレベルキャップにかかるようなら、探索者を育てても良いかもしれない。
ただ、自宅で頻繁に生薬生成をしているので、探索者ジョブへの切替にはコミュニケーションが必要だな。
他には、ルークからモンスターカードの落札通知が来たのでタイミングを見て取りに行こう。
クーラタルへ引っ越ししてからだな。今はバタバタしているので。
明日は引っ越しということで、今日は最後の人力での追い焚き作業だ。
明日からは、この苦行から解放されると本当に思って良いのだろうか。
期待に胸を膨らませながら、ウォーターウォールの二重掛けを数回実施。
水量が一定に達したところで、ファイヤーウォールの二重掛けとほむらのレイピアの出番。
もう、スチームサウナ状態。最後の一回と思えば、これも気持ち良い...いやいや。
元の世界でもサウナーではなかったし。
最後のサウナを満喫した後、そのまま風呂モードで汗を一気に流した。
それにしても、わずか三週間かそこらで、初めの村、ベイルの旅亭、ベイルの家、クーラタルの家...と住まいを転々としている。
これは、この異世界でうまく立ちまわってると言えるのだろうか。
俺が性急に動き過ぎているってことなのかもしれない。
それでも、さすがにクーラタルの家に引っ越せば、次の転居はかなり先だ。
サラリーマンじゃないから、「君、明日から大阪に行ってもらうから」とかないだろうし。
元の世界ではあったよなぁ。しかも、一カ月とか言われて行ってみたら実際は半年とか。
独身だったから、会社の思うがままにこき使われていたよ。
まあ、俺と奴隷契約している者に似たようなことを俺が強いているという話もあるのだが。
過去の感傷に浸ってると湯あたりしそうなので、適当なところで女性陣にバトンタッチ。
・・・・・
全員が集まってきたので会議を開始。この家での会議は今晩が最後か。
まずは、明日の予定から。
明日は朝食を食べたら、引っ越し作業に着手。エネドラ達は食事の片づけがあるけど。
今日の夕方にオネスタさんの店に寄って、掃除が完了しているのは確認済だ。
荷物輸送用の転移サークルを輸送元の部屋と輸送先の部屋に設置したら、各部屋の荷物を転移サークルに集めて移送を実施。
どの程度、この家の魔力が魔結晶から消費されるのか分からないから魔力切れに注意だ。
基本は二人一組で実施していく。
ペアは俺とイレーネ、アミルとヴィルマ...筋力の均等化を図るためだ。
馬鹿力組と筋力それなり組にした方が良いのかな?それはやってみてから考えよう。
エネドラとチクルスは小物の多い厨房や食堂周りの荷物をまとめてもらって、輸送は俺達の方で実施。
棚類を移動させて小物が到着したら、収納はエネドラ達に任せる感じだ。
この世界には段ボール箱も、緩衝材もないから結構適当だ。
運悪く壊れたら、また買おう。そんなに高価な食器とか持ってないし。
エコじゃないけど仕方ない。
昼食はクーラタルで購入して済ませる予定。
夕食は成り行きで。エネドラ達が用意する余裕なければ外食で済ませることにする。
翌日の朝食も、ベイルの旅亭で久々に食べても良いと伝えた。無理する必要はない。
あとは引っ越しの進捗状況次第で考えることにした。
最低限、ベッドや家具類、厨房周りのものが移送出来ていれば後はなんとかなるだろう。
地味に面倒なのは倉庫の移し替え。
今の倉庫からドロップアイテムや装備品を全部出して、自分のアイテムボックスに入れて移転先の倉庫に移し替える単純作業。
仮決めでも倉庫を種別毎に分類をした方が良いので、結局は俺の方で決めてしまった。
鍛冶素材、生薬素材、食材、その他ドロップアイテム、装備品、未定(未使用)の6つ。
探索者か武器商人のジョブを持つ俺、アミル、エネドラで手が空いてる者がやることにした。
引っ越しの段取りを大雑把に決めたところで、その他の報告。
アミルは鋼鉄の装備品の作成に取り掛かり、今朝、ヴィルマとイレーネに鋼鉄の盾を渡した。
このまま、鋼鉄の装備品を終わらせたら、硬革の装備品の作成を開始予定と。
引っ越し後は、ダマスカス鋼や竜革の装備品を増産したいから丁度良い感じだ。
クーラタルの新居で空きスロットの発生確率を確認したいので、20個ほどミサンガを作成して空きスロットの数を確認してほしいと依頼しておいた。
ヴィルマから珍しく発言が...
「主と模擬戦をしたいから、木刀とか作ってほしいのだけど...」
「木製の剣や盾はブランチを使えば作成できますけど、よろしいでしょうか、ご主人様?」
クッコロ...じゃない、くっ、断りにくい質問を。まさかヴィルマから発言があるとは。
「ああ、良いのではないか。あくまで無理のない範囲で作ってくれれば」
「木製なので殺傷能力は武器の中では最低に近く、訓練には最適ですが、
熟練者が全力で攻撃すると相手が初心者の場合はケガをしてしまいます。
木製でも武器の装備品には違いありませんので」
アミルに、目で『優先度は落として良いから』と無言の会話を試みる。
「庭で体動かしたいから、早めでお願い~」
ヴィルマが良い笑顔でブッ込んできた。イレーネもコクコク頷いている。脳筋共め。
もうアミルに一任で良いよ。
チクルスからは、手持ち素材で一通りの生薬を作成したいと希望が出た。
生薬生成は順調に進んでいるが、滋養丸作成に偏ってるため、経験を積むために一通り作ってみたいらしい。
レベル的にも問題ないので、チクルスのやりたいようにやって良いと伝えた。
エネドラの方から石鹸の試作の報告。
現状、劣化版としては、そこそこのものが出来たと報告された。
クーラタル移転後は、拠点リーダ効果で石鹸の品質が上がることが期待できるので、ベイルで作成したレシピと同様に作成して比較することを助言した。
失敗作は掃除や食器を洗うのに使っても良いとも伝えた。
エネドラの方も移転後の品質向上を待ち望んでいるようで、楽しそうな雰囲気だ。
生産系の作業を進めてる三人が三人共、楽しんで取り組んでいるようで何よりだ。
そして脳筋系の二人も楽しみにしている。二人で模擬戦でも良いのでは?
俺の楽しみは夜にとっておく。
「じゃあ、これで会議は終わりにする。明日はちょっと、忙しいかもしれないけど、よろしくな」
皆におやすみの挨拶をして、各自、自室に戻ることにした。
ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)
探索者Lv46 英雄Lv46 鬼武者Lv46 遊び人Lv46 剣匠Lv46 魔法使いLv46
装備 デュランダル 硬直のエストック ダマスカス鋼の剣 ひもろぎのスタッフ
アルフレイル ダマスカス鋼の額金 硬革のグローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ
118万4650ナール
アミル(ドワーフ族 ♀ 16才 奴隷)
探索者Lv20
装備 ダマスカス鋼の槍 ダマスカス鋼のプレートメイル ダマスカス鋼の額金 革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ
ヴィルマ(虎人族 ♀ 17才 奴隷)
獣戦士Lv38
装備 エストック 鋼鉄の盾 竜革のジャケット 硬革の帽子 革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ
イレーネ(豹人族 ♀ 17才 奴隷)
暗殺者Lv29
装備 エストック 鋼鉄の盾 竜革のジャケット 硬革の帽子 革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ
エネドラ(人間族 女 27才 奴隷)
武器商人Lv20
装備 ダガー 皮のグローブ 皮の靴
チクルス(人間族 女 18才 奴隷)
薬草採取士Lv38
装備 ダガー 皮のグローブ 革の靴
明日の予定
(午前)
・俺 :引っ越し作業
・アミル :引っ越し作業
・ヴィルマ:引っ越し作業
・イレーネ:引っ越し作業
・エネドラ :朝食の準備
・チクルス:朝食の準備
(午後)
・俺 :引っ越し作業、余裕があれば商人ギルド(ルーク)来訪
・アミル :引っ越し作業
・ヴィルマ:引っ越し作業
・イレーネ:引っ越し作業
・エネドラ :(夕食・朝食の準備)、引っ越し作業
・チクルス:(夕食・朝食の準備)、引っ越し作業
※夜は定例会議
今晩がベイルの家での最後の夜か。
異世界転移した直後は無一文だったのに、賃貸ではあるが家を二軒借りるまでになった。
我が家のメンバも俺を入れて6人。
全員が迷宮メンバではないが、原作と比べても、それほど悪いメンバとは思わない。
この後どこまで原作と一致しているのか予測がつかないが、外れていたとしてもそれほど悪い未来にはならないのではないだろうか。
公爵と会ったり、鏡を買いにペルマスクに訪れたりするのだろうか。
俺は迷宮でのドロップ品を売却してないから、クーラタル転居後はあまり冒険者ギルドに行かないだろうな。
水害支援のイベントを見落とさないように、マメに冒険者ギルドに行った方が良いのかも。
原作本を読みながら、イベントのチェックをしていると、ノックの音がした。
ドアを開けると、そこにはアミルの姿が。
思えば、この家の初めもアミルだったな。アミルに始まり、アミルに終わる?...違うか。