異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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027.引っ越し

 朝起きると既にアミルの姿はなかった。

 気配を見事に消して俺に気づかれることなく居なくなっている。

 俺が単に寝坊助なだけ?暗殺者とか来たら一巻の終わりかもしれないな。

 

 規模6の拠点になってから、『侵入者検知』ってスキルが拠点に付加されているようだ。

 お客さんが来ると頭の中のインターホンみたいなのが鳴るとか?

 盗賊が来たら、パトライトみたいなのが回るとかなのだろうか?わからん。

 家に長く居るエネドラ達に使ってもらって、そのうち聞いてみよう。

 

 そういえば、規模6になったせいかは分からないけど、『部隊編成』ってメニューも追加されていた。

 これは、自分のパーティとは別のパーティを組める?クラン運営みたいになったのか?

 別に拠点構築とは関係なしに、誰か探索者などにパーティを組んでもらえば良い気がするだけど何か違うのだろうか?

 これも、そのうち試してみよう。

 別パーティで部隊編成をするなら、誰かを探索者や冒険者にしておかないとダメなのかな。

 

 でかい新居を構えるといろいろと新しい要素が増えたみたいなので楽しみだ。

 

 身支度を整えて食堂に行くと、既に臨戦態勢...誰がとか特には言わないけど。

 食事をしながら、今日の段取りを再確認。

 計画通りに行くとも思ってないので、作業の始め方の確認程度だけ。

 あとは雑談しながら、食事を終えてエネドラ達に感謝の言葉を伝えて引っ越し作業を開始。

 

 先に四人で転移サークルを使って、ベイルの家からクーラタルの新居への移動確認。

 玄関で内履きに履き替えるルールは、クーラタルの新居でも同じだ。

 今日は基本的には内履きを履いたままでの作業。外出する際には別だけど。

 なので、転移サークルは玄関ではなく、居室内に設置。

 

 クーラタルに移動して、まずは玄関を確認。

 この玄関の問題点は、ベイルと比べてドアの高さが低いことだ。

 問題と言っても、クーラタルの方が標準サイズでベイルの方のドアが高過ぎるという話。

 ベイルは確か、家具屋のオヤジの話では染め物屋のタライを入れるために、ドアを高くしたとか言ってたよな。

 

 ドアが低いと風呂用のデカい浴槽(タライ)が入らない。特にベイルで使ってる浴槽は。

 今回の引っ越しでは物資輸送の転移サークルを使って風呂場から風呂場に運ぶので問題ない。

 新しく浴槽を追加しようと思ったら、クーラタルでは大きい浴槽を購入出来ないのだよな。

 ベイルで作ってもらうか?夜逃げしないし、前払いだから作ってと泣きつけば良いか。

 

 また、家具屋のオヤジに奇異な目で見られそうな気もするが仕方ない。

 

 これからもメンバは増えそうな気がするし、浴槽は複数あった方が良い気がする。

 クーラタルの風呂場はベイルと比べても広いので置き場所のスペース的には問題ない。

 男湯と女湯に分けるとか、今は時間を分けて入ってるので複数あった方が効率的だ。

 俺はジェントルマンなので、混浴にはしないのだ。コンプライアンス遵守が我が家の掟。

 ああ、でも仕切りは必要だな。浴槽を分けただけだとまる見えで混浴同然だから。

 

 仕切り程度で良いのかという話はあるのだが、遮蔽セメントとかでわざわざ仕切る?

 俺はワープで透過できますが...しないけどね、ジェントルマンだから。

 

 風呂のことは後で考えよう。何か三人が俺を変な目で見ている。今は引っ越し作業が優先だ。

 

 二階に上がって、各自の部屋の割り当てを確認。

 

 新居ではエネドラ達も個室で各メンバの部屋は全て二階に設けることにした。

 ベイルでは当初、エネドラの体調を気遣って、一階にエネドラとチクルスの相部屋にした。

 エネドラが隻腕であることは変わらないが、体調そのものは良くなったので二階でも問題ないとのことだ。

 エネドラとチクルスを各々個室にしたのは、他のパーティメンバと平等の扱いにするためだ。

 決して夜の順番の気まずさから分けた訳ではない。多分。

 実際、ベイルで二人がどう感じていたのかは知らないし...確認する気もない。

 

 改めて各部屋を見て、依頼しておいた掃除がそれなりに出来ていることを確認。

 短い時間で迅速な対応してくれたオネスタさんと従業員(奴隷?)に感謝だ。

 自分で気になる所や、引っ越し後に汚れた箇所があれば各自で対応すると。

 

 三人はベイルの自室に戻って、家具類の移動を始めた。

 やはり、俺抜きで各メンバが拠点移動が出来るのはかなり便利だな。

 今のところ、引っ越し以外では利用用途がないかもしれないが。

 

 一か所に家具を寄せておけば、その下に移送用のサークルを設置すれば良い。

 ベッドやタンスとかは、それなりに重いけど、迷宮組なら腕力的には問題ない。

 

 俺は残って、このクーラタルの新居を支城から本城に変更した。

 本城と支城で何か差があるのかな?

 本城が攻め落とされると、城主(俺?)が死亡扱いとかだと嫌だな。

 支城でも攻め落とされると、リーダが敵国の捕虜になるとか?

 敵国って何?..というのはあるが。

 今は考えるのは止めよう。

 

 玄関、廊下、トイレ、階段等に照明を設置。

 このあたりはベイルと同じようにした。階段の照明のスイッチも同じように設置。

 引っ越してから、あまりに変わってると使いにくいから。

 

 風呂場候補の場所に冷水・温水給水設備を設置するのは保留。浴槽のタライを置いてからだ。

 各部屋に冷暖房設備を設置した。

 ベイルの家では、暖房をそこそこ使っていたけど特に問題なかった。

 今回、俺の部屋はベイルの俺の部屋と比べても、かなり広いのだけど大丈夫なのだろうか。

 設置する冷暖房設備に6畳用とか12畳用とかないのだけど?

 

 照明や給水・給湯設備も設置したいのだけど、これは各人の希望場所を確認してからだな。

 ベッドの位置や机の位置に好みがあるかもしれないし。

 給水・給湯設備は掃除や洗顔がきっと楽になるはず。

 下水に通じる設備がないので、桶やタライは必要だが。

 使用した水やお湯は、トイレに流す感じになるだろう。

 まあ、水を流せばトイレの排水溝も綺麗になるから一石二鳥と思うことにしよう。

 

 結構、魔力は消費しているので、魔結晶の残魔力確認や補充は今まで以上にチェックする。

 ただ、利便性には替えられないので今日はガンガン使おう。

 一通り設備を設置し終わった後に、ベイルの自室にワープした。

 

 自分がベイルの自宅に戻ったところで、各部屋の荷物の移動にかかる。

 今回は拠点間物資輸送が拠点構築スキルによって実現できるので、各自の旧部屋から新部屋に輸送サークルを設置して、家具や荷物をドンドン輸送させる。

 とりあえず、部屋の真ん中にまとめ終わったところから片づけていく。

 風呂の水も、掃除用の桶に移して残りのお湯は全て流した。

 ある程度乾いたら、輸送だな。

 

 食事の片づけが終わったエネドラ達は旧拠点の倉庫からアイテムを取り出し、アイテムボックスに入れて新拠点に設置した倉庫にドンドン移していく。

 輸送はエネドラが行い、収納はチクルスが実施といった感じで分業している。

 装備品は二階にある俺の部屋の倉庫なので、俺がアイテムボックスに収納して移し替えた。

 装備品は重たいからな。俺の仕事だ。

 チクルスは厨房の食器類などを取り出して輸送サークルに置いて移送し、新拠点に移送した食器棚にどんどん移し替えていく。

 俺は各人の個室を回って、照明や給水・給湯設備の場所の希望を聞きながら設置していく。

 

 なんか、午前中にはほとんど輸送自体は終わりそうだ。

 手際が良いというか、輸送サークルと迷宮組の腕力が半端ないというのもある。

 某引っ越しセンターの熟練者にも多分負けてないくらいだ。

 ベイルの家は引き払う訳ではないので、後で掃除もちゃんとしないとな。

 

 昼が近づいてきたので、エネドラに昼食を買ってこようかとお伺いを立てたら、朝のうちに簡単な軽食を作っておいたので、それを食べることになった。

 見たまんまの焼肉サンド?...量というか個数が多い。イレーネを黙らせるため?

 新居の広々とした食堂には、ベイルから持ってきたテーブルとイスを置いても、全然スペースが余ってるのでガランとした感じだ。

 無理にテーブルとイスを増やしても仕方ないしな。

 

 エネドラ達が用意してくれた昼食を頂く。

 新居の広さと利便性にみな、興奮気味だ。少し無理して大きな家を借りた甲斐があった。

 一部、「広場で早く、模擬戦を...」と聞こえた気もしたが華麗にスルーした。

 もう、この家は買い上げても良いかもしれない。

 資金がもう少し増えたら買ってしまおう。

 

 設備の設置や自分の部屋の家具類などの移動が終わったところで残りの作業を5人に任せて、ベイルの主要人物へ挨拶に出向くことしにた。

 残りの作業は掃除がメインなので、エネドラが自分達でやると主張したためだ。

 あまり拘りはないので、エネドラ達に任せることにした。

 クーラタルの新居のリーダをエネドラに移譲して、俺は玄関を出た。

 

 挨拶か。まずはビッカーの所から行くか。

 

 守衛に用向きを伝えて、いつもの応接室に案内された。

 暫く待っているとビッカーがやってきて挨拶を交わす。

 拠点をクーラタルの新居に移す事を伝え、ベイルの自宅はそのまま残すが、伝言がある場合には新居かクーラタルの商人ギルドに言伝をしてもらうように依頼した。

 ビー玉の取引については、本拠地を移した後も継続することをしっかりと念押しして伝えた。

 

 他にはベイルかクーラタルで武器、防具店かもしくは食糧を調達する店を構えるかもしれない旨を伝えて、少しだけ意見交換。

 聞いた話では、ベイルは周りの村から食料品というか麦とか野菜等が集まるようだ。

 帝都やクーラタルと比べると、需要より供給が多いため安く手に入れることが出来るらしい。

 食材の調達コストとしては、ベイル < クーラタル < 帝都 という感じ。

 クーラタルは迷宮食材とかもあるからなのかな。帝都は人口が多い?...知らんけど。

 

 食材をベイルで安く買い入れて、転移サークルでクーラタルに移送して売りさばく?

 どうせ、原価が安いから大した儲けにはならないだろうけど。

 まあ、エネドラと相談して、いろいろ考えよう。

 こういうのを考えるのはエネドラは好きそうだし。

 

 ビッカーの商流とはあまり被らないようなので、何か手伝えることがあれば相談してくれても良いとだけ言われて終了した。

 こっちも、まだ具体的なことは何も決めてないからね。

 

 ビッカーに別れの挨拶をして商館を後にした。次はコボルトハンター達かな。

 コボルトハンター達の宿に行って店主に確認したが、当然この時間には居なかった。

 一応、クーラタルの住所のメモを渡し、必要な時にはこの宿に俺が出向くことも改めて店主に伝言してもらうことにして宿屋を後にした。

 

 騎士団の詰所は別に良いか。顔馴染みではあるが、別に知人・友人・顧客って訳でもないし。

 ベイルの迷宮もまだ探索はするし、盗賊を討伐したら寄ることもあるだろう。

 

 ベイルの自宅に戻ると、ヴィルマとイレーネがかなり一生懸命に掃除をしていた。

 エネドラに何か言われたのだろうか?

 どの部屋もすっからかんになっていて、掃除はしやすいが広い分だけ大変だよな。

 邪魔しても悪いので少しだけ声を掛けて、俺はクーラタルの新居へワープした。

 

 エネドラに声をかけ、ベイルの家を賃貸でなく購入するのはどうかと持ち掛けてみた。

 ベイルで絶対商売をしたい訳ではないが、所有する家があった方が便利な気がしたからだ。

 あまり時間を置かずに、エネドラからも肯定的な意見が返ってきたので購入することにした。

 

 ベイルの自宅にワープ。行ったり来たりだな。

 相談役の家に出向き、ベイルの家を賃貸の延長ではなく、購入したい旨を伝えた。

 ついでにちょっとした作業を依頼して3割引を効かせ、前回契約した1か月分を除いた59か月分の金額で購入。

 今回は、インテリジェンスカードのチェックはしないようだ。

 別に塩対応の女騎士様に会いたかった訳ではない。

 金額としては、16万5900ナール(追加作業費を含む)で家の所有者となった。

 クーラタルの新居も購入したいが、手持ちが少なくなってきたので資金が貯まってからだな。

 

 ベイルの自宅の鍵をいったん閉めた後で、旧宅の魔結晶に魔力を補充して、玄関から新居の玄関にワープで移動。

 ベイルの家の方は、『侵入者検知』がないのだよな。拠点の規模が小さいからだろうけど。

 これからベイルの家は無人になるから、『侵入者検知』の機能が欲しいのだが。

 無人でも気づける検知機能なのかは...多分ダメだろうな。やっぱ不要かも。

 

 クーラタルの新居の方は家具の配置は完了していて、掃除もざっと終えたようだ。

 エネドラとチクルスはこれから厨房の使い勝手を試すとのこと。

 

 アミルは作業の合間合間に、ミサンガを作って空きスロットの数の出来具合を確認しているようだ。

 エネドラ達からは、夕食は出来れば作ってみたいと提案された。

 みんな、よく働くなぁ。俺も頑張らねば。

 

 クーラタルの新居は1階も2階も広いので玄関から廊下を少し歩かないとエネドラ達がいる厨房まで顔を出せない。

 不便という程ではないが、まあ贅沢な悩みか。

 自分の部屋を確認するために二階に上がった。

 新居での俺の部屋は主寝室と書斎の2つ部屋があって、ドアで繋がってる。

 廊下から、それぞれの部屋にも入れる。何か資産家になった気分だ。

 綺麗に掃除もしてあって、きっとチクルスあたりが気を利かせたのかもしれない。有難い。

 お直しした洋服もきれいに収納されていて、なんとも気分が良い。顔が自然に緩んでしまう。

 

 二階の自室に満足したので、一階に降りるとエネドラに声を掛けられた。

 ハーブティーを淹れたので、どうかと。せっかくの厚意なので頂くことに。

 ちょうど、イレーネとヴィルマも旧宅の掃除を終えて戻ってきたので全員で休憩にした。

 

 イレーネもヴィルマも掃除を頑張ってやってたから、ハーブティーを美味しく感じるだろう。

 俺も新居にワクワクしているせいか、美味しく感じる。

 淹れてくれたエネドラとチクルスに感謝だ。そればっかりだけど、いくらでも感謝出来るぞ。

 

 エネドラに明日の午後は商人ギルドに行って、妨害の剣セットの取引をしないかと持ち掛けた。

 例の取引をそろそろやってみたいと。

 エネドラも頷いてくれて、今晩の会議で交渉に向けた最終確認をすることにした。

 ヴィルマは、明日の探索時間が減ることに少し不服そうだ。

 口に出しては言わないけど、表情が物語っている。

 

 ヴィルマは無言で席を立って、ダッシュで居なくなってしまった。えっ、怒った?





お読みいただき、ありがとうございました。

 クーラタルの賃貸物件の見取り図(本日投稿時点)的なものです。薄っすら赤い線がドア。


【挿絵表示】


デカ過ぎ。
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