昨晩、踊り疲れたのだろうか?
俺が目を覚ましてもヴィルマはまだベッドに居た。
昔読んでいたスペースオペラで、
「もっとも激しく踊る者がもっとも激しく疲れる」
というセリフがあったような。ちょっと違うか?
ヴィルマの寝顔を堪能していると、気づかれて目を覚ましてしまった。
真っ赤な顔をして出ていった。
今度は俺の毛布は無事だったし、朝から良いモノが見られて満足だ。
充実感に浸りながら、朝の日課のストレッチ。
今日は迷宮の20階層を走破しながら、上位ジョブの取得を目指す。
どの程度、上位ジョブが取得出来るかで今後の迷宮探索の難易度が変わるかもしれない。
勇者と魔道士が取得出来れば、あまり大きな問題はないだろうか。
原作でも、隻眼や百獣王、薬師は取得してなかったし。
とはいえ、その3つが取れるとかなり楽になりそうな予感はする。
隻眼は上位素材がないから、取得出来ても直ぐには役立たないかもしれない。
暗殺者の次のジョブは刺客ではないかとWeb原作の感想返信にあった気がする。
こちらは期待したいところだ。
イレーネが呼びに来たので、急いで階下に降りた。
食卓について朝食が始まった。
そして、今日はヴィルマが挙動不審な感じで食事をしている。
平穏な食卓は昨日までだったか。迷宮探索までには復活してほしい。
食事を終え、迷宮探索の準備を終えて階下に降りた。
今日はエネドラとチクルス以外にレドリックとポーラの姿もあり、新鮮な気分。
新メンバの二人を迷宮探索に誘いたい気もするが、ポーラは妊婦だし、レドリックもいきなり20階層は無理だろうから自重した。
二人のパワーレベリングは別途考えよう。
まずは俺達の上位ジョブ取得の確認をしてからだ。
「三人の護衛を頼むぞ」
「はい、頑張ります。ご主人様」
男に、「ご主人様」呼びされても、全く嬉しくないのは何故なのだろうか?
四人に見送られて、クーラタルの20階層にワープした。
クーラタルの20階層の新規モンスターはラブシュラブだ。
既にザビルでも戦っている相手だ。
ラブシュラブ、ロートルトロール、ピッグホッグが多い。
ラブシュラブ、ロートルトロールの弱点耐性が共通の火魔法を主体に使うことになるだろう。
足の速いピッグホッグや飛行系モンスターを三人に任せて、残りを俺が相手する。
ラブシュラブとロートルトロールを片づけて、三人の下に戻るとビッチバタフライと戦闘中。
丁度、アミルがビッチバタフライを叩き落としたところだった。
「イレーネ、スイッチ」
イレーネの近くに転がっていくところをヴィルマが割り込む。
浮かびあがらせないように、ヴィルマがいつもより素早く突く動作。
イレーネが背後に回り込んで、刺突で滅多刺し。間もなく石化した。
三人の連携も傍らで見ていると危険はほとんどなさそうだ。
手当を使う機会もほとんどない。
「ほい」
ヴィルマにデュランダルを渡すと、石化したビッチバタフライをひたすら突き刺す。
雑な往復運動だったが、やがて煙に変わった。
ビーストアタックでMP切れにならないように、たまにデュランダルを貸している。
イレーネが石化させた時だけなのだが、そこそこの頻度で発生している。
レベリングで博徒のジョブを俺が付けている時は、かなりの頻度で石化が発生する。
ただ、博徒を付けてなくても、それなりには石化させている。
イレーネの戦闘スタイルと暗殺者のジョブはやはり親和性が高いな。
戦闘で問題が発生することもなく、未開拓エリアをクリアにしていく。
途中の魔物部屋も俺が殲滅したが、全滅したパーティもおらずドロップ品を拾うだけ。
非常に淡々と攻略が進んでいく。
シックスジョブの5つ目、6つ目がLv50になる度にひたすら入れ替えてレベリングを行う。
そして予想通りというかアミルの隻眼、ヴィルマの百獣王、俺の薬師は取得できず。
まずはアミルへ状況説明。
「アミル、鍛冶師はLv50になったが隻眼のジョブは取得出来なかったようだ。
鍛冶師のレベルはこの階層ではもう上がらないので、
この前と同様に探索者にジョブを変更しておくぞ」
「はい、ご主人様。
この前まで探索者のLv3でしたし、急に鍛冶師になれたので
隻眼なんて夢のまた夢ですから、お気になさらず」
そうなのだけど、そうじゃないんだよ。鍛冶師はLv50には達してるのだから。
多分、スキル融合の成功数か種類、もしくは装備品の総作成数あたりが解放条件なのだろう。
一つはではなく複数の複合条件の場合もあるかもしれない。
まあ、鍛冶師としての生成作業を重ねていけば、時間が解決してるくれるかもしれない。
次はヴィルマ。
「ヴィルマ、獣戦士はLv50になったが百獣王のジョブは取得出来なかったようだ。
獣戦士のレベルはこの階層ではもう上がらないので、
この前と同様に探索者にジョブを変更しておくぞ」
「うん?なんだかよく分からないけど主に任せた。
ビーストアタックを使わずにモンスターを倒せば良いのだろう?
それはそれで楽しみ」
そうなのだけど、何故アミルと同じ説明しているのに回答がここまで異なるのだろうか?
お前、スキルを封印した縛りプレイを楽しむつもりか?
意外にドMだな。
昨晩の夜の課外活動でも、ちょっとイジメてやったけど次はもっと激しくイジメてやろう。
「御館様、あたしには何かある?」
「イレーネは暗殺者の経験をもう少し積む必要があるので、このまま戦ってくれ」
イレーネの暗殺者はまだLv49だ。午後には結果が判明するだろう。
「分かった」
イレーネはあっさりと言い放って、先を歩いていく。
いつも通りと言えば、いつも通りのサバサバ感。
はあぁ。俺だけが無駄にイロイロと期待していただけなのかなぁ。
気を取り直して、ボス戦だ。
とはいえ、やり方はいつも通りだ。小荷駄隊外しを行なったいつものズル戦法。
ボスのラフシュラブは俺が受け持ち、お供に出てきたラブシュラブは三人に任せた。
オーバホエルミングをかけてからの火魔法連発とデュランダルの連撃でボスを煙に変えるだけ。
この安定したボス対応で22階層までは大丈夫だろう。
三人のラブシュラブの戦いもボス戦前に何度か戦っている相手なので慣れたもの。
イレーネが石化させて終了。止めは俺がデュランダルで切り刻んで煙に変えた。
20階層を突破したので、そのまま21階層に抜けた。
20階層の魔物も特に問題なく対応出来ている。
そしてモンスターカードがドロップしないのも、いつも通り。
ジョブの取得状況だけが残念な感じだ。
いや残念は言い過ぎか。取得したかったジョブで取得出来たものはあったのだしな。
考察は自宅に戻ってからにしよう。
ワープゲートを開いて、ヴィルマの背中を押して皆と自宅に戻った。
食堂に顔を出して、エネドラ達に帰宅を告げた。
エネドラとチクルス、ポーラの三人が顔を見せてくれた。何か新鮮な気分。
レドリックは掃除をしているようだ。イケメンに雑用をさせてスマンな。
心は全く痛まないが。
二階の自室に戻り、汗を拭いながらコップに水を注いで2杯ほど飲み干した。
その間も、俺のジョブで新規に取得出来たものを再点検。
まあ、こんなものと言えばこんなものなのか。
取れなかったと思われるもの、なんでこんなものが?...というジョブもあったり。
昼食の時間を使って、結果を皆に説明しながら今後の相談をするか。
階下に降りて、食堂に向かった。既にレドリックも席に着いていて俺が一番最後だ。
8人で迎える初めての昼食か。
イレーネは一目散に皿の肉に向かっているいつも光景。
人数が増えても雰囲気は変わらないか。
俺は、皆に午前中の探索での上位ジョブの取得結果を説明...の前にエネドラから発言が。
「ルーク殿の使いの者から、この前の取引についての相談があると伝言を受けました」
このタイミングでか。まあ、そちらは明日以降にしよう。
今は、ジョブ取得結果の共有と相談が先だ。
「まず、アミルの隻眼、ヴィルマの百獣王、俺とチクルスの薬師は取得できなかった。
隻眼取得の条件として、スキル融合装備品の成功数が足りていないのかもしれないし、
作成した装備品の総数が足りていないのかもしれない。
とはいえ、これからもアミルには鍛冶師として装備品の生成や
モンスターカード融合をしてもらうことには何の変わりもない」
「はい。頑張ります、ご主人様」
前向きだな、アミル。
俺のガッカリ感が伝わらないようにしないとな。原作主人公の失敗を生かさせてもらおう。
「アミルの鍛冶師のレベルが頭打ちの時には、替わりに探索者のジョブを育てていく。
先日、伝えた通りで既に実施している。
探索者のレベルを上げて、冒険者のジョブを取得してもらいたいと思っている」
「はい。ご主人様」
この前まで、探索者Lv3だったのに、冒険者とか言われても動じないのは俺のやり方に慣れてきたのだろうか。
アミルの探索者のレベルは40を楽々超えてたりするのだよな。Lv50まであっという間だ。
レドリックとポーラの表情が消えてるのが気になるが、それは後回しだ。
フォローはエネドラにお願いしよう。
「次にヴィルマだが、獣戦士はLv50に達したが百獣王は取得できなかった。
百獣王のジョブの解放条件が全く分からないので、これから調査が必要だ。
アミルと同様だが、獣戦士のレベルが頭打ちの時には、探索者のジョブを育てることにする。
ヴィルマは百獣王のジョブ取得について、何か感じることがあるか?」
「うーん、分かんない」
訊いた俺がバカだったよ。いや、そんな言い方はないか。
ヴィルマの謎のセンスでワンチャン、何か良いアイディアが...思ったのは俺なのだから。
「俺とチクルスもだが、薬師のジョブは取得出来なかった。
昨晩、話をした通りだが冒険者ギルドに行って未作成の生薬の素材を入手してくる」
「分かりました。ユキムラ様」
今はポーラのため等といった説明は加えない。だが出産の環境整備はボチボチ始めよう。
「イレーネの暗殺者のジョブのレベルはまだ49だ。引き続き、迷宮で経験を積む予定だ」
イレーネは黙ってコクコクと頷いているが、肉を咀嚼しているだけだ。俺は騙されないぞ。
俺の方は暗殺者のジョブがLv50に達したが上位ジョブの解放はなかった。
それは別に今は報告しない。イレーネの結果を待ってから考えたい。
「俺の戦闘系のジョブについては、まだ別の機会に説明しよう」
魔道士、勇者、冒険者、禰宜、沙門、聖騎士、剣聖のジョブが取得出来た。
正直、聖騎士のジョブが取得出来るとは思わなかったし、剣聖は剣匠の上位ジョブだろうが想定外だった。
「あの、ご主人様の鬼人族の種族固有ジョブ...次のジョブは取得出来たのでしょうか?」
あっ、それやっぱり訊いちゃうの?まあ、気になるか。
「ああ、鬼武者の次のジョブは『百鬼夜行』らしい」
「ヒャッキヤコウですか?それはどういう意味のジョブなのでしょうか?」
それは俺の方が訊きたいくらいだ。
「まだ、よく分からないので、この後の午後の探索で確認しようかと思っている」
俺は適当なことを言って、明言を避けた。というか逃げた。
俺が会話の流れを切ったので、昼食の場は再び和やかなムードになった。
イレーネの雰囲気は昼食の開始から今に至るまで、全く変化はしていないが。
それにしても、新規ジョブの『百鬼夜行』。
「百」・「鬼」・「夜」・「行」。この四文字からは人の要素が感じられないぞ。
というか、そのそも四文字の漢字のジョブなんてあったっけ?あるか。
武器商人、防具商人、奴隷商人、錬金術師、五文字なら薬草採取士、森林保護官。
「人」、「師」、「士」、「官」...と人もしくは人がなるものという感じはある。
俺の新しいジョブは人がなるものではないということか。なんだそれ?
ジョブ 鬼武者
効果 腕力中上昇 体力小上昇 敏捷小上昇
スキル 戦闘回数増加 小荷駄隊(2人)
ジョブ 百鬼夜行
効果 腕力大上昇 体力中上昇 敏捷中上昇
スキル 戦闘回数増加 小荷駄隊(4人)
パーティ編成 アイテムボックス操作(50) フィールドウォーク
なにか、ツッコミどころが満載だ。
近接系の効果が増しただろうか?脳筋色が強くなった気がする。
そして、スキルのパーティ編成、アイテムボックス操作(50)、フィールドウォーク。
これって、ほぼまるっと冒険者のジョブのスキルだよな。
つまり、探索者をLv50に育てたから解放されたということ?
解放条件は鬼武者をLv50にして、探索者もLv50まで育てろということ?
普通、そんなことやらないだろう?異世界転生者の複数ジョブ取得のチート持ち以外は。
小荷駄隊(4人)は育成対象が四人に増えたということで、これは便利かもしれない。
ただ、冒険者のジョブは重複か。
いや、これで探索者や冒険者のジョブを外してもパーティが組めると思えば便利なのか。
前言撤回。便利なジョブじゃん。
攻撃系のアクティブスキルがないので、地味だけど。
フィールドウォークがあるから、冒険者のジョブの偽装にも使えるか。
既に冒険者のジョブは取得出来ているけど。
インテリジェンスカードのチェックの際に、百鬼夜行をセットしないように注意だな。
こんなの出てきたら、チェックする側も目を疑うよな。
鬼武者や百鬼夜行のスキル『戦闘回数増加』は複数ジョブで腕力補正が相当つかないと、使い勝手が悪そうなスキルだったよな。
そして、解放条件が鬼武者Lv50と探索者Lv50って、イジメというか苦労しろと言われているというか。
何か、マンガ版のゴスラーの顔が浮かんできたぞ。別に取得出来たから良いのだけど。
百鬼夜行という響きは気になるが、便利なジョブだからヨシとしよう。
「主、食事が終わったのなら迷宮に行こうよ!」
うぉっと、思考の迷路に入り込んでいた。ヴィルマの声で呼び戻された。
「ああ、そうだな。
それと明日は、迷宮の探索は中止にしようか」
「ええぇ、なんでぇ?」
ヴィルマ、スマン。だが、いろいろとやりたいことが出来たのだよ。
「明日はアミルに図書館に行ってもらって、ジョブ等の調べ物をしてもらおうかと思っている。
午後、俺はルークとの取引きだ。俺とエネドラと護衛役のレドリックで商人ギルドに行きたい。
レドリックとポーラの服装を整える必要もある。
クーラタルと帝都の洋品店に行った方が良いだろう。行くなら、午前中だ。
ヴィルマも行くか?」
「ひぃ..行かない!」
ヴィルマが即行で視線を逸らした。
「エネドラとチクルスで二人を連れて洋品店回りをしたらどうだろうか?
俺も移動や会計の付き添いをするぞ」
「お任せください。旦那様」
エネドラとチクルスはいつもの力こぶポーズだ。任せました。
レドリックとポーラはポカンとしているが、明日になれば分かるから。
「俺はルークとの取引きが終わったら、ドブローのダマスカス鋼の工房や
タイミングが合えば、ペルマスクに行ってみようかと思っている」
「ペルマスクですか?旦那様、それは一体?」
唐突過ぎたか。でも前から行ってみたかったのだよな。冒険者のジョブも取得出来たし。
「一度行ってみたかった街だからということかな。鏡の生産地を見てみたかったので」
「タケダ家で鏡を商品として扱うということでしょうか?」
うーん、なんと説明したものか。
「鏡を商品として扱うかはまだ分からないな。今のところ、積極的に扱う気はない。
選択肢を増やす意味というのもあるし、単純な興味ということでもある。
端的に言うなら、情報収集のために行きたいってだけだな」
原作主人公も直接は行ったことのない地なので興味がある。
「まあ、本当に行くかどうかは明日の諸々のイベント次第だな。
ともかく、明日は俺もアミルも迷宮探索は出来ないので迷宮組の探索は中止にしたい。
ヴィルマとイレーネは訓練し放題だけど、他に何かやりたいことはあるか?」
「イレーネと一日、訓練やってる!」
イレーネもコクコク頷いてる。肉は無くなっているので本心のようだ。
「じゃあ、詳細はまた夜の会議で話をするとして、午後の迷宮探索に行くか」
ヴィルマは喜び勇んで、二階に上がっていった。俺も後に続く。
準備を整えて、玄関に集合。
百鬼夜行の小荷駄隊(4人)にレドリックとポーラを追加した。
小荷駄隊に加える時に二人とも怪訝そうな顔をしていたが、コレも慣れだから。
四人に見送られてベイルの20階層にワープした。
ベイルの20階層の新規モンスターはピッグホッグだ。
既にクーラタルとザビルでも戦っている相手だ。
ピッグホッグ、ケトルマーメイド、ビッチバタフライが多い。
3種類の耐性がバラバラなので、唯一耐性のない風魔法を遊び人のスキルにセット。
いや、ここは弱点属性を持つものがない雷魔法をセットするか。
効果設定の方は、勇者の腕力大上昇をセットした。
俺のジョブ構成は、
探索者、英雄、鬼武者、遊び人、百鬼夜行、魔道士
前4つは従来通りの構成。後ろの2つは育成枠だ。
百鬼夜行はレベルキャップまで育てて、早く探索者を外したい。
そうなれば、他のジョブが育成可能になる。
百鬼夜行は小荷駄隊の枠が増えたので、ポーラとレドリックのレベリングのためでもある。
魔道士は雷魔法のためにもレベリングを急ぎたい。
向かってくるタイミングが揃いそうなので、俺はいつも通り突撃して、2匹ほど三人に流して残りを殲滅することにする。
サンダーストームを撃った後に、更にサンダーストーム。一発目が遊び人、二発目が魔道士。
魔道士のレベルが低いうちは威力が低いが麻痺になってくれればラッキーぐらいのノリだ。
レベルが上がれば魔道士の実力は実感できるだろう。それまで我慢だ。
「ご主人様、今の魔法が雷魔法なのでしょうか?かなり激しく光っていましたが」
「ああ、そうだな。稀にモンスターを麻痺の状態に陥らせるようだ。
まだ魔道士の経験が浅いので、それほど発生しないだろうが、
経験を積むとそれなりに発生するようだ」
予め説明はしていたものの、実際にサンダーストームを見せると三人とも驚いていた。
ただ、戦闘が始まってしまえば戦わざるを得ないので、慣れるのも早かった。
そして、イレーネは暗殺者がLv50に達するとアッサリと『刺客』のジョブを取得した。
ここは、Web原作の感想返信の通りだったな。すると、この次は『くのいち』だろうか。
房中術とか使えるのだろうか?ロマンあふれるジョブかもしれない。
腹上死に導く状態異常スキルとかあったりして。ないか。
それはともかく、刺客のジョブ取得は羨ましい。
俺も真面目に暗殺者のジョブで状態異常を発生させなければならないのだろう。
とはいえ、今のイレーネから硬直のエストックを取り上げる訳にもいかない。
状態異常が付与出来るカードが手に入るまでは我慢だな。
イレーネにジョブをくのいち...じゃない刺客に変更したことを伝えた。
だが、イレーネは何事もなかったように、淡々と戦い続ける。
「イレーネ、ジョブ変更後の調子はどうだ?」
「ん?ジョブが変わった後は攻撃が通りにくい。いつものこと」
達観してるな。暗殺者に変更した時と同じってことか?
Lv1に下がるとモンスターとのレベル差でレベル補正が出てしまうからかね。
それでも、淡々とモンスターの攻撃を避け、エストックで刺突を続けている。
アミルもヴィルマも今は探索者にジョブ変更してレベリングをしている。
三人の攻撃力は最近の中では最低のレベルかもしれないが、危険は全く感じられない。
20階層のモンスターの魔法使用頻度はまだ低いようだ。
たまに単発で発射されても、ヴィルマとイレーネは軽々と避けるし、アミルは当てられても致命的なダメージまでには至らない。
20階層という難易度が俺達のパーティより低いのか、この三人の戦闘センスが高いのか。
途中、魔物部屋を殲滅したが、全滅パーティがいたようだ。
(取得品)
鋼鉄の剣3、鋼鉄の槍1、シミター、鉄の盾、ワンド
硬革の鎧4、革の鎧2、革の靴6
装備品は今まで全滅したパーティの中では良い部類のような気がする。
それでも全滅するときはしてしまう。迷宮の現実は厳しいな。
ボス部屋以外のエリアをクリアして、今日の仕上げのボス戦だ。
ボスのピックホッグは俺が引き受け、三人はお供のピッグホッグの相手をしてもらう。
何か並んで出現すると、親子モンスターみたいで妙な気分。
和んでる暇もなく、俺が親を切り刻んで瞬殺し、三人で囲んでイジメている輪に加わる。
攻撃力が落ちた三人には悪いが、止めも俺が刺させてもらった。
ベイルの迷宮の20階層の攻略も問題なしか。
21階層に抜けて、本日の迷宮攻略を終了とした。
ヴィルマを押し込み新居の玄関に帰宅。
玄関でアミルに一声かける。
「俺は冒険者ギルドに行って生薬の素材を買ってくるので、エネドラ達に伝えておいて」
「分かりました。ご主人様」
さて、せっかく冒険者のジョブを得たのでフィールドウォークで移動してみようかな。
(フィールドウォーク)
あっ、遮蔽セメントか。玄関からは移動できないな。
アミルがこっちを見ていた。無詠唱とはいえ、ちょっと恥ずかしい。
「じゃあ、行ってくるよ」
俺は照れ隠しをしながら、ワープゲートを開いて冒険者ギルドに移動した。
ギルド内を見回すと、まださほど混んではいない状況だ。今のうちに買ってしまおう。
受付で並ぶと俺の順番がすぐにやってきた。
「生薬の素材で、ここで扱ってるものを教えてくれ」
「リーフ、附子、遠志、半夏、陳皮、削り掛け、麻黄、緑豆(以下略)....となります」
結構、まだ生薬生成で扱ってない素材があるな。さすがに威霊仙の取扱いはないか。
とりあえず、我が家の倉庫に在庫で存在しないものを2つずつ購入した。
金貨が2枚弱飛んでいった。まあ、ポーラの出産のための医療費と思えば安いものだ。
用事が終わったのでギルド壁から自宅の玄関にワープした。
ちょっとだけ、「冒険者の方ですか?」と声を掛けられて、ハルツ公爵の災害支援イベントの出現を期待したのだが何もなかった。
エネドラ達に帰宅の挨拶をして二階に上がった。
お読みいただき、ありがとうございました。
話の切れ目が作りにくかったので、いつもと違う箇所で区切りました。
鬼人族の種族固有ジョブの説明です。説明がちょっと長くなります。
鬼武者の次の上位ジョブ(中級ジョブ)は百鬼夜行。
さすがにこれを予想した人は少なかったかもしれません(分かるはずがない)。
本作主人公を腕四本にすると決めた後に、種族を鬼人族に決めた理由は序章6話の後書きでお話ししました。
その後、鬼武者を下級ジョブとして適当に決めました。下っ端っぽい感じで決めただけです。
中級ジョブを検討する際にネットでいろいろと鬼関係を検索して、以下に辿り着きました。
(百鬼夜行の説明)
いろいろな姿をした鬼どもが、夜中に行列して歩くということ。
多くの人が奇怪な行動や不正な行動を公然と行っていること。
前半は私が思っていた百鬼夜行のイメージそのもの。
後半は...もう、この説明に一目惚れしました。
この瞬間に鬼人族の種族固有ジョブ(中級ジョブ)が決定しました。
何か1章の主人公の行動と重なっているかもしれません。思い過ごしかもしれませんが。
この後、本編で説明する機会がないので言ってしまいますが、鬼武者や百鬼夜行のジョブはいわゆる脳筋系のジョブではありません。
(晩成型ですが)統率・育成系のジョブのイメージです。
本作主人公はちょっと勘違いをしていますが、チュートリアルもないから仕方がないです。
アクティブ系の攻撃スキルもないし、竜騎士のような分かり易い効果もないのですけどね。
腕四本にしたので武器を多く使いこなすために腕力効果を付与せざるを得ず、武器で重くなる分を敏捷効果で補おうかという感じでした。
体力効果を付与したのは探索者や冒険者と同じイメージにするためです。
私の中では、探索者や冒険者は統率・育成系のジョブのイメージです。
このジョブがないと、移動もままならないし、パーティ効果がないと上昇補正も付与されず経験値の共有も出来ない。
迷宮の攻略やパーティ間の戦闘も困難を極めるだろうと思っています。
パーティで連れだって、育成していくイメージそのものだったりします。
なので、中級ジョブを百鬼夜行に決めた後は、冒険者のジョブを付与しました。
鬼武者や百鬼夜行に小荷駄隊(2人/4人)を付与したのは探索者・冒険者のパーティ効果の拡張イメージです。
鬼武者をLv50にして、探索者をLv50にするという苦行を達成して百鬼夜行が取得できます。
複数ジョブをセットできる異世界転生者以外には出来ない(普通はしない)芸当ですね。
小荷駄隊が2人から4人になったので、迷宮組メンバ以外のレベリングが捗るかもしれません。
これから、タケダ家の多くの者を育てていくことになると思います。
長々とした説明にお付きあい頂き、ありがとうございました。