帝都のギルドを出て、武器屋に向かう。
ざっと見た感じ、目新しい武器はないな。暇そうな店主に声をかけてみよう。
「魔法使い用の珍しい武器などは置いていないか?」
「珍しいとは、どのような意味でしょうか?」
そうだよな。珍しいはないか。
「聖銀を素材にした武器などかな?」
「聖銀ですか...そのランクになると、オークションでしょうね。
店で売っているものは、標準的な鍛冶師が武器生成で作れるものが多いですから」
まあ、何かそんな気はしていたよ。
「聖銀の素材を手に入れようと思ったら、どうすれば良いのかな?」
「さあ、手前どもにはなんとも。この近くにある鍛冶師協会で、ご確認する内容かと」
鍛冶師協会にねぇ。
質問するために来訪したとしても、
「お前、それ訊いてどうするの?隻眼の伝手でもあるのかよ?」
と冷たい指摘が待っているような。
「分かった。いろいろ教えてくれて助かった」
「いえいえ、またのお越しをお待ちしております」
やんわりと早く帰れと言われてしまった。
仕方ないから、ダメ元で防具屋に行ってみるか。
・・・・・・・
うん、分かっていたけどダメだった。
そして、昔、アミルに言われた
「ご主人様は装備品を手に取らずにじろじろ見るだけ」
をまたやってしまった。
だって、手に取ると時間がかかるから仕方ないじゃない。
完全に冷やかしと思われてしまった。
空きスロットが多い武器でグレードが高ければ購入したのだけど。
まあ、結果が全てか。何も買わなかった訳だし。
仕方がないので、エネドラ達のいる洋品店に向かった。
まだ、全部は決まってはいないだろう。
店に入るとレドリックは椅子に座って、女性陣の買物をボーっと見て待っていた。
ここに仲間がいたよ。俺も仲間に加わろう。
「レドリックの服はもう決まったのか?」
「はい。私の服はエネドラ様にお任せしているので、直ぐ決まりました」
何か俺と行動パターンが似てるな。
「ポーラの方は体調はどうなのだ?新しい家に来て、体調を崩したりはしてないのか?」
「はい。食事もベッドも戦士団に居た頃よりも、遥かに良い環境なので問題ないです」
そうか、順調に我が家に慣れてもらってるのかな。
おっと、フロアマネージャが俺に向かって会釈をしている。
財布の出番ということだな。
「呼ばれているので、ちょっと行ってくる」
「はい」
洋服が積まれている場所に行って、状況を確認。
「エネドラ、服は選び終わったのか?」
「はい、旦那様。一通りのものは選び終えました」
じゃあ、これで終了かな。
「会計を頼む」
「はい、少々お待ちください」
フロアマネージャの男は、女性店員と何か確認をしている。
確認が完了したようで、提示された金額を俺の方で支払った。
「満足のいく買物が出来たようだ。次もまた利用させてもらうので宜しく頼む」
「はい。またのご利用お待ちしております」
次来るのはいつかな。きっとそれほど遠くない日のような気がする。
俺達は店の壁にかかった絨毯から自宅にワープした。
玄関に戻り、レドリックとポーラは使用人部屋の方に服を置きにいくようだ。
「昼食の準備をすぐに行いますので、旦那様はご自分のお部屋でお待ちください。
後ほど、呼びに参ります」
「分かった。ありがとう」
自室に戻って、午後の取引に向けた最終確認だ。
主立ったモンスターカードの落札価格のメモと素材の単価表のメモ。
今日の取引の最低目標の素材数などを最終確認。
ダマスカス鋼の工房で、素材の目途が立たなかったのが少し痛かったな。
まさか、肉の調達を依頼されるとはね。
迷宮情報のメモを見ると、今攻略中の迷宮で一番低い階層でドロップするのがザビルの25階層だ。
今が20階層だから、ちょっと先だな。
23階層以降のフロアの広さや難易度を確認する必要もある。
今は3迷宮を並行して攻略しているが、数を減らしてメリハリをつけるかも考えないと。
ルークとの取引きが終わったら、ペルマスクの宿屋に戻らないとな。今度は密入国か。
自分で詰め詰めのスケジュールにしているのだけど、なかなか忙しい。
準備が整ったのだろう。チクルスが呼びにきてくれた。
昼食を食べながら、購入した洋服の話題を振られる。そして全く頭に入ってこない説明。
なんで、服の話になると頭が働かないのだろうか。
俺の左前に座ってるヴィルマと俺の姿がかぶって見える。
ずっと訓練三昧で体動かしていて、よくヴィルマもイレーネもたくさん食えるな。
食事を終えて、外出の着替えのために自室に戻った。
メモを忘れないようにリュックに詰めて、ペルマスクのビザカードも確認と。
このカードで宿屋でインテリジェンスカードのチェックが不要だし、便利な道具だな。
階下に降りると、準備を終えたエネドラとレドリックが待っていた。
レドリックは朝一で渡した装備を身に着けていた。
とはいえ、さすがにフル装備は物々しいので、武器と足装備だけだ。
レドリック(人間族 男 25才 奴隷)
戦士Lv17
装備 エストック 硬革の靴
現時点では防具は硬革系の防具で固めている。
竜革素材の在庫が入ればアミルに竜革系の防具を量産してもらって移し替えていきたい。
護衛はまだまだ増やす予定だしな。
玄関から3人で商人ギルドの壁にワープした。
受付でルークとの商談の希望を告げ、応接室でルークの到着を待つ。
俺とエネドラは座り、後ろにレドリックが立っている。
やがてルークがいつも通り、慇懃な礼をしながら入室してきた。
今日は番頭っぽい男を一人、連れているな。
ヌート(人間族 男 51才 )
武器商人Lv29
装備 身代わりのミサンガ
ん?ルークよりレベルが全然高いな。どういう立ち位置の者だ?
ルークの後ろに立つのだから、ルークよりは役職の低い者か。
さて、どのような提案をしてくるのか。
まずは鏡の取引。
元の世界から持ち込んだ鏡2枚を渡すとルークは入念に確認し始めた。
「確かに先日の鏡と同じで問題ありません。これが代金となります」
「確認した」
39万ナールあることを確認して、金貨を小袋に中に入れた。
「では、妨害の銅剣セットの取引きについての回答を聞かせてほしい」
「そうですね。まずはこちらを」
ルークは俺に目録を提示し、等価交換の詳細を説明し始めた。
取引きには応じると。全否定ではなかったということか。
提示された目録は、
モンスターカード:芋虫6、トカゲ3、人魚3、蝶3、ゴーレム3、ウサギ3、
サイクロプス2、ヤギ1、アリ2、コボルト18
素材:竜革6
カードは全部で44枚。そして、竜革が6個か。
竜革6個は鉄10個、銅50個の原価と照らし合わせると、ほぼ一致している。
「いかがでしょうか?そちらの御希望通りのものが提示出来ていると思われますが」
「ああ、ちょっと待ってくれ。さすがにこのカードの数だ。確認には時間がかかる」
俺は、掲示板に貼られていた過去のオークション結果をまとめたカードの原価表メモと今回の目録を突き合わせる。
ウサギのカード60枚換算なら、44枚分のカードの金額とほぼ一致するか。
44枚分の方が少し低い金額だが誤差の範囲だろう。
表面上は、こちらの要望通りの取引きに応じた形になっている。だが、本当にそうだろうか。
カードの種類はどちらかと言えば、防具寄りか。
魔法属性系のカードは武器にも融合できるが、まあ防具だろうな。
ウサギとサイクロプスとヤギは武器用。
芋虫6枚というのは、嵩を増すためというか数合わせ感があるな。
カードの枚数をウサギ換算のオークション落札金額と合わせているのは、カードを素材に変更すると損すると気づいてるからか。
オークションでは金額が上振れする傾向がある。
ルークの商家でのカードの調達コストはもっと低いのだろう。
実際、カードハンター達もオークションと同一金額相当で買い取ると大喜びしていたしな。
少し、揺さぶってみるか。
「目録にあるカードを素材に変更することは出来るだろうか?」
「素材にですか?例えば竜革の数を増やすということでしょうか?
先日のお話ではカードの選択の幅を持たせてほしいとのことでしたので、
別のカードに変更も可能です。
不要と思われるカードは何でしょうか?」
素材への変更は消極的と。
素材に変更して交渉を有利に進めようという、こちらの目論みもバレているっぽいな。
「そうだな。今はサンゴが欲しい。
ウサギ3枚と中途半端なヤギ1枚なら、それと交換に複数枚のサンゴが欲しい」
「サンゴですか。サンゴはあいにくと手元にありません。あるのは、スライム2枚ですね」
スライムか。頑強が付与できるな。
どうしても欲しいものではないが、ウサギもヤギも既に1枚ずつ持っている。
優先度は高くないだろう。
「ウサギ3枚とヤギ1枚をスライム2枚に交換というのは可能だろうか?」
「可能と考えます」
なら、そうするか。頑強を付与した装備はいずれ、全員に配布したいと思っているし。
「では、その4枚とスライム2枚を変更してほしい。
あと、竜革だが全て革にすることはできるだろうか?」
今は切実に革が欲しい。革、プリーズ。
「竜革を革に変更ですか?本当によろしいのですか?」
「ああ、問題ない」
本当によろしいのですよ。
しかし、ちょっと取引きがこちらの目論み通りにトントン拍子に進み過ぎている気がする。
どこかに落とし穴があるのを見落としてないだろうか。
今回、ルークが提示してきたカードの数は44枚。
この取引きを持ち掛けたのが7日前だから、通常のオークションでの取引きでも7、8枚は入手出来ているはず。
その6倍の枚数か。いや、オークションの話はいったん忘れよう。
エネドラ達とこの前クーラタルに流通するカード枚数のクイズをやった時の仮説は1日に50枚程度だから7日で350枚。
その1割強程度は直ぐに集めることがルークの商家では可能ということか。
既に在庫を抱えていたはずだが、取引きを俺だけとしている訳でもないだろう。
取引きを急に持ち掛けても、この程度の枚数は直ぐに集められるということか。
「それとこちらから、この取引きにあたって契約を一つ結びたいと考えております」
「契約?具体的にはどのようなことだろうか?」
すんなりとは終わらないか。
「今回の取引でお渡しする素材とカード。
素材は革になってしまったので、もはやカードだけですが、
モンスターカード融合に成功した装備品の一つに
我が商家との取引きの優先権をつけて頂きたいというものです」
「優先権ということは、必ずしも取引きを成立させる必要はないという意味だろうか?」
10分の1の確率でも、これだけカードがあれば融合は2、3回は成功することを見越しての契約か。
取引きの意思決定のイニシアチブがどちらにあるのかはハッキリさせないとな。
「そうですね。
まずは出来上がった装備品を提示して頂き、
その上でお互い納得のいく対価での取引きの交渉をし、
交渉が不調に終わった場合には取引き不成立でも止む無しというものです」
「なるほど」
これだけカードがあれば、適当にスキル融合した装備品を提示するのは簡単だな。
「万が一、全て融合が失敗した場合は相応のものをこちらで用意するという意味だろうか?」
「そう受け取って頂いて問題ありません」
今回の取引に紐づけて、スキル融合装備品を引っ張ろうという訳か。
防具寄りのカードを提示してくるあたり、ルーク側の意図も透けて見えるな。
「それは身代わりのミサンガであっても構わないと」
「そうですね。取引きが成立するかどうかは別として提示するのは構わないかと」
身代わりのミサンガでお茶を濁すか。
「提示するスキル融合装備品の取引きを今回のような等価交換とすることは可能だろうか?」
「それも含めて取引の交渉とすれば良いかと」
このままズルズルと等価交換の取引の沼に沈めてやろうか。
いや、やり過ぎはよくないな。自制しないと。
それに、相手もスキル融合した装備品を入手できるのだからwin-winだ。
勝ち負けで考えてはいけない。
ルークとの等価交換の取引きは、一月に1回くらいのペースでコンスタントにやっていくか。
その後は、細々とした詰めをした。
・今回の取引き成立後、20日以内にルークへ取引き対象の装備品の現物を提示すること。
・提示してから10日以内に取引きが成立しない場合は、優先権は消滅する
・優先権を付ける取引は今回の取引に限る
期限を決めずにズルズルと交渉したくなかったので、線引きをハッキリさせた。
取引きの鍛冶素材を竜革から革に変更したことや、新たに結ぶ契約書類の準備を行う都合上、明日の午後来訪して最終確認をすることになった。
ルークと付き人のヌートの二人に丁寧な挨拶をされ、俺達は応接室を後にした。
ギルドを出て、適当な木陰から自宅にワープした。
俺はエネドラ達と玄関で別れて、ドブローの冒険者ギルドにワープした。
ギルドを出て人気のない木陰を探す。
木の幹に再度ゲートを開き、ペルマスクの宿屋で借りた部屋にワープ。
ゲートから少し顔を出して、部屋に誰もいないことを確認して部屋の中に入った。
ベッドの布団の位置などを確認。多分、誰も部屋に入ってきてはいないだろう。
部屋を出て受付に向かった。
「ちょっと急用を思い出したので、悪いが部屋を引き払うことにした。
既に宿泊の金は支払い済だから、問題はないだろう?」
「はい、はい。大丈夫ですよ」
軽いノリだな。まあいいや。
宿屋を出て、ちょっと街をぶらついた。
とはいえ、別に鏡以外に見たいものがある訳でもない。
置いてる商品も特別なものはなく、お土産屋がある訳ではないしな。
観光地なんて、この世界にあるのだろうか。やっぱり工房に行くか。
ペルマスクに入った時のギルドの付近に近づくと朝案内してくれた商人の顔を見つけた。
「やっぱり、工房に案内してもらえるだろうか?」
「はい、はい。大丈夫ですよ」
そのセリフ、不安になるな。
連れていかれた先には、工房とそれに隣接した鏡の販売所というか店があった。
工房の外には作業員らしき者...ガタイの良いおっちゃん達が屯している。
別にドワーフの工房とかではないけど、雰囲気は何か似ているな。
鏡を作るジョブなんてないのだろうけど、実は錬金術師とかが向いているとかあるのだろうか。
鏡の作れる技術者をスカウトして、錬金術師のジョブに就けて拠点リーダにしておくと高品質の鏡を生産してくれるとか...そんなことはないか。
それはそれとして、作業者達の振る舞いは気になるな。
店に入れてもらい、高級鏡を見せてもらう。
装飾は確かに凝っているというか高級品っぽいが、鏡自体の品質は俺が元の世界から持ち込んだ鏡の方が上だな。
表面の加工とか均一な感じが全く異なる。当然、映りも良い。
ルークに1枚15万ナールで販売したのは間違ってないな。
とはいえ、あれは数量限定品だから、そのうち尽きてしまう。
装飾のない鏡の取引きは公爵とのイベントがあるなら、こなさなけれならないしな。
まあ、そのうちか。今は特に何の伝手もないのだし。
原作で主人公が訪れたこともない地だからという事で来てみたけど、感慨深いものはないな。
一人で来てしまったから、余計そう感じるのかもしれない。
女性陣と来たらまた違う印象だったかもしれないな。いつか連れてこようか。
俺の物欲センサーを刺激するものも見当たらないし。
ちょっと早いけど、ペルマスクを出よう。
ギルドに向かい、朝渡された木の札を渡した。
名前を伝えて予定時刻よりも早く出立することを告げた。
確認してサインをもらったけど、このサインって出口の人が私確認しましたよってだけか。
あまり意味ないな。
ギルドの絨毯からドブローの冒険者ギルドにワープした。
三種の肉を用意できていないから、工房に行くわけにもいかない。
別にギルドで購入しても良いのだけど、なんか負けた感がするのだよなぁ。
ギルドで購入すると、フラグの回収が出来ないとかあるだろうか。うーん。
まあ、明日の取引で革も手に入りそうだから焦らずにクエストをこなすか。
ドブローの冒険者ギルドから、自宅の玄関にワープした。
アミルを迎えに行くには、まだ時間があるな。
二階に上がって、自室に戻る。
窓を開けると、ヴィルマとイレーネに加えてレドリックも木刀を振るっている。
というか、レドリックは二人にコテンパンにされているな。
いや、少しは喰らいついているか。
イレーネとレドリックが模擬戦をしているのを見ていると、ヴィルマに見つかってしまった。
「主もこっち来て、一緒にやろう~♪」
まだ時間もあるし、俺も参加するか。
今日は迷宮に行ってないから、体をあまり動かしてないしな。
広場に向かい、少し柔軟をした後に俺も模擬戦に加わった。
肩慣らしにヴィルマとイレーネとの2対1に臨む。
片手剣の木刀を四本持ち、二人の前に立つ。
こいつら、俺を前後に挟み撃ちにしたりはしないのだよな。
流石にそんなことされたら、オーバホエルミング無しでは勝てない。
訓練にならないことはしない...というか単純に斬り合いを楽しんでいるのだろう?
俺がヴィルマの方に踏み込んで斬りかかると、ヴィルマはバックステップで躱し、替わりにイレーネが俺に突っかけてくる等、二人は息の合った連携を見せる。
ヴィルマ達の剣も俺の片側2本の木刀に阻まれて届かない。
お互いが決定打に欠けた膠着状態だ。
視線の向こうにレドリックのドン引きした表情が見えた。
「ちょっと武器を換えても良いか?」
俺は木刀の代わりに木の槍を一本右手に持った。
両手武器とだが木製なので重さも大したことなく、特に取り回しに問題はない。
残りの3つの武器とリーチが違うので、扱いが面倒臭いぐらいだ。
とはいえ、間合いが長くなったので一人は遠くに押し出せる。
近づいて懐に入ろうとすると、もう一本の剣で対応するので右側はかなり余裕が出来た。
右側のイレーネに間合いを取らせた後、左側のヴィルマに剣2本で牽制した後、遠間からの槍で攻撃すると...まあ勝てるな。
というか、これはズルだよな。練習にならないか。
「ダメだ、主には勝てない」
「いやいや、これはちょっと卑怯だったな。これじゃあ練習にならないな。悪い、悪い」
左側の方にも木の槍を持って、槍の二刀流もやってみたかったが練習にならないわ。
その後は剣を一本にしてレドリックと模擬戦したりと、相手を代えながら体を動かしていく。
レドリックもさすがに30人の部下がいただけのことがあるのか、対人戦はかなりこなせている気がする。
これから、護衛の奴隷を雇う時には戦士団出身者を重点的に探したほうが良いのか?
まあ、簡単にそんな経歴の者は見つからないか。
そろそろ、アミルを帝都の図書館に迎えに行かないと。
俺だけ模擬戦から抜け、玄関から風呂場にワープゲートを繋ぐ。
図書館に向かう前に、ザっとお湯をかぶってサッパリした。
風呂場から更に自室にワープゲートを繋いで移動。ズボラの極致。
水気を布で拭き取りながら水差しでコップに水を注ぎ、一息に飲み干す。
汗がある程度退いたところで、服を着替えて階下に降りる。
玄関から帝都の冒険者ギルドにワープした。
ギルドを出て図書館に向かう。
図書館の入口に近づくとアミルが丁度出てきた。
パーティ効果で便利なのだが、急かしてしまったかもしれない。
「図書館は楽しめた?」
「はい。毎回イロイロと発見があるので楽しいです」
それは良かった。ジョブ取得の件は帰ってからだな。
「じゃあ、帰るか」
「はい」
適当な木陰にゲートを繋いで、二人で帰宅した。
エネドラ達に帰宅の挨拶。
「庭の三人を呼んできた方が良いか?」
「いえ、もう少し食事の準備に時間がかかるので、後で呼びに行ってきます。
旦那様は自室で寛いでいてください」
二階に上がって、今日のイベントの整理メモを作成することにした。
明日の午後、最終確定だがカードはかなりの数が手に入った。
とはいえ、実際には今一番欲しかったサンゴは手に入らなかったので、それはまたルークに依頼だな。
他にも取引きの延長でルークに提示する装備品の候補を考えなければならない。
入手したカードの大半は防具の強化に費やされるから、空きスロットが4つある防具を中心に強化を図るか。
順当に、三人分の防具に魔法四属性の耐性強化か。
スライムとアリはどうするか。
空きスロットの多い防具を入手してからだな。
さすがに空きスロットが1つや2つのものにスキル融合するのは勿体ない。
チクルスが呼びに来たので階下に降りた。
ポーラが呼びに来ないのは、妊婦への配慮なのかね。
上がったり降りたりとかで万が一があったら困るとか?考えすぎかな。
食卓に付くと夕食が始まる。
イレーネはまだ髪が濡れてるじゃないか。
食事のために急いで来たのでは?
ヴィルマと一日中模擬戦やって、バクバク食ってとかマジ体育会系だよな。
見た目は少し華奢な女の子な感じなのに。
明日はルークとの商談を除けば、また1日迷宮なので二人とも楽しむのだろうな。
ホント、残念な娘達だ。迷宮ではとっても頼りになるのだけど。
アミルから図書館での調査結果の話があったが、やはり有力な情報はなかったようだ。
百獣王のジョブ取得は獣人系の領地で秘匿されているのかね?
隻眼の方も収穫なしだったようだ。
その分、モンスターカード融合するカードと効果についての情報収集をしてきたようだ。
アミルの方で少しまとめ直して、別の機会に教えてくれることになった。
俺の方もルークとの商談の話や、ペルマスクでの鏡の販売の制約について情報共有した。
あと、謎の3種の肉のクエストの件も。
食事が終わり、レドリックが風呂の準備。
準備が終わると二人で男風呂の雑談。
「今日、二人と模擬戦してみてどうだった?」
「ほとんど歯が立たないのはもう仕方がないとして、体力の無さも痛感しました。
奴隷商館に長く居たせいか、体力が落ちているのかもしれません。
食事やベッドも良くなったので、徐々に取り戻せるとは思いますが」
「そうか、まあ焦らず徐々にな」
今は、迷宮組を除けば唯一の護衛メンバなので体調にも気を配ってほしい。
「あとは、模擬戦であの二人を相手にご主人様が子供扱いしていたのが衝撃的でした」
「そうか」
子供扱いというか、あいつら庭で剣を振り回してる時は全くの子供だよな。
呼びに行かないと戻ってこないし。
「あの二人は例外として、戦士団で剣の筋が良いとか何か見分けるコツがあったりするのか?」
「そうですね。結局のところはやる気が全てな気がします。
やる気があれば、長くやっていれば戦う術を習得するので。
逆にやる気がなければ、初めは上手く見えても長続きしません」
やっぱ、そんなものなのかな。あの二人はやる気があり過ぎるのだよな。
奴隷の面談の際にレドリックを連れて行こうかと思ったのだけど、意味ないか。
風呂を出て女性陣とバトンタッチ。
会議の準備メモ作成。
とはいえ、今日は迷宮を一日休みにした割には大きな進展はルークとの取引きくらいだな。
皆が集まってきたので、明日の予定の確認。
明日は迷宮組は午前はザビルの20階層、午後はルークとの商談で時間が空くが、その後はクーラタルの21階層の攻略。
エネドラ達の予定のすり合わせをしようとしたら、エネドラから発言が。
「明日は、旦那様とルーク殿との商談が終わりましたら、
そのまま商人ギルドで情報収集をしたいと考えます。
旧知の商人とも話をしてみて、関係の修復を図りたいと思っています」
「そうか、護衛も得たので確かに頃合いかもしれないな。
無理のない範囲でやってみてくれ」
それ以外は、ほぼいつも通り。
チクルスの方はもう少し生薬の在庫が出来たら、薬師ギルドの方に納品に行きたいとのこと。
薬師ギルドに顔出す際に、ポーラの産婆を引き受けてくれそうな者がいないか確認するらしい。
ギルドに納品をたくさんしていると、そのうち良い者を紹介してくれるのだろうか。
今すぐ困っている訳ではないが、何かあってからだと拙いので保険をかけておきたいな。
議題も尽きたので、お休みの挨拶をして解散とした。
・・・・・・・
アミルと一戦交えて、賢者モード。隣でアミルは穏やかな寝息をたてている。
アミルは図書館でのジョブ調査が思わしくなかったので気にしていたようだが、慰めの言葉をかける前に意識を失わせてしまった。
今は言葉をかけても反応がない。ちょっと失敗した。
どうも、俯き加減から下から目線で見上げられると、理性のネジが飛んでいってしまう。
昔は一本くらいだったネジが最近は数本まとめて飛んでる気もするんだよな。
俺はアミルに飼いならされているのだろうか。
じゃれるのを通り越して、飼い主に噛みついている気もするけど。