異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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039.追試

 昨日は迷宮攻略を休みにしたが、今日はほぼ一日迷宮攻略の日だ。

 ヴィルマとイレーネも楽し気に玄関で待ち受けている。

 

 四人揃ったところで、エネドラ達に見送られてザビルの20階層にワープした。

 

 ザビルの20階層の新規出現モンスターはロートルトロールだ。

 

 ロートルトロール、クラムシェル、グラスビーが多い。

 魔道士のレベルが上がってきたので、魔法はサンダーストーム主体で戦う。

 

 足の速いグラスビーやハットバットを三人に任せて、残りを俺が突撃しながら相手をする。

 飛行系はアミルが槍で叩き落としてから、イレーネが石化するパターン。

 

 ヴィルマは探索者になってしまったので、ビーストアタックが放てないのだが不満はないのだろうか?

 

 戦闘を終えて次の接敵に向けて歩く傍ら、アミルと昨日の図書館での調査の話をする。

 

「百獣王はとにかく素早く攻撃を躱し、

 スキルで相手を封殺するといった勇壮な記載はあったのですが、

 ジョブ習得に関する情報は全くなくて...」

「そうか」

 百獣の王...というくらいだから、何か君臨するイメージなのだろうか。

 やっぱり、他の獲物を殺しまくって頂点に立つということ?

 とくかくビーストアタックで殺しまくれば良いのか?百獣の王というより虐殺王だ。

 

 そうだなぁ...どうしようか。

 このままだと進展はないだろうからダメ元で何かやってみるか。

 

「午後のクーラタル迷宮攻略を取りやめて、魔物部屋で戦ってみるか?」

「えっ?」

 アミルが驚いた顔で俺を見つめる。まあ、今まで俺一人で戦っていたからな。

 

「戦うのは俺とヴィルマだけで、対象は1階層から3、4階層くらいまでの魔物部屋だな。

 アミルは自宅で装備品の生成とか、スキル融合をしてもらう感じで」

「どういうことでしょうか?」

 アミルがジト目で見てくる。いや、別に俺もやりたくてやる訳ではないのだが。

 

「俺に足りないのは、モンスターを状態異常にした回数、

 ヴィルマに足りないのはビーストアタックで討伐する回数と仮定した場合、

 例えばヴィルマにデュランダルを持たせてビーストアタックを連発してもらう。

 俺と違って詠唱があるから、時間はかかるけど魔物部屋には獲物が多い。

 俺の方は、イレーネの硬直のエストックを借りてモンスターをとにかく

 石化しまくるというイメージだな」

 遊び人に状態異常耐性ダウンをセットして、博徒とともに状態異常を加速させてみるか。

 デュランダルがないからMP切れに注意が必要だが、幸い強壮丸は売るほどあるし。

 オーバーホエルミングかオーバードライブの超速スキルを使えば、石化する効率も高まるはず。

 

「二人だけで迷宮?」

 うぉっと、イレーネが食事の前でもないのに睨みつけてきた。

 別に浮気を問い詰める彼女という雰囲気ではない。

 

「イレーネも行く?魔物部屋だけど」

「うん」

 訓練相手もいないし、一人で家に居るのは嫌なのかな。

 ヴィルマの激情のダマスカス鋼剣をイレーネに使わせるか。

 避けるだけってのはツライ(つまらない?)から、イレーネにも攻撃は許可するか。

 

「ご主人様、魔物部屋は危険な場所なのでは?」

「そうだな。確かに危険な場所だ。

 ただ、1階層から4階層くらいなら、なんとかなるのではないかな。

 今日、蟻のカードが手に入るから、

 二人の防具に耐毒のスキル融合をすれば安全は高まるだろう」

 低階層だが、数が多いので毒化は注意が必要だな。

 後はグリーンキャラピラーのスキル攻撃とかも。

 いざとなれば、メテオクラッシュやストーム系魔法で片づける手もある。

 本当に危険が迫ればだが。

 メテオクラッシュを放つと俺のメンタルが危険に陥る可能性があるが、この前ペルマスクに行く時に作った強壮剤と強壮丸の在庫でカバーしよう。

 

「私は魔物部屋に行かなくて良いのでしょうか?」

「そうだな。今日、革が手に入るからダマスカス鋼の装備品を作ってもらった方が良いかな」

 本当はアミルにも経験を積ませたい気もするが、魔物部屋はちょっとなぁ。

 アミルと残りの二人で対応に差をつけるのはどうかと思うが、この二人は戦闘民族だし。

 ジョブ取得が出来なかったのは俺とヴィルマだけなので二人の方が良いのだろうが、イレーネが居た方が安全な気もするし。

 

 ベイルの1階層で挑戦して危ないと判断したら、止めても良い。

 俺は状態異常にするのが目的だから、オーバーキルに要注意だな。

 ジョブも英雄と鬼武者のような腕力上昇があるものは極力外した方が良いか。

 

 ただ、オーバーホエルミングかオーバードライブのどちらかはあった方が良いよな。

 勇者はまだレベルも低くて効果が少ないだろうし、レベリングにもなるからセットするか。

 

 小荷駄隊が4人だから百鬼夜行をセットしようかと思ったけど、鬼武者の方をセットしてレドリックやポーラを通常パーティの方に入れるか。

 二人のレベリングも捗るし、どうせボス部屋は攻略しないのだから。

 まあ、ジョブ構成とオーバーキルの回避はやってみてから微調整だ。

 

 その後も、危なげなく20階層のモンスターを殲滅していく。

 途中、魔物部屋も殲滅したが、もちろん俺一人で行った。

 全滅したパーティはいなかったようだ。

 

 アミルの探索者はついにLv50に達して冒険者を取得したので、ジョブを冒険者に切り替えてレベリングを続行した。

 俺の冒険者はLv1のまま。

 後から入学した後輩に学力を追い越されてしまったような気分。

 

 しかも、午後は刺客のジョブが得られなかったので追試をやるとか。

 劣等生になってしまった。

 

 残りがボス部屋だけになったので、いつものフォーメーションでボス部屋の攻略に臨む。

 ボスのロールトロールは俺が担当して、ロートルトロールは三人に任せた。

 少しは苦戦するかもと思ったのだが、サンダーストームで麻痺が発生し、イレーネの硬直のエストックで石化させて早々に終わってしまった。

 

 この階層は、ドロップ品はパッとしなかったのだが、モンスターカードがドロップした。

 トロール?そんなの原作にはなかったよな。

 

「アミル、トロールのモンスターカードの効果って何だろう?」

「体力関係です。コボルト無しだと体力強化、コボルトを使うと体力2倍です」

 体力が上がるとHPが上昇するのだったか。

 竜騎士の上昇補正分を体力2倍で補えるのだろうか。そこまではさすがに無理か。

 2倍と言っても、本当に2倍ではないらしいし。

 トロールってファンタジーではHPが再生するってイメージがあるけど、そんな感じ?

 

 HPは全てのメンバに必要なパラメータだから、いずれは全員にスキル融合させた装備品を渡した方が良いのかな。

 体力が弱そうなメンバ用に使わずに取っておくか。

 

 21階層に抜けて、午前中の探索は終了とした。

 

・・・・・・・

 

「...という訳で、ルークとの商談が終わったら、

 午後は俺とヴィルマとイレーネの三人で低階層の迷宮探索をすることにした」

 昼食の際に、迷宮探索メンバ以外にも午後のスケジュール変更を伝えた。

 

「アミルには今日の取引で得た素材を使って、装備品の生成をしてもらう予定だ」

「私達は予定通り、商人ギルドで情報収集をして参りますね」

「ああ、それで問題ない」

 スケジュール変更をするのは迷宮組だけだ。

 

 食事を終えて、二階に上がり外出の準備に入る。

 

・・・・・・・

 

 三人でクーラタルの商人ギルドの絨毯にワープで移動。

 受付の者にルークとの商談予定を伝え、商談室に通された。

 

 ルークの到着を待つ間、エネドラに情報収集の件について質問した。

 既にルークとの商談については議論を尽くしているし、最終段階なので懸念点は何もない。

 

「昔の知人の商人というのは、この商人ギルドによく出入りしていたのか?」

「そうですね、それなりには。

 亡くなった主人とは長い付き合いでしたが、私は面識がある程度というだけなので

 タケダ家がルーク殿と取引をしているという事を伝えながら

 徐々に関係を構築していきたいと考えています」

 いきなり信頼を得るのは無理だよな。

 

「場合によっては、少しグレードを抑えたスキル融合装備品の実物をチラつかせても良いかな」

「そうですね。その際には、ご相談させて頂きます」

 まあ、42枚もカードを得たので慌てる必要はない。

 エネドラの方も自分の裁量でやりたいことをやってもらえれば良い。

 

 やがてルークが丁寧な礼をしながら入室してきた。

 今回も先日と同様の男を連れてきている。

 

 ルークが目録と前回の修正版の契約書を提示してきた。

 

モンスターカード:芋虫6、トカゲ3、人魚3、蝶3、ゴーレム3、スライム2、

            サイクロプス2、アリ2、コボルト18

素材:革64

 

 革は64枚か。

 ダマスカス鋼の我が家の在庫が80ちょっとだったから丁度良いくらいか。

 原価換算で比較しても、枚数におかしなところはなさそうだ。

 

 契約書にも目を通して問題ないことを確認した。

 

 エネドラに目くばせするとエネドラはアイテムボックス操作の詠唱をして、妨害の剣の6本セットをテーブルの上に並べた。

 

「武器鑑定が必要だろうから、持っていっても良いぞ」

 目の前の付き人は武器商人だから、その必要はないのだが一応知らないフリをした。

 

 ルークはヌートに命じて、6本の剣の武器鑑定を始めた。

 

 問題なく無事に確認は終了し、取引と附随する契約は無事に成立となった。

 

 カードは俺がリュックに仕舞い、革はエネドラのアイテムボックスに収納することにした。

 

「本当にモンスターカードの確認をギルド神殿で行わなくてよろしいのですか?」

「ああ、問題ない。メモも添えられているので」

 42枚のカードのギルド神殿での確認なんて、やってられないよ。

 

「では、カードのオークションでの落札も引き続きお願いしたい。

 昨日も要望したサンゴとつぼ式食虫植物、はさみ式食虫植物の優先度は上げてほしい」

「まだ収集されるのですね」

 そうだよ。まだまだだ。

 

「今回、40枚以上のカードを入手したが、成功するのは2、3回程度だろう?

 これからも数をこなさなければ、欲しいものが手に入るとは思っていない。

 カードの落札は継続しなければならない」

「なるほど、承知致しました」

 本当のところは、こちらの事をどう思ってるのだろうな。

 まあ、どう思っていても継続させてもらうけど。

 

「では、次のカード落札までに

 今回の取引に附随する契約対象のスキル融合装備品が確定していたら、

 合わせて伝えるようにする」

 こう言っておけば、早く落札してくれたりしないかな。無理かな。

 等価交換の取引とカードのオークションは今しばらくは併用だ。

 何か他に有力な入手ルートが出来れば別だが、カードの入手ルートは多い方が良い。

 

 ルーク達に挨拶をされ、ギルドを俺達は後にした。

 外に出たのはエネドラが受け取った素材を俺が引き取るためだ。

 人気がなさそうな裏道で、俺はエネドラから大量の革を受け取る。

 何か、いかがわしい売人のようだ。

 百鬼夜行のアイテムボックスに収納するから、余計そう感じるのかも。

 

「エネドラ、じゃあ引き続き宜しく頼むな。

 レドリック、護衛をしっかりな」

「旦那様も迷宮攻略、お気をつけて」

 軽く手を振りながら、俺はエネドラ達と別れた。

 

 さて、ヴィルマ達が待ちくたびれているかもしれない。

 適当な木陰から、自宅にワープした。

 

 玄関でアミルの位置を確認すると二階の作業部屋か。

 ヴィルマとイレーネは広場で訓練だな。全くよくやるよなぁ。

 

 先にアミルの所でスキル融合が必要なのだが、二人の装備品を回収しないと融合できないか。

 裏庭にまずは行くか。玄関を出て裏庭の広場に向かう。

 

「あっ、主。主も訓練やる?」

 いやいや、お前、これから何するのか理解しているのか?

 

「これから迷宮に行くのだろう?

 アミルにモンスターカード融合してもらうから、二人の竜革のグローブを俺に渡してくれ」

 二人はグローブを外して俺に渡してきた。

 訓練していたので、ちょっと汗ばんでいる。

 ちょっと匂いを嗅いでみたい気もするが、夜まで我慢だ。

 

「もう少ししたら迷宮に行くから、適当に切り上げろよ」

「分かった~♪」

 毎日が幸せそうで羨ましいな。

 

 二階に上がり、アミルがいる作業部屋に向かった。ドアは開いていた。

 

「アミル、カードと素材を大量に入手してきたぞ。

 取り急ぎ、二人のグローブに蟻とコボルトでモンスターカード融合をしてほしい。

 疲れていないか?休憩してから融合でも構わないぞ」

 薬を飲んでまで融合しろとかは流石に言えない。

 

「いえ、大丈夫です。

 ご主人様が戻ったらモンスターカード融合すると思っていたので

 ミサンガの作成は控えめにしていました」

「そうか、じゃあこれを頼む」

 気配りのアミルだな。二人の竜革のグローブをテーブルの上に置いた。

 蟻とコボルトのカードのセットも竜革のグローブの所にそれぞれ置いた。

 

「今ぞ来ませる御心の...」

 アミルはグローブとカードの一山ずつを手に取り、モンスターカード融合を実施していく。

 俺はその横で、エネドラから受け取った革を倉庫に収納していく。

 

耐毒の竜革グローブ(毒耐性、空3)

 

耐毒の竜革グローブ(毒耐性)

 

 イレーネの竜革のグローブは空きスロットが一つだった。

 空きスロットの多い竜革グローブがなかったので、そのうち入れ替えて今回融合したグローブはそのうち等価交換の取引候補にしよう。

 

 アミルにも早く耐毒の防具を渡してやりたい。

 

「アミル、ありがとうな。これから二人と迷宮に行ってくる」

「ご主人様、くれぐれも油断しませんように」

 うっ、アミルに釘を刺されてしまった。さっきエネドラにも言外で言われていたような。

 魔物部屋は気軽に行く所じゃないからなぁ。

 

 作業部屋を出て、一階に降りた。

 

 既に、二人が待ち構えていた。

 俺は二人にそれぞれ、アミルに融合してもらったグローブを渡した。

 デュランダルを取り出してヴィルマに渡す。

 イレーネから俺は硬直のエストックを受け取り、イレーネはヴィルマから激情のダマスカス鋼剣を受け取った。

 

 俺の武器はエストックとスタッフの最低限のものにしている。

 スタッフはメテオクラッシュやストーム系魔法を使う時など、緊急対応用のためだ。

 

 ジョブ構成も状態異常に特化して、攻撃ダメージを抑え目の編成だ。

 勇者の後のジョブ達が何とも恐ろしいというか違和感満載だ。

 初心者勇者をいかついジョブが取り囲んでいる。

 

ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)

探索者Lv50 勇者Lv1 暗殺者Lv50 鬼武者Lv50 遊び人Lv50 博徒Lv50

装備 硬直のエストック ひもろぎのスタッフ アルフレイル

    ダマスカス鋼の額金 ダマスカス鋼のガントレット 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

ヴィルマ(虎人族 ♀ 17才 奴隷)

獣戦士Lv50

装備 デュランダル 竜革のジャケット ダマスカス鋼の額金

    耐毒の竜革グローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

イレーネ(豹人族 ♀ 17才 奴隷)

刺客Lv7

装備 激情のダマスカス鋼剣 竜革のジャケット ダマスカス鋼の額金

    耐毒の竜革グローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

 

 準備も出来たことだし出発するか。

 ワープゲートを開いてベイルの1階層の中間部屋にワープした。

 

 索敵で魔物部屋の状態を確認する。

 相変わらずモンスターが大量にいる...40匹以上はいるか。

 

 全て、ニードルウッドLv1だ。

 見せる順番的には...まあ、イレーネからだな。

 ヴィルマは興奮すると危険な気がするから。

 

「ヴィルマ、ちょっとデュランダルを貸して」

「これ?主」

 ヴィルマは俺にデュランダルを返してくれたので、ボーナス装備を一度ポイントに戻した。

 

「いいか、ヴィルマ。俺が戻ってくるまで、ここを動くなよ。

 ちょっと中を見て戻ってくるから。

 戦う時は三人いっしょだから、お前を置いてきぼりにはしないからな」

 ここまで言えば大丈夫だろうか。

 ワープゲートを開いて、直ぐに一緒に入ってこられると困るのだ。

 

「じゃあ..」

 と言って、俺はイレーネを抱え上げて、お姫様抱っこをする。

 

「御館様..なに?」

「これから、ちょっと魔物部屋の中を覗くから、暴れるなよ」

 この二人は興奮すると何をするか分からないからな。

 まずは少しだけ冷静なイレーネと一緒に行く。

 

 モンスターの密度が低くて、壁のそばにいない場所に向けてワープゲートを開いた。

 俺はイレーネを抱えたまま、ワープゲートをくぐった。

 

 ゲートを通り抜けた先は、一面、ニードルウッドの群れ。

 

「!」

 イレーネがビクッとした。

 俺はゲートの方に向かって、後ろ足でそのまま戻った。

 

「イレーネ、あれが魔物部屋だ。見えたな?」

 イレーネはコクコク頷いた。

 次はヴィルマだ。

 

「ヴィルマ、来い」

 ヴィルマが近づいてきたので、俺はヴィルマもお姫様抱っこをする。

 もう、迷宮で何をしてるのか?...という感じがしなくもないが、一度は見せておかないと興奮して突撃していきそうで怖い。

 

 イレーネの時と同様に、モンスターの手薄な場所にワープゲートを開いて入った。

「あっ」

 ヴィルマがジタバタした。

 俺は力の限り押さえ込んで、そのまま後ろ足で戻った。

 

「ヴィルマ、見えたな?あの群れをこれから俺達で殲滅するんだ」

「分かった、主。全部倒せば良いのだな?」

 好戦的で困るな。

 

「そうだ。ただし、ヴィルマが倒す場合には、全部、ビーストアタックで倒せ」

「分かった。避けながらビーストアタックを叩き込めば良いのだな」

 俺はデュランダルをヴィルマに再び渡した。

 詠唱しながら避けたり攻撃するのって、原作ヒロインでも結構、苦戦してなかったっけ?

 こいつの謎のセンスでなんとか出来るのだろうか?

 

 ダメなら、魔法で殲滅だ。強壮剤の準備もオッケーだ。

 

「イレーネはその剣で普通に戦っても良いぞ」

「了解」

 イレーネの目が正真正銘の獲物を狙う目になった。

 頼もしいと言うべきなのか。

 

「俺はなるべく状態異常...石にして倒すので、後はヴィルマに任せるつもりだ」

「分かった、主。ちゃんと残しておいてよ」

 オーバーキルで倒してしまったら、ゴメンよ。

 

「ゲートへの突入順番は俺、ヴィルマ、イレーネの順だ」

「了解」

「了解」

 気合が入ってきたか。

 

「じゃあ、俺から行くぞ。遅れるなよ」

 俺はワープゲートに突入した。

 

(オーバードライブ、状態異常耐性ダウン...)

 

 手近なニードルウッドに博徒のスキルを発動し、硬直のエストックで刺突する。

 4回突いて、煙にならないことを確認して、次の獲物に状態異常耐性ダウンをかけて、また刺突をする。

 これをオーバードライブが切れるまで、ひたすら繰り返す。

 ゆっくり動いているというか止まってるように見えるので、正直、石化してるのかどうかサッパリ分からない。

 

 オーバードライブが切れる頃にヴィルマが突入してきたのが見えた。

 ビーストアタックの詠唱をしながら、ニードルウッドの攻撃を避けている。器用なものだ。

 

 続いてイレーネも突入してきた。俺の位置を見て、散開するように移動していく。

 

 ディレイタイムが終わり、再び俺はオーバードライブをかけて先程のステップを繰り返す。

 初めのうちは、どのニードルウッドに攻撃を仕掛けたのか把握していたが、乱戦で移動しているうちに分からなくなった。

 

 既に攻撃済で石化していなかったニードルウッドに攻撃して煙に変えてしまったものもいる。

 

「あっ、主、獲物取っちゃダメ!」

 スマン、ヴィルマ。もう訳分からなくなってきた。

 

 イレーネも乱戦の中、避けながらダマスカス鋼の剣を振り回している。

 これなら、イレーネの食い残しを俺が状態異常にすれば良いか。

 俺が獲物に近づいてエストックで刺突すると、獲物を横取りされるのか思ったのかイレーネが睨みつけてきた。

 別に良いじゃん、状態異常にするだけなのだから。オーバーキルする場合もあるけどさ。

 

 何か、かなりの乱戦になったけど、三人ともダメージをそれほど受けずに戦っている。

 動いているニードルウッドがかなり少なくなってきた。

 

「イレーネ。もう攻撃を止めろ。あとは俺とヴィルマに任せろ」

 動いてる奴は俺が石化させていく。動かなくなった奴はヴィルマに任せよう。

 

 そして、動いているニードルウッドはついに居なくなった。

 

「主、動かなくなった奴、普通に倒しちゃだめ?詠唱するの面倒臭い」

「ダメだって、ビーストアタックで倒すの!」

 もう何のために魔物部屋に突入したのかをヴィルマは忘れているのではないだろうか?

 無詠唱でスキルが発動できる俺と比べれば、詠唱してスキルを発動するのは確かに面倒なのは理解できるが。

 

 ヴィルマが最後の獲物にビーストアタックを叩きつけて、煙に変えた。

 Lv1のモンスターだからデュランダルを使えば、ビーストアタック一撃で倒せる。

 

 三人で手分けして、ブランチを拾う。モンスターカードも特にドロップなし。

 全滅したパーティはいなかったようだ。装備品は落ちていない。強壮剤は念のため服用した。

 

「これを迷宮と階層を変えて、何回かやるぞ」

「うーん、ちょっと面倒くさいかも。モンスターも弱いし」

 こ、この野郎...誰のためにやっていると思ってるんだよ。

 

「じゃあ、一人で帰るか?自宅まで送るぞ」

「えっ?別に続けてもいいよ」

 こいつら二人まとめて帰すと、二人で延々訓練しそうだから、帰らせる時は一人ずつだ。

 ヴィルマが帰ると、百獣王のジョブ取得の目がなくなるのだが。

 

 その後も、

 

ザビルの1階層(エスケープゴート)

クーラタルの1階層(コボルト)

ザビルの2階層(エスケープゴート+コラーゲンコーラル)

クーラタルの2階層(コボルト+ナイーブオリーブ)

 

 ...と魔物部屋の殲滅を続けた。

 コボルトはオーバーキルになるので、全然、状態異常に出来なかった。

 ほとんどヴィルマが倒していた気がする。

 

 そして、ついにクーラタルの2階層殲滅後にヴィルマの待機ジョブに百獣王が出現した。

 

ジョブ 百獣王

効果 敏捷大上昇 体力中上昇 器用中上昇

スキル クリティカル発生 ビーストスラッシュ

 

 俺の方には刺客のジョブ表示はなし。

 今までもヴィルマはビーストアタックで倒してきたから、その分の累積もあったのだろうか。

 

 はぁ...もう、二人は自宅に戻すか。好きなだけ訓練をさせた方が良い気がしてきた。

 何かつまらなさそう...というか退屈そうだし。

 魔物部屋に入ってるのに退屈とかって...別に良いけどさ。

 

 残りの時間で俺だけ補習というか追試の続きをやるか。早く、合格を勝ち取りたい。

 ヴィルマに負けた感もあるので悔しい。

 デュランダルをヴィルマから返してもらい、俺はイレーネの硬直のエストックを暫く借りることにした。

 

 夕食までの時間で迷宮を替え、階層を変えて状態異常とオーバーキル(事故)を続けたが最後まで刺客のジョブは取得できなかった。

 チクショウ...明日も追試かよ。

 明日もやるかなぁ?

 今後のことを考えると、早めに取っておきたい気もするのだよな。

 暗殺者でも戦っていけるのだろうけど、今回集中して取ってしまった方が良い気もする。

 

 低階層とはいえ魔物部屋でかなりの数を殲滅したのでレベルの低い俺の勇者やチクルスの薬師はそこそこレベルが上がった。

 

ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)

探索者Lv50 勇者Lv13 暗殺者Lv50 鬼武者Lv50 遊び人Lv50 博徒Lv50

 

アミル(ドワーフ族 ♀ 16才 奴隷)

冒険者Lv8

 

ヴィルマ(虎人族 ♀ 17才 奴隷)

百獣王Lv3

 

イレーネ(豹人族 ♀ 17才 奴隷)

刺客Lv13

 

エネドラ(人間族 女 27才 奴隷)

武器商人Lv40

 

チクルス(人間族 女 18才 奴隷)

薬士Lv8

 

レドリック(人間族 男 25才 奴隷)

戦士Lv21

 

ポーラ(人間族 女 24才 奴隷)

僧侶Lv19

 

 

 迷宮から帰宅して、うなだれながら二階に上がった。

 ヴィルマの百獣王のジョブが取得出来たのだから喜ばしいことか。前向きに考えよう。

 俺の刺客ジョブ取得もきっと、時間が解決してくれると思いたい。




お読みいただき、ありがとうございました。

 本編側では非公開にしようかと思っていますが、百獣王の取得条件は以下にしました。
 本作主人公は勘違いしているのですが、誰も教えてくれないので仕方ないです。

(百獣王の取得条件)
・獣戦士Lv50
・「100」匹のモンスターをビーストアタックで「一撃」で倒す
 一応、百獣王の「百」と掛けてみました。

 ヴィルマにチート武器のデュランダルを貸したのが良かったということで。
 主人公が先に石化した奴を倒すのは一撃の条件に該当しないので、邪魔していた感じです。
 可哀そうなヴィルマ。

本作での百獣王のジョブ仕様は以下の通りです。

ジョブ 百獣王
効果 敏捷大上昇 体力中上昇 器用中上昇
スキル クリティカル発生 ビーストスラッシュ

 ビーストアタックよりは「アタック」分を強さで増した感じで「スラッシュ」に替えました。
 原作でも百獣王はクリティカル攻撃が時々出るという記載があったので追加しています。

 種族固有ジョブの中級ジョブは他の種族も含めて、効果は3つまでとしています。
 ※鬼人族の百鬼夜行や、未出ですが隻眼や竜騎士の上位職(中級職)も同じ感じです。

隻眼のジョブ取得条件もどこかで記載すると思いますが、百獣王の取得条件は甘めだったかも。
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