ヴィルマの百獣王のジョブが取得出来たことを夕飯の際に改めて皆に伝えた。
ただ、当の本人はまだ百獣王のスキルを使ってもいないので実感は湧かないようだ。
俺は明日も追試があるから、ヴィルマが百獣王のスキルを使うのはいつになるのだろうか。
「イレーネが既に取得した刺客のジョブは俺の方はまだ取得出来ていない。
明日は俺一人で魔物部屋を巡って、刺客のジョブ取得を目指すつもりだ。
成り行き次第だけど、刺客のジョブが取れた時点で迷宮組は迷宮攻略を再開する予定だ」
うーん、なんか自分で言っていて締まりのない感じだよな。
早く追試に合格したい。切実に。
エネドラは旧知の商人と再会を果たしたそうだ。
とはいえ、まだ信頼関係を築くという程ではない。挨拶や近況の情報交換程度らしい。
ルークとの取引の話を少し披露して、相手の興味を惹いてきたとのこと。
チクルスの方は昨晩、薬師のジョブを取得出来たが、生薬生成自体は薬草採取士の時と変わらず強壮丸を生成し続けている。
別に薬師になったから生成される生薬の数が増えたりはしなかったと言っていた。
まあ、俺もそうだったけどね。
ジョブ 薬師
効果 知力中上昇 MP小上昇 器用微上昇
スキル 生薬生成 上級生薬生成
エリクサーや自爆玉の素材を得て、生薬生成をしない限りは実感が湧かないのかもしれない。
魔法使い系のジョブを使う際には、有益なパーティ効果を生みそうな気がするけど、それもチクルス本人が実感できる訳でもない。
縁の下の力持ちって感じだな。何か本人にも分かる形で報いてあげたいところだ。
「強壮丸の在庫がかなり貯まったので、明日はレドリックさんに護衛してもらって
薬師ギルドに納品してこようかと思っています。
ポーラさんの産婆さんをしてもらえそうな人がいないか
紹介してもらえれば良いかなと思っています」
「まずはギルドに出向いて、納品したりしながら顔を売ってくれば良いのじゃないか?」
チクルスもニコニコしながら頷いている。
アミルの方からは、今晩の会議で相談したいことがあると。
「モンスターカードを大量に入手したので、
どのカードをどの装備品に融合するのか相談させて下さい。
他にも図書館で調べてきたモンスターカードの情報を説明したいと思います。
今後はどのようなカードを得て、どのような装備品を強化していくべきなのかも
決めた方が良いかもしれません」
「確かにアミルの言う通りだな。
今まではモンスターカードをほとんど入手出来ていなかったので
取得出来たら即座に武器や防具に融合していたが、
将来を見据えてカードの取得方針を決めて、在庫管理や不足分の取引をした方が良いな。
今日のルークとの取引の感触だと等価交換の取引はこれからも継続できそうだ。
ルークに限った話ではないが、今後の我が家の取引もその方針に沿って交渉を進めたい」
何か、楽しい夕食のはずが職場のパワーランチの様相になってしまった。いつものことか。
「まあ、詳細は会議で確認と相談をしようか。アミルは説明の方を宜しく頼むよ」
「はい、ご主人様」
トロールのモンスターカードとか原作にないカードも出現し始めた。
アミルに整理してもらった内容で、不足分の情報を埋めたい。
・・・・・・
食事を終えて、風呂に浸かりながら午後の商人ギルドの様子をレドリックから聞いた。
「エネドラ様は知り合いが少ないのか、入館した当初は途方に暮れたような感じでした。
知り合いを見つけて話を始めると、徐々に周りの注意を引くような話題を提供していました」
「いきなり馴染みのない所に行って、他人の関心を引くのは難しいよな。
単なる客なら商人から見れば金次第で関心を示すだろうが、
対等の相手と見做してもらうには、まだまだ時間がかかるだろうな」
あまり目立ちたくはないけど、関心は引きたいとか無理だよな。
どちらかに舵を切らないと中途半端で何も出来なくなってしまう。
この件もエネドラと相談だな。
「護衛を連れた商人って、結構、ギルド内はいるようだったか?」
「そうですね。少数ですが護衛らしき者は何人か見かけました。
ただ、商人の格というものが私には分かりませんので、
どの程度の商家なら護衛を連れているのかまでの判断は出来ませんでした」
それでも、護衛は連れていった方が良いということだな。
「護衛の中には強そうな奴はいたか?」
「そうですね。見るから強そうな者もいましたし、
一見すると強そうでなくても全く隙のない者もいて、実力を測りがたい者もいました」
ただ護衛を派遣するだけでなく実力も当然必要と。
レドリックのレベリングも少し急いだ方が良いか。
「レドリックは将来のジョブとかは決まりそうか?」
「まだ、決めかねています。
戦士から騎士というのは奴隷となってしまった今は無理なので、
剣士、探索者や冒険者などが候補でしょうか」
ジョブだけなら騎士にすることは可能だけど、外出時に俺の居ない所でインテリジェンスカードのチェックをされると拙いよな。
剣士から剣匠を経て剣聖にして、エネドラに剣聖の護衛を付けるのはアリだろうか。
剣聖 レドリック...やっぱり、俺よりもよほど主人公っぽい響きだ。
小説が一本書けそうなネーミングだ。
百鬼夜行 ユキムラ...考えたら負けだな。
レドリックは探索者から冒険者にして、タクシー兼トラック兼護衛というのもアリかも。
「まあ、もう少し考えてみてくれ。俺も相談には乗るので」
「はい。分かりました」
風呂場から出て、女性陣とバトンタッチ。
自室に戻って、今日相談をしておきたい事のメモを作成。
やがて、皆が集まってきたので会議を始める。
まずは明日の予定から。
「迷宮組は俺が刺客のジョブ取得出来るまでは、迷宮攻略は中断だ。
イレーネとヴィルマは訓練で良いか?
アミルは、後で話し合う方針に従って装備品のモンスターカード融合と
装備品の作成だ」
三人とも頷いてくれている。
「チクルスはレドリックを連れて薬師ギルドに納品だったよな。
行くのは午前と午後のどちらにするつもりだ?」
「午前中に行ってこようと思っています。
納品の際に産婆の相談が可能かどうかギルドの職員に確認してみます」
その辺は任せよう。
「分かった。納品と産婆の件は任せた。何か困ったことがあるなら相談してくれ。
明日、レドリックにも伝えておいてくれ」
「分かりました。ユキムラ様」
これでチクルスの方は終わりと。
「明日、エネドラはどうする?」
「時間が出来たら、ポーラさんと石鹸作りをしてみたいと思います。
まずは今の作り方や改良のやり方を覚えてもらわないと」
最近はあまり石鹸作りに時間が取れなかったようだけど、ようやく出来そうなのかな。
「じゃあ、ちょっと先を見据えて今後の話をしておこう」
まとめておいたメモを見ながら、我が家の目標や課題について説明を始めた。
「迷宮探索については、将来的には70階層の突破を目指す。
そのために、まずは一般的な迷宮攻略が出来る程度、
50~60階層の攻略が出来る程度の実力を身に着けたいと思っている」
「ご主人様、何故70階層なのでしょうか?
あと、迷宮攻略をその前段の目標に掲げているのは貴族を目指すのでしょうか?」
70階層を目指すのはLv99を目指すからなのだけど、それをどう説明したものか。
ボーナス魔法はLv99デスであって、エクストリームドロップデッドじゃないのだよな。
ってことは、レベルがカンストするのは99じゃないかと思っている。
階層+30がレベルキャップなら69階層でカンスト出来るのではないかと予想している。
70階層以降を目指しても良いけど、もう趣味の世界だよな。
まあ、時間があれば目指しても良いけど。
「世間的に実力が認められている階層であったり、必要な素材が収集可能な階層だから
70階層を目安に考えている。
それから、俺は貴族を目標にするつもりはない。
何かの目的のために貴族になる必要があるとなった時に
なれる程度の実力は身に着けておきたいという程度だ。
貴族になることは手段として考えていて、目標ではない」
「なるほど。
では、迷宮攻略の時間?...期間はどの程度をご主人様は見込んでいるのでしょうか?
今は、かなり余裕を持った攻略をしているように見えますが、
もう少し攻略の速度を上げるのでしょうか?」
今の階層が自分達のパーティの実力からすると物足りないって意味なのかな?
「22階層までは今のペースで攻略を続けようと思っている。
23階層以降の攻略は22階層の攻略を終えた時点で考えようと思っている」
「ゆっくりと攻略しようとお考えでしょうか?
その...私の迷宮攻略経験が浅いから気を使って頂いているのでしょうか?」
ああ、ちょっと誤解させたかも。
「別にアミルの迷宮の経験が浅いから攻略の速度を落としてる訳ではないぞ。
確かに22階層まではアミルに限らず俺達の迷宮探索の経験を積むことや
連携の熟成をする意味もあって一階層ずつ3迷宮で攻略してきたが、
23階層以降は攻略の仕方は変えようと思っている」
「どのように変えるのでしょうか?」
さて、どう説明したものか。
「20階層で、新しいジョブを取得出来ただろう?
迷宮の20階層は新しいジョブを取得出来る、ちょっと特殊な階層なのだ。
だから、次の迷宮探索の難易度が上がる23階層の一歩手前、
22階層までの20、21、22階層は実力を蓄えるための階層と俺は捉えている」
階層+30のレベルキャップの説明を省略すると説明が途端苦しくなる。
うまく伝わっただろうか?
「新しいジョブを得たアミル、ヴィルマ、イレーネ...俺もだが、
ジョブを変えたので、一時的にはパーティの力は下がっている。
難易度が上がる23階層以降の攻略を急ぐつもりはなく、
準備が整うまでは22階層を上限に迷宮探索をしていくつもりだ」
隻眼が取れずに冒険者になったアミル、百獣王になったヴィルマ、刺客になったイレーネ、勇者や魔道士、刺客取得を目指す俺のジョブを育てる必要がある。
「迷宮攻略の速度を心配しているようだが、
23階層以降の攻略については、時間を金で買えば良いとも思ってる」
「時間をお金で買うのですか?...それは一体?」
これは分かり易い説明が出来るかな。
「クーラタルの迷宮は階層攻略が進んでいて、入口で金を払えば行きたい階層に行けるだろう?
仮に21階層から70階層までの案内を全て頼んだとしても、
金額で言えば...(カルク、プリーズ)...金貨23枚足らずか。
金貨23枚払えば行きたい階層に行けるし、その程度の経済力は我が家にはある」
「あの、それでは迷宮攻略の実力を身に着けたことにはならないのでは?」
そりゃそうだよ。もうちょっと説明しないとね。
「アミルの言う通りだ。金を払って案内してもらっても実力が伴わなければ意味はない。
22階層までにある程度の準備を終えたのなら、
23階層以降は全ての階層を馬鹿正直に攻略するのではなく
必要な階層を選んで攻略すれば良いと思っている。
必要とする基準は例えば、
実力を測るのに適切な階層はどれか?
素材を収集するのに適切な階層はどれか?
といった形で、必要性を考えた上で絞れば良いと思っている」
これも具体的な説明が必要だよな。
「クーラタルの迷宮の23階層から33階層を例にあげると、
鍛冶素材を落とす27階層のシザーリザードや31階層のゴーレム系の階層。
生薬素材を落とす30階層のハーブ系モンスターの階層は攻略したい。
実力を測るのなら、物理的な攻撃が与えにくい23階層のグミスライム、
最難関の階層である33階層のドラゴン系の階層はパーティの実力を知る絶好の階層だろう」
「必要な階層だけを攻略していけば良いとおっしゃってるのですね?」
俺はアミルの言葉に頷いた。
「そうだ。23階層以降の攻略については、そのように考えてほしい。
一方で新しいジョブの習熟やスキル融合をした装備品の方はまだ十分だとは思ってはいない。
ジョブの習熟は、この後22階層までの攻略を進める中で一定水準までは到達するが、
魔法攻撃のダメージ軽減が出来る防具や状態異常にするための武器、
HP吸収やMP吸収といった迷宮攻略を円滑にするための武器はまだ物足りない。
状態異常に対する耐性防具も必要だと思っている。
その全てを手に入れるまでは23階層以降に挑まないとまでは思っていないが、
今はもう少し、準備に時間を費やしても良いと思っている」
「なるほど、モンスターカードを大量に入手したので、
足りているもの、足りていないものの見極めをして、
ある程度は問題ないと判断したら23階層以降に進むのですね」
理解が早くて助かるな。さすが司令塔候補。
ヴィルマの目は既に死んでいる。イレーネは早く話が終わってくれという目にも見える。
エネドラは大丈夫そうだが、チクルスはどうだろうか。
「そうだな。
カードの融合方針や取得の優先順位などをこの後相談する時に詳細を詰めていこう。
ただ、迷宮探索以外でも方針を決めておかなければならないことが多い」
「考えなければならないのは、人材、情報収集能力、経済力と政治力だ。
最後の政治力は除くとして、今述べた順番は不足が多いと俺が感じている順だ」
ここからはアミルは厳しいかな。というかエネドラしか付いてこれないかも。
「人材だが、
まず迷宮攻略メンバが最大数の6人に達していない。
後方支援メンバもポーラが加わったが、まだまだ増やしたい。
商会を立ち上げたと言っても名ばかりでエネドラの負担が大きい状態だ。
エネドラの相談相手くらいになれる者も一人二人は欲しい。
護衛メンバはレドリックという頼りになりそうな者が加わったが、
一人だけでは心もとないのでレドリック相当の中核になる者を増やしたり、
中核メンバの配下に護衛メンバも増やしていきたいと思っている」
レドリックはエネドラの慧眼...いや、見ないでエネドラは選んだよな。
エネドラの赤ちゃんプレイ好き...じゃない、赤ん坊好きがたまたま功を奏しただけだ。
ともかく人材不足は深刻だ。奴隷商館巡りはこれからも続けなければならない。
「次に情報収集だが、
迷宮攻略に関する情報はアミルの調査や俺の師匠から教わった情報でそれなりの状態だが、
戦争に関する情報、商売に関する情報が足りていない」
「旦那様は、戦争を契機に我が家を発展させていこうと考えているのでしょうか?」
エネドラ、おっかないこと言うな。そんなこと1ミクロンも考えてないよ。
「いや、戦争で儲けようとは考えていない。
端的に何がどこまで危険な状態なのかが分からないということだ。
この帝国はどこまで危険な状態なのか?
帝国の中で危険な地域、安全な地域はどこなのか?
帝国のことは脇においておくとして、安全な外国はどこかにあるのか?
といった感じだな」
もう少し補足しないとな。
「何が危険でどこまで安全なのかを知らないと、
拠点をどこに置くのか?
商売をどことしたら良いのか?
など何を決めるにも危険を測る基本的な情報が不足していて困るということだ。
そして、この情報収集は簡単に改善出来ない事も問題だ。
とはいえ、何もしない訳にはいかないので、
普段から意識しながら何か思いつくことがあれば、その都度試してみる必要があるな」
「確かに旦那様のおっしゃる通りですね。
商人ギルドにもそれなりに情報が流れてきますが、十分とは言えないでしょう」
エネドラの言葉に俺も頷く。
「エネドラは奴隷商人について、どう思う?」
「えっ?どういう意味でしょうか?旦那様」
ちょっと唐突過ぎたか。
「奴隷契約の商売をしている奴隷商人という意味ではなく、
奴隷商人のジョブを持つ奴隷を雇うという意味だ。
奴隷商人というのが信用できない種類の人間というのであれば、
この話は成立しなくなるのだが」
「世間一般的に見れば、人によっては色眼鏡で見ている者もいるでしょうが、
例えばアラン様のような方は奴隷に対して公平な方でしたし、
商売人としては一角の人物だったと思います。
ただし、あくまで奴隷を商品として見ているという意味において公平という感じでしたが」
アランは何か傑物っぽかった気がするよな。あくまで俺の感想だけど。
「戦争奴隷や戦争に関連した盗賊の動きは
奴隷商人の方に情報が流れてくるのではないかと想像しているんだ。
奴隷商人から情報を聞き出すという手もあるが、
いっそ奴隷商会を立ち上げて情報収集したり、
人材不足を補うためのメンバ収集をする手もあるかなと思っただけだ」
とはいえ、そんな便利な人材は今はいない。
奴隷商館でも見たことないが、希望を出せば調達出来るのだろうか?
「完全に思い付きの話だし、そもそも今、我が家に奴隷商人が出来る人材はいない。
エネドラや俺には別にやらなければならない事があるからな。
やるなら信用のおけそうな人材を獲得する必要があるが、
ノウハウがない素人にジョブだけ与えて奴隷商館を営業しろという訳にもいかないだろう」
「確かに発想としてはおもしろいのかもしれないですが、実現は困難かもしれません」
まあ、ボツとなるアイディアだとは思っているよ。
「情報収集の件は簡単に何か強化できるとは思っていない。
だが、今俺が言った考えのように何か思いついたら会議の場で少し議論してみて
使えそうなことが何かないかを地道に考えていく必要があるだろうということだ。
商人ギルドや薬師ギルド、探索者ギルドや奴隷商人といった連中と
付き合う際にも意識して情報収集を今後もしていこう」
あとは貴族だよな。多分、貴族が一番情報を持っていそうだし。
貴族になる以外で何か貴族連中から情報を引っ張る方法がないだろうか?分からん。
人材が不足していると言っておきながら、仕事を増やそうとする無茶ぶりだが、情報収集はしておきたいのだよなぁ。
「経済力はさっき話をした2つと比べればまだマシだと思っている。
今の我が家のメンバの税金を払う程度の余裕は常にあるし、
俺が故国から持ち込んだ鏡の在庫もまだある。
それにモンスターカードの収集が軌道に乗れば、
あまり使いたくはないがスキル融合武器を売却する手段もある」
「旦那様はオークションを使いたくないとおっしゃってましたものね」
そうなのだよな。相手が得する土台で交渉するのは嫌なのだよな。
「ああ、だがクーラタル以外の街でオークションにかけてもらったり、
武器屋、防具屋で売却する手もあると思っている」
「オークションではなく一般的な店で売却するのですか?」
ちょっと極端な話を振りすぎたか。
「ああ。そうだ。あくまでモンスターカードが潤沢に手に入ることが前提だがな。
一般的な装備品の高級素材のグレード、ダマスカス鋼や竜革は外すが、
例えば鋼鉄程度の素材に、コボルト無しで融合したスキル武器を売却する。
レイピアなら空きスロット付きのものが我が家には在庫があるので、
トカゲのモンスターカードは...この前入手したが...
オークションの落札価格は3000ナールくらいだろう?
ほむらのレイピアの店への売却価格が18000ナールだったから、
3000ナールの原価で15000ナールの儲けだ」
「なるほど。定期的に迷宮で装備品を収集してくる旦那様ならでは考え方ですね」
洗浄ばっかりさせて申し訳ないな。
「そうだな。大量に売りさばく訳にはいかないが、
売却間隔をあけながらやれば、手っ取り早く資金を得ることは出来る。
身分を明かさずに売却も出来るしな。
他の街でオークションにかけても良いのだが、
手数料と交渉する労力と身分がばれることを考慮すると割に合うのか疑問に思っている。
これは、もう少し等価交換の取引が軌道に乗って、
俺達が必要とするスキル融合した装備品が揃った後のアイディアの一つだな。
話を元に戻すと、資金調達の方法はそれなりにあるので、
前に話をした2つの懸念事項ほどには心配してないということだ。
今後も資金調達に手を抜くつもりはないがな」
資金はいくらあっても困ることはない。
迷宮メンバや護衛メンバを増やすにはまだまだ必要だ。
「最後に政治力の件だが、これは説明や対応方法がちょっと難しい。
商会を立ち上げて、ある程度は軌道に乗ってからの話だが、
商会としての影響力を行使した方が良い場合にはそれを獲得する必要があるだろう。
あとは迷宮探索者としての知名度が何か有利に働くことがあるのかどうか。
情報収集や商売、迷宮探索について影響力が高ければ、
どの程度優位に立てるのかは不明だが、意識しておく必要があると思っている。
逆に悪目立ちして、的にかけられても困るのでそれも考慮が必要だ」
「そうですね、旦那様。バランスが必要なのでしょうか?」
何が必要なのかは俺もちょっと分からない。
「エネドラは今後、商人ギルドで交渉したりするのに、
タケダ家の商売の実績や名声といったものが必要になる場合もあると思っている。
影響力がある程度ないと、旧知の商人との交渉も難航するかもしれない。
悪目立ちを恐れて、タケダ家の力を小さく見せていると逆効果になることもあるだろう。
この辺りのことは、今後も相談させてほしい」
「承知いたしました」
バランスを取るのが良いのか、どちらかに舵を切るのが良いのかは難しい。
というか、言い方がアレだがゲーム仕様次第だ。
俺がよくやっていた戦国シミュレーションゲームでは、名声を高めすぎると隣国が共同して包囲網を敷いてくるイベントがよくあったよな。
それを打ち破る人材と戦力でねじ伏せていたけど、今回は簡単ではないだろうしな。
話がかなり長くなってしまった。
ヴィルマは完全に突っ伏して寝てるし、イレーネの顔は表情が消えていて無の境地だ。
この二人が今みたいな話に興味を覚えてくれる日が来るのだろうか?
いや、こんな状態にしてしまうのは俺の話し方に問題があるのかもしれない。
大学時代の講義を思い出してしまった。
眠気を誘うつまらない話をする教授の立場を自分が演じることになろうとは。
お読みいただき、ありがとうございました。
主人公の独り語りが多くて、読者様にはつまらない話だったかもしれません。
執筆している私もちょっとツラかったです。
そして、この手の話にはつきものの誤字脱字の嵐も怖くて恐れおののいています。
まだアミルのモンスターカードの報告も書けていないので、しばらく会議ネタが続きます。