風呂を出て、女性陣とバトンタッチ。
今日はモニカが初めての風呂なので、女性陣が会議に合流するのは時間がかかるかもな。
レドリックとレイモンドは自室に戻っていった。
俺は一人、二階の談話室に向かう。
ドアを開くとハーブティーとコップのセットが置かれている。
エネドラかチクルスのどちらかが事前に準備しておいてくれたのだろう。
いつものことだけど彼女達の配慮に感謝しつつ、風呂上がりの一杯を頂く。
メンバも少しずつ増えてきたし、会議のメンバも変更した方が良いかな。
レドリックはポーラの体調が安定するのを見極められたら、護衛隊長として会議に参加してもらった方が良いかもしれない。
正直、ヴィルマとイレーネよりも会議に参加してもらう意味がある気がする。
今は護衛チームは三人しかいないが、もっとメンバを増やす予定だから。
そうなると隊長格の者に参加してもらった方が良いだろう。
エネドラからも要望があった商人との取引で装備品の融合の進め方を決めたい。
スキル融合した装備品を渡す候補をリストアップしながら、話すポイントを作成。
やがて女性陣が集まってきたので会議を開始。
「モニカは風呂に慣れそうだったか?」
「はい、ご主人様。
初めのうちは、お風呂に入ったことがないので戸惑っていたようですが
湯舟に浸かると気持ちよさそうにしていたので、お風呂嫌いにはならないと思います」
俺の懸念事項を先回りしてくれているな。さすが気配りのアミル。
「そうか。
これからもメンバは増やす予定だから、湯舟はあと一つ、二つ追加しても良いかもな。
仕切りを作って男女別々で同時に入れるようにしても良いかもしれない。
拠点構築のスキルで給湯設備を複数設置出来るので、湯舟を複数配置しても大丈夫だ」
「なるほど、確かにメンバが増えてきたら考えても良いかもしれませんね」
ベイルの家具屋に頼んで作ってもらっても良いだろう。
間口の関係で、ベイルの家から物資輸送で移送することになると思うが。
「まず、明日の予定だが、迷宮組はベイルとザビルの21階層の攻略を午前、午後で行う。
時間が空けば、俺の方は奴隷商館巡りをしてこようかと思っている。
エネドラの方は何かあるか?
護衛組の方はまだ人数が少なく、迷宮には行かせられないので、
護衛以外で手が空くようなら、一人ぐらいは雑用で何かさせても良いと思うが」
「はい。レドリックと相談して決めたいと思います。
旦那様達は迷宮の探索に集中してください」
頼らせてもらおう。
とはいえ、後方支援メンバの方も増やしたいので、メンバ探しを俺は頑張らないと。
チクルスから、昨日の薬師ギルドへの納品と産婆の確保見込みについて話があった。
「強壮丸を300個を納品して、9000ナールの代金を頂きました」
「そうか探索者ギルド等だと4500ナールで買い取りだったはずだから、大きな金額だな。
チクルスの努力の結果だ。ありがとう、今後も頼むぞ」
300個作成するには約10日を見ておけばよいので、30日で27000ナールか。
一年で30万ナールを軽く超えることになる。更に一人薬草採取士を雇う手もあるか。
もう一つランクが上の生薬を生成出来れば、もっと売上は上がるだろうな。
納品を終えて、少し誇らしげなチクルスを目にするエネドラの眼も優し気な感じだ。
娘の成長を見守る母親と見えなくもない。
チクルスも初めにベイルの我が家に来た時に比べると随分、行動に自信がついたのか明るくなった気もする。
それに毎日が妙に楽しそうな雰囲気で過ごしているようにも感じられる。
時々、黒いオーラを感じることもないではないが、その矛先が俺に向かわない限りは問題ないだろう。
「産婆さんの方は紹介状を頂きました。
時間を見つけて訪ねてみようかと思っています」
「そうか、産婆を引き受けてくれそうな者が生薬を求めていそうなら
チクルスの力の及ぶ範囲で、その産婆に生薬を提供しても良いぞ」
技術料の対価に生薬で交渉しても良いだろう。
それで少しでもモニカの出産の安全性が高まるのなら手を尽くしたい。
「えっ?ユキムラ様、どういうことでしょうか?」
「産婆をやっているくらいだから、場合によっては薬が必要なこともあるだろう。
滋養丸等が産婆をする上で必要になるのなら、ポーラの産婆を引き受けてくれる対価に
我が家から生薬を提供しても良いということだ。無制限とはいかないがな。
無論、生薬だけではなく、お金を謝礼として渡すのだって問題ないぞ」
「なるほど。ちょっと考えてみます」
生薬生成やその在庫管理はチクルスに任せている。
彼女の手の及ぶ範囲でいろいろと工夫してやってみてほしい。
次ぎは、新規メンバの育成関連。
「レイモンドとモニカが新しく加わったし、レドリックを剣士にジョブ変更したので、
三人の育成が必要だ。
ポーラの僧侶はLv29まで育成出来たので、育成から外してレイモンド達を優先したい」
「旦那様、レイモンド達の育成がある程度進むまで、私をパーティから外して下さい」
くっ、エネドラに先回りして気を遣わせてしまった。
「エネドラの体調の方はどうなのだ?
体調を崩すようなら、3人のうち2人を育成に入れて順番に育成しても良いと思っている」
「まずは一度外してもらって様子見しましょう。恐らく問題ないはずです。
僧侶のポーラさんも居るので問題なく対応できるはずです」
普段から考えていたのだろうな。
こちらの懸念点を潰した上でフォローしてくれている。
「そうか。じゃあ、朝外して、夜にパーティに戻す運用にしよう。
夜は育成対象の三人もパーティから外すようにする」
「はい。それでよろしいかと」
夜の課外活動があるから、三人をパーティから外すのは絶対だ。
これ以上、開けっ広げでは俺のメンタルがもたないよ。
「装備品ですが、ダマスカス鋼のガントレットの作成で良いでしょうか?」
「そうだな。空きスロットの数が多い防具が欲しいので、
必要な素材数が少ないガントレットを多く作成してほしい」
アミルや今後のメンバのために空きスロットの多い腕装備が欲しい。
「分かりました。ではダマスカス鋼の素材が尽きるまでガントレットを作成してみます」
むう、アミルの勢いなら2、3日中に素材が尽きてしまう。
また素材集めに奔走しないとならない。
だが、ドブローのダマスカス鋼の工房は肉クエストのせいで停滞中だ。
今日の議論の中で打開策を探るか。
「じゃあ。スキル融合装備品の件について話をしようか」
「まず、融合した装備品を渡す相手についての整理からだ。
一つ目はルーク。先日の等価交換の取引の附帯契約の融合装備品をどうするか。
二つ目はエネドラの旧知の商人。今後、どのような融合装備品を交渉材料にするか。
三つ目はドブローのダマスカス鋼の工房。
まだ注文を受けてないが、スキル融合防具を要望される可能性がある。
この三つの相手に渡すことを考えながら、
我が家の迷宮探索用の装備品へのモンスターカード融合も並行して行う。
一応、今、説明した順に優先順位が高いことを意識している」
「ご主人様、
ルーク様の方がエネドラさんの旧知の商人より優先度が高いのは何故でしょうか?」
アミルから基本的な質問が寄せられた。
「そうだな。
まず、ルークとの取引では契約でスキル融合した装備品の実物を
20日以内に提示すると定められているからだ。
一方でエネドラの旧知の商人との交渉はこれからで何も決まってないからだな」
「なるほど、分かりました」
「ただ、ルークの方は身代わりのミサンガを渡して終わりにしてしまうという手もある。
今後の事を考えると、もう少し良い装備品を渡して等価交換の取引を継続したいので、
バランスを取りながら決めたいと思っている。
エネドラの方は、商人の欲しそうな装備品について予想はつくか?」
「いえ、現時点ではまだ顔つなぎの段階なので予測出来ていません」
まあ、そうだよな。また交渉すら始まっていないのだろうし。
「では、いくつかこちらから候補を提示して反応を見てみるか?
俺の中では、候補として強権の鋼鉄槍、激情の鋼鉄剣あたりを考えている」
「旦那様が、その候補を選定したのはどのような理由なのでしょうか?」
ちゃんと説明しないとね。
「まず、ルーク程の有力商家ではないという前提に立って、
防具よりも武器の需要が高いのではないかと予想した。
武器のグレードもダマスカス鋼はルークの商家ですら簡単に渡す気はないので、
鋼鉄製で良いかと思っている。
鋼鉄製の武器で有効な装備品のスキルは詠唱遅延の強権、ダメージ重視の激情、
あとは毒付与を与えるものくらいでどうかと思っている。
アリのカードは今は1枚しか我が家にはなくて、防具にも有用なので外した。
なので、強権の鋼鉄槍、激情の鋼鉄剣あたりでどうかと考えた」
「なるほど、分かりました」
交渉の仕方もヒントを出した方が良いだろうか。
「エネドラの旧知の商人へはルークと違って実物を見せる必要がないから、
まずは交渉のカードとして、先程の2つの装備品の候補をチラつかせたらどうか?
交渉に乗ってきそうだったら、具体的なカードと素材の交換条件を詰めて
まとまりそうになってから、モンスターカード融合すれば良いと思う。
それまでは保留扱いにしてカードはキープしておけば良いだろう。
ウサギもサイクロプスも有用なカードだから取引が流れても使い道はこれからもあるし」
「なるほど分かりました」
まだ、決定じゃないけどね。他の取引相手次第のところもあるし。
「エネドラの取引相手に要望する素材は革で良いかもしれない。
鋼鉄製の装備品との等価交換だったら、あまり良い素材は期待出来ないので、
我が家で不足しがちな革を多めに集めれば良いのではないかと思っている」
「分かりました。今のお話を基に交渉に持っていけるように話をしてみます」
まあ、徐々に進めてくれれば良い。
「次にダマスカス鋼の工房だが、こちらもすぐには要求が来ないかもしれない。
だが、防具を要望していて、あの親方の作成した防具となると候補は限られる。
ダマスカス鋼の鎧もしくは盾に対して、スライムかアリを融合することを想定している。
頑強か耐毒のスキルを付与する前提だな。
これも保留扱いにして、在庫に留めておく形になると思う」
「分かりました。ご主人様」
うーん、反論が欲しいのだが現時点では、まだ無理か。
「ルークへ実物を見せるスキル融合装備品の話に戻すが、現時点で考えている候補は
耐毒の硬革靴または頑強の硬革靴のどちらか、もしくは
耐毒のダマスカス鋼大楯または頑強のダマスカス鋼大楯のどちらかだ」
「えーと、どのような理由でご主人様はその4つを選ばれたのでしょうか?」
さて、どう説明しようか。
「耐毒か頑強の二択にしているのは、単純にモンスターカードの在庫との兼ね合いだ。
そして、その2つのカードはこの前のルークとの取引で入手したカードでもある。
硬革かダマスカス鋼の二つの選択肢にしているのは、
前者がカードを優先して素材をあまり要求しないパターン、
後者がカードだけでなくダマスカス鋼や竜革の素材をたくさん要求したいパターンだ。
大楯は必要とするダマスカス鋼の素材数が多いので
等価交換だと相手に多くの素材を要求出来るからな」
「分かりました。
分かりましたが、ご主人様はよく、それ程までに先を見据えていろいろと思いつきますね。
私ではとても、そこまで考えが及ばないです」
考えるのは俺の趣味みたいなものだからなぁ。
「ただ、例えば頑強のダマスカス鋼大楯は、防具としてのグレードがかなり高い装備品だ。
正直、早いうちからこのグレードの防具をルークに提示して良いかは悩ましいと思っている。
一方で、この取引が他の商家に伝わった時の影響も大きいので、
例えばエネドラが今後、旧知の商人との取引を行う上で有利に働く可能性もある。
どちらが良いと思うか、アミルやエネドラの意見を聞かせてほしいと思っている」
「えっ、私はちょっと判断がつきません、ご主人様」
アミルは脱落と。
「私は出来ればダマスカス鋼の大楯にして頂ければと考えます。
今のところ相手の商人との交渉が上手くいく確信がないので、
少しでも有利な状況にしたいと考えているからです」
「そうか。では、ルークとの等価交換の交渉も継続させたいので、
頑強のダマスカス鋼大楯を提示してみるか。
今回、このグレードの装備品を提示しても
次回は硬革や鋼鉄製にグレードを落として取引を行うことも出来るしな」
エネドラはホッとしたような表情をしているようだ。
結構、商人との交渉に行き詰まりを感じていたのかな。
今回は、エネドラの意見を尊重しよう。
アミルの方が利用する素材も不足しそうだったので、やむを得ないって事情もあるしな。
「頑強のダマスカス鋼大楯であれば、
ルーク相手にダマスカス鋼や竜革の素材を多く要求出来る。
装備品のグレードも高いので、こちらの望むカードも要望し易い。
後はルークが取引に応じるかどうかだ」
アリのカードはアミル用の防具のために取っておきたいのだよな。
ドブローの親方の要望する防具の方に使う可能性もあるし。
エネドラも頷いてくれたので、もう決定で良いか。
「では、ルークから次のカードの落札の連絡があれば、
頑強のダマスカス鋼大楯を融合して持っていくことにしよう。
そのタイミングか、少しずらしてからエネドラは商人ギルドに行って、
旧知の商人との交渉をしてみるか?」
「そうですね。そのように進めてみたいと思います」
(我が家のカードの在庫)
ウサギ1、羊1、ヤギ1、はさみ式食虫植物0、サンゴ0、サイクロプス0、アリ1、コボルト3、芋虫0
⇒(保留)ウサギ1、アリ1、コボルト2
(ルークから入手したカードの在庫(消費した残り))
トカゲ0、人魚0、蝶0、ゴーレム0、スライム2、サイクロプス1、アリ0、コボルト5、芋虫0
⇒(保留)スライム1、サイクロプス1、コボルト2
⇒(利用予定:ルークとの取引で提示)スライム1、コボルト1
「じゃあ、これで会議を終わりにしようか」
皆にお休みの挨拶をして、各自、自室に戻った。
明日の予定
(午前)
・俺 :ベイルの21階層攻略
・アミル :ベイルの21階層攻略、(朝:装備品作成)
・ヴィルマ:ベイルの21階層攻略
・イレーネ:ベイルの21階層攻略
・エネドラ :朝食、昼食の準備、洗濯、石鹸試作
・チクルス:朝食の準備、生薬生成
(午後)
・俺 :ザビルの21階層攻略、(奴隷商館巡り)
・アミル :ザビルの21階層攻略、(装備品作成)
・ヴィルマ:ザビルの21階層攻略
・イレーネ:ザビルの21階層攻略、(ブラヒム語勉強)
・エネドラ :夕食・朝食の準備、(掃除)、石鹸試作
・チクルス:夕食・朝食の準備、(掃除)、生薬生成
※夜は定例会議
※ポーラ(家事、石鹸作成)、レドリック/レイモンド/モニカ(護衛、雑用等)
・・・・・・
護衛メンバが二人加わったので、明日はパワーレベリングだな。
三人のジョブのレベルがある程度上がれば、安心できる。
ただ、まだまだ護衛メンバも後方支援メンバも増やしたい。
それに情報収集の方も捗っていない。
人材も足りてなければ、伝手も足りない。
原作に照らすと、そろそろハルツ公爵の災害対策支援のイベントの日が近づいている。
冒険者ギルドにも顔を出した方が良いだろう。
原作本を読みながら、ベッドに寝っ転がっているとノックの音がした。
ドアを開けると、アミルの姿が・・・・・・あれっ、いつもは俺がベッドまでエスコートするのに一人で歩いていく。
何かイレーネみたいだな。
(ブッ・・・・・・)
アミル、いつものズボンを履いてなくて、下着しか履いてない・・・・・・のは良いのだけど、いや良くないのだけど・・・・・・下着のお尻のところに大きい穴が。
どう考えても、これはチクルスの仕業だな。
あんな綺麗な縫い代を繕えるのは、アイツしかいないだろう。
チクルスはアミルに何やらせているんだよ。全く。
何を考えているんだ。
あっ、動揺している間にアミルがベッドに横たわってしまった。
せっかくの眼福の光景を少ししか堪能出来なかったじゃないか。
まあ良いや。これからイロイロその機能性を試せば良いのだから。
・・・・・・
お読みいただき、ありがとうございました。
どうでも良いのですが、本話の最後あたりの話はチクルスの閑話と繋がります。
閑話はこれから作ります。ホント、どうでも良いのですが。