異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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本日は本編の編集が間に合わず、閑話だけの投稿となります。申し訳ないです。

チクルス観点の閑話です。

レイモンドとモニカがタケダ家に合流する頃あたりから始まる話です。



閑話004 おもしろい

「ふぅ・・・・・・、やっと終わった。ポーラさん、これお願いねぇ~」

「はーい。干してきますね」

 今日の洗濯分を終えて、洗った衣類をポーラさんに渡した。

 ポーラさんのお腹には赤ちゃんがいるから、私が洗濯して、干すのを彼女にお願いしている。

 立ったり、座ったりするのを頻繁に繰り返すのは妊婦さんの体に良くないのではないかとユキムラ様の指摘があったので、役割分担をしている。

 

 気にし過ぎな気もするけど、ユキムラ様の心配を減らすために指示に従うことにしている。

 ユキムラ様は私より年下で17才なのに、そんな知識をどこで得てくるのだろうか。

 実は貴族で、あの年で隠し子が居たりするのだったりして。

 鬼人族をユキムラ様以外は知らないと本人が言っていたから、それはないか。

 

 それにしても、この朝の洗濯だけはなかなか厳しい。

 何が厳しいかって、夜伽で汚れた下着を洗濯するのがちょっとねぇ。

 

 ユキムラ様は結構、女の子の下着を汚しちゃうんだよなぁ。

 アミルちゃんに作ってもらった薄手の皮のグローブとお風呂の残り湯と石鹸がなかったら、汚れを落とすのがもっと大変だったよ。

 皮自体はかなり薄いのに丈夫なので、とても使い易い。

 ホント、アミルちゃんには感謝だよなぁ。

 

 温かいお湯が使えるのも、手が冷たくならずに助かっている。

 このお湯がドンドン出てくる筒のおかげで、お風呂のお湯が温い時にはお湯を足して洗濯出来るので汚れを落としやすいし、手に優しいし、とっても快適だ。

 

 アミルちゃんの作った皮のグローブは、寒い冬の日でも食器を洗ったり、洗濯をしたり、水仕事の際にかなり重宝している。

 もちろん、食器を洗うのと洗濯する皮のグローブは別々。

 さすがに下着を洗うのと食器を洗うグローブは別にしないとね。

 アミルちゃんに何セットか作ってもらったから、かなり楽させてもらっているんだよね。

 

 さて、干すのはポーラさんに任せたから朝の生薬生成をしよう。

 

・・・・・・

 

「・・・・・・ 生薬生成!」

 目の前に強壮丸が四個生成された。

 これで、朝の作成分の合計十二個を作り終えたことになる。

 倉庫に今朝生成分の生薬を収納した。

 普通なら三個生成されるところを、ユキムラ様のスキルのおかげで一個余分に生成される。

 

 本当に不思議なスキルだ。

 そのスキルのおかげで生薬が多めに出来るから、薬師ギルドに納品するのが捗る。

 

 それに、この倉庫のスキルも本当に不思議だ。

 探索者のジョブでもないのに、アイテムボックス操作のようにアイテムを出し入れ出来る。

 

 でも、一番の不思議は私のジョブが今、薬師であることだ。

 タケダ家で奴隷として働くまでは、駆け出しの薬草採取士だったのに気づけば『薬師様』だ。

 

 『薬師様』という呼び名は好きではないけど、前に所属していた薬師ギルドでは、薬師のジョブを持つ者をみんなで『薬師様』と呼んで持ち上げていた。

 私の居たギルドには薬師のジョブの者は所属していなかったから、呼び名だけの話だけど。

 そんな存在のジョブに私がこの若さで就いてるなんて、なんだかとても奇妙な感じだ。

 しかも、その『薬師様』が、初級の生薬である強壮丸を日々作っている。

 

 アミルちゃんも隻眼のジョブがそろそろと言いながら、ミサンガをたくさん作っていたりするから同じようなものなのかな。

 ユキムラ様の下で働いていると、何か不思議で変なことばかりしている気がする。

 他家の者には絶対秘密と言われているけど、たとえ言っても誰も信じてはくれないだろうな。

 

 

 薬師のジョブには、上級生薬生成のスキルがある。

 まだ素材も見たこともないけど、エリクサーや自爆玉を生成できるらしい。

 

 いつか、お母さまのためにエリクサーを生成したい。

 ユキムラ様も皮のグローブをアミルちゃんが作ってくれた日、お母さまの左手用で使えないグローブがテーブルに置かれているのを見て、物凄く厳しい顔をしていた。

 

 アレは絶対、エリクサーを手に入れようと考えている眼だと思った。

 

 あの日から数日後、薬師ギルドで入手できる生薬素材について質問されたんだよね。

 エリクサーや自爆玉の素材は通常のギルドで扱う素材で流通していない。

 その2つは迷宮で自分で取りに行くか、オークションで入手するしかないから。

 ユキムラ様は通常の生薬素材の質問をするついでに、エリクサーや自爆玉の素材の入手法を確認したフリをしていたけど、目的はバレバレだよね。

 すごく、嬉しかったけどさ。

 

 お母さまの左腕のケガは、あたしを盗賊の襲撃から庇った時に出来たものだ。

 あの時は二人とも死を覚悟したけど、今はこうして生きて二人で同じ場所で生活している。

 騎士の人達が来てくれるのが、ほんの少し遅かったら二人とも生きてはいなかっただろう。

 でも、お母さまは左手を失い、背中に大きな傷を負い、あたしは首とお腹に大きな傷を負った。

 

 お母さまに庇われて命を救われたけど、何故私を庇おうとしたのかは今でも分からない。

 

 私の本当のお母さまは、かなり前に病気で死んでしまった。

 

 次にお父さまが連れてきたお母さまは、私に辛くあたった。

 そのお母さまのお腹にはお父さまとの赤ちゃんがいたのだけど、流産で亡くなってしまい、それ以降さらに私に辛くあたるようになってしまった。

 お父さまは仕事ばかりに夢中で家庭を顧みる感じではなかったので、凄くつらかったのを覚えている。

 

 その二人目のお母さまも実家が傾きかけると、お父さまは早々に離縁してしまった。

 その離縁する少し前にお妾さんで来たのが今のお母さまだ。

 今のお母さまは二人目のお母さまから私を庇ってくれて、酷い仕打ちを受けていた。

 何故、私を庇ってくれたのか、その時も盗賊の襲撃の時も分からない。

 

 訊いても、お母さまは笑ってばかりで教えてくれない。

 私には分からないことばかりだけど、今のお母さまが私にとって大切な人であることは分かる。

 だから、薬師のジョブを得たのでエリクサーを作って、今よりもお母さまを笑顔にさせたい。

 

 

 ユキムラ様の所に来て、お母さまもあたしも笑顔でいることが増えたと思う。

 お母さまは昔から商人になりたかったと前に話をしてくれたことがある。

 でも、何故、商人を志したのかまでは教えてくれなかった。

 何か誰にも言えない大切なことがあるのかもしれない。

 

 でも、お母さまは今はとても楽しそうに見える。

 私もそれを見ると楽しく感じる。

 

 

 盗賊に斬りつけられて死を覚悟した時、私が思い出したのは二人目のお母さまに辛くあたられた時のことだった。

 死ぬ間際まで辛いことを思い出して死ぬ。なんて酷く惨めな一生なのだろうかと思った。

 

 今は安心して暮らせているけど、いつまた盗賊に襲撃されたり、戦乱に巻き込まれて死ぬ思いをするかも分からない。

 でも、その死ぬ間際に思い出すのは、楽しい思い出でありたいと思っている。

 

 だから、今を楽しく過ごすために全力を尽くしたいと思っている。

 

・・・・・・

 

「ヴィルマちゃん、ちょっと良いかな?」

「ん?なんだ、チクルス」

 ヴィルマちゃんを廊下で見つけたので声をかけた。

 

「ユキムラ様のことで相談があるのだけど」

「主のことか?相談ってなんだ?」

 この子は、ユキムラ様のこと大好きなんだよねぇ。

 正直、なんでここまで好きなのか理解できないけど、おもしろいから別にいいや。

 

 

 一方でイレーネちゃんは、なかなか心を開いてくれないんだよなぁ。

 タケダ家に来た当初に比べればマシになった気もするけど、お母さまは監視の手を緩めるなって言ってるし。

 こっちが監視してるのをイレーネちゃんにはバレてるから、余計距離を縮められないんだよね。

 言葉の問題もあるし、イレーネちゃんはそもそも言葉で相手を信用するタイプには見えないから本当に難しい相手だ。

 

 

「ユキムラ様のところに行くとさ~

 ベッドに寝かされて、肩を揉んだり、腰を揉んだりしてもらえるじゃない?」

「そうだな。主のアレはとても気持ち良いな」

 みんな、ユキムラ様の所に夜伽に行くとやってもらうんだよね。

 何故、奴隷にアレをしてくれるのかまでは分からないけど。

 

「でさぁ、ユキムラ様にやってもらうばかりじゃ悪いじゃない。

 今度、ヴィルマちゃんが行く時にはユキムラ様にやってあげた方が良いと思うよ」

「むっ、確かにそうかもしれない。

 だけど、アレはやり方が上手じゃないと、痛いだけだって主が言っていたぞ」

 確かに、アレはちょっと練習が必要だと思う。

 

「あたしがやり方をヴィルマちゃんに教えてあげるからさ。

 ヴィルマちゃんがユキムラ様にアレをやってあげたら、きっと喜んでもらえると思うよ」

「そうかもしれない。チクルスが教えてくれるのか?」

 二人でヴィルマさんの部屋に向かった。

 

「じゃあ、ちょっとそこに俯せで横になって」

「こうか?」 

 ヴィルマちゃんがベッドで俯せになった。

 

 ヴィルマちゃんは迷宮で鍛えているせいか、お尻の形がとても良い。

 弾力もあって、それでいて柔らかそう。

 

「まずは、こうやって丁寧に優しく揉む感じで・・・・・・」

「うっ、確かに気持ち良い。主のも、こんな感じだったかもしれない」

 ヴィルマちゃんの形の良いお尻を、ユキムラ様の真似を適当にしながら揉みこむ。

 この程度は多分簡単に出来るはず。問題は次だよ。

 

「でさ、次はこんな感じで・・・・・・」

「ちょ、ちょっと待て。そこは指でもみ込む所じゃぁ・・・・・・」

 ヴィルマちゃんのお尻の割れ目のとある箇所をズボンの上から丁寧に揉みこむ。

 

「大丈夫だって、そこがとっても気持ち良いってユキムラ様は言っていたよ」

「そ、そうなのか?」

 まあ、前の夜伽の時に間違って指が触れて、ユキムラ様が大暴走したのだけどね。

 

「ヴィルマちゃんが熱心にやってあげれば、絶対、ユキムラ様が喜ぶに決まってるから」

「そうなのか、じゃあ、次の時には頑張ってやってみようかな」

 ププッ・・・・・・、ヴィルマちゃんはやっぱり表情豊かで良い娘だよな。

 翌朝の二人の反応がとっても楽しみだなぁ。

 

・・・・・・

 

 

 アミルちゃんは、二階の作業部屋か。ドアは開いているな。

 

「アミルちゃん、ちょっと良いかな?アミルちゃん用の下着を繕ったので渡したくてさ」

「はい。いつもありがとうございます。

 私は針仕事が苦手なので、チクルスさんにはとっても感謝しています」

 ホント、この子は純真で可愛いねぇ。

 ユキムラ様のお気に入りってのも納得だわ。

 

「あれっ、チクルスさん、

 これは私用のではなくてヴィルマさんかイレーネさん用ではないですか?」

「ん?なんで?」

 アミルちゃんは私が渡した下着をヒラヒラさせている。

 

「だって、ここに大きな穴が開いてるじゃないですか。

 これって尻尾を出す穴ですよね」

「ああ、違う違う。これでアミルちゃん用の下着で合ってるよ」

 アミルちゃんは首を傾げている。

 

「そうなのですか?でも穴が開いてるってことは女の子の日に使うものですか?」

「違う違う。これはユキムラ様の寝所に行く時に履くものだよ~」

 ちゃんと説明しないと誤解されてしまう。

 

「えっ、そうなのですか?でも、この穴はどうして・・・・・・?」

「そんなの、ユキムラ様を喜ばすために決まってるじゃないの!」

 アミルちゃんはジト目でこっちを見てくる。ホント、この子は可愛いなぁ。

 

「ユキムラ様って、

 時々ヴィルマちゃんやイレーネちゃんの尻尾が出てるところをスッゴイ見てるよ。

 これ履いてアミルちゃんが寝所に行ったら、ユキムラ様の疲れも吹っ飛ぶと思うよ」

「何か別のモノが吹っ飛ぶ気がしますけど、本当に大丈夫なのでしょうか?」

 理性が吹っ飛ぶかもしれないけど、元々、ユキムラ様は夜になると理性を失ってるしねぇ。

 

「大丈夫だって。

 ユキムラ様も時々、独り言で『考えたら負けだ』って言ってるじゃん。

 こういうのはやってみてから考えれば良いのだって」

「そうですか?何かチクルスさんに揶揄われてるような気がするのですけど・・・・・・」

 こういうのは勢いでいかないとね。

 

「そんなこと無いって、今日、ユキムラ様の寝所に行くのってアミルちゃんだよね。

 早速、使ってみてよ」

「えぇぇ、今晩使うのですか?

 確かに今晩、ご主人様の所に行くようにエネドラさんに言われましたけど」

 アミルちゃんは混乱しているなぁ。このまま押し切っちゃおうっと。

 

「そうそう。今晩使ってみて、明日の朝、使ってみた感想を教えてよね。

 せっかく、かなり時間をかけて作ったのだから絶対感想を聞かせてよ」

「そうですか、そんなに一生懸命作ったのですか。

 うーん、じゃあ使ってみますね」

 アミルちゃんはモノ作りに一生懸命だからね。

 その辺りを利用するとスンナリ話が通るんだよなぁ。

 

「でも、これって、どっちが前でどっちが後ろなのですか?

 穴が開いてる方が前じゃないですよね?」

「うーん、穴が開いてる方を前にしても良いけど、

 最初は穴が開いてる方を後ろにした方が良いかな。

 今日は下はその下着だけ着けて寝所に行って、

 ユキムラ様の前を歩くようにすると効果的だと思うよ」

 アミルちゃんは、ギョっとした顔になって、こちらを見つめてきた。

 

「えぇ、そんなの恥ずかしいじゃないですか?」

「アミルちゃん、分かってないなぁ。それがユキムラ様の求めていることなんだってば」

 アミルちゃんの表情が落ち着かない感じになってきた。

 コレ、コレだよ・・・・・・あたしが求めているものは。

 

「普段、アミルちゃんが絶対やらないようなことをユキムラ様に見せるんだって。

 そうすると、ユキムラ様の悩みとかがサーっと消えてなくなって、

 アミルちゃんはとっても感謝されると思うよ~」

「本当ですか?何かとっても嫌な予感がするのですけど」

 もう一押し何かないかなぁ。

 

「最近、この家もたくさん人が増えてきたから、

 初めからいるアミルちゃんや私なんかは、いっぱい頑張らないと、

 存在感がなくなっちゃうよ。

 私達の頑張りをちゃんとユキムラ様に知ってもらわないとダメだと思うんだよね~」

「そうですか。

 何か誤魔化されてるような気がしますけど、チクルスさんがそこまで言うのなら

 頑張ってみます。結果は明日・・・・・・お話ししますね」

 そうそう、この恥じらいがたまんないのよねー。

 

 結果なんて聞かなくても、明日、それを洗濯するのは私だから一目瞭然なんだけど。

 でも、反応がおもしろいから絶対確認しないとね~。

 

「じゃあ、アミルちゃん、今晩は頑張ってねぇ~」

「はい。自信はありませんけど頑張ってみます」

 大丈夫、大丈夫。ユキムラ様はアミルちゃん大好きだからきっと大丈夫!

 

 作業部屋を出て、一階に向かう。

 

・・・・・・

 

 さて、次は誰で遊ぼうかな・・・・・・おっ、レイモンド君、発見。次は彼にしよう。

 

 彼らは今日来たばかりで二人とも私より年上だけど、二人を見てるとなんだかムズムズしちゃうんだよねぇ。

 

 

・・・・・・




お読みいただき、ありがとうございました。
家事奴隷&薬師の日常を描写しながら、チクルスの内面を表現するという閑話でした。

洗濯での生々しい表現は、ちょっとニッチなところを狙い過ぎたかも。

イレーネのブラヒム語ネタ(31話「説明困難」の中の下り)も入れたかったのですけど、時系列的に合わなかったので断念しました。

本作主人公が、「自分のやりたい事とタケダ家への貢献を重ね合わせることを考えてほしい」と言われた結果が、このチクルスの行動に繋がってるのかもしれません。
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