異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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048.災害救助支援

 外から聞こえる音に目を覚ますと、横にはエネドラの姿が。

 あの音はヴィルマとイレーネの訓練の音か。

 木刀を振り回して、ここまで音が響くというのも大したものだ。

 それよりも、今から訓練して更に一日中やり続けそうな根性と体力の方が凄いか。

 

 おかげで俺はエネドラの寝顔が見られて満足だけど。

 昨晩のエネドラの助言に従って目の前のことに集中した成果だろうか、彼女の体力の限界を超えて戦ってしまった。

 

 今は静かな寝息を立てて寝ている。

 昨日の少女のような面影はなく、大人の女性の表情だ。

 先のない左腕が目についたので、毛布をかけようとして・・・・・・目を覚ましてしまったか。

 

「おはよう」

「・・・・・・おはようございます。旦那様。あまり見つめないで下さい」

 昨晩の拗ねたような表情ではなく、これは怒っているのかもしれない。

 でも、ちょっと押し倒したい衝動に駆られる。

 

「目の前の事に集中しているのだが・・・・・・」

 エネドラの抗議の目を無視して、エネドラに覆いかぶさった。

 

・・・・・・

 

「今日はハルツ公爵領の対応で忙しいのでは?」

 朝から一戦終えても、エネドラの抗議の目は続いている。

 

「そうだな。

 朝食を食べて、ゆっくりと来てもらえれば良いと言われたので、まだ大丈夫だろう」

 笑いながら、エネドラの肢体を眺める。

 

 俺の冗談に返事はなく、右手の指先が光の少し射し込む窓の方を指している。

 

 あっちを向いていろってことですか。

 

 仕方なく、ベッドを出てズボンを履き、シャツを着ながら指さされた窓に近づいた。

 窓を開けると、ヴィルマとイレーネの訓練は終わったのか静かなものだった。

 

 さっきの訓練って、どこまで本気でやっていたのだろうか。

 ケガしないように一応手加減している?

 そんな風には全然思えない音だったよな。

 

 後ろから、衣擦れの音がわずかに聞こえる。

 エネドラが着替えているのだろう。

 これ以上の続きの可能性は無くなったか。

 

(コンコン、ガチャッ)

 

「主、朝食の準備が出来たらしいぞ。

 イレーネが凄い剣幕で待っているから、急いだほうが良いぞ」

 ヴィルマが窓際に立つ俺の方を見ながら、捲し立てる。

 迎えにきてくれたのは良いけど、返事を待ってからドアを開けろよ。

 

 お前の辞書には手加減という言葉はないのに、お約束という言葉は登録されているのだな。

 びっくりしたよ。

 

 エネドラは毛布の中に引っ込んでしまったようだ。

 

(スン、スン・・・・・・)

 

 ヴ、ヴィルマ・・・・・・匂いを嗅ぐな!いろんな匂いが漂ってるかもしれないけど。

 小首を傾げているけど、匂いの元を特定しなくて良いからな。

 

「ヴィルマ、直ぐに行くから先に降りていろ」

「分かった。急いでね~♪」

 ヴィルマをドアの向こうに押しやった。

 迷宮から帰る時とやってることが同じだ。

 

「ヴィルマには後で言っておきますから」

 毛布の中から顔だけ出しているエネドラがちょっと可愛い。

 

「何を言っておくの?」

「旦那様が気にかけることではございません!」

 俺の軽口に対して、エネドラの背後に般若の残像が浮かんでしまったような。

 君子危うきに近寄らず。話題を変えよう。

 

「エネドラ、風呂に行くか?行くならゲートを開いてやる」

「・・・・・・お願いします」

 再び毛布をかぶってしまったエネドラから、か細い声が聞こえた。

 

 壁にワープゲートを開いて風呂場に直接繋いだ。

 俺はエネドラの方を見ないように、別の壁の方を向いている。

 

 やがて、エネドラの気配はゲートの向こうに消えていった。

 振り返ると、乱れた掛け布団の跡しかない。

 靴も一緒に持っていったか。まあ、それがないと後で困るからな。

 

 この状態もチクルスとかに筒抜けかと思うと頭が痛い。

 パーティ編成を解除しないのって、本当に良いのだろうか?

 

 余計なことを考えながらも、お湯を出して手早く身支度を整える。

 俺には、風呂に入っている時間も勇気もない。

 朝からラブホで時間ギリギリまで楽しんで、アタフタ帰るカップルのようになってしまった。

 

・・・・・・

 

 一階に急いで降りて食卓に着いた。

 

「エネドラさんがまだ・・・・・・」

「先に朝食を頂こう。エネドラは何か用事があるようだ」

 レイモンドの気を利かせた言葉を遮って、食事を始めた。

 

 チクルスは肩を震わせてはいないものの、ニマニマしている。

 昨晩も今朝のことも、こいつは一切関わってないはずなのだがムカつくのは何故だろう。

 

 食事中の雑談は和やかな雰囲気。

 護衛組と適当に組んで買物に行ったりするようだ。

 エネドラがどういう組み方にしたのかまでは関知していないが、ポーラとレドリックの一組とその他大勢とかだろうか。

 

 今日は休暇扱いだから、エネドラから皆に小遣いを渡すように頼んでいる。

 昨晩のうちに渡してあるはずだ。

 

 拠点にストックしてある資金からエネドラの裁量で渡して良いと伝えてある。

 ストックしてある資金は、俺が初めに数万ナール入れてからは減る一方だったが、チクルスの薬師ギルドの納品代金を入れたので増えている。

 大した金額でなければ、普段の買物は拠点の資金を使うようにエネドラには伝えている。

 

 今日は俺はゆっくりと外出だが、皆の方がいそいそと食堂から居なくなっていった。

 いつもとは違う風景。

 

 テーブルに俺とアミルだけになったところで、エネドラがやってきた。

 チクルスがエネドラの食事を配膳して去っていった。

 エネドラの表情はいつものクールな表情に戻っていた。ちょっと残念な気分。

 

「旦那様、昨日お話ししていた一つ目の件は旦那様の素案の通りで宜しいかと。

 我が家にとっても、あちらにとっても損はない話だと思います。

 二つ目の件は、もう少し私の方でも考えてみます」

「そうか、じゃあ機会があれば相談してくるな」

 プライベートモードからビジネスモードに完全に切り替わってしまった。

 

「今日は俺のパーティからは皆を外してある。

 災害救助支援では他の者のパーティに入ったり、こちらのパーティに入れたりするから」

「はい。承知しました」

 ちょっと距離を置かれてしまったかな。それでも今日は休日を楽しんでほしい。

 

「じゃあ、俺は冒険者ギルドに行ってくるな」

「はい。いってらっしゃいませ」

 食事中のエネドラを残して、俺は食堂から立ち去った。

 

 後ろから何故かアミルが付いてくる。

 エネドラと今日の買物の話をしなくても良いのだろうか?

 

「ご主人様は今日はお昼ご飯はどうするんですか?」

「ん?多分、作業で昼飯を抜くか適当に食べられる場所を探して外食かな」

 俺の言葉にアミルは背中から布の袋にはいったモノを出してきた。

 

「もし、軽いモノでよろしければコレを・・・・・・」

「えっ?ありがとう。とっても嬉しいよ」

 あらら、ちょっと本当に嬉しいよ。

 

 俺が次の言葉をかける前に踵を返して去っていってしまった。

 遠くに、こちらのことを窺うチクルスの顔が半分だけ見える。

 

 どうせ企むなら、こういうことだけに限定してほしい。

 まあ、感謝の言葉だけは心の中で唱えておくけど。

 

 

・・・・・・

 

 アミルからもらった弁当をリュックに入れて出発の準備。

 ジョブ編成は1stジョブを冒険者にして、百鬼夜行以外はMPの上昇値が大きなジョブをセット。

 

ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)

冒険者Lv31 英雄Lv52 勇者Lv47 百鬼夜行Lv52 遊び人Lv52 魔道士Lv52 神官Lv50 

 

 百鬼夜行をセットしているのは、戦闘に入ることはないとは思うが念のためだ。

 

 1stジョブを冒険者にしたので、経験値系を全て外して、残りをMP回復に振った。

 

ボーナスポイント(228(初期値198+30(Lv上昇分))

・キャラクタ再設定(1)

・武器5(フラガラッハ)(31)

・防具5(アルフレイル)(31)(防御力2倍、魔法ダメージ削減、状態異常無効、レベル補正無視)

・鑑定(1)

・パーティジョブ設定(3)

・パーティ項目解除(1)

・異世界言語(10)

・索敵(5)

・拠点構築(5)

・MP回復速度二十倍(63)

・セブンスジョブ(63)

・詠唱省略(3)

・パーティライゼイション(1)

・ワープ(1)

余剰ポイント(9)

 

 こんなところかな。さて、出発するか。

 公爵領は北側で寒いのだったっけ。雨や雪とかの関係もあるのでコートを着ていかないと。

 四本腕を隠すには丁度良いから、長めのコートを着ていこう。

 

 食堂のエネドラ達に声をかけて、玄関からクーラタルの冒険者ギルドにワープした。

 

・・・・・・

 

 ギルドの指定場所に行くと、昨日俺に声を掛けてくれた職員が目に入った。

 まだ、集合時間までには時間があるのだろうか。

 暇つぶしに、その辺りを行き来する人を鑑定で確認する。

 

 特段変わった者は居ないが、エルフは当たり前だがハルツ公爵領の人っぽいのが多い。

 時間になったのか、職員が声をかけ始めた。

 騎士団の冒険者のパーティに順番に入るように伝えられた。

 

 俺も適当にパーティに入れてもらい、ギルドの壁からハルツ公爵領のボーデの冒険者ギルドに移動した。

 さすがに直接は城に行かないのか。

 

 ギルドを出て、集団でボーデの城に向かった。

 連れの冒険者のくしゃみが雪を落とすというイベントがマンガ版にはあったので、一番初めに出て回避することにしたが、残念ながらイベントは発生しなかったようだ。

 あれはギルドではなく別の場所だったか。

 まあ、雪をかぶらなかったのだからヨシとしよう。

 

 ただ、防寒対策をしてこなかった者は寒そうに震えている。

 俺はコートを羽織ってるから平気だ。やっぱり準備というのは必要だ。

 

 このコートは腕を隠すためにも必要だから、貸してやる訳にはいかないしな。

 

 城の正面ではなく、裏手に回った門から入った先の広場に連れていかれた。

 

 多くの人間が集まり、物資が集積されている場所だ。これも原作の通りなのだろうか。

 原作では分からなかったが、結構な人間と物資の数に思える。

 今回の水害の規模を物語っているのだろうな。

 

 そして、ボーデの城の圧倒的なデカさ。

 この世界の建築水準が本当に分からないな。

 これほどの建造物を作るのは結構な技術力が必要な気がするのだが。

 

 丘に適当に建物を建てて大きく見せているのではなく、建物そのものが本当にデカい。

 水害ではなく、地震とか起きたら大丈夫なのかと余計な心配をしてしまう規模だ。

 

 俺の無駄な心配を余所に、物資輸送作業が淡々と始まった。

 俺の組は、俺も含めたギルドからの派遣組3名と城の冒険者1名と役人っぽいエルフ3名。

 

 まずは集積所で俺とペアになる役人の指示で物資を次々にアイテムボックスに入れる。

 役人は収納した物資を確認しながら記録していく。

 記録した書類は俺自身が目的地で別の役人に渡すそうだ。

 初回は一人の冒険者にギルドから派遣された者3名が同時に運んでもらうので、一番収納量が少なかった者に合わせて他の者は収納作業を打ち切って、一度、目的地に運んでもらう。

 

 俺達の組の目的地はターレのようだ。ここは原作通りか。

 ターレにある集積場の役人にボーデで記録した紙を渡して、取り出した物資を確認してもらう。

 

 受け渡しと確認が終わったら、ボーデに行きたい人が居ればパーティに入れてボーデに運ぶ。

 居なくても物資を取りに戻らなければならないので、ボーデに戻る。

 

 ボーデに戻ったら、ペアの役人の指示で物資を収納し、その記録をもらってターレに飛ぶ。

 アイテムボックスに入らない物資を持った人員をパーティに入れてターレに一緒に飛ぶ。

 ひたすら、それを繰り返す感じだ。

 

「アイテムボックスは全て空けてきたので2500個は入るはずだ」

「そうですか。それは助かります。往復する回数が減るので」

 往復時間よりも、収納と取り出しと記録の時間が圧倒的にかかるのだが、そういうものか?

 

 ボーデでひたすらアイテムボックスに物資を仕舞う。

 これがなかなか面倒くさいが仕方ない。

 

 ようやく収納したところで、手に物資を持った人員をパーティに入れてターレに移動。

 ターレで記録を渡して、アイテムをひたすら取り出す。

 後は記録の突き合わせが終わるのをひたすら待つ。

 

 この後、これをどれくらい繰り返すのだろうか?

 もう、無心でやるしかないか。

 記録と突き合わせている役人の作業を待つ間、視線を別に向けると、騎士団と思しき人員が炊き出しをやっているようだ。

 

 災害救助支援だから、そういった事もあるのだろう。

 子供は元気に走り回っているが、被災した大人の方は疲れた顔をしている。

 いや、子供の中にも元気の無さそうな者はいるか。被災してツライ目にあったのだろうか。

 今回の物資輸送で、少しでもマシな状況になると良いのだが。

 

 ひたすら往復活動を繰り返すと、ペアの役人から休憩を告げられた。

 

 ちょうど良いので、ベンチっぽい場所に座ってアミルの用意してくれた弁当をパクつく。

 少し寒い中で食べるアミルの弁当に癒される。

 

 出し入れと確認に時間がかかるので、MPがさほど減った感じもしない。

 待ち時間が多かったが、収納場所を2500箇所にしておいたのは正解だったかもしれない。

 

 まだ食っている途中なのだが、お目当ての人が来てしまったようだ。

 

(鑑定)

 

ブロッケン・ノルトブラウン・アンハルト(エルフ族 ♂ 35歳 公爵)

聖騎士Lv14

装備 オリハルコンの剣 身代わりのミサンガ

 

 仕方なく、食いかけの弁当をリュックに仕舞って、原作と同じく立ち上がって目礼をする。

 

「余のことを見知っておるのか。よい。しのびじゃ」

 

 本当に、「・・・・・・じゃ」とか言うのだな。広島弁を思い出してしまった。

 まあ、美声だから広島弁には聞こえないけど。

 

「余のことをどこかで見たのか?」

 

 公爵が俺の隣に座って、普通に話しかけてきた。

 

「確か、どこかで以前・・・・・・」

「そうか」

 

 イケメンに声をかけられても別に嬉しくはないが、原作の有名人かと思うと少し心が躍る。

 

 騎士団の者が走ってきて、公爵に話しかけてきた。

「閣下」

 

 あ、こっちも有名人か。

 マンガ版だとイケメンには思えなかったけど、今見るとカリスマ性のあるイケメンだわ。

 

ゴスラー・ノルトブラウン・アンハルト(エルフ族 ♂ 46歳 子爵)

魔道士Lv61

装備 ひもろぎのスタッフ 身代わりのミサンガ

 

「いかんな。ここでは話もできん。ついて参れ」

 

 公爵とはこれからも交流を持ちたいので、付いていくしかない。

 

「ハルツ公領騎士団長のゴスラーと申します。こちらにお越し願いますか」

 

 こちらに異論はない。そして、やっぱり騎士団長なのか。

 取り急ぎ、ゴスラーの後に続いた。

 

「しばらく冒険者殿をお借りする」

「かしこまりました」

 ゴスラーが先ほどまで俺とペアだった役人っぽい人に一声かけた。

 

 ゴスラーに続いて入った城の廊下は結構、薄暗い。

 俺のように拠点構築の照明設備なんてないから、灯りの油も必要だし、城だと窓をたくさん作ると防衛上問題になるからだろうか。

 それ以前に耐久度も気になるな。

 

 しばらくすると執務室っぽい部屋に公爵とゴスラーが入っていくので、俺も続いた。

 

「余の部屋じゃ。自由にかけてくれ」

 

 一礼して、豪華なソファに座らせてもらった。

 

「このたびの領内の災害救助への合力、かたじけない。余からも礼を申す」

「いえ、日当も頂いてるのですから当然のことです」

 本当は公爵とのコネ作りのためですとは言えない。

 

「今年は雪融けが少し遅いようじゃ。

 春の大雨のシーズンと重なってしまい、例年より被害が大きくなってしまった」

 こちらの世界でも大雨ってあるのか。

 こっちに来てから雨に降られていないけど、俺は実は晴男?

 

「このたびのご助力に感謝いたします」

 ゴスラーからも礼を言われてしまった。

 二人とも原作通り、エルフ以外でも礼を尽くす人柄なのだな。

 

 なんだっけ、この流れだと、平民の冒険者なんかを執務室に入れても良かったのかとか質問しないとマズイのだっけ?

 

「優秀な冒険者と聞き及びました。ターレの村への物資輸送をすでに終えてしまったそうです」

 さすが苦労人。こちらの意図を察して先回りしてくれた?

 

「ふむ。ターレへか」

 

「ターレというのは領内ではここから一番遠くにある村です。

 遠くの場所へのフィールドウォークは大変です。

 ギルドにお願いした冒険者の中で

 他の近い輸送地点も含めて既定の回数を終えてるのは一人だけだそうです」

 まあ、セブンスジョブでMPモリモリにしていて、収納箇所もフルに空けたからな。

 

「どうじゃ。余の騎士団に入るつもりはないか」

「いえ。まだ各地を巡って知見を深めたいものですから」

 人間族がどうとか言われなかった。言われたら、嘘つくかどうか考えていたのだけど。

 

「そうか。仕方あるまい。

 何か困ったことがあったら、騎士団長のゴスラーを訪ねてくるといい。

 エルフの中にはエルフ以外を見下す輩もおる。

 助けになろう。こちらからも何か頼むことがあるかもしれん」

「はっ、その時はよろしくお願いいたします」

 微妙に人間族のところが回避されているのは、何か思惑を感じなくもない。

 実はバレているとか?

 

 まあ、訪ねてこいという言質はもらった。これで目標達成か。

 

「では。まだやることがあるかもしれないので、この辺で」

「引き止めて悪かったな。許せ」

 公爵が謝罪の言葉を述べているけど、イケメンが言うと恰好良く感じるから不思議だ。

 

 執務室を出て、ゴスラーとは別の騎士団員に出口まで案内された。

 不審な者が留まらないようにするための警戒だろうか。

 

 元の場所に戻って、ペアとなった役人の人に声をかけた。

 

「あなたの本日の活動は終了です。お帰りになってもらっても結構です」

 

 じゃあ、輸送のノルマをこなしたし、公爵に顔も売れたから帰るとするか。

 

 

 

 ・・・・・・じゃないよな。あんな顔を見ちまったら。

 ターレの所で見た、落ち込んだ子供と大人の顔がチラつくんだよ。

 

 

「やらない善よりやる偽善」か。

 この行為が公爵に対する売名なのかどうかなど、どうでもいいや。

 自分の思うがままにやらせてもらおう。

 このままだと俺が気持ちが悪いから、やるだけだ。

 

 近くに居た騎士っぽい者に声をかけた。

 

「あの、輸送作業の自分の分担分を終えたのですが、まだ余裕があるので

 進捗が進んでない場所の輸送を手伝いますけど、どうでしょうか?」

「えっ、それは助かりますけど、日当は規定以上には支払えないのですよ」

 若い騎士っぽいエルフは困惑気味だ。

 

「ああ、日当は既にもらいましたから、これ以上は結構です。

 昔、この地域のあたりの人に助けてもらったので、そのお礼みたいなものです。

 こんな時はお互い様ですからね」

「そ、そうですか。非常に助かります。

 ちょっと待っていて下さいね。全体の進捗を管理している者に確認してきますので」

 とりあえずは、新しい分担が決まるまでは近くのベンチに座って待つことにした。

 

「では、こちらの者に新しい分担の作業場所まで案内してもらって下さい」

「ああ、よろしくお願いします。アイテムボックスは2500個まるまる空けていますので」

 俺は紹介してもらった騎士団所属の冒険者っぽいエルフに付いていく。

 

 後は今までと同じだ。

 ひたすら収納して、記録を持って言われた場所に行って引き渡して、たまに人員を輸送して・・・・・・の繰り返し。

 俺に新しく割り当てられた場所はハルバーだったが、その輸送もノルマをこなしたところで、お役御免となった。

 

 少しは役に立っていると良いのだけどね。

 次にボーデに来るのはいつになるのだろうか。

 ベンチで再びアミルからもらった弁当の残りをパクつく。

 

 ここでのやりたいことは全て終わったので、ベイルの冒険者ギルドにワープした。




お読みいただき、ありがとうございました。

■お詫びと訂正
何度か登場しているベイルのゴッゼル様ですが、初登場の際の階級は「士爵」でした。
それ以降、「子爵」と誤記のまま気づくことなく、今に至っておりました。

正確には初登場時の階級「士爵」となります。
自分で考えた設定を間違えてしまい申し訳ないです。

一応、本編の世界観では、「士爵」は領有する土地のない貴族で、「子爵」は公爵、侯爵、伯爵に次ぐ階級の位置づけで土地持ちの貴族ということになっています。
「子爵」の下が男爵となり、こちらも土地持ちの中では最下位の階級となり、その下が「士爵」ということにしておりました。

本日、修正しました。大変、失礼しました。訂正した話は以下の5つの話です。
003.ソロ攻略
042.初めては塩苦い
043.追試終了
046.クエスト一覧
047.呼ばれた

ゴスラーも私の方で勝手に「子爵」に任命しましたが、本編では一応正しい記載のつもりです。
※ゴスラーの鑑定結果を記載していて、今回のミスに気づきました

ゴスラーは流石に公爵領の騎士団長を務めるくらいだから、土地持ちにしようという感じです。
名前からするとゴスラーも公爵領の継承権があるのでしょうかね。ただの推測ですけど。

エステルは原作では男爵なのですよね。
男爵は本作の世界観でなくとも、それほど高い位には思えないですが、帝国解放会会長でも俗世の階級は低いのは何故なのでしょうね。
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