異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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049.士爵との取引(その1)

 ベイルの冒険者ギルドを出て、騎士団の詰所に向かった。

 門を通り抜けると、いつもの門番の兄ちゃんがいたので声をかける。

 

「よう、調子はどうだい?」

「おっ、あんたか。まあ、控え目に言って最悪の状況だな」

 率直に言うとどうなるのか興味があるが、そんな冗談が言える雰囲気でもなさそうだ。

 

「そうか、この前あんなことがあったのだからな」

「それで、今日も盗賊の懸賞金か?」

 ここに来る時は、それ以外の用事で来たことがないものな。

 

「いや、今日は話がしたくて来たんだ」

「話?俺にか?」

 こいつとは別の機会に話をしてみたいが、今はその時じゃない。

 

「いや、あの時の爺さんと話をしたくてな」

「えっ、爺さんと話をするのか?」

 俺が爺さんと呼ぶのもどうかと思うけど、お前も爺さんって呼ぶのだな。

 お前の上役じゃないのか?

 

「そうだ。爺さんと面会できるように話を通してもらえないだろうか?

 今は多分、忙しいだろうから簡単ではないだろうが、そこを曲げてお願いしたいと思ってな」

「うーん。まあ話を通すのは良いけど、さすがに何も説明せずに面会させろは難しいだろう?

 面会するための理由を少しだけでも教えてもらえないか?」

 そりゃそうだよな。

 

「俺は迷宮探索者もやっているけど、商会も営んでいるんだ。

 商会の方はベイルではなくクーラタルの方で拠点を構えているのだけど、

 この前ベイルの商人と話をした時に、ここの騎士家の一つが傾きかけているって聞いてな」

「ああ、まあ・・・・・・それはうちのことだな」

 簡単に認めるのだな。それだけ追い詰められているってことか。

 

「それでベイルの治安というか、街にとって好ましくない事になりつつあるって聞いてな。

 で、及ばずながら我が家の方から協力できることの提案をしたいと思ってな」

「協力?お前がか・・・・・・いやお前の家がってことか?」

 俺は頷いた。

 

「協力する具体的な内容は、さすがに立ち話って訳にはいかないので、

 爺さんとの面会で説明したいということだ。

 さすがにあの士爵様といきなり話をする訳にはいかないから、

 間に話が出来そうな者を入れたかったという訳だ」

「うーん、それだけでは何とも言えないが、

 面会の申し入れがあったと伝えれば話くらいは聞いてもらえるかもな。

 一応、民との会話を重視するということは普段から爺さんも公言してるからな」

 ふーん、若干上から目線が気になるけど、まあ貴族だし仕方がないか。

 

「で、今から面会するのか?」

「今からで良いのならお願いしたいが、

 いきなり今からってのはさすがに無理じゃないのか?

 面会の要望を出して、そちらの指定された日時で会いに来るとかそんな感じじゃないのか?」

 士爵がどの程度偉いのか分からないが、その腹心だって即日会ってはくれないだろう。

 

「どうだろうな。

 うちが落ち目になってから近寄ってくる者が減った気がするので、

 面会そのものは全くないからなぁ。あとは爺様の判断次第だろうさ」

 

 

・・・・・・

 

 

 なんかいろいろとおかしい。

 

 前に懸賞金を受け取った際に連れていかれた士爵の執務室に俺は座っている。

 俺から見て右側から門番の男、女士爵様、爺さんが座っている。

 

 いきなり面会が叶って、女士爵様までいる・・・・・・のは、まあヨシとしよう。

 誰だって暇な時はある。

 

 

 俺の目がおかしい?いや鑑定がバグっているのか?

 

ドーガ(人間族 男 27才)

戦士Lv17

装備 硬革の鎧 革の靴

 

ラディア・マキシナント・ゴッゼル(人間族 女 28才 士爵)

騎士Lv8

装備 マジカルアーマー 加速のブーツ

 

カミーユ・ロザリンド・アンゲリナ(人間族 男 54才)

騎士Lv32

装備 鉄の鎧 硬革の靴

 

 

 前に魔物部屋で鑑定した時は気づかなかったけど、真ん中の女士爵様と左隣の塩爺の名前、逆じゃない?

 

 この爺さんの名前がカミーユ?

 カミーユって女っぽい名前な気がするのだけど。

 

 爺さんの名前の方が、ゴッゼルとかマキシナントとかの方が合ってる気がするのだけど。

 ゴッゼルは家名だから良いとして、『マキシナント』って必殺技っぽい名前の響きだし。

 

 女士爵様の方が、カミーユとかロザリンドの方が雰囲気に合うよ。

 

 実は二人はチェンジリングのペア?・・・・・・それはないか、年齢が離れすぎている。

 

 

「それで、何やら話があるとか?」

 

 初めに面会を希望したカミーユ爺さんが俺に問いかける。

 

「面会の希望を受けて頂き、ありがとうございます。

 自分はタケダ家の当主でユキムラ タケダと申します。

 私は迷宮探索者でもありますが、タケダ家は商会の方も営んでおります」

「ほう、商会か。今日の話は商売に関連する話かな?」

 爺さんは俺を値踏みするような視線を向けてくる。

 

「商売に関連する話でもありますが、このベイルの街の治安に関する話でもあります。

 率直に言いますと、ベイルの治安維持のお手伝いをしたいということになります」

「治安維持の手伝いか。

 治安維持は騎士団の役割だが、

 其方は我々だけでは治安維持に不安があると申しておるのか?」

 俺の不安というか、ビッカーを始めとしたベイルの街の商人連中の不安なのだが。

 

「いえ、不安を感じている等ということではございません。

 純粋にベイルの治安維持を望む者の誠意と受け取って頂ければ」

「はっ、誠意か。何か魂胆があっての誠意ではないのか?」

 少し嘲笑うような態度だ。

 

 だけど、この爺さんはさっきも索敵で確認したけど青色なんだよな。

 鑑定にバグ疑惑を感じたけど、索敵にもバグ疑惑を感じてしまう。

 

「商売人なので、誠意とは別に利益を追い求めることはございます。

 ただ、利益を求めるにしても、この地が安全である必要がございます」

「遠回しに言っておるが、結局は自分達の利益のためではないのか?」

 この爺さんを攻略するには、どのアプローチが最適なのだろうか。

 

 アプローチの矛先は、この爺さんではなく真ん中のゴッゼル士爵にした方が良いのかな。

 

「爺ぃ・・・・・・カミーユ、この者の具体的な提案を聞いてから判断すれば良いだろう。

 話を全て聞かずに退けるのは、貴族たるものの振る舞いに相応しくないのではないか?」

「むっ・・・・・・」

 おっと思わぬところで援軍が。

 

「其方の話には続きがあるのだろう?それをまず聞かせてくれ。

 そのうえで、我々騎士団の考えと合ってなければ認めることは出来ぬ。

 合っているのなら、協力することは出来るかもしれない」

「姫っ・・・・・・士爵様、そのような言葉、軽々と申して良いことではありませぬぞ」

 もう、爺ぃでも姫様でも、普段通りの喋り方で会話してもらっても良いのだけど・・・・・・。

 

 右に座っている門番の男・・・・・・ドーガに目を向けると苦笑いしている。

 

「では具体的な提案なのですが、簡単に言ってしまうと

 このベイルの街のスラム地域の盗賊を一斉摘発することです。

 士爵様の部隊と我々で2組程度の部隊に分かれ、

 それぞれの方向からスラム地域の住民にインテリジェンスカードの提示を求めて、

 盗賊と判明した時点で捕縛するか斬首するというものです」

「其方、商売人を名乗っておきながら、やろうとすることは随分と過激な手法を取るのだな」

 爺が俺を睨みつけるように見据えてくる。

 

「全てはこのベイルの街のためでございます。

 盗賊でなければ、インテリジェンスカードを求められても何の問題もございません。

 抵抗するのなら、この街の治安維持に協力できないということで

 相応の対応を取るのもやむを得ぬ仕儀かと」

「ふむ。抵抗するのなら武力で鎮圧するということか」

 ゴッゼル士爵様は躊躇してるのかな。だが、そのような余裕があるのだろうか。

 

「武力を使うかどうかは、抵抗する者の出方次第ですね。

 相手が武力で応じるのなら、こちらも相応の対応を取るということです」

「逃げる奴らも出てくるんじゃないっすかね?」

 ここで、ドーガが初めて意見してきた。

 

「そうですね。逃げる輩も出てくるでしょう。

 その場合も必要に応じて武力で威圧や鎮圧する事も考えなければならないでしょう」

「ふむ・・・・・・」

 ゴッゼル士爵は何か考え込んでいるようだ。

 

「その程度のことであれば、其方の助けを借りなくとも、

 我々騎士団だけで対応出来るとは思わぬのか?

 其方は我らを舐めているのではないのか?」

「いえ、そのようなことはございませぬ。

 我々の助けを借りぬとも、

 この騎士団にいらっしゃる二つの騎士家が協力して事にあたって頂けるのなら、

 我々としても否やはありませぬ。

 結果として、このベイルの治安が維持されれば良いのですから」

 ドーガが少し肩を震わして笑いを堪えている。お前、面白がっているだろう?

 

「ベイルの治安を維持する以外にも、其方としての利が他にあるのであろう?

 それについてはどう考えているのだ?

「そうですね・・・・・・」

 さすがにゴッゼル士爵は、俺がベイルに来てからのこの騎士団とのやりとりがあるから、思い至ってるのだろうな。

 

「そうですね。盗賊の懸賞金については折半にして頂きたく考えます」

「はっ、馬脚を露したな。結局のところはそれが狙いか?」

 爺さんは俺を小馬鹿にしたように視線を向けてくる。こいつ本当に青なのか?

 

「危険を冒すのですから、さすがに無報酬という訳には参りませぬ。

 必要経費と思って頂ければ」

「其方は知らぬかもしれぬが、騎士団が盗賊を討伐するのは義務なので、

 我々は盗賊討伐のための報奨金を受け取れぬのだ」

 そうなのか。盗賊討伐は通常業務だから特別手当は出ないと。

 

「では、懸賞金は我々が全額受け取った後、半額をお納めいたします」

「馬鹿者!其方は我々に賄賂を受け取れと申しておるのか?話にならぬ」

 爺さん、頭堅いな。

 

「いえ、賄賂ではございませぬ。

 ベイルの街の治安維持に腐心して頂いた騎士団に対する誠意・・・・・・寄付でございます」

「戯言を・・・・・・」

 爺さんはともかく、ゴッゼル士爵様はどう思っているのかね?

 

 士爵が首を縦に振ってくれないと話が進まないのだけど。

 

「もう、こいつの言う通りで良いのじゃないですか?

 盗賊もいなくなるし、俺達も助かるし」

「ドーガ、貴様は黙っていろ!

 貴族としての矜持の話をしておるのだ」

 矜持だけでは、腹は膨れないと思うのだけど。

 

 こんなのだから家が傾くのかな?

 貴族ならもう少し策謀とか経営とかに長けた者がいないものかね。

 

「盗賊がどれだけ居るのかは実際に摘発してみねば分からぬ。

 その場合に、其方が望むほどの懸賞金が得られぬかもしれぞ。

 それでも良いのか?」

「摘発しようとしても盗賊が居ないということは、

 ベイルの街の治安にとって良いことでございます。

 それが確認できるだけでもやる価値があると考えます」

 別に懸賞金が欲しいからやる訳ではない。

 今回複数ある目的の懸賞金はほんの一つに過ぎないのだから。

 

「そうか。だが、その場合の報酬はどうするのだ?

 商売人としての、其方の利はどこにある?」

「タケダ家としての利は、先ほど申し上げたベイルの治安ということで十分でございます。

 士爵様達への寄付は別の形で考えさせて頂きます」

 ゴッゼル士爵の気持ちが揺らいだか。

 

「カミーユ、私はこの者の提案に乗ろうと思う」

「姫様!そのようなことは・・・・・・」

 もう、姫様呼びな訳ね。

 

「カミーユの言いたいことは分かるが、

 この者の提案はベイルの街の治安を維持するという一点においては何の問題もない。

 私はベイルの街のために、貴族としてのありように従いたいだけなのだ」

「姫様・・・・・・」

 これで後は実務レベルの詰めだけかな。

 

 右に座っているドーガがニヤニヤしている。なんか楽しんでない?

 今回は何回か助け船を出そうとしてくれたみたいだし、良いけどさ。

 

「姫様がそこまでおっしゃるのなら。

 ただ、迷宮探索の腕と盗賊討伐では求めているものが違う。

 この者を完全に頼るのは危険だと思いますぞ」

「こいつは、この騎士団に

 盗賊のインテリジェンスカードを10枚単位で持ってくるような奴ですよ。

 迷宮探索だけでなく盗賊討伐の腕も相当なものだと思いますけどね」

 おっ、言い方はアレだが良い援護射撃。

 

「対人戦の力をお疑いなら、私だけではなく配下の者も連れて参りますので、

 実際の作戦前に模擬戦でもして、お互いの実力を確かめましょうか?」

「そうだな。其方達の力も確認したいし、

 実際に組んで作戦を行うのであれば連携の確認も必要だろう」

 ヴィルマとイレーネがまたウッキウッキになりそうだな。

 

 今度は手加減をさせなくても良いかな。

 塩爺をコテンパンにしてやれ。

 

「其方は鬼人族なのか?」

 

 ブッ、爺さん、いきなり核心を突いてきたな。

 この前の魔物部屋で意識を失っていたと思っていたけど、戦っている姿を見られていたのか。

 

「・・・・・・」

 さて、どう答えたものか。

 

「別に鬼人族だから、どうこう言うつもりはない。

 剣の腕が確かなら鬼人族だろうとエルフだろうと何の問題もない。

 ただ確かめたかっただけだ」

「そうですね。あまりこの辺りでは見ない種族ですから珍しいかもしれませんね」

 もう、この連中にはバレちゃったのだから普通に戦うか。

 

 いや、スラムの人々にあまりオープンに見せる姿ではないか。

 別に四本の腕でなくても十分制圧可能だろうし、臨機応変にいくか。

 

「鬼人族のことなど、よくご存じですね?」

「昔、同じパーティを組んでいたドワーフの奴に酒の席で聞いただけだ。

 訳の分からない昔話を聞かされたが、内容はほとんど覚えておらぬ」

 ここでも昔話なのか、現実の話を聞いてみたいのだが。無理か。

 

「実際の段取りはどうするっすか?」

「作戦決行は3日後にしたい。3日後の早朝、ここに集合だ。

 その前日の朝、この詰所の練習場で模擬戦をしよう。

 午前中に作戦の詰めをして、午後は各々、準備にあたる。

 午前中にメンバの実力を見て作戦遂行が不可能だと判断すれば取りやめだ」

 3日以内に何かしないと、士爵様としては拙い立場になるってことだろうか。

 

 十分な期間が取れないから、結構、詰めが甘い状態での作戦決行になりそうだな。

 あとは作戦を立案する士爵様の能力がどの程度のものか。

 この三人の対人戦の能力も現時点では未知数だ。

 

 あとは、ここに巣食っている盗賊達の規模次第か。

 こればかりは事前に調べようがないからな。

 

 夜な夜な、このエリアを歩き回って索敵と鑑定をしまくるか。

 まあ、エネドラやアミル達と相談するか。

 

「こちらとしても、士爵様の判断に特に異論はございません」

「じゃあ、そんな感じでやっちゃいましょうか」

 ドーガ、お前ノリ軽いな。有難いけどさ。

 

・・・・・・

 

 士爵様の執務室を出て、ドーガと一緒に出口に向かう。

 

「あのさ、実際に士爵様の困っている事って、金銭面なの?人材面なの?」

「そうだな・・・・・・」

 この男から士爵家の抱える実際の問題点を確認しておきたい。

 今なら、少しは情報を流してくれるだろうか。

 

「その両方って感じかもな。

 この前の迷宮では結局三人死んで、

 その補償金を騎士団からだけでなく、士爵様側からも支払ったので手元に金がない。

 でも、最低人数を維持するためには人材を募集しなければならないので、

 雇う金も必要だし、装備を整える金も必要だ。

 そして、一番困りそうなのは住む場所だ」

「住む場所?今はどうしているのだ?」

 今、住んでいる所を追い出されるの?

 

「この前死んだ三人の中に、今俺達が暮らしている住居の大家の息子が居たんだよ。

 息子が騎士になれるかもしれないから住居を提供してくれていたのだけど、

 その息子が死んでしまったからな。

 流石にそこにはもう居られないから、

 しばらくしたら住居を借りなければならないのでやっぱり金が必要ってことだ。

 人材の方は金で雇うだけでなく、士爵様の妹さんが巫女になったばかりらしくて、

 こっちに引っ張れるかもしれないけど、それでも装備を購入する金が必要ってことらしい。

 何にしても、金が必要ってことだな」

「そうなのか。じゃあ、盗賊の討伐作戦で懸賞金の半分を提供しても結構厳しそうだな」

 かなりの火の車の状態なのか。

 

 迷宮探索で失敗すると家が傾くって、こういう事なのかな。

 

「そうだな。

 士爵様は懸賞金で、ゴッゼル家をなんとかしようとは思っていないかもしれない。

 純粋にこのベイルの街のために最後に何かをしたいと考えているのかもな」

「そうか・・・・・・」

 なかなか厳しい状況だな。

 

 だが言い方は悪いが、それだけに付け入る隙はあるかもしれない。

 この状況を利用して、ベイルの街、ゴッゼル家、我が家の利をうまく配分できると良いな。

 

 そう上手くいかないだろうが、利を与える優先順位さえ間違えなければ、それほど酷いことにはならないだろう。

 最悪、ゴッゼル家が滅んでも、それは元々がそうであったというだけだ。

 

 俺はドーガに今日の対応の礼を言って、詰所を後にした。

 結構な時間になったので、帝都の洋品店の支払いに行かなければ。

 

 適当な木陰から自宅にワープした。

 

 自宅に戻り、厨房に向かうと既にエネドラは帰宅していた。

 

「購入する服は決まりましたので、後はお支払いして頂くだけになっております。

 既に全員帰宅しております」

「そうか、じゃあ適当に誰か連れて行ってくるよ。ありがとう」

 俺が食堂から離れて二階の部屋に行こうとしたら、アミルが足早に近づいてきた。

 

「私が帝都のお店までお供いたします」

「そうか、じゃあ一緒に行ってくれるか」

 俺とアミルの二人居れば十分だろう。

 

 アミルを連れて玄関に向かい、帝都の洋品店の絨毯にゲートを繋いでワープした。

 

 帝都で支払いを済ませて、購入した洋服を受け取った。

 アミルと二人で分担すると大した量ではないな。まあ、レイモンドとモニカの二人分だし。

 価格は二人で3割引が効いて28000ナール。

 ほとんどはモニカの服の値段なのかな。

 

 いや、レイモンドの方も結構おしゃれな奴かもしれないから、意外にお金をかけているかも。

 全てはエネドラの差配次第か。

 

 アミルと自宅に戻ると、ちょうどレイモンドがヴィルマ達と裏庭から戻ってくるところだった。

 

「今日は無事、生き延びたようだな?」

「・・・・・・」

 返す言葉もないぐらい、しんどそうな状況だ。俺の軽口に睨み返す気力もなさそう。

 まあ、愚痴があれば風呂で聞いてやろう。

 

 

・・・・・・

 

 食事が終わり、男三人で風呂タイム。

 

「今日はモニカと二人で帝都の洋品店で買物は楽しめたのか?」

「モニカはエネドラさんと楽し気な感じでしたね。見てる自分もそれなりに」

 それを楽しめる時点で大したものだ。

 

 俺はそんな時間があるのなら、どうしても迷宮に行きたくなってしまうのだよな。

 

「レドリックはポーラとゆっくり過ごせたのか?」

「そうですね。我々は帝都に行かずにクーラタルの街で買物したり食事したりしてましたから」

 こっちも楽しめたと。

 

 まあ、俺もボーデで有名人と会って楽しめたよ。

 後半は、面倒な交渉をしていたけどね。まあ、あれは別の意味で楽しんでいたか。

 

 

「今度さ、ベイルの街で盗賊討伐作戦をやることになった。

 レドリックに参加してもらいたいと思っているのだけど、どう思う?」

「問題ないですよ。

 前居た戦士団でもやってましたから。

 今度の作戦とやらがどの程度の規模なのかは分かりませんけど」

 そっか、戦士団に居れば普通に盗賊討伐くらいやるか。

 

 俺も別の意味でちょいちょいやってたしな。

 

「あの、僕も参加するのでしょうか?」

「いや、お前はモニカと一緒にここの護衛だ。

 全員で参加するものではないからな。

 ヴィルマとイレーネは盗賊討伐作戦に参加させるけど」

 レイモンドはあからさまにホッとしたような感じだ。

 

 盗賊討伐作戦に参加しなくて良いからなのか、ヴィルマとイレーネを連れていくので訓練の相手をしなくて良いからなのかはどっちなのだろうね。

 

・・・・・・

 

 会議で明日以降の予定を軽く説明。

 

 明日は午前中はザビルの22階層迷宮攻略。午後は俺の用事で迷宮攻略はお休みにした。

 

 午後はアミルと相談したいことがあると伝えた。

 

 他には災害救助支援でハルツ公爵や騎士団長のゴスラー子爵と知己を得たことを伝えた。

 エネドラしか反応がなかったけど、他の連中には事の重大さが理解されていないのだろう。

 負担が増えるばかりで悪いな、エネドラ。

 

 そして、3日後にベイルで盗賊討伐作戦に参加することも説明。

 こちらはヴィルマとイレーネが珍しく反応。

 でも、盗賊はそんなに歯ごたえがある相手じゃないかもよ。別に良いけどさ。

 

 エネドラにはレドリックも作戦に参加させる事を伝えた。

 これは事前に彼女にも相談していた内容だ。

 

 ゴッゼル士爵のもう一つの施策については引き続き二人で検討を続けることにした。

 

 

「じゃあ、これで会議を終わりにする」

 皆にお休みの挨拶をして、各自、自室に戻ることにした。

 

 

■情報▼

【拠点名】クーラタルの邸宅<本城>(2/4)▶

 

【拠点名】ベイルの屋敷<支城>(1/4)▶

 

■人材育成/採用(ユキムラ)▶

 

■軍事(ユキムラ)▶

 

■商業/取引(ユキムラ)▶

 

■開発(エネドラ)▶

 

■生産(チクルス/アミル)▶

 

■その他/クエスト▼

①カードハンターとの取引(ベイル)

 ⇒コボルトハンター経由で依頼中(4日後に来訪予定)

 

②ダマスカス鋼工房の対応(ドブロー)

 ⇒スキル融合防具の依頼の可能性有

 

③硬革工房からの依頼(ドブロー)

 ⇒肉3種を納品(ザビルの25階層攻略時?)

 

④ハルツ公爵の災害救助支援(クーラタルの冒険者ギルド)

 ⇒災害救助物資の輸送支援作業完了。

 ⇒ハルツ公爵、ゴスラー騎士団長と知己を得た。困り事があれば来訪可能となった

 

⑤ゴッゼル士爵への対応(ベイル)

(1)盗賊討伐作戦(3日後に決行)

 ⇒明後日早朝に模擬戦を実施。午前中に作戦の詰めを行う

 

(2)別の施策検討

 ⇒エネドラと対応を協議中

 

明日の予定

(午前)

・俺    :ザビルの22階層攻略

・アミル  :ザビルの22階層攻略、(朝:装備品作成)

・ヴィルマ:ザビルの22階層攻略

・イレーネ:ザビルの22階層攻略

・エネドラ :朝食・昼食準備、洗濯、石鹸試作

・チクルス:朝食・昼食準備、洗濯、生薬生成

(午後)

・俺    :アミルと個別相談、奴隷商館巡り

・アミル  :個別相談、装備品作成

・ヴィルマ:訓練

・イレーネ:訓練、(ブラヒム語勉強)

・エネドラ :夕食・朝食の準備、(掃除)、石鹸試作

・チクルス:夕食・朝食の準備、(掃除)、生薬生成

※夜は定例会議

※ポーラ(家事)、レドリック/レイモンド/モニカ(護衛、訓練、雑用等)

 

 

・・・・・・

 

(コンコン)

 

 ドアを開けるとイレーネが立って、こちらを見つめている。

 

 無口のまま、イレーネはベッドに突き進み、ボンッとベッドに横たわる。ただし俯せだ。

 

 まずはマッサージをしろということか。

 

 首から背中に沿って、丁寧に揉み解す。

 わき腹をさすりながら、両腕の肩、腕、肘と徐々に下げながら解す。

 

「なあ、イレーネは盗賊を殺したことはあるよな?」

「ん。ある。里を襲ってきた盗賊をたくさん殺した。数は覚えていない」

 イレーネの居た里がどのような場所か分からないが、結構、盗賊の襲撃があったのだろう。

 

 自衛のためには容赦なく殺すと。でないと逆に殺される訳だからな。

 

「そうか。盗賊を殺すことには躊躇いはないか?」

「ない。見つけたら殺す」

 分かり易い理屈だ。

 

 理屈ではなく、里の掟とかだったのかも。

 

 なんか殺伐とした会話になってしまった。

 でも、イレーネとは何度も肌を重ねても一定以上は距離が縮まらない気がしてるのだよなぁ。

 

 どうしたら、距離を縮められるのだろうか。

 

・・・・・・

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