異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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056.盗賊討伐作戦(その1)

 朝起きると、ベッドには俺一人。イレーネが居た痕跡も見当たらない。

 身の危険を感じて早々に立ち去ってしまったのだろうか。

 

 そして、腕組みしたエネドラに見下ろされていたりもしていない。セーフだ。

 窓を少し開けるとまだ暗闇だ。明け方よりも更に早い時間帯だ。

 

 それでも索敵で確認すると、皆が起きて動き始めたようだ。

 俺も急いで身支度を整えなければ。

 

 

・・・・・・

 

 長丁場になるので、しっかりと朝食を食べた。

 やがて、各自準備を終えて玄関に集まってきた。

 ヴィルマとイレーネは迷宮に行くのとさして変わりのない佇まい。

 レドリックもリラックスした雰囲気。

 アミルだけが、皆から見えないようにしきりに深呼吸を繰り返している。

 

「いつも通りにしていれば、大丈夫だ」

 アミルの肩に手を置き、声をかける。

 

 既に、おおよそどのタイミングで出番があるのかは伝えた。

 その時の合図についても意識を合わせてある。

 他にも対人戦用のサインプレーを今日は実戦の中で使うことを改めて確認した。

 

 自分とパーティのジョブ編成、装備、ボーナスポイント設定を最終確認。

 

ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)

冒険者Lv41 百鬼夜行Lv52 英雄Lv52 勇者Lv51 刺客Lv52 博徒Lv50 神官Lv50

装備 デュランダル 硬直のエストック 激情のダマスカス鋼剣 アルフレイル

    ダマスカス鋼の額金 ダマスカス鋼のガントレット 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

アミル(ドワーフ族 ♀ 16才 奴隷)

鍛冶師Lv50

装備 強権のダマスカス鋼槍 ダマスカス鋼のプレートメイル 耐水のダマスカス鋼額金

    ダマスカス鋼のガントレット ダマスカス鋼のデミグリーヴ 身代わりのミサンガ

 

ヴィルマ(虎人族 ♀ 17才 奴隷)

百獣王Lv24

装備 激情のダマスカス鋼剣 竜革のジャケット 耐火のダマスカス鋼額金

    耐毒の竜革グローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

イレーネ(豹人族 ♀ 17才 奴隷)

刺客Lv27

装備 硬直のエストック 鋼鉄の盾 竜革のジャケット 耐風のダマスカス鋼額金

    耐毒の竜革グローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

レドリック(人間族 男 25才 奴隷)

剣士Lv30

装備 エストック 鋼鉄の盾 硬革の鎧 硬革の靴 硬革の帽子 硬革のグローブ

    身代わりのミサンガ

 

 

ボーナスポイント(238(初期値198+40(Lv上昇分))

・キャラクタ再設定(1)

・武器6(デュランダル)(63)

・防具5(アルフレイル)(31)(防御力2倍、魔法ダメージ削減、状態異常無効、レベル補正無視)

・鑑定(1)

・パーティジョブ設定(3)

・パーティ項目解除(1)

・異世界言語(10)

・索敵(5)

・拠点構築(5)

・獲得経験値十倍(31)

・敏捷上昇(19)

・セブンスジョブ(63)

・詠唱省略(3)

・パーティライゼイション(1)

・ワープ(1)

余剰ポイント(0)

 

 これで、準備は万端のはずだ。

 

「じゃあ、出発するぞ」

「いってらっしゃいませ」

 エネドラ達に見送られ、ベイルの玄関にワープで移動した。

 

 旧宅を出て騎士団の詰所に向かう。

 まだ辺りは暗い。

 

 詰所の門に近づくとドーガの姿が見えた。

 今日は実剣を持った完全装備だ。

 

 黙ったまま軽く右手を上げると、ドーガも軽く手を上げ返す。

 

「ドーガ、これを・・・・・・」

 俺は彼に強壮丸20粒が入った小袋を渡した。

 

「何に使うのだ?」

「今日はインテリジェンスカードを頻繁に提示させるだろう?

 よく分からないけど、連続して何度もスキル使うとMPが厳しくないかと思ってな」

 インテリジェンスカード千本ノックとかやったことないから、どうなるのか分からない。

 

 俺はMPが豊富にある方だけど、塩爺や士爵様がどんな状態になるのか想像もつかない。

 

「お前はインテリジェンスカードの確認をたくさんやると、

 どんな状態になるのか知っているのか?

 今まで騎士団でやったことはあるのか?」

「知らんな。俺は騎士のジョブじゃないし」

 まあ、持っていても損はないだろう。

 

 俺の組には従士二人を除けば、ゴッゼル様以外は士爵家の人間は居ない。

 邪魔者がいないので、なんなら先日未達成に終わった口移しをしてあげても良いくらいだ。

 

「で、こっちの方は滋養丸が20粒入っている。万が一の時は飲ませてやれ」

「おお、確かにこっちの方が必要かもな」

 ドーガは小袋を受け取ると背嚢の中に無造作に放り入れた。

 

 治癒役のジョブがいない中で、作戦を行うのは結構無謀だと思うのだけどね。

 ヴィルマやイレーネに手を出したら、この世に生まれてきたことを後悔させるような目に遭わせてやるから気を付けろよ、ドーガ。

 あの二人が盗賊に手を焼くとは思えないけどな。

 

 間違えるなよ、ドーガ。お前が口移しをする相手は爺さんだ。

 俺が味わった地獄をお前も味わえ。

 

 

「じゃあ、練習場の方に集合することになっているから行こうか」

 

 どうやら俺達を誘導してくれるために待っていてくれたらしい。

 この気遣いで今日のカミーユ組の采配をお願いしたい。

 

 俺達を練習場まで案内すると、ドーガは建物の中に二人を呼びに入っていった。

 

 練習場には従士らしき四人が緊張した面持ちで既に待っていた。

 鑑定で見る限りは全員がレベル一桁台の戦士達。

 盗賊との集団戦闘に参加するのは厳しいだろうな。

 

 三人が出てくるのを待ちながら軽く挨拶を交わして、タケダ家側の参加者を紹介した。

 従士四人の方は既に組み分けがされていたのでカミーユ組のヴィルマとイレーネの引き合わせ、更にゴッゼル組の俺とアミルとレドリックの顔合わせを行なった。

 

 時間があったので、カミーユ組の四人とゴッゼル組の五人で整列し直して、士爵様の到着を待つことにした。

 

 やがてドーガを先頭に士爵様と爺さんが並んで出てきた。

 

 ゴッゼル組の先頭にいる俺が直立不動の姿勢を取ると、他の参加者も倣って同じ姿勢を取る。

 爺さんは満足げに士爵の隣に立ち、ドーガはカミーユ組の列の後ろに加わった。

 後ろじゃなくて、前に並べよ。お前は士爵家側の人間だろう?

 

 士爵が初めに労いの言葉をかけ、その後簡単に今日の作戦の説明を始めた。

 内容自体は先日確認した通りで大きな変更はない。

 

 説明の最後に、士爵様から今日の各組の配置についての意見を求められた。

 南北どちらに、どの組を配置するかというもの。

 

 どちらにどの組を配置するのが良いという主張はせず、北側の方が衛生面が悪く浮浪者が多く居るといった情報提供をした。

 

「では、私の組が北側から確認を行いましょう」

 爺さんが俺の目論見通りの意見を主張した。

 姫様を汚い場所に行かせたくないのだろう。

 

 どちらに配置されても、それなりに結果は出せると思っているが計画通りの方がありがたい。

 爺さんの意見に賛同する旨の返事を俺も返しておいた。

 

 

(北門配置:カミーユ組)

 隊長:カミーユ(騎士Lv32)

 隊員:ヴィルマ(百獣王Lv24)、イレーネ(刺客Lv27)、ドーガ(戦士Lv17)

 支援:従士2名(戦士Lv8、Lv6)

 

(南門配置:ゴッゼル組)

 隊長:ゴッゼル(騎士Lv8)

 隊員:ユキムラ(冒険者Lv41)、アミル(鍛冶師Lv50)、レドリック(剣士Lv30)

 支援:従士2名(戦士Lv9、Lv5)

 

 

 士爵様の号令で、この場所から遠い北側に配置されるカミーユ組が出発した。

 ヴィルマとイレーネに軽く手を上げ、ドーガにも手をあげて俺は先発組を見送った。

 頼むぞ、ドーガ。爺さんをコントロールするのはお前の仕事だ。

 後ろに引っ込んでサボらないでくれよ。従士二人の護衛よりも重要な仕事なのだから。

 

 残った俺達は出発まで少し体を動かしておく。

 従士二人はデカい布袋を持っていて、なにやら重そうだ。

 丈夫な大きな布製の袋に拘束用の鎖が何本も入っているらしい。

 

 とりあえず、俺とアミルでスラム街の南の入口まで持っていくことにした。

 だって、従士二人が持つとヨロヨロして歩くのが遅くなりそうだから。

 俺と小柄なアミルが袋を片手で軽く持ち上げて、何事もなかったように歩く様を二人が呆然と見ていた。

 俺達のパーティ効果はかなりのものだし、今日は腕力増強編成だからな。

 

 ゴッゼル組も詰所を出発して目的地へ向かった。

 特に二組がタイミングを合わせるなどということはせず、準備が整い次第すぐに作戦開始だ。

 ゆるい作戦だな。

 盗賊達も烏合の衆だから、こっちもそれなりの対応なのだろうか。

 

 やがて南側の門に到着したので、そのまま中に入り、一番近くの家の前で待機した。

 索敵で確認する限り、この家の周りに赤い点はない。

 遠く離れた場所に赤い点が一つだけ見えるが、いきなりその場所には行けない。

 俺とアミルは後方に居る従士二人の前に鎖の入った袋を置いた。

 

 前に進み出ようとする士爵様を制して、

 

「まずは私が家の住人を呼び出しますので、それまではお待ち下さい。アミルは護衛を」

 士爵様は頷き、アミルは俺と士爵様の間の位置についた。

 

 ドアをノックする・・・・・・反応がないので、更にノックを強めにした。

 

「・・・・・・誰だよ」

 機嫌の悪そうな男が出てきた。

 

(鑑定)

 

 この男は盗賊ではない。

 

「この近くに盗賊が逃げ込んだという情報があり、この近辺の確認をしている。

 悪いがインテリジェンスカードの確認をさせてくれ。

 この家に他にも住人がいるのなら、ここに呼び出してくれないだろうか」

「ここに住んでるのは俺だけだよ。左手を出せばよいのか?」

 俺は頷きながら、士爵様に合図をする。

 

 士爵様は詠唱してインテリジェンスカードを表示させた。

 

「この者は村人だ。特に問題ない」

 士爵様の言葉に頷いた。

 

「朝から悪かったな。戻ってくれて良いぞ」

「・・・・・・ったくよ」

 不機嫌な男は更に不機嫌になって、家に戻っていった。ドアを閉める音が大きかった。

 

 それにしても、皆の前でジョブを言ってしまうのだな。

 個人情報保護法もないから仕方ないのか。

 

 色魔のジョブの奴とかいたらどうするんだよ。

 公衆の面前で、色魔と言われる身にもなってやれと言いたい。

 『この者は色魔だ。特に問題ない』違和感アリアリの宣言だよな。

 

「次の家に参りましょうか」

 意識を引き戻して、次の作業にかかろう。

 

 その次と次も盗賊の者はおらず、空振りに終わった。

 太陽が上がり始めて、スラム街の街が徐々に明るくなってきた。

 従士二人は初めの位置から動いていないが、レドリックは俺達三人に付いてきている。

 まだ捕縛した盗賊もいないので暇だしね。

 

 

 次の家の確認を移った。

 ドアをノックして、ボサボサの髪の男が出てきた。

 

(鑑定)

 

 盗賊Lv12。早速ヒットしたか。

 

「この近くに盗賊が逃げ込んだという情報があり、この近辺の確認をしている。

 悪いがインテリジェンスカードの確認をさせてほしい。

 この家に他にも住人がいるのなら、呼び出してくれないだろうか」

「なんだって?」

 あっ、こいつはブラヒム語が分からないのか。

 

 人間族の言葉しか通じないのなら仕方ないので言い直そう。

 

「この近くに盗賊が逃げ込んだという情報があり、この近辺の確認をしている。

 悪いがインテリジェンスカードの確認をさせてくれ。

 この家に他にも住人がいるのなら、ここに呼んでくれないだろうか」

「分かった。他にも住人が居るから呼んでくるので待っていてくれ」

 男は家の中に戻っていった。

 

 アミルの方を振り向き小声で話しかけた。

 

「2番だ」

「了解・・・・・・です」

 アミルから緊張した返事が戻ってきた。

 

 さて、どこかから逃げ出すか、仲間と一緒に戻ってくるか。

 索敵のマップを出して、この家の周囲の状態を明らかにした。

 逃げ出せばマップに赤い点が増えるはずだ。

 

 やがて、ドアの近くに複数人の気配が感じられた。

 

「アミル、6番だ」

 アミルの方を振り向かずに、アミルに伝わる声でハッキリと言った。

 

「了解」

 応諾の確認は取れた。さて、上手くいくかな。

 

 先ほどのボサボサ頭の男が三人の男と戻ってきた。

 手を後ろに回しているが何か武器を持っているようだな。

 さすがに鎧を装備するようなあからさまな事はしていない。

 

「ここに居るのは、全員で四人だ。左手を出せばよいのか?」

 男は言うと同時に俺に切りかかってきた。

 

「アミル、戦闘開始だ」

「了解」

 先頭の男の剣をデュランダルで受ける。

 後ろの三人が俺を取り囲むように散開した。

 

(鑑定)

 

 盗賊Lv12、盗賊Lv21、盗賊Lv9、盗賊Lv15。大したことはないな。

 

「何をする。離せ・・・・・・」

 ゴッゼル士爵様の声が聞こえたが、上手くいってる証拠だ。

 

 マップで敵味方の配置を確認。これで十分だ。

 

(オーバーホエルミング)

 

 先頭のLv12の首をデュランダルで刎ねて、周りの三人の首も次々と刎ねていく。

 一瞬で決着がついたので、デュランダルに付いた血を一閃して払った。

 

 俺は二人の居る場所に戻りながら、怒りを湛えた士爵様の所に歩いていった。

 

「士爵様、盗賊四人が襲い掛かってきたので討伐しました。ご確認を・・・・・・

 念のため強引に退避して頂くように配下の者に命じましたが、ご容赦願います」

「もう終わったのか?」

 士爵様は怒りから驚きの表情に変わりながらも、元居た場所に戻って確認を行なった。

 

 剣を握ったままの、首無し死体が四体転がっているのを士爵様は確認した。

 インテリジェンスカードの確認をしていないが、剣を持って襲い掛かってきたので有罪だ。

 

「確かにこの者達は盗賊であろう。ご苦労であった」

「では、私の方で左腕を切断しておきましょうか」

 後処理を確認してなかったので、士爵様に意向を確認した。

 

「いや、従士二名にやらせる。装備品の回収もやらせることにする。

 死体はいったん家の中に隠しておこう」

「なるほど、ではお願いするとしましょう」

 士爵様の指示を受けて、レドリックが従士二人を呼びに戻った。

 

 これは従士二人はいろいろと大変だな。支援部隊の増員が必要じゃないか?

 

 従士二人が到着して士爵様が指示を行なっている。

 

「アミル、先ほどの連携は上手く出来たな」

「はい。士爵様を抱えて後ろに走るのは少し緊張しました」

 アミルと顔を見合わせて笑いあった。

 

 サインの6番は俺が突撃して、護衛対象を速やかに後方に移動させるパターンだ。

 迷宮では護衛対象が居ないので今まで一度も使ったことがなく、今回初めて使用した。

 士爵様を遠くに引き離すので、オーバーホエルミングを利用出来て便利だ。

 

 カミーユ組でも、まあ使わないだろう。

 今日はスイッチも使わずに撫で斬りにするから、あいつらは無言の連携だろうな。

 

「では、次の確認に向かう」

 士爵様の宣言で次の家の確認に向かった。

 

 暫くは盗賊はおらず、淡々とインテリジェンスカードの確認が続く。

 男であろうが女であろうがお構いなし。子供、老人、種族の区別もなくひたすら確認だ。

 幸い、今のところは子供の盗賊とかには出くわしていない。

 子供を連行したり、切り捨てるのはさすがに忍びない。

 

 士爵様の表情を見る限りは、MP切れの様子もなく、残念な気分になる。

 実は苦悶の表情を見せずにポーカーフェイスを装うのが上手いなどあるだろうか。

 いろいろと妄想が膨らむ。

 

 作戦開始してから1時間半くらいは経過しただろうか、見るからに人相の悪い男が出てきた。

 

(鑑定)

 

 盗賊Lv32。この名前は昨晩、偵察の際にメモった奴だ。

 

「この近くに盗賊が逃げ込んだという情報があり、この近辺の確認をしている。

 悪いがインテリジェンスカードの確認をさせてくれ。

 この家に他にも住人がいるのなら、この場に呼び出してもらえないだろうか」

「面倒くせぇな、ちょっと呼んでくるから待ってろ」

 人相の悪い男は家の中に戻っていった。

 

 アミルの方を振り向き小声で伝えた。

 

「2番だ」

「了解」

 

 索敵でマップを展開して周囲を警戒。

 ドアを開けて先ほどの男ともう一人の男が出てきたが、既に手に剣を持っていて、こちらに隠そうともしていない。

 

 盗賊Lv32の男が切りかかってきたが、デュランダルでいなして首を刎ねた。

 

 首の無くなった相棒の姿を見て、もう一人の男が唖然としている。

 

(鑑定)

 

 盗賊Lv11

 

「降伏するか、このまま俺に切られて死ぬかどちらかを選べ」

 俺の言葉に観念したのか、剣を放り捨てて両手をあげた。

 

「降伏するから殺さないでくれ」

 これでようやく、捕縛者が1名か。

 

「両手を地面について、四つん這いになれ」

 盗賊の男は俺の指示に従って、地面に四つん這いになった。

 

 レドリックが従士二人を呼びに行った。

 

 従士は四つん這いになっている盗賊の両手を後ろに回して、両方の手首に鎖を繋いだ。

 そして、もう片方の一端を足首にそれぞれ繋いでいく。

 

 エの字型の鎖で、両手と両足に鎖を繋ぐのか。

 両手と両足を拘束する輪っかの間は短いから手を広げることも足の幅を広げることも出来ないので、手を使って何かすることも走ることも出来ない。

 手と足の間の鎖は長さが調節できるようで、遊びを短くして後ろの方でピンッと張っている。

 

 歩くのは遅くなるから、これは連れて帰るのが大変そうだ。

 移動させる時に使う拘束具ではないのだろうな。

 

 これで、ゴッゼル組は討伐した盗賊5名。捕縛した盗賊1名か。

 結構、時間がかかるな。午前中に終わるのはちょっと無理だろう。

 

 その後も淡々とインテリジェンスカードの確認だけが進んでいく。

 

 ドアをノックすると疲れた顔の女が出てきた。

 

(鑑定)

 

 盗賊Lv13。女性の盗賊はこの作戦では初めてか。

 

 原作では結構、登場していたけど、俺が見たことがあるのも今までに数回ほどであまり多くない印象だ。

 

「この近くに盗賊が逃げ込んだという情報があり、この近辺の確認をしている。

 悪いがインテリジェンスカードの確認をさせてくれ。

 この家に他にも住人がいるのなら、この場に呼び出してくれ」

「ちょっと呼んでくるので、待っておくれ」

 盗賊の女は家に戻った。

 

 アミルの方を振り向き小声で伝える。今日は三回目だな。

 

「2番だ」

「了解」

 

 索敵のマップを出して確認すると、暫くして3つの赤い点が裏路地っぽい所に出現した。

 

「士爵様、裏から逃げたようです。私は追いますので後から護衛と一緒に来てください」

 

 俺は返事を待たずに駆けだした。

 

 マップで移動する赤い点を確認しながら追跡する。

 オーバーホエルミングを使いたい衝動に駆られるが、もう明るくなってきたから無理だな。

 

 だが、ボーナスポイントの残りを敏捷に振っていたおかげで早々に盗賊三人に追いついた。

 

「どこに行くんだ?インテリジェンスカードの確認はこっちだぞ」

 逃げる三人は俺の言葉に立ち止まって、こちらを振り向いた。

 

「一人だけだ、三人で一斉にかかれば大丈夫だ」

 結構、強い奴なのか?

 

(鑑定)

 

 盗賊Lv13の女以外は、海賊Lv35、盗賊Lv21。

 

 このLv35も昨晩、名前をチェックしていた奴で狼人族だ。

 

 パーティ効果を使って、アミル達が俺の方に近づいてくるのが分かるがまだ遠い位置だ。

 

 周りに住民がいて遠くから見ているので、オーバーホエルミングは使えないな。

 

 仕方なく、おれは海賊Lv35に激情のダマスカス剣で切りかかり、デュランダルで止めとばかり首を刎ねた。

 

 切りかかってきたLv21の盗賊の剣を躱して、返しざまにデュランダルで首を刎ねる。

 これで残りは初めの盗賊の女だけだ。

 

「降伏するか、このまま俺に切られて死ぬかどちらかを選べ」

 

「畜生、畜生・・・・・・ふざけるな!」

 泣きながら、切りかかってきた女盗賊の胸元にデュランダルを刺し入れた。

 驚いた顔をした後に涙を流しながら俺を睨みつけてくる。

 胸元から引き抜いたデュランダルで女の首を刎ねた。

 

 この女はひょっとしたら、先に首を刎ねたどちらかの男の情婦かなんかだったのだろうか。

 

 やはり盗賊を切り捨てても、後悔も恐怖も虚無もなんの感情も湧いてこない。

 自分の感情が摩耗してしまったのだろうか。

 それとも相手が盗賊だったり、赤い点だった場合にストレス軽減の補正がかかるようになっているのだろうか。

 時々、自分の感情がどうなっているのか疑問に感じてしまう。

 

 アミルは事前に盗賊殺しを伝えただけで、あれだけ動揺しているのだから、俺が標準と思わない方が良いだろう。

 

 

 やがてアミル達が追いついてきた。

 

 

「3名の盗賊を討伐しました」

「そうかご苦労であった。今、従士を呼ぼう」

 呼ぶと言っても、呼びに行くのはレドリックだ。

 

 レドリックが従士を呼びに戻っていったが、往来で盗賊討伐をしてしまったので周りの住人が集まってきてしまった。

 

「盗賊の討伐だ。見世物ではない」

 士爵様が一喝して野次馬は去っていったが、家の窓からコッソリと見ている住人がいる。

 

 これは潜伏していた盗賊がいたら、逃げられちゃうかもな。

 

 索敵のマップで赤い点の動きがないか確認しておこう。

 俺達と逆の方に逃げてくれたら、カミーユ組の方で引っ掛かるかもしれない。

 

 従士二人とレドリックが戻ってきたので後始末を任せた。

 

 これで討伐した盗賊8名、捕縛した盗賊1名か。

 

 確認が完了したエリアは全体の1/3にも達していない。

 カミーユ組がどの程度進んでいるのか分からないが、これは一日仕事になるかもな。

 

 イレーネとヴィルマの位置をパーティ効果で確認しても方向しか分からない。

 索敵のマップで確認しても青い点が表示されることもない。

 さすがにこちらが1/3も終わっていないのに、カミーユ組が半分以上のエリアが終わったということはないのだろう。

 

 そして、まだアミルの宿題も完了していない。

 だが、そろそろ宿題に取り掛かった方が良いかもしれないな。

 

 アミルの顔を見ながら、対象の物色を真剣にしなければと感じた。

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