異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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057.盗賊討伐作戦(その2)

 アミルには、そろそろ出番が来ることを伝えた。

 頷いたアミルに緊張が高まったのが俺でも分かる。

 

 だが、その後の盗賊探しはインテリジェンスカードの確認だけの家が暫く続いただけだった。

 

 そして、ようやく悪人面した男がドアから出てきた。

 こいつは鑑定するまでもないのでは・・・・・・と思うが、そうもいかない。

 

(鑑定)

 

 海賊Lv38。この男は、昨晩名前を記録した狼人族の奴だ。

 

「騎士団の者だが、お前はブラヒム語は分かるか?」

 男が黙って頷いたので、そのまま会話を続ける。

 

「この近くに盗賊が逃げ込んだという情報があり、この近辺の確認をしている。

 悪いがインテリジェンスカードの確認をさせてくれ。

 この家に他にも住人がいるのなら、この場に全員呼び出してくれ。

 全員のインテリジェンスカードの確認を行なう」

「分かったよ。呼んでくるから、ちょっと待て」

 男は奥に引っ込んでいった。

 

「2番だ」

「了解」

 

 索敵のマップを出して赤い点の動きがないかを確認する。逃げるか、それとも抵抗してくるか。

 

 ドアが開き、先ほどの狼人族の男が剣を持って飛び出してきた。

 いきなり戦闘か。

 

 俺は激情のダマスカス鋼剣を大きく振って、狼人族の男の動きをけん制する。

 その後ろから更に二人出てきて、左右に散開した。

 

(鑑定)

 

 海賊Lv38を中央に、右に盗賊Lv8、左に盗賊Lv21が並んだ。

 

「アミル、1番に変更だ」

「了解・・・・・・です」

 

「俺の右横に来い。初めは防御に専念するだけで良い」

「了解」

 

 アミルが俺の横について、盗賊と俺達で3対2で対峙した。

 少し前に出て、狼人族にデュランダルを軽く振るって後退させる。

 左側の盗賊が俺に切りかかってきたので、激情のダマスカス鋼剣で弾いた。

 

 アミルと盗賊Lv8の男は対峙したままだ。

 俺はノールックで、右下腕の硬直のエストックで盗賊Lv8の右腕を切り裂いた。

 右腕を切り裂かれた男は何か喚ているが、よく聞き取れない。

 

「アミル、今だ!」

 アミルがダマスカス鋼の槍を突き出すのが分かった。

 

「グッ・・・・・・」

 右側の盗賊がくぐもった声を出すのが聞こえた。

 

「アミル、手を緩めるな。止めを刺すまで攻撃を続けるんだ」

 俺はアミルの動く気配を感じながら、中央の狼人族の剣をいなして首を刎ねた。

 

 同時に切りかかってきた左の盗賊の剣を躱し、デュランダルを胸に突き刺す。

 致命傷だと思うが、念のため首を刎ねておく。

 二人の盗賊の死を確認して、アミルの方に向かった。

 

 アミルと対峙する盗賊は腹に槍を突き刺されたが倒れることなく、彼女を睨みつけていた。

 だが、右手から剣が離れて地面に落ちている。絶命するのは時間の問題だ。

 

 アミルは震えながら、槍を握っている。

 

 盗賊の腹を右足で蹴とばして転がした。

 アミルの槍が腹から抜けて、大量の血が広がり地面を染める。

 

「アミル、お前が止めを刺すんだ」

「は、はぃ・・・・・・」

 震える声のアミルに今、俺はどんな顔で映っているのだろうか。

 

 冷酷な武人か、処刑を執行を命じる酷薄な役人か・・・・・・。

 

「躊躇うな。楽にしてやれ」

 再度、アミルに命じる。

 

 アミルは俺の言葉には答えず、ダマスカス鋼の槍を地面に転がった盗賊の喉元に突き刺した。

 

「グゥッ・・・・・・」

 盗賊の口からこもった低い声が発せられ、鮮血がさらに流れて地面に広がる。

 やがて盗賊は動かなくなった。

 

「アミル、よく頑張った。

 今日の残りの盗賊は俺が全て片付ける。だが、今日のことは忘れるな。

 お前は正しいことをやったのだ。士爵様もそれを見届けている」

「はいっ・・・・・・」

 呼吸を乱しながらの返事。この後どうなるのかは、注意深く見守らなければならない。

 

 どんなに理屈で固めても、アミルの内面を正確に見て取ることが俺に出来る訳ではない。

 話しかけ、アミルの言葉を引き出して、向き合わなければならないだろう。

 

 

「盗賊3名を討伐しました。ご確認をお願い致します」

 後ろに控えていた士爵様の所に行って、報告した。

 

「確認した。従士を・・・・・・」

 レドリックが従士を呼びに下がっていった。

 

 連れられてきた従士に士爵様が指示をする間にレドリックに話しかけた。

 

「宿題は終わった。後は経過観察だ」

「承知しました」

 レドリックに伝えた後、俺はアミルの傍に近寄る。

 

 リュックから水筒を出して、コップに水を入れてアミルに差し出した。

 

「水分を取って、落ち着いてゆっくり大きく呼吸をしてみろ」

「は、はい・・・・・・」

 アミルが水を飲み干したので、もう一杯注いで渡した。

 

 喉がカラカラだったのかもしれない。

 緊張からは解放されたかもしれないが、不快感でどうしようもない状況なのだろう。

 

 

 索敵でマップを確認すると、目の前の建物の裏側の道を南下する赤い点が4つ見えた。

 北側ではなく、南側に行かれると面倒だな。忙しいな。

 

「士爵様、武器を持った集団が建物の向こうの陰に移動していくのを確認しましたので追跡いたします。

 アミルはこの場で士爵様の護衛を。レドリックは少し時間を置いて俺の方に来てくれ」

 士爵様が頷くのを待って、俺は駆け出した。

 

 盗賊達は歩いて移動しているのか、それほど移動速度は速くはない。

 直ぐに盗賊達の背後に追いついた。

 

(鑑定)

 

 盗賊Lv24、盗賊Lv15、盗賊Lv31、盗賊Lv19

 

 このLv31の男は昨晩のメモにいなかった名前だ。

 だが、見つけた以上は逃がす訳にはいかない。

 

「そこの武器を持った四人、私は騎士団の者だ。

 インテリジェンスカードの確認をさせてもらうので、こちらに来てもらおうか」

 

 返事はなく、手に持った武器で四人が切りかかってきた。

 

 とはいえ、一人の人間に四人が同時に斬りかかることは出来ない。

 

 左に横移動しながら、手に持ったデュランダルと激情のダマスカス鋼剣を大きく振るって牽制する。

 

(状態異常耐性ダウン)

 

 右下腕に手にした硬直のエストックで盗賊Lv31の男を連続で刺突する。

 結果を確認せず、目の前にいる盗賊Lv15をデュランダルで袈裟懸けに切り捨てた。

 

 レドリックが追いついてきて、盗賊Lv19の男と対峙した。

 Lv31の男は動かない。石化が始まったのかもしれない。

 これで2対2だ。

 

 俺は目の前の盗賊Lv21にデュランダルと激情のダマスカス鋼剣の連撃を繰り出し、最後はデュランダルで首を刎ねた。

 残った盗賊に向かう途中で硬直した盗賊Lv31の首も刎ね飛ばす。

 

 恐怖に震える顔で俺を見る盗賊はレドリックのエストックに首を突き刺されて絶命した。

 降伏勧告も出来なかったが仕方ないか。

 別にレドリックの判断が間違いという訳でもない。

 油断したら、こっちがやられるかもしれないのだし、武器を捨てなかったのだから。

 

「終わったな」

「はい。では、私は従士を呼んで参ります」

 何事もなかったようにレドリックは走っていった。

 

 戦士団にいたから、この程度の修羅場は慣れっこなのだろうか。

 

 

 索敵で周辺を確認したが、外をうろつき回っている赤い点はいないようだ。

 だが、まだ先は長いな。これで、ようやく全域の約1/3ぐらいが終わった程度だ。

 

 討伐した人数は15名くらいか。捕縛はたったの1名。ほとんど皆殺し状態だ。

 生死は問わないと決めているから、別に良いのだけど。

 

 俺のマントは返り血でところどころ赤黒く染まっている。帰ったら捨てるしかないな。

 

 

 その後も、淡々とインテリジェンスカードの確認だけの家ばかりだった。

 だが、7、8軒に1軒は盗賊が潜んでいる家がある。

 その度に俺が抹殺して、従士が後処理を行うという作業が続く。

 

 俺の方は全く平気なのだが、従士達の顔色は悪い。

 なんてブラックな職場なのだろうか。

 従士達に士爵様から後で金一封が出ると良いなと思ってしまう。

 騎士団の手当がどういうものかは知らんが。

 

 全員殺している訳ではないので、1名捕縛した盗賊が増えた。

 それでもようやく2名になっただけだ。9割以上は殺していることになる。

 

 俺が用意しておいた大き目の皮袋には盗賊から切り離した左腕がギュウギュウ詰めに入って、捕縛された盗賊2名の横に置かれている。

 従士達の顔色も悪いが、捕縛された盗賊達の顔色も悪い。

 横に置かれた袋詰めの左腕の山を見て、震えあがっている。

 

 袋の底にある腕は、そろそろインテリジェンスカードが出てきているはずだ。

 一度、袋から取り出してカードだけ回収した方が良いのでは?・・・・・・と事務的なことを考えてしまうが、それを従士達に伝えるのはなんとなく悪い気がして言いそびれている。

 そんなノウハウを得ても、彼らが次に使う機会が訪れるか分からんしな。

 

 それでも、ようやく半分以上の地域の確認が終わった。

 お昼の時間をかなり前に過ぎているはず。結構、腹が減ってきた。

 ただ、「ちょっとお昼ご飯食べてきても良いですか?」と気軽に言える状況でもない。

 

 今日中に終わるのか不安になってきた。

 

 アミルの顔を時々観察しているが、今のところはおかしな点は見当たらない。

 戦闘が発生した際の、サインプレーの指示には的確に対応している。

 とはいえ、元気で笑顔などではないので心配は心配だ。

 戦闘終了後に休憩できるので、その時に声をかけているが少し上の空のような気もする。

 

 早く帰らせてやりたいが、まだまだ作戦の終わりが見えない。

 

 その後も暫く、インテリジェンスカードのチェックのみが続く。

 士爵様の方はMP切れの気配が微塵もないな。

 俺の見えない所で、コッソリMP回復の生薬を飲んでいるのはないだろうか。

 別に良いけどさ。

 

 索敵のマップの端っこに青い点が見えた。

 あれはカミーユ爺さんの集団だな。

 これで終わりが見えてきたか。

 

 その後も、一軒だけ盗賊集団が潜んでいたので、2名討伐して、2名捕縛した。

 早く終わらせたい。

 

 目視で見える所まで、カミーユ組が近づいてきた。

 あと一時間もあれば終わるか?

 

 次の一軒の確認に移ろうかというタイミングで、カミーユ組の方が騒がしいのに気づいた。

 これは戦闘に発展しそうな感じか。

 

 索敵で確認すると、カミーユ組の付近に赤い点が5つある。

 でも、向こうの武闘派三人衆なら、後れを取ることはないだろう。

 青い点3つと赤い点3つが対峙しているっぽい。

 その近くの別の赤い点が2つ、こちらに近づいてくる。

 

 これは逃走を図ったのかしれない。

 

「士爵様、通りの向こうから走ってくる者達がいます。

 念のため警戒をお願い致します。アミルは士爵様の護衛を。

 私が前に出て確認致します」

「了解」

 アミルは士爵様の前に出て槍を構えた。

 

 少し早足で前方の盗賊2名に近づく。

 

「止まれ!

 騎士団の者だ。今、盗賊集団の捜索中だ。

 お前達のインテリジェンスカードの確認をさせてもらうぞ」

 

 返事はなく、二人して切りかかってきた。

 鑑定する間もなかったし、ブラヒム語で話しかけたから通じなかったのだろうか。

 

 散開して別々に逃げれば良いのに、わざわざこっちに来るかね。

 

 左の盗賊を激情のダマスカス鋼剣で一閃して左腕を斬りつけ、右の盗賊をデュランダルで袈裟懸けに切り捨てた。

 残った盗賊は腕を押さえて、顔を見上げた瞬間に俺が首を刎ねる。

 ありゃ、飛ばした首の跡から吹き上がった鮮血が俺のマントに派手に飛び散った。

 もう、呪われたマントのようになってしまったじゃないか。

 降伏勧告すべきだったか。

 だが、今のアミルや士爵様に近づけて万が一があっては困る。

 

 士爵様に報告しようと思ったら、ドーガが駆けつけてきた。

 

「大丈夫そうだな?そちらに逃げてきた盗賊2名はそれか?」

「それって・・・・・・よく分からないが、斬りかかってきたので切り捨てたぞ」

 地面に転がった2名の死体を指差した。

 

「そっちに盗賊はいなかったのか?」

「いや、3名居て爺さんとそっちの若い二人が捕縛した」

 マジ?切り捨てずに捕縛したのか、偉いな。

 

「まだ、あと数軒確認出来てないが、そろそろ終わりそうだな」

「そうだな。思ったより時間がかからなかったな」

 そうか?俺はもっと早く終わると思っていたのだけど。

 

 従士が一人やってきて、死体の左腕の回収と片づけを始めた。

 こちらも4名捕縛しているので、従士一人とレドリックは4名の監視を行い、こちらに寄越せるのは一人だけだ。

 

 その後は、残りの家を二組がそれぞれ確認を行なったが、盗賊は見つけられなかった。

 

 カミーユ組の方は、盗賊を6名討伐。先ほどの3名も含めて計15名を捕縛したらしい。

 そんなに捕縛したのか、何か凄いというか大変だったろうな。

 それにしても、あの三人が居て21名の盗賊のうち3割しか殺してないって事の方が驚きだ。

 

 こっちは、30名の盗賊に対して4名しか捕縛してない。

 ほぼ9割くらいは殺してしまっている。ほとんど俺が殺ったのだが。

 

「よく、そんなに捕縛出来たな。こっちは、立ち向かってくる盗賊ばっかりだったぞ」

「なんか、爺さんとそっちの二人の殺意が激しくて、盗賊が早々に降参しちゃうんだよ。

 おかげで捕縛する従士二人は大変だったけどな」

 まあ、レベルの低い盗賊だとそうかもしれないな。命だって惜しいだろうし。

 

 やっぱり、北側の方が盗賊のレベルが低い傾向があったから、そんな結果になったのかな。

 

「それでも、数名は殺したってことだよな。うちの連中は役に立っていたか?」

「ああ、十分役に立っていたぞ。

 爺さんよりも速く盗賊達の所に辿り着いて、二人でザクザクと切り捨てていたからな」

 なんか目に浮かぶわ。

 

「結局、渡した薬は使ったのか?」

「いや、全然。

 爺さんも元気にインテリジェンスカードの確認をしていたし、怪我なんかしていないからな」

 チッ、地獄巡りはしなかったのか。まあ勘弁してやろう。

 

 士爵様の方も全然平気でインテリジェンスカードの確認をしていたよな。

 インテリジェンスカードの確認はMP消費が少ないのだろうか。

 別に今回の盗賊討伐作戦じゃなくても、多数の人間にインテリジェンスカードの確認することはあるだろうから、燃費が良くないと困るのかもな。

 旅亭のジョブだって、いきなり30名の団体客が来たのに、10名でMPが切れたからチェックインは待って下さいとは言えないか。

 

 攻撃系のアクティブスキルや鍛冶師や薬草採取士の生成系のように実利に繋がるスキルはMP消費が激しいけど、情報表示系のスキルは燃費が良いのかね。

 まあ、考えても分からないか。

 

「生薬はそのまま、そっちで適当に使ってくれ。何かと便利だろう」

「そうか、助かる。ありがたく、もらっておくわ」

 まあ、こうやってお互い無事で笑い合うことが出来て良かったよ。

 

 今後の士爵家がどうなるかはまでは分からないが。

 

「そちらは他に何か変わったことはあったか?」

「変わったことって程じゃないけど、子供の前で・・・・・・盗賊の父親が居てな」

 こっちではなかったけど、カミーユ組の方では居たのか。

 

「それで、子供の前で親を切り殺した?」

「いや、泣き出す子供の前で捕縛されて連行されていったってところだな」

 まあ、それならマシか。

 

 その後、子供がどうなるのかって話はあるけど、そこまで面倒見切れないしな。

 

「子供の盗賊は居たか?」

「いや、居なかったというか隠れていたのかもな。よく分からん」

 まあ、そうだよな。

 見つけ出してまで連行するかっていうと、そこまでやってられないかもな。

 

「まあ、これで終わりが見えてきたか」

「そうだな」

 

 

 これでやっと終了か・・・・・・とは残念ながら、ならなかった。

 

 

 討伐後の残作業が大量にあるからだ。

 

 残作業というのは具体的には3つ。

①捕縛した盗賊の騎士団への連行

②盗賊の隠れ家にある資産、装備品の没収

③討伐した盗賊の死体の始末、装備品の取得

 

 盗賊の連行と隠れ家の資産没収は士爵家及び従士達で行うと士爵様は話していた。

 討伐した盗賊のインテリジェンスカードと装備品はタケダ家側に権利があるので、率先してやらざるを得ない。

 

 問題は盗賊の隠れ家に一時的に隠すことにした死体の処理だ。

 今回の討伐した盗賊の数が32人。つまり32体の死体があるのだ。

 盗賊には厳しく対応するため、死体を騎士団で埋葬することはしないらしい。

 これだけの数になると迷宮に遺棄するそうだ。

 

 通常なら冒険者ギルドに依頼を出すらしいが、今回はこちらで引き受けることにした。

 

 冷静になって考えると、ベイルに来てから成り行きとはいえ、かなりの数の盗賊狩りをしてきたのに、まだ50人も居たことは驚きだった。

 しかも、今日だって討ち漏らした奴らは絶対いるはずだ。

 ホント、どれだけ居るのだよって感じだな。

 今日の作戦が成功に終わったことで、ベイルの治安や迷宮での探索者の安全が劇的に良くなることを願いたい。

 

 悪いことをしていると鬼がやってきて、攫っていくとか逸話が出来そうだ。

 なまはげの伝説とか、こうやって生まれたのかもしれない(違う)。

 

 士爵様指示の下、後処理作業の部隊を2つに分けることになった。

 

 まずは士爵家組は、捕縛した19名の盗賊を騎士団詰所まで連行する。

 連行にあたっては、アミル、ヴィルマ、イレーネも護衛として参加することにした。

 3人はそれが終わったら、クーラタルの自宅に戻って良いと伝えた。

 ベイルの旧宅の鍵を渡しておけば、拠点間移動のスキルを使って帰れるからね。

 とにかく、アミルを早く休ませてやりたい。

 

 従士4名は盗賊の(ねぐら)を家宅捜索して、資産と装備品の没収。

 没収したモノは士爵様の懐に入るのではなく、騎士団で接収することになるらしい。

 それでもドーガの話では、接収したという実績は士爵様の功績になるのだという。

 盗賊の家から家捜しして金目のものを没収するなんて、どっちが盗賊かと思わなくもないが騎士団側の正当な権利らしい。

 

 俺とレドリックは盗賊の死体の後片づけと装備品の収納を行うことにした。

 レドリックは剣士なので、アイテムボックスは持っていない。

 なので、俺がコソコソとボーナス魔法を使えるように、見張り役を務めてもらうことにした。

 

 まず俺はベイルの1階層の魔物部屋に入って、中のモンスターを一掃。

 その後、死体のある家に入ってワープゲートを繋ぎ、魔物部屋に放り込むという雑な作業。

 それを盗賊達の死体の置かれた家毎にひたすら繰り返し行う。

 

 魔物部屋にばら撒かれる盗賊の死体群を見て、なんとも言えない気分になる。

 だが、暫くすると迷宮に飲み込まれてしまい、何もなかったかような状態に戻ってしまう。

 魔物部屋のモンスターの養分になっているのではないかと錯覚しそうになる。

 

 レドリックが皮袋に入っていた左腕から出てきたインテリジェンスカードを回収し、インテリジェンスカードが出尽くした後は、その抜け殻の腕を俺がまた魔物部屋に放り込む。

 血塗れになったマントも魔物部屋に放り捨てたので、俺は自室にゲートを繋いで新しいマントを取って戻ってきた。

 死体から剥ぎ取った装備品も俺のアイテムボックスに全て収納。

 

 正味、一時間もかかっていないかもしれない。

 普段の盗賊退治作業でのノウハウが生きてるのかもしれない。

 誰にも教えられないノウハウだし、自慢もできないことだが。

 

 まだ、家宅捜索を続けている従士達に挨拶だけして、俺達は撤収することにした。

 今回、従士達はかなり活躍したのではないだろうか。

 彼らのストレスは結構なものだと思う。

 

 あれだけの数の盗賊を殺したのだが、うちのパーティの誰もレベルが上がることはなかった。

 モンスターではなく人の場合は、やはり獲得経験値が少ないのだろうか。

 

 ゴッゼル士爵も、騎士Lv8のままだった。

 仮に上がってもLv8がLv9になるだけなので、本人は何の変化も感じられないだろうが。

 

 

 俺は士爵様への報告があるので、ワープゲートを自宅に繋いでレドリックだけを解放した。

 ゲートを閉じて、ベイルの騎士団詰所まで歩くことにした。

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