異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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058.経営コンサルタント

 もう、夕暮れが迫っていた。

 今日は士爵様に作業報告したら、それで終わりだな。

 他の場所に行って何か用事を済ますといった時間はなさそうだ。

 

 騎士団の詰所に行くと、門番はさすがに別の男だった。

 用件を伝えると、ドーガが出てきてくれた。

 

「おう、お疲れさん」

「ようやく、死体の廃棄と装備品の収納が終わったよ。

 この後の報告は俺が士爵様にした方が良いのか?」

 ドーガは俺の質問に首を横に振った。

 

「正直、それどころじゃないぐらい二人とも忙しい。

 上への報告書の作成やら、連行した盗賊達の奴隷商人への引き渡し準備やらでな」

「じゃあ、俺がお前に終了報告したので終わりにして良いか?

 インテリジェンスカードの方はどうする?

 お二方が手すきになるのを待ってから来た方が良いか?」

 俺の質問にドーガが少し悩みだした。

 

 今回、50名を少し超える盗賊達に対して、捕縛したのは19名。

 奴隷として売るにしても、アランの奴隷商館で全て引き受けられるのだろうか?

 

 その50名を超える盗賊集団の家を家宅捜索して資産やらなんやらを接収して、それを報告書に記載して騎士団に報告するのだろう。

 想像出来ないが、かなりの書類仕事になるだろうな。

 

 そして30名を超える盗賊の懸賞金だから、かなりの額になることが予想される。

 その金額を折半にして、士爵家側に寄付として渡すと事前に取り決めをしてある。

 いくらになるか分からないが、傾きかけた士爵家としては喉から手が出る程欲しい金ではなかろうか。

 

 こっちはネコババする気はないから、いつでも渡す気ではいるのだ。

 

「懸賞金の話だけ訊いてくるから、待っていてくれ」

「おう。任せた」

 インテリジェンスカードは持っているので、今、懸賞金に換金するのは特に問題ない。

 

 暫くすると、ドーガが戻ってきた。

 

「懸賞金は士爵様が直ぐに対応してくれるらしいので、こっちに来てくれ」

「分かった」

 折半だから、士爵様側も早く懸賞金の半金が欲しいのかね。

 

 ただ、この場で半額渡すってのは良いのだろうか?

 

 執務室に行くと、士爵様と塩爺が書類と格闘中だった。

 

「今日はご苦労であった。其方達のおかげで作戦は成功裏に終わった。

 改めて感謝する」

「いえ、こちらもベイルの治安維持に貢献出来て光栄にございます」

 俺は適当な追従の言葉を並べておいた。

 

「書類仕事が一区切りするまで、待っていてくれ」

 俺の返事を待たずに書類作業に戻っていった。

 

 やがて、作業に一区切りついたのか士爵様がギルド神殿を机に置き始めたようだ。

 俺はリュックから取り出して、ドーガに32枚のインテリジェンスカードを渡した。

 落とさないようにドーガが机の前まで運び、次々とインテリジェンスカードを渡し、士爵様がギルド神殿に差し込んでいく。

 

(ジャラジャラ・・・・・・)

 

 うん、もうパチンコ台のようにしか思えない。

 それにしても、すごい音というか金貨・銀貨の量だ。

 

 ドーガが重そうな懸賞金の袋を持ってきたので、俺とドーガで数えることになった。

 士爵様は書類仕事に再び戻っていった。

 

 俺とドーガで二回確認して金額が一致することを確認。

 

「すごい金額だな」

「まあ、そうだな」

 実はそれほどでもないと思っている。

 

 懸賞金は全部で87万4000ナール。折半だと43万7000ナール。

 

 ウーゴの居た盗賊集団を討伐した際には20万くらいの金額だった。

 今回、Lv30超えが6名、Lv20台が10名以上いたので、白金貨レベルだと思っていた。

 それに比べれば少ないというのが正直な感想。

 

 だが、条件闘争が出来る訳でもないから、このまま頂くしかない。

 

「金額を士爵様にお伝えして、寄付をどのようにしたら良いか訊いてきてくれないか?」

「ああ、分かった。ちょっと訊いてくるわ」

 任せた。俺が書類仕事に割り込む訳にもいかないから。

 

 やがて、ドーガが戻ってきた。

 

「今日はこのまま、それを持って帰ってもらって、改めて2、3日後に来てほしいってさ。

 寄付は何か適当な書面を添えてくれれば良いって」

「そうか、分かった」

 この世界に寄付用の定型書類がある訳じゃないだろうから、そんなものなのか。

 

 エネドラとちょっと相談してみるか。訊いても知らないかもしれないが。

 

 今日の作戦が成功に終わって、士爵家からの一定の信頼は得たという自負はある。

 だが、索敵で確認する限りは塩爺は青のままだが、士爵様とドーガはグレーのままだ。

 決定的な何かが足りないということだろうか。

 というか、塩爺の青が異常なのか?何か薄ら寒いものを感じる。

 

 これ以上ここに居ると邪魔になるので、退出させてもらうことにした。

 一礼して、執務室を後にする。

 

 ドーガに付き添われて門へと向かう。

 

「なあ。さっきの金額だと折半で40万ナールくらい士爵家に渡るけど、

 その金額で傾いた士爵家がなんとかなりそうなのか?」

「さあ、どうだろうな。俺には分からないよ」

 まあ、ドーガに訊いても無理か。

 

「新しい探索者を雇ったりするくらいは出来るだろうな。

 それと、士爵様の妹君の迎え入れとかは出来るんじゃないかな。

 だけど、住まいの問題もあるし、どうだろうなぁ」

「そうか。まあ、なるようにしかならないのかなぁ?」

 ドーガも苦笑いしながら、頷いている。

 

「じゃあ、またな。次にお前が来る時は俺が騎士団にはもう居ないかもな」

「おいおい、縁起でもないこと言うなよ。じゃあ、またな」

 次にここに来た時にも、こいつが居てくれると良いのだが。

 何かと便利だし。こいつの性格は嫌いじゃない。

 

 ドーガと別れて、適当な木陰から自宅にワープした。

 

 帰宅してエネドラ達に声掛けをした。

 軽食を用意してもらっていたが、既に夕飯が間近なのでさすがに遠慮した。

 アミルの事を訊くと、自室で休んでいるらしい。

 今はそっとしておいて、夕食時に様子を見よう。

 

 臭いが気になるので、先に風呂に行って湯で軽く汗を流させてもらった。

 

 風呂を出ると夕飯の準備が出来ているということで、直ぐに食堂に向かった。

 昼を抜いたので、かなり腹ペコの状態だ。

 

・・・・・・

 

 夕食時にエネドラから商人ギルドでの出来事を教えてもらった。

 情報収集の方は特に目新しいものはなかったそうだ。

 

 今回は目の前にクエスト一覧のウィンドウが出てこない。

 アップデートされた情報がないと表示されないのだろうか?謎だ。

 

 エネドラの旧知の商人との取引は進展があったそうだ。

 

「夜の会議で具体的な取引内容の相談をさせて下さい。

 近日中に我が家に招いて、詰めの交渉になりそうです」

「そうか、良かった。会議でまた詳細な話をしよう」

 

 家具類については、思い切って10セット程購入したそうだ。

 明日の昼過ぎに届くらしい。

 夜に相談する会議の内容を考えると、丁度良い数かもしれない。

 

 エネドラと話をしながら、チラチラとアミルの方を見ると、食事そのものは普通にしているので、食が進まないということではなさそうだ。

 チクルスが話しかけているのだが、心ここにあらずにも見える。

 

 夕食の最後のあたりで、ベイルの盗賊討伐作戦の成功を報告して、士爵様からお褒めの言葉を頂いたことを話した。

 参加した、アミル、ヴィルマ、イレーネ、レドリックに改めて感謝の言葉を伝えた。

 

・・・・・・

 

 食事を終えて、湯舟に浸かりながらレドリックにも相談。

 戦士団では、初陣で敵を殺した時に新米にどのように対処するのかと。

 予想通りだったけど、娼館に行く、酒を飲んで騒いで寝るの二択くらいだと。

 

「そんなものだよなぁ」

「ご主人様は、気にし過ぎなのでは?

 こういうのは時間が解決するものですよ。

 戦闘の連続だと深く考える間もなく慣れていくので、

 死にたくなければ慣れるしかないのですよ」

 えー?それだと、気にして考えていると死ぬってことじゃないか。

 

 アミルが死んだら困るのだけど。

 

 むー、今考えられるのは直ぐの戦闘は避けて、少しリラックスさせることか。

 

 ワンパターンだけど、休暇を与えて図書館にでも送り出すか。

 安直かなぁ~、うーん。

 

 答えは出ないが、これ以上は長湯は出来ないので風呂を出て女性陣にバトンタッチ。

 アミルも風呂に入ってリラックスできると良いのだが。

 あとは、とにかく寝てしまうってところか。

 

・・・・・・

 

 皆が集まってきたので会議を開催。

 

「明日は、今日の作戦の翌日ということもあるので、迷宮探索はお休みとする」

 我ながら強引な説明。とにかく休息日を作ろう。

 

「アミル、ヴィルマ、イレーネ、レドリックは特に仕事などを入れずに好きな事をやってくれ。

 アミルは図書館に行くか?行くならジョブを冒険者にするけど」

「はい。ではお願いします」

 とりあえずは休んでくれそうでホッとした。

 

「四人はエネドラから小遣いをもらってくれ。

 エネドラ、任せて良いか?」

「承知しました、旦那様」

 と言っても、ヴィルマとイレーネは訓練かもしれないけどな。

 

「ご主人様、私は適当に掃除でもしながら、のんびりと過ごします」

 おい、レドリック、それは原作ヒロインのようなセリフでイケメンには似合わないぞ。

 

 好きにしてくれと言った手前、否定しづらいけど。

 ポーラが働いているから、夫だけ休みを取るって気が引けるのかな。

 

「俺とエネドラは午前中はルークの所に行って、スキル融合装備の取引の続きだ。

 その後はターヘラに行って、カラダンの面談をしたい。

 特に問題ないだろうか?」

「問題ありません、旦那様」

 午前はそれで決まりと。後は俺の午後だな。

 

「俺は午後からは用事があって外出する。

 前にエネドラには話した、ほむらのレイピアの返却の件だ。

 夕方にはベイルに戻ってきて、カードハンター達と取引が出来ればと思っている」

「承知しました。

 私は、カラダンを身請けしていればカラダンへの説明を行ないます。

 カラダンが加入してなければ、いつも通りに過ごす予定です」

 どちらにしても、差配はエネドラに任せよう。

 

 カラダンが使える奴だとエネドラが判断してくれれば、将来的には彼女の負担が減るだろう。

 

「明日の予定については、そんなところだな。

 次は、剣術指南所の支援の件についてだ」

 

「ケリーとマリーは余程のことがない限りは我が家で受け入れる方針だ。

 問題は剣術指南所・・・・・・孤児院との関わりだ。

 ケリーとマリーのやる気を維持するためにも、定期的に・・・・・・

 例えば30日に一回か二回くらいは孤児院に慰問で帰らせようかと考えている」

「それでは、里心がついてしまうのではないでしょうか?」

 普通はそうだろうな。

 

「そうだな。ただ戻らせるだけなら、チクルスの言う通りだろう。

 戻る時には、二人が迷宮で取得した食材を孤児院に提供させる。

 孤児院に提供するものを迷宮で取得するのなら、二人も頑張れるだろうし、

 二人が活躍している姿を孤児院の子供に見せる事で良い影響が起きるかもしれない」

「迷宮でのドロップ品を渡すのですか?」

 アミルの言葉に頷いた。

 

「パーティを組んだ6人の中で2人の活躍分、1/3の量のドロップ品に限ってだな。

 場合によっては、それを剣術指南所との契約に盛り込んで、

 ケリーとマリーの契約費用から差し引くようにしても良いかもしれない。

 別に金を惜しむ訳ではなく、あくまで二人のやる気を長く維持するためだな」

「なるほど。

 まだ会ったこともない娘達ですが、

 孤児院のために自分を身売りしようというぐらいですから、効果はあるかもしれないですね」

 契約年数は適当に長く決めても良いし、単年度更新でも良い。

 

「他にも、孤児院とは食料を定期的に提供する一年契約を結んだり、

 孤児院の子供たちの働く場所を提供する契約を結ぶことを考えている。

 食料については、ターヘラのカラダンが居る商店を候補に考えている。

 カラダンを我が家で身請けする、しないとは関係なく考えようと思っている」

「子供たちに仕事を与えるのですか?それは可能な事なのでしょうか?」

 アミルの疑問はもっともだ。

 

 会議で発言が出来るってことは、盗賊討伐の件は少し吹っ切れたのだろうか。

 もう少し、様子見をする必要があるだろうが、今、極端に悪い状況でもなさそうか。

 

「仕事は、ベイルの旧宅で石鹸作りの作業をしてもらおうかと思っている」

「石鹸ですか?エネドラさんがやってることでしょうか?」

 エネドラのやってることの延長なのかな。

 

「エネドラの作る石鹸は出来れば貴族向けにしたいと考えている。

 ベイルでは別の者をリーダにして、一般向け・・・・・・と言っても富裕層向けだが、

 貴族向けよりも少し品質が落ちる程度の石鹸作りが出来ないかと考えている。

 別のリーダというのは、カラダンを身請けするのならカラダンでも良いし、

 カラダンがダメなら、別の奴隷をまた用意して考えたいと思っている」

「なるほど。

 同じ石鹸のレシピでも旦那様のスキルでは、

 このクーラタルとベイルでは品質が異なりますものね。

 その品質の差を利用して、販売先の対象を分けようというのですね」

 エネドラの言う通りだ。

 

「孤児院には今14人の子供がいるので、半分の7人、もしくは1/3の5人くらいを

 ベイルの拠点に7日間とか15日間ほど泊りで引き受けて作業をしてもらう。

 その期間の開始と終わりの時期に我が家から冒険者を派遣することも考えている。

 そして、作業をしてもらう以上は対価をちゃんとこちらでも払う。

 ベイルでの衣食住はこちらで保障して、稼いだ金は孤児院に納めてもらえば良い。

 こちらは安い労働力が得られるし、相手は金ももらえてお互いの利益になる。

 場合によっては、読み書きを学ばせたり、

 別の素養があるのなら、商売の手伝いなどをさせても良いかもしれない。

 子供とはいえ、自分で食事を作らせたり、掃除などをさせて自立を促すべきだろう」

「かなり大がかりなことを考えているのですね」

 まあ、どこまでやるかは成り行きだ。

 子供の人数次第では、こちらの大人も一人ではなく二人居た方が良いかもしれない。

 

「初めのうちは手を広げ過ぎないように、石鹸作りだけで良いと思っている。

 慣れてきて、その子供たちの様子を見ながら決めていけば良いだろう。

 だが、こういったことを引き受けながら、双子のやる気を維持させたい。

 他の子供で見どころがある者が居るのなら、我が家に迎え入れても良いかもしれない」

「上手くいかないのなら、縮小すれば良いでしょうから。

 元々、そのようなことを我々がせずに、奴隷の対価だけ払えば問題ない訳ですから」

 身も蓋もないが、その通りだ。

 

「旦那様、ターヘラの店から食料品を提供させるのは、瑪瑙の商売と関連するのでしょうか?」

「そうだな。他にも孤児院の近場の店から食料調達をする方が便利だからというのもある。

 迷宮のドロップ品を使って、食料と交換しても良いと思っている。

 瑪瑙の話を具体化させるのは、カラダンの身請けの可否が決まってからだな」

 俺の思うように誘導している気がしなくもないが、後はエネドラの決定次第だ。

 

 その後も、孤児院に関連することで細々と意見交換を行なった。

 

 孤児院の話が一段落ついたので、士爵家のことも少し話をした。

 40万ナールほどの金が士爵家に渡るので、それなりに潤うのではないかということ。

 金が渡ってから、暫く様子を見て、次の支援策を提供するかどうかを見極めようというもの。

 

 住居と装備品だけ与えれば、士爵家はなんとか持ち直せるのではないかと思っている。

 

 孤児院や士爵家の立て直しに策をいろいろ考えるなんて、やってることは(なんちゃって)経営コンサルタントだな。

 当然、こちらにも利益があると思うからやってる訳だが。

 

 それにしても、孤児院(労働力 と 奴隷購入)、ターヘラ商店(食料)、タケダ家(石鹸、装飾品)と3つを繋いで取引なんて世界史で習った三角貿易みたいだな。

 異世界に来て、こんなことをやるとは思っていなかった。

 

 次は、エネドラの旧知の商人との取引をするスキル融合武器の相談。

 

 手持ちのモンスターカードと空きスロット有の鋼鉄系の武器からすると、激情の鋼鉄剣か、強権の鋼鉄槍のどちらかが候補。

 交換する素材は革のみで良いだろう。

 鋼鉄製の装備品との交換だから、それほど良い素材は要求出来ない。

 

 モンスターカードの方は、翌日のルークとの取引結果次第かもしれない。

 ルークから得たカードと違う種類のもので優先度が高いものを要求する。

 状態異常の耐性を付与するのに有利なものでも良いが、ダメならサイクロプスやウサギで妥協する手もある。

 相手が用意できる種類はルークと比べることは出来ないだろうから、今後の取引を考えて無理のない範囲で収める方が良いかもしれない。

 

 盗賊討伐作戦に参加した三人も疲れているだろうから、この辺りで会議は終了しよう。

 

 お休みの挨拶をして、解散にした。

 

 アミルも今日はゆっくり休んでくれ。

 

 自室に戻って、主立ったイベントの整理。

 

 

■情報▼

【拠点名】クーラタルの邸宅<本城>(2/4)▶

 

【拠点名】ベイルの屋敷<支城>(1/4)▶

 

■人材育成/採用(ユキムラ)▶

 

■軍事(ユキムラ)▶

 

■商業/取引(ユキムラ)▶

 

■開発(エネドラ)▶

 

■生産(チクルス/アミル)▶

 

■その他/クエスト▼

①カードハンターとの取引(ベイル)

 ⇒コボルトハンター経由で依頼中(明日来訪予定)

 

②ダマスカス鋼工房の対応(ドブロー)

 ⇒スキル融合防具の依頼の可能性有

 

③硬革工房からの依頼(ドブロー)

 ⇒肉3種を納品(ザビルの25階層攻略時?)

 

④ハルツ公爵の災害救助支援(クーラタルの冒険者ギルド)

 ⇒災害救助物資の輸送支援作業完了。

 ⇒ハルツ公爵、ゴスラー騎士団長と知己を得た。困り事があれば来訪可能となった

 ⇒鏡、琥珀、ネックレスの商談の計画を立てる(カラダン加入後)

 

⑤ゴッゼル士爵への対応(ベイル)

(1)盗賊討伐作戦(成功:後処理実施中)

 ⇒2、3日中に書類を添えて、懸賞金の半金(43万7000ナール)を寄付する

 

(2)別の施策検討

 ⇒エネドラと対応を協議中。懸賞金の半金を譲渡後に様子を見ながら対応する

 

⑥剣術指南所の対応(ターヘラ)

(1)ケリー&マリーの受入

 ⇒基本的に受け入れる方向。二人のモチベーション維持のための施策検討中

 

(2)業務提携

 ⇒食料支援、就労支援の対価に身請け金額交渉等を行なう

 

明日の予定

(午前)

・俺    :ルーク来訪、ターヘラ(カラダン面談)

・アミル  :休息(図書館)、(装備品作成)

・ヴィルマ:休息(訓練)

・イレーネ:休息(訓練)

・エネドラ :朝食準備、ルーク来訪、ターヘラ(カラダン面談)

・チクルス:朝食・昼食準備、洗濯、生薬生成

(午後)

・俺    :初めの村、ベイル(コボルトハンター)

・アミル  :休息(図書館)、(装備品作成)

・ヴィルマ:休息(訓練)、家具受入

・イレーネ:休息(訓練)、家具受入、(ブラヒム語勉強)

・エネドラ :夕食・朝食の準備、家具受入、(カラダン受入?)

・チクルス:夕食・朝食の準備、(掃除)、生薬生成、家具受入

※夜は定例会議

※ポーラ(家事)、レドリック/レイモンド/モニカ(護衛、訓練、雑用等)

 

 元居た世界では、初めて戦争で相手を殺した兵士などには、娼館に行って女を抱かせるといったシーンを何度か小説や映画で見た気がする。

 レドリックが言っていたような話はどこでも一緒か。

 ただ、女性の場合ってのはどうだったか。記憶に全く残っていない。

 元の世界とこちらでは倫理観も世界観も異なるので、型にはめた対応が適切とは思えない。

 会議の場で話をしたような、休息を与えて図書館でリラックスしてもらうという、ありきたりなことしか俺には思いつかない。

 

 アロマテラピーや花を飾るとか、まだこの家では出来ないし。

 とはいえ、何が万全な準備なのかも分からない中で、ずるずると盗賊殺しの先送りもしたくはなかった。

 

 

(コン、コン・・・・・・)

 

 答えの出ない問答をしていると、ノックの音がした。

 

 ドアを開けると、アミルが立っていた。

 エネドラの配慮か。

 今日は休ませるのかと思っていたのだが。

 

 ただ、今晩は添い寝だけにして、ケアしよう。

 

 アミルをベッドに誘い、横に寝かせる。今日はマッサージもなしだ。

 

 アミルの頭を撫でながら、軽く抱きしめて、顔を俺の胸に寄せた。

 暫くは頭を撫でながら、アミルの呼吸を胸に感じるままに任せる。

 

「ご主人様、子供扱いしないで下さい・・・・・・」

 口では抗議しているようだが、声が震えている。というか泣いているのか。

 

「そうだな」

 アミルの抗議を認めながらも、彼女を胸に抱くのは止めない。

 

 俺が命令したせいだ。いくらでも付き合うよ。

 

「ご主人様にお願いがあるのですけど・・・・・・」

 ん?アミルからお願いって珍しいな。なんだろう。

 

「お願いって?」

 俺の胸に顔を埋めているので、表情が見えない。

 

「目を瞑って、私が良いというまでジッとしていて下さい。絶対、目を開けてはダメですよ」

 何か、ちょっと期待しちゃうし、怖いけど、ここで断る訳にはいかないよな。

 

「分かった。目を瞑るし、動かないから」

 俺は目を瞑り、体を伸ばすと、アミルが俺から離れたようだ。

 

 

(コチョ、コチョ、コチョ、コチョ・・・・・・)

 

 

「ちょっと、ちょっと待って・・・・・・ひぃ」

 な、なんだこれ。どういうことだ。

 

「あっ、目を開けたらダメです」

 

 

(コチョ、コチョ、コチョ、コチョ・・・・・・)

 

 

「ひぃ、くすぐったいって・・・・・・」

 どうして、こんなことをやられているんだ。

 

「動いたらダメです」

 いやいや、それ無理だから。

 

 

(コチョ、コチョ、コチョ、コチョ・・・・・・)

 

 

「ちょっと待って・・・・・・待ってってば」

 

 

(コチョ、コチョ、コチョ、コチョ・・・・・・)

 

 

「参った。参りましたから、止めて・・・・・・」

 

 

(コチョ、コチョ、コチョ、コチョ・・・・・・)

 

 

 ホント、なんでこんなことに。

 

 

「あはは、ご主人様でも苦手なことがあるのですね。可笑しい」

 いやいや、くすぐられるのは誰だって苦手だろうに。ってか、今のは一体なんなの?

 

「もう目を開けても良いですよ」

 

「はあぁ。今のは一体?」

「チクルスさんに聞いた、ご主人様の弱そうなことをやってみました」

 また、アイツか。でも、なんでこのタイミングで?

 

「もう少し、私のことを信用してほしいです。

 初めて盗賊を殺して確かに怖くて、気持ち悪かった・・・・・・です。

 今でも、槍を握ったときの感触が残っていて、暫くは忘れられないと思います。

 でも、私はきっと立ち直ります。

 だから、ご主人様は私をそんな心配な顔で見ないでも大丈夫ですよ。

 もっと、にこやかな顔で私を見ていてほしいです」

「そうか・・・・・・」

 俺のチラチラ確認する視線が却って、不安を煽るのか。

 

 初めにアミルが言っていた『子供扱いしないで』って、本当にそういう意味だよな。

 

「分かりましたか?」

「ああ、分かったよ。悪かっ・・・・・・」

 アミルに口を塞がれてしまった。

 

 気を遣っているつもりが、気を遣われてしまったな。

 もう、今日は本当にアミルに敵いません。

 

・・・・・・

 

 その後は、二人で夜更かししながら語り合った。

 語り合うと言っても、ほとんどはアミルの話に俺が聞き役に回る形だ。

 子供の頃の話、鍛冶師にどう憧れていたか、迷宮に新米パーティで臨んで苦労した話。

 アミルの話は尽きずに、聞いている俺も楽しかった。

 

 俺は孤児って設定だから、元の世界での両親と過ごした時の話は出来ない。

 子供の頃に友達と遊んだ話や、武道の練習でキツい目にあったことを師匠のしごきに置き換えて、適当に脚色して話をした。

 いつかホントにボロが出そうだ。

 

 アミルの話は楽しい話ばかりではなく、奴隷として売られた時に思った事まで話してくれた。

 俺と会った時の話もチョッピリ。

 そんな風に思われていたのかと苦笑してしまった。

 

 話し疲れたのか、アミルは眠そうな顔になり、そのまま二人で抱き合って寝てしまった。

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