異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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059.商人の取引(その4)

 起きたら、目の前にアミルの頭が見える。

 昨晩の夜更かしのことが思い出されて、口元が緩んでしまう。

 

 元の世界でも殺人童貞を捨てた兵士が先輩に娼館を奢ってもらう話があって、初めてその映画を見た時の強烈な印象が残っていた。

 だから、アミルにも()()()を使ったO・MO・TE・NA・SHI をしてあげようかと思ったのだが、自重して良かった。

 

 やはりエネドラの言う通り、自重は大切だな。

 まあ、O・MO・TE・NA・SHI は別の機会に考えよう。

 

 アミルへのO・MO・TE・NA・SHI のことをイロイロ想像していたら、起きてしまったようだ。

 

「ご主人様、何か悪いことを考えていますね?」

 いやいや、アミルをもてなすことしか考えていないのだが。

 

 横たわったジト目のアミルをギュッと抱きしめて、誤魔化すことにした。

 そのまま、押し倒したい衝動を抑えて二人でベッドから抜け出した。

 自重もソロソロ限界に近い・・・・・・。

 

 寝巻のままのアミルは、そのまま俺に一礼すると退出してしまった。

 ホッとしたような、残念のような、なんとも言えない気分だ。

 

 朝っぱらから、木刀を打ち鳴らす稽古の音が外から聞こえてくる。

 あいつらも、ホントよくやるよな。

 でも俺よりもよっぽど健全な振る舞いか。

 

 もう少し別の楽しみを覚えても良い気がするのだが。

 あいつらに、O・MO・TE・NA・SHI を施したら、どんな感じになるのだろうか。

 

 ダメだ、昨晩は添い寝だけにしてしまったから、ホントに自重が限界に達しつつある。

 明鏡止水、明鏡止水・・・・・・

 

 

・・・・・・

 

 朝食を食べながら、エネドラと午前中のルークとの取引について話をした。

 こちらの要求に対して、ルーク側の回答を確認するだけだから、まずは相手の出方次第と。

 良いモンスターカードを提示してくれれば良いなくらいの緩い感じ。ダメなら取引は流す。

 

 チクルスが特にニマニマしておらず、アミルも挙動不審ではない。

 特に(やま)しいことは何もしていないし、何も問題は無い。

 

 午前中のエネドラの護衛はモニカが担当する。

 既にレイモンドから護衛についての引継ぎを受けたそうだ。

 これで、三人とも商人ギルドでの護衛は一通り経験することになるか。

 今回はルークとの取引だけの短いものだが。

 

 

・・・・・・

 

 食事を終えて、俺とエネドラはルークとの取引のために出掛けることにした。

 女性の準備は少し時間がかかるので多少ゆっくり目の準備を行い、過去の取引メモにザっと目を通して階下に降りた。

 

 既に、エネドラとモニカは準備を終えて待っていたようだ。その横にアミルもいる。

 

 先にアミルのためにゲートを開いて帝都の冒険者ギルドに繋いだ。

 既に冒険者にジョブは変えてあるが、行きだけのサービスだ。

 恐縮するアミルに手を振って送り出した。たまには見送る方になるのも良い気分。

 

 今度は自分達のためにゲートを開き、商人ギルドの壁にワープした。

 

 ゲートから出て、受付に行こうかと思ったら、珍しくルークが待合室に居た。

 ただ、ルークだけでなく見知った顔も居る。

 

「おお。これは奇遇です。冒険者殿もオークションが目当てでございますか」

 顔は覚えていても名前は覚えていないようだな、ゴスラー騎士団長。

 

 これは、あのイベントかな。

 

「まあ、ちょっと装備品関係で」

 これから、頑強のダマスカス鋼大楯の取引ですとは言えない。

 既にルークが話しているかもしれないが。

 

「なるほど。冒険者にとっては最も重要なものです」

 重要でも取引に使ってしまうのですけどね。

 

「ゴスラー殿も取引があって、こちらに?」

「公爵の仕事というのは人付き合いが大半です。どうしても贈り物をすることが多くなります」

 贈り物を我が家から購入するのはいかがでしょうか?

 

「何か大切な人に贈るためのものを探しているのですか?」

 まだ、何も大したものは仕入れていないけど、ネタ振りだけはしておかないと。

 

「近く第三皇子の結婚式が行われます。

 新しく家を立てることになるので気を使います。

 普通は皇家の結婚ならエリクサー、出産祝いなら誰が相手でも自爆玉でいいのですが。

 別家を立てるにふさわしい装備品などが入手できればと思っています」

 エリクサーを持っているのなら、鏡を多く購入してくるので交換して下さいと言いたい。

 

 これから鏡をお薦めしようかと思うのだけど、タルエム仕様にした鏡とエリクサーだと鏡が見劣りする気がするのだけど。

 タルエム仕様の鏡10枚セットとかで贈るのだろうか。

 感覚的にはそれでも、エリクサーと比べると見劣りするよな。

 何か他のものとセットにするのかもね。

 まあ、俺が贈る訳でもないから、どうでも良いか。

 

「なかなか、選ぶのが大変そうですね」

「何か持っていませんか」

 うーん・・・・・・と俺は小首を傾げながら、悩む素振りをする。

 

「贈り物をそろえるのも手間がかかります。威霊仙でも入手できる機会があったら、譲っていただきたいと思います」

「ペルマスクの鏡などは、どうお考えですか?」

 もうルークを置き去りにして、商談をしている様相。

 

 ただ、威霊仙はこちらが欲しいぐらいです。出来れば2つ。だから持っていてもあげません。

 

「ペルマスクに近い東の方に領地を持っている貴族などはよく使っています。

 ただ、うちは北にありますから。ペルマスクまで行くのは大変です。

 領内にいる有力者の結婚式などのために帝都で手に入れることはあります。

 ひょっとして、ペルマスクの鏡を安く手に入れられますか?」

「実は先日、ペルマスクまで行く機会がありました」

 ゴスラーが少し、興味を示した表情になった。

 

「ほう、そうですか。

 ペルマスクの鏡なら使うこともありますので、

 もし安く手に入るようでしたら、ボーデの宮城までお持ちください。

 買い取らせていただきます」

「そうですか。では検討してみたいと思います」

 ゴスラーは笑みを浮かべながら頷いている。

 

「では、これを渡しておきましょう。ハルツ公のエンブレムです。

 宮城でこれを見せれば私や公爵にすぐ話が通るはずです。

 それほど悪用はできないと思いますが、

 領内で不必要に見せびらかすのは罪に問われますので、お気をつけください」

「承知しました」

 これで、後は公爵に頼んで委任状を受け取れば良いのか。

 

 前にペルマスクに行った時は委任状がないと鏡の素体は売れないって言われたのだよな。

 Web版原作では委任状無しで買えたのに、こっちは小説版に準拠なのか。よく分からんな。

 

 そういえばペルマスク絡みでチクルスに頼むことがあったな。

 そちらも、そろそろ考えないとな。

 

「では、私はこれで・・・・・・」

 ゴスラーはお供の者と共に、ルークに挨拶をして去っていった。

 

 

「お知り合いだったのですか?」

「そうだな」

 適当に相槌をうっておく。

 

「伝言をもらったので来たのだが、これから商談をしても良いか?」

「もちろんでございます。応接室を確保して参りますのでお待ちください」

 ルークが受付の方に向かった。

 

 さっきまで気づかなかったが、先日も同席していた付き人が受付の傍に居るな。

 ゴスラーとの商談でも同席していたのかな。

 

 ルークは受付の職員と話をした後、付き人とも何か話をしている。

 今日の取引の準備だろうか。

 

「では、参りましょうか」

 ルークを先頭に我々も続いた。

 

 応接室に入り、改めて挨拶を交わした。

 今回は俺とエネドラが座り、モニカが後ろで護衛をする形だ。

 

「後ほど、我が商家の者が持って参りますが、

 まずはオークションで落札したモンスターカードの取引となります」

「そうか、分かった」

 大楯の取引と並行してオークションでの依頼もかけていたからな。

 

「落札したカードは、サイクロプスが2枚とコボルトが2枚となります」

「そうか、それぞれ2枚ずつか」

 前回の取引から、それなりに時間が経過しているから4枚なら悪くはないか。

 

「カードが来たら代金を支払うが、もちろん全部頂こう」

「はい。カードのオークションは継続でよろしいでしょうか」

 ルークの質問に頷いた。

 

「次は大楯の取引の件ですが、素材とカードの候補を用意しましたので、

 今回も前回同様の取引をさせて頂きたいと思います」

「なるほど、承知した。問題は取引の中身だな」

 どんな取引になるか楽しみだ。

 

「大楯と交換する素材ですが、ダマスカス鋼と竜革で割合がご指定できます。

 板と革の分はいかがいたしましょうか?」

「板と革は、全て革に換えてもらえるだろうか?」

 大楯を生成するのに、板と革も必要だからな。

 今は革が全くなくなってしまったので、革がもらえると助かる。

 

「なるほど、では革は40枚となります。

 ダマスカス鋼と竜革の割合はいかがいたしましょうか?」

「ダマスカス鋼を40個にして、残りを竜革にしてほしい」

 ルークは手元の紙を見ながら計算している。

 

 ダマスカス鋼と竜革の素材の割合が選べるのはとても助かるが、ちょっと気味が悪いな。

 なにか、ルーク側の思惑があるのではないかと疑ってしまう。

 

「では、ダマスカス鋼を40個と竜革が187枚となりますが、宜しいでしょうか?」

「ああ、それで問題ない」

 こちらで事前に計算してきたものと、ほぼ同じだ。

 竜革1枚分は端数なのでサービスしてくれたようだな。

 

(コン、コン・・・・・・)

 

 ドアがノックされ、ルークの付き人・・・・・・ヌートが入室してきた。

 確か、武器商人だったな。

 

 ヌートがルークにモンスターカードとメモを渡している。

 これは、オークション側のカードだな。

 

「では、先にオークションのカードの取引を終わらせてしまいましょうか。

 こちらがサイクロプス2枚とコボルト2枚となります。

 メモをつけておりますので、混ぜないようにお願いいたします」

「ああ、ありがとう」

 混ざっても、なんとかなるけどね。

 

 カードとメモを受け取り、代金と次回のオークション分の手数料を支払った。

 

「では、大楯の方に話を戻しますが、用意したカードは

 コボルトが10枚、

 サンゴが4枚、

 つぼ式食虫植物が3枚、

 はさみ式食虫植物が3枚、

 スライムが4枚

 となります。コボルト以外の4種類のカードから10枚選んで頂くようになります。

 どのカードも希望された1種類5枚まで集められなかったので、このような形となりました」

「そうか」

 さて、どういう組み合わせにしようか。

 

 それにしても、カードの原価は4種類でそれぞれ異なるはずだが、どれを選んでも良いというのはどういうことだろうか。

 スライムが若干安いが、他は同じか。誤差の範囲ということか。

 元々、こちらが融合したのはスライムだったから、うちが少し有利な気がするな。

 それだけ、今回用意した大楯が欲しいということだろうか?

 

 手持ちの我が家のカード在庫メモを見ながら考える。

 

「サンゴを4枚、つぼ式を2枚、はさみ式を1枚、スライムを3枚にしてもらえるだろうか?」

「承知しました」

 少し、表情が揺らいだように見えるのは、これほど分散した選択を取るとは思わなかったのだろうか。

 

 ただ、我が家の在庫を考えると、これがベストな気がする。

 

 その後は俺が取り出した頑強のダマスカス鋼大楯をルークが鑑定して真贋の確認を行なった。

 問題は収納の方で、俺が補助しながらルークのアイテムボックスに入れるという、なかなか見ない光景が展開された。

 

 やっぱり人間族は非力だよな。取り出す時は誰かに手伝ってもらいなよ。

 

 その後はヌートが持ってきた素材を俺が延々受け取ってアイテムボックスに収納するという、なかなかの単純作業。

 だけど、これをやらないとアミルに素材を持って帰れないからやるしかない。

 ようやく終えて、モンスターカードとメモを俺がリュックに仕舞って完了。

 

「この取引でお渡しした素材とカードで出来たスキル融合装備品も

 我が商家と取引はできますでしょうか?」

「それは書面での契約をせず、

 何か取引出来そうなものが作れたら改めて相談させてもらえないだろうか?」

 ルークの狙いはこれだったのかな。

 

 まあ、いずれはスキル融合武器を用意して等価交換の取引をやるのは間違いない。

 ただ、あまりにも矢継ぎ早にやるのもね。

 エネドラの旧知の商人との取引もあるし、急ぎ過ぎないようにしよう。

 

「では、またカードを落札出来たら連絡を頼む」

「はい。今後ともよろしくお願いいたします」

 ルークに見送られて、商人ギルドをあとにした。

 

 これで、またアミルが装備品の生成が出来るな。ホント自転車操業だよな。

 

 適当な木陰から、ターヘラの冒険者ギルドにワープした。

 

・・・・・・

 

 ギルドを出てアルマーの居る商館に三人で向かった。

 エネドラもモニカもターヘラは初めてなので、少し物珍し気に歩いている。

 クーラタルに比べると田舎っぽいので、逆に新鮮なのだろうか。

 

 商館に着いて、ノックをするとアルマーが出てきた。

 行き先がカラダンの所だと伝えると、また外で待つ羽目に。

 三人で外で待ってるのも、なんかマヌケでおもしろい。

 

 やがて、準備の出来たアルマーが出てきたので、おばちゃんの店に向かった。

 道すがら、エネドラとモニカの紹介をしながら、のんびりと歩く。

 

「この前のオークションの件ですが、お話ししてもらった条件で良いので、

 4日後のオークションに一緒に行くのはいかがでしょうか?」

「そうか、こちらとしても興味があるので是非、同行させてもらいたい」

 竜人族がいきなり出てきたりはしないだろうが、普通に良い人材に巡り会えればラッキーだ。

 

「それで、パーティに入るのは10日にするか?5日にするか?」

「えっ、えっ、どうしましょう。ユキムラさんが適当に決めてくれて良いですよ」

 そんな適当にって。

 

 でも、こっちは経験値ブーストが出来るから、短くてもWinーWinになるんだよなぁ。

 

「では、5日間にしよう。実際にパーティに入ってもらう時期はまた調整させてくれ」

「はい。分かりました」

 レベリングしたいメンバは他にも居るので、それらに混ぜてやってしまおう。

 

 おばちゃんの店に着いたので、アルマーが話をつけに向かった。

 やがて、おばちゃんが出てきて、

 

「三人も来たのかい。

 今の時間帯は暇だから、カラダンとしっかり話をしな。

 この前の部屋が空いてるから、勝手に入って使いな」

「助かるよ、ありがとう。使わせてもらうよ」

 店の中に入っていくとカラダンがこの前の部屋に入っていくのが見えた。

 おばちゃんに言われたのかね。

 

 アルマーは気を利かせて退席してくれた。

 部屋に入って、まずはエネドラの紹介をした。

 

 そこからエネドラの怒涛の質問攻撃が始まった。

 得意な商品、帳簿の付け方、今までの商売の経験での成功談・失敗談など事細かに確認する。

 商売の信条、部下の叱り方、褒め方等、カラダンが経験してなさそうな事まで質問している。

 少し考えながらも全ての質問に、カラダンは丁寧に答えている。

 

 結構、ガチな面談になったな。

 流石に自分の部下になるかもとなると真剣勝負か。

 

 ただ、質問の内容が性の知識にまで及ぶと、ちょっと聞いてる方がツラくなってきた。

 避妊の仕方、女性の部下から迫られた時の対応・・・・・・ちょっと、これ具体的に訊いても良いのかと思わなくもない。

 

 セクハラ面談?

 いやいや、我が家には若い娘達がいるから、当然気にしなければならないのか。

 元の世界でやったら、セクハラ110番に駆け込まれて一発アウトだけど、この世界だと事前に確認するのが当たり前なのだろうか。

 単に、エネドラの趣味で聞き出したかった訳じゃないよね?圧迫面談で試している?

 

 エネドラの質問内容がより具体的な話になり、俺もモニカも俯き加減にならざるを得ない。

 これって、別の奴隷を雇う時に俺が質問出来る気が全くしないぞ。

 男性だけじゃなくて、女性にも同じ質問するの?・・・・・・無理だわ。

 

 しかしカラダンは、この質問によく冷静に回答できるな。

 右の脳が眠っていて、左の脳が答えているから出来る芸当?・・・・・・そんな訳ないか。

 

「私の質問は一通り終わりました。旦那様からも何かございますか?」

 もう、ほとんどエネドラが聞き出してるだろう・・・・・・そうだな。

 

「なあ、カラダンはエマーロ族だろう。

 エマーロ族って定住を嫌う傾向があるって聞いたことがあるのだけど、

 カラダンは商人になって店を構えて一か所に留まるのは問題ないのか?」

「ああ、私はエマーロ族でも定住がダメではないようなのですよね。

 アチコチ外に出ていくのは嫌いじゃないのですが、

 腰を据えて何かをやりたいって思うようになってしまって。

 それで他のエマーロ族のみんなと感覚が合わないんですよ」

 へぇ。そんな奴もいるのか、まあ我が家にとっては好都合だが。

 

 俺はエネドラに向かって頷いた。

 

「では、あなたは私の下で働いてもらいます」

 エネドラがカラダンの採用を宣言した。

 これで、一つ肩の荷が下りた。

 

「じゃあ、カラダン、改めて宜しくな。

 購入金額は前に言っていた通り15万ナールで、お前の取り分は10万ナールの予定だ。

 使い道はお前に任せるから好きにしてくれ」

「はい。ユキムラ様、エネドラ様、よろしくお願いいたします」

 今回は3割引きのセットはなしだ。

 

 その後は、せっかくの機会だから、この店と瑪瑙や装飾品の取引をしたいことや、その取引をカラダンに任せたいといったことをかいつまんで説明した。

 瑪瑙については原石が1000ナール程度の売値で、研磨した装飾品になれば出来具合によって4万ナールから8万ナールくらいまで幅があるそうだ。

 原作でも琥珀がそのような感じだったから同じということか。

 

 まずは、今日から我が家に来てもらって、エネドラからイロイロ説明することも話した。

 我が家には秘密が多いからな。

 

 

 カラダンは退出し、おばちゃんに挨拶とアルマーに奴隷契約を行ないたい旨を伝えにいった。

 世話になったおばちゃんに、ちゃんと挨拶してきてくれ。

 

「エネドラはカラダンをいつ頃から商売の場に連れていくつもりだ?」

「今までの素地があるから、もう直ぐにでも良いでしょう。

 しばらくは私と二人一緒に行動してもらいますが、

 大丈夫だと思えば一人で任せてみたいと思います」

 ずっと付きっ切りにしてたら、雇った意味ないからな。確かにそれで良いか。

 

「分かった。エネドラに任せるので、何か相談事があればいつでも言ってくれ」

「はい。よろしくお願いいたします」

 

 

 やがて、カラダンがアルマーとおばちゃんを連れて戻ってきた。目が少し赤い。

 さきほどはエネドラのセクハラ質問に動じてなかったはずなのに、こういう時は感情が露わになるのだな。

 俺としては人間臭い方が付き合い易いから、そちらの方が歓迎だ。

 商売人としてのポーカーフェイスはエネドラから学んでくれ。

 

 

「では、奴隷契約を行ないます・・・・・・」

 アルマーが定型通りの説明とインテリジェンスカードの変更を粛々と行なった。

 死後相続で相続先はエネドラだ。

 

 金額は手数料込みで15万ナールだ。

 アルマーからの値上げ交渉はなかった。甘い奴だ。

 

 契約が終わったので、カラダンをパーティに加入させた。

 

カラダン(エマーロ族 ♂ 23才)

商人Lv9

装備 皮の靴

(控えのジョブ)村人Lv6 探索者Lv4 戦士Lv1 薬草採取士Lv1

 

 少しは迷宮で戦ったことがあると言ってたから、探索者がLv4だ。

 これって、アミルを迎え入れた時よりも高いな。

 年齢が上だから単純比較は出来ないか。メインは商人だし。

 まあ、こいつを迷宮で鍛えようとは思わないけど。

 

 商人を当面はレベル上げするとして、その次のジョブを防具商人にするのか、別のジョブにするのかは本人とエネドラにも相談して決めないとな。

 

 カラダンは契約金の5万ナールをおばちゃんへの借金返済にあて、更に5万ナールを渡そうとして断られていた。

 

「お前さんみたいなひょっこから金を受け取る程、落ちぶれてはいないよ。

 そういうのは、もっと儲けられるようになって、

 この商店を超えるような店を切り盛り出来るようになってからやりな」

「・・・・・・」

 まあ、今は引き下がっておけ、カラダン。

 

 そのうち立派な店を経営するようになっているだろうし、そうでなければ俺が困る。

 

 また、目が赤くなってしまったカラダン。

 

「もう、うちの従業員でもないのだから、とっと出ていきな」

「・・・・・・」

 またすぐに来るから、その時はよろしくね、おばちゃん。

 

 四人で店を出て、アルマーの商館まで歩きながら、剣術指南所の件を伝えた。

 歩きながらでも話せる程度の内容だ。

 

「ケリーとマリーの二人は我が家で迎え入れる方針だ。

 明日の午前中に剣術指南所に行って、契約を結びたいと思っている。

 今日中に、相手側の要望をまとめておいた方が良いだろう。

 まとまっていても、いなくても明日の午前中に訪ねるので、相手に伝えておいてくれ」

「分かりました。伝えておきます」

 伝えるだけじゃなくて、意見もまとめておいてくれると助かるが望み薄かな。

 

 アルマーに今日対応してくれた礼を言って別れた。

 

 適当な木陰から自宅までワープ。

 

 カラダンには早速玄関での靴の履き替えルールをエネドラが説明している。

 

 カラダンの対応を任せて、ルークとの取引で得たカードと鍛冶素材を二階の倉庫に収納した。

 数が多いと本当に大変だ。

 でも、これでアミルの装備品生成が捗るだろう。

 

 

 午後の対応に向けて、余剰装備品を倉庫から取り出してアイテムボックスに収納した。

 なんか、アイテムボックス操作ばっかりしているな。

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