【ルール】
①与えられたキャラクターのエミュレーションをすること
②エミュレーションに失敗するとデスゲージが蓄積し、最大値になると死亡
③能力値は与えられたキャラクターの原作時期と同等のものを付与
④言論、行動、思想は自由。しかし与えられたキャラクターから逸脱する場合はデスゲージが蓄積する。
◆
トリニティ総合学園の廊下は、冷たく息苦しい。白亜の壁に反射する蛍光灯の光は、まるで無機質な監視者の視線だ。
浦和ハナコが一人、ゆっくりと歩を進める。足音だけが、静寂を切り裂くように響く。彼女の心は、いつもどこかで軋んでいた。
この学園、この派閥と打算に満ちた空気の中で、彼女はまるで迷い込んだ小鳥のようだった。
優秀だと呼ばれ、期待を背負い、しかしその重さに心が折れそうになる瞬間が、何度あったことか。
そこへ、一人の女子生徒が現れる。藍染と名乗る彼女は、静かに、だが確かな存在感でハナコの前に立ちはだかる。
「君が浦和ハナコかい?」
――その声は、柔らかくも鋭い。ハナコは一瞬、言葉を失う。
「……そうですね」
藍染の言葉は、まるでハナコの心の奥底を覗き込むように続く。
「トリニティの生活に疲れて居ないだろうか? 派閥争いにマウントの取り合い。全ての行動に利益と損失が生じる。息苦しい。まるで監獄だ……と」
ハナコの瞳が揺れる。彼女自身、そう感じていたからだ。この学園は、才能ある者を縛り、潰し、時には食い物にする。
藍染の言葉は、ハナコの心に突き刺さり、彼女を揺さぶった。
「君はそれに対してどう考える? この空気は君に合うものか。それとも窒息して溺れるるものなのか。ぜひ、君の意見を知りたい」
ハナコは答えられない。いや、答えそのものが存在しないのかもしれない。
「……わかりません」
と、かろうじて絞り出した声は、どこか儚い。すると藍染は、まるで全てを見透かしたような笑みを浮かべる。
「ならば、私がその監獄を壊してみせよう」
その言葉に、ハナコの心は一瞬、凍りつく。藍染の提案はあまりにも大胆で、あまりにも危険だなことだった。
クーデターの宣言だ。
今のティーパーティー支配に剣を向ける。
「ティーパーティーの小さな鳥かごなど、砂上の楼閣の如く崩れ去る。無論、人が傷つくことなく、円満に、平凡な世界が出来るようになるだろう」
――そんなことが本当に可能なのか? ハナコは疑う。トリニティをひっくり返すことは、確かに力技なら可能かもしれない。だが、それは破壊だ。血と涙が流れ、誰かが傷つく。
「そんなことが、可能だと? 確かにトリニティをひっくり返すだけならば半日もあれば可能でしょう。しかしそれは破壊です。多くの人が傷つき、悲しむ……だから我慢しないと」「我慢か……力あるものが弱者に従い、その牙を隠す姿は心が些か滑稽に映るな。強いものも、弱いものも、自分の姿を精一杯生きれる世界があれば、それこそが正しい世界なのだ」
藍染の言葉は、まるで刃のように鋭く、しかしどこか甘美だ。ハナコは反論する。
「それこそ、幻です」
「では、私が作ろう。その世界を」
藍染の声には、揺るぎない確信がある。
「君は優秀だ。しかし平凡な世界を望んでいる。力を求めるのではなく、人格を求められる世界を。欲しいならば作れば良い。世界を壊して、世界を創る。私と共に歩めば不可能ではない」
ハナコの心は揺れる。藍染の言葉は、まるで彼女の奥底に眠る願望を掘り起こすようだ。だが、彼女はまだ疑う。
「詭弁です。貴方の言っていることは。能力があるものが食い物にされ、弱者の贄にされる。何も出来ない。変わらない」
「だから大人しく待つというのか? 無知蒙昧な愚者に全身を引き裂かれるのを耐えるのか」
藍染の言葉は、容赦なくハナコを追い詰める。
「選択肢がないのであれば、作り出せば良い。平凡と非凡が共存する目指した共同体を君が創るのだ。弱きものが座して待っていても何も変わらない。強いものが戦い、食い尽くした先にあるのは支配者同士の戦いだ。ならば自分で作り出せ。それが人間というものだろう?」
ハナコは言葉を失う。トリニティという巨大な怪物に立ち向かうことなど、想像すらできない。
「不可能です。トリニティはあまりに大きすぎる」
「私が手を貸そう。同じ思想を持つものを集め、協力し、あるいは対立し、作り上げよう。私達だけの楽園を」
藍染の声は、どこか優しく、しかし底知れぬ力を感じさせる。ハナコは問う。
「……どうして、そこまでしてくれるのですか? 貴方と私は無関係なはずです」
「優秀な人間が平凡になりたいと願うのは決して珍しいことではない。社会性を持つ存在は、そこから超越しなければ仲間を求めずにはいられないのだ」
藍染の言葉は、まるで彼女自身の孤独を映し出す。
「覚えておくと良い。孤独はもっとも人を殺す現象であると」
◆
場面は変わり、トリニティ総合学園の屋上。風がそよぐ中、月島と藍染が会話する。空は青く、しかしどこか不穏な気配が漂う。
「熱烈なラブコールだったね、藍染」
月島の声は軽やかだが、どこか皮肉めいている。
「君の方はどうだい? 計画通りに空崎ヒナや、天雨アコと『昔ながらの親友』となったのかな?」
藍染の問いに、月島は肩をすくめる。
「なったよ、君も無茶を言うんだから。あの二人と『親友』になろうとしたおかげで風紀委員室が半壊だ」
「それで負ける君ではあるまい」
藍染の言葉に、月島は苦笑する。
「勝ったから全て良し、とはいかないよ。疲れた。僕は少し休ませてもらうよ。エデン条約も近いし、使える『友達』は増やす必要もあるからね」
「君の『過去』を挟み込む能力には期待しているよ。ベアトリーチェ決戦前に、ネームド全員と友達になっていると助かるが」
藍染の言葉に、月島は笑う。
「はは、重い期待をありがとう」
月島――彼女は転生者だ。刀で斬りつけた相手に、自分の過去を挟み込む能力を持つ。友達だった過去、一緒に友情を築いた過去を、まるで今起こったことのように相手に植え付ける。
だが、月島が死ねば、あるいは二度斬れば、その過去は消える。ミレニアムサイエンススクールの秀才でありながら、ものを作るのではなく、作らせることに特化した才能。仲間を集め、技術を結集し、チームで結果を出す――それは、個人の才能に頼るミレニアムの生徒たちとは真逆のアプローチだ。彼女のコミュニケーション能力は、セミナーにも認められるほどだ