「月島、浦和ハナコとの会話で原作の先生が召還されていないのが確定した」
「ああ、そうなんだ。大変だね」
「初動の動きが影響を与えているのだろう。君のブック・オブ・ジ・エンドによって、アロナの端末を手中に収めた結果、一連の流れが消えた、と見るべきだ」
「先生しか使えない色々な機材は使えるけど、肝心の先生がいないか、先が読み辛くなったね」
ブック・ジ・エンドとは、自分を相手の過去に挟み込む能力だ。一緒に修行し、一緒にクラスを過ごし、一緒に戦った戦友。
恋人でも、親友でも、友達でも好きな立場で過去に自分を挟める。無機物でもその効果はあって、斬りつけた場所に罠を仕掛けた過去を挟むことや、苗木に手入れをした過去を挟み込み立派な巨木を成長させることもできる。
欠点は、差し込んだ過去と、本来の記憶の矛盾に気づいてしまうと廃人化してしまう点だろう。
「だが、それだけだ。むしろ生徒の介入がないという事実は何しても構わないことになる。終末には武力で対抗し、色彩や黄昏には神秘で抑え込み、生徒は会話で操れば良い。先生がいないことで、我々の目的も進めやすくなったことは事実だ」
「キヴォトスの乗っ取りかい?」
「その言葉は感心しないな。キヴォトスの安定運行だよ。今のシステムを改変し、新機軸の世界へ作り変える。この耐え難い天を墜とし、その座に私が座る」
「いいよ、手伝うさ。友達からね」
「君の友人の一人なることに、どう思うべきなのか迷うが好意的に受け取ろう」
「親友になるかい?」
「面白い冗談だ」
月島は言う。
「それそれとして新しい転生者とか見つかった?」
「生憎とそういった神秘は観測できていない。なぜその話題を?」
「先生がいないイレギュラーが発生したのなら、その空いた枠に誰かが入ってくるんじゃないかと思ってね」
「なるほど。確かにそう考えるのも自然な流れだ。BLEACHの章ボスが二人。次はユーハバッハが最も納得できるが」
「BLEACH縛りではないかもしれないからね。ハンターハンターのヒソカとか、呪術廻戦の羂索とか来るかもしれない」
「それは愉快な話だ。敢えて例を挙げるならば、甘粕正彦やクリストファー・ヴァルゼライドなどが来れば面白いことになりそうだ」
「あ、ジャンプ作品以外のキャラもありなんだ。だったら僕は槙島聖護や阿良々木暦とか好きなんだ。というか物語シリーズが好きでね。そっち系のエミュする人が来ると面白いと思う」
「エミュレーションしないと死ぬのがこの転生の厄介なところだ。自由な生活ができない。少なくとも、そのキャラがやりそうだったり、そのキャラっぽい言い回しをしないと、デスゲージが溜まっていく。だからこそ気をつけるわけだが」
「人間は完璧じゃないからね。ボロが出ていく度にデスゲージか溜まっていくのは心臓に良くない」
「その意見には賛同するよ。そういえば月島。君はジャンプ派なのかい?」
「え、何派とかあるの?」
「ジャンプ派、スクエア派……いろいろあったと思うが」
「ないと思う、ないない。藍染、君って結構古い?」
「古いではなく、ギャップがあると言ってほしいな。設定上は死神だから生きている年数は長い」
「そんな人が必死に藍染エミュレーションしているの考えると涙が出てくるね」
「君は、軽い感じの好青年って雰囲気だからやりやすいだろう?」
「そうかもね。藍染は大変そうだ」
「大変だが、ノリと雰囲気でそれっぽくできるのは強い。鏡花水月も体と一体化しているから安心だ」
「え、崩玉じゃなくて鏡花水月も一体化してるの? 無敵だ」
「どちらも合体化している。椅子に座らされて尸魂界の状態だ」
「最強だね。僕は……XCUTION編かな? 多分ユーハバッハの時に出てきたほど強くはない気がする」
「話を戻すが、NARUTOの暁やオビト、呪術廻戦の宿儺や羂索が出てきたら熱い」
「みんなエミュレーション難しいだろうね」
「BLEACHならば、涅マユリとザエルアポロかな」
「わかる。見てたい。ひたすらマッドサイエンティストムーブしている裏で、ニヤニヤして見てたい」
軽い話をして、月島は仕事に向かった。
◆
藍染の秘密基地にやってきた浦和ハナコは不機嫌だった。
藍染は冷蔵庫からジュースを取り出し、彼女に問いかける。
「随分と感情を抱いているね。感情制御ができる君には珍しい状態だ。何が会ったんたい?」
「補習授業に入りました。そしてテストを受けました。桐藤ナギサの妨害によって、テストの範囲が変更となり、私達は不合格となりました」
「なるほど。その怒りはもっともだ。勉強そのものはできるが、他者の介入によって理不尽に敗北させられる。それは苛立ちを感じても仕方のないことだ。しかし、それだけではない気もするが、どうだい?」
「はい。テストは問題ありません。だけど補習授業部の面々は善人です。単純に成績が悪くてあそこにいる。しかし勉強して頑張ろうとする意志はあった。それを踏み躙るのは……許せません」
「そうか、結果や成果ではなく、友人たちの努力につばを吐きかけたことに怒っているんだね。優しいね、ハナコくんは」
「優しければ、こんな風にはなっていませんよ」
「そうかな」
藍染はジュースを飲む。
「私は君が優しくないとは感じない」
「どうしてですか?」
「君は、同じ補習授業部の仲間の努力に不誠実な対応をされたことに怒りを抱いている。もし自己中心的だったのなら、自分の合格を防がれたことに怒るはずだ。あるいは知能の低い味方に矛先は向く」
「……」
「だが君は、桐藤ナギサが行った理不尽と、それによる仲間の努力を無為にされたことに嫌悪を示した。それで分かるのは、君が優しいということだ。違うかい?」
「……藍染さんって、偶に、凄い恥ずかしいことを言いますね」
「おや、そう思うかい? 思ったことを素直に言葉にしていると思うが」
「だからです。藍染さん、私、少し悪い子になっても良いですか?」
「話は聞こう。それを聞いてどうするかは、内容次第だ」
「桐藤ナギサに、少し痛い目をみてもらいます」
◆
桐藤ナギサ。
トリニティの最高権力者の一人であり、ティーパーティーの一員。
今回は、エデン条約を破壊しようとする内部に存在するかもしれない者たちを合法的に排除しようと補習授業部を設立し、わざと試験を受からせないことによって、何も関係ない者達ごとトリニティ総合学園を追放する。
それによりトリニティの平和を守る選択をとった。
また、命を狙われており、複数あるセーフハウスと信頼できる部下に身を守らせて生活していた。
「……エデン条約締結まであと少し。全て手は打った。あとは祈るだけ」
「その祈りは、誰に向けて祈っているんだい? 桐藤ナギサ」
背後から声がする。桐藤ナギサはすぐに後ろを振り向いた。
「こんばんは、桐藤ナギサ。ティーパーティー参加おめでとう」
「藍染、先輩……ッ」
桐藤ナギサは藍染の登場について怯える。
「どうして、ここへ? いや、どうやって」
「そんな簡単な内容を話すのは時間の浪費にほかならない。それよりも話をしよう。君と、君たちの今後について」
「脅しでしょうか? それは」
「言葉の裏を考えてしまうのはトリニティの悪癖だね。もう一度言おう。話をしよう。そのために私はここへ来たのだから」
「……何の話ですか?」
「君の置かれた状況についてだ。なに、話さえしてくれれば私が全て解決してみせよう。有り難いことに友人は多い方なんだ」
「信じられません」
「信じる必要はないさ。君が私にすべてを話す未来は既に手の中だ」
桐藤ナギサは銃を抜いて、藍染に向かって立ち向かった。