魂を満たす物語   作:よヨ余

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第二種目後半戦

制限時間の半分が過ぎ、後半へと移り変わる。

 

様子見を終えたチームが、一斉にシズたちに向かってくる。その中には轟チームと緑谷チームもいた。

 

「上鳴、頼むぞ」

「はいはい!ちゃんと防げよ!!」

 

轟の合図で上鳴は行動を起こす。轟は布のようなものをかぶっていた。

 

「っ!上鳴だ!どうする!?」

「エスクード」

 

慌てふためく尾白をよそに、シズはエスクードを生成する。轟の前に3つ出し、対策は万全。

 

瞬間、上鳴の放電があたりを襲う。

 

「あばばばば………!」

「上……鳴……!!」

「くっ……!」

 

緑谷チームはダークシャドウを盾にして何とか防いだようだが、ほかのチームは防ぐ手立てを持っていなかった。放電により行動を止められ、直後の轟の氷結により、完全に動きを停止させられる。

 

「一応、もらっていくぞ」

「……あっ!?」

 

轟は氷結で動きを止めた後、一切の容赦なくハチマキを奪っていく。とられたチームからは悔しがる声が聞こえた。

 

「そろそろとるぞ」

 

轟の意気込みに、心操は息をのんだ。あふれ出る威圧は一高校生が放つものではなかったためだ。

 

「にしても、お前が騎手じゃねぇんだな、夜月。リベンジしようと思ってたんだけどな」

 

轟は少し残念そうに言う。

 

「これが最善だったからね。それに、リベンジを果たせるって考えるのは早計じゃないかな?」

 

シズはそう軽口を返した。しかし、広範囲攻撃の上鳴と轟。創造という個性を持ち、汎用性、対応力ともに優れている八百万。走力に長けていてチームの機動力を担う飯田。まさに完全無欠。こちらと比べてチームパワーはかなり高い。

 

シズの言葉は強がりだと思われても仕方のないもの。しかし、シズはこちらが負けるとは考えていなかった。

 

「心操、使っていいよ」

「おう」

 

シズは心操に弧月を渡した。身体能力で劣る心操が少しでも有利に立ち回れるようにリーチを伸ばすためだ。

 

「それ持ってちゃハチマキとれねぇだろ……!」

 

「騎手はね」

 

愚策だと指摘する轟に、シズは不敵な笑みを浮かべる。轟はとられる心配もないと判断したのか、距離を詰めにかかる。

 

十分に近づき、心操と轟が肉薄した瞬間、シズの体から1本の棒が出現する。

その棒は轟の頭にかけてあるハチマキめがけて伸びる。

 

「な……!?」

「騎馬がとっちゃいけないってルールはないでしょう?」

 

轟は間一髪避けるが、今の攻防により簡単に攻めに入ることはできなくなった。

 

『おいおい!騎馬が騎手を攻撃したぞ!ありなのか!?』

『面白いのでアリ!』

『アリなのかよ……』

 

「ね?」

「ちっ……」

 

轟は攻めずらくなったと舌打ちをする。夜月も余裕そうにしているが、認められるかは博打だった。認められたのは幸運だったといえるだろう。

 

「バイパー」

 

「っ……!八百万!」

「了解ですわ!!」

 

シズがバイパーを構えると、轟たちは警戒する。八百万の創造で、複数の盾を装備した。

 

「やっぱ警戒されてるか、青山!」

「任せて。ネビルレーザー!!」

 

青山のネビルレーザーにより、轟たちは避けることを強制される。

 

「ナイス。轟たちに対しては無理に攻める必要ないよ。慌てずに守り通そう」

 

シズの言葉に3人は頷く。

 

その直後、背後から風を切る音が聞こえた。

 

「ッ!?尾空旋舞!!」

 

間一髪、尾白が気付き、チームの危機を救う。背後にいたのは緑谷のチームだった。

 

「尾白ナイス!」

「ダークシャドウ……厄介だな」

「挟まれてるよ、どうするの?」

「まず挟み撃ちを抜けだしたいよね……」

 

ピンチをどう切り抜けるか考えていると、心操が口を開く。

 

「轟のほうにテレポートしてくれ」

「え!?」

 

急な要請に尾白はおどろいた。轟には攻めに入らないことにしていたからだ。

 

「……使うの?」

「ああ、この際出し惜しみはしない……それに俺だって役に立つんだ。おんぶに抱っこじゃいられない」

 

シズたちは心操の覚悟を感じ取り、自分たちも覚悟を決める。3人がシズに触れ、触れた瞬間に轟たちは警戒する。

 

「左に!」

「オーケー!」

 

心操の合図で轟チームのすぐ左隣にテレポートするも、警戒されていたのですぐに対応される。轟の右手が心操に迫った。

 

「オイ!なんで左を使わねぇんだ!?左で炎出せるんだろ!?」

「……あ?」

 

心操は弧月で轟の右手を受け止め、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「てめぇには関係……!」

 

質問に答えた直後、轟の動きが停止した。

 

「轟くん!?」

「……もらった!!」

 

動きを止めた轟に心操がハチマキを取るべく手を伸ばす。……しかし、その手が届くことはなかった。

 

「甘いですわ!飯田さん!一時撤退を!」

「了解した!」

「轟!大丈夫か!?」

 

八百万の妨害によりハチマキは取れなかったが、何とか轟たちを退けることに成功した。

 

「すまん、取れなかった……!」

「いやよくやった心操!」

 

ハチマキの奪取に失敗した心操が謝罪するが、3人は気にするなとフォローする。心操がいないと成立しない作戦だったため当然だ。

 

『心操チームが轟チームを撃退!ハチマキを奪うには至らなかったが、轟チームを撤退に追い込む大手柄!やるじゃねぇか心操!』

 

『状況打開がうまくいったな。夜月の個性を十全に活用したいい動きだった』

 

心操の作戦を、マイクとイレイザーヘッドも褒める。心操は顔を少しほころばせた。

 

『さあさあ、クライマックスだ!残り30秒!1000万はいまだに心操チームの手にあるぞ!このまま守り通すのかぁ!?』

 

アナウンスの直後、右から二つの影が迫る。ひとつはダークシャドウ、もう一つは金属製のアームのようなものだ。たくさんの関節によって滑らかな動きを可能にしている。サポート科発目の力作だ。

 

「エスクード」

「ヘッ!何度モ見テルカラ引ッカカラネェヨ!!」

 

エスクードによりアームは落とせたが、ダークシャドウは機敏にエスクードを避けた。

 

「大丈夫だ!」

 

心操が弧月でダークシャドウを叩き落し、撤退に追い込んだ。

 

「轟の次は緑谷か……」

 

緑谷たちは一定の距離を保つ。あちらにはエスクードを見切ったダークシャドウがいるため、中遠距離戦では有利だろう。

 

だが、離れていてはハチマキは取りにくい。このままだとハチマキを持ったまま試合が終わってしまう。それは緑谷チームも承知しており、どこかで攻める機会を探していた。

 

膠着状態は長くは続かず、遠くの爆発によって状況が変わる。

 

「爆発……爆豪か」

「かっちゃん……!」

 

緑谷は新たなライバルの出現に焦った。しかしチャンスでもある。爆豪がシズを攻撃し、シズたちのリソースが爆豪に向いている隙をつくことができるからだ。

 

「奪いに来たぜぇ!1000万!!」

「単騎突撃かよ」

 

単騎で突撃した爆豪に向かって心操は弧月を投げた。

 

「意味ねぇよカス!!」

 

しかし、爆豪は簡単に避ける。心操は歯噛みすることなく、シズに指示を出す。

 

「頼む!」

「シールド」

 

緑色の半透明の六角形に爆豪は阻まれる。その直後、爆豪は瀬呂によって回収された。

 

「さっきのやるぞ!」

 

爆豪の号令で瀬呂と芦戸が動く。

シズは爆豪たちを警戒するが、その隙をつくように緑谷たちが攻撃を仕掛ける。

 

「モラッタゼ!!」

「……!しまった!首!」

 

間一髪で心操が気付き、ダークシャドウの攻撃はかわしたが、その直後に仕掛けられた発目作のアームによって首にかけていた鉄哲チームのハチマキを取られてしまった。

 

「ナイスです緑谷さん!」

「まだだよ!1000万もとる!」

 

『おおっと!ここで緑谷チームが心操チームのハチマキを1つ奪った!しかし1000万はいまだに心操の頭に巻かれているぞ!残り5秒!これは心操チームの勝ちかぁ!?』

 

残り5秒。緑谷たちは1000万を取るべく、またも攻撃を仕掛ける。同時に爆豪チーム、さらに洗脳を解いた轟チームが高速でシズたちに近づき、ハチマキを取らんとする。

 

「取れよ!轟君!」

「ああ」

 

「1000万……!!」

 

飯田の超加速で突進する轟チーム。

 

瀬呂のテープ、芦戸の溶解液で摩擦を減らし、爆発により大きな推進力を得て突撃する爆豪チーム。

 

ダークシャドウとアームに加え、麗日の無重力によって機動力を上げ、同じく突撃する緑谷チーム。緑谷は個性も使おうとしていた。

 

絶体絶命。そんな言葉が頭をよぎる。3方向からの突撃。残り時間5秒とはいえ、十分間に合うだけの速度がある。ハチマキは1つしかない。取られたら、ゲームオーバー。

 

エスクードで自分たちを囲う。――爆豪、緑谷によって壊される。却下。

グラスホッパーで上空に跳ぶ。――単純に間に合わない。却下。

テレポートで窮地を脱する。――インターバルが間に合わない。却下。

 

打つ手がない。ゲームオーバーだ。轟、爆豪、緑谷、誰にせよ取られてしまう。

 

 

…………………本当に?

 

 

シズがこの体育祭が始まるまでに行ったこと。それは個性の可能性の探求。そしてその可能性の実現化。それは実現したのか?……その答えは、すぐに出る。

 

 

 

「ディザスター」

 

 

 

瞬間、シズたちの周りに突風が起きる。その突風はシズたちの周りを循環するように流れ、3チームの特攻を防ぐ。弾かれた3チームは騎馬を崩しかけるが、シズの繊細な気流操作によって、騎馬が体勢を戻す。

 

「なっ……」

 

轟、爆豪、緑谷は唖然とした。今の出来事の理解ができず、行動を停止してしまった。

 

『TIME UP!!』

 

マイクの声で、3人はハッとする。自分が行動停止してしまったこと。そして、ハチマキを取ることができなかった事実を認識し、歯噛みする。爆豪に至っては地面をたたいて悔しがっていた。

 

『早速上位4チームを見ていくぜ!つってもどのチームかはわかってるだろうけどな!1位、心操チーム!ハチマキは一つ取られちまったが、1000万は守り抜いた!最後の突風は何が何だかわからなかったが、まあ多分夜月だろ!ほんと恐ろしいぜ!2位、爆豪チーム!物間チームを一切の容赦なく叩きのめし、そのすぐ後にも1000万を狙った!3位、緑谷チーム!1000万ではなかったが、唯一夜月チームからハチマキを奪い取った!4位、轟チーム!自分のハチマキを奪われることなく、何とか上位4位に食い込んだ!』

 

第二種目、騎馬戦はこの結果で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「最後の、何だったんだ?」

 

心操は勝利した喜びを嚙み締めつつ、シズに質問した。最後の突風の正体を知るためだ。心操の質問に尾白や青山、ほかにも多くの選手が耳を傾ける。

 

「流石にまだ教えないよ。最終種目でも使う可能性あるし」

 

心操の質問に、シズは答えなかった。答えてもよかったが、少しでも秘密にしておいたほうがいいと考えたため、言わなかった。

 

「それより、組んでくれてありがとね。おかげで勝てたよ」

 

「いや、ほとんど夜月のおかげだけど……」

「それね」

 

シズの言葉に、尾白は戦闘訓練の時のように目をそらして言う。青山は尾白の言葉に賛同した。心操も同じ気持ちのようだ。

 

「いやいや、尾白にはダークシャドウの対応とか一任したし、青山もネビルレーザーでの牽制のおかげで動きやすかったし。心操に至っては要所要所でいい動きをしてたから私が必要以上に個性を使わずに済んだ。自分の活躍を卑下するのはまあ構わないけど、それはお前たちを誘った私の侮辱になりかねないよ」

 

シズは尾白達の反応に反論する。訓練の時も思っていたことだが、自分の活躍と他人の活躍を比較することはしなくてもよいのだ。

 

「……それもそうだな」

「そうだよ。じゃあ改めて…ありがと」

 

3人は納得してくれたようだ。そのことを確認したシズは機嫌をよくA組の観客室のほうへ戻ろうとする。

 

「夜月」

 

「ん?」

 

シズを呼んだのは轟だった。シズは振り返り、轟のほかに緑谷がいることに驚く。

 

「少しいいか」

 

 

 

 

 

 

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