……転スラ要素は???
轟に連れてこられたのは、スタジアムの学校関係者用の出入り口だった。人が通らない場所で、話しにくいことを話すのには向いている。轟の用事も、人に言いにくいデリケートな部分なのだろう。
「あの…轟君……話って何?」
この場所にきて少しして、一言も話さない轟に緑谷が問いかける。轟は睨みつけながら答えた。なんでも、前々から気になっていたことらしい。
「お前……オールマイトの隠し子か何かか?」
轟の質問はその真剣な表情に反して予想外すぎるものだった。私は緑谷の顔を見てみる。とても似てるとは言えない。髪色も見た目も、体つきも全く似ていない。養子の可能性はあると思うけど……。
「ち、違うよ。それは…隠し子だったら違うって絶対に言うから納得できないと思うけど……とにかくそんなんじゃなくて……。逆に聞くけど、なんで僕なんかにそんな……」
緑谷は少し焦りながら答える。その額には少量の汗があった。緑谷の答え方では秘密があるといっているようなものだが……。
「そんなんじゃないってことは、言えない繋がりがあるってことだな」
轟にもそう聞こえたようだ。しかし、詮索するつもりはないようで、そのまま話を続ける。
「……俺の親父はエンデヴァー。知ってるだろ。万年No.2のヒーローだ。お前がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら、俺はなおさら勝たなけりゃいけねぇ」
轟は身内の話をしだした。自慢じゃない。その魂には邪気、悪意、嫌悪、怨嗟……様々な負の感情が混在している。
「親父は極めて上昇志向の強いやつだ。ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが、それだけ、オールマイトが邪魔で仕方なかったらしい。自分ではオールマイトを超えられない親父は次の策に出た」
「……何の話だよ。轟君」
「話が見えない。昼休みも少なくなるぞ」
話の本筋が見えないことにしびれを切らし、私たちは少しだけ急かす。轟は話をつづけた。
「個性婚、知ってるよな。超常が起きてから、第二第三世代で問題になったやつ。自分の個性よりもっと強い個性を子に継がせるべく、
轟の身の上の話に、緑谷は息をのむ。
「記憶の中の母は、いつも泣いている。……お前の左側が憎いと、母は俺に煮え湯を浴びせた。…………ざっと話したが、俺がお前らに突っかかるのは見返すためだ。クソ親父の個性なんざなくたって……いや、使わずに1番になることで、奴を完全否定する………!」
轟の宣言に、緑谷は何も言えなかった。私は、どうしても気になったことがあったので、聞いてみる。
「お前、母親を恨んでんの?」
「……ちげぇ。クソ親父だけだ」
「母親と話したことは?」
「煮え湯を浴びせられた時以降はない」
「じゃあ会ったことは?」
「……ない。親父に止められた」
轟は素直に質問に答えた。轟の悪感情はエンデヴァーにのみ向けられているもの。
「会って話してみるのも、いいと思う」
「……は?」
私の言葉に、轟は声を漏らす。
「轟は知ってると思うけど、私にはお師匠がいた。……でも、ずいぶん長く会えていない。私はお師匠が消えてしまった理由を知らない」
私の話に緑谷と轟は息をのむ。質問することはせず、話を静かに聞いてくれるようだ。
「私はお師匠の異変に気付いていたはずだ。でも、私は見て見ぬふりをしてしまった。お師匠なら大丈夫だと考えた。根拠もない信頼をした」
顔が熱くなる。頭が回らない。この口を今すぐに閉ざして、なかったことにしてしまいたい。思い出してしまうから。幸せすぎて苦しくなるから。後悔してしまうから。泣きたくなるほど自分を追い詰めてしまいそうになるから。
でも……でも。
もし、私が話すことで、轟のことを楽にできるのなら。私の言葉が、少しでも轟の助けになるとしたら。
その時はきっと、お師匠に胸を張れる。
「私が話していたら、何かを言ってあげられていたら、変わったかもしれない。私には、そんな後悔がある。……何も言わないよりも、何か声をかけることができたら変わるかもしれない…………少なくとも、私みたいな後悔はしない」
「……」
私の言葉に、轟は何も言わなかった。でも、話は聞いている。私の言葉を嚙み砕いて、自分なりに処理をしようとしている。
「……じゃあ、私はご飯を食べてくるから。2人もちゃんと食べなよ」
私はそう声をかけて、その場を後にした。
1-A控え室。私は食堂には行かず、お弁当を控室で食べていた。お弁当を食べ終わって少しすると、扉が開き、人が入ってくる。峰田と上鳴だった。
「夜月!探したぞ!」
「どうしたの2人とも。少し焦ってる?」
「そりゃあ焦るさ!」
何用か聞いてみると、どうやらレクリエーションの間、私たちはチアガールの格好をして応援合戦をしなければならないらしい。八百万が衣装を作っているようだ。
しかし、そんなことはスケジュールには何も載っていない。それに、峰田と上鳴の魂は不自然なくらいに揺らいでいた。ウソをついている証。八百万が衣装を創造しているのは本当らしいが、応援合戦のくだりはウソだ。
「へえ?要件はわかったけど、なんで向こうを向いているのかな?特に不都合もなければ向こうを向く必要はないよね?」
「うっ」
私の追求に2人は少し言葉を詰まらせる。そのあとに何か言おうとしていたが、何も言わせない。どうせ言い訳だ。
「ちなみに、私は人の魂をみてその人がウソをついているのかがわかるんだ。2人の魂は随分と不自然に揺らいでいるように見えるな?」
「き、気のせいじゃないか?」
私のさらなる追求に2人はしどろもどろになる。
「はぁ……今回だけは口車に乗ってあげる。ウソついたことは後でちゃんとみんなに謝るんだよ」
「…………はい」
私は2人にそう言ってから女子軍のところへ急いだ。
『さあ、そろそろ午後の部をはじめるぜ……って!どうした!A組!どんなサービスだよ!?』
私たちは、八百万がが創ったチアガールの服を着て、スタジアムの中央に立っていた。ポンポンまで持っている。チアの制服はお腹が見えるし、スカート丈は短い。その上ノースリーブで薄いため、体のラインがよく見える。
「ちなみにみんなに言っておくけど、チアガールの話は、全部峰田と上鳴のウソだよ」
「……え?」
私は髪をポニーテールにまとめながら言う。
それを聞いた八百万はB組がチアガールのコスを着ていないことを確認して崩れ落ちる。峰田の策に何度もはまってしまう自分を情けなく思っていた。純粋なお嬢様の宿命だ。
……峰田と上鳴はお互いを見ながらサムズアップしていた。
「アホだろアイツら……」
「まあ、本選まで時間空くし、張り詰めててもしんどいしさ、いいじゃん!やったろ!」
「好きね、透ちゃん」
耳郎は持っていたポンポンを投げ捨て、悪態を吐く。それに対して葉隠は腕をぶんぶんさせて乗り気な姿勢をアピールした。
『さあさあ、最終種目の前にレクリエーションだ!A組の女子陣も応援してくれるってよ!その前に最終種目の組み合わせ決めだけどな!』
マイク先生の言葉で、ミッドナイトが壇上に上がる。その手には箱があり、その箱からくじで決めるのだろう。
「それじゃあ、くじ引きで組み合わせを決めちゃうわよ。組が決まったら、レクリエーションを挟んで開始します。レクに関してだけど、進出者16名は任意参加とします。体力を温存したい人もいるだろうしね。んじゃ、1位のチームから順に引いていってね」
ミッドナイトはそう言ったあと、私たちに順に並ぶように言う。私たち全員が引いた後、その結果がスクリーンに映し出される。
「全員引いたわね。くじの結果は……こうなったわ!」
Aブロック
第1試合 緑谷VS心操
第2試合 轟 VS瀬呂
第3試合 上鳴VS夜月
第4試合 飯田VS発目
Bブロック
第5試合 常闇VS八百万
第6試合 芦戸VS青山
第7試合 尾白VS切島
第8試合 麗日VS爆豪
「へぇ、上鳴と……か」
私はスクリーンを見た後、上鳴のほうへ首だけを動かす。上鳴はビクッとしてた。
「ウソをついた報いは、受けさせないとね?」
「よし、やれ。夜月。もう二度とこんなくだらないことをしないように教育するんだ」
私の言葉に耳郎が賛同した。耳郎が一番チアガールを嫌がっていたし。恥ずかしかったのだろう。上鳴は絶望していた。峰田はそんな上鳴を見捨てた。
『よーし、そんじゃトーナメントはいったん置いといて!束の間だ、楽しく遊ぶぞレクリエーション!!』
マイク先生の言葉を聞いて、私は応援をするために本物のチアガールのほうへ歩く。
「夜月!?どこ行くの?」
「何処って……応援のためにチアガールのところ……」
「やるの!?」
「耳郎もやろうよ」
耳郎を誘ったが、耳郎は恥ずかしいからと遠慮する。しかし、可愛い可愛い耳郎を持て余すのはもったいないので、説得に入る。
「え~?やろうよ」
「嫌だよ。はずいし。似合ってないし……」
「え?可愛いよ?似合ってるし」
私は耳郎をほめるが、耳郎はあまり信用していないようだった。
どうしたものかと悩んでいると、ほかの女子たちも耳郎のことをほめる。耳郎は少し気分を良くし、みんながやるという条件のもと、一緒にやってくれるようだ。
そうして、私はレクリエーションの間、みんなと一緒に応援をした。芦戸や葉隠はノリノリで踊っていたが、私や耳郎は動きがぎこちない上、表情も乏しい。だから私たちはポンポンを振るだけだった。
そしてついに、最終種目が始まる。
そろそろ転スラ要素を出したいですね……。
ですが職場体験で出てきます!…………伝わるかは全く分からないけど。