魂を満たす物語   作:よヨ余

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最終種目 1回戦

レクリエーションも終わり、シズは体操服に着替えなおした。生徒用観客席に座ったセメントスが個性で会場を作る。そのあと、マイクの声がスタジアムに響く。

 

『アァユゥレディ!?いろいろやってきたけど結局これだぜ、ガチンコ勝負!頼れるのは自分だけ!心技体に知恵知識!総動員して駆け上がれ!』

 

ついに始まる最終種目に観客は歓声を始める。

 

『ルールは簡単!相手を場外にするか行動不能にする!あとはそうだな、参ったって言わせても勝ちだぜ!喧嘩上等!こっちにゃ我らがリカバリーガールが控えてるから道徳倫理はいったん捨て置け!だが、もちろん命にかかわるのはクソだぜ!ヒーローは、ヴィランを捕らえるために拳を振るうのだ!』

 

マイクの言葉が終わると、第1試合が始まろうとする。緑谷と心操が会場に上がり、マイクが2人の紹介をする。

 

『第1試合!ここまでほぼ個性を使わず勝ち上がったとんでもボーイ!ヒーロー科、緑谷出久!バーサス!普通科の星、心操人使!……スタート!』

 

マイクの言葉と同時に、心操は緑谷に何かを問いかける。それに答えてしまった緑谷は洗脳され、行動を停止してしまった。

 

「緑谷、止まった……?」

 

「何が起きたんだ……?」

 

「それは――」

 

「尾白」

 

疑問に答えようとした尾白にシズは待ったをかける。

 

「フェアじゃないよ」

「……!うん、そうだね。ごめん」

「なんなんだよぉ!」

 

尾白はシズの言葉に納得し、口を閉ざした。峰田に突っ込まれても何も言わない。

 

心操の個性は完全な初見殺しだ。タネさえ知ってしまえばだれでも回避できる。よって、緑谷を洗脳して2回戦進出の可能性が出てきた心操の個性をばらしてしまうのはマナー違反だろう。

 

洗脳された緑谷は心操に場外に出るように言われた。緑谷は何のためらいもなく振り向き、場外に歩いていく。

 

『ああー!緑谷、ジュージュン!!』

 

心操の洗脳は軽い衝撃によって解除されるが、この会場は外野からの干渉がないため、緑谷できることはなく、緑谷の洗脳が解けることはない。

 

しかし、緑谷は自身の個性を暴発させて洗脳を解いた。その証拠に、緑谷の指は2本壊れていた。

 

『緑谷!なんとかとどまったあぁ!?』

 

緑谷は正気を取り戻し、自分の立ち位置を見て戦慄する。緑谷は半歩でも進んでいたら場外判定となり、敗北が決定するところだったからだ。

 

心操がもう一度洗脳を試みて質問を投げかけるも、緑谷は口を手で覆う。最初の洗脳で、発動条件を看破したようだ。

心操はそれでも言葉を紡ぐ。負けたくないから。チャンスを逃したくないから。騎馬戦のように他人の力で勝つのではなく、正真正銘自分の力で勝ちたいから。

 

しかし、現実は無情。緑谷にも勝たなければならない理由はある。心操に同情はすれど、それが理由で手心を加える理由はない。緑谷は心操との取っ組み合いの末、背負い投げをすることで、心操の片足を場外に叩き落す。

 

「心操くん場外!緑谷くん、2回戦進出!」

 

心操の思いも空しく、勝負に負けてしまう。しかし、緑谷と言葉を交わした後、普通科のクラスメートからの暖かい言葉、そしてプロヒーローたちからの高い評価を聞き、改めて立派なヒーローになることを誓う。その顔は完全に晴れていた。

 

 

次に、第2試合。轟対瀬呂。轟の勝利は疑われていなかった。その評価通り、轟は会場を覆いつくさんとする大氷結によって瀬呂を行動不能にし、勝利を収める。一人の観客が哀れに思ったのか、ドンマイコールを始め、そのコールはスタジアム全体に広がっていった。

 

 

第3試合。シズの出番だ。対するは上鳴。シズ――というより女子――の怒りを買った上鳴にお灸を据えるのだ。

 

『第1、第2種目をともに1位で突破!汎用性の高い個性を見事に使いこなしここまで勝ち上がった!ヒーロー科、夜月静江!バーサス!スパーリングキリングボーイ!同じくヒーロー科、上鳴電気!……スタート!』

 

スタートと同時に上鳴は駆ける。その場で放電をしても、エスクードで電撃を防がれるのは目に見えているからだ。シズが少なからず怒っていることを考えると、シズに攻撃をさせるわけにはいかない。

 

 

まあ、シズは別に怒ってないし、女子たちもそんなに気にしていないのだが。

 

閑話休題。

 

 

上鳴はシズの弱点を意図せず突き、放電の有効射程範囲に到達する。

 

「無差別放電、130万ボルト!!」

 

「ぐっ………!」

 

上鳴の放電により、シズは一瞬動きを止める。その隙をつき、上鳴はシズを場外に運ぼうとし、シズをつかもうとする。

 

しかし、上鳴の行動は阻止される。上鳴の腹部にすさまじい衝撃が走り、上鳴はその場に蹲った。

 

「ウソだろ……!?」

 

「悪いけど、電流には耐性があるんだ」

 

「マジかよ……!」

 

上鳴は自分の技が通じなかったことに驚愕し、気絶した。

 

「上鳴くん行動不能!夜月さん、2回戦進出!」

 

ミッドナイトの宣言で、シズの勝利が決まった。

 

 

 

 

「お疲れ、よくやった」

 

シズが観客席に戻ると、耳郎が労う。上鳴が完膚なきまでに叩きのめされたので少し溜飲が下がったようだ。

 

「女子たちの恨みは晴らしました」

 

シズも耳郎に乗っかり、茶番を行う。少しの茶番をしたあと耳郎が試合について質問した。上鳴の放電を受けたのにどうして動けたのかという質問だった。

 

「私は電流に多少の耐性があるんだよ。でも、電撃を断続的に叩き込まれてたら勝てなかったかな」

 

シズの言葉に全員が引いた。シズは気づいていなかったが。

 

そんなことよりも……

 

「飯田たちは何をしているの?」

「ああ……、あれはね……」

 

時折聞こえてくるマイクに乗った発目の声。その声は自身の発明品の紹介をしていた。飯田はサポートアイテムを身に着けており、そのせいか思い通りの動きができなくなっていた。しかし、場外に出ることはなく、サポートアイテムによって、急な方向転換、攻撃の回避を可能にしていた。

 

聞けば、飯田は発目の口車に乗り、発明品の宣伝に使われてしまったのだとか。飯田は気の毒だが、発目の発明品自体はいい。今は試作段階というか性能が過剰になっているものの、いつかとても良いものができるはずだ。

 

シズが思考を続けていると、いつの間に終わったのか、発目は自分から場外に出ていた。

 

「は、発目さん場外。飯田くん2回戦進出!」

 

飯田の勝利が決まったが、飯田は憤っていた。発目は飯田から目をそらし、観客席へと戻る。

 

「飯田……お気の毒様」

「いい様に使われてたな」

 

何はともあれ、飯田が進出を決めたのは事実。シズの次の相手は飯田に決まったのだ。

 

 

第5試合。常闇対八百万。八百万は創造で盾を作り、常闇のダークシャドウの攻撃を防ぎ、何とか隙をついて武器を作ろうをする。しかし、それを許す常闇ではない。ダークシャドウの怒涛の猛撃に八百万は手一杯になる。かろうじて盾を作ることはできるものの、武器を創造することができない。そのまま場外に押され、常闇の勝利が決まった。

 

 

第6試合。芦戸対青山。青山はリーチの有利を活かし、芦戸にネビルレーザーを放つ。しかし、芦戸はクラスでも上位に入るほど運動神経が高い。軽快なステップでネビルレーザーを躱し、青山に近づく。そして青山にアッパーをし、勝利を決めた。

 

 

第7試合。切島対尾白。両者ともに近接主体のインファイター。切島は硬化して、尾白は尻尾でお互いを殴り合う。しばらくは拮抗していたが、次第に切島が尾白を押していく。尾白は打開のために切島を尻尾でつかみ、投げ飛ばそうとするも、切島に避けられカウンターをもらってしまう。しかし、尾白は気絶する直前に切島に攻撃を仕掛け、切島に打撃を加える。切島は油断したのか硬化を解除してしまっており、切島もダウン。引き分けに終わり、2人が復帰した後に腕相撲で決着をつけるようだ。

 

 

最後に、第8試合。麗日対爆豪。麗日と爆豪には明確な差がある。しかし、麗日は一切あきらめずに爆豪に低姿勢で特攻する。特攻している途中で気づいたが、麗日は何も無策で突撃しているわけではなく、爆豪が爆破してできた瓦礫を無重力状態にし、武器として蓄える。爆豪も一切の油断なく麗日と相対していたため、麗日が突っ込むたびに爆破していく。観客にも実力差があると分かっていたのか、爆豪に対する非難が飛ぶ。

 

その言葉を見かねた相澤は言葉を発したプロに怒る。その怒りは相澤が爆豪のことを認めているからこその怒り。そして、何も知らぬ外野が爆豪のことを非難していることに対しての怒りだった。

 

その直後、麗日の作戦が決行される。麗日が貯めた瓦礫の無重力状態を解除し、流星群のように瓦礫を降らせる。それと同時に麗日も突進し、爆豪を無重力状態にしようとする。

 

回避か、迎撃か。どちらにしても必ず隙ができると考えてのことだろう。しかし、爆豪はそれほど甘くはない。

 

爆豪は上に向けて特大爆破を繰り出し、全ての瓦礫を破壊する。麗日は渾身の策を真正面から打ち破られたことに絶望する。が、麗日はあきらめない。打つ手がなくなったとしても、最後まで立ち向かおうとしたところで……倒れた。

 

倒れた後も、麗日は立ち向かおうとするが、ミッドナイトの判断で敗北した。

第8試合は爆豪の勝利で幕を下ろした。

 

 

 

 

 




シズの弱点は、ヨーイドンの戦いで先手を取られやすいことです。

弧月を生成⇒構える⇒攻撃または迎撃

という手順を踏む必要があります。1個目があるだけで致命的。難儀ですねぇ。




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