魂を満たす物語   作:よヨ余

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最終種目 2回戦

1回戦がすべて終了し、2回戦が始まる。

 

2回戦の出場者は、緑谷、轟、シズ、飯田、常闇、芦戸、切島、爆豪の8名。トップバッターは緑谷と轟だ。

 

『1回戦の圧勝で観客たちを文字通り凍らせた、ヒーロー科、轟焦凍!!バーサス!片やこっちはひやひやで突破!同じくヒーロー科、緑谷出久!!注目の一戦!……スタート!』

 

マイクの言葉と同時に轟は1回戦と同じ大氷結を。緑谷は指を壊す超パワーを繰り出した。轟の氷結が緑谷のパワーにより破壊される。それどころか貫通して轟を吹き飛ばしかけたが、轟は自身の後ろに氷を生成し続けることにより場外を回避する。

 

「ゲッ、もう始まってんじゃん」

「お、切島。2回戦やったな!」

 

尾白との腕相撲に勝利した切島が戻ってきた。切島を労う瀬呂に切島は笑って答える。

 

「おう!……爆豪!次オメーとだ。よろしくな!」

「ぶっ殺す」

「ハッハッハ、やってみな!…つっても、オメーも轟も強烈な大技ポンポン出してくるからなー……。夜月も騎馬戦のときにめっちゃすげぇの出してたしよぉ」

「ポンポンじゃねぇよナメんな。限度がある」

 

爆豪の突然の暴言を切島は笑って受け流した後、ボヤく。切島のボヤキに爆豪は突っ込んだ。

 

「爆豪の言うとおりだ。個性だって身体機能の一つ。筋肉を使い倒せば筋繊維が切れるように、走り続ければ息が切れるように、ある程度の限度はある。私だって、大気のエネルギーが尽きれば弧月などを生成できなくなるしな」

 

爆豪の言葉にシズが補足を加える。爆豪は自分の掌を見つめていた。爆豪の限界は威力。麗日戦で見せた威力がおおよその上限。多大な負荷は爆豪の掌を痛め、機能を低下させてしまう。

 

「考えりゃそりゃそっか……じゃあ、緑谷がいま耐久戦を仕掛けてんのは轟の弱点を探るためか……」

 

切島の考えは当たっている。しかし、緑谷の個性は耐久戦に向いていない。個性を使うたびに自分の体を壊してしまうからだ。仮に緑谷が勝ったとしても、緑谷は戦える体ではない可能性がある。

 

そんなやり取りをしている間に、緑谷の腕はボロボロになっていた。轟に外傷はない。不利なのは緑谷だ。

 

みんながそう思っていた。確かに、不利なのは緑谷だ。しかし、轟にもそんなに余裕はないようだ。そのことは、轟の行動でよくわかる。

 

「轟の動きが鈍った……?」

「え?そう?」

「うん、本当に少しだけだけど」

 

そう、轟の動きが鈍った。とても気づけないほどの小さい差だが、確かに動きは鈍っている。

 

「……そういうことかよ、舐めプ野郎が!!」

「うん、あいつ私の話聞いてなかったのかな」

「話って?」

 

耳郎がシズに問う。シズは宣誓の時に本気で戦うことを希望すると言っていたことを話す。記憶に新しいことのため、耳郎たちはすぐに思い出す。

 

「轟は氷以外にも炎を繰り出すことができる。もちろん、その炎と氷にも温度はある。……あいつの父親のエンデヴァーの弱点は体に熱がこもることだ。ただ、轟には氷結の能力があるからその問題を解決できる。その逆も然り。でも、それを使わない。……うん、たしかに舐めプだね」

 

シズの説明に全員が納得した。そして、轟が今まで半分の力で勝ち上がってきたことに驚愕と畏怖の思いを表す。

 

その少し後に、緑谷から怒号が飛んだ。

 

 

「みんな…本気でやってる……!勝って目標に近づくためにッ!それを…半分の力で勝つ……?僕はまだ、君に傷一つつけられちゃいないぞ!!…………全力でかかってこいッ!!」

 

 

緑谷は轟にそう宣言する。その宣言に、多くの人は緑谷の正気を疑うだろう。相手が本気を出さないのは歓迎すべきことだ。勝つには相手が本気を出さないほうがいいに決まってる。しかし、緑谷は本気を望んだ。その気迫に、大勢は圧倒される。

 

 

「君の!!力じゃないか!!!」

 

 

緑谷の言葉に、轟は目を見開く。その瞳の裏に映るのは、懐かしき母との会話。母の姿。テレビに映し出されるオールマイトの姿。轟の…オリジン。もう忘れてしまったと思っていた、轟のオリジン。

 

轟は顔をゆがめた。その魂には多くの感情が綯い交ぜになっていることが手を取るようにわかる。でも、その魂にはどこか晴れかけたような、もうすぐ晴れそうな何かが見えた。

 

そして轟の時は動き出す。轟が自分自身で縛っていた枷が一時的に外れ、その左半身から灼熱の炎があふれ出す。

 

「左を……」

「使わせた……!!」

 

左を使った轟の顔は、笑っていた。

 

エンデヴァーが突然激励をするも、轟は顔を向けようとすらしない。わざとではなく、気づいてすらいないようだった。そして、緑谷と轟は構える。轟は炎を、緑谷は個性をフルに使用して、相手を倒さんとする。

 

そして、爆風があたりを満たす。

 

煙幕が晴れた後、まず最初に視界に映ったのは会場の壁にもたれかかり、崩れ落ちる緑谷の姿。そして、轟は場内に立っていた。体操服の左半分は燃え尽き、肌が露出していた。

 

「み、緑谷くん場外…。轟くん準決勝進出!」

 

ミッドナイトの声を皮切りに周囲からすさまじい歓声が上がった。その声を聞いて、シズは試合に向かうために控室へと急いだ。

 

 

 

 

 

『さあ、2回戦第2試合だ!もはや説明不要!圧倒的な強さで勝ち上がってきた金の卵!ヒーロー科、夜月静江!バーサス!本大会最速の男!1回戦と違い活躍できるのか!ヒーロー科、飯田天哉!レディ……スタート!』

 

「全力で行かせてもらうぞ!!」

 

「ああ、かかってきなさい」

 

開始と同時に飯田はそう宣言した。シズは歓迎し、構える。

 

飯田は目にもとまらぬ走りを見せ、シズを翻弄する。しかし、シズの目は動きを追うことができている。

 

「脳無に比べれば、大したことはない」

 

シズは言葉通りに、飯田の動きに対処する。飯田の蹴撃を弧月で捌いていると、飯田は一時的にシズから距離を取った。しかし、それはシズにとって好都合だ。

 

「ハウンド」

 

ハウンドが飯田を襲う。しかし、飯田は何回かそれを見ていた。十分に引き付けてから急加速し、ハウンドを躱し、またシズに近づく。

 

「エスクード」

 

シズは飯田の接近を嫌い、エスクードで上空に一時避難する。そして、空中でキューブを生成した。それも2つ。そして、生成したキューブをこねくり回し、一つにする。

 

「メテオラ+バイパー…トマホーク」

「トマホーク……!?」

 

飯田は嫌な予感がし、身構える。襲い掛かる弾幕を確認し、被弾しないように避ける。地面に着弾したキューブは爆発を起こす。

 

「爆発……!?」

 

飯田は自分のすぐ横で起こったことに目を疑う。しかし、そんな暇はない。すぐそばにはシズが肉薄していた。飯田に向けられた弧月。それは飯田の顎に向かって迫っていく。

 

「クッ……、レシプロバースト!」

 

飯田の言葉の直後、飯田は先ほどより数段速く動き出し、シズの攻撃を回避する。そして、間髪入れずにシズの頭に蹴りを叩き込んだ。

 

「グッ……」

 

シズは痛みに思わず呻く。飯田は試合とはいえ女性に暴行を働いたことに罪悪感を感じながらも、シズの体操服の首元をつかみ、場外へと投げ飛ばさんとする。エスクードを出されないように地面に体をつけさせないようにするもの忘れない。

 

しかし、飯田の眼前に見えるのは、出てこないはずのエスクード。飯田は咄嗟に避けることができずに弾かれてしまった。それと同時に、シズを放してしまう。2人とも即座に体勢を整えるが、シズのほうが早い。

 

「まずい……!」

 

「速ければ速いほど……急停止はできないよね」

 

シズは弧月を構え、振りぬく。

 

「旋空弧月」

 

旋空は飯田の胴体を正確に捉え、飯田を吹き飛ばす。飯田は体を襲う衝撃と痛みによって体勢を整えることができず、そのまま場外まで飛ばされてしまった。

 

「飯田くん場外!夜月さん準決勝進出!」

 

シズの勝利が決まった。

 

 

 

 

 

シズが客席に戻った時には常闇と芦戸の勝負が終わっていた。結果は常闇の勝ち。常闇のダークシャドウの猛攻で芦戸は避けることしかできなかった。攻撃に転じることができず、そのまま場外負けが決まってしまった。

 

今は、切島と爆豪が戦っている。切島は爆豪の爆破を物ともせず、カウンターを決める。しかし、それは爆豪に避けられ、決定打にはならない。切島と爆豪はしばらくインファイトを続ける。しかし、それは意外な形で終わる。

 

切島が爆豪の攻撃に耐えられなくなったのだ。

 

「あ!?なんで切島よろけたんだ!?」

「ずっと気張ってたからか、長く続かないのかも……これが彼の弱点……!」

 

一度でもよろけたら、そこからは爆豪のターンだ。爆破の猛攻により、切島は倒れてしまった。

 

「切島くん行動不能!爆豪くんの勝利!」

 

気絶した切島は救護ロボットによって保健室へと運ばれた。

 

『さあ、これで表彰台に並ぶ連中がそろったぜ!!次は準決勝!夜月対轟だ!』

 

 

 

 

 

控室。次に戦う人には、それぞれの控室が与えられていて、そこで自分たちの各々の過ごし方で試合に備えるのだ。シズが控室で心構えをしていると、ノックの音が聞こえる。

 

「どうぞ」

 

シズが許可を出すと、ドアが開く。訪れたのは轟だった。

 

「轟?どうして……お前の控室は違うだろう?」

 

「お母さんと話してみようと思う」

 

轟は私の疑問を無視して話を切り出した。最終種目が始まる前に話したことだ。

 

「お前に言われて……緑谷にも言われて……少しだけ、前向きになった。左のしがらみはまだあるが……何かしないと、変わらないよな」

 

轟は少しだけ笑って言う。シズにとっては轟をいい方向に変える一助になれたことをうれしく思った。しかし、納得のいかないこともある。

 

「左を、使ってくれないか。私に」

「……!それは……」

 

轟はシズの言葉に答えにくそうにどもった。

 

「私は何度でも誘うよ。お前が本気を出さないと、私には勝てない。それに……私は、半分のお前に勝っても嬉しくない」

「……」

 

轟は何も言わずに立ち去った。恐らく轟もわかっているのだ。くだらない反抗期だと。でも、エンデヴァーに対する恨みは簡単には消えない。それが幼少期からのものならば猶更。少しだけ、意地になっているのかもしれない。簡単には認めることができない。

 

シズは轟の左を何としてでも引き出したい。その方法は……。

 

 

そして、準決勝が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

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