魂を満たす物語   作:よヨ余

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テスト全く勉強してねー!来週やべー!


期末テストへ

職場体験が終わり、シズたちは職場体験以前のように授業を受け、今日も一日を乗り越えた。今は帰りのHRだ。

 

「うし。授業はここまでにする。期末テストまで残り1週間だが、お前らちゃんと勉強してるだろうな。当然知ってるだろうが、テストは筆記だけでなく演習もある。頭と体、同時に鍛えておけ。以上だ」

 

相澤先生曰く、この先の夏季休業には林間合宿を行うらしい。赤点をとったら補修地獄が待ち受けているため、赤点を取るのは絶対に避けなければならない。

 

相澤先生がドアをぴしゃりと閉めた瞬間、上鳴と芦戸から悲鳴が上がる。

 

「「まったく勉強してなーーい!!」」

 

芦戸(20/21)は腕を後頭部に回しながら笑い、上鳴(21/21)は頭を抱えて俯く。

 

「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねーー!」

 

「確かに。行事続きではあったな」

 

上鳴の言葉に常闇(15/21)が頷いた。

 

「中間はまあ、入学したてで範囲も短かったからとくに苦労なかったんだけどな。行事が重なったのもあるけど、やっぱ期末は中間と違って―――」

 

「演習試験もあるのがつれぇとこだよな!」

 

砂藤(13/21)の言葉に口田(12/21)が頷いていると、峰田(10/21)が言葉を継いだ。

 

「「ちゅ、中間10位!?」」

 

峰田の予想外の成績に上鳴と芦戸は驚く。

 

「あんたは同族だと思ってたのにーーッ!」

 

「お前みたいなのは馬鹿で初めて愛嬌が出るんだろうが……!!どこに需要あんだよ……!!」

 

「世界……かな!」

 

―――いや。ただただ勝手に裏切られたと勘違いしただけのようだ。

 

「芦戸さん、上鳴くん!が、がんばろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!ね!」

 

「うん!俺もクラス委員長として皆の奮起を期待する!」

 

「普通に授業受けてりゃ赤点は取らねえだろ」

 

ドヤ顔で明後日の方向をみる峰田を恨めしそうに見る二人に緑谷(5/21)が励ます。それに飯田(2/21)と轟(6/21)が続く。……轟は励ましたわけではなかったが。

 

しかし――、

 

「言葉には気をつけろ!!」

 

上鳴は胸のあたりを抑えて呻くようにいった。緑谷たちと上鳴たちの間には光と影の対比構造がみえた。

 

「お二人とも。座学なら私、お力添えできるかもしれません」

 

「「ヤオモモ!!」」

 

二人に救済の道を指示した八百万(1/21)は二人に神を見るような目で見られる。

 

「……実技のほうはからっきしでしょうけど……」

 

八百万は実技に自信がないのか、一転してどんよりとする。それを轟が眺めていた。何か思うところがあるのだろう。

 

「二人じゃないけど、ウチもいいかな?2次関数の応用で少し躓いてて……」

 

「悪い俺も!八百万、古文分かる?」

 

「俺もいいかな?いくつかわからないことあってさ」

 

「お願い!」と耳郎(8/21)、瀬呂(18/21)、尾白(9/21)が八百万に言うと八百万は感極まり、自分の中で予定を立て始めた。

 

「イイですとも!そうなれば週末にでも私の家でお勉強会を催しましょう!」

 

「まじ!?ヤオモモん家チョー楽しみ!」

 

「そうなるとまず、お母様に頼んで講堂を開けてもらわないと……!皆さん!お紅茶は何か御贔屓ありまして?我が家はいつもハロッズかウェッジウッドなのですが、ご希望があればご用意いたしますわ!……もちろん、お勉強もお任せください!必ずお力になって見せますわ!」

 

ナチュラルに生まれの違いを感じさせられた上鳴たちだが、プリプリしててチョーかわいい八百万を見ただけですべてがどうでもよくなり、ほっこりとした笑顔となった。

 

「なんだっけ…?いろはす?でいいよ」

 

「ハロッズですわね!」

 

それを遠目に見ていた切島(16/21)が爆豪(3/21)に言う。

 

「この人徳の差よ」

 

「俺もあるわ!教え殺したろかテメェ!」

 

「おお!頼む!」

 

二人は良好な関係を築けているようだ。

 

「みんな慌てちゃって…今更じたばたしても何も始まらないのにね」

 

一連の流れをみていた青山(19/21)に障子(11/21)が複製腕で忠告した。

 

「お前は少しはじたばたしたほうがいいんじゃないか?」

 

「それが何かな?」

 

青山は首だけを障子のほうに向ける。

 

「何かな?」

 

その後、青山は障子の言葉を受け、隠れてじたばたするのだった。

 

 

 

 

 

お昼休み。食堂にて。

 

シズ(3/21)は珍しく学食を利用していた。いつもは教室でお弁当を持参しているのだが、今日はお弁当の作り置きがなかったので学食を利用することにしたようだ。

 

「演習試験……内容が不透明で怖いね」

 

「突飛なことはしないと思うがな……」

 

食堂でご飯を食べていると、緑谷が飯田に話しかけた。話題はもちろん演習試験についてで試験内容についてのようだ。

 

「筆記は授業内でやったことだからまだ何とかなるけど……」

 

「まだ…、何とかなるんや」

 

緑谷の発言に麗日(14/21)が呟いた。中間テストでの成績が芳しくなかった彼女にとって緑谷の発言は無視できないものだったからだ。現在、彼女の周りには緑谷、飯田、蛙吹(7/21)たちといった成績上位組が多く、彼女の仲間は葉隠(17/21)しかいない。

 

「演習試験……何するんだろう」

 

「1学期やったことの総合的内容…としか相澤先生言ってないもんね」

 

「今までやったことって戦闘訓練と救助訓練、あとは基礎トレ」

 

「試験勉強に加えて体力面でも万全に――」

 

緑谷が思考にふけっていると、B組の物間が突っかかってきた。どうやらステインでの話をしているようだ。

 

シズはそんな緑谷たちの話を横目に轟に話しかけた。

 

「轟は自信ある?」

 

「別に普通だ。いつも通りやるだけだしな。…そっちは?」

 

「私は今回は爆豪に勝ちたいかな」

 

「確か、順位一緒だったか」

 

「そうそう」

 

思えば、轟とはずいぶんと仲良くなれた気がする。戦闘訓練での印象はあまりよくなかっただろうが、体育祭の件で少しはお互いのことを知ることができたのではないだろうか。その証拠に、轟からも言葉が投げ返される。

 

(少しはみんなともなじめてるかな)

 

シズは、この先の演習試験もそうだが、何よりも林間学校も楽しみに思うのだった。

 

 

 

 

 

放課後の教室では、上鳴と芦戸が何やら喜んでいた。

 

「んだよロボなら楽勝じゃん!」

 

「お前らは対人での個性の調整大変そうだからな」

 

「ああ!ロボならぶっぱで楽勝だ!」

 

「私は溶かして楽勝だ!」

 

「あとは八百万に勉強を教えてもらえば期末試験はクリアだな!」

 

瀬呂の言葉に上鳴と芦戸はこれで林間合宿に行けるとガッツポーズをしていた。

 

「……人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ。なにが楽勝だアホが」

 

「アホとはなんだアホとは!」

 

「うっせえ!調整とか勝手にできるもんだろ!アホだろ!――――――なあ!デク!」

 

そう悪態を吐く爆豪の視線の先には緑谷が。爆豪は緑谷を憎しみを含んだような目で見ていた。

 

「個性の使い方…ちょっとはわかってきたか知らねぇけどよ……テメェはつくづくオレの神経逆なでするな……!」

 

以前の救助競争の際に緑谷は爆豪に似た動きをしていた。緑谷を嫌っている爆豪からしたらそれだけでも不愉快に感じるのだろう。

爆豪の言葉は続く。

 

「期末じゃ個人成績で否が応でも優劣が付く。―――完膚なきまでに差ぁつけて、テメェぶち殺してやる!!―――轟!夜月!テメェらもな!!!」

 

爆豪の矛先は轟とシズにも向く。二人のコミュニケーション能力は高いとは言えないので、何も言えなかった。

 

爆豪はドアを激しく閉め、帰路に就いた。

 

「久しぶりにガチな爆豪だ……」

 

「焦燥…あるいは憎悪…?」

 

(純粋…なんだろうな)

 

シズは爆豪の魂を見てそう結論付ける。爆豪の魂は清純そのもので濁っていなかったからだ。

 

 

魂には色がある。その色は、その人物の感情によって色が変色する場合がある。

 

その色は主に赤、青、緑、黄、紫、白、黒などの7つである。基本的には一つの色に限定されるが、複数の色の魂を持つものもいる。轟がいい例だ。彼は個性も関係して普段は2つの色を持っている。激情に駆られたときは真っ赤になるのだ。

 

そして、色には濁りが存在する。その濁りは迷いが生じている者に多く存在し、逆に自分を確立させた人間には少ない。その程度には大小があり、爆豪の魂は驚くほどに真っ赤な赤色だったのだ。

 

爆豪の魂には濁りが存在しない。それは普段の日常生活からも感じ取れ、彼が絶対的に確立していることを示している。

 

まだ3か月しか爆豪を知っていないが、シズの印象は決して間違っていないのだろう。

 

閑話休題。

 

 

そうして、各人が勉強に励み、3日間の筆記試験を終え、演習試験の日がやってくるのだった。

 

 

 

 

実技試験会場中央広場。

 

シズたちはコスチュームに着替え、教師たちと相対していた。これから演習試験の説明が始まるためだ。

 

「それじゃあ、演習試験を始めていく。この試験でも、もちろん赤点はある。林間合宿に行きたけりゃ、みっともないヘマはするなよ」

 

「先生多いな……」

 

相澤先生の発言で演習試験が始まることを感じるが、耳郎は先生の数が異様に多いことを疑問に思ったようだ。

 

「諸君らは事前に情報を入手し、何するか薄々わかっているとは思うが――――」

 

「入試みたいなロボ無双だろー!?」

 

「花火!カレー!肝試しー!」

 

「残念!諸事情があって、今回から内容を変更しちゃうのさ!!」

 

相澤先生の言葉を遮って調子に乗った発言をする上鳴、芦戸に至ってはもう林間合宿に行く気でいるようだ。

 

しかし、それは校長によって無慈悲に壊される。二人は真っ白になっていた。

 

「これからは、対人戦闘――活動を見据えたより実践に近い教えを重視するのさ!―――ということで、諸君らにはこれから2人1組になって、ここにいる教師一人と戦闘訓練をおこなってもらうのさ!」

 

校長先生の発言にざわめく一同。変更内容がまさか教師との戦闘とは思わなかったのだ。

 

「なお、ペアの組と対戦する教師はすでに決定済み。動きの傾向や成績、親密度。もろもろを踏まえて、独断で組ませてもらったから、発表してくぞ」

 

「待ってください。このクラスは21人です。一人余ってしまいます」

 

シズがそのまま進めようとする相澤先生に待ったをかける。シズの指摘はもっともで、校長先生がおっしゃっていた2人1組という発言と矛盾してしまうのだ。

 

しかし、相澤先生は気にせずに言葉を続ける。

 

「その辺も含めて発表してく。まず、轟と八百万がペアで――俺とだ。……そして、緑谷と、爆豪がチームで、相手は―――」

 

相澤先生の発言に思わず互いを見つめる爆豪と緑谷。しかし、そんな暇はないとばかりに空から何が降ってきた。

 

「私が……する!」

 

――――オールマイトだ。

 

二人は戦慄した。現在のNo.1で、最強と名高いオールマイトと戦うのだ。その上、ペアの仲は最悪ときた。

 

「それじゃあ、組み合わせと対戦相手を一気に発表するよ!」

 

2人を置いて、発表が進む。

 

1戦目 セメントスVS切島、砂藤

2戦目 エクトプラズムVS蛙吹、常闇

3戦目 パワーローダーVS飯田、尾白

4戦目 イレイザーヘッドVS八百万、轟

5戦目 13号VS青山、麗日

6戦目 根津校長VS芦戸、上鳴

7戦目 プレゼント・マイクVS口田、耳郎

8戦目 スナイプVS葉隠、障子

9戦目 ミッドナイトVS瀬呂、峰田

10戦目 オールマイトVS緑谷、爆豪

 

「……私は?」

 

発表に疑問を持ったシズはそう質問する。

 

―――――刹那、悪寒を感じ、その方向に弧月を構えた。

 

金属がぶつかり合う音が響く。それは職場体験でよく聞いた音で、ここ最近、シズが一番耳になじんでいる音だ。

 

悪寒の元凶はすぐにシズに背を向け、ほかの教師たちの横に並んだ。あとはわかるだろうと、語りかけられたかのような錯覚に陥った。

 

「……なるほど」

 

シズは極めて冷静にそういうが、その内心は決して穏やかではない。

 

「試験の制限時間は30分!君たちの目的はこのハンドカフスを教師にかける。オア、最低一人がステージから脱出することさ!」

 

そのあとも、先生方が何かを言っていたが、シズの耳にはあまり入ってこなかった。

 

「シズ、あの人、知ってるの?」

 

教師たちが退出した後、耳郎がシズに問いかける。

 

「……私はもしかしたら赤点になるかもね」

 

「え!?」

 

その言葉に驚きを隠せない一同だが、弱気な発言をしてしまうシズにも仕方ない側面はある。

 

まさか――――ゲンセイと戦うことになるとは、予想もしていなかったのだから。

 

 

 

11戦目 ゲンセイVSシズ

 

 

 




なんでテスト直前に筆が乗るんだ……?
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