魂を満たす物語   作:よヨ余

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アニメ基準でーす。


VSゲンセイ

モニタールーム。

 

今回の演習試験は1試合ずつ行う。シズは最後なので、1試合くらいは見ようとモニタールームに足を運んでいた。

 

扉が開くとそこには緑谷と麗日、リカバリーガールがいた。

 

「シズも見学?」

 

麗日が話しかけてくる。青山がいないことから、作戦会議が済んだのか、はたまた作戦会議にならなかったのか。……おそらくは後者なのだろう。

 

「うん。私に作戦会議はないし、1試合だけ見ていこうと思って。見たら瞑想して集中力高めてくる」

 

「そっか!」

 

『砂藤、切島チーム。演習試験開始。レディー、ゴ―』

 

機械的な男性ボイスが聞こえ、砂糖、切島の試験会場であるビル地帯の映像が映し出される。

 

「始まったね」

二人はおしゃべりを中断し、映像に集中する。

 

「うん」

 

切島と砂藤は始まった瞬間にまっすぐ走りだしていた。

 

言葉は聞こえないが、口の動きから何かしゃべっているのは感じ取れる。

 

口の動きから察するに……

 

「あの二人、先生に勝とうとしてるね」

 

「え!?なんでわかるん!?」

 

「読唇術」

 

「スゴ……」と口を押さえる麗日をおいて、緑谷はシズの話に自身の感想を述べる。

 

「うん。でも……」

 

映像にはセメントス先生の操るセメントに対し拳による乱打を続ける切島と砂藤の姿が映っていた。

 

「あーあ、二人そろっておバカさんだ」

 

「おバカさん?」

 

シズの言葉に麗日が反応する。

 

「切島と砂藤の個性はシンプルながらも強い。肉体強化系は特に顕著だ。…でも、それには時間制限がある。ほら、体育祭の爆豪と切島戦」

 

「ああ……!」

 

「それに多分、セメントス先生にはそれはない。時間が経つほど切島君たちが不利になる……!」

 

「そんな……!」

 

「多分、僕たちにはそれぞれ天敵となる先生を意図的にぶつけてる……。それを攻略することが、試験攻略のカギ……!」

 

「その通りだよ。自分たちの番がやってくるまで、対戦相手とどう戦うのか、じっくり考えることだね」

 

緑谷の言葉をリカバリーガールが保証した。その上でシズたちにアドバイスをする。

 

しかし、シズにはある疑問があった。

 

「私の相手の基準は?弱点じゃないですよね?」

 

「あんたの場合は単純な格上だからさね。人も足りなかったし、あたしがゲンセイに掛け合ったのさ」

 

「交流があったんですね」

 

「後輩さね」

 

ゲンセイの見た目はおよそ50歳ほど。しかし後輩という言葉から察するに60あるいは70代なのかもしれない。

 

すると、映像に動きがあった。

 

砂藤が動かなくなったのだ。切島が鼓舞するも、砂藤は動かない。そのすぐ後に切島の硬化も効力を失い……

 

セメントスのセメントが二人を飲み込んで気絶させる。

 

『砂藤、切島チーム。両者気絶によりリタイア』

 

二人の気絶を確認し、機械音声が無機質に告げた。

 

「やれやれ、最初から出番かね」

 

リカバリーガールが離席し外に出てから少ししてシズも動く。

 

「じゃあ、瞑想してくる。二人も頑張ってね」

 

「あ、うん!シズも頑張って!」

 

麗日の声を背に、シズは瞑想しに仮眠室へ向かった。

 

瞑想して極限まで高まった集中力をその身に携えて。

 

シズの試験が始まる。

 

 

 

 

 

シズの試験会場は一般的な市街地だった。家々が並び、所々にマンションが点在している。中央部には大きな交差点があり、障害物がないので見晴らしがいい。実際の市街地を模したようで、自動車もあった。

 

『夜月静江。演習試験。レディーゴー』

 

機械音声の音が聞こえた瞬間に、シズは弧月を生成して駆けた。

 

馬鹿正直に中心部に走るのでなく、少し遠回りをして一番高いマンションの屋上にグラスホッパーで上る。そこからゲンセイを探すつもりなのだ。

 

しかし、その必要はなかったようだ。

 

「ッ!?ヤバ……」

 

「地天轟雷」

 

屋上に上ったシズに剣を振り下ろすゲンセイ。シズは咄嗟に身を翻して避けた。咄嗟のことだったので体勢を崩してしまい、そのまま地面に落ちる――前にテレポーターで近くの家の屋根に転移する。

 

(……遠回りしたとはいえ、速くないか?闘気か?)

 

シズはゲンセイの行動に疑問を覚えたが、ゲンセイの個性を思い出し自己解決する。

 

「……メテオラ」

 

シズは先ほどのマンションをメテオラで爆撃し、ゲンセイの位置をあぶりだす。

 

(……右か)

 

煙幕の中こちらに急接近するゲンセイの反応を感知し、今度はバイパーで牽制をする。

 

――しかし、

 

「甘い」

 

バイパーがすべて消えたことを認識した後、横なぎに振られるゲンセイの刀。それはシズの胴を捉え、シズを吹き飛ばす。

 

シズは家の壁を壊しながら吹き飛び、三つほど貫通して4つ目の家の中で止まった。

 

「相変わらず威力高いな……」

 

シズはそう悪態を吐きながら起き上がる。何とか剣で受けることに成功したものの、受けたダメージは大きい。

 

(真剣だったけど、切り傷はないし……これも闘気かな?)

 

腕に剣が当たった感覚はあったが、切り傷はなかった。そして幸いというべきかゲンセイは追撃に来ていなかったので、シズは試してみたいことを試すことにした。

 

 

 

 

 

ゲンセイはシズを吹き飛ばした後、シズの行動を制限するために近づく。

 

(さて。さすがにこれで終わるとは思えないが……)

 

ゲンセイは試験の前に行われた職員会議の記憶を思い出す。

 

 

 

 

ゲンセイはかつての先輩であるリカバリーガールの要請を受けて雄英にある大会議室を訪れていた。

 

「失礼する」

 

ゲンセイが会議室に入って少しして、会議が始まった。

 

ゲンセイはリカバリーガールにある程度の事情を聴いていたが、どうやら1学期の期末テストの演習試験の詳細を煮詰めるようだ。ゲンセイにも参加してほしいという要請を受けていたため、ゲンセイも真剣に会議に耳を向ける。

 

「……とまぁ、以上が夜月以外の20人の試験の詳細です。方針も今伝えた通りですね」

 

会議が始まって1時間が経った頃、シズ以外の生徒の試験方針が決まった。対峙する教師。設定する抜け道。どれだけ実力を出すのか。細部まで徹底的に決定し、ほぼ全会一致で決を採った。

 

「最後に夜月についてですが、―――ゲンセイさん。お任せします」

 

「お任せ、とは?」

 

相澤の発言にゲンセイは疑問を呈す。

 

「そのままの意味です。本気を出すのも構いませんし、抜け道を作るのも構いません。またその反対も然りです。……最終的に夜月のためになり、大きなケガもなければ何をしても構いません」

 

相澤はゲンセイに方針を伝える。あくまでも、ゲンセイ次第。そう言葉にすれば無責任だ、他人任せだということになってしまうが、実際はそうではない。

 

今回の演習試験は交友関係、課題、相性などの様々な観点からペアを決定し、また生徒の課題を突くように相対する教師を決定する。A組は21人在籍しているので3人1組のほうがいいのではという意見もあったが、生徒一人一人の能力や判断力などの総合力を養うために例年通り二人一組の流れにするようだ。

 

さて、シズの弱点だが―――ほぼない。

 

その上、残念ながらシズの弱点を確実に突くことが可能な教師はいない。しいて言うならば相澤だが、シズの体術は相澤を上回っているため結局意味がなくなってしまう。

 

そこで、ゲンセイに白羽の矢が立ったのだ。

 

弱点を突けるわけではないが、単純な格上であり、個性もシズと似ている。シズが実戦でのゲンセイの戦いから学べることは多い。あくまでも生徒の総合力を高めることが目的なので、ゲンセイが受け持っても問題ないというわけだ。

 

ゲンセイもそれは重々承知している。担任である相澤の考えを聞いてどう動くのか決めるつもりだったのだろう。

 

「委細承知した」

 

ゲンセイはそう返答した。相澤もその返答を聞き、沈黙する。

 

相澤もリカバリーガールからある程度は聞いていたが、ゲンセイの実力は相澤の目から見ても上澄みの人間のソレに見えた。ならば、任せても問題ないと判断したのだ。

 

適材適所。この中でシズの実力を最も知っているのはゲンセイなのだから。

 

 

 

 

 

そして、現在に戻る。

 

ゲンセイはシズの動きを確認し、刀を構える。

 

(―――妙だな)

 

ゲンセイの個性『闘気』はシズの『魂』よりは微弱だが、対象の生命反応を探知することができる。ゲンセイの技術ならばシズと同等レベルの探知が可能だ。

 

それ故に感じる違和感。

 

(反応が三つ……?)

 

瞬間、ゲンセイの背後に現れる影。

 

シズだ。

 

鷲爪虎脚(しゅうそうこきゃく)

 

シズは虚空で蹴りを入れ、大気のエネルギーを利用した波動を放つ。それは鷲の爪を想起させるような鋭さをもってゲンセイに迫る。

 

ゲンセイはその対処に移ろうとするが、わすれていないだろうか。

 

――反応が1つではないことに。

 

振り向いたゲンセイに迫るもう一人のシズ。シズは剣をかまえ、ゲンセイに技を繰り出す。

 

「梅花――五華突」

 

ゲンセイに迫る5つの刺突。

 

そして迫る4つの鷲爪。

 

ゲンセイは挟み撃ちにされ、絶体絶命の危機に陥る。二つの攻撃はゲンセイの寸前にまで迫っており、片方の対処をしてももう片方は必ず食らう。

 

(よくできている。1対1だからこそありえないこの状況。十分及第点だろう。だが、)

 

「甘いな」

 

そう。甘い。なぜなら―――

 

楊柳(やなぎ)――七華凪(なななぎ)

 

―――ゲンセイはこの世界でも有数の強者なのだから。

 

ゲンセイの剣が鷲爪虎脚を流し、剣を持つシズに当てる。鷲爪虎脚に直撃したシズは光の粒子になって消え失せ、梅花――五華突はゲンセイに届かなかった。

 

「なっ……」

 

「紫電突」

 

呆けるもう片方のシズにゲンセイは紫電突を食らわせる。このシズも光の粒子となって消え失せた。

 

「やはり分身か。魂といってもいろんなことができるものだな」

 

二人のシズを倒したゲンセイはそう嘆息し、シズの動向を探る。

 

(あいつの性格を考えるとこのまま脱出するとは考えにくい。――とはいえ、このまま放って置くわけにもいかないか)

 

ゲンセイはシズの大まかな位置を把握し、ゆっくりと近づく。シズが咄嗟にどんな行動をしても対処できるように警戒は最大レベルに引き上げている。

 

そして、シズが現れる。スイッチボックスを使用した瞬間移動でゲンセイのすぐ背後に出現していた。

 

「梅花――五華突」

 

「石榴――六華斬」

 

二つの秘奥義がぶつかり合い、ゲンセイの六華斬が勝利する。しかし、シズは五華突に加えてアステロイドを繰り出していたため、結果的に互角だった。

 

「チッ……!」

 

思わず舌打ちをするシズ。完全な不意打ちだったはずなのにシズがそこに現れることを予測していたような挙動。いくら真後ろが読みやすいとはいえ、明らかに異質だ。

 

「メテオラ」

 

シズはメテオラを地面にたたきつけて煙幕を出す。ゲンセイの視覚を奪い、優位に立とうとする。

 

しかし、ゲンセイの強さは視覚に頼ったものではない。だから、シズの体を正確に捉えた剣劇を繰り出すことができる。

 

「っぶな」

 

シズは煙幕の中から現れたゲンセイの刀を体を逸らすことで避ける。

 

幸い体勢を崩すことなく追撃に備えることができた。続く紫電突を流水斬で受け流し、疾風雷覇で切り返す。

 

ゲンセイは後ろに飛びのき―――消える。

 

「は」

 

「やはり、ここか」

 

瞬間、左わき腹に響く鈍い痛み。

 

シズはゲンセイの刀を弧月で受け止めることができずに、初めてモロに打撃を食らった。

 

シズは二度三度地面を転がり、地面に這いつくばる。

 

「グ、ウゥ……」

 

シズは呻き、立ち上がる――ことができない。

 

(なぜ……!?)

 

シズは体を駆け巡る違和感に瞠目する。体の中で毒が巡っている感覚。ソレは着実にシズの体を蝕み、確実にシズの体力を奪っていく。

 

そして、シズにはそれに心当たりがあった。

 

「これも……闘気か」

 

「ご名答。詳しく答えるつもりはないがな」

 

シズは嗤い、何度も感じるゲンセイの違和感を探る。

 

(ゲンセイさんの挙動は意味が分からない。なんでスイッチボックスの位置が分かった?)

 

そう、先ほどのゲンセイの瞬間移動はシズのスイッチボックスによるものだ。

 

スイッチボックスはシズが指定した対象にしか効果がない。だからゲンセイには絶対に見えないはずなのだ。しかし、シズはまさか利用されるとは思わず、何も指定していなかったのだ。

 

だがゲンセイにも使えた。

 

しかし、それはおかしい。

 

ゲンセイのあの発言。ゲンセイは確かに意図的にスイッチボックスを使っていた。

 

――なぜ?

 

スイッチボックスは指定した人間にしか視認できない。シズは誰も指定していないので見える人間はシズだけのはずなのだ。

 

――ならば、

 

(見える方法がある。ゲンセイさんが見える方法が。応用すれば、そこに勝ち筋はある)

 

そして、シズは思考の海に沈む。

 

(ゲンセイさんの動きは違和感止まりだ。つまり、目立った違いはない。だから、ゲンセイさんが私のエネルギーを見る方法は今の私に見えないもの。―――闘気だ)

 

シズは答えを導き出す。ゲンセイの力の源。剣以外の立ち回りで行使しているもの。それが闘気だ。

 

(どう使っている?)

 

シズはゲンセイの挙動を思い起こす。

 

ゲンセイの強みの一つは視覚に頼らない安定性。目をつぶされたとしても肌の感覚や聴覚、挙句の果てには嗅覚によって相手の位置がわかり、そこに正確に剣を振るうことができる。

 

しかし、ゲンセイは視覚を用いている。

 

――なぜ。

 

(決まってる。その必要があるからだ。そして恐らくソレが、位置が分かった理由)

 

――つまり。

 

(目だ。)

 

ならば、やることは一つだろう。

 

目に虚無を集中させたら―――!

 

「……ハハッ」

 

 

見えた。

 

 

次は、体の中の闘気をどうするか。

 

それについては簡単だ。虚無で中和すればいい。そしてそれはすぐに完了する。

 

シズは立ち上がり、ゲンセイを見据える。

 

「……驚いた。まだ立つか」

 

「残念ながら、やられたままでいられるほど優等生ではないので」

 

シズはゲンセイに軽口を返し、ゲンセイに肉薄する。

 

(速い。先ほどよりも格段に)

 

ゲンセイは原因を探るべく目に闘気を集中させる。

 

(――なるほど。オレの闘気と虚無を融合させたのか。しかも与えた闘気に比べて量が段違いだな。……昇華させたか)

 

ゲンセイはシズの変化を正確に認識したものの、シズの攻撃の回避までは手が回らずに蹴撃を受ける。

 

幸い刀で受け止めることには成功したものの、シズからおおきく距離を取ってしまう。

 

シズはアステロイドとメテオラでゲンセイの左右の退路を塞ぎ、刀を構える。

 

(分身ともう一つ、してみたいことがあった。)

 

闘気をモノにしたシズは理想でしかなかった技を試してみることにした。

 

朧心命流を学んでから脳裏に思い描いていた一つの理想。

 

それは―――

 

「八重桜――八華閃」

 

シズとゲンセイの距離はおよそ35m。そこで八華閃を放っても意味がない。

 

だから―――

 

「―――旋空」

 

直後、ゲンセイに向かう8つの神速の刃。それは家々を切り裂き、このままだとゲンセイの体にとてつもない衝撃が来るだろう。

 

(素晴らしい)

 

ゲンセイは迫りくる斬撃を視認してそう嘆息する。自らの個性を最大限の活用し最善の技を繰り出す。

 

しかもそれは朧心命流とシズの旋空を組み合わせた技で、シズの全力を前面に出したもの。褒めるなというほうが難しい。

 

(ならば、オレも全力を出さねば、無礼になるな)

 

ゲンセイはそう判断し、ゲンセイが修める朧心命流の全てを懸け、抜刀。

 

その技の名は―――

 

(おぼろ)百華繚乱(ひゃっかりょうらん)

 

それは、八重桜――八華閃を超越する剣速。瞬時に放たれる百の剣閃。

 

ゲンセイはその中の五十をその場で振るうことで旋空を無効化し、四十で弧月の破壊。残りの十でシズを滅多打ちにした。

 

「ガッ……」

 

シズは言葉にならない呻きを上げ、崩れ落ちる。その中で、シズの思考は二つでいっぱいだった。

 

(―――――これが、武の極致……!!!)

 

一つは、ゲンセイの技の甘美なまでに美しい流れ。思わず見とれてしまう真っ直ぐな魂に対する称賛。羨望。

 

(私は、なんて中途半端なんだ)

 

そして、嫉妬。

 

ゲンセイはその生涯のほとんどを剣に捧げ、これまでを過ごした。シズには達成することのできない偉業。

 

勝てない。

 

そう悟ってしまうほどの実力の差が浮き彫りになった。自分のできる最高を真正面から打ち破られ、過剰な闘気が体を侵食したことでもう満足に動けなくなるような有様。

 

嗚呼。

 

(この強さが……!)

 

欲しい。

 

シズの思考は驚くほどに落ち着いていて、クリアだった。

 

だからこそ、これはシズの本音。

 

だが、その本音は今は叶わない。

 

シズの敗北だ。

 

―――それはとても恐ろしい。だから、

 

(負けるつもりなどない!!)

 

「ズイッチ………ボ…グズ」

 

ゲンセイの視界からシズが消え失せる。

 

「なに……!?」

 

ゲンセイにも見えなかったスイッチボックス。警戒していたはずだったもの。

 

つまり。

 

(オレの目を超えたと…!?この短期間で……!?)

 

ゲンセイは一つの答えを導き出し、その顔を驚愕の色に染める。

 

だが、実力者は即座に頭を切り替える。

 

(ならば)

 

「オレも挑戦するとしよう」

 

シズの行動が、ゲンセイに火をつけた。

 

刀を鞘に納める。

 

「旋空弧月」

 

一閃。

 

 

 

 

 

シズは試験会場の出口のすぐそばに転移していた。

 

ゴールテープのすぐ前で横になっている状態。一度横転するだけで簡単に脱出できる。

 

しかし、その体力がない。

 

シズは動くために深呼吸を挟もうとするが、そうは問屋が卸さないようだ。

 

(ウソだろ)

 

体中に駆け巡る鋭い悪寒とともに、シズのすぐ左で斬撃が飛んでくる音が聞こえた。

 

ゲンセイが放った旋空だ。

 

絶望がすぐそこまで迫ってきていることを認識し、足掻く。

 

―――敗北だけは、ほかの何にも代えがたい絶望であるから。

 

「グ、アアアアァァアッッ!!!」

 

雄叫びをあげることで己を鼓舞し、体を横転させる。

 

縦向きに放たれた旋空は目を見張る速度でシズに迫り―――

 

『夜月静江。条件達成。演習試験終了』

 

機械音声が聞こえ、旋空は会場内ギリギリまで迫り、消える。

 

シズは眼前で消えるソレを確認し、安堵の息を吐く。

 

(旋空、私のよりも数段上なんだけど)

 

「意味、わから……ん……」

 

シズはそう言葉を残して、意識を手放した。







補足

シズの扱う旋空には2種類あります。(ワールドトリガーは1だけ)

1,拡張斬撃

その名の通り、ブレードの長さを拡張させることによってリーチの利を保つ。

難点は拡張した分だけ重量が増えて扱いにくくなること。

起動時間に応じて反比例する。だから、起動時間が短いほど長射程となるが、それを成り立たせる剣速は想像を絶する。

1秒起動→15mくらい。


2,放出斬撃

簡単に言えばロロノア・ゾロの煩悩鳳。違いは一閃かどうか。

シズの『八重桜――八華閃―旋空』やゲンセイの『旋空弧月』はこのタイプ。




テスト赤点なかったーーーー!!!よかったーーー!!!初めてだーーーー!!!!!!






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